IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

特許7182711開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム
<>
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図1
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図2
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図3
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図4
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図5
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図6
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図7
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図8
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図9
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図10
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図11
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図12
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図13
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図14
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図15
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図16
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図17
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図18
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図19
  • 特許-開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/41 20150101AFI20221125BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20221125BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E05F15/41
E05F15/689
B60J1/17 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021527365
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011214
(87)【国際公開番号】W WO2020261665
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2019116735
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019213651
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 新一
(72)【発明者】
【氏名】升澤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】星川 祐大
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-3426(JP,A)
【文献】特開2018-9316(JP,A)
【文献】特開2013-217068(JP,A)
【文献】特開2001-82028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/40-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御装置であって、
前記モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部と、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が所定の閾値を超える場合、前記判定値を高める判定値調整部と
を備えることを特徴とする開閉制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記加速度項と、前記モータに加わる電圧および前記モータの回転周期に基づくトルク項とを算出し、前記加速度項に前記トルク項を加算することにより、前記モータに加わる荷重を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の開閉制御装置。
【請求項3】
前記判定値調整部は、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が第1の閾値を超える場合、前記判定値を第1の期間の間高め、前記加速度項の極大値が前記第1の閾値未満であり、且つ、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を超える場合、前記判定値を前記第1の期間よりも短い第2の期間の間高める
ことを特徴とする請求項1または2に記載の開閉制御装置。
【請求項4】
前記判定値調整部は、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が所定の閾値を超える毎に、前記判定値を高める
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の開閉制御装置。
【請求項5】
前記判定値調整部は、
前記算出部によって算出された連続する3つの前記加速度項のうち、2番目の加速度項が、1番目の加速度項および3番目の加速度項の双方よりも大きい場合、当該2番目の加速度項を、前記加速度項の極大値として検出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の開閉制御装置。
【請求項6】
前記判定値調整部は、
前記加速度項が、前記モータの加速度が減速から加速に転じたことを判定するための所定の基準値以下となった場合、その時点から第3の期間の間、前記判定値を高める
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の開閉制御装置。
【請求項7】
前記所定の基準値は0である
ことを特徴とする請求項6に記載の開閉制御装置。
【請求項8】
前記開閉体は、車両のパワーウインドウである
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の開閉制御装置。
【請求項9】
前記判定値調整部は、
さらに、前記モータの起動後の一定期間において、所定の単位時間あたりの前記加速度項の低下量が所定の閾値を超える場合、その時点から第4の期間の間、前記判定値を高める
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の開閉制御装置。
【請求項10】
前記判定値調整部は、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が所定の閾値を超えたことにより、前記判定値を高めた後、所定の単位時間あたりの前記加速度項の低下量が所定の閾値を超えた場合、前記判定値をさらに高める
ことを特徴とする請求項9に記載の開閉制御装置。
【請求項11】
モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御システムであって、
前記モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部と、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が所定の閾値を超える場合、前記判定値を高める判定値調整部と
を備えることを特徴とする開閉制御システム。
【請求項12】
モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御方法であって、
前記モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定工程と、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が所定の閾値を超える場合、前記判定値を高める判定値調整工程と
を含むことを特徴とする開閉制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、
モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出部、
前記算出部によって算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記モータの駆動による開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部、および、
前記モータの起動後の一定期間において、前記加速度項の極大値が所定の閾値を超える場合、前記判定値を高める判定値調整部
として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御装置であって、
前記モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部と、
前記モータの起動後の一定期間において、所定の単位時間あたりの前記加速度項の低下量が所定の閾値を超える場合、その時点から第4の期間の間、前記判定値を高める判定値調整部と
を備えることを特徴とする開閉制御装置。
【請求項15】
モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御システムであって、
前記モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部と、
前記モータの起動後の一定期間において、所定の単位時間あたりの前記加速度項の低下量が所定の閾値を超える場合、その時点から第4の期間の間、前記判定値を高める判定値調整部と
を備えることを特徴とする開閉制御システム。
【請求項16】
モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御方法であって、
前記モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定工程と、
前記モータの起動後の一定期間において、所定の単位時間あたりの前記加速度項の低下量が所定の閾値を超える場合、その時点から第4の期間の間、前記判定値を高める判定値調整工程と
を含むことを特徴とする開閉制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、
モータの回転周期を示す信号に基づいて、前記モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、前記加速度項に基づく前記モータに加わる荷重とを算出する算出部、
