(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】異種材料の欠陥の超音波検出及び特性評価プロセス
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20221125BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/04
(21)【出願番号】P 2021512253
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 FR2019052016
(87)【国際公開番号】W WO2020049247
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-29
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507030070
【氏名又は名称】エレクトリシテ ド フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】カッシス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ポール,ニコラ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207517(JP,A)
【文献】特表2015-522175(JP,A)
【文献】特表2017-535786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327520(US,A1)
【文献】カークレフ イーウェン他2名,フェーズドアレイ超音波探傷法の適用と展開 FMC/TFMの動向,非破壊検査,日本,2018年02月01日,Vol.67 No.2,p.83-88
【文献】Carcreff et al.,Improvement of the total focusing method using an inverse problem approach,IEEE Xplore,IEEE,2017年11月02日
【文献】Nicolas et al.,Ultrasound Array Probe: Signal Processing in Case of Structural Noise,Journal of Nondestructive Evaluation, Diagnostics and Prognostics of Engneering Systems,NOVEMBER 2020, Vol.3,American Society of Mechanical Engineers,2020年10月14日,p.041003-1~041003-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種材料における欠陥の超音波検出および特徴化の方法であって、
a)材料の表面での複数の
プローブ位置(z)の各々に対して、
前記材料の前記表面の前記
プローブ位置(z)に、複数のトランスデューサを有するマルチエレメントプローブを配置するステップであって、
順次、前記マルチエレメントプローブの複数の
異なるプローブ構成
の各々に対して、少なくとも1つの放射トランスデューサにより、超音波を放射し、少なくとも1つの受信トランスデューサは、
前記少なくとも1つの放射トランスデューサにより放射され、前記材料内を伝播し、
前記少なくとも1つの受信トランスデューサにより受信される、前記超音波の大きさを表す測定信号を取得し、
前記測定信号は、前記材料の前記表面でのこのプローブ構成におけるこの位置(z)での時間の関数であり、
前記異なる
プローブ構成は、
前記少なくとも1つの放射トランスデューサにより、前記超音
波の放射に印加される異なる遅延により、または前記異なる
プローブ構成における、
放射トランスデューサもしくは
受信トランスデューサとして作用する異なるトランスデューサにより、相互に異なる、ステップと、
b)
各プローブ位置(z)に対して、前記材料のプローブ点(w)に対応する画素を有する画像を形成するステップであって、
前記プローブ点(w)に対応する画素の画素値I(z,w)は、前記マルチエレメントプローブの前記プローブ位置(z)で前記マルチエレメントプローブの前記異なるプローブ構成に対する前記測定信号を相互にグループ化する、測定データセットにおける焦点化アルゴリズムを実施することにより、前記プローブ位置(z)での前記異なるプローブ構成に対して、前記受信された波の大きさに基づいて計算される、ステップと、
c)各プローブ点(w)に対して、
異なるプローブ位置(z)に対して形成された複数の画像において、前記プローブ点(w)を含む少なくとも一つのプローブ点に対応する画素の画素値の合計、平均または中央値に基づいて、指標A(w)が計算される、ステップと、
d)各プローブ点(w)に対して、
前記指標A(w)を用いて、異なるプローブ位置(z)におけるこのプローブ点(w)での画素値の変化を表す関数B(w)
が計算されるステップと、
e)補正された画像を得るため、
前記複数の画像の各々に対して、前記画素値I(z,w)から指標A(w)を差し引き、前記変化を表す関数B(w)で除算することにより、各プローブ点(w)での
前記画素値を補正するステップと、
f)前記補正された画像に基づいて、前記材料内の欠陥を検出し、特徴付けるステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記異なる
プローブ構成は、該異なる
プローブ構成において
放射トランスデューサまたは受信
トランスデューサとして作用する異なるトランスデューサにより、相互に異なり、
前記焦点化アルゴリズムは、全体の焦点化アルゴリズムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異なる構成は、前記
放射トランスデューサにより前記超音波の放射に印加されるトランスデューサ同士の間の異なる一時的なオフセットにより相互に異なり、
前記焦点化アルゴリズムは、平面波イメージングである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記指標A(w)は、以下の式を有し、
【数26】
ここで、N
sは、考慮された異なるプローブ位置(z)の画像の数であり、N
sは、2より大きく、V
wは、
前記点wの周りの点のセットであり、I(z
i,w
