(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物用の硬化剤、エポキシ樹脂組成物、および多成分エポキシ樹脂系
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20221125BHJP
C04B 26/14 20060101ALI20221125BHJP
E04B 1/41 20060101ALI20221125BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C08G59/50
C04B26/14
E04B1/41 503A
E02D5/80 Z
(21)【出願番号】P 2021514974
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019073937
(87)【国際公開番号】W WO2020058015
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ベーレンス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボルンシュレーグル
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175740(WO,A1)
【文献】特表2016-508162(JP,A)
【文献】特表2006-524716(JP,A)
【文献】特表2007-523239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/50
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性である少なくとも1種のアミンとを含む、
硬化剤であって、前記マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと、反応させることによって得ることができ、前記
硬化剤が、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)を含
み、前記塩(S)が、前記硬化剤の総重量に基づいて、0.1~15重量%の割合で含有されることを特徴とする、
硬化剤。
【請求項2】
前記エポキシ基に反応性であるアミンが、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族アミンからなる群から選択され、前記アミンが、窒素原子に結合している活性水素原子を分子あたり平均して少なくとも2個有し、好ましくは分子中に少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンであることを特徴とする、請求項1に記載の
硬化剤。
【請求項3】
前記塩(S)が、硝酸塩(NO
3
-)、ヨウ化物(I
-)、トリフラート(CF
3SO
3
-)、およびそれらの組み合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の
硬化剤。
【請求項4】
前記塩(S)が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド、アルミニウム、アンモニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか1つに記載の
硬化剤。
【請求項5】
前記アルデヒドが、脂肪族アルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドであり、前記アルデヒド前駆体が、トリオキサンまたはパラホルムアルデヒドを含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか1つに記載の
硬化剤。
【請求項6】
前記マンニッヒ塩基が、前記エポキシ基に反応性であるアミンのうちの少なくとも1種を使用して、好ましくはポリアミンを使用して形成されることを特徴とする、請求項1~5の何れか1つに記載の
硬化剤。
【請求項7】
少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂と、請求項1~
6の何れか1つに記載の
硬化剤と、を含有する、エポキシ樹脂
組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂
組成物が、多成分エポキシ樹脂
組成物であることを特徴とする、請求項
7に記載のエポキシ樹脂
組成物。
【請求項9】
エポキシ樹脂成分(A)と、硬化性成分と、を含有する、多成分エポキシ樹脂系であって、前記エポキシ樹脂成分(A)が、硬化性エポキシ樹脂を含有し、前記硬化性成分が、少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性である少なくとも1種のアミンとを含有し、前記マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと、反応させることによって得ることができ、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の塩(S)が、
前記硬化性成分の総重量に基づいて、0.1~15重量%の割合で、前記エポキシ樹脂成分(A)および/または前記硬化性成分に含有される
、ことを特徴とする、多成分エポキシ樹脂系。
【請求項10】
前記塩(S)が、前記硬化性成分に含有されることを特徴とする、請求項
9に記載の多成分エポキシ樹脂系。
【請求項11】
請求項
7または
8に記載のエポキシ樹脂
組成物、または請求項
9または
10に記載の多成分エポキシ樹脂系が、化学的留め付けに使用される掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法。
【請求項12】
化学的に留め付けるための少なくとも1種の塩(S)の使用であって、少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性である少なくとも1種のアミンとを含み、前記マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと、反応させることによって得ることができるエポキシ樹脂
組成物の加速剤として、塩が、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設要素を化学的に留め付けるためのエポキシ樹脂組成物用の硬化剤、エポキシ樹脂組成物、および多成分エポキシ樹脂系に関する。本発明はさらに、掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法に関する。本発明はまた、化学的に留め付けるためのエポキシ樹脂組成物における加速剤としての塩(S)の使用に関し、エポキシ樹脂組成物が、マンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含む。
【背景技術】
【0002】
硬化性エポキシ樹脂およびアミン硬化剤に基づく多成分モルタル組成物は、しばらく前から知られており、接着剤、亀裂を修復するための補修ペースト、ならびに掘削孔内の様々な基材にアンカーロッド、強化バー、およびネジなどの建設要素を留め付けるための接着系アンカーとして使用されている。しかしながら、モルタル組成物の耐荷重(破壊荷重)は、35℃の温度から減少し始めるので、既知のモルタル組成物は、アラブ首長国連邦などの高温国での使用が非常に限定される。さらに、高温は、建設現場でのモルタル組成物の取り扱い挙動および処理時間に悪影響を及ぼす。
【0003】