前記算出部によって算出された前記荷重が所定の判定値を超えた場合、前記モータの駆動による開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部、および、
前記モータの起動後の一定期間において、所定の単位時間あたりの前記加速度項の低下量が所定の閾値を超える場合、その時点から第4の期間の間、前記判定値を高める判定値調整部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉制御装置、開閉制御システム、開閉制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車等の車両に搭載されるパワーウインドウ等の開閉体の開閉動作を制御する制御方法として、開閉体による物体の挟み込みを検知した場合に、開閉体の開閉動作を停止させたり反転させたりする等、物体の挟み込みを防止する制御方法(以下、「挟み込み防止制御」と示す)が知られている。
【0003】
このような挟み込み防止制御に関し、例えば、下記特許文献1には、開閉体の開閉動作における荷重を算出し、算出荷重が挟み込みしきい値を超える場合、開閉体による物体の挟み込みが発生したと判定する開閉制御装置において、モータの起動後の初期期間において、所定時間あたりの算出荷重の低下量が初期低下量しきい値を超えている場合、挟み込みしきい値を一時的に増大させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-197427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明の発明者らは、挟み込み防止制御において、モータの起動直後に、モータの不安定な動作を原因として、モータにかかる負荷が一時的に増加し、これにより、開閉制御装置が、物体の挟み込みが生じていると誤判定してしまい、開閉体の挟み込み防止動作を作動させてしまう虞があることを見出した。特に、本発明の発明者らは、開閉体を駆動するためのレギュレータの弛みの有無によって、モータにかかる負荷が変動して、物体の挟み込みの判定に影響を及ぼす虞があることを見出した。
【0006】
このような事態を回避する方法として、物体の挟み込みを判定するための判定値を高める方法が考えられるが、判定値を適切に高めないと、実際に物体の挟み込みが生じた場合に、当該挟み込みの検知タイミングが遅れてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは、このような物体の挟み込みの誤判定および検知タイミングの遅れが生じないように判定値を適切に高めることで、モータの起動直後における物体の挟み込みの判定精度を高めることが可能な技術の必要性を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の開閉制御装置は、モータの駆動による開閉体の挟み込みを検知する開閉制御装置であって、モータの回転周期を示す信号に基づいて、モータの回転周期の変化に基づく加速度項と、加速度項に基づくモータに加わる荷重とを算出する算出部と、算出部によって算出された荷重が所定の判定値を超えた場合、開閉体による挟み込みが生じていると判定する判定部と、モータの起動後の一定期間において、加速度項の極大値が所定の閾値を超える場合、判定値を高める判定値調整部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、モータの起動直後における物体の挟み込みの判定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る開閉制御システムのシステム構成を示す図
図2】本発明の一実施形態に係るマイコンのハードウェア構成を示す図
図3】本発明の一実施形態に係るマイコンの機能構成を示す図
図4】本発明の一実施形態に係るマイコンによる処理の手順を示すフローチャート
図5】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による第1の起動時判定値調整処理の手順を示すフローチャート
図6】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による第2の起動時判定値調整処理の手順を示すフローチャート
図7】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による第1の起動時判定値調整処理の具体例を説明するための図
図8】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による加速度項の極大値の判定方法を説明するための図
図9】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による第2の起動時判定値調整処理の具体例を説明するための図
図10】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による第2の起動時判定値調整処理の具体例を説明するための図
図11】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第1実施例を示す図
図12】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第2実施例を示す図
図13】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第3実施例を示す図
図14】本発明の一実施形態に係るマイコンによる処理の手順の変形例を示すフローチャート
図15】本発明の一実施形態に係る判定値調整部による第3の起動時判定値調整処理の手順を示すフローチャート
図16】本発明の一実施形態に係るマイコンによって算出される加速度項の変化の一例を示す図
図17】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第4実施例を示す図
図18】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第5実施例を示す図
図19】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第6実施例を示す図
図20】本発明の一実施形態に係るマイコンによる制御の第7実施例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0012】
(開閉制御システム1のシステム構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る開閉制御システム1のシステム構成を示す図である。図1に示す開閉制御システム1は、車両に用いられるシステムであって、モータ4の動作を制御することにより、車両が備えるパワーウインドウ3の開閉動作を制御するシステムである。
【0013】
図1に示すように、パワーウインドウ3は、車両が備えるドア2の窓枠2Aに対して、上下方向に開閉自在に設けられる。なお、開閉制御システム1は、車両が複数のパワーウインドウ3を備える場合、図1に示す各構成部を、パワーウインドウ3毎に設けることにより、複数のパワーウインドウ3の各々に対して、同様の制御を行うことが可能である。
【0014】
図1に示すように、開閉制御システム1は、モータ駆動回路10、電圧検出回路20、電流検出回路30、スイッチ40、およびマイコン100を備える。
【0015】
スイッチ40は、ユーザにより、パワーウインドウ3を開閉するためのスイッチ操作がなされる装置である。例えば、スイッチ40は、車両におけるユーザによる操作可能な位置(例えば、ドア、センターコンソール等)に設けられている。スイッチ40は、パワーウインドウ3を開くための開操作、および、パワーウインドウ3を閉じるための閉操作が可能である。スイッチ40は、ユーザにより開操作または閉操作がなされると、開操作または閉操作に応じた操作信号をマイコン100へ出力する。
【0016】
マイコン100は、「開閉制御装置」の一例であり、ユーザによってスイッチ40に対するスイッチ操作がなされると、当該スイッチ操作に応じて、モータ駆動回路10に制御信号を供給し、モータ4の動作を制御することにより、パワーウインドウ3を開閉動作させる。この際、マイコン100は、電圧検出回路20によって検出されるモータ4の駆動電圧V、および、パルス発生器4Aから出力されるモータ4の回転軸の回転量を表すパルス信号に基づいて、パワーウインドウ3による挟み込みが生じているか否かを判定することができる。そして、マイコン100は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定した場合、パワーウインドウ3に対する所定の挟み込み防止制御を行うことができる。
【0017】
モータ駆動回路10は、マイコン100から供給される制御信号に応じて、モータ4に駆動電圧を印加することにより、モータ4を駆動する。図1に示す例では、モータ駆動回路10は、フルブリッジ回路を構成する4つのスイッチ素子11~14を備えて構成されている。スイッチ素子11およびスイッチ素子12は、バッテリ等から供給される電源電圧Vbatとグラウンドとの間において、直列接続されて設けられている。スイッチ素子13およびスイッチ素子14は、電源電圧Vbatとグラウンドとの間において、直列接続され、且つ、スイッチ素子11およびスイッチ素子12と並列に設けられている。スイッチ素子11とスイッチ素子12との間には、モータ4の一方の入力端子が接続されている。スイッチ素子13とスイッチ素子14との間には、モータ4の他方の入力端子が接続されている。モータ駆動回路10は、マイコン100から供給される制御信号に応じて、4つのスイッチ素子11~14のスイッチング動作を制御することにより、モータ4の2つの入力端子に対して、モータ4の回転軸の回転方向(すなわち、パワーウインドウ3の開閉動作方向)に応じて極性が異なる駆動電圧を印加することができる。
【0018】
モータ4は、2つの入力端子に対して印加される駆動電圧の極性に応じた回転方向に、回転軸が回転する。これにより、モータ4は、回転軸とパワーウインドウ3との間に設けられたレギュレータ(図示省略)を介して、パワーウインドウ3を開閉する。モータ4としては、例えば、DCモータが用いられる。また、モータ4は、パルス発生器4Aを備える。パルス発生器4Aは、モータ4の回転軸の回転量を表すパルス信号を出力する。パルス発生器4Aとしては、例えば、ホール素子を用いることができる。パルス発生器4Aは、モータ4の回転軸が所定角度回転する毎に、パルス信号(「モータの回転周期を示す信号」の一例)を出力する。例えば、パルス発生器4Aは、モータ4の回転軸が90°回転する毎に、パルス信号を出力する。この場合、パルス発生器4Aは、モータ4の回転軸が1回転する毎に、4つのパルス信号を出力する。
【0019】
電圧検出回路20は、モータ4の駆動電圧Vを検出し、モータ4の駆動電圧Vを表す信号を出力する。図1に示す例では、電圧検出回路20は、増幅部21、フィルタ部22、およびA/Dコンバータ23を有して構成されている。増幅部21は、モータ4の2つの入力端子に印加される駆動電圧Vを所定のゲインで増幅する。フィルタ部22は、増幅部21から出力される電圧から、スイッチング周波数の成分を除去する。A/Dコンバータ23は、フィルタ部22から出力される電圧を表すデジタル信号を、モータ4の駆動電圧Vを表す信号として出力する。
【0020】
電流検出回路30は、モータ4に流れる電流Imを検出し、モータ4に流れる電流Imを表す信号を出力する。図1に示す例では、電流検出回路30は、シャント抵抗RS、増幅部31、フィルタ部32、およびA/Dコンバータ33を有して構成されている。シャント抵抗RSは、モータ駆動回路10とグラウンドとの間の電流経路に設けられている。増幅部31は、シャント抵抗RSに生じる電圧を所定のゲインで増幅する。フィルタ部32は、増幅部31から出力される電圧からスイッチング周波数の成分を除去する。A/Dコンバータ33は、フィルタ部32から出力される電圧を表すデジタル信号を、モータ4に流れる電流Imを表す信号として出力する。
