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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】荷役作業作成装置及び荷役作業作成方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20221125BHJP
   B65G 1/14 20060101ALI20221125BHJP
   B65G 63/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G1/14 N
B65G63/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021512950
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038179
(87)【国際公開番号】W WO2021152920
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020012557
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593005644
【氏名又は名称】JFE物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富山 伸司
(72)【発明者】
【氏名】森 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】廣海 敬明
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕馬
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001558(JP,A)
【文献】特開2016-222455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
B65G 1/14
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品置場に現在保管中の製品の少なくとも保管位置を示す在庫情報を保存する在庫情報データベースと、
前記製品の出荷条件を示す出荷製品情報を保存する出荷製品情報データベースと、
前記製品置場の製品配置に関する制約条件を保存するマスタ情報データベースと、
前記製品置場に設置されている荷役設備の操業情報に基づいて、該荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えるか否かを判断する状況判断部と、
前記状況判断部が前記荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えると判断した場合、前記在庫情報データベース、前記出荷製品情報データベース、及び前記マスタ情報データベースに保存されている情報を用いて、実行する製品整理の荷役作業の内容を決定する製品整理作業決定部と、
前記荷役設備の制御系に対して、前記製品整理作業決定部が決定した製品整理の荷役作業の実行を指示する指示情報を出力する出力部と、
を備え、
前記製品整理作業決定部は、
製品置場内の各空き置場において製品が満たすべき制約条件を抽出する置場チェック部と、
前記各空き置場における製品の前記制約条件に対する余裕度を算出する製品チェック部と、
前記制約条件及び前記余裕度に基づいて各空き置場に製品を移動する移動作業を生成する作業生成部と、
を備え
前記制約条件が、段積みされる製品の寸法及び重量に関する条件を含み、前記作業生成部は、製品の移動先の空き置場を決定する際、高い位置にある空き置場を優先して選択する、荷役作業作成装置。
【請求項2】
前記余裕度は、前記制約条件において指定されている製品の寸法及び重量の上下限値と該製品の実際の寸法及び重量との差分値に応じた値である、請求項に記載の荷役作業作成装置。
【請求項3】
製品置場に設置されている荷役設備の操業情報に基づいて、該荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えるか否かを判断する状況判断ステップと、
前記状況判断ステップにおいて前記荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えると判断した場合、前記製品置場に現在保管中の製品の少なくとも保管位置を示す在庫情報を保存する在庫情報データベース、前記製品の出荷条件を示す出荷製品情報を保存する出荷製品情報データベース、及び前記製品置場の製品配置に関する制約条件を保存するマスタ情報データベースに保存されている情報を用いて、実行する製品整理の荷役作業の内容を決定する製品整理作業決定ステップと、
前記荷役設備の制御系に対して、前記製品整理作業決定ステップにおいて決定した製品整理の荷役作業の実行を指示する指示情報を出力する出力ステップと、
を含み、
前記製品整理作業決定ステップは、
製品置場内の各空き置場において製品が満たすべき制約条件を抽出する置場チェックステップと、
前記各空き置場における製品の前記制約条件に対する余裕度を算出する製品チェックステップと、
前記制約条件及び前記余裕度に基づいて各空き置場に製品を移動する移動作業を生成する作業生成ステップと、
を含み、
前記制約条件が、段積みされる製品の寸法及び重量に関する条件を含み、前記作業生成ステップは、製品の移動先の空き置場を決定する際、高い位置にある空き置場を優先して選択するステップを含む、荷役作業作成方法。
【請求項4】
前記余裕度は、前記制約条件において指定されている製品の寸法及び重量の上下限値と該製品の実際の寸法及び重量との差分値に応じた値である、請求項に記載の荷役作業作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品置場内の製品の荷役作業を作成する荷役作業作成装置及び荷役作業作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等の工場で製造された製品(例えば鉄鋼製品)は、多くの場合、工場の敷地内もしくは物流センター内の製品置場に一旦保管された後、客先に向けて搬送、出荷される。一般に、製品の製造時における製造ロットは、工場内の生産工程において製造し易い単位に製品をまとめたものである。これに対し、製品の出荷時における物流ロットは、納品相手である客先(すなわち納品先)の場所を基準として製品をまとめたものである。故に、製品の製造ロットと物流ロットとは互いに異なる場合が多く、たとえ同じ製造ロットの製品同士であっても、これら製品同士の各物流ロットが同じになるとは限らない。従って、製造ロット毎の各製品を物流ロット毎に分類し管理するロット調整を行うためのバッファとして、製品置場が必要になる。
