(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20221125BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B62J35/00 D
B60K15/05 A
B60K15/05 B
(21)【出願番号】P 2021512016
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014105
(87)【国際公開番号】W WO2020203801
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】201941012404
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 哲
(72)【発明者】
【氏名】岸 裕司
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047904(JP,A)
【文献】特開2018-052450(JP,A)
【文献】特開2017-200777(JP,A)
【文献】特開平07-246972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(12)に支持されて、給油口(44a)を有するフューエルタンク(44)と、
少なくとも部分的に前記フューエルタンク(44)を覆って、前記給油口(44a)に対向する位置に開口(47)を区画する車体カバー(13)と、
前記開口(47)を開閉するリッド(48)と、
前記リッド(48)とは別体に設けられ、前記給油口(44a)を塞ぐフューエルキャップ(55)と
を備える鞍乗り型車両(11)において、
前記フューエルキャップ(55)は、前記給油口(44a)を開放する開き位置、および、前記給油口(44a)を塞ぐ閉じ位置の間で軸線(56)回りに揺動し、
前記フューエルキャップ(55)および前記リッド(48)には、前記フューエルキャップ(55)の揺動と前記リッド(48)の開閉動作とを連動させるリンク部材(66)が連結され、
前記リッド(48)は前記軸線(56)とは相違する回転軸線(62)回りで揺動し、前記軸線(56)および前記回転軸線(62)は給油口(44a)に対して同側に配置され、前記給油口(44a)を挟んで反対側で前記リンク部材(66)は前記フューエルキャップ(55)と前記リッド(48)とを連結することを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗り型車両において、前記軸線(56)および前記回転軸線(62)は平行に位置することを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗り型車両において、前記フューエルタンク(44)に装着されて前記給油口(44a)の外周に位置するキャップベース(57)を備え、前記キャップベース(57)には前記フューエルキャップ(55)および前記リッド(48)が支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両において、前記リッド(48)とは別体であって前記リッド(48)を支持し、回転軸線(62)回りで回転自在に設けられ、前記回転軸線(62)から離れた位置で前記リンク部材(66)に相対回転自在に連結されるヒンジアーム(63)をさらに備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗り型車両において、
前記フューエルキャップ(55)に結合されて、前記軸線(56)から第1距離(DS1)で離れて前記軸線(56)に平行な連結軸線(64)回りに回転自在に前記リンク部材(66)の一端を連結する第1リンク軸(67)と、
前記ヒンジアーム(63)に結合されて、前記回転軸線(62)から第1距離(DS1)よりも大きい第2距離(DS2)で離れて前記回転軸線(62)に平行な連結軸線(65)回りで回転自在に前記リンク部材(66)の他端を連結する第2リンク軸(69)とをさらに備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項6】
請求項4または5に記載の鞍乗り型車両において、前記車体カバー(13)は、乗員シート(23)の後方に前記開口(47)を配置し、前記リッド(48)の外縁に面一に連続する外面を有するリアカウル(43)を備え、
支持体(57b)は前記給油口(44a)に対して車両前後方向で前方に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両において、前記閉じ位置に前記フューエルキャップ(55)を拘束し、もしくは、前記開口(47)を閉じる位置に前記リッド(48)を拘束するロック機構(101)をさらに備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項8】
請求項7に記載の鞍乗り型車両において、前記フューエルキャップ(55)および前記
リッド(48)のいずれか一方を開き方向に駆動する弾性力を発揮する弾性部材(89)をさらに備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項9】
請求項7または8に記載の鞍乗り型車両において、前記ロック機構(101)は、前記軸線(56)回りに回転自在に前記フューエルキャップ(55)を支持する
キャップベース(57)に形成されて前記フューエルキャップ(55)の揺動を拘束する規制体(111)を備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームに支持されて、給油口を有するフューエルタンクと、少なくとも部分的にフューエルタンクを覆って、給油口に対向する位置に開口を区画する車体カバーと、開口を開閉するリッドと、リッドとは別体に設けられ、給油口を塞ぐフューエルキャップとを備える鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開平9-207852号公報は、車体の後半分を覆うリアフレームカバーを備えるスクーター型車両を開示する。リアフレームカバーには燃料補給用のリッド孔(開口)が形成される。リッド孔にはリッドが開閉自在に配置される。リッドの内側でフューエルタンクの給油口にはフューエルキャップが装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同公報に記載のスクーター型車両では、フューエルキャップとは別体にリッドが配置されることから、フューエルキャップの機能や形状に拘束されることなくリッドはリアフレームカバーの一部として自由にデザインされることができる。