良好な取り扱い挙動を実現するには、従来のモルタル組成物では、高い割合の低粘度成分、低い割合の充填剤、および粗い充填剤を提供する必要があるが、これは、高温の荷重下での低いクリープ挙動という点には不利である。反対に、非反応性または非架橋性の希釈剤の割合が高く、反応性成分が少ないことによる結果として、長い処理時間が達成され、これが硬化時間の短縮を妨げる。
【0004】
エポキシド樹脂用の硬化剤の成分としてのマンニッヒ塩基の使用は、とりわけ特許文献1および特許文献2に記載されている。マンニッヒ塩基は、一般に、締結目的の多成分エポキシ樹脂組成物の硬化剤として、ポリアミンおよび任意選択的にさらなる成分と組み合わせて使用される。
【0005】
特許文献3は、フェナルカミンと、スチレン化フェノールまたはスチレン化フェノールノボラックとの組み合わせを含有するエポキシドとしての硬化剤について記載している。フェナルカミンは、カシューナッツ殻液(CNSL)、ホルムアルデヒド、およびジエチレンジアミンなどのポリアミンを反応させることで得られる、特定の強力な疎水性マンニッヒ塩基である。
【0006】
エポキシアミン系であり、マンニッヒ塩基を含むモルタル組成物は、一般に、硬化速度が遅く、フェノールのマンニッヒ塩基含有量によってある程度制御することができる。あるいは、硬化速度は、混合物中に存在するアミンに依存する。市販されており、RE 100(ヒルティ社(Schaan,リヒテンシュタイン))またはFIS EM 390 S(フィッシャー社(Waldachtal,ドイツ))などのマンニッヒ塩基系硬化剤を含む従来のエポキシ樹脂組成物は、使用まで20℃で少なくとも12時間の硬化時間を有し、硬化時間とは、その後に締結部が参照荷重の90%を受けることができる時間を指す。次の作業ステップまでの待ち時間を短縮するために、硬化時間を加速させることが好都合である。
【0007】
未だ未公開の特許文献4は、エポキシ樹脂およびマンニッヒ塩基に基づき、ノボラック樹脂の群からのポリフェノールを加速剤として使用する、モルタル組成物について記載している。ノボラック樹脂は、通常、固体として存在し、硬化剤に溶解させる必要がある。さらに、十分な加速を達成するために、ノボラック樹脂を大量に使用する必要がある。これは、対応するモルタル組成物が高い粘度を有することを意味し、これにより、適用中に高い押し出し力に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第10 2013 113465号明細書
【文献】国際特許出願公開第2005/090433号明細書
【文献】国際特許出願公開第2014/067095号明細書
【文献】欧州特許出願第17200077.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1種のマンニッヒ塩基を含有し、締結目的に好適であるエポキシ樹脂組成物を提供することであり、エポキシ樹脂組成物が、従来のモルタル組成物よりも短い硬化時間を有するが、比較的高い引き抜き強度を有することを意図する。特に、本発明の目的は、従来のモルタル組成物と比較して、高温、例えば35℃~50℃の温度範囲で、より短い硬化時間および改善された引き抜き強度を有するエポキシ樹脂組成物を提供することである。さらに、エポキシ樹脂組成物が、従来のエポキシアミン系モルタル組成物と比較して、水で満たされた掘削孔において改善された引き抜き強度を呈することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の硬化剤を提供することによって達成される。本発明による硬化剤の好ましい態様は、従属請求項に提供されており、これらは、任意選択的に互いに組み合わせることができる。
【0011】
本発明はさらに、請求項10に記載のエポキシ樹脂組成物、および請求項12に記載の多成分エポキシ樹脂系に関する。本発明によるエポキシ樹脂組成物および多成分エポキシ樹脂系の好ましい態様は、従属請求項に提供されており、これらは、任意選択的に互いに組み合わせることができる。
【0012】
本発明はさらに、請求項14に記載の掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法に関する。
【0013】
本発明はまた、請求項15に記載のエポキシ樹脂組成物における加速剤としての少なくとも1種の塩(S)の使用を網羅する。
【0014】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物の硬化剤であって、硬化剤としての組成物が、少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性であるアミンと、加速剤として少なくとも1種の塩(S)と、を含む、硬化剤が提供される。本発明によれば、マンニッヒ塩基は、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと、反応させることによって得ることができる。本発明によれば、加速剤として使用される塩(S)は、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
留め付け目的のエポキシ樹脂組成物に、本発明による硬化剤を使用することにより、硬化反応の相当な加速をもたらす。硬化組成物は、高温で優れた引き抜き強度を呈し、したがって、およそたった4~6時間以内の短期間の後に、荷重を受けることができる。したがって、本発明による硬化剤およびそれから調製されるエポキシ樹脂組成物は、高温国での使用に特に好適である。さらに、硬化組成物は、水で満たされた掘削孔内で優れた引き抜き強度を呈する。
【0016】
本発明による硬化剤の好ましい態様によれば、エポキシ樹脂に反応性であるアミンは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および芳香族アミンからなる群から選択される。アミンは、好ましくは、窒素原子に結合した分子当たり平均して少なくとも2つの反応性水素原子を有する。
【0017】
エポキシ基に反応性であるアミンは、基本的に当業者に既知である。アミンは、好ましくは、分子中に少なくとも2つのアミノ基を有するポリアミンである。硬化剤中にポリアミンを使用すると、特に安定したネットワークを達成することができる。
【0018】
本発明の文脈内で、上および次の記載で使用される用語は、次の意味を有する。
「脂肪族化合物」とは、芳香族化合物を除く、非環式または環式の飽和または不飽和炭素化合物であり、
「脂環式化合物」とは、ベンゼン誘導体または他の芳香族系を除く、炭素環構造を有する化合物であり、
「芳香脂肪族化合物」とは、官能化された芳香脂肪族化合物の場合、存在する官能基が化合物の芳香族部分ではなく脂肪族に結合しているような芳香族骨格を有する脂肪族化合物であり、
「芳香族化合物」とは、ヒュッケル(4n+2)則に従う化合物であり、
「アミン」とは、1個、2個、または3個の水素原子を炭化水素基で置き換えることによってアンモニアから誘導され、一般構造RNH2(一級アミン)、R2NH(二級アミン)、およびR3N(三級アミン)を有する化合物であり(参照:A.D.McNaught and A.Wilkinson,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997)によって編集されたIUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the“Gold Book”))、
「塩」とは、正に帯電したイオン(カチオン)および負に帯電したイオン(アニオン)で構成される化合物である。これらのイオン間にはイオン結合がある。表現「硝酸の塩」とは、硝酸(HNO3)から誘導され、アニオンとして硝酸塩(NO3