【0021】
(マイコン100のハードウェア構成)
図2は、本発明の一実施形態に係るマイコン100のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、マイコン100は、CPU(Central Processing Unit)121、ROM(Read Only Memory)122、RAM(Random Access Memory)123、および外部I/F(Interface)125を備える。各ハードウェアは、バス126を介して相互に接続されている。
【0022】
CPU121は、ROM122に記憶されている各種プログラムを実行することにより、マイコン100の動作を制御する。ROM122は、不揮発性メモリである。例えば、ROM122は、CPU121により実行されるプログラム、CPU121がプログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM123は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の主記憶装置である。例えば、RAM123は、CPU121がプログラムを実行する際に利用する作業領域として機能する。外部I/F125は、モータ駆動回路10、電圧検出回路20、電流検出回路30、およびスイッチ40に対するデータの入出力を制御する。
【0023】
(マイコン100の機能構成)
図3は、本発明の一実施形態に係るマイコン100の機能構成を示す図である。図3に示すように、マイコン100は、操作信号取得部101、電圧値取得部102、電流値取得部103、パルス信号取得部104、位置特定部105、荷重算出部106、基準値算出部107、判定値設定部109、判定値調整部110、判定部111、およびモータ制御部112を備える。
【0024】
なお、図3に示すマイコン100の各機能は、例えば、マイコン100において、ROM122に記憶されたプログラムを、CPU121が実行することにより実現される。このプログラムは、予めマイコン100に導入された状態で提供されてもよく、外部から提供されてマイコン100に導入されるようにしてもよい。後者の場合、このプログラムは、外部記憶媒体(例えば、USBメモリ、メモリカード、CD-ROM等)によって提供されてもよく、ネットワーク(例えば、インターネット等)上のサーバからダウンロードすることによって提供されるようにしてもよい。
【0025】
操作信号取得部101は、スイッチ40から出力された操作信号を取得する。電圧値取得部102は、電圧検出回路20から出力された、モータ4の駆動電圧Vを示す信号を取得する。電流値取得部103は、電流検出回路30から出力された、モータ4に流れる電流Imを示す信号を取得する。パルス信号取得部104は、パルス発生器4Aから出力された、モータ4の回転軸の回転量を表すパルス信号を取得する。
【0026】
位置特定部105は、パルス信号取得部104によって取得されたパルス信号に基づいて、パワーウインドウ3の開閉位置(窓枠2A内における高さ位置)を特定する。例えば、本実施形態では、パワーウインドウ3の開閉位置を、パルス発生器4Aから出力されるパルス信号のカウント値(以下、「パルスカウント値」と示す)で表している。具体的には、パワーウインドウ3が全閉位置にあるときに、パルスカウント値を「0」とし、パワーウインドウ3が開動作に伴って下方に移動するにつれて、パルスカウント値が、徐々に増加するようにしている。これに伴い、位置特定部105は、パルス信号取得部104によって取得されたパルス信号の発生数を、パワーウインドウ3の移動量として用いる。そして、位置特定部105は、開閉動作前のパワーウインドウ3の開閉位置を表すパルスカウント値から、パワーウインドウ3の開閉動作に伴うパルス信号の発生数を加算(開動作の場合)または減算(閉動作の場合)することにより、開閉動作後のパワーウインドウ3の開閉位置を表すパルスカウント値を算出する。このため、位置特定部105は、開閉動作後のパワーウインドウ3の開閉位置を表すパルスカウント値を算出する毎に、当該パルスカウント値を次の開閉動作時に読み出すことができるように、当該パルスカウント値をマイコン100が備えるメモリに記憶させておく。
【0027】
荷重算出部106は、パルス信号取得部104によって取得されたパルス信号、および、電圧値取得部102によって取得されたモータ4の駆動電圧Vを示す信号に基づいて、モータ4の荷重Fを算出する。例えば、荷重算出部106は、パルス信号取得部104によって取得されたパルス信号における1パルス毎に、下記数式(1)により、荷重F(n)を算出する。但し、nは、パルス信号取得部104によって取得されたパルス信号から検出されたパルスのカウント数を表す。
【0028】
【数1】
【0029】
上記数式(1)において、Ftorque(n)は、荷重F(n)のうち、モータ4の駆動トルクに依存する成分を表すものである。なお、Ftorque(n)は、下記数式(2)によって算出される。以降の説明では、Ftorque(n)を、「トルク項」と示す。なお、トルク項の計算においては、電流検出回路30から得られたモータ4に流れる電流Imを使用してもよい。
【0030】
【数2】
【0031】
上記数式(2)において、Ktは、モータ4のトルク定数[N・m/A]を示す。また、Rmは、モータ4の抵抗値[Ω]を示す。また、lは、モータ4の回転軸の単位回転角あたりのパワーウインドウ3の移動量[m/rad]を示す。また、V(n)は、カウント数nにおける駆動電圧[V](すなわち、電圧値取得部102によって取得された信号に示されている駆動電圧V)を示す。また、Keは、モータ4の逆起電力定数[V・sec/rad]を示す。また、T(n)は、カウント数nにおけるパルス信号のパルス周期[sec]を示す。当該パルス周期は、モータ4の回転軸が1回転するのに要した時間を表すものであり、パルス信号取得部104によって取得されたパルス信号から導き出される。
【0032】
また、上記数式(1)において、Facc(n)は、荷重F(n)のうち、モータ4の角加速度に依存する成分を表すものである。なお、Facc(n)は、下記数式(3)によって算出される。以降の説明では、Facc(n)を、「加速度項」と示す。
【0033】
なお、加速度項Facc(n)は、荷重F(n)を算出する計算式の一部であり、荷重F(n)の変動が大きいほど絶対値は大きくなる。一方、実際のモータ4の回転軸の角加速度は、加速度項Facc(n)とは正負が反対である。
【0034】
【数3】
【0035】
上記数式(3)において、Cは、所定の調整パラメータ[N・sec2]を示す。また、T(n)は、カウント数nにおけるパルス信号のパルス周期[sec]を示す。また、T(n-1)は、カウント数n-1におけるパルス信号のパルス周期[sec]を示す。上記数式(3)により、Facc(n)は、モータ4の回転軸の角加速度が低下するにつれて、値が小さくなっていく。
【0036】
基準値算出部107は、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)の加重平均値を基準値B(n)として算出する。具体的には、基準値算出部107は、荷重算出部106によって新たな荷重F(n)が算出される毎に、新たな荷重F(n)と直前に算出された基準値B(n-1)との加重平均値を、新たな基準値B(n)として算出する。基準値算出部107は、基準値B(n)を、下記数式(4)によって算出する。下記数式(4)において、Mは、所定の重み係数を示す。
【0037】
【数4】
【0038】
判定値設定部109は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じているか否かを判定するための、挟み込み判定値Fthを設定する。例えば、判定値設定部109は、基準値算出部107によって算出された基準値B(n)に対し、所定の許容量α1を加算した値を、挟み込み判定値Fthとして設定する。なお、許容量α1は、シミュレーション等により適切な値が予め求められ、マイコン100に設定される。
【0039】
判定値調整部110は、図5に詳細に示す第1の起動時判定値調整処理を行うことにより、モータ4の起動直後の所定の判定期間(以下、「閾値増加判定期間」と示す)において、上記数式(3)によって算出される加速度項が、所定の基準値Facc_baseline以下になった場合、挟み込み判定値Fthを、所定の増分値(ΔFth_baseline)だけ所定の第3の期間(Nacc_wait_count)高める。
【0040】
また、判定値調整部110は、図6に詳細に示す第2の起動時判定値調整処理を行うことにより、モータ4の起動直後の閾値増加判定期間において、上記数式(3)によって算出される加速度項の極大値が、所定の第1の閾値(Facc_high_peak)を超える場合、挟み込み判定値Fthを、所定の増分値(ΔFth_acc_peak)だけ所定の第1の期間(N_high)高める。また、判定値調整部110は、加速度項の極大値が、第1の閾値未満であり、且つ、所定の第1の閾値よりも小さい所定の第2の閾値(Facc_middle_peak)を超える場合、挟み込み判定値Fthを、所定の増分値(ΔFth_acc_peak)だけ所定の第2の期間(N_middle)高める。
【0041】
また、判定値調整部110は、図15に詳細に示す第3の起動時判定値調整処理を行うことにより、モータ4の起動直後の閾値増加判定期間において、上記数式(3)によって算出される現在の加速度項の算出値が、上記数式(3)によって算出される4カウント前の加速度項の算出値よりも、所定値(Facc_init_drop)以上低下した場合(すなわち、所定の単位時間あたりの加速度項の低下量が所定の閾値を超える場合)、挟み込み判定値Fthを、所定の増分値(ΔFth_acc_init_drop)だけ所定の第4の期間(Nacc_init_drop)高める。なお、判定値調整部110は、同時に複数の起動時判定値調整処理において条件を満たす場合、複数の起動時判定値調整処理の各々の増分値を、挟み込み判定値Fthに加算する。
【0042】
このように、判定値調整部110は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないときに特有の条件を満たしたときに、挟み込み判定値Fthを一時的に高めることにより、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないときにおける、パワーウインドウ3による挟み込みの誤判定を抑制することができる。
【0043】
なお、閾値増加判定期間は、モータ4の起動時からモータ4の回転が安定するまでの期間内に設定される。本実施形態では、モータ4の起動時からの所定のパルスカウント数n3(例えば、90カウント)がカウントされるまでの期間を、モータ4の回転が安定するまでの期間としている。なお、第1の起動時判定値調整処理、第2の起動時判定値調整処理、および第3の起動時判定値調整処理の各々の始期および終期は、例えば、パワーウインドウ3毎に、任意に設定可能である。各起動時判定値調整処理の始期は、他の起動時判定値調整処理の始期と一致してもよく、異なってもよい。同様に、各起動時判定値調整処理の終期は、他の起動時判定値調整処理の終期と一致してもよく、異なってもよい。
【0044】
判定部111は、パワーウインドウ3の開閉位置が所定の挟み込み監視領域内にある場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じているか否かを判定する。例えば、判定部111は、判定値設定部109によって設定された挟み込み判定値Fthを、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)が超えた場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定する。反対に、判定部111は、判定値設定部109によって設定された挟み込み判定値Fthを、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)が超えない場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないと判定する。なお、所定の挟み込み監視領域は、パワーウインドウ3の全閉位置から、所定の距離(例えば、4mm)下方に離れた位置までの領域を除く領域である。