したがって、スクーター型車両の意匠性は高められることができる。しかしながら、フューエルタンクへの給油にあたって、ユーザーは、リッドの開放を操作した後に、フューエルキャップを外さなければならない。リッドの開放とフューエルキャップの取り外しとが個別に実施されなければならない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、良好な意匠性を確保するとともに給油にあたって良好な作業性を実現することができる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、車体フレームに支持されて、給油口を有するフューエルタンクと、少なくとも部分的に前記フューエルタンクを覆って、前記給油口に対向する位置に開口を区画する車体カバーと、前記開口を開閉するリッドと、前記リッドとは別体に設けられ、前記給油口を塞ぐフューエルキャップとを備える鞍乗り型車両において、前記フューエルキャップは、前記給油口を開放する開き位置、および、前記給油口を塞ぐ閉じ位置の間で軸線回りに揺動し、前記フューエルキャップおよび前記リッドには、前記フューエルキャップの揺動と前記リッドの開閉動作とを連動させるリンク部材が連結される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記リッドは前記軸線とは相違する回転軸線回りで揺動し、前記軸線および前記回転軸線は給油口に対して同側に配置され、前記給油口を挟んで反対側で前記リンク部材は前記フューエルキャップと前記リッドとを連結する。
【0008】
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記軸線および前記回転軸線は平行に位置する。
【0009】
第4側面によれば、第1~第3側面のいずれか1の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記フューエルタンクに装着されて前記給油口の外周に位置するキャップベースを備え、前記キャップベースには前記フューエルキャップおよび前記リッドが支持される。
【0010】
第5側面によれば、第1~第4側面のいずれか1の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記リッドとは別体であって前記リッドを支持し、回転軸線回りで回転自在に設けられ、前記回転軸線から離れた位置で前記リンク部材に相対回転自在に連結されるヒンジアームをさらに備える。
【0011】
第6側面によれば、第5側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記フューエルキャップに結合されて、前記軸線から第1距離で離れて前記軸線に平行な連結軸線回りに回転自在に前記リンク部材の一端を連結する第1リンク軸と、前記ヒンジアームに結合されて、前記回転軸線から第1距離よりも大きい第2距離で離れて前記回転軸線に平行な連結軸線回りで回転自在に前記リンク部材の他端を連結する第2リンク軸とをさらに備える。
【0012】
第7側面によれば、第5または第6側面の構成に加えて、前記車体カバーは、乗員シートの後方に前記開口を配置し、前記リッドの外縁に面一に連続する外面を有するリアカウルを備え、前記支持体は前記給油口に対して車両前後方向で前方に配置される。
【0013】
第8側面によれば、第1~第7側面のいずれか1の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記閉じ位置に前記フューエルキャップを拘束し、もしくは、前記開口を閉じる位置に前記リッドを拘束するロック機構をさらに備える。
【0014】
第9側面によれば、第8側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記フューエルキャップおよび前記リッドのいずれか一方を開き方向に駆動する弾性力を発揮する弾性部材をさらに備える。
【0015】
第10側面によれば、第8または第9側面の構成に加えて、前記ロック機構は、前記軸線回りに回転自在に前記フューエルキャップを支持する部材に形成されて前記フューエルキャップの揺動を拘束する規制体を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1側面によれば、フューエルタンクへの給油にあたってリッドは開き、開口から車体カバー外の空間に向かって給油口は露出する。フューエルキャップは軸線回りで揺動して給油口を開放する。このとき、リッドとフューエルキャップとは別体に構成されることから、リッドは車体カバーの一部として自由にデザインされることができる。鞍乗り型車両の意匠性は高められることができる。その一方で、フューエルキャップの揺動とリッドの開閉動作とは連動することから、フューエルキャップの揺動またはリッドの開閉動作のいずれかに応じて、車体カバーの開口は開放され、フューエルタンクの給油口は開放される。リッドとフューエルキャップとは別体であるにも拘わらず、1つの動作でリッドおよびフューエルキャップは開放されることができる。こうして良好な意匠性が確保されると同時に給油にあたって良好な作業性は実現されることができる。
【0017】
第2側面によれば、給油口に対してフューエルキャップおよびリッドの開き方向が一致することから、フューエルキャップ、ヒンジアームおよびリンク部材で形成されるリンク機構の構造は簡素化されることができる。給油口の開放時に給油口に対してフューエルキャップおよびリッドは一方向に集中するので、給油口の他方向に十分に大きな空間が確保されることができる。給油ガンは車体カバーの外側から容易に給油口にアプローチすることができる。
【0018】
第3側面によれば、リッドは、フューエルキャップの揺動角と相違する角度で回転軸線回りに回転することができる。リッドの回転角はフューエルキャップの揺動角に依存せずに設定されることができる。その結果、リッドの外観はさらに自由にデザインされることができる。鞍乗り側車両の意匠性はさらに高められることができる。
【0019】
第4側面によれば、キャップベースはフューエルキャップ、リッドおよびリンク部材をユニット化することができる。キャップベース、フューエルキャップ、リッドおよびリンク部材は予め組み立てられてフューエルタンクに組み付けられることができる。したがって、組み付けの作業性は向上することができる。
【0020】