-)を含む化合物について記載している。表現「亜硝酸の塩」とは、亜硝酸(HNO2)から誘導され、アニオンとして亜硝酸塩(NO2
-)を含む化合物について記載している。表現「ハロゲンの塩」とは、アニオンとして、周期表の第7族の元素を含む化合物について記載している。特に、表現「ハロゲンの塩」とは、アニオンとしてフッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)を含む化合物を意味すると理解されるべきである。表現「トリフルオロメタンスルホン酸の塩」とは、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)から誘導され、アニオンとしてトリフラート(CF3SO3
-)を含む化合物について記載している。本発明の文脈において、用語「塩」とはまた、塩の対応する水和物を網羅する。加速剤として使用される塩(S)はまた、本発明の文脈において「塩」と称される。
【0019】
本発明の範囲を限定するものではないが、エポキシ基に反応性である好適なアミンの例を以下に示す:1,2-ジアミノエタン(エチレンジアミン)、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアミノブタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(ネオペンタンジアミン)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサンおよびそれらの混合物(TMD)、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,2-および1,4-ジアミノシクロヘキサン(1,2-DACHおよび1,4-DACH)、ビス(4-アミノ‐3-メチルシクロヘキシル)メタン、ジエチレントリアミン(DETA)、4-アザヘプタン-1,7-ジアミン、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキソンデカン(trioxundecane)、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジアミノ-メチル-3-アザペンタン、1,10-ジアミノ-4,7-ジオキサデカン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン、4-アミノメチル-1,8-ジアミノオクタン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(m-キシリレンジアミン、mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(p-キシリレンジアミン、pXDA)、5-(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチルアミン(NBDA、ノルボルナンジアミン)、ジメチルジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン(IPDA))、ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、ジエチルメチルベンゼンジアミン(DETDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(ダプソン)、混合多環式アミン(MPCA)(例えばAncamine2168)、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin C260)、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、(3(4),8(9)ビス(アミノメチルジシクロ[5.2.1.02,6]デカン(異性体の混合物、三環式一級アミン、TCD-ジアミン)、メチルシクロヘキシルジアミン(MCDA)、N,N’-ジアミノプロピル-2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、N,N’-ジアミノプロピル-4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、ならびに2-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)プロパン-1,3-ジアミン。
【0020】
本発明による硬化剤において、エポキシ基に反応性である好ましい好適なアミンは、2-メチルペンタンジアミン(DYTEK A)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3-ベンゼンジメタンアミン(m-キシリレンジアミン、mXDA)、1,4-ベンゼンジメタンアミン(p-キシリレンジアミン、PXDA)、1,6-ジアミノ-2,2,4-トリメチルヘキサン(TMD)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、N-エチルアミノピペラジン(N-EAP)、(3(4),8(9)ビス(アミノメチル)ジシクロ[5.2.1.02,6]デカン(異性体の混合物、三環式一級アミン、TCD-ジアミン)、1,14-ジアミノ-4,11-ジオキサテトラデカン、ジプロピレントリアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、二級ポリオキシプロピレンジアミンおよびトリアミン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、ビス(アミノ-メチル)トリシクロペンタジエン、1,8-ジアミノ-p-メンタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、ジペンチルアミン、N-2-(アミノエチル)ピペラジン(N-AEP)、N-3-(アミノプロピル)ピペラジン、ピペラジン、ならびにメチルシクロヘキシルジアミン(MCDA)などのポリアミンである。
【0021】
アミンを、個別に使用することも、指定されたアミンのうちの2つ以上の混合物で使用することもできる。
【0022】
エポキシ基に反応性である上述のアミンと組み合わせられて、本発明による硬化剤に使用されるマンニッヒ塩基は、アミンおよびアルデヒドと、フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、ビスフェノールFまたはビスフェノールAなどのビスフェノール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるフェノール化合物との反応生成物である。
【0023】
マンニッヒ塩基を形成するために、フェノール化合物は、好ましくは一級または二級アミン、およびアルデヒドまたは分解の結果としてアルデヒドを生じるアルデヒド前駆体と反応する。アルデヒドまたはアルデヒド前駆体は、特に約50℃~90℃の昇温で水溶液として反応混合物に有利に添加され、アミンおよびフェノール化合物と反応し得る。
【0024】
フェノールまたはスチレン化フェノール、レゾルシノール、スチレン化レゾルシノール、ビスフェノールAまたはビスフェノールFは、マンニッヒ塩基を形成するためのフェノール化合物として使用されることが好ましく、フェノールまたはスチレン化フェノール、スチレン化レゾルシノールまたはビスフェノールAの使用が特に好ましい。
【0025】
マンニッヒ塩基を形成するために使用されるアルデヒドは、好ましくは脂肪族アルデヒド、特に好ましくはホルムアルデヒドである。水の存在下で加熱することによって分解してホルムアルデヒドを形成するトリオキサンまたはパラホルムアルデヒドは、好ましくはアルデヒド前駆体として使用され得る。