【0003】
上述したような製品置場では、製品を段積みして保管することが多い。これは、製品の段積みによって、製品置場における製品の保管容量が増大し、製品置場の敷地面積やクレーン等の荷役設備を有効に活用できるからである。しかしながら、製品置場内に製品を段積みして保管した場合、製品のサイズや特性(変形のしやすさ)等によって、上に積まれる製品に制約がつくことが多い。具体的には、サイズが小さい製品の上にその製品よりかなり大きいサイズの製品を置くと、バランスが悪くなるため製品が落下したり製品山が崩れたりする危険性が高まる。
【0004】
このような理由から積まれる製品は制約を守ったものでなければならない。制約がつくため、製品の積み方によって製品置場全体に入れることのできる製品量(保管容量)が大きく変わる。製品置場に入ってくる製品の量と出ていく製品の量は時間によって変化するため、その変化をうまく吸収できるように製品置場の保管容量は大きい方が望ましい。例えば悪天候によって船出荷ができなくなると、製品置場から出荷製品を出すことができなくなるため、製品置場の在庫量が急増する。もし保管容量が小さいと、工場から製品置場に製品を送り出すことができなくなり、工場の生産を停止させなければならないような状況になる場合がある。
【0005】
製品置場内に保管する製品の段積み(山積み)に関する従来技術として、製品のサイズ、山繰りスペースの使用可否、製品の輸送形態、及びクレーンの作業性等を考慮し、予め設定した山入れの優先順に従ってクレーンによる製品の降ろし先を決定する技術がある。具体的には、特許文献1には、製品置場に入ってきた製品をどこに置くかということを各種情報に基づいて決定する方法が記載されている。詳しくは、特許文献1に記載の方法は、サイズ等の情報から置場列を決定し、上段から順に置場を検索し、上段の置場の制約条件を満たすかどうかを確認して置場を決定する。上段から順に置場を検索する理由は、できるだけ製品を段積みして製品置場全体での保管容量を大きくするためである。また、特許文献2には、コイル製品を出庫するために荷揃え場に製品をクレーンで移動する作業を最適化し、どのコイルをどの順番で荷揃え場のどの位置に移動するかを決定する方法が記載されている。また、特許文献2には、複数のコイル移動作業組の候補に対してシミュレーションを実施して最適な作業順を選択する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-179512号公報
【文献】特開平11-278616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法は、製品が製品置場に入ってきたタイミングでの置場決定に関するものである。しかしながら、製品置場に置かれている製品はしばらくすると製品置場から搬出され、製品置場から製品が搬出される度に製品置場全体での製品山の状態は変化する。このため、製品置場に製品が入ってきたタイミングに限らず、適切なタイミングで製品置場内の配替を行って製品配置を変更した方が、製品置場の保管能力をより安定的に高い状態に保つことができる。但し、製品配置を変更するためには、複数の移動製品候補と複数の移動先置場候補を決定する必要があるため、特許文献1に記載の方法よりも複雑な問題を解く必要があるが、特許文献1にはこの課題を考慮した記述はない。また、製品置場には時々刻々製品の出入りがあるため、厳密な製品置場配置の最適化を目指すことは現実的ではなく、できるだけ荷役設備のハンドリング回数を増やさずに、製品置場の保管能力を高める製品配置にすることが望まれる。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法は、出庫製品の効率的な搬出を目的とするものであり、製品倉庫に多くの製品を格納できるようにするための直接的な効果はない。また、特許文献2に記載の方法は、特許文献1に記載の方法と同様、製品置場における時々刻々の製品出入りを考慮していないため、シミュレーション途中に置場配置が変わってしまい当初予定した通りの作業順で実行できないことが発生しやすい。また、シミュレーション計算を実機に実装することが必要になるため、プログラム開発が複雑になってしまうというデメリットもある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、製品置場の保管容量を高めることが可能な荷役作業作成装置及び荷役作業作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る荷役作業作成装置は、製品置場に現在保管中の製品の少なくとも保管位置を示す在庫情報を保存する在庫情報データベースと、前記製品の出荷条件を示す出荷製品情報を保存する出荷製品情報データベースと、前記製品置場の製品配置に関する制約条件を保存するマスタ情報データベースと、前記製品置場に設置されている荷役設備の操業情報に基づいて、該荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えるか否かを判断する状況判断部と、前記状況判断部が前記荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えると判断した場合、前記在庫情報データベース、前記出荷製品情報データベース、及び前記マスタ情報データベースに保存されている情報を用いて、実行する製品整理の荷役作業の内容を決定する製品整理作業決定部と、前記荷役設備の制御系に対して、前記製品整理作業決定部が決定した製品整理の荷役作業の実行を指示する指示情報を出力する出力部と、を備え、前記製品整理作業決定部は、製品置場内の各空き置場において製品が満たすべき制約条件を抽出する置場チェック部と、前記各空き置場における製品の前記制約条件に対する余裕度を算出する製品チェック部と、前記制約条件及び前記余裕度に基づいて各空き置場に製品を移動する移動作業を生成する作業生成部と、を備える。