j)は、点w
jの前記プローブ位置z
iにおける前記
画素値である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
【数27】
であり、ここで、N
vは、点のセットV
wの基数である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記指標A(w)は、以下の一般式
【数28】
を有
し、
ここで、N
sは、考慮された異なるプローブ位置(z)の画像の数であり、Nsは、2よりも大きく、Vwは、点wの周りの点のセットであり、I(z
i、w
j)は、プローブ点w
jのプローブ位置z
iでの
画素値であり、N
vは、点のセットV
wの基数である、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記関数B(w)は、以下の一般式
【数29】
を有し、
ここで、α’、β’、γ’は、ゼロではなく、N
s’は、異なるプローブ位置zの画像の数であり、Vw’は、点wの周りの点のセットで
ある、請求項
4または
6に記載の方法。
【請求項8】
・α’=2、γ’=0.5であり、またはα’=1、γ’=1であり、
・
【数30】
であり、ここで、N
s’は、異なるプローブ位置zの画像の数であり、N
s’は、2より大きく、N
v’は、点wの周りの点のセットV
w’の基数である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記関数B(w)は、以下の一般式
【数31】
を有し、
ここで、N
sは、異なるプローブ位置(z)の画像の数であり、V
wは、前記プローブ点wの周りの点のセットであり
、N
vは、点のセットV
wの基数であ
る、請求項
4または
6に記載の方法。
【請求項10】
前記欠陥の検出は、
バイラテラルフィルタにより、少なくとも1つの補正画像の空間フィルタリングを行うステップと、
閾値と比較するステップと、
を有する、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の方法の前記ステップb)からf)までを実行するコンピュータプログラム製品であって、
コンピュータにより読み取り可能な、非一時的な有形のコンピュータ可読媒体に記録されたプログラムコード命令を有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的な技術分野及び発明の背景
本発明は、材料の非破壊検査、より具体的には、異種材料の欠陥の超音波による検出及び特徴付けに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、一般的に材料の非破壊検査を実行するために使用される。これを行うために、超音波トランスデューサが検査対象の材料の表面に配置されて使用され、材料内で超音波を放出する。これらの波は材料内を伝播し、その構造に従って材料によって反射される。トランスデューサはこれらの反射波を受け取り、それらの分析により、材料の欠陥を検出することができる。
【0003】
しかしながら、不均一材料、すなわち、この材料の超音波波長のオーダーの粒子サイズを有する多結晶材料の場合、構造材料による超音波の散乱現象が支配的になる。この拡散により、構造ノイズが発生する可能性がある。すなわち、トランスデューサによって受信され、欠陥によって反射された波によって放出されたものと同様の特性を示す、かなりの振幅の超音波信号であり、したがって、材料に実際に存在する欠陥を検出する能力の低下につながる。
【0004】
確かに、構造ノイズが有用な信号を構成する断層の特徴と同様の時間的及びスペクトル的特性を持っている限り、時間的又は周波数フィルタリング、デコンボリューション、又はウェーブレットベースへの投影による超音波信号の処理に対する従来のアプローチは、効果がないことが証明されている。
【0005】
特許出願US2007/0006651 A1は、選択した信号の周波数スペクトルの振幅と基準振幅との比較に基づいて、超音波による非破壊検査の方法を説明している。この出願は、異なる位置で測定を実行する可能性に言及し、空間的な意味での平均測定信号を取得するためのこれらの測定の組み合わせに言及している。しかし、そのような方法は完全に満足のいくものではなく、信号はノイズによって損なわれたままである。
【0006】
特許出願WO2016083759は、以下のステップを含む、異種材料の超音波欠陥を検出及び特徴付けるための方法を記載している。:
- 材料に対して配置された超音波送信機トランスデューサからの超音波放射、
- 超音波受信トランスデューサの位置の時間の関数として材料内を伝播する超音波の振幅を表す複数の時間信号の、前記材料に対して異なる位置での超音波受信トランスデューサによる取得、
- 超音波受信機トランスデューサの異なる位置に対応する時間信号の空間平均パワーを表す時間関数の決定、一般式:
【数1】
である時間信号の空間平均パワーを表す時間関数、ここで、α、β、及びγがゼロとは異なる、x(z、t)は、超音波受信トランスデューサの位置zの時間の関数として、材料内を伝搬する音の振幅を表す時間信号、及びm(t)時間の関数、
- 正規化された時間信号を得るための前記時間関数による時間信号の正規化、
- 前記正規化された時間信号からの材料欠陥の検出及び特徴付け。
【0007】
したがって、特許出願WO2016083759は、超音波受信トランスデューサの異なる位置に対応する時間信号の空間的に平均的なパワーを表す時間関数を利用する前処理を記載している。このような前処理により、処理された信号を均質化することで材料の欠陥の検出と特性評価を改善できるため、さまざまな測定場所でノイズ統計が類似し、異常な信号レベルの検出が容易になる。ただし、測定ノイズは依然として存在し、欠陥を検出して特性を評価する機能を制限する場合がある。
【0008】
実際、この方法は、送信機又は受信機として動作する複数のトランスデューサを含むマルチエレメントプローブ(sonde multi-element)のすべての容量を利用するわけではない。実際、このようなマルチエレメントプローブによる測定信号の取得は、測定信号に追加の特性を生じさせ、これを利用して、材料の欠陥の検出及び特性評価をさらに改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の提示