【0026】
マンニッヒ塩基を形成するためにアルデヒドおよびフェノール化合物と反応させるために使用されるアミンは、好ましくは、エポキシ基に反応性である上述のアミンのうちの1つであり、好ましくは、1,3-ベンゼンジメタンアミン(mXDA)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、イアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、メチルシクロヘキシルジアミン(mCDA)、および5-(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチルアミン(NBDA)である。アミンは、好ましくは、マンニッヒ塩基が遊離アミノ基を有するように過剰に存在する。
【0027】
マンニッヒ塩基を形成するためにアルデヒドおよびフェノール化合物と反応させるために使用されるアミンはまた、3-アミノプロピル-トリ(m)エトキシシランなどの3-アミノアルキルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジ(m)エトキシシランなどの3-アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリ(m)エトキシシランなどのN-(アミノアルキル)-3-アミノアルキルトリアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジ(m)エトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリ(m)エトキシシラン、ビス-(ガンマ-トリメトキシシリルプロピル)アミンなどのN-(アミノアルキル)-3-アミノアルキル-アルキルジアルコキシシラン、もしくはそれらの混合物からなる群から選択されるか、または、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリ(m)エトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリ(m)エトキシシラン、N-メチル[3-(トリメトキシシリル)-プロピルカルバメート、N-トリメトキシシリルメチル-O-メチルカルバメート、およびN-ジメトキシ(メチル)シリルメチル-O-メチルカルバメートからなる群からも選択される、アミノシランであり得る。
【0028】
本発明によれば、硬化剤は、加速剤として少なくとも1種の塩(S)を含有する。本発明によれば、塩(S)は、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種の塩である。塩(S)は、好ましくは、硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩である。硝酸塩(NO3
-)、ヨウ化物(I-)、トリフラート(CF3SO3
-)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩(S)が特に好ましいことが見出されている。
【0029】
アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、硝酸ランタニド、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、およびそれらの混合物は、特に好適な硝酸の塩である。対応する硝酸の塩は、市販されている。好ましくは、Ca(NO3)2またはNaNO3などのアルカリ金属硝酸塩および/またはアルカリ土類金属硝酸塩が、硝酸の塩として使用される。硝酸の塩の溶液、例えば、Ca(NO3)2/HNO3を含有する溶液を塩(S)として使用することも可能である。この溶液を調製するためには、CaCO3をHNO3に溶解させる。
【0030】
アルカリ金属亜硝酸塩、アルカリ土類金属亜硝酸塩、亜硝酸ランタニド、亜硝酸アルミニウム、亜硝酸アンモニウム、およびそれらの混合物は、特に好適な亜硝酸の塩である。対応する亜硝酸の塩は、市販されている。好ましくは、アルカリ金属亜硝酸塩、および/またはCa(NO2)2などのアルカリ土類金属亜硝酸塩が、亜硝酸の塩として使用される。
【0031】
ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化ランタニド、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アンモニウム、およびそれらの混合物は、特に好適なハロゲンの塩である。対応するハロゲンの塩は、市販されている。ハロゲンは、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、使用するにはヨウ化物が特に好ましい。
【0032】
アルカリ金属トリフラート、アルカリ土類金属トリフラート、ランタニドトリフラート、アルミニウムトリフラート、アンモニウムトリフラート、およびそれらの混合物は、特に好適なトリフルオロメタンスルホン酸の塩である。トリフルオロメタンスルホン酸の対応する塩は、市販されている。好ましくは、アルカリ金属硝酸塩および/またはCa(CF3SO3)2などのアルカリ土類金属硝酸塩が、トリフルオロメタンスルホン酸の塩として使用される。
【0033】
原則として、塩(S)のカチオンは、有機、無機、またはそれらの混合物であってもよい。塩(S)のカチオンは、好ましくは無機カチオンである。
【0034】
好適な有機カチオンは、例えば、テトラエチルアンモニウムカチオンなどの、C1-C6-アルキル基などの有機基で置換されているアンモニウムカチオンである。
【0035】
塩(S)の好適な無機カチオンは、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アルミニウム、アンモニウム(NH4
+)、およびそれらの混合物からなる群から、より好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から、さらにより好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカチオンである。塩(S)のカチオンは、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0036】
したがって、次の化合物または成分は、塩(S)として特に好適である:Ca(NO3)2(硝酸カルシウム、通常カルシウム、Ca(NO3)2四水和物として使用される)、Ca(NO3)2/HNO3、KNO3(硝酸カリウム)、NaNO3(硝酸ナトリウム)、Mg(NO3)2(硝酸マグネシウム、通常Mg(NO3)2六水和物として使用される)、Al(NO3)3(硝酸アルミニウム、通常Al(NO3)3九水和物として使用される)、NH4NO3(硝酸アンモニウム)、Ca(NO2)2(硝酸カルシウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、NaBr(臭化ナトリウム)、NaI(ヨウ化ナトリウム)、Ca(CF3SO3)2(カルシウムトリフラート)、Mg(CF3SO3)2(マグネシウムトリフラート)、およびLi(CF3SO3)2(チリウムトリフラート)の混合物。
【0037】
本発明による硬化剤は、1種以上の塩(S)を含み得る。塩は、個々に、および指定の塩のうちの2種以上の混合物で、の両方で使用することができる。
【0038】