【0011】
前記制約条件が、段積みされる製品の寸法及び重量に関する条件を含み、前記作業生成部は、製品の移動先の空き置場を決定する際、高い位置にある空き置場を優先して選択するとよい。
【0012】
前記余裕度は、前記制約条件において指定されている製品の寸法及び重量の上下限値と該製品の実際の寸法及び重量との差分値に応じた値であるとよい。
【0013】
本発明に係る荷役作業作成方法は、製品置場に設置されている荷役設備の操業情報に基づいて、該荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えるか否かを判断する状況判断ステップと、前記状況判断ステップにおいて前記荷役設備に対して製品整理の荷役作業を与えると判断した場合、前記製品置場に現在保管中の製品の少なくとも保管位置を示す在庫情報を保存する在庫情報データベース、前記製品の出荷条件を示す出荷製品情報を保存する出荷製品情報データベース、及び前記製品置場の製品配置に関する制約条件を保存するマスタ情報データベースに保存されている情報を用いて、実行する製品整理の荷役作業の内容を決定する製品整理作業決定ステップと、前記荷役設備の制御系に対して、前記製品整理作業決定ステップにおいて決定した製品整理の荷役作業の実行を指示する指示情報を出力する出力ステップと、を含み、前記製品整理作業決定ステップは、製品置場内の各空き置場において製品が満たすべき制約条件を抽出する置場チェックステップと、前記各空き置場における製品の前記制約条件に対する余裕度を算出する製品チェックステップと、前記制約条件及び前記余裕度に基づいて各空き置場に製品を移動する移動作業を生成する作業生成ステップと、を含む。
【0014】
前記制約条件が、段積みされる製品の寸法及び重量に関する条件を含み、前記作業生成ステップは、製品の移動先の空き置場を決定する際、高い位置にある空き置場を優先して選択するステップを含むとよい。
【0015】
前記余裕度は、前記制約条件において指定されている製品の寸法及び重量の上下限値と該製品の実際の寸法及び重量との差分値に応じた値であるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る荷役作業作成装置及び荷役作業作成方法によれば、製品置場の保管容量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態である倉庫の構成を示す模式図である。
図3図3は、倉庫内における製品の保管状態の一例を示す図である。
図4図4は、在庫情報の一例を示す図である。
図5図5は、出荷製品情報の一例を示す図である。
図6図6は、制約条件の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施形態である荷役作業作成方法の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、本発明を適用した場合及び本発明を適用していない場合における、倉庫内製品で段積みが行われている製品置場エリアの割合を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置の構成及び動作について詳細に説明する。
【0019】
〔荷役作業作成装置の構成〕
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置1は、コンピュータ等の情報処理装置によって構成され、複数の倉庫2の各々における製品の荷役作業(倉庫2内の製品の搬送作業)を作成する。本実施形態では、荷役作業作成装置1は、倉庫2内の天井クレーン21の操業状況に基づいて天井クレーン21に対して製品整理の荷役作業を与えるか否かを判断する状況判断部11と、複数の倉庫2に関する情報を格納するデータ格納部12と、天井クレーン21に対して製品整理の荷役作業を与えることが決定した場合に、荷役作業の作成に必要な各種処理を実行する製品整理作業決定部13と、作成した荷役作業を複数の倉庫2及び天井クレーン21の各々に指示する情報を出力する出力部14と、を備えている。
【0021】
状況判断部11は、複数の倉庫2の各々から天井クレーン21の作業状況の情報を収集し、作業状況が予め設定された設定条件を満足する場合、天井クレーン21に対して製品整理のための作業を生成するように製品整理作業決定部13を起動する。設定条件としては以下のようなものを例示できる。設定条件(a),(b)は例えば天井クレーン21の作業計画から確認することができ、設定条件(c)は倉庫2の在庫情報から確認することができる。
【0022】
(a)現在荷役作業中でなく、予約されている入出庫作業もない
(b)出荷製品を揃える作業の最中でなく、予約されている出荷製品揃え作業もない
(c)倉庫内の出荷日が近い製品数が設定数より少ない
【0023】
例えば設定条件(a)~(c)が全て満たされた場合、状況判断部11は、天井クレーン21が製品整理の荷役作業をできる状況であると判断することができる。上記の設定条件(a)~(c)では、すぐにやるべき荷役作業がなく、出荷製品が製品山の下に埋もれていたりしていないため、倉庫にできるだけたくさんの製品が入るような製品整理作業を実行できる状況になっている。
【0024】
データ格納部12は、不揮発性の記憶装置によって構成され、複数の倉庫2の各々における製品保管に関する各種情報を更新可能に格納している。データ格納部12は、各倉庫のクレーン制御用計算機22から順次送信された倉庫操業実績情報を受信し、その都度、受信した倉庫操業実績情報を最新の情報として格納する。この際、データ格納部12は、既に格納している倉庫操業実績情報を、最新の倉庫操業実績情報に更新する。なお、倉庫操業実績情報は、各倉庫2における製品の入出庫等の操業実績を示す情報であり、各倉庫2の在庫情報及び出荷製品情報を含む。
【0025】
本実施形態では、データ格納部12は、在庫情報データベース(在庫情報DB)12a、出荷製品情報データベース(出荷製品情報DB)12b、及びマスタ情報データベース(マスタ情報DB)12cを備えている。
【0026】