第5側面によれば、リッドの組み付けにあたってリッドはヒンジアームに支持される。したがって、ヒンジアームが車体カバーの内側に配置された後に、車体カバーの外側からヒンジアームにリッドは固着されることができる。予めリッドがフューエルキャップに連結されてから車体カバーの内側に組み付けられる場合に比べて、リッドの形状の自由度は広がることができる。こうしてリッドの外観はさらに自由にデザインされることができる。鞍乗り側車両の意匠性はさらに高められることができる。
【0021】
第6側面によれば、フューエルキャップ、ヒンジアームおよびリンク部材で構成されるリンク機構ではフューエルキャップの回転角に対してヒンジアームの回転角は縮小される。こうしてフューエルキャップの開放角とリッドの開放角とは相対的に調整されることができる。フューエルキャップからヒンジアームに効率的に力は伝達されることができる。
【0022】
第7側面によれば、車両後方から給油ガンは簡単に給油口にアプローチすることができる。給油の作業性は向上する。
【0023】
第8側面によれば、リッドとフューエルキャップとはリンク部材で連結されることから、フューエルキャップの揺動およびリッドの開閉動作のいずれかが拘束されるだけで、フューエルキャップは閉じ位置に拘束され、リッドは開口を閉鎖することができる。フューエルキャップおよびリッドに個別にロック機構が設けられる場合に比べて、部品点数は削減されることができる。フューエルキャップおよびリッドのいずれかで拘束が解除されれば、フューエルキャップは閉じ位置から揺動することができるとともに、リッドは開口を開放することができる。良好な作業性は実現されることができる。
【0024】
第9側面によれば、フューエルキャップまたはリッドがロック機構の拘束から解放されると、弾性力の働きでフューエルキャップは開き位置に向かって駆動され、リッドは開き方向に駆動されて開口を開放する。フューエルキャップおよびリッドはリンク部材で連結されることから、フューエルキャップおよびリッドに共通の弾性部材でフューエルキャップおよびリッドは開き方向に駆動されることができる。フューエルキャップおよびリッドに個別に弾性部材が設けられる場合に比べて、部品点数は削減されることができる。
【0025】
第10側面によれば、フューエルキャップの揺動を規制する規制体はフューエルキャップを揺動可能に支持する部材に一体であり、フューエルキャップの拘束位置は良好に管理されることができる。給油口に対してフューエルキャップの気密性は良好に確保されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗り型車両の一具体例であるスクーターの全体構成を概略的に示す側面図である。(第1の実施の形態)
【
図2】
図2はリアカウルの形状を概略的に示す車両後方拡大斜視図である。(第1の実施の形態)
【
図3】
図3はインナーカバーに埋め込まれるスイッチユニットを概略的に示す概念図である。(第1の実施の形態)
【
図4】
図4はフューエルキャップユニットの構造を概略的に示す車両後端の拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【
図5】
図5はフューエルキャップユニットの拡大斜視図である。(第1の実施の形態)
【
図6】
図6はフューエルキャップユニットの拡大分解斜視図である。(第1の実施の形態)
【
図7】
図7は
図4の一部に相当し、フューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【
図8】
図8は
図7に対応し、第2位置に位置するスライダーを含むフューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【
図9】
図9は
図8に対応し、開き方向に揺動したフューエルキャップを含むフューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【
図10】
図10は
図4に対応し、フューエルリッドが開放された際にフューエルキャップユニットの構造を概略的に示す車両後端の拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【
図11】
図11は
図10に対応し、給油の様子を概略的に示す概念図である。(第1の実施の形態)
【
図12】
図12は
図9に対応し、フューエルリッドが閉じられる際に規制体に当たるロック爪を含むフューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【符号の説明】
【0027】
11…鞍乗り型車両(スクーター)
12…車体フレーム
13…車体カバー
23…乗員シート
43…リアカウル
44…フューエルタンク
44a…給油口
47…開口
48…リッド(フューエルリッド)
55…フューエルキャップ
56…軸線
57…キャップベース
57b…支持体
62…回転軸線
63…ヒンジアーム
64…連結軸線
65…連結軸線
66…リンク部材
67…第1リンク軸
69…第2リンク軸
89…弾性部材(捻りばね)
101…ロック機構
111…規制体
DS1…第1距離
DS2…第2距離
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は自動二輪車の乗員から見た方向をいう。
【第1の実施の形態】
【0029】
図1は鞍乗り型車両(自動二輪車)の一具体例であるスクーター11の全体構成を概略的に示す。スクーター11は、車体フレーム12と、車体フレーム12に装着される車体カバー13とを備える。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から下方に延びるダウンチューブ15と、ダウンチューブ15の後端に結合されて車幅方向に延びるクロスフレーム16と、クロスフレーム16の両端に結合されてクロスフレーム16から後上がりに延びる左右1対のサイドフレーム17とで形成される。ヘッドパイプ14にフロントフォーク18および操向ハンドル19が回転自在に支持される。フロントフォーク18には車軸21回りで回転自在に前輪WFが支持される。
【0030】
車体カバー13は、前方からヘッドパイプ14およびダウンチューブ15を覆うフロントカウル22aと、フロントカウル22aに結合されて、後方からヘッドパイプ14およびダウンチューブ15を覆うインナーカバー22bと、インナーカバー22bの下端に結合されて、地面に並行に広がるフロアーステップ22cと、フロアーステップ22cの後端に結合されて、サイドフレーム17を覆うボディカバー22dとを備える。ボディカバー22dには後輪WRの上方で乗員シート23が支持される。ボディカバー22d内でサイドフレーム17には収納ボックス24が支持される。収納ボックス24は乗員シート23で開閉される。