本発明の目的は、収集されたデータを汚染する構造的ノイズの影響を低減することを可能にする、異種材料の欠陥の超音波検出のための方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、以下のステップを含む、異種材料の欠陥の超音波による検出及び特徴付けのための方法が提案されている。:
a)材料の表面上の複数の位置のそれぞれについて;
- 複数のトランスデューサを含むマルチエレメントプローブが、材料の表面上の位置に配置されている;
- 複数のマルチエレメントプローブ構成の場合、超音波は少なくとも1つの放出トランスデューサによって放出され、少なくとも1つの受信トランスデューサは、この位置でのこのプローブ構成の時間の関数として、材料内を伝播する超音波の振幅を表す測定信号を取得し、異なる構成は、トランスデューサによって、又は異なるトランスデューサによって実行されるエミッタ又はレシーバ機能によって超音波の放出に適用される異なる遅延によって互いに区別される、
b)マルチエレメントプローブの各位置のマルチエレメントプローブの異なる構成の測定信号をグループ化する一連の測定データに焦点を合わせるためのアルゴリズムの実装、及び画像の各ピクセルが、異なるプローブ位置上の前記プローブされたポイント(point)の集束振幅に関連付けられている材料のプローブされたポイントを表す、画像の各プローブ位置について取得すること、
c)各プローブポイントについて、異なるプローブ位置のプローブポイントでの集束振幅の中心傾向測定の決定、
d)各プローブポイントについて、異なるプローブ位置でこのプローブポイントのレベルに焦点を合わせた振幅の変動性を表す関数の決定、
e)各画像について、修正された画像を取得するため、振幅から中心傾向の測定値を差し引き、変動性を表す関数で除算することにより、プローブされた各ポイントに焦点を合わせた振幅の補正、
f)補正された画像からの材料欠陥の検出と特性評価。
【0011】
本発明は、単独で、又はそれらの技術的に可能な組み合わせのいずれかで、以下の特徴によって有利に完成される。
- 異なる構成は、異なるトランスデューサによって実行されるエミッタ又はレシーバ機能によって互いに区別され、フォーカシングアルゴリズムは全点フォーカシングアルゴリズムである;
- 異なる構成は、トランスデューサによる超音波の放出に適用されるトランスデューサ間の異なる時間シフトによって互いに区別され、集束アルゴリズムは平面波イメージングである;
- 中心傾向の測定は平均又は中央値である;
- 中心傾向の測定は、一般式の平均A(w)である:
【数2】
ここで、N
s考慮されたさまざまなプローブ位置の画像の数、N
sが2より大きい場合、V
wは、ポイントwに縮小することができるポイントwの周りのポイントのセットであり、I(z
i,w
j)はポイントw
jのプローブ位置z
iでの集束振幅の振幅又は絶対値であり、より好ましくは、β=1/N
s 又はβ=1/N
s 1/N
v 又はβ=1、N
vはポイントのセットV
wの基数(carinal)である;
- 中心傾向の測定は、一般式の平均A(w)である:
【数3】
ここで、N
s 考慮される異なるプローブ位置の画像の数、N
sは2より大きい、V
w ポイントwに縮小できるポイントwの周りのポイントのセット、I(z
i,w
j)はプローブされたポイントW
jのプローブ位置Z
iでの振幅であり、ポイントのセットV
wの基数はN
vである;
- 異なるプローブ位置でのこのプローブされたポイントwの振幅の変動性を表す関数B(w)は、次の一般式を持つ、
【数4】
ここで、α‘(∝’)、β’、及びγ‘がゼロとは異なり、N
sは異なるプローブ位置からの画像の数、V
w’はポイントwの周りのポイントのセットであり、ポイントwに縮小できる、A(w) 中心傾向の測定、及び好ましくは、:
・ A(w)が平均であるか、A(w)がポイントのセットV
wの中央値である、
・ α‘=2且つγ’=0.5、又はα‘=1且つγ’=1、及び
・ ここで、N
sは考慮される位置の数z、N
sは2より大きい、N
vはポイントwの周りのポイントの集合V
wの基数;
・
【数5】
ここで、N
s‘は考慮されるz位置の数、N
s’は2より大きい、N
v‘はポイントwの周りのポイントの集合V
w’の基数;
- 異なるプローブ位置でプローブされたこのポイントでの振幅の変動性を表す関数B(w)は、一般式である。
【数6】
ここで、N
s さまざまなプローブ位置からの画像の数、V
w プローブされたポイントwの周りのポイントのセットであり、プローブされたポイントwに縮小することができる、I(z
j,w
j)は、プローブされたポイントw
jのプローブ位置z
iに焦点を合わせた振幅である、N
v V
wの基数、及びA(w) 異なるプローブ位置のプローブポイントでの集束振幅の中心傾向の測定;
- 欠陥の検出は、バイラテラルフィルタによって補正された少なくとも1つの画像の空間フィルタリングのステップ、及び閾値との比較のステップを含む。
【0012】
本発明はまた、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるときに本発明による方法を実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。好ましくは、コンピュータプログラム製品は、媒体がコンピュータによって読み取られるときに本発明による方法を実行するためのプログラムコード命令が格納されている、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体の形態をとる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図の提示
本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照して説明される、好ましい実施形態に関する以下の説明のおかげで、よりよく理解されるであろう。ここで、
【
図1】
図1は、マルチエレメントプローブによるチューブの検査を示している。
【
図2】
図2は、本発明の可能な実施形態による方法のステップを概略的に示す図である。
【
図3a】
図3aは、本発明によって提案された補正の実施前の、異種材料上の全てのポイント(tout point)での集束方法の実施から得られた画像の例である。
図3aにおいて、Profondeur(unite arbitraries) 深さ(任意単位)縦軸;Abscisse (unites arbitraires) 横座標(任意単位);
【
図3b】
図3bは、
図3aの画像に対して提案された補正の実施によって補正された画像の例である。