在庫情報DB12aは、複数の倉庫2からの倉庫操業実績情報のうち、在庫情報を更新可能に保存する。本実施形態において、在庫情報は、荷役作業作成装置1が制御対象とする倉庫(以下、対象倉庫という)を含む複数の倉庫2の各々に現在保管中の製品の少なくとも保管位置を示す情報である。具体的には、在庫情報は、複数の倉庫2の各々に現在保管中の製品の情報として、製品を識別する製品番号等の製品識別情報、製品の保管位置を識別する位置情報、製品のサイズや重量等の仕様を示す製品仕様情報等を含む。在庫情報DB12aは、複数の倉庫2の各クレーン制御用計算機22から送信された倉庫操業実績情報のうちの在庫情報を取得し、その都度、取得した在庫情報を、各倉庫(対象倉庫を含む)の最新の情報として保存する。この際、在庫情報DB12aは、対象倉庫の在庫情報を、この対象倉庫から取得した最新の在庫情報に更新する。在庫情報の具体例については、図4を参照して後述する。
【0027】
出荷製品情報DB12bは、複数の倉庫2からの倉庫操業実績情報のうち、出荷製品情報を更新可能に保存する。本実施形態において、出荷製品情報は、対象倉庫を含む複数の倉庫2の各々に現在保管中の製品の出荷条件を示す情報である。具体的には、出荷製品情報は、複数の倉庫2の各々に現在保管中の製品の出荷条件として、製品番号等の製品識別情報、製品の出荷スケジュールを示す情報、出荷時における製品の物流ロットを示す情報、製品の出荷先(納品先)を識別する情報等を含む。まだ出荷予定(製品を積み込む船や積込作業の日時等)が決まっていない製品については、出荷スケジュールを示す情報は空白になっている。出荷製品情報DB12bは、複数の倉庫2の各クレーン制御用計算機22から送信された倉庫操業実績情報のうちの出荷製品情報を取得し、その都度、取得した出荷製品情報を、各倉庫2(対象倉庫を含む)の最新の情報として保存する。この際、出荷製品情報DB12bは、対象倉庫の出荷製品情報を、この対象倉庫から取得した最新の出荷製品情報に更新する。出荷製品情報の具体例については、図5を参照して後述する。
【0028】
マスタ情報DB12cは、各倉庫2内の製品配置もしくは荷役作業作成装置1に関連する制約条件を更新可能に保存する。本実施形態において、制約条件としては、複数の倉庫2内に保管可能な製品のサイズや重量等の条件や、状況判断部11が製品整理作業を実行するか否かを決定するために参照する条件等がある。マスタ情報DB12cは、各制約条件を入力デバイスから入力された情報を参照する等して取得し、取得した制約条件を保存する。また、マスタ情報DB12cは、入力デバイス経由で更新指示情報が入力された場合、その都度、取得した更新指示情報に基づいて制約条件を最新のものに更新する。制約条件の具体例については、図6を参照して後述する。
【0029】
製品整理作業決定部13は、複数の倉庫2のうちの制御対象である対象倉庫について、製品整理のための荷役作業を決定するための各種処理を実行する。本実施形態において、製品整理作業決定部13は、置場チェック部13a、製品チェック部13b、及び作業生成部13cを備えている。
【0030】
置場チェック部13aは、対象倉庫内の空いている置場の1つを指定した際に、その置場に置く製品の満たすべき条件を抽出する。抽出条件としては、箱状の製品なら長さ、幅、高さ、重量等に関する条件となり、コイル状の製品なら幅、外径、重量等に関する条件となる。一般に、倉庫内での製品は段積みされることが多く、下に置かれている製品の性質によって置場の制約条件は変化する。例えば、下に変形しやすい製品が置かれている場合には、その製品の上には別の製品を置けなくなったりする。また、一般的に下に置かれている製品よりも幅、長さ、重量がずっと大きい製品は上に置けないことが多い。さらに、コイル状の製品を山積みする倉庫において、隣に置かれたコイルの外径が大きい場合に、コイルが下のコイルと触れずに置かれた状態になる。これは「浮きコイル」と呼ばれ、製品が不安定に蔵置される状態になっているため安全上問題があり避けなければならない。また、出荷日が近い製品が置かれている場合、その製品の上に出荷スケジュールが立てられていない(出荷日が先の)製品を乗せることは、出荷作業効率を低下させないため禁じることがある。以上のように、指定置場について置く製品の条件を抽出するのが置場チェック部13aになる。
【0031】
製品チェック部13bは、1つの置場が指定された際に、指定された置場に関する制約について倉庫2内の各製品の状況チェックを行うものである。チェック内容については以下のものを例示できる。
【0032】
(a)対象製品が指定置場に置ける制約を満たしているか否かのチェック
(b)対象製品が指定置場に置ける制約について、どの程度余裕があるか(余裕を持って制約を満たしているか)のチェック
【0033】
上記チェック内容(b)については、例えば対象製品コイルの幅、長さ、及び重量が指定置場の幅、長さ、及び重量に関する上限値からどの程度離れているかということを意味しており、例えば重量が上限値と一致していれば重量制約に関する余裕は0ということになる。
【0034】
作業生成部13cは、複数の空いている置場のうちの1つの置場を選択・指定し、置場チェック部13aを起動して対象置場の制約を抽出し、さらに、製品チェック部13bを起動して各在庫製品について指定置場の制約に対する余裕情報を取得する。作業生成部13cは、この処理を複数の空いている各置場に対して実行し、得られた制約に対する余裕情報に基づいて、最終的に移動させる製品と移動先の空き置場を決定する。選択・指定対象になる空き置場の候補としては、例えばできるだけ高い位置にある置場を指定すると、製品山の高さを高くすることができるので倉庫に多くの製品を入れやすくなる。そして、その高い位置の指定置場より低い位置に置かれている製品を移動製品の候補として選択する(但し、指定置場の下に置かれている製品は移動製品候補の対象外になる)。指定置場に移動する候補に選択された製品のうち、指定置場の制約に対する余裕ができるだけ小さい製品を指定置場に移動する製品として選択すると、倉庫に多くの製品が入れやすくなると考えられる。制約に対する余裕が大きい場合、一般に製品サイズが小さいということになり、その上に製品が載せにくくなるためである。
【0035】
出力部14は、複数の倉庫2のうちの対象倉庫について実行が決定された荷役作業の指示情報を出力する。具体的には、出力部14は、対象倉庫の荷役設備の制御系に対し、製品整理作業決定部13にて実行が決定された荷役作業を指示する指示情報(以下、荷役作業指示情報と呼ぶ)を出力する。なお、対象倉庫の荷役設備としては、天井クレーン21を例示できる。また、荷役設備の制御系としては、クレーン制御用計算機22を例示できる。