【0031】
車体フレーム12にはサイドフレーム17の間でスイング式のパワーユニット25が上下方向に揺動自在に支持される。パワーユニット25はリンク26でサイドフレーム17に連結される。パワーユニット25は、燃料に基づき動力を発生する内燃機関27と、内燃機関27に接続されて、後輪WRに線形に変化する変速比で内燃機関27の動力を伝達する伝動装置28とを備える。
【0032】
パワーユニット25の後端に車軸29回りで回転自在に後輪WRが支持される。パワーユニット25の後端およびサイドフレーム17の後端の間にはリアクッションユニット31が取り付けられる。パワーユニット25は、車体フレーム12に対してスイング自在に後輪WRを連結するサスペンション装置の機能を担う。
【0033】
内燃機関27の機関本体32は、回転軸線33回りで回転自在にクランクシャフトを収容するクランクケース34と、クランクケース34に結合されて、前傾したシリンダー軸線Cに沿ってピストンの線形往復運動を案内するシリンダーブロック35と、シリンダーブロック35に結合されて、ピストンとの間に燃焼室を形成するシリンダーヘッド36と、シリンダーヘッド36に結合されて、シリンダーヘッド36に組み付けられる動弁機構に覆い被さるヘッドカバー37とを備える。シリンダーヘッド36には、燃焼室に混合気を導入する吸気系38と、燃焼室から燃焼後の気体を排出する排気系39とが接続される。伝動装置28は、機関本体32のクランクケース34に一体化される変速機ケース41に収容される無段変速機(図示されず)を備える。
【0034】
ボディカバー22dは、乗員シート23の後方に配置されて、テールランプ42を支持するリアカウル43を備える。リアカウル43の内側でサイドフレーム17にはフューエルタンク44が支持される。フューエルタンク44は少なくとも部分的に車体カバー13で覆われる。フューエルタンク44は、給油口44aを区画するフィラーネック45を備える。フィラーネック45には給油口44aを塞ぐフューエルキャップユニット46が装着される。フューエルキャップユニット46の詳細は後述される。フューエルタンク44にはフューエルポンプ(図示されず)が取り付けられる。フューエルポンプの働きでフューエルタンク44内の燃料は内燃機関27の燃料噴射装置に供給される。
【0035】
図2に示されるように、リアカウル43には、乗員シート23の後方でフューエルタンク44に向き合わせられる位置に開口47が区画される。開口47にはフューエルリッド48が配置される。フューエルリッド48はリアカウル43の外側から開口47に覆い被さる。フューエルリッド48は開口47を開閉する。フューエルリッド48の開閉動作はリアカウル43外の空間で実現される。フューエルリッド48が開口47を閉じると、フューエルリッド48の外縁とリアカウル43の外面とは面一に連続する。
【0036】
図3に示されるように、インナーカバー22bには操向ハンドル19の下方でスイッチユニット49が組み込まれる。スイッチユニット49は、乗員シート23に着座する乗員の手が届きやすい位置に配置される。スイッチユニット49は、回転自在にキープラグ51を支持するキーシリンダー52を備える、キープラグ51はキー孔51aにキーを受け入れる。キー孔51aの角度が「OFF」位置に合わせられると、キー孔51aに対してキーの出し入れは許容される。キー孔51aの角度が「ON」位置に合わせられると、車両の電気系統はスイッチオンされる。キー孔51aの角度が「ON」位置を超えて「IGNITION」位置に合わせられると、内燃機関27のスターターモーターは始動する。
【0037】
「ON」位置と「OFF」位置との間に「SEAT FUEL」位置が設定される。キー孔51aの角度が「SEAT FUEL」位置に合わせられると、シーソースイッチ53の操作が許容される。シーソースイッチ53では、「FUEL」側が押し込まれると、フューエルリッド48は開口47を開放する。「SEAT」側が押し込まれると、乗員シート23のロックは解除される。乗員シート23の開放に応じて使用者は収納ボックス24へアクセスすることができる。
図1に示されるように、シーソースイッチ53の「SEAT」側はケーブル54でフューエルキャップユニット46に連結される。「SEAT FUEL」位置以外ではシーソースイッチ53はロックされる。シーソースイッチ53がロックされると、「SEAT」側にも「FUEL」側にもシーソースイッチ53の押し込みは阻止される。
【0038】
図4に示されるように、フューエルキャップユニット46は、フューエルリッド48とは別体に設けられ、フューエルタンク44の給油口44aを塞ぐフューエルキャップ55を備える。フューエルキャップ55は、給油口44aを開放する開き位置、および、給油口44aを塞ぐ閉じ位置の間で軸線56回りに揺動自在にキャップベース57に支持される。キャップベース57は、給油口44a回りでフィラーネック45に装着される。キャップベース57はフューエルタンク44にねじ58で固定される。
【0039】
フューエルキャップユニット46とフューエルタンク44との間にはフューエルトレイ59が配置される。フューエルトレイ59は、フィラーネック45回りで広がって、フィラーネック45とリアカウル43との間の空間を塞ぐ。開口47から進入する水や埃はフューエルトレイ59で集められる。フューエルトレイ59は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0040】
フューエルキャップユニット46は、フューエルキャップ55の動きにフューエルリッド48の開閉を連動させるリンク機構61を備える。リンク機構61は、回転軸線62回りで回転自在にフューエルタンク44に支持されて、フューエルリッド48を支持するヒンジアーム63と、一端で軸線56に平行な連結軸線64回りに回転自在にフューエルキャップ55に連結され、他端で回転軸線62に平行な連結軸線65回りに回転自在にヒンジアーム63に連結されるリンク部材66とを有する。リンク部材66は、フューエルキャップ55の揺動にフューエルリッド48の開閉動作を連動させる。リンク部材66は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0041】
図5および
図6に示されるように、リンク部材66の一端は、連結軸線64回りに相対回転自在に第1リンク軸67でフューエルキャップ55に結合される。第1リンク軸67はねじ68でフューエルキャップ55に固定されるブッシュで構成される。ブッシュは例えば良好な耐摩耗性および摺動性を有する樹脂成形体で構成される。樹脂材には例えばPOM(ポリアセタール)樹脂が用いられることができる。連結軸線64は軸線56から第1距離DS1で離れる。