【0045】
ここで、判定値調整部110によって、挟み込み判定値Fthが一時的に高められた場合、判定部111は、この一時的に高められた挟み込み判定値Fthを、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)が超えた場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定する。反対に、判定部111は、この一時的に高められた挟み込み判定値Fthを、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)が超えない場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないと判定する。
【0046】
これにより、本実施形態のマイコン100は、モータ4の起動直後、モータ4の回転が安定するまでの間、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないにも関わらず、モータ4の不安定な動作に起因して、荷重算出部106によって算出される荷重F(n)の値が一時的に増加した場合であっても、挟み込み判定値Fthが高められることにより、荷重F(n)の値が挟み込み判定値Fthを超えないようにすることができる。このため、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3による挟み込みの誤判定を防止することができる。
【0047】
一方、本実施形態のマイコン100は、モータ4の起動直後、モータ4の回転が安定するまでの間、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていることに起因して、荷重算出部106によって算出される荷重F(n)の値が増加した場合、挟み込み判定値Fthが高められないことにより、荷重F(n)の値が挟み込み判定値Fthを超え易くすることができる。このため、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3による挟み込みを比較的早期に検出することができる。
【0048】
モータ制御部112は、操作信号取得部101によって取得された操作信号に応じて、モータ4へ制御信号を供給してモータ4を制御することにより、パワーウインドウ3の開閉動作を制御する。
【0049】
例えば、モータ制御部112は、操作信号取得部101によってパワーウインドウ3を閉動作させるための操作信号が取得された場合、モータ4の回転軸を第1の方向に回転させるための制御信号をモータ4へ供給することにより、パワーウインドウ3を閉動作させる。
【0050】
反対に、モータ制御部112は、操作信号取得部101によってパワーウインドウ3を開動作させるための操作信号が取得された場合、モータ4の回転軸を第1の方向とは反対方向である第2の方向に回転させるための制御信号をモータ4へ供給することにより、パワーウインドウ3を開動作させる。
【0051】
また、モータ制御部112は、位置特定部105によって特定されたパワーウインドウ3の位置が、挟み込み監視領域内の位置であり、且つ、判定部111によってパワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定された場合、パワーウインドウ3が所定の挟み込み防止動作を行うように、モータ4を制御する。
【0052】
例えば、モータ制御部112は、判定部111によってパワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定された場合、モータ4を制御することにより、所定の挟み込み防止動作として、パワーウインドウ3の閉動作を停止させた後、パワーウインドウ3を所定の移動量または所定の開閉位置まで開動作させる。
【0053】
(マイコン100による処理の手順)
図4は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
まず、操作信号取得部101が、スイッチ40から出力された操作信号を取得する(ステップS401)。次に、パルス信号取得部104が、パルス発生器4Aから出力された、モータ4の回転軸の回転量を表すパルス信号を取得する(ステップS402)。そして、位置特定部105が、ステップS402で取得されたパルス信号に基づいて、パワーウインドウ3の開閉位置を特定する(ステップS403)。例えば、ステップS403では、1パルス信号を取得する毎に、モータ起動からのパワーウインドウ3の開閉位置を表すパルスカウント数nを1増加する。
【0055】
次に、位置特定部105が、ステップS403で特定されたパワーウインドウ3の開閉位置が、所定の挟み込み監視領域内であるか否かを判断する(ステップS404)。
【0056】
ステップS404において、所定の挟み込み監視領域内ではないと判定された場合(ステップS404:No)、モータ制御部112が、ステップS401で取得された操作信号に応じて、モータ4へ制御信号を供給してモータ4を制御することにより、パワーウインドウ3の通常の開閉動作(開動作または閉動作)を制御する(ステップS423)。そして、マイコン100は、ステップS423へ処理を進める。
【0057】
一方、ステップS404において、所定の挟み込み監視領域内であると判定された場合(ステップS404:Yes)、電圧値取得部102が、電圧検出回路20から出力された、モータ4の駆動電圧Vを示す信号を取得する(ステップS405)。
【0058】
そして、荷重算出部106が、ステップS402で取得されたパルス信号、および、ステップS405で取得されたモータ4の駆動電圧Vを示す信号に基づいて、パワーウインドウ3の開閉動作にかかる荷重F(n)を算出する(ステップS406)。また、基準値算出部107が、ステップS406で算出された荷重F(n)の加重平均値を基準値B(n)として算出する(ステップS407)。
【0059】
次に、判定値設定部109が、ステップS407で算出された基準値B(n)に対し、所定の許容量α1を加算した値を、挟み込み判定値Fthとして設定する(ステップS408)。
【0060】
また、判定値調整部110が、判定値調整処理(第1の起動時判定値調整処理および第2の起動時判定値調整処理)を行う(ステップS409,S410)。これにより、判定値調整部110は、モータ4の起動直後の閾値増加判定期間において、加速度項が所定の基準値以下になった場合、および、加速度項の極大値が所定の閾値を超えた場合、挟み込み判定値Fthを一時的に高める。
【0061】
次に、判定部111が、パワーウインドウ3による挟み込みが生じているか否かを判定する(ステップS421)。具体的には、判定部111は、ステップS406で算出された荷重F(n)が、ステップS408で設定された挟み込み判定値Fth、または、ステップS409,S410で一時的に高められた挟み込み判定値Fthを超えた場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定する。反対に、判定部111は、ステップS406で算出された荷重F(n)が、ステップS408で設定された挟み込み判定値Fth、または、ステップS409,S410で一時的に高められた挟み込み判定値Fth以下である場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないと判定する。
【0062】
ステップS421において、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定された場合(ステップS421:Yes)、モータ制御部112が、モータ4へ制御信号を供給してモータ4を制御することにより、パワーウインドウ3の挟み込み防止動作を制御する(ステップS422)。そして、マイコン100は、ステップS424へ処理を進める。
【0063】
一方、ステップS421において、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないと判定された場合(ステップS421:No)、モータ制御部112が、ステップS401で取得された操作信号に応じて、モータ4へ制御信号を供給してモータ4を制御することにより、パワーウインドウ3の通常の開閉動作(開動作または閉動作)を制御する(ステップS423)。そして、マイコン100は、ステップS424へ処理を進める。
【0064】
ステップS424では、所定の終了条件を満たすか否かを判断する。所定の終了条件とは、パワーウインドウ3の動作を終了させるためのものであり、例えば、パワーウインドウ3が全閉状態になった場合、パワーウインドウ3が全開状態になった場合、スイッチ40からの操作信号の供給が途絶えた場合等である。
【0065】
ステップS424において、所定の終了条件を満たさないと判断された場合(ステップS424:No)、マイコン100は、ステップS402へ処理を戻す。一方、ステップS424において、所定の終了条件を満たすと判断された場合(ステップS424:Yes)、マイコン100は、図4に示す一連の処理を終了する。
【0066】
(第1の起動時判定値調整処理の手順)
図5は、本発明の一実施形態に係る判定値調整部110による第1の起動時判定値調整処理の手順を示すフローチャートである。図5は、図4に示すフローチャートにおける、判定値調整部110による第1の起動時判定値調整処理(ステップS409)の手順を詳細に示すものである。特に、図5は、モータ4の起動時から、モータ4の回転が安定するまでの間に行われる、判定値調整部110による第1の起動時判定値調整処理の手順を示すものである。
【0067】
なお、第1の起動時判定値調整処理では、以下の各変数および各定数が用いられる。
【0068】
n :モータ4が起動してからのパルスカウント数
Facc(n) :パルスカウント数nにおける加速度項の算出値
Facc_baseline :加速度項の基準値
ΔFth :挟み込み判定値Fthの増分値を表す変数
ΔFth_baseline :挟み込み判定値Fthの増分値の設定値
count :挟み込み判定値Fthを増加する第3の期間の継続期間を表すカウント数
Nacc_wait_count:挟み込み判定値Fthを増加する第3の期間の長さを規定するカウント数
n_start :閾値増加判定期間の始期を表すパルスカウント数
n_end :閾値増加判定期間の終期を表すパルスカウント数
【0069】
まず、判定値調整部110は、条件{n_start≦n≦n_end}を満たすか否かを判断する(ステップS501)。条件{n_start≦n≦n_end}は、閾値増加判定期間内であるか否かを判定するためのものである。例えば、n_startには「10」が設定され、n_endには「50」が設定される。なお、nは、図4のステップS403で特定されたパワーウインドウ3のモータ起動からの開閉位置を表すパルスカウント数である。
【0070】
ステップS501において、条件{n_start≦n≦n_end}を満たさないと判断された場合(ステップS501:No)、判定値調整部110は、図5に示す一連の処理を終了する。
【0071】
一方、ステップS501において、条件{n_start≦n≦n_end}を満たすと判断された場合(ステップS501:Yes)、判定値調整部110は、条件{Facc(n)≦Facc_baseline}を満たすか否かを判断する(ステップS502)。条件{Facc(n)≦Facc_baseline}は、加速度項の算出値が所定の基準値以下になったか否かを判定するためのものである。