図3bにおいて、Profondeur(unite arbitraries) 深さ(任意単位)縦軸;Abscisse (unites arbitraires) 横座標(任意単位);
【
図3c】
図3cは、
図3bの補正された画像に対するバイラテラルフィルタによる空間フィルタリングから得られたフィルタリングされた画像の例である。
図3cにおいて、Profondeur(unite arbitraries) 深さ(任意単位)縦軸;Abscisse (unites arbitraires) 横座標(任意単位);
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
説明のために、以下の説明は、超音波トランスデューサによるチューブの非破壊検査の文脈で行われrる。チューブなどの構造物は、他の構造物の内部に配置されたチューブなど、産業のコンテキストで高いアクセシビリティ制約を使用して検査する必要があることがよくある。したがって、チューブは内側又は外側からしか検査できないのが一般的であり、その結果、チューブの厚さ全体を片側から検査する必要がある。検査は片側からしか行えないため、検査する深さが増し、構造物のノイズの影響も大きくる。
【0015】
トランスデューサの測定値のこのような取得は、特に、英語の「time of flight diffraction(飛行時間回折)」の頭字語TOFDでよく知られている、いわゆる回折移動時間測定技術の実装のために一般的に実行され、その同じ取得プロトコルを本発明のために実施することができる。
【0016】
チューブの一般的な材料は、例えばインコネル、つまり主にニッケル、クロム、鉄をベースとし、銅、マンガン、モリブデン、及びオプションで一般的に少量の他の成分を含む合金である。これは、非破壊検査で使用される超音波の波長に匹敵するサイズの粒子を構造に持つ不均一な材料である。例として、非破壊検査で一般的に使用される超音波の周波数は、0.1乃至50MHzの範囲であり、2乃至10MHzの帯域が最も使用される。したがって、この帯域の波長は、鋼やアルミニウムなどの金属の場合、実際には3mmから0.5mmの間である。このプロセスは必ずしも異種材料に限定されるわけではないが、そこでは有利な用途が見出されることに留意されたい。
【0017】
この方法の第1のステップ(ステップS1)は、マルチエレメントプローブ1のいくつかの位置でのいくつかのプローブ構成について、時間の関数として材料内を伝播する超音波の振幅を表す測定信号を一緒にグループ化する測定データのセットを取得することからなる。
【0018】
図1を参照すると、取得は、複数のトランスデューサ14、15を含むマルチエレメントプローブ1によって実行される。プローブ1は、この管10の内壁11の反対側の位置zに配置されている。管10には欠陥13があり、ここではノッチの形で示されている。
【0019】
簡単にするために、ここでは2つのトランスデューサ14、15のみを示している。実際には、トランスデューサ14、15はより多く、対象となる用途及び検査される表面に応じて変化する空間分布を有する。空間分布は、例えば、最も一般的なマトリックス、環状、又は棒を形成するもの、又は特定のパターンを有することができる。複数のトランスデューサ14、15は、送信波を所望の方向及び深さに集束させる能力を提供する。したがって、複数のプローブされたポイントwを検査することが可能である。トランスデューサ14、15の空間分布は、検査される表面に一致するために、平坦でない場合がある。トランスデューサ14、15と材料との間の超音波の伝播を促進するために、サボ(sabot)又はカップリングゲルの層などのカップリング媒体を使用するのが一般的である。
【0020】
マルチエレメントプローブ1は、検査される材料の表面を横断し、したがって、材料の表面上の複数のz位置を横断する。例えば、マルチエレメントプローブ1は、らせん状に管10の内面11を移動することができる。管10の表面11上のマルチエレメントプローブ1の位置zは、例えば、深さp及び角度8によって表すことができ、位置zは、例えば、高度が1ミリメートル未満、角度が数度(通常は2度未満)の間隔で配置される。検査する表面のコンフォメーションに応じて、z位置を表す他の方法を使用できる。したがって、平面の場合、位置は角度ではなく横座標で表すことができる。
【0021】
マルチエレメントプローブ1の位置zでの超音波発射中に、1つ又は複数の送信機変換器14は、その内壁11で管10に入り、次いでレシーバと呼ばれる別のトランスデューサ15によって受信される前に(ステップS12)、前記管10の材料内を伝播する超音波を放出する(ステップS11)。材料内の超音波の伝搬を説明するために、
図1では、受信トランスデューサ15の方向に欠陥13によって回折される超音波の短い経路を構成する第1の経路16が示されている。第2の経路17は、超音波の長い経路を構成し、超音波は、管10の外壁12によって欠陥13の方向に反射され、次いで、受信機変換器15に合流する。
【0022】
マルチエレメントプローブ1の各位置zにおいて、測定信号は、マルチエレメントプローブ1の異なる構成に従って取得される。これらの異なる構成は、例えば、トランスデューサ14、15のそれぞれによって果たされる役割によって、それらの間で異なり得る。実際、トランスファ14、15は、好ましくは、送信機の役割又は受信機の役割を交互に果たすことができる。したがって、マルチエレメントプローブ1の同じ位置zでの反復中に、トランスデューサ14、15は、送信機であり得、そして別の反復中に受信機になることができる。
【0023】
プローブzの各位置の各構成の測定信号をグループ化した一連の測定データを取得する。より正確には、プローブzの位置ごとに、取得マトリックスは、トランスデューサiが超音波を放出するときにトランスデューサjが受信した瞬間nTe(Teはサンプリング周期)での測定信号xの振幅にそれぞれ対応する係数x(z、n、i、j)で取得される。
【0024】
次に、画像の各ピクセルが、異なるプローブ位置z上の前記プローブされたポイントwの集束振幅に関連付けられている材料のプローブされたポイントwを表す、画像を取得するために(ステップS2)、データセットに焦点を当てる方法を実装する。且つこれは、時間又はマルチエレメントプローブ1の構成の関数ではない(つまり、どのトランスデューサ14、15がエミッタi又はレシーバjとして機能するかに関係なく)。プローブされたポイントwは、材料内の位置であり、例えば、2つ又は3つの空間座標を有するベクトルとして表すことができ、通常、マルチエレメントプローブ1の位置zにリンクされた座標系で表される。