【0042】
リンク部材66の他端は、連結軸線65回りに相対回転自在に第2リンク軸69でヒンジアーム63に結合される。第2リンク軸69はねじ71でヒンジアームに固定されるブッシュで構成される。ブッシュは例えば良好な耐摩耗性および摺動性を有する樹脂成形体で構成される。樹脂材には例えばPOM(ポリアセタール)樹脂が用いられることができる。連結軸線65は回転軸線62から第1距離DS1よりも大きい第2距離DS2で離れる。
【0043】
ヒンジアーム63は、回転軸線62回りに回転自在にブッシュ72でキャップベース57に連結される。ブッシュ72はねじ73でキャップベース57に固定される。ブッシュ72は例えば良好な耐摩耗性および摺動性を有する樹脂成形体で構成される。樹脂材には例えばPOM(ポリアセタール)樹脂が用いられることができる。
【0044】
ヒンジアーム63の回転軸線62は、フューエルキャップ55の軸線56から相違して軸線56に平行に延びる。ヒンジアーム63は、回転軸線62から車両後方に離れた位置で、フューエルリッド48の内面に向き合いながら広がる連結体63aと、連結体63aから下方に膨らむように湾曲しながら車両前方に延び、回転軸線62回りに回転自在にブッシュ72でキャップベース57に連結される前端を有する2つの湾曲腕63bとを有する。ヒンジアーム63は例えば樹脂材から成型されればよい。湾曲腕63bの間にキャップベース57は部分的に配置される。
【0045】
図4に示されるように、フューエルリッド48には、ヒンジアーム63に向き合う内面から突出して、ヒンジアーム63の連結体63aの前縁に受け止められる第1結合体48aと、第1結合体48aよりも車両後方で、ヒンジアーム63に向き合う内面から突出して、ヒンジアーム63の連結体63aの後縁に受け止められる第2結合体48bとが形成される。第2結合体48bは例えば連結体63aの両側に配置されるボスで形成されればよい。第1結合体48aには、連結体63aに受け止められる平面74から突出して、後ろ向きに延びる爪を有するフック75が形成される。第2結合体48bには、連結体63aに受け止められる平面76に穿たれて、内面に刻まれる雌ねじを有するねじ穴77が形成される。フューエルリッド48はリアカウル43と同じ材料から成型されればよい。
【0046】
第1結合体48aは、ヒンジアーム63の連結体63aに形成される第1座面78に受け止められる。第1座面78には第1結合体48aのフック75を受け入れるスリット79が形成される。第1座面78に対して第1結合体48aが位置決めされると、スリット79内のフック75は連結体63aに係り合う。第1座面78に対して第1結合体48aのがたつきは防止される。フック75は第1座面78と第1結合体48aとの接触を維持する。
【0047】
第2結合体48bは、ヒンジアーム63の連結体63aに形成される第2座面81に受け止められる。第2座面81には、第2結合体48bのねじ穴77にねじ込まれるねじ82の軸部を受け入れる円孔83が形成される。第2結合体48bはねじ82でヒンジアーム63に結合される。こうしてフック75およびねじ82でフューエルリッド48はヒンジアーム63に結合される。
【0048】
フューエルリッド48には、第1結合体48aおよび第2結合体48bでヒンジアーム63に締結されて、開口47の前端でリアカウル43との間で一体感を醸し出しながら上方からヒンジアーム63を覆う天板48cと、天板48cから折れ曲がり、開口47の後端でリアカウル43との間で一体感を醸し出しながら後方から第2結合体48bおよびねじ82を覆う隠し板48dとが形成される。
【0049】
図6に示されるように、キャップベース57は、フィラーネック45を囲んでフューエルタンク44にねじ留めされる囲い板57aと、囲い板57aから連続し、給油口44aの外縁から外側に一方向に離れるように広がって、フューエルキャップ55およびヒンジアーム63に連結される支持体57bとを有する。支持体57bは、相互に間隔を置きながら、囲い板57aの表面を含む平面から立ち上がる1対の壁体84を有する。ここでは、支持体57bは、給油口44aに対して車両前後方向で前方に配置される。したがって、フューエルキャップ55は給油口44aの開放時に給油口44aに対して車両前側に位置する。フューエルリッド48は開口47の開放時に開口47に対して車両前側に位置する。
【0050】
フューエルキャップ55は、軸線56回りで揺動自在にピボットシャフト85に連結されるキャップ本体55aを備える。キャップ本体55aは、給油口44aよりも大きい径を有して給油口44aの外縁よりも外側に広がる円板体86と、円板体86から車両前方に延び、回転自在にピボットシャフト85を受け入れる貫通孔87aを前端に有する連結腕87とを備える。ピボットシャフト85は2つの壁体84を貫通してフランジ85aおよびCクリップ88とでキャップベース57に固定される。
【0051】
連結腕87にはピボットシャフト85に同軸に外向きに突出する1対の円筒体55bが形成される。個々の円筒体55bには捻りばね89が装着される。捻りばね89の一端はキャップベース57に連結される。捻りばね89の他端はフューエルキャップ55に連結される。捻りばね89は軸線56回りに開き方向にフューエルキャップ55を駆動する弾性力を発揮する。ここでは、捻りばね89は、最大限に給油口44aを開放する開き位置までフューエルキャップ55を駆動する弾性力を発揮する。
【0052】
図7に示されるように、連結腕87には、軸線56から遠ざかるように外面から突出するリミッター91が形成される。軸線56回りで変位するリミッター91の軌道上でキャップベース57には当たり面92が形成される。当たり面92は軸線56回りに開き方向にキャップ本体55aの揺動を制限する。フューエルキャップ55の揺動時にリミッター91が当たり面92に当たることでフューエルキャップ55の開き位置は設定される。
【0053】
円板体86には、フューエルキャップ55の閉じ位置で、フィラーネック45に同軸にフューエルタンク44に向かって立ち上がる円筒壁93が形成される。円筒壁93の内側にはフューエルパッキン94が装着される。フューエルパッキン94は、給油口44a回りでフィラーネック45の先端に密着する厚肉体94aと、厚肉体94aから外側に広がる襞体94bとを有する。襞体94bは、円筒壁93の内側に嵌め込まれるパッキンホルダー95で円板体86に結合される。フューエルパッキン94は例えばゴム材から成型される。キャップ本体55aは例えばアルミニウム材から成形されればよい。パッキンホルダー95は例えばアルミニウム材から成型されればよい。
【0054】