硬化剤中の塩(S)の溶解特性を改善するために、塩(S)を好適な溶媒に溶解させてもよく、したがって溶液として使用してもよい。この目的には、例えば、メタノール、エタノール、およびグリセロールなどの有機溶媒が好適である。しかしながら、水を溶媒として使用してもよく、上記の有機溶媒との混合物でも可能である。対応する塩溶液を調製するために、塩(S)を溶媒に添加し、好ましくは完全に溶解するまで撹拌する。
【0039】
好ましくは、塩(S)は、硬化剤の総重量に基づいて、0.1~15重量%の割合で硬化剤に含有される。好ましくは、塩(S)は、硬化剤の総重量に基づいて、硬化剤中0.5~12重量%の割合で、より好ましくは1.0~10.0重量%の割合で、さらにより好ましくは1.5~8.0重量%の割合で含有される。
【0040】
エポキシ基に反応性であるアミンは、好ましくは、硬化剤の総重量に基づいて、10~90重量%、特に好ましくは35~70重量%の割合で硬化剤に含有される。さらに、硬化剤は、好ましくは、各場合において硬化剤の重量に基づいて、4~70重量%、特に好ましくは12~65重量%の割合で少なくとも1種のマンニッヒ塩基を含有する。
【0041】
さらなる態様では、硬化剤は、溶媒、共加速剤、接着促進剤、および無機充填剤の群からのさらなる添加剤を含む。
【0042】
好ましくは、非反応性希釈剤(溶媒)は、硬化剤の総重量に基づいて、最大30重量%の量、例えば、1~20重量%の量で含有され得る。好適な溶媒の例は、メタノール、エタノール、またはグリコールなどのアルコール、アセトンなどの低級アルキルケトン、ジメチルアセトアミドなどのジ低級アルキル低級アルカノイルアミド、キシレン、またはトルエン、フタル酸エステル、またはパラフィンなどの低級アルキルベンゼンである。溶媒の量は、硬化剤の総重量に基づいて、好ましくは≦5重量%である。
【0043】
例えば、ベンゼンアルコール、三級アミン、イミダゾール、または三級アミノフェノール、オルガノホスフィン、リン酸エステルなどのルイス塩基もしくは酸、またはそれらの2種以上の混合物を共加速剤として使用することができる。共加速剤は、エポキシ樹脂と適合性がある場合、エポキシ樹脂成分(A)中にも存在し得る。
【0044】
好ましくは、共加速剤は、硬化剤の総重量に基づいて、0.001~5重量%の重量割合で硬化剤に含有される。
【0045】
好適な共加速剤の例は、特に、トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)フェノール、およびビス[(ジメチルアミノ)メチル]フェノールである。好適な共加速剤混合物は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびビス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含有する。この種の混合物は、例えば、Ancamine(登録商標)K54(Evonik,Germany)として市販されている。
【0046】
接着促進剤を使用することにより、掘削孔壁とモルタル組成物との架橋が改善され、それにより、硬化状態での接着が増加する。好適な接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチル-ジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノエチル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、および3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどの少なくとも1個のSi結合加水分解性基を有するシランの群から選択される。特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AMMO)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(DAMO)、およびトリメトキシシリルプロピルジエチレンテトラミン(TRIAMO)が接着促進剤として好ましい。さらなるシランは、例えば、欧州特許出願公開第3000792号明細書に記載されており、その内容は、本出願に組み込まれる。
【0047】
接着促進剤は、硬化剤の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは1.0~2.5重量%の量で含有され得る。
【0048】
無機充填剤、特に、ポルトランドセメントもしくはアルミン酸セメントなどのセメント、ならびに他の水硬性無機物質、石英、ガラス、コランダム、磁器、陶器、バライト、ライトスパー(light spar)、石膏、タルク、および/またはチョーク、およびそれらの混合物は、充填剤として使用される。さらに、ヒュームドシリカなどの増粘剤を無機充填剤として使用することもできる。特に好適な充填剤は、Millisil W3、Millisil W6、Millisil W8、およびMillisil W12、好ましくはMillisil W12などの、表面処理されていない石英粉末、微細石英粉末、および超微細石英粉末である。シラン化石英粉末、微細石英粉末、および超微細石英粉末も使用することができる。これらは、例えば、QuarzwerkeからのSilbond製品シリーズから市販されている。製品シリーズSilbond EST(エポキシシラン修飾)およびSilbond AST(アミノシラン処理)が特に好ましい。さらに、デンカ社(日本)からのASFPタイプ(d50=0.3μm)、またはタイプ指定45(d50<0.44μm)、07(d50>8.4μm)、05(d50<5.5μm)、および03(d50<4.1μm)を有するDAWもしくはDAMなどのグレードの酸化アルミニウム超微細充填剤などの酸化アルミニウム系充填剤。さらに、Hoffman MineralからのAktisil AMタイプ(アミノシラン処理、d50=2.2μm)、およびAktisil EM(エポキシシラン処理、d50=2.2μm)の表面処理された微細および超微細充填剤を使用してもよい。
【0049】
無機充填剤は、砂、細粉、または成形体の形態、好ましくは繊維またはボールの形態で添加され得る。充填剤は、以下に記載の多成分エポキシ樹脂系の1種またはすべての成分中に存在し得る。タイプおよび粒子サイズ分布/(繊維)長さに関する充填剤の好適な選択を使用して、レオロジー挙動、押し出し力、内部強度、引張強度、引き抜き力、および衝撃強度など、用途に関連する特性を制御することができる。
【0050】
充填剤の割合は、硬化剤の総重量に基づいて、好ましくは0~75重量%、例えば10~75重量%、好ましくは15~75重量%、より好ましくは20~50重量%、さらにより好ましくは25~40重量%である。
【0051】
本発明はさらに、少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂および上述の硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物に関する。エポキシ樹脂組成物は、好ましくは多成分エポキシ樹脂組成物、より好ましくは二成分エポキシ樹脂組成物である。
【0052】
当業者には既知であり、この目的のために市販されている、分子あたり平均して2個以上のエポキシ基、好ましくは2個のエポキシ基を含有する多数の化合物は、エポキシ樹脂成分(A)中の硬化性エポキシ樹脂として使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、飽和および不飽和の両方、ならびに脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得、ヒドロキシル基を有してもよい。それらはまた、混合または反応条件下で破壊的な二次反応を引き起こさない置換基、例えば、アルキルまたはアリール置換基、エーテル基などを含有し得る。本発明の文脈では、三量体および四量体エポキシドも好適である。