【0072】
ステップS502において、条件{Facc(n)≦Facc_baseline}を満たさないと判断された場合(ステップS502:No)、判定値調整部110は、ステップS504へ処理を進める。
【0073】
一方、ステップS502において、条件{Facc(n)≦Facc_baseline}を満たすと判断された場合(ステップS502:Yes)、判定値調整部110は、変数ΔFthに定数ΔFth_baselineを代入するとともに、変数countに「0」を代入する(ステップS503)。ΔFth_baselineは、挟み込み判定値Fthに対する増分値を表す。ΔFth_baselineは、シミュレーション等により適切な値が予め求められ、マイコン100に設定される。例えば、ΔFth_baselineには、「50[N]」が設定される。そして、判定値調整部110は、ステップS504へ処理を進める。
【0074】
ステップS504では、判定値調整部110は、変数countに「1」を加算する。続いて、判定値調整部110は、条件{count>Nacc_wait_count}を満たすか否かを判断する(ステップS505)。条件{count>Nacc_wait_count}は、挟み込み判定値Fthを増加する期間が終期に達したか否かを判定するためのものである。例えば、Nacc_wait_countには「10」が設定される。
【0075】
ステップS505において、条件{count>Nacc_wait_count}を満たさないと判断された場合(ステップS505:No)、判定値調整部110は、図5に示す一連の処理を終了する。
【0076】
一方、ステップS505において、条件{count>Nacc_wait_count}を満たすと判断された場合(ステップS505:Yes)、判定値調整部110は、変数ΔFthに「0」を代入し(ステップS506)、図5に示す一連の処理を終了する。
【0077】
図5に示す一連の処理により、モータ4の回転が不安定な期間に設定される閾値増加判定期間において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になった場合、挟み込み判定値Fthが、所定量且つ一定期間高められる。
【0078】
(第2の起動時判定値調整処理の手順)
図6は、本発明の一実施形態に係る判定値調整部110による第2の起動時判定値調整処理の手順を示すフローチャートである。図6は、図4に示すフローチャートにおける、判定値調整部110による第2の起動時判定値調整処理(ステップS410)の手順を詳細に示すものである。特に、図6は、モータ4の起動時から、モータ4の回転が安定するまでの間に行われる、判定値調整部110による第2の起動時判定値調整処理の手順を示すものである。
【0079】
なお、第2の起動時判定値調整処理では、以下の各変数および各定数が用いられる。
【0080】
n :モータ4が起動してからのパルスカウント数
ΔFth :挟み込み判定値Fthの増分値を表す変数
ΔFth_acc_peak :挟み込み判定値Fthの増分値の設定値
count :挟み込み判定値Fthを増加する期間の継続期間を表すカウント数
Facc_peak :加速度項Facc(n)の極大値
Facc_high_peak :加速度項Facc(n)の極大値の第1の閾値
Facc_middle_peak:加速度項Facc(n)の極大値の第2の閾値
N :挟み込み判定値Fthを増加する期間の終期を表す変数
N_high :挟み込み判定値Fthを増加する第1の期間の長さの設定値
N_middle :挟み込み判定値Fthを増加する第2の期間の長さの設定値
【0081】
まず、判定値調整部110は、条件{n_start≦n≦n_end}を満たすか否かを判断する(ステップS601)。条件{n_start≦n≦n_end}は、閾値増加判定期間内であるか否かを判定するためのものである。例えば、n_startには「10」が設定され、n_endには「25」が設定される。なお、nは、図4のステップS403で特定されたパワーウインドウ3のモータ起動からの開閉位置を表すパルスカウント数である。
【0082】
ステップS601において、条件{n_start≦n≦n_end}を満たさないと判断された場合(ステップS601:No)、判定値調整部110は、図6に示す一連の処理を終了する。
【0083】
一方、ステップS601において、条件{n_start≦n≦n_end}を満たすと判断された場合(ステップS601:Yes)、判定値調整部110は、極大値Facc_peakが検出されたか否かを判断する(ステップS602)。極大値Facc_peakは、すなわち、加速度項の極大値である。例えば、判定値調整部110は、条件{(Facc(n-2)-ΔFacc_error)≦Facc(n-1)}および条件{(Facc(n)-ΔFacc_error)≦Facc(n-1)}の双方を満たす場合、極大値Facc_peakが検出されたと判断し、その時のFacc(n-1)を、極大値Facc_peakとする。
【0084】
ステップS602において、極大値Facc_peakが検出されていないと判断された場合(ステップS602:No)、判定値調整部110は、図6に示す一連の処理を終了する。
【0085】
ステップS602において、極大値Facc_peakが検出されたと判断された場合(ステップS602:Yes)、判定値調整部110は、変数countに「0」を代入する(ステップS603)。
【0086】
そして、判定値調整部110は、条件{Facc_peak>Facc_high_peak}を満たすか否かを判断する(ステップS604)。
【0087】
ステップS604において、条件{Facc_peak>Facc_high_peak}を満たすと判断された場合(ステップS604:Yes)、判定値調整部110は、変数NにN_highを代入し(ステップS605)、ステップS609へ処理を進める。
【0088】
一方、ステップS604において、条件{Facc_peak>Facc_high_peak}を満たさないと判断された場合(ステップS604:No)、判定値調整部110は、条件{Facc_peak>Facc_middle_peak}を満たすか否かを判断する(ステップS606)。
【0089】
ステップS606において、条件{Facc_peak>Facc_middle_peak}を満たすと判断された場合(ステップS606:Yes)、判定値調整部110は、変数NにN_middleを代入し(ステップS607)、ステップS609へ処理を進める。
【0090】
一方、ステップS606において、条件{Facc_peak>Facc_middle_peak}を満たさないと判断された場合(ステップS606:No)、判定値調整部110は、変数Nに「0」を代入し(ステップS608)、ステップS609へ処理を進める。
【0091】
ステップS609では、判定値調整部110は、条件{N>0}を満たすか否かを判断する。
【0092】
ステップS609において、条件{N>0}を満たさないと判断された場合(ステップS609:No)、判定値調整部110は、図6に示す一連の処理を終了する。
【0093】
一方、ステップS609において、条件{N>0}を満たすと判断された場合(ステップS609:Yes)、判定値調整部110は、変数countに「1」を加算する(ステップS610)。続いて、判定値調整部110は、条件{count>N}を満たすか否かを判断する(ステップS611)。
【0094】
ステップS611において、条件{count>N}を満たすと判断された場合(ステップS611:Yes)、判定値調整部110は、変数ΔFthに「0」を代入するとともに、変数Nに「0」を代入する(ステップS612)。そして、判定値調整部110は、図6に示す一連の処理を終了する。
【0095】
一方、ステップS611において、条件{count>N}を満たさないと判断された場合(ステップS611:No)、判定値調整部110は、変数ΔFthにΔFth_acc_peakを代入する(ステップS613)。そして、判定値調整部110は、図6に示す一連の処理を終了する。ΔFth_acc_peakは、挟み込み判定値Fthに対する増分値を表す。ΔFth_acc_peakは、シミュレーション等により適切な値が予め求められ、マイコン100に設定される。例えば、ΔFth_acc_peakには、「80[N]」が設定される。
【0096】
図6に示す一連の処理により、モータ4の回転が不安定な期間に設定される閾値増加判定期間において、加速度項の極大値が所定の閾値(Facc_high_peakまたはFacc_middle_peak)を超えた場合、挟み込み判定値Fthが、所定量且つ一定期間高められる。
【0097】
(第1の起動時判定値調整処理の具体例)
図7は、本発明の一実施形態に係る判定値調整部110による第1の起動時判定値調整処理の具体例を説明するための図である。図7では、パワーウインドウ3の挟み込みが生じたときと、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないときとのそれぞれについて、パワーウインドウ3の起動時からの、加速度項の変化を表している。なお、図7では、パワーウインドウ3の挟み込みが生じたときの加速度項の変化を実線で表しており、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないときの加速度項の変化を一点鎖線で表している。
【0098】
図7に示すように、モータ4の起動直後において、パワーウインドウ3の挟み込みが生じたとき、比較的短い期間(図7に示す例では、およそ22カウントまでの期間)加速度項が、基準値Facc_baselineを間に挟んで上下に変動する。それ以降、モータ4の角加速度が徐々に低下していくため、加速度項は、正の値を維持する。ここで、角加速度と加速度項は符号が逆である。
【0099】
一方、図7に示すように、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないとき、比較的長い期間(図7に示す例では、およそ46カウントまでの期間)加速度項が、基準値Facc_baselineを間に挟んで上下に変動する。パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないとき、モータ4の回転軸は、窓を閉める方向に回転し続けるが、パワーウインドウ3のレギュレータの弛みにより、加減速を繰り返すからである。具体的には、レギュレータの弛み量が大きい場合には、モータ4の回転軸の加速度が大きくなり、レギュレータの弛み量が小さい場合には、モータ4の回転軸の加速度が小さくなる。それ以降、レギュレータの弛みが無くなると、モータ4の回転軸は等速で回転するため、加速度項は略0を維持する。
【0100】
本実施形態のマイコン100は、このような加速度項の特性の違いに鑑み、第1の判定値調整処理を行うことにより、挟み込み判定値Fthを調整することで、パワーウインドウ3の挟み込みが生じているか否かの判別をより高精度に行うことができる。
【0101】
既に説明したとおり、第1の判定値調整処理は、加速度項が、基準値Facc_baseline以下になった場合、挟み込み判定値Fthを所定量(ΔFth_baseline)且つ一定期間(Nacc_wait_count)高める。すなわち、加速度項Facc(n)が、基準値Facc_baseline以下になった場合、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていない可能性が高いからである。なお、Facc_baseline、ΔFth_baseline、Nacc_wait_countは、いずれもパワーウインドウ3の種類毎(例えば、車種毎)に、シミュレーションや実施試験等によって予め定められた好適な定数である。例えば、図7に示す例では、Facc_baselineを「0[N]」としているが、これに限らない。
【0102】