フューエルパッキン94の厚肉体94aはプッシュ部材96に支持される。プッシュ部材96はフューエルキャップ55の閉じ位置でフィラーネック45との間にフューエルパッキン94を挟み込む。プッシュ部材96は、円板体86から突出する案内軸97に案内されてキャップ本体55aの中心軸線の線方向に変位することができる。案内軸97の先端にはCクリップ98が固着される。Cクリップ98は案内軸97からのプッシュ部材96の抜けを防止する。
【0055】
案内軸97回りでプッシュ部材96と円板体86との間には弦巻ばね99が挟まれる。弦巻ばね99は円板体86から離れる方向にCクリップ98に向かってプッシュ部材96に駆動力を付与する弾性力を発揮する。フューエルキャップ55の閉じ位置では弦巻ばね99の弾性力でフューエルパッキン94はフィラーネック45の先端に決められた圧力で押し付けられる。フューエルパッキン94がフィラーネック45の拘束から解放されると、弦巻ばね99の弾性力でプッシュ部材96はCクリップ98に押し付けられる。
【0056】
フューエルキャップユニット46には、閉じ位置にフューエルキャップ55を拘束するロック機構101が組み込まれる。ロック機構101は、一端にロック爪102aを有するスライダー102と、キャップ本体55aに形成されて、線形にスライダー102の変位を案内する案内路103を区画する1対の立ち壁104とを備える。スライダー102は、フューエルキャップ55の表面に沿って線形に変位する。ロック爪102aは、スライダー102の変位に応じて、円板体86の外周から最大限に外方に突出する第1位置Pfと、第1位置Pfから円板体86の外周に向かって後退する第2位置Psとの間で変位する。スライダー102の他端はキャップ本体55aの縁から外方に突出する。
【0057】
立ち壁104には上方から案内路103を塞ぐ押さえ板105が結合される。押さえ板105は、立ち壁104の上端から下がった段差104aに受け止められ、段差104aよりも上方で折り曲げられたかしめ片104bで段差104aに押し当てられる。
【0058】
スライダー102の他端には案内路103に沿って外側から押さえ板105の縁に接触する突片102bが形成される。突片102bは押さえ板105の縁に接触することでスライダー102の前進を規制する。このとき、ロック爪102aは、円板体86の外周から最大限に外方に突出する第1位置Pfに位置決めされる。突片102bはフューエルキャップ55の外縁で案内路103を塞ぐ。
【0059】
スライダー102には弦巻ばね106の収容空間107が区画される。弦巻ばね106は案内路103内でスライダー102とキャップ本体55aとの間に圧縮された状態で配置される。弦巻ばね106は、ロック爪102aに近い一端でスライダー102に接触し、ロック爪102aから遠い他端でキャップ本体55aに接触する。キャップ本体55aには、収容空間107内に配置されて、弦巻ばね106の他端を支持する壁108が形成される。弦巻ばね106は、案内路103に沿って第1位置Pfにロック爪102aを保持する弾性力を発揮する。
【0060】
ロック機構101は、開き位置および閉じ位置の間で行き来するフューエルキャップ55の軌道から外れた位置に配置されて、フューエルタンク44に結合される規制体111を備える。規制体111は、捻りばね89の弾性力に抗して軸線56回りで第1位置Pfのロック爪102aを拘束することができる。第1位置Pfのロック爪102aは、規制体111に係り合って閉じ位置にフューエルキャップ55を保持する。第2位置Psのロック爪102aは、規制体111から離脱して閉じ位置および開き位置の間で軸線56回りにフューエルキャップ55の揺動を許容する。規制体111は、給油口44aに対して車両前後方向に後方でキャップベース57に形成される。
【0061】
ロック機構101は、軸線56に平行なヒンジ軸線112回りで揺動自在にキャップベース57の支持体57bに支持される操作部材113をさらに備える。操作部材113は一方の壁体84と連結腕87との間に配置される。操作部材113には、ヒンジ軸線112に同軸に軸体113aが形成される。軸体113aは内側から壁体84を貫通しCクリップ114で抜け止めされる。
【0062】
操作部材113には、ヒンジ軸線112から遠心方向に離れた位置でケーブル54の先端を受け止める留め片115が形成される。留め片115は例えばヒンジ軸線112に平行な中心軸を有する円柱体で形成される。留め片115にはケーブル54の先端が連結される。
【0063】
ケーブル54は、キャップベース57に支持されるシース116に案内されてキャップベース57に対して軸方向に相対変位することができる。シーソースイッチ53で「FUEL」側が押し込まれると、ケーブル54は引っ張られる。操作部材113はヒンジ軸線112回りで第1方向FRに揺動する。操作部材113には、第1方向FRへの揺動時に壁体84の縁に当たって第1方向FRへの揺動を制限する第1ストッパー117aが形成される。第1ストッパー117aは操作部材113の非ロック位置を規定する。
【0064】
ケーブル54には、操作部材113とキャップベース57との間で圧縮された状態で弦巻ばね118が装着される。弦巻ばね118は、ヒンジ軸線112回りで第1方向FRに反対向きの第2方向SEに操作部材113を駆動する弾性力を発揮する。シーソースイッチ53で「FUEL」側の押し込みが解放されると、弦巻ばね118の弾性力の働きで操作部材113はヒンジ軸線112回りで第2方向SEに揺動する。操作部材113には、第2方向SEへの揺動時に壁体84の縁に当たって第2方向SEへの揺動を制限する第2ストッパー117bが形成される。第2ストッパー117bは操作部材113のロック位置を規定する。弦巻ばね118の弾性力はロック位置に操作部材113を保持する。
【0065】
操作部材113には、ヒンジ軸線112から遠心方向に離れた位置で、ヒンジ軸線112に平行な中心軸を有して操作部材113から突出する係り片119が形成される。係り片119は、例えばヒンジ軸線112に平行な中心軸を有する円柱体で形成される。係り片119は、フューエルキャップ55が閉じ位置に位置する際に案内路103の延長上に配置される。係り片119は、操作部材113の動きに応じて案内路103の線方向に変位する。操作部材113がヒンジ軸線112回りでロック位置に位置すると、係り片119はキャップ本体55a上の案内路103に最も近づく。操作部材113がヒンジ軸線112回りで非ロック位置に位置すると、係り片119はキャップ本体55a上の案内路103から最も遠ざかる。
【0066】