【0025】
一般的なフォーカシング方法は、「Total Focusing Method(トータルフォーカシング方法)」の頭字語TFMで一般的に呼ばれる全点フォーカシング方法である。このアプローチでは、異なる構成は、異なるトランスデューサ14、15によって実行されるエミッタ又はレシーバ機能によって互いに区別される。例えば、第1の構成では、第1のトランスデューサ14(又はトランスデューサの第1のセット14)は、超音波を放出するためにパルス電気信号で個別にエネルギーを与えられる。これらの超音波は材料内を伝播し、次にすべてのトランスデューサ14、15(又はトランスデューサ15の第2のセット)によって取得される。次に、同じプローブ位置zで、別のトランスデューサ14(又は別の第1のトランスデューサのセット14)が、パルス電気信号で個別に励起されて、超音波を放出する。この超音波は材料を通って伝播し、次にすべてのトランスデューサ14、15(又は別の第2のトランスデューサのセット15)によって取得される。好ましくは、トランスデューサ14、15のそれぞれは、z位置で少なくとも1つのプローブ構成で超音波を放出する。典型的には、トランスデューサ14、15のそれぞれは、順番に単一の送信トランスデューサであり、一方、トランスデューサ14、15のすべては、超音波を取得する。その場合、トランスデューサ14、15と同じ数の構成がある。
【0026】
係数x(z、n、i、j)の取得行列から、信号の集束振幅の計算は、次の式で要約できる。
【数7】
ここで、Mは、マルチエレメントプローブ1のトランスデューサ14、15の数であり、且つh(w、i、j)は、これらの波を放出する変換器iとそれらを受信する変換器jとの間の超音波の経路を表す関数であり、プローブされたポイントwを通過する。h(w,i,j)は、例えば、超音波について推定された移動時間(サンプル数で表される)に対応する。:
- トランスデューサiによって放出され、
- プローブされたポイントwにある欠陥のポイントによって反映され、
- トランスデューサjによって取得される。
【0027】
例えば、送信する変換器14と受信する変換器15との間で、
図1の短い経路16を通る超音波の推定移動時間であり得る。
【0028】
h(w,i,j)は、超音波の推定移動時間にも対応する。:
- トランスデューサiによって放出され、
- マルチエレメントプローブ1が配置されている表面の反対側の、材料の底壁によって反射され、
- プローブされたポイントwに位置する欠陥のポイントによって反射され、及び
- トランスデューサjによって拾われる。
例えば、これは、送信するトランスデューサ14と受信するトランスデューサ15との間の
図1の長い経路17を通る超音波の推定移動時間であり得、これは、管の外壁12によって反射される。このタイプの経路は、むしろ、管10の外壁12に開口する欠陥に使用される。
【0029】
これらの移動時間は、超音波の周波数と検査対象の材料の性質、及び伝搬のタイプ(横波又は縦波)に依存する超音波の速度から推定できる。伝搬モードの変換は、さまざまな反射の際にも考慮することができる。
【0030】
関数gは、例えば、プローブされたポイントwの位置又は波の伝播速度に依存することができる関数である。関数gは、絶対値関数又は分析信号係数にすることもできる。当業者は、例えば、任意の時点で異なる集束方法を提示する文書を参照することができる。例えば、2017年4月のUduardo R. lopez Villaverdeの物理学の博士論文「すべてのポイントに焦点を当てることによる複雑な材料の超音波イメージング: 時間反転の演算子の分解に基づく画像のノイズ除去方法の開発」は、任意の時点での特定の焦点合わせ方法の最新技術について説明している。
【0031】
最も単純なケースでは、プローブ位置zのプローブポイントwでの信号の集束振幅は次のように記述できる。
【数8】
又は
【数9】
したがって、画像は、画像の各ピクセルが、集束振幅I(z,w)に関連付けられている材料のプローブされたポイントwを表す各位置zについて得られる。
【0032】
別の集束方法は平面波イメージング法であり、しばしば英語で「Plane Wave Imaging(平面波イメージング)」のPWIと呼ばれる。このアプローチでは、トランスデューサ14、15の送信機によって超音波の放出に適用される異なる遅延によって、異なる構成が互いに区別される。PWI法は、すべてのトランスデューサ14、15を1つのシーケンシャルな方法で励起することにより平面波の放出に依存する。これにより、入射フィールドの振幅を目的の方向に向けて増加させることができる。入射平面波は、トランスデューサ14、15間の時間シフトでトランスデューサ14、15の全部又は一部を励起することによって形成される。トランスデューサからの送信間の時間シフトを変更することにより、平面波伝搬角度θkが変更される。異なる構成は、異なる時間オフセットによって得られる異なる伝搬角度θkを使用する。つまり、超音波の放出に適用される異なる遅延である。次に、トランスデューサ14、15はそれぞれ、材料内を伝播する超音波の振幅を表す測定信号を取得する。各超音波ショットで受信された測定信号は、すべての検査ポイントでの受信に焦点が合わせられる。
【0033】
トランスデューサ14、15は、材料内に平面波を放出するように時間シフトを伴う超音波を放出するという事実のために、この平面波は、トランスデューサ間の時間シフトに依存する伝搬角度を有する。トランスデューサ14、15の間でこの時間シフトを変えることにより、平面波は異なる伝搬角度で放出され得る。
【0034】
係数x(z、n、θ
k、j)の取得行列から、信号の集束振幅の計算は次の式で要約できる。:
【数10】
ここで、Mは、マルチエレメントプローブ1のトランスデューサ14、15の数であり、θ
kは、放出された平面波の伝搬(又は入射)の角度であり、N
θは伝搬角度の数であり、したがって異なるタイムラグの数であり、h(w,θ
k,j)は、伝搬角θ
kの平面波の、それを受信するトランスデューサjへの、プローブされたポイントwを通過する経路を表す関数である。h(w、θ
k、j)は、例えば、次のように推定された移動時間(サンプル数で表される)に対応する。
- トランスデューサ14、15から角度θ
kで放出される平面波、
- プローブされたポイントwにある欠陥のポイントによって反映され、