【0053】
エポキシ樹脂は、好ましくは、多価アルコール、特にビスフェノールおよびノボラックなどの多価フェノール、特に、平均1.5個以上、特に2個以上、例えば、2~10個のグリシジル基官能性を有するものから誘導されたグリシジルエーテルである。
【0054】
エポキシ樹脂は、120~2000g/EQ、好ましくは140~400、特に155~195、例えば、165~185のエポキシ当量(EEW)を有し得る。また、複数のエポキシ樹脂の混合物を使用してもよい。
【0055】
エポキシ樹脂を調製するために使用される多価フェノールの例は、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)、テトラブロモビスフェノールA、ノボラック、4,4’-ジヒドロキシフェニルシクロヘキサン、および4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパンである。
【0056】
エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA、またはビスフェノールF、またはそれらの混合物のジグリシジルエーテルである。180~190g/EQのEEWを有するビスフェノールAおよび/またはFに基づく液体ジグリシジルエーテルが特に好ましく使用される。
【0057】
さらなる例は、例えばMn≦2000g/モルの平均分子量を有する、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、および/またはビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂である。
【0058】
本発明はさらに、エポキシ樹脂成分(A)と、硬化性成分と、を含む多成分エポキシ樹脂系であって、エポキシ樹脂成分(A)が、硬化性エポキシ樹脂を含有し、硬化性成分が、少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含み、マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと反応させることによって得られる、多成分エポキシ樹脂系に関する。多成分エポキシ樹脂系はまた、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の塩(S)をエポキシ樹脂成分(A)および/または硬化性成分に含む。多成分エポキシ樹脂系は、好ましくは二成分エポキシ樹脂系である。
【0059】
上の記述は、多成分エポキシ樹脂系の硬化性エポキシ樹脂、マンニッヒ塩基、エポキシ基に反応性であるアミン、および塩(S)に適用される。
【0060】
加速剤として使用される塩(S)は、エポキシ樹脂成分(A)もしくは硬化性成分、またはエポキシ樹脂成分(A)と硬化性成分との両方に含有され得る。塩(S)は、少なくとも硬化性成分に、好ましくは硬化性成分のみに含有されることが好ましい。この場合、上述の硬化剤は、多成分エポキシ樹脂系で使用される。
【0061】
エポキシ樹脂成分(A)中のエポキシ樹脂の割合は、樹脂成分(A)の総重量に基づいて、>0~100重量%、好ましくは10~70重量%、特に好ましくは30~60重量%である。
【0062】
エポキシ樹脂成分(A)は、エポキシ樹脂に加えて、任意選択的に、少なくとも1種の反応性希釈剤を含有してもよい。芳香族基を含有するエポキシドよりも低い粘度を有する、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族のモノアルコール、または特に多価アルコールのグリシジルエーテルが、反応性希釈剤として使用される。反応性希釈剤の例は、モノグリシジルエーテル、例えば、o-クレジルグリシジルエーテル、および1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、およびヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ならびにグリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)、またはトリメチロールエタントリグリシジルエーテル(TMETGE)などのトリ-もしくはより高次のグリシジルエーテルなどの少なくとも2個のエポキシ官能性を有するグリシジルエーテルであり、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルが好ましい。また、これらの反応性希釈剤のうちの2種以上の混合物、好ましくはトリグリシジルエーテルを含有する混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)とトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)との、または1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)とトリメチロールエタントリグリシジルエーテル(TMETGE)との混合物を使用してもよい。
【0063】
反応性希釈剤は、好ましくは、樹脂成分(A)の総重量に基づいて、0~60重量%、特に1~20重量%の量で存在する。
【0064】
多成分エポキシ樹脂系の総質量でのエポキシ成分(A)の割合は、好ましくは5~90重量%、特に20~80重量%、30~70重量%、または40~60重量%である。
【0065】
好適なエポキシ樹脂および反応性希釈剤はまた、Michael Dornbusch,Ulrich Christ and Rob Rasing,“Epoxidharze,”Vincentz Network GmbH&Co KG(2015),ISBN13:9783866308770の標準参照に見出すことができる。これらの化合物は、参照により本明細書に含まれる。
【0066】
さらに、エポキシ樹脂成分(A)は、硬化剤について既に記載されているように、従来の添加剤、特に接着促進剤および充填剤を含有し得る。
【0067】
接着促進剤は、エポキシ樹脂成分(A)の総重量に基づいて、最大10重量%、好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは1.0~5.0重量%の量で含有され得る。
【0068】
充填剤の割合は、エポキシ樹脂成分(A)の総重量に基づいて、好ましくは0~75重量%、例えば10~75重量%、好ましくは15~75重量%、より好ましくは20~50重量%、さらにより好ましくは25~40重量%である。
【0069】
エポキシ樹脂成分(A)へのさらに想定される添加剤はまた、任意選択的に有機的に後処理されたヒュームドシリカ、ベントナイト、アルキル-およびメチルセルロース、およびヒマシ油誘導体などのチキソトロープ剤、フタル酸エステルもしくはセバシン酸エステルなどの可塑剤、安定剤、帯電防止剤、増粘剤、柔軟剤、硬化触媒、レオロジー助剤、湿潤剤、例えば、混合時に制御性を改善するための成分の異なる染色のための染料もしくは顔料などの着色添加剤、ならびに湿潤剤、減感剤、分散剤、ならびに反応速度用の他の制御剤、またはそれらの2種以上の混合物である。
【0070】
多成分エポキシ樹脂系は、好ましくは、エポキシ樹脂成分(A)と硬化性成分を別個に配置して反応を防止する、2つ以上の別個のチャンバを備えることを特徴とする、カートリッジまたはフィルムパウチ内に存在する。
【0071】