操作部材113では、ロック爪102aに連結される係り片119はヒンジ軸線112回りに第1角度域に配置される。係り片119の中心軸とヒンジ軸線112との距離は第1長さLG1に設定される。その一方で、ケーブル54に連結される留め片115はヒンジ軸線112回りに第1角度域から特定角度αで変位する第2角度域に配置される。留め片115の中心軸とヒンジ軸線112との距離は第1長さLG1よりも大きい第2長さLG2に設定される。
【0067】
スライダー102の他端には、フューエルキャップ55が閉じ位置に位置すると係り片119に連結され、フューエルキャップ55が閉じ位置から開き方向に変位すると係り片119から解放されるフック121が形成される。フューエルキャップ55が閉じ位置に位置する際に、操作部材113がロック位置から非ロック位置に揺動すると、ロック爪102aは第1位置Pfから後退して規制体111から離脱する第2位置Psに変位する。
【0068】
給油にあたってスクーター11ではキープラグ51のキー孔51aにキーが差し込まれる。キー孔51aの角度は「SEAT FUEL」位置に合わせられる。続いてシーソースイッチ53で「FUEL」側が押し込まれる。ケーブル54は弦巻ばね118の弾性力に抗して軸方向に引っ張られる。すると、
図8に示されるように、操作部材113はヒンジ軸112回りで第1方向FRに回転する。操作部材113の揺動に応じて係り片119は案内路103の延長上で案内路103から遠ざかる。係り片119の変位に応じてスライダー102は弦巻ばね106の弾性力に抗して後退する。こうしてロック爪102aに駆動力が伝わる。その結果、ロック爪102aは第1位置Pfから第2位置Psに後退する。駆動力は規制体111との係り合いからロック爪102aを開放する。ロック爪102aは規制体111から離脱する。開き方向にフューエルキャップ55の動作は許容される。操作部材113は非ロック位置で停止する。
【0069】
フューエルキャップ55には軸線56回りで開き方向に捻りばね89が作用することから、フューエルキャップ55は閉じ位置から開き方向に揺動する。すると、
図9に示されるように、フューエルキャップ55の揺動に応じてフック121は係り片119から離脱する。スライダー102は操作部材113の拘束から解放される。したがって、弦巻ばね106の働きでスライダー102は前進し、ロック爪102aは再び第1位置Pfに押し付けられる。
【0070】
軸線56回りでフューエルキャップ55が開き方向に揺動すると、
図10に示されるように、リミッター91はキャップベース57の当たり面92に当たる。当たり面92は軸線56回りに開き方向にフューエルキャップ55の揺動を制限する。こうしてフューエルキャップ55の開き位置は決定される。フューエルタンク44の給油口44aは最大限に開放される。
【0071】
捻りばね89の働きでフューエルキャップ55には軸線56回りに接線方向に駆動力が生成される。リンク部材66の軸方向に駆動力の一成分はヒンジアーム63に伝達される。こうしてヒンジアーム63には回転軸線62回りに駆動力が付与される。フューエルキャップ55の開き動作に連動してフューエルリッド48は開口47を開放する。
【0072】
フューエルキャップ55が開き位置に到達すると、フューエルリッド48は最大限に開口47を開放する開放位置に至る。開放位置のフューエルリッド48は乗員シート23よりも上方に位置する。フューエルリッド48が最大限に開いたときにフューエルリッド48の下端部を通る水平面HPは乗員シート23よりも上方に位置する。このとき、フューエルリッド48の第2結合体48bおよびねじ82は後方から隠し板48dで覆われるものの、ねじ82は下方に向かって露出する。
図11に示されるように、給油の作業者は楽に後方から開口47を経て給油口44aに給油ガン122を挿入することができる。
【0073】
いちど、ロック爪102aが規制体111の拘束から解除されると、シーソースイッチ53はユーザーの操作力から解放されることができる。すると、操作部材113はケーブル54の引っ張り力から解放されることから、操作部材113は弦巻ばね118の働きでヒンジ軸112回りに第2方向SEに回転する。操作部材113はロック位置に復帰する。
【0074】
給油が完了すると、給油の作業者は給油口44aから給油ガン122を抜き取る。続いてフューエルリッド48が回転軸線62回りで閉じられる。フューエルリッド48には作業者の手で操作力が加えられる。ヒンジアーム63には回転軸線62回りに接線方向に駆動力が生成される。リンク部材66の軸方向に駆動力の一成分はフューエルキャップ55のキャップ本体55aに伝達される。こうしてフューエルキャップ55には軸線56回りで駆動力が付与される。フューエルリッド48の閉じ動作に連動してフューエルキャップ55は給油口44aを閉鎖する。
【0075】
給油口44aの閉鎖にあたってフューエルキャップ55が閉じ位置に向かって揺動すると、第1位置Pfのロック爪102aは規制体111に衝突する。このとき、フューエルリッド48からさらに作業者の操作力が付与されると、規制体111の斜面に基づきロック爪102aに第2位置Psに向かって駆動力が生成される。弦巻ばね106の弾性力に抗してスライダー102は後退する。ロック爪102aは規制体111の斜面から離脱する。フューエルキャップ55はさらに揺動し閉じ位置に至る。給油口44aは閉鎖される。ロック爪102aは規制体111の拘束から解放されることから、弦巻ばね106の働きでスライダー102は再び前進し、ロック爪102aは第1位置Pfに復帰する。ロック爪102aは規制体111に係り合う。フューエルリッド48が作業者の操作力から解放されても、規制体111は閉じ位置にフューエルキャップを拘束する。
【0076】
フューエルキャップ55が閉じ位置に拘束されると、プッシュ部材96とフィラーネック45との間にフューエルパッキン94は挟み込まれる。プッシュ部材96には弦巻ばね99の働きでフィラーネック45に向かって押し付け力が付与される。したがって、フューエルパッキン94はプッシュ部材96とフィラーネック45とに密着する。フューエルキャップ55とフィラーネック45との間では良好な気密性が確保される。フューエルキャップ55が閉じ位置に向かって揺動する際に、操作部材113は弦巻ばね118の働きでロック位置に保持されることから、操作部材113の係り片119に再びフック121は係り合う。
【0077】