- トランスデューサjによって取得される(欠陥とトランスデューサjとの間の波はもはや平坦ではないことに注意)。
【0035】
以前のように、移動時間は、超音波の周波数と検査される材料の性質、及び伝搬のタイプ(横波又は縦波)に依存する超音波の速度から推定することができる。同様に、関数gは、例えば、プローブされたポイントwの位置又は波の伝播速度に依存し得る関数である。
【0036】
最も単純なケースでは、プローブ位置のプローブポイントwでの信号の集束振幅を次のように書くことができる。
【数11】
【数12】
【0037】
どのアプローチを選択しても、次に、画像は、各プローブ位置zについて利用可能であり、画像の各ピクセルは、異なるプローブ位置z上の前記プローブポイントwの集束振幅に関連付けられている材料のプローブポイントwを表す。
【0038】
画像は2次元(wが次元2の場合)又は3次元(wが次元3の場合)である可能性があることに注意。次に、この集束振幅I(z,w)によって取得された値に基づいて、典型的には、この焦点の合った振幅の、絶対値|I(z,w)|から、欠陥の検出と特性評価が実行される。明確化及び単純化の目的で、以下の集束振幅I(z,w)への言及は、前記集束振幅I(z、w)又はその絶対値|I(z,w)|を無差別に示す。
【0039】
TFMから得られた画像で観察された構造ノイズは、空間的な不均一性を示す。: 構造ノイズの重要性は、プローブされたポイントwの位置によって異なる。特に、トランスデューサ14、15の近くで高くなる傾向がある。したがって、欠陥の検出と特性評価を改善するために、均質化してから構造ノイズを低減することを目的として、得られた画像の後処理を実行することが提案されている。
【0040】
提案された後処理は、材料内の同じプローブポイントwに関する情報が、異なる位置zに関連する異なる画像に表示されるため、同じプローブポイントwで利用可能なデータの多様性から引き出された統計の使用に基づいている。
【0041】
次のステップ(ステップS3)は、マルチエレメントプローブ1の異なるz位置上の各プローブされたポイントwについて、プローブされたポイントwのレベルでの集束振幅I(z,w)のA(w)で示される中心傾向測定値(une mesure)を決定することからなる。典型的には、中心傾向A(w)の測定(le mesure)は、平均又は中央値である。好ましくは、中心傾向の測定(le mesure)は、一般式の平均A(w)である。:
【数13】
ここで、N
s 考慮された異なるプローブ位置からの多数の画像、N
sが2より大きい、V
w プローブされたポイントwの周りのポイントのセットで、プローブされたポイントwに減らすことができる、I(z
i、w
j)は、焦点を合わせた振幅、又はプローブされたポイントw
jの位置z
iでの振幅の絶対値である。例えば、
【数14】
ここで、N
vはポイントのセットV
wの基数(cardinal)である。
【0042】
ポイントのセットVwは、プローブされたポイントwを含み、好ましくは、プローブされたポイントwを中心とする。そのサイズは、構造ノイズの特性と使用する画像に応じて選択される。例えば、考慮される異なるプローブ位置zの画像Nの数が少ないので、ポイントのセットVwをさらに多く選択することができる。実際、プローブされたポイントwの近傍を考慮に入れると、十分なポイントの中心傾向の測定値を計算できるため、この中心傾向の測定値のより良い推定値を取得できる。ただし、ポイントのセットVwは、中心傾向の測定の局所的な側面を維持するために、プローブされたポイントwの周りに、つまり、そのすぐ近くにある、100点未満をグループ化することが好ましい。逆に、考慮される異なるプローブ位置の画像Nsの数が十分に大きい場合、それらがプローブされたポイントwのみに対応するまで(この場合、Nvは1に等しい)、ポイントのセットVwを減らすことができる。
【0043】
好ましくは、
【数15】
且つ使用される集束振幅の絶対値であり、次のようになる:
【数16】
次のステップ(ステップS4)は、各プローブされたポイントwについて、マルチエレメントプローブ1の異なる位置z上のこのプローブされたポイントwのレベルに焦点を合わせた振幅の変動性を表す関数B(w)を決定することからなる。関数B(w)は、典型的には、次の一般式である。:
【数17】
ここで、α‘、β’及びγ‘ ゼロ以外である、N
s’ 異なるプローブ位置zの多数の画像、V
w’ プローブされたポイントwの周りのポイントのセットであり、プローブされたポイントwに減らすことができる、N
v V
w‘の基数。好ましくは、ここでのI(z,w)は、集束された振幅の絶対値を示す。
【0044】
ポイントのセットVw’については、関数A(w)を決定するために使用されるポイントのセットVwと同じ考慮事項が適用される。関数B(w)を決定するのに役立つポイントの集合Vw‘が、関数A(w)を決定するのに役立つポイントの集合Vwとは異なる可能性があることに留意されたい。一貫性の理由から、同じポイントのセットを取ることが好ましく、したがって、Vw’=Vw及びNv‘=Nvであることが好ましい。
【0045】
好ましくは、:
・ α‘=2且つγ’=0.5、又はα‘=1且つγ’=1、及び
・
【数18】
N
s’ 考慮される位置zの数、N
s’は2より大きく、N
vはプローブされたポイントwの周りのポイントのセットV
wの基数である。
好ましくは、:
【数19】
【0046】
集束振幅J(z,w)の中心傾向A(w)の測定値と、集束振幅J(z,w)の変動性を表す関数B(w)が決定されると、次のことが可能になる。考慮されたプローブされたポイントwに関連する振幅を各画像で修正する(ステップS5)。この補正は、焦点振幅J(z,w)から中心傾向A(w)の測定値を差し引き、変動性を表す関数B(w)で除算することによって行われる。次に、補正された振幅Ic(z,w)を取得する。
Ic(z,w)=(I(z,w)-A(w))/B(w)
好ましくは、使用されるのは、集束振幅の絶対値|I(z,w)|である。
【0047】
次に、修正された画像が取得され、これを使用して、材料の欠陥を検出及び特徴付けることができる(ステップS6)。提案された修正のおかげで、欠陥の検出が改善され、これらの特性が改善された。
【0048】