多成分エポキシ樹脂系の意図される使用のために、エポキシ樹脂成分(A)と硬化性成分とは別個のチャンバから排出され、好適なデバイス、例えば、スタティックミキサまたは溶解器で混合される。次いで、エポキシ樹脂成分(A)と硬化性成分との混合物を、既知の注入デバイスの手段によって、事前に清浄した掘削孔に導入する。次いで、固定する構成要素をモルタル組成物に挿入し、位置合わせする。硬化性成分の反応性成分が、重付加によって樹脂成分(A)のエポキシ樹脂と反応することによって、エポキシ樹脂組成物が、所望の期間内、好ましくは数分または数時間以内に環境条件下で硬化する。
【0072】
成分AおよびBは、好ましくは、EEWおよびAHEW値に応じてバランスのとれた化学量論が得られる比率で混合される。
【0073】
AHEW値(アミン水素当量、H当量)は、1モルの反応性Hを含有する硬化剤の量を提供する。AHEWは、使用される反応物、および反応物から計算される原材料の既知のH当量からの反応混合物の配合に基づいて、当業者に既知の様式で決定される。
【0074】
メタ-キシリレンジアミン(M
W=136g/モル、官能性=4eq/モル)の例を使用して、AHEWの計算を、例として以下に説明する。
【数1】
【0075】
EEW(エポキシド当量、エポキシド当量値)は、一般に、各場合で使用されるエポキシ樹脂成分の製造業者によって提供されるか、または既知の方法に従って計算される。EEW値は、1モルのエポキシ基を含有するエポキシ樹脂の量をgで提供する。
【0076】
実験では、エポキシ樹脂(既知のEEWを有する)とアミン成分との混合物からガラス転移温度(Tg)を決定することによってAHEWを得た。この場合、エポキシ樹脂/アミン混合物のガラス転移温を、異なる比で決定した。試料を、-20K/分の加熱速度で21℃から-70℃に冷却し、第1の加熱サイクルで250℃(加熱速度10K/分)まで加熱し、次いで、-70℃まで再冷却し(加熱速度-20K/分)、最後のステップで200℃まで加熱した(20K/分)。第2の加熱サイクルで最高のガラス転移温度(「T
g2」)を有する混合物は、エポキシ樹脂とアミンとの最適な比を有する。AHEW値は、既知のEEWおよび最適なエポキシ樹脂/アミン比から計算することができる。
例:EEW=158g/モル
最大T
g2を有するアミン/エポキシ樹脂混合物:4.65gのエポキシ樹脂を含む1gのアミン
【数2】
【0077】
本発明によるエポキシ樹脂組成物または本発明による多成分エポキシ樹脂系は、好ましくは、建設目的で使用される。表現「建設目的」は、コンクリート/コンクリート、鋼/コンクリート、または鋼/鋼、または他の鉱物材料との当該材料のうちの1種の構造的接着、コンクリート、レンガ、および他の鉱物材料で作製された構成要素の構造強化、繊維強化ポリマーを用いる建築物の強化用途、コンクリート、鋼、または他の鉱物材料で作製された表面の化学的留め付け、特に建設要素の化学的留め付け、ならびにアンカーロッド、アンカーボルト、(ネジ山付き)ロッド、(ネジ山付き)スリーブ、強化バー、ネジなどの、(強化)コンクリート、レンガ、他の鉱物材料、金属(例えば鋼)、セラミック、プラスチック、ガラス、および木材などの掘削孔内の様々な基材へのアンカー固定手段を指す。最も特に好ましくは、本発明によるエポキシ樹脂組成物および本発明による多成分エポキシ樹脂系は、化学的に留め付けるアンカー固定手段のために使用される。
【0078】
本発明はまた、掘削孔内の建設要素を化学的に留め付けるための方法、建設要素を化学的に留め付けるために上述のように使用される、本発明によるエポキシ樹脂組成物または多成分エポキシ樹脂系に関する。本発明による方法は、コンクリート/コンクリート、鋼/コンクリート、または鋼/鋼、または他の鉱物材料との当該材料のうちの1種の構造的接着、コンクリート、レンガ、および他の鉱物材料で作製された構成要素の構造強化、繊維強化ポリマーを用いる建築物の強化用途、コンクリート、鋼、または他の鉱物材料で作製された表面の化学的留め付け、特に建設要素の化学的留め付け、ならびにアンカーロッド、アンカーボルト、(ネジ山付き)ロッド、(ネジ山付き)スリーブ、強化バー、ネジなどの、(強化)コンクリート、レンガ、他の鉱物材料、金属(例えば鋼)、セラミック、プラスチック、ガラス、および木材などの掘削孔内の様々な基材へのアンカー固定手段に特に好適である。本発明による方法は、非常に特に好ましくは、アンカー固定手段の化学的留め付けに使用される。
【0079】
本発明はまた、建設要素の化学的留め付け、特に締結要素を掘削孔内にアンカー固定するためのエポキシ樹脂組成物における加速剤としての、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)の使用に関する。エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含み、マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと、反応させることによって得ることができる。エポキシ樹脂組成物は、上述のエポキシ樹脂成分(A)と硬化性成分とを含む多成分エポキシ樹脂系の形態であることが好ましい。また、塩(S)は、硬化性成分に含有されること、したがって、上述のように硬化剤(B)に使用されることが好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂組成物、特に多成分エポキシ樹脂系における加速剤としての本発明の意味の範囲内での少なくとも1種の塩(S)の使用は、エポキシ樹脂組成物の硬化時間を大幅に短縮し、さらにわずか4~6時間後に十分な引き抜き強度を確保することを可能にする。さらに、硬化エポキシ樹脂組成物は、高温および水で満たされた掘削孔内で優れた引き抜き強度を有する。
【0081】
本発明はまた、エポキシ樹脂組成物の、特に多成分エポキシ樹脂系における加速剤としての、硝酸の塩、亜硝酸の塩、ハロゲンの塩、トリフルオロメタンスルホン酸の塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の塩(S)の使用に関する。エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種のマンニッヒ塩基と、エポキシ基に反応性であるアミンとを含み、マンニッヒ塩基が、フェノール、スチレン化フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、およびビスフェノールからなる群から選択されるフェノール化合物を、アルデヒドまたはアルデヒド前駆体、および窒素原子に結合している活性水素原子を分子中に少なくとも2個有するアミンと、反応させることによって得ることができる。エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分(A)と上述の硬化性成分とを含む多成分エポキシ樹脂系の形態であることが好ましい。また、塩(S)は、硬化性成分に含有されること、したがって、上述のように硬化剤(B)に使用されることが好ましい。
【0082】
エポキシ樹脂組成物、特に多成分エポキシ樹脂組成物、より好ましくは多成分エポキシ樹脂組成物の硬化性成分における、加速剤としての本発明の意味の範囲内での少なくとも1種の塩(S)の使用は、特に、高温、例えば35℃~50℃の温度範囲でエポキシ樹脂組成物の引き抜き強度の増加を可能にする。
【0083】
さらに、エポキシ樹脂組成物、特に多成分エポキシ樹脂組成物、より好ましくは多成分エポキシ樹脂組成物の硬化性成分における、加速剤としての本発明の意味の範囲内での少なくとも1種の塩(S)の使用は、水で満たされている掘削孔内でのエポキシ樹脂組成物の引き抜き強度の増加を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本発明のさらなる利点は、次の好ましい実施例の記載に見出すことができるが、しかしながら、決して限定するものとして理解されるものではない。本発明のすべての態様は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることができる。