【0036】
〔倉庫の構成〕
次に、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置1によって操業が制御される複数の倉庫2の構成について説明する。図1に示す複数の倉庫2は、製鉄所等の工場又は物流センターの敷地内に設置されている。複数の倉庫2の各々は、製鉄所等の工場で製造された各製品(具体的には鉄鋼製品)を保管して、製造ロット毎に分類される各製品を物流ロット毎に分類し管理するロット調整を行うためのバッファとしての役割を担う。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態である倉庫の構成を示す模式図である。図2には、複数の倉庫2のうちの1棟の倉庫2を上方から見た図が示されている。なお、倉庫2のクレーン制御用計算機22は、図1に示し、図2において図示を省略している。図3は、倉庫2内における製品の保管状態の一例を示す図である。図3には、倉庫2内に段積みされた製品を側方から見た図が示されている。
【0038】
以下、図1~3を参照しつつ、倉庫2の構成について説明する。なお、複数ある倉庫2はいずれも同様の構成であるとし、本実施形態において倉庫2内に保管される製品は、鋼板等の金属板をコイル状に巻いた状態の鉄鋼製品(以下、コイルと呼ぶ)であるとする。
【0039】
図1~3に示すように、倉庫2は、製品Cの荷役作業を行う天井クレーン21と、天井クレーン21の制御等を行うクレーン制御用計算機22と、保管対象の製品Cを段積み等して載置する架台23と、を備えている。また、倉庫2には、車両等を用いて製品Cの搬入又は搬出が行われる車両搬入出間口24と、車両搬入出間口24以外で製品Cの出し入れが行われる場外仮置場25と、が設けられている。
【0040】
天井クレーン21は、倉庫2において製品Cの入出庫作業等の荷役作業を行う主たる荷役設備の一例である。本実施形態において、天井クレーン21は、クレーン部21a及び走行部21bを備えている。クレーン部21a及び走行部21bは、製品Cの吊り上げ及び吊り下ろし等の製品Cの荷役作業に必要な各種動作を、クレーン制御用計算機22の制御に基づいて自動で行う装置である。クレーン部21aは、走行部21bに設けられ、倉庫2の長手方向、すなわち横行方向D1に沿って移動可能に構成されている。走行部21bは、架台23の長手方向に平行な方向が長手となる構造を有し、倉庫2の上部に設置される。走行部21bは、横行方向D1に垂直な方向、すなわち走行方向D2に沿って走行可能に構成され、走行によりクレーン部21aを走行方向D2の所望の位置に移送する。このような構成を有する天井クレーン21は、クレーン制御用計算機22の制御に基づく無人運転(自動運転)により、クレーン部21aの横行方向D1の移動及び走行部21bの走行方向D2の移動を行う。また、天井クレーン21は、クレーン制御用計算機22の制御に基づく無人運転により、倉庫2内の搬送元(移動元ともいう)の位置から目的とする搬送先(移動先ともいう)の位置へのクレーン部21aによる製品Cの吊り上げ搬送を行う。
【0041】
クレーン制御用計算機22は、製品Cの入出庫のために必要となる荷役作業、出荷製品を取り出しやすくするための配置換え用の荷役作業、もしくは上述した荷役作業作成装置1の出力部14から出力された指示情報に対応する制御信号を天井クレーン21に送信する。これにより、クレーン制御用計算機22は、上述した天井クレーン21の各動作を自動制御する。なお、前述の入出庫のために必要となる荷役作業、出荷製品を取り出しやすくするための配置換え用の荷役作業の指示情報を生成するのは、クレーン制御用計算機22でもよいし、外部の別の計算機でもよい(前述の荷役作業作成装置1の別の計算機プログラムが生成してもよい)。クレーン制御用計算機22は、具体的には、出力部14から製品整理用の荷役作業指示情報を取得した場合、この荷役作業指示情報によって指示される荷役作業を、倉庫2内の対象製品に対して行うように天井クレーン21を制御する。これらの作業の際、クレーン制御用計算機22は、出力部14からの荷役作業指示情報によって、対象製品、現在の搬送元の位置、及び目的とする搬送先の位置が指示される。そして、クレーン制御用計算機22は、指示された現在の搬送元の位置から目的とする搬送先の位置へ対象製品を移動させるように天井クレーン21を制御する。
【0042】
また、クレーン制御用計算機22は、倉庫2の操業実績を管理する機能を有している。具体的には、クレーン制御用計算機22は、倉庫2に保管する製品Cの情報を工場側の管理コンピュータ(図示せず)等から取得する。クレーン制御用計算機22は、取得した情報を、倉庫2における製品の保管や入出庫等の操業に対応して更新し、この更新後の情報を、倉庫の操業実績を示す情報、すなわち倉庫操業実績情報として管理する。この倉庫操業実績情報には、倉庫2内に現在保管中の製品に関する各種情報、具体的には、上述した在庫情報及び出荷製品情報の各種最新情報が含まれる。クレーン制御用計算機22は、このような倉庫操業実績情報を、所定のタイミング毎に荷役作業作成装置1のデータ格納部12に送信する。また、クレーン制御用計算機22は、倉庫操業状況情報を、所定のタイミング毎に荷役作業作成装置1に送信する。なお、上術した倉庫操業実績情報及び倉庫操業状況情報を送信する所定のタイミングとして、例えば、荷役作業作成装置1から情報送信の要求があった時点、天井クレーン21が起動した時点、天井クレーン21が1サイクル分のクレーン作業(製品の荷役作業)を完了した時点、及び天井クレーン21が作業完了してから所定の時間が計画した時点等のタイミングが挙げられる。
【0043】
架台23は、倉庫2内の1列を設置単位とし、倉庫2内に保管する製品Cの許容数や許容サイズ等を考慮して複数列(本例では60列)設置されている。複数列の架台23の各々は、保管対象の製品Cが着脱可能に載置される固定台23aを備えている。固定台23aは、架台23毎に架台23の長手方向である列方向(すなわち倉庫2の列方向)に沿って複数(例えば30個)設置されている。このような複数の固定台23aを備える複数列の架台23の各々において、保管対象の製品Cは固定台23aの上に配置され、必要に応じて、複数の製品Cが固定台23aの上に段積みされる。