例えば、図7に示す例では、パワーウインドウ3の挟み込みが生じたとき、タイミングt1(およそ15カウント目)においてのみ、加速度項が、基準値Facc_baseline以下になる。よって、タイミングt1のみにおいて、挟み込み判定値Fthが所定量且つ一定期間高められる。すなわち、パワーウインドウ3の挟み込みが生じているときは、タイミングt1以降は、挟み込み判定値Fthが高められないため、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超え易くなり、よって、挟み込みが生じていることを比較的早期に判別することができる。
【0103】
一方、図7に示す例では、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないとき、タイミングt2,t3,t4(およそ19カウント目,32カウント目,42カウント目)の各々において、加速度項が、基準値Facc_baseline以下になる。よって、タイミングt2,t3,t4の各々において、挟み込み判定値Fthが所定量且つ一定期間高められる。すなわち、一方、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないときは、タイミングt1以降も、繰り返し挟み込み判定値Fthが高められるため、比較的長期間の間、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超え難くなり、よって、挟み込みが生じているとの誤判別を抑制することができる。
【0104】
(加速度項の極大値の判定方法)
図8は、本発明の一実施形態に係る判定値調整部110による加速度項の極大値の判定方法を説明するための図である。
【0105】
第2の起動時判定値調整処理において、まず、判定値調整部110は、加速度項の極大値を判定する。具体的には、図8に示すように、加速度項の極大値は、その前後の加速度項よりも値が大きくなる。このため、判定値調整部110は、条件{(Facc(n-2)-ΔFacc_error)≦Facc(n-1)}および条件{(Facc(n)-ΔFacc_error)≦Facc(n-1)}の双方を満たす場合、Facc(n-1)を、極大値Facc_peakとして判定する。
【0106】
そして、判定値調整部110は、条件{Facc_peak>Facc_high_peak}を満たす場合、第1の期間、挟み込み判定値Fthを高める。または、判定値調整部110は、条件{Facc_high_peak≧Facc_peak>Facc_middle_peak}を満たす場合、第1の期間よりも短い第2の期間、挟み込み判定値Fthを高める。
【0107】
これにより、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3のレギュレータの遊びの有無によって、加速度項Facc(n)の振幅が変動する場合であっても、Facc_high_peakおよびFacc_middle_peakを適切に設定することで、レギュレータの遊びが生じている場合と、レギュレータの遊びが生じていない場合とのそれぞれにおいて、挟み込み判定値Fthによる挟み込み判定を適切に行うことができる。
【0108】
なお、レギュレータの遊びが有る場合とは、例えば、パワーウインドウ3の下降動作を行った後に、パワーウインドウ3の上昇動作を行った場合に生じ得る。また、レギュレータの遊びが無い場合とは、例えば、パワーウインドウ3の上昇動作を行った後に、さらにパワーウインドウ3の上昇動作を行った場合に生じ得る。
【0109】
(第2の判定値調整処理の具体例)
図9および図10は、本発明の一実施形態に係る判定値調整部110による第2の起動時判定値調整処理の具体例を説明するための図である。
【0110】
図9は、パワーウインドウ3にガタが生じていないときの加速度項の一例を表す。図9に示す例では、パワーウインドウ3の開閉位置が409カウント目にあるときに、加速度項の極大値Facc_peakが生じている。そして、この極大値Facc_peakは、閾値Facc_high_peakよりも小さいが、閾値Facc_middle_peakよりも大きい。この場合、判定値調整部110は、所定の第2の期間N_middle(例えば、4カウント)の間、挟み込み判定値Fthを高める。
【0111】
図10は、パワーウインドウ3にガタが生じているときの加速度項の一例を表す。図10に示す例では、パワーウインドウ3の開閉位置が410カウント目にあるときに、加速度項の極大値Facc_peakが生じている。そして、この極大値Facc_peakは、閾値Facc_high_peakよりも大きい。この場合、判定値調整部110は、この極大値Facc_peakが検出されたタイミングから、所定の第1の期間N_high(例えば、6カウント)の間、挟み込み判定値Fthを高める。
【0112】
例えば、図8に示すように、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないとき、パワーウインドウ3の挟み込みが生じているときよりも、加速度項の極大値が大きくなる傾向がある。これは、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないときは、パワーウインドウ3の挟み込みが生じているときよりも、モータ4の回転軸の角加速度の変動が大きくなるからであると考えられる。そこで、判定値調整部110は、図9および図10に示すように、判定値調整部110が閾値Facc_high_peakまたはFacc_middle_peakを超えた場合、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていない可能性が高いものとし、挟み込み判定値Fthを一時的に高めて、パワーウインドウ3の挟み込みの誤判定を抑制することができる。
【0113】
特に、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3のレギュレータの遊びの有無によって、加速度項の極大値Facc_peakが変動するような場合であっても、2つの閾値Facc_high_peakおよびFacc_middle_peakの各々を適切に設定することで、レギュレータの遊びが生じている場合と、レギュレータの遊びが生じていない場合との各々において、挟み込み判定値Fthを増加させる期間を適切に設定することができ、したがって、挟み込み判定値Fthによる挟み込み判定を適切に行うことができる。
【0114】
(マイコン100による制御の第1実施例)
図11は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第1実施例を示す図である。図11は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じており、且つ、パワーウインドウ3にガタが生じていないときの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)を表す。図11において、タイミングt11は、第1の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt12は、第1の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。
【0115】
図11に示すように、第1実施例では、第1の起動時判定値調整処理により、タイミングt11において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt12において、挟み込み判定値Fthが元に戻されている。さらに、タイミングt13において、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えるため、この時点で、判定部111により、「パワーウインドウ3による挟み込みが生じている」と判定される。
【0116】
この第1実施例では、上記のように起動直後において挟み込み判定値Fthが高められたものの、すぐに挟み込み判定値Fthが元に戻されたため、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていることを、比較的早期に検出できることが確認された。
【0117】
(マイコン100による制御の第2実施例)
図12は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第2実施例を示す図である。図12は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じており、且つ、パワーウインドウ3にガタが生じているときの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)を表す。図12において、タイミングt21は、第1の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt22は、第2の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt23は、第1の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。また、タイミングt24は、第2の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。
【0118】
図12に示すように、第2実施例では、第1の起動時判定値調整処理により、タイミングt21において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。さらに、第2の起動時判定値調整処理により、タイミングt22において、加速度項の極大値(Facc_peak)が所定の第2の閾値(Facc_middle_peak)を超えたため、挟み込み判定値Fthが、所定量さらに高められている。
【0119】
そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt23において、挟み込み判定値Fthの第1の起動時判定値調整処理による増加分が解消されており、さらに、所定の第2の期間の経過後のタイミングt24において、挟み込み判定値Fthの第2の起動時判定値調整処理による増加分が解消されている。同時に、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えるため、この時点で、判定部111により、「パワーウインドウ3による挟み込みが生じている」と判定される。
【0120】
この第2実施例では、上記のように起動直後において挟み込み判定値Fthが高められたものの、すぐに挟み込み判定値Fthが元に戻されたため、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていることを、比較的早期に判定できることが確認された。
【0121】
(マイコン100による制御の第3実施例)
図13は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第3実施例を示す図である。図13は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じてなく、且つ、パワーウインドウ3にガタが生じているときの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)を表す。図13において、タイミングt31は、第1の起動時判定値調整処理(1回目)の開始タイミングを示す。また、タイミングt32は、第1の起動時判定値調整処理(1回目)の終了タイミングを示す。また、タイミングt33は、第1の起動時判定値調整処理(2回目)の開始タイミングを示す。また、タイミングt34は、第1の起動時判定値調整処理(2回目)の終了タイミングを示す。
【0122】