【実施例】
【0085】
エポキシ樹脂成分(A)
出発材料
実施例では、それぞれAraldite GY 240およびAraldite 282(Huntsman)の名称で市販されているビスフェノールA系およびビスフェノールF系エポキシ樹脂をエポキシ樹脂として使用した。
【0086】
それぞれAraldite DY-026およびAraldite(登録商標)DY-T(Huntsman)の名称で市販されている1,4-ブタンジオール-ジグリシジルエーテルおよびトリメチオルプロパン(methyolpropane)-トリグリシジルエーテルを反応性希釈剤として使用した。
【0087】
Dynalsylan GLYMO(登録商標)(Evonik Industries)の名称で入手可能な3-グリシジルオキシプロピル-トリメトキシシシラン(trimethoxysysilane)を接着促進剤として使用した。
【0088】
液体成分は、手で事前に混合した。その後、石英(Quarzwerke FrechenからのMillisil(登録商標)W12)を充填剤として添加し、ヒュームドシリカ(Cabot RheinfeldenからのCab-O-Sil(登録商標)TS-720)を増粘剤として添加し、80mbarの負圧、3500rpmで10分間、溶解器(PC laboratory system、容量1L)で混合物を撹拌した。
【0089】
実施例で使用したエポキシ樹脂成分(A)の組成を以下の表1に示す。
【表1】
【0090】
硬化剤(B)
Epikure硬化剤132の名称で市販されているマンニッヒ塩基(Momentive Specialty Chemicals(NL))からのmXDA中のmXDA-ビスフェノールA系マンニッヒ塩基)を、マンニッヒ塩基として使用した。さらに、mXDA中のmXDA-レゾルシノール系マンニッヒ塩基、mXDA中のmXDA-フェノール系マンニッヒ塩基、およびIPDA中のIPDA-フェノール系マンニッヒ塩基を調製した。マンニッヒ塩基を調製するための方法は、欧州特許出願公開第0645408号明細書に記載されている。
【0091】
三菱ガス化学社(日本)からのm-キシリレンジアミン(mXDA)および1,3-シクロヘキサンジメタンアミン(1,3-BAC)、ならびにEvonik Degussa(ドイツ)からのイソホロンジアミン(IPDA)を、硬化剤(B)を調製するためのアミンとして使用した。
【0092】
Evonik DegussaからDynasylan AMEOの商品名で入手可能な3-アミノプロピルトリエトキシシランを接着促進剤として使用した。
【0093】
石英(Quarzwerke FrechenからのMillisil(登録商標)W12)およびアルミン酸カルシウムセメント(Kerneos SAからのSecar80)を充填剤として使用し、ヒュームドシリカ(Cabot RheinfeldenからのCab-O-Sil(登録商標)TS-720)を増粘剤として使用した。
【0094】
硬化剤Bで使用される塩(S)を調製するために、以下の表2に示される成分を使用した。
【表2】
【0095】
硝酸カルシウムの塩およびヨウ化ナトリウムの塩は、グリセロール(1,2,3-プロパントリオール、CAS番号56-81-5、Merck、D)中の溶液として使用した。硝酸カルシウム溶液を調製するために、400.0gの硝酸カルシウム四水和物を100.0gのグリセロールに添加し、完全に溶解するまで(3時間)50℃で撹拌した。この方式で調製した溶液は、80.0%の硝酸カルシウム四水和物を含有した。ヨウ化ナトリウム溶液を調製するために、36.4gのヨウ化ナトリウムを63.6gのグリセロールに添加し、完全に溶解するまで撹拌した。この方式で調製した溶液は、36.4%のヨウ化ナトリウムを含有した。
【0096】
カルシウムトリフラートは、特定の硬化剤のアミン中に固体として溶解させた。
【0097】
実施例1~8
液体成分を混合して、硬化剤(B)を調製した。加速剤を添加し、次いで石英粉末およびケイ酸を添加し、80mbarの負圧、3500rpmで10分間、溶解器(PC laboratory system、容量1L)で撹拌した。
【0098】
この方式で調製した
硬化剤(B)の組成を、以下の表3に示す:
【表3】
【0099】
比較例1~3
液体成分を混合して、比較例の硬化剤(B)を調製した。加速剤を添加し、次いで石英粉末およびケイ酸を添加し、80mbarの負圧、3500rpmで10分間、溶解器(PC laboratory system、容量1L)で撹拌した。Evonikから市販の加速剤Ancamin K54(2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ビス[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール)を加速剤として使用した。
【0100】
この方式で調製した
硬化剤(B)の組成を、以下の表4に示す:
【表4】
【0101】
モルタル組成物および引き抜き試験
EEWおよびAHEW値に従ってバランスのとれた化学量論を生じる比のエポキシ樹脂成分(A)および硬化剤(B)を、スピードミキサで混合した。混合物を可能な限り気泡をたてずに一液型カートリッジに注ぎ、すぐに引き抜き試験用に作製した掘削孔に注入した。
【0102】
上の実施例によるエポキシ樹脂成分(A)および硬化剤(B)を混合することによって得たモルタル組成物の引き抜き強度は、C20/25コンクリート中の関連するモルタル組成物の手段によって、掘削孔の直径14mm、および深さ69mmを有するハンマードリルであけた掘削孔にダボで接合した高強度ネジ山付きアンカーロッドM12を使用して、ETAG 001パート5に従って決定した。掘削孔は、圧縮空気(2×6bar)、ワイヤブラシ(2×)、および再び圧縮空気(2×6bar)の手段によって清浄した。
【0103】
掘削孔は、掘削孔の底部から3分の2まで、各々の場合に試験されるモルタル組成物で満たした。ネジ山付きロッドを手で押し込んだ。スパチュラを使用して、過剰なモルタルを除去した。
【0104】
試験1の硬化時間は、21℃で4時間であった。試験2では、硬化時間は、21℃で6時間であった。試験3では、硬化時間は、21℃で24時間であった。試験4では、80℃で24時間貯蔵した後の硬化時間は、25℃で24時間であった。引き抜き試験は、80℃で実行した。
【0105】
試験5(F1c)では、掘削および(1回は圧縮空気(6bar)で吹き出し、1回はブラシを使用し、次いでもう1回圧縮空気(6bar)で吹き出すことによる)清浄を行った後、掘削孔を水で満たした。モルタルは、ピストンプラグを備えたミキサエクステンションを介して、水で満たした掘削孔に注入した。モルタルの硬化時間は、25℃で48時間であった。
【0106】
破壊荷重は、ネジ山付きアンカーロッドをきつく支えて中央から引き抜くことによって決定した。実施例1~8および比較例1~5による
硬化剤(B)を使用したモルタル
組成物で得た荷重値を、以下の表5に示す。
【表5】
【表6】
【0107】
実施例1~8による硬化剤を含む本発明によるエポキシ樹脂組成物は、比較例1~4からの硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物よりもはるかに速い硬化を呈する。本発明による硬化剤を使用して調製したモルタル組成物は、わずか6時間後に荷重を受けることができる。これにより、次の作業ステップまでの待ち時間を大幅に低減することが可能になり、後続の作業をはるかに早く実行することを可能になる。