図3a及び3bは、マルチエレメントプローブ1の位置zに対するTFMからの画像の例に対する正規化の実施を示している。これらの画像は、深さ5mmにある直径0.5mmの欠陥13を示すモックアップの測定から取得される。縦軸は深さ(任意単位)、水平軸は横座標軸(任意単位)である。これらの図では、暗い色合いは低い値を示し、明るい色合いは高い値を示す。したがって、マルチエレメントプローブ1の単一の位置zに対応する単一の画像であるため、集束された振幅J(z,w)は、単にI(w)で表すことができる。同様に、補正された振幅はI
c(w)で表すことができる。次の例では、横軸aと深さpで識別されるプローブされたポイントwの位置から、焦点の合った振幅I(a、p)と補正された振幅Ic(a、p)を確認できる。
【0049】
したがって、
図3aは、補正を実施する前の画像の一例である。画像は、表面11に対応する画像の上部から、高い値(明るい色調)から低い値(暗い色調)への急速な勾配を示していることがわかる。画像を2つの部分に分割できるようにする。: 上部31は明るい色合いを示し、下部32は暗い色合いのみを示す。材料内の欠陥13の存在は、上部31の光ゾーン35によって具体化されるが、これは、この上部31の明るい色合いとほとんど異ならない。
【0050】
図3bは、提案された補正の実施後の
図3aの画像に対応する補正された画像の例である。
図3aの画像と比較すると、上部31はもはや上部32と区別できないことが分かる。陰影の勾配は実際には上部31から消えており、孤立した明るい領域と小さな領域が上部31と下部32の両方に現れており、したがってもはや暗い陰影だけを示していない。一方、欠陥13の存在に対応するクリアゾーン35は、上部で明確に区別されている。したがって、提案された修正により、上部31の欠陥の存在を強調することが可能になった。さらに、下部32の補正された振幅の修正は、この下部32に欠陥がないことを確実にすることを可能にした。実際、集束振幅が非常に低く、構造のノイズと区別されなかったという事実のために、下部32に起こり得る欠陥の存在は、
図3aの画像には現れなかったであろう。修正プロセスは、下部32に現れる孤立した明るい領域と小さな領域によって示されるように、考えられる欠陥を強調することを可能にしたであろう。
【0051】
派生信号でシグニチャを検出することにより、欠陥を検出して特徴づけることは依然として残っている。これに関して、欠陥の検出及び特徴付けは、好ましくは、画像に基づいて実行される。ノッチなどの欠陥は、数十ミリメートルに及ぶ可能性がある。したがって、この欠陥のレベルでの画像のポイントは、それらを囲むポイントよりも高い補正された振幅を示すだけでなく、それらの振幅は互いに相互に相関している。つまり、欠陥のレベルで空間的に隣接するいくつかの位置にコヒーレンスを示す。一方、画像に欠陥の兆候がなく、ノイズのみの場合、画像はいずれのポイントの周囲ではるかに低い相互相関を示す。したがって、各ノッチは、横座標及び/又はそれが表示される深さに沿った画像上の空間的持続性によって識別できる。
【0052】
したがって、この空間コヒーレンスは、空間的にあまり相関していないノイズを損なう欠陥を表す有用な信号を強調するために利用される。したがって、この空間相関を利用する空間フィルタリングは、それを空間的にフィルタリングするために補正された画像に空間フィルタを適用することによって、補正された画像に実装することができる。空間フィルタは、補正された画像の補正された振幅をもたらす欠陥の特徴のレベルを維持しながら、その振幅の分布の空間標準偏差によって特徴付けられる構造ノイズの変動を減衰させるのに役立つように設計されている。
【0053】
フィルタは、時間的考慮を含まないため、空間的であると言われ、補正された画像は、時間的変動なしに、空間的に変動する補正された振幅を示す。空間フィルタは、横座標成分aに適用される1次元フィルタにすることができ、つまり、深さpごとに、補正された振幅Ic(a)がフィルタリングされ、及び/又は深さ成分p上で、すなわち、各横座標aについて、補正された振幅Ic(p)がフィルタリングされる。
【0054】
空間フィルタはローパスフィルタにすることができる。空間ローパスフィルタの空間カットオフ周波数は、この最小サイズΔLminの逆数として、検出しようとする欠陥の最小サイズΔLminの関数として選択できる。したがって、少なくとも10mmの欠陥を検出するために、空間カットオフ周波数は100m-1未満になるように選択される。空間フィルタは典型的には、バターワースフィルタである。
【0055】
空間フィルタは、補正された画像に適用される2次元ローパス空間フィルタにすることもできる。2次元の周波数応答は、1次元の空間フィルタと同様に、求める欠陥の最小サイズの関数として選択できる。空間フィルタは、引き続き中央値フィルタにすることができる。
【0056】
空間フィルタとしてバイラテラルフィルタを使用することもできる。これにより、隣接するピクセルのフォーカスされた振幅値が近い場合にのみ平均化することができる。これにより、可能性のある欠陥の平均振幅を減少させることなくノイズを平滑化することが可能になり、画像のコントラストが向上し、可能性のある欠陥が強調表示される。提案された補正の実装は、補正された画像全体のノイズの変動性を均一化することを可能にするので、特に有利である。
【0057】
図3cは、
図3bの補正された画像に対するバイラテラルフィルタによる空間フィルタリングから得られたフィルタリングされた画像の例である。欠陥13の存在に対応する明るいゾーン35が、フィルタリングされた補正された画像に存在する唯一の情報であり、すべてのノイズが空間フィルタリングによって除去されていることが分かる。このようにフィルタリングされた補正画像は、故障検出マップを取得することを可能にする。確かに、シグネチャは、特に周囲とは異なる補正された振幅によって補正された画像に表示され、それらを検出するだけでなく、それらを見つけることも可能にする。実際、補正された画像は空間表現であり、各ポイントはその深さと横座標によって配置される。
【0058】
簡単な検出方法は、特定のしきい値を使用することで構成される。: 補正された画像上の隣接するプローブポイントwのセットによるしきい値のオーバーシュートは、欠陥の存在を示す。もちろん、他のより複雑なメソッドを実装することもできる。
【0059】
説明されている方法は、典型的には、プロセッサとメモリを備えたコンピュータによって実装される。この目的のために、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、前述の請求項のいずれか1つに従って方法を実行するための有形の非一時的なコンピュータ可読媒体に記録されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0060】