図13に示すように、第3実施例では、第1の起動時判定値調整処理(1回目)により、タイミングt31において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt32において、挟み込み判定値Fthが元に戻されている。
【0123】
その後、第1の起動時判定値調整処理(2回目)により、タイミングt33において、再び加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt34において、挟み込み判定値Fthが元に戻されている。
【0124】
この第3実施例では、上記のように適切に挟み込み判定値Fthが高められたため、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えることはなく、よって、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると誤判定されないことが確認された。
【0125】
以上説明したように、本実施形態のマイコン100は、モータ4の回転周期を示す信号に基づいて、モータ4の回転周期の変化に基づく加速度項Facc(n)と、加速度項Facc(n)に基づくモータ4に加わる荷重F(n)とを算出する荷重算出部106と、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えた場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定する判定部111と、モータ4の起動後の一定期間において、加速度項Facc(n)の極大値が所定の閾値を超える場合、挟み込み判定値Fthを高める判定値調整部110とを備える。
【0126】
これにより、本実施形態のマイコン100は、加速度項の極大値が所定の閾値を超えるという、パワーウインドウ3が弛みの生じ得るレギュレータを介して駆動され、且つ、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていない場合に特有の現象を検知することができる。そして、本実施形態のマイコン100は、この現象を検知した場合に、挟み込み判定値Fthを一時的に高めることで、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超え難くすることができる。このため、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないときの、パワーウインドウ3による挟み込みの誤判定を防止することができる。したがって、本実施形態のマイコン100によれば、モータ4の起動直後における物体の挟み込みの判定精度を高めることができる。
【0127】
また、本実施形態のマイコン100において、荷重算出部106は、加速度項Facc(n)と、モータ4に加わる電圧およびモータ4の回転周期に基づくトルク項Ftorque(n)とを算出し、加速度項Facc(n)にトルク項Ftorque(n)を加算することにより、モータ4に加わる荷重F(n)を算出することができる。
【0128】
これにより、本実施形態のマイコン100は、モータ4に加わる荷重F(n)の算出精度をより高めることができる。したがって、本実施形態のマイコン100によれば、この荷重F(n)に基づくパワーウインドウ3に挟み込みが生じているか否かの判定をより高精度に行うことができる。
【0129】
また、本実施形態のマイコン100において、判定値調整部110は、モータ4の起動後の一定期間において、加速度項の極大値が第1の閾値(Facc_high_peak)を超える場合、挟み込み判定値Fthを第1の期間(N_high[カウント])の間高め、加速度項の極大値が第1の閾値未満であり、且つ、第1の閾値よりも小さい第2の閾値(Facc_middle_peak)を超える場合、挟み込み判定値Fthを第1の期間よりも短い第2の期間(N_middle[カウント])の間高めることができる。
【0130】
これにより、本実施形態のマイコン100は、加速度項の極大値から、異物を挟み込んでいない可能性を評価し、異物を挟み込んでいない可能性に応じて、挟み込み判定値Fthを増加する期間を変えることができる。このため、本実施形態のマイコン100によれば、パワーウインドウ3の挟み込みの検知精度の低下を抑制しつつ、パワーウインドウ3の挟み込みの誤検出を抑制することができる。
【0131】
また、本実施形態のマイコン100において、判定値調整部110は、モータ4の起動後の一定期間において、加速度項の極大値が所定の閾値を超える毎に、挟み込み判定値Fthを高めることができる。
【0132】
これにより、本実施形態のマイコン100は、モータ4の起動後の一定期間に、必要に応じて挟み込み判定値Fthを複数回高めることができる。
【0133】
また、本実施形態のマイコン100において、判定値調整部110は、荷重算出部106によって算出された連続する3つの加速度項Facc(n-2),Facc(n-1),Facc(n)のうち、2番目の加速度項Facc(n-1)が、1番目の加速度項Facc(n-2)および3番目の加速度項Facc(n)の双方よりも大きい場合、2番目の加速度項Facc(n-1)を、加速度項の極大値として検出することができる。
【0134】
これにより、本実施形態のマイコン100は、比較的容易に、加速度項の極大値を検出することができる。
【0135】
また、本実施形態のマイコン100において、判定値調整部110は、加速度項が、モータ4の角加速度が減速から加速に転じたことを判定するための所定の基準値(Facc_baseline)以下となった場合、その時点から第3の期間(Nacc_wait_count)の間、挟み込み判定値Fthを高めることができる。
【0136】
これにより、本実施形態のマイコン100は、例えばパワーウインドウ3のレギュレータの撓みに起因して、モータ4の回転軸の角加速度が減速から加速に転じるような場合、パワーウインドウ3による異物の挟み込みが生じていない可能性が高いので、挟み込み判定値Fthを一時的に高めて、パワーウインドウ3の挟み込みの誤判定を抑制することができる。
【0137】
また、本実施形態のマイコン100において、所定の基準値(Facc_baseline)は0であってもよい。
【0138】
これにより、本実施形態のマイコン100は、加速度項が負の場合、パワーウインドウ3による異物の挟み込みが生じていない可能性が高いので、挟み込み判定値Fthを高めて、パワーウインドウ3の挟み込みの誤判定を抑制することができる。
【0139】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0140】
例えば、本発明の一実施形態では、マイコン100による制御対象の開閉体の一例としてパワーウインドウ3を用いているが、これに限らず、制御対象とする開閉体は、サンルーフ、スライドドア等、車両に搭載されているその他の開閉体や、車両以外に設けられている開閉体(例えば、電動シャッター等)等、少なくともモータの駆動により開閉動作を行うものであれば、如何なる開閉体であってもよい。
【0141】
以下、マイコン100による処理の変形例について説明する。
【0142】
(マイコン100による処理の手順の変形例)
図14は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による処理の手順の変形例を示すフローチャートである。図14に示す一連の処理は、ステップS410の処理の後に、判定値調整部110による第3の起動時判定値調整処理(ステップS411)をさらに含む点で、図4に示す一連の処理と異なる。
【0143】
すなわち、図14に示す処理では、判定値調整部110が、第1の起動時判定値調整処理、第2の起動時判定値調整処理、および第3の起動時判定値調整処理を行う(ステップS409~S411)。これにより、判定値調整部110は、モータ4の起動直後の閾値増加判定期間において、加速度項が所定の基準値以下になった場合、加速度項の極大値が所定の閾値を超えた場合、および、現在の加速度項の算出値が、4カウント前の加速度項の算出値よりも、所定値(Facc_init_drop)以上低下した場合、挟み込み判定値Fthを一時的に高める。なお、第3の起動時判定値調整処理の詳細な手順については、図15を用いて後述する。
【0144】
(第3の起動時判定値調整処理の手順)
図15は、本発明の一実施形態に係る判定値調整部110による第3の起動時判定値調整処理の手順を示すフローチャートである。図15は、図14に示すフローチャートにおける、判定値調整部110による第3の起動時判定値調整処理(ステップS411)の手順を詳細に示すものである。特に、図15は、モータ4の起動時から、モータ4の回転が安定するまでの間に行われる、判定値調整部110による第3の起動時判定値調整処理の手順を示すものである。
【0145】
なお、第3の起動時判定値調整処理では、以下の各変数および各定数が用いられる。
【0146】
n :モータ4が起動してからのパルスカウント数
n_start :閾値増加判定期間の始期を表すパルスカウント数
n_end :閾値増加判定期間の終期を表すパルスカウント数
Facc(n) :パルスカウント数nにおける加速度項の算出値
Facc_init_drop:加速度項の算出値の低下量の閾値
ΔFth :挟み込み判定値Fthの増分値を表す変数
ΔFth_acc_init_drop:挟み込み判定値Fthの増分値の設定値
count :挟み込み判定値Fthを増加する第4の期間の継続期間を表すカウント数
Nacc_init_drop:挟み込み判定値Fthを増加する第4の期間の長さを規定するカウント数
【0147】
まず、判定値調整部110は、条件{n_start≦n≦n_end}を満たすか否かを判断する(ステップS1501)。条件{n_start≦n≦n_end}は、閾値増加判定期間内であるか否かを判定するためのものである。例えば、好適な値の一例として、n_startには「25」が設定され、n_endには「90」が設定される(但し、これらに限らない)。なお、nは、図4のステップS403で特定されたパワーウインドウ3のモータ起動からの開閉位置を表すパルスカウント数である。
【0148】
ステップS1501において、条件{n_start≦n≦n_end}を満たさないと判断された場合(ステップS1501:No)、判定値調整部110は、図15に示す一連の処理を終了する。
【0149】
一方、ステップS1501において、条件{n_start≦n≦n_end}を満たすと判断された場合(ステップS1501:Yes)、判定値調整部110は、条件{Facc(n-4)-Facc(n)≧ΔFacc_init_drop}を満たすか否かを判断する(ステップS1502)。条件{Facc(n-4)-Facc(n)≧Facc_init_drop}は、現在の加速度項の算出値が、例えば4カウント前の加速度項の算出値よりも、所定値(Facc_init_drop)以上低下したか否かを判定するためのものである。ここでは、4カウント前としているが、これに限らない。
【0150】
ステップS1502において、条件{Facc(n-4)-Facc(n)≧ΔFacc_init_drop}を満たさないと判断された場合(ステップS1502:No)、判定値調整部110は、ステップS1504へ処理を進める。
【0151】
一方、ステップS1502において、条件{Facc(n-4)-Facc(n)≧ΔFacc_init_drop}を満たすと判断された場合(ステップS1502:Yes)、判定値調整部110は、変数ΔFthに定数ΔFth_acc_init_dropを代入するとともに、変数countに「0」を代入する(ステップS1503)。ΔFth_acc_init_dropは、挟み込み判定値Fthに対する増分値を表す。ΔFth_acc_init_dropは、シミュレーション等により適切な値が予め求められ、マイコン100に設定される。例えば、好適な値の一例として、ΔFth_acc_init_dropには、「85[N]」が設定される(但し、これに限らない)。そして、判定値調整部110は、ステップS1504へ処理を進める。