本実施形態では、フューエルリッド48とフューエルキャップ55とは別体に構成されることから、フューエルリッド48は車体カバー13の一部として自由にデザインされることができる。スクーター11の意匠性は高められる。その一方で、フューエルキャップ55の揺動とフューエルリッド48の開閉動作とは連動することから、フューエルキャップ55の揺動が操作されれば、車体カバー13の開口47は開放され、フューエルタンク44の給油口44aは開放される。フューエルリッド48とフューエルキャップ55とは別体であるにも拘わらず、1つの動作でフューエルリッド48およびフューエルキャップ55は開放される。こうして良好な意匠性が確保されると同時に給油にあたって良好な作業性は実現される。
【0078】
しかも、フューエルリッド48とフューエルキャップ55とはリンク部材66で連結されることから、フューエルキャップ55が閉じ位置に至るとフューエルリッド48は開口47を閉鎖する。フューエルリッド48の閉鎖に応じてフューエルキャップ55は閉じ位置に位置決めされることができる。フューエルキャップ55が給油口44aに装着されなければ、フューエルリッド48は開口47を閉鎖しない。こうしてフューエルリッド48の観察に応じてフューエルキャップ55の装着は簡単に確認される。フューエルキャップ55の閉じ忘れは防止されることができる。
【0079】
本実施形態に係るスクーター11では、フューエルリッド48は、フューエルキャップ55の軸線56から相違して軸線56に平行に延びる回転軸線62回りで回転する。フューエルリッド48は、フューエルキャップ55の揺動角と相違する角度で回転軸線55回りに回転する。フューエルリッド48の回転角はフューエルキャップ55の揺動角に依存せずに設定されることができる。その結果、フューエルリッド48の外観はさらに自由にデザインされることができる。スクーター11の意匠性はさらに高められることができる。
【0080】
フューエルリッド48の組み付けにあたってフューエルリッド48はヒンジアーム63に支持される。したがって、ヒンジアーム63が車体カバー13の内側に配置された後に、車体カバー13の外側からヒンジアーム63にフューエルリッド48は固着されることができる。予めフューエルリッド48がフューエルキャップ55に連結されてから車体カバー13の内側に組み付けられる場合に比べて、フューエルリッド48の形状の自由度は広がる。こうしてフューエルリッド48の外観はさらに自由にデザインされることができる。スクーター11の意匠性はさらに高められることができる。
【0081】
フューエルキャップ55およびフューエルリッド48は、フューエルタンク44に装着されて給油口44a回りで広がるキャップベース57に支持される。キャップベース57はフューエルキャップ55、ヒンジアーム63およびリンク部材66をユニット化する。キャップベース57、フューエルキャップ55、ヒンジアーム63およびリンク部材66は予め組み立てられてフューエルタンク44に組み付けられることができる。したがって、組み付けの作業性は向上することができる。
【0082】
キャップベース57は、給油口44aの外縁から外側に一方向に離れるように広がって、フューエルキャップ55およびヒンジアーム63に連結される支持体57bを備える。このとき、リンク部材66は、給油口44aを挟んで支持体57bの反対側でフューエルキャップ55にヒンジアーム63を連結する。給油口44aに対してフューエルキャップ55およびフューエルリッド48の開き方向が一致することから、フューエルキャップ55、ヒンジアーム63およびリンク部材66で形成されるリンク機構61の構造は簡素化される。給油口44aの開放時に給油口44aに対してフューエルキャップ55およびフューエルリッド48は一方向に集中するので、給油口44aの他方向に十分に大きな空間が確保される。給油ガン122は車体カバー13の外側から容易に給油口44aにアプローチすることができる。
【0083】
本実施形態に係るリンク機構61は、フューエルキャップ55に結合されて、軸線56から第1距離DS1で離れて軸線56に平行な連結軸線64回りに回転自在にリンク部材66の一端を連結する第1リンク軸67と、ヒンジアーム63に結合されて、回転軸線62から第1距離DS1よりも大きい第2距離DS2で離れて回転軸線62に平行な連結軸線65回りで回転自在にリンク部材66の他端を連結する第2リンク軸69とを備える。フューエルキャップ55、ヒンジアーム63およびリンク部材66で構成されるリンク機構61ではフューエルキャップ55の回転角に対してヒンジアーム63の回転角は縮小される。こうしてフューエルキャップ55の開放角とフューエルリッド48の開放角とは相対的に調整されることができる。フューエルキャップ55からヒンジアーム63に効率的に力は伝達されることができる。
【0084】
本実施形態では、キャップベース57の支持体57bは給油口44aに対して車両前後方向で前方に配置される。その結果、車両後方から給油ガン122は簡単に給油口44aにアプローチすることができる。給油の作業性は向上する。
【0085】
スクーター11は、閉じ位置にフューエルキャップ55を拘束するロック機構101をさらに備える。フューエルリッド48とフューエルキャップ55とはリンク部材66で連結されることから、フューエルキャップ55の揺動が拘束されるだけで、フューエルキャップ55は閉じ位置に拘束され、フューエルリッド48は開口47を閉鎖する。フューエルキャップ55およびフューエルリッド48に個別にロック機構が設けられる場合に比べて、部品点数は削減される。フューエルキャップ55で拘束が解除されれば、フューエルキャップ55は閉じ位置から揺動することができるとともに、フューエルリッド48は開口47を開放する。良好な作業性は実現される。
【0086】
スクーター11は、フューエルキャップ55を開き方向に駆動する弾性力を発揮する捻りばね89をさらに備える。フューエルキャップ55がロック機構の拘束から解放されると、弾性力の働きでフューエルキャップ55は開き位置に向かって駆動され、フューエルリッド48は開き方向に駆動されて開口47を開放する。フューエルキャップ55およびフューエルリッド48はリンク部材66で連結されることから、フューエルキャップ55およびフューエルリッド48に共通の弾性部材でフューエルキャップ55およびフューエルリッド48は開き方向に駆動される。フューエルキャップ55およびフューエルリッド48に個別に弾性部材が設けられる場合に比べて、部品点数は削減される。
【0087】
本実施形態に係るロック機構101は、軸線56回りに回転自在にフューエルキャップ55を支持するキャップベース57に形成されてフューエルキャップ55の揺動を拘束する規制体111を備える。フューエルキャップ55と規制体111とは同一の部材に支持されるので、フューエルキャップ55と規制体111とが別個の部材に支持される場合に比べてフューエルキャップ55の拘束位置は良好に管理されることができる。給油口44aに対してフューエルキャップ55の気密性は良好に確保される。