【0044】
本実施形態において、倉庫2内に保管された状態の製品Cの位置(保管位置)は、各架台23の列番号L(=1,2,・・・,n-1,n)、番地A(=1,2,・・・,m)、及び段番号i(=1,2,3)の組み合わせによって識別される。列番号Lは、倉庫2内における架台23の列位置を識別する情報であり、複数列の架台23の各々に割り振られる。番地Aは、架台23毎の固定台23aの位置を識別する情報であり、架台23毎の複数の固定台23aの各々に割り振られる。段番号iは、架台23に段積みされる製品Cの配置段を識別する情報である。段番号iは、固定台23a上に直に載置された製品Cを最下段(i=1)として固定台23a側から上方に向かい1段ずつ増加するように、架台23毎に割り振られる。すなわち、固定台23a上に直に載置された製品C上の配置段は段番号i=2によって識別され、さらにその1段上の配置段は段番号i=3によって識別される。但し、倉庫2内の各架台23及び各固定台23aには、列番号L及び番地Aによって載置可能な製品のサイズ(幅、外径等)や品種に制限がある。また、段積みについては前述の通り上下の製品についての制約条件がある。
【0045】
車両搬入出間口24は、倉庫2において、製品Cを運搬する台車、すなわちパレット26が出入りする領域である。具体的には、工場から倉庫2へ製品Cが運搬される際、工場で製品Cを積み込んだ状態のパレット26は、運搬車(図示せず)の牽引により、工場から倉庫2に向けて移動し、車両搬入出間口24内に搬入される。このパレット26上の製品Cは、天井クレーン21により、車両搬入出間口24から架台23の固定台23a又は既に保管中である製品Cの上に積み込まれる。このようにして、倉庫2内に製品Cが入庫されて保管される。
【0046】
一方、倉庫2から出荷バース(岸壁)へ製品が運搬される際、車両搬入出間口24に空のパレット26が搬入され、あるいは、倉庫2への製品Cの入庫作業が完了した後のパレット26が車両搬入出間口4内に待機する。倉庫2から出荷バースへの運搬対象の製品Cは、天井クレーン21により車両搬入出間口24内の空のパレット26上に積み込まれる。この製品Cを積み込んだ状態のパレット26は、運搬車の牽引により、車両搬入出間口24から搬出され、その後、倉庫2から出荷バースに向けて移動する。このようにして、倉庫2内から製品Cが出庫され、出庫された製品Cが船積み等されて客先へ出荷される。
【0047】
なお、上述したパレット26を牽引する運搬車は、パレット26から製品を下す際又はパレット26へ製品を積み込む際、別のパレット26を牽引することができる。このような運搬車は、多くの場合、パレット26と分離可能な構造となっている。例えば製品Cが重量物である場合、パレット1台分の製品の荷役作業に長い時間がかかるため、運搬車は、車両搬入出間口にパレット26を搬出した後、このパレット26から分離して別の運搬作業を行う。この期間、車両搬入出間口24において、パレット26に対し製品Cの荷役作業が行われる。
【0048】
場外仮置場25は、上述した車両搬入出間口24以外で製品Cの出し入れが可能な倉庫2の領域である。本実施形態において、場外仮置場25には、倉庫2内に現在保管中の製品Cのうち、近い将来に出荷予定の製品(以下、出荷対象製品と呼ぶ)が、天井クレーン21により架台23上から搬送されて載置される。また、場外仮置場25には、例えばフォークリフト等のパレット以外の荷役設備が入れるようになっている。このような場外仮置場25に並べて配置された出荷対象製品(図2に示す場外仮置場上の製品)は、フォークリフト等の荷役設備により倉庫から運びだされて出荷バースに運搬される。その後、出荷バース内の出荷対象製品は、船積み等されて客先へ出荷される。
【0049】
〔在庫情報〕
次に、図4を参照して、在庫情報の具体例について説明する。
【0050】
図4は、在庫情報の一例を示す図である。本実施形態において、各倉庫2の在庫情報は、図1に示した荷役作業作成装置1の在庫情報DB12aにより、更新可能に保存され、最新情報として管理されている。在庫情報は、上述したように、対象倉庫を含む複数の倉庫2の各々に現在保管中の製品Cの少なくとも保管位置を示す情報である。具体的には、図4に示すように、在庫情報は、各製品Cの現時点における最新の保管位置を示す位置情報として、棟番号、列番号、番地、及び段番号を含む。棟番号は、複数の倉庫2のうちの1棟を識別する情報であり、複数の倉庫の各々に割り振られる。列番号は、上述した架台23の列位置を識別する列番号L(図2参照)であり、番地は、上述した架台23毎の固定台23aの位置を識別する番地A(図3参照)である。段番号は、上述した架台23上の製品Cの配置段を識別する段番号i(図3参照)である。これらの位置情報の組み合わせにより、製品Cを保管する倉庫2と、この倉庫2内における製品Cの保管位置とが識別可能になる。
【0051】
また、在庫情報は、上述した製品Cの保管位置を示す位置情報として、走行方向D2の絶対位置、横行方向D1の絶対位置、及び高さ方向の絶対位置を各々示す各情報を含む。走行方向D2の絶対位置は、図2に示した天井クレーン21の走行方向D2に沿った製品Cの絶対位置であり、上述した列番号Lによって識別される架台23の列位置に対応する。横行方向D1の絶対位置は、図2に示した天井クレーン21の横行方向D1に沿った製品Cの絶対位置であり、高さ方向の絶対位置は、架台23の上下方向(鉛直方向)に沿った製品Cの絶対位置である。これらの絶対位置は、自動クレーン操業によって天井クレーン21を自動制御する場合に、クレーン制御用計算機22が天井クレーン21に対して指示する製品Cの搬送元の位置情報として用いられる。
【0052】
さらに、在庫情報は、製品番号、製品外径、製品幅、製品厚、製品重量、納期、顧客ID、及び向け先IDの各情報を含む。製品番号は、上述した位置情報によって示される保管位置に現在保管されている製品Cを識別する製品識別情報である。製品外径、製品幅、及び製品重量は、この製品のサイズ(例えばコイルサイズ)や重量等の仕様を示す製品仕様情報である。納期は、この製品Cの出荷納期を示す情報である。顧客IDは、この製品Cを要求する顧客(客先)を識別する顧客識別情報である。向け先IDは、この製品Cの荷揚げ港を識別する出荷先識別情報である。
【0053】
〔出荷製品情報〕
次に、図5を参照して、出荷製品情報の具体例について説明する。
【0054】