【0152】
ステップS1504では、判定値調整部110は、変数countに「1」を加算する。続いて、判定値調整部110は、条件{count>Nacc_init_drop}を満たすか否かを判断する(ステップS1505)。条件{count>Nacc_init_drop}は、挟み込み判定値Fthを増加する期間が終期に達したか否かを判定するためのものである。例えば、好適な値の一例として、Nacc_init_dropには「30」が設定される(但し、これに限らない)。
【0153】
ステップS1505において、条件{count>Nacc_init_drop}を満たさないと判断された場合(ステップS1505:No)、判定値調整部110は、図15に示す一連の処理を終了する。
【0154】
一方、ステップS1505において、条件{count>Nacc_init_drop}を満たすと判断された場合(ステップS1505:Yes)、判定値調整部110は、変数ΔFthに「0」を代入し(ステップS1506)、図15に示す一連の処理を終了する。
【0155】
本実施形態のマイコン100は、図15に示す一連の処理により、モータ4の回転が不安定な期間に設定される閾値増加判定期間において、現在の加速度項の算出値が、4カウント前の加速度項の算出値よりも、所定値(Facc_init_drop)以上低下した場合(すなわち、モータ4の角加速度が急激に弱まった場合)、モータ4の起動直後の、モータ4の回転が不安定な期間における、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないときの特有の事象として、挟み込み判定値Fthを、所定量且つ一定期間高めることができる。
【0156】
これにより、本実施形態のマイコン100は、モータ4の起動直後、モータ4の回転が安定するまでの間、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないにも関わらず、モータ4の不安定な動作に起因して、荷重算出部106によって算出される荷重F(n)の値が一時的に増加した場合であっても、挟み込み判定値Fthが高められることにより、荷重F(n)の値が挟み込み判定値Fthを超えないようにすることができる。このため、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3による挟み込みの誤判定を防止することができる。
【0157】
(加速度項の変化の一例)
図16は、本発明の一実施形態に係るマイコン100によって算出される加速度項の変化の一例を示す図である。図16では、パワーウインドウ3の挟み込みが生じたときと、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないときとのそれぞれについて、パワーウインドウ3の起動時からの、加速度項の変化を表している。
【0158】
図16において丸型のプロットで示すように、モータ4の起動直後において、パワーウインドウ3の挟み込みが生じたとき、加速度項の大きな上下動が生じないため、加速度項が大きく減少する期間が生じない。
【0159】
一方、図16において四角型のプロットで示すように、モータ4の起動直後において、パワーウインドウ3の挟み込みが生じていないとき、パワーウインドウ3のレギュレータの弛み等に起因して、加速度項の大きな上下動が生じるため、加速度項が大きく減少する期間(図16に示す例では、38~44カウント)が生じる。この期間は、モータ4の角加速度が急激に弱まったことを意味する期間である。
【0160】
本実施形態のマイコン100は、このような加速度項の特性の違いに鑑み、図14および図15に示すとおり、第3の判定値調整処理を行うことにより、加速度項が大きく減少する期間が生じた場合に、挟み込み判定値Fthを高めることで、パワーウインドウ3による挟み込みの誤検知を生じ難くすることができる。
【0161】
(マイコン100による制御の第4実施例)
図17は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第4実施例を示す図である。図17に示すグラフは、パワーウインドウ3による挟み込みが生じており、且つ、パワーウインドウ3にガタが生じていないときの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)の変化を表す。図17において、タイミングt41は、第1の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt42は、第1の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。
【0162】
図17に示すように、第4実施例では、第1の起動時判定値調整処理により、タイミングt41において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt42において、挟み込み判定値Fthが元に戻されている。さらに、その直後のタイミングt43において、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えるため、この時点で、判定部111により、「パワーウインドウ3による挟み込みが生じている」と判定される。
【0163】
この第4実施例では、上記のように起動直後において挟み込み判定値Fthが高められたものの、すぐに挟み込み判定値Fthが元に戻されたため、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていることを、比較的早期に検出できることが確認された。
【0164】
(マイコン100による制御の第5実施例)
図18は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第5実施例を示す図である。図18に示すグラフは、パワーウインドウ3による挟み込みが生じており、且つ、パワーウインドウ3にガタが生じているときの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)の変化を表す。図18において、タイミングt51は、第1の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt52は、第2の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt53は、第1の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。また、タイミングt54は、第2の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。
【0165】
図18に示すように、第5実施例では、第1の起動時判定値調整処理により、タイミングt51において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。さらに、第2の起動時判定値調整処理により、タイミングt52において、加速度項の極大値(Facc_peak)が所定の第2の閾値(Facc_middle_peak)を超えたため、挟み込み判定値Fthが、所定量さらに高められている。
【0166】
そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt53において、挟み込み判定値Fthの第1の起動時判定値調整処理による増加分が解消されており、さらに、所定の第2の期間の経過後のタイミングt54において、挟み込み判定値Fthの第2の起動時判定値調整処理による増加分が解消されている。同時に、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えるため、この時点で、判定部111により、「パワーウインドウ3による挟み込みが生じている」と判定される。
【0167】
この第5実施例では、上記のように起動直後において挟み込み判定値Fthが高められたものの、すぐに挟み込み判定値Fthが元に戻されたため、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていることを、比較的早期に検出できることが確認された。
【0168】
(マイコン100による制御の第6実施例)
図19は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第6実施例を示す図である。図19に示すグラフは、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないときの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)の変化を表す。図19において、タイミングt61は、第1の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt62は、第3の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。また、タイミングt63は、第1の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。また、タイミングt64は、第1の起動時判定値調整処理の再開タイミングを示す。また、タイミングt65は、第1の起動時判定値調整処理および第3の起動時判定値調整処理の終了タイミングを示す。
【0169】
図19に示すように、第6実施例では、第1の起動時判定値調整処理(1回目)により、タイミングt61において、加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。さらに、第3の起動時判定値調整処理により、タイミングt62において、現在の加速度項の算出値が、4カウント前の加速度項の算出値よりも、所定値(Facc_init_drop)以上低下したため、挟み込み判定値Fthが、所定量さらに高められている。
【0170】
そして、所定の第3の期間の経過後のタイミングt63において、挟み込み判定値Fthの第1の起動時判定値調整処理(1回目)による増加分が解消されている。
【0171】
その後、第1の起動時判定値調整処理(2回目)により、タイミングt64において、再び加速度項が所定の基準値Facc_baseline以下になったため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。
【0172】
さらに、所定の第3の期間の経過後且つ所定の第4の期間の経過後のタイミングt65において、挟み込み判定値Fthの、第1の起動時判定値調整処理(2回目)による増加分と、第3の起動時判定値調整処理による増加分とが解消されている。
【0173】
この第6実施例では、上記のように適切に挟み込み判定値Fthが高められたため、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えることはなく、よって、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると誤判定されないことが確認された。
【0174】
(マイコン100による制御の第7実施例)
図20は、本発明の一実施形態に係るマイコン100による制御の第7実施例を示す図である。図20に示すグラフは、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないとき、且つ、パワーウインドウ3が全閉状態に至るまでの、本実施形態のマイコン100による各種算出値(加速度項、荷重等)の変化を表す。図20において、タイミングt71は、第3の起動時判定値調整処理の開始タイミングを示す。
【0175】
図20に示すように、第7実施例では、第3の起動時判定値調整処理により、タイミングt71以降で、現在の加速度項の算出値が、4カウント前の加速度項の算出値よりも、所定値(Facc_init_drop)以上低下したため、挟み込み判定値Fthが、所定