本発明は、添付の図に記載及び示されている実施形態に限定されない。特に様々な要素の構成の観点から、又は、それによって本発明の保護の範囲から逸脱することなく、技術的同等物の代用によって変更はまだ可能である。
【0061】
請求項1
異種材料の超音波欠陥を検出及び特性評価する方法であって、以下のステップ:
a)材料の表面上の複数の位置(z)のそれぞれについて、
- 複数のトランスデューサ(14、15)を含むマルチエレメントプローブ(1)が、材料の表面(11)上の位置(z)に配置されている;
- マルチエレメントプローブ(1)の複数の構成の場合、超音波は、少なくとも1つの放出トランスデューサ(14)によって放出され(S11)、且つ、少なくとも1つの受信トランスデューサ(15)は、この位置(z)でのこのプローブ構成の時間の関数として、材料内を伝播する超音波の振幅を表す測定信号を取得する(S12)、異なる構成は、トランスデューサによる超音波の放出に適用される異なる遅延によって、又は、異なるトランスデューサ(14、15)によって実行されるエミッタもしくはレシーバ機能によって、互いに区別される、
b)マルチエレメントプローブ(1)の各位置(z)のマルチエレメントプローブ(1)の異なる構成の測定信号をグループ化する一連の測定データに焦点を合わせるためのアルゴリズムの実装、及び画像の各プローブ位置(z)を取得すること(S2)、ここで、画像の各ピクセルは、異なるプローブ位置(z)上の後記プローブポイント(w)の集束振幅に関連付けられている材料のプローブポイント(w)を表す、
c)各プローブポイント(w)について、異なるプローブ位置(z)上のプローブされたポイントに焦点を合わせた振幅の中心傾向測定の決定(S3)、
d)各プローブポイント(w)について、異なるプローブ位置(z)上のこのプローブポイント(w)のレベルに焦点を合わせた振幅の変動性を表す関数の決定(S4)、
e)各画像について、修正された画像を取得するため、振幅から中心傾向の測定値を差し引き、変動性を表す関数で除算することにより、各プローブポイント(w)に焦点を合わせた振幅の補正(S5)、
f)補正された画像からの材料欠陥の検出及び特性評価(S6)、
を含む方法。
請求項2
異なる構成は、異なるトランスデューサ(14、15)によって実行されるエミッタ又はレシーバ機能によって互いに区別され、且つフォーカシングアルゴリズムは、オールポイントフォーカシングアルゴリズムである、前述の請求項に記載の方法。
請求項3
前記異なる構成は、前記トランスデューサによる超音波の放出に適用されるトランスデューサ間の異なる時間シフトによって互いに区別され、且つ集束アルゴリズムは平面波イメージングである、請求項1に記載の方法。
請求項4
中心傾向の測定は平均又は中央値である、請求項1に記載の方法。
請求項5
中心傾向の測定は、一般式の平均A(w)である、
【数20】
ここで、N
s 考慮されたさまざまなプローブ位置の画像の数、N
sが2より大きい場合、V
wは、ポイントwに縮小することができるポイントwの周りのポイントのセットであり、I(z
i,w
j)は、ポイントw
jのプローブ位置z
iでの集束振幅の振幅又は絶対値である、請求項4に記載の方法。
請求項6
請求項5に記載の方法であって、ここで、
【数21】
ここで、N
vはポイントのセットV
wの基数である、方法。
請求項7
前記中心傾向の測定は、一般式の平均A(w)であり、
【数22】
ここで、考慮された異なるプローブ位置(z)の画像の数N
s、N
sが2より大きい場合、V
wはポイントwの周りのポイントのセットであり、ポイントwに減らすことができ、I(z
i、w
j)は、プローブされたポイントW
jのプローブ位置z
iでの振幅であり、且つN
vはポイントのセットV
wの基数である、前述の請求項の1つに記載の方法。
請求項8
異なるプローブ位置(z)でのこのプローブされたポイントwの振幅の変動性を表す関数B(w)は、一般式である、
【数23】
ここで、ゼロ以外のα‘、β’、γ‘、N
s’ 異なるプローブ位置zの多数の画像、V
w’ プローブされたポイントwの周りのポイントのセットであり、プローブされたポイントwに減らすことができる、N
v V
w‘の基数、及びA(w)中心傾向の測定、前述の請求項の1つに記載の方法。
請求項9
・ A(w)が平均であるか、A(w)がポイントのセットV
wの中央値であり、
・ α‘=2且つγ’=0.5、又はα‘=1且つγ’=1、及び
・
【数24】
ここで、N
s’ 考慮される位置zの数、N
s’は2より大きく、且つN
vはプローブされたポイントwの周りのポイントのセットV
wの基数である、前述の請求項に記載の方法。
請求項10
異なるプローブ位置(z)上のこのプローブされたポイント(w)のレベルでの振幅の変動性を表す関数B(w)は一般式である、
【数25】
ここで、N
s 異なるプローブ位置(z)からの画像の数、V
w プローブされたポイントwの周りのポイントのセットで、プローブされたポイントwに減らすことができる、I(z
i、w
j)は、プローブされたポイントW
jのプローブ位置z
iに焦点を合わせた振幅である、N
v V
wの基数、A(w) 異なるプローブ位置(z)上のプローブされたポイントでの集束振幅の中心傾向の測定、前述の請求項の1つに記載の方法。
請求項11
欠陥の検出は、バイラテラルフィルタによって補正された少なくとも1つの画像の空間フィルタリングのステップ、及び閾値との比較のステップを含む、前述の請求項の1つに記載の方法。
請求項12
コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、前述の請求項のいずれか1つに記載の方法のステップb)からf)の実行のために、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体に記録されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品。
【符号の説明】
【0062】
1 マルチエレメントプローブ
10 管
11 管10の表面
12 外壁
13 欠陥
14、15 トランスデューサ
16 第1の経路
17 第2の経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【文献】US2007/0006651 A1
【文献】WO2016/083759 A1