図5は、出荷製品情報の一例を示す図である。本実施形態において、各倉庫2の出荷製品情報は、図1に示した荷役作業作成装置1の出荷製品情報DB12bにより、更新可能に保存され、最新情報として管理されている。出荷製品情報は、上述したように、対象倉庫を含む複数の倉庫2の各々に現在保管中の製品Cの出荷条件を示す情報である。具体的には、図5に示すように、出荷製品情報は、各製品の現時点における最新の出荷条件として、製品番号、棟番号、船積予定日時、出荷ロットID、船ID、顧客ID、出荷岸壁ID、及び向け先IDを含む。
【0055】
製品番号及び棟番号は、これらの製品番号及び棟番号を在庫情報と照合することにより、この在庫情報内の位置情報等の各種情報と対応づけられる。船積予定日時は、上述した製品識別情報としての製品番号によって識別される製品Cの出荷スケジュールを示す情報であり、詳細には、この製品Cが出荷の際に船積みされる予定日時を示すものである。出荷ロットIDは、この製品Cの出荷時における物流ロットを示す情報である。船IDは、この製品Cを積み込む船を識別する情報である。顧客IDは、この製品Cの顧客を識別する情報(顧客識別情報)である。出荷岸壁IDは、この製品Cを船積みする場所、すなわち出荷バースを識別する情報である。向け先IDは、この製品Cの出荷先を識別する情報(出荷先識別情報)である。倉庫2の中には納期が先で、また出荷スケジュールが決定していない製品もある。それらの製品については、例えば図5の製品No.「B0001」の製品のように未確定の項目が空白になっている。
【0056】
〔制約条件〕
次に、図6を参照して、制約条件の具体例について説明する。
【0057】
図6は、制約条件の一例を示す図である。本実施形態において、制約条件は、図1に示した荷役作業作成装置1のマスタ情報DB12cにより更新可能に保存され、最新情報として管理されている。制約条件は、上述したように、各倉庫2内に保管可能な製品サイズ等の条件である。具体的には、図6に示すように、制約条件は、製品Cの保管に関して倉庫2毎に制約される最新の条件として、棟番号、列番号、番地、最大外径、最小外径、最大幅、最小幅、及び最大段積数を含む。棟番号、列番号、及び番地は、上述した在庫情報に含まれるものと同様の情報である。制約条件は、これらの棟番号、列番号、及び番地を倉庫情報と照合することにより、この在庫情報内の位置情報等の各種情報と対応付けられる。最大外径は、上述した位置情報(具体的には棟番号、列番号、及び番地)により識別される保管位置毎に配置可能な製品Cの外径の上限値を示す。最小外径は、上記保管位置毎に配置可能な製品Cの外径の下限値を示す。最大幅は、上記保管位置毎に配置可能な製品Cの幅の上限値を示す。最小幅は、上記保管位置毎に配置可能な製品Cの幅の下限値を示す。最大段積み数は、上記保管位置毎に配置可能な製品Cの段積み数の上限値を示す。
【0058】
また、制約条件は、図3に示したような架台23上に製品Cを段積みする際の上下製品に関する制約をまとめたルール等の情報を含む。例えば、製品Cを段積みする場合、上に載せる製品Cは、前記の保管位置毎に指定されたサイズの上下限値を満たしていることに加えて、段積みした際に下になる製品のサイズや特性によって指定される制約を満たす必要がある。例えば「下になる製品の幅がW(cm)である場合、上に段積みする製品の幅がW-α(cm)以上、W+α(cm)以下(α、αは設定値で正の値)にならなければならない。」といった制約が追加される。この制約条件は下に置かれている製品Cの幅(W)によって変化する。同様に、下に置かれている製品Cの外径や重量に基づいて上に載せる製品Cの外径や重量に関する制約条件が設定される。製品Cが変形しやすい等の理由で「上に製品を段積みできない」という制約が付く場合もある。また、サイズの制約条件に加えて、「出荷が近い製品の上に他の製品を段積みする場合、上に載せる製品も出荷が近い製品でなければならない」といった制約が付くこともある。これらの制約は例えば不等式等を用いて記述、設定することができる。
【0059】
〔荷役作業作成方法〕
最後に、図7を参照して、本発明の一実施形態である荷役作業作成方法について説明する。図7は、本発明の一実施形態である荷役作業作成方法の流れを示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、荷役作業作成装置1が起動されたタイミングで開始となり、荷役作業作成方法はステップS1の処理に進む。この荷役作業作成方法において、荷役作業作成装置1は、図7に示す処理ステップを順次実行して、複数の倉庫2のうちの制御対象とする対象倉庫の荷役作業を作成する。なお、図7に示すフローチャートは、倉庫1棟分の処理であるが、荷役作業作成装置1はこの処理を複数棟に対して実行する。
【0060】
ステップS1の処理では、荷役作業作成装置1が、対象倉庫のクレーン制御用計算機22や生産計画作成用の計算機等から天井クレーン21の操業情報を収集する。なお、本実施形態では、後述するステップS7の処理において設定時間待機することによって天井クレーン21の操業情報を定期的に収集しているが、必ずしも操業情報を定期的に収集する必要はない。例えば天井クレーン21の作業が完了した時点で天井クレーン21から信号を伝送してもらって操業情報を収集するようにしてもよい。この場合、ステップS7の処理を省略することができる。これにより、ステップS1の処理は完了し、荷役作業作成方法はステップS2の処理に進む。
【0061】
ステップS2の処理では、状況判断部11が、ステップS1の処理において収集された天井クレーン21の操業情報に基づいて、製品整理作業を実行すべきであるか否かを判断する。判断基準の具体例としては、前述のように天井クレーン21が作業待ち状態になっている等が挙げられる。製品整理作業を実行すべきと判断した場合(ステップS2:Yes)、状況判断部11は、荷役作業作成方法をステップS3の処理に進める。一方、製品整理作業を実行すべきでない判断した場合には(ステップS2:No)、状況判断部11は、荷役作業作成方法をステップS7の処理に進める。
【0062】
ステップS3の処理では、置場チェック部13aが、対象倉庫の各空き置場の制約条件情報を収集する。制約条件情報としては、製品サイズに関する制約条件情報(例:巾、外径、厚み、重量の上下限値)、出荷予定日に関する制約条件情報(例:出荷予定日が指定日より早い等)、製品材質に関する制約条件情報(例:下に置かれている製品によって限定)等を例示できる。これにより、ステップS3の処理は完了し、荷役作業作成方法はステップS4の処理に進む。
【0063】
ステップS4の処理では、製品チェック部13bが、対象倉庫の空き置場に移動可能な(対象倉庫内にある)製品のリストを空き置場毎に生成する。この際、対象となる空き置場に移動可能な製品が複数存在する可能性はある。なお、リストの対象となる製品は、現時点で対象となる空き置場よりも低い段に置かれているものに限定される。この製品をより高い段の置場に移動することにより、対象倉庫に置ける製品数を増やしやすくなる。さらに、製品チェック部13bは、リストに上げられた各製品の制約余裕値ρを計算する。制約余裕値ρの計算式としては、例えば以下に示す数式(1)を例示できる。
【0064】
【数1】
【0065】
数式(1)において、X~Xは対象製品の各種情報m(=1~N)を示しており、例えば対象製品の外径、幅等の情報に該当する。また、pk,m()は、対象製品の各種情報m(=1~N)毎の空き置場kに対する制約余裕値を計算する関数であり、wは各関数に対する重み係数を示している。関数pk,m()の例としては、例えばXが対象製品の幅で1000mmという値をとり、空き置場kに載置可能な対象製品の幅の下限値が950mm、上限値が1200mmである場合を考える。この場合、対象製品の幅と下限値との差は50mm、対象製品の幅と上限値との差は200mmとなっているので、例えばこの小さい方の値50をpk,1(X)の値とするように関数pk,m()の計算方法を定義すればよい。また、対象製品の他の各種情報についての関数pk,2(X)~pk,N(X)についても同様に制約から余裕がないほど小さな値を取るように設定すればよい。これにより、ステップS4の処理は完了し、荷役作業作成方法はステップS5の処理に進む。
【0066】
ステップS5の処理では、まず、作業生成部13cが、空き置場の段数及び空き置場に移動することのできる製品数(ステップS5の処理において生成された製品リストの件数)に基づいて、対象製品の移動先となる空き置場を選択する。具体的には、一般に、段数が大きい製品置場ほど載せる製品に対する制約が厳しくなる傾向があり、また高い段に製品が載せられるほど倉庫全体に置くことのできる製品数が増える傾向があるので、作業生成部13cは、段数が最も大きい(高いところにある)空き置場を選択する。なお、選択された(同じ段数の)空き置場が複数ある場合、作業生成部13cは、その空き置場に移動可能な製品ができるだけ少ない空き置場を選択するとよい。
【0067】
次に、作業生成部13cは、選択した空き置場に移動する製品(移動製品)を決定する。具体的には、作業生成部13cは、上述した制約余裕値ρが最小となる製品を移動製品として選択する。なお、本実施形態では、制約余裕値をρという1つの値に集約しているが、制約余裕値を集約せずに移動製品を決定することもできる。例えば対象製品の各種情報Xの制約余裕値に優先度をつけて、優先度の高い制約余裕値に対する余裕度pk,m(X)が小さい製品を選択してもよい。そして、もし余裕度が同じである場合には、次に優先度が高い制約余裕値に対する余裕度を比較する。これにより、ステップS5の処理は完了し、荷役作業作成方法はステップS6の処理に進む。
【0068】
ステップS6の処理では、作業生成部13cは、ステップS5の処理において決定した空き置場とその空き置場に移動する製品の情報を出力部14に送信する。そして、出力部14は、天井クレーン21の作業指示をクレーン制御用計算機22に送信する。これにより、ステップS6の処理は完了し、荷役作業作成方法はステップS7の処理に進む。
【0069】
ステップS7の処理では、製品整理作業決定部13は、設定時間待機する。これにより、ステップS7の処理は完了し、荷役作業作成方法はステップS1の処理に戻る。
【0070】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である荷役作業作成装置1は、在庫情報DB12a、出荷製品情報DB12b、及びマスタ情報DB12cに保存されている情報を用いて、実行する製品整理の荷役作業の内容を決定する製品整理作業決定部13を備え、製品整理作業決定部13は、製品置場内の各空き置場において製品が満たすべき制約条件を抽出する置場チェック部13aと、各空き置場における製品の制約条件に対する余裕度を算出する製品チェック部13bと、制約条件及び余裕度に基づいて各空き置場に製品を移動する移動作業を生成する作業生成部13cと、を備えている。これにより、倉庫2の保管容量を高めることができる。また、生産ライン等から倉庫2への製品移動が滞ることなく実行され、物流効率が向上する。また、悪天候による船出荷停止等のトラブルによって、倉庫2からの製品搬出量が低減した際でも、倉庫2に空きがなくて生産ラインからの製品移動ができずに生産ラインが止まるようなトラブルを回避することができる。
【0071】
最後に、本発明を実機に適用した試験結果を示す。図8は、本発明を適用した場合及びしていない場合における倉庫内製品で段積みが行われている製品置場エリアの割合を比較した図である。なお、図8では、本発明を適用していない場合の段積み割合を1に設定している。図8に示すように、本発明を適用することにより、段積み置場の割合が約50%向上している。従って、本発明を適用することにより、倉庫の保管容量が大幅に増加し、物流効率に寄与することができる。
【0072】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る荷役作業作成装置及び荷役作業作成方法によれば、製品置場の保管容量を高めることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 荷役作業作成装置
2 倉庫
11 状況判断部
12 データ格納部
12a 在庫情報データベース(在庫情報DB)
12b 出荷製品情報データベース(出荷製品情報DB)
12c マスタ情報データベース(マスタ情報DB)
13 製品整理作業決定部
13a 置場チェック部
13b 製品チェック部
13c 作業生成部
14 出力部
21 天井クレーン
22 クレーン制御用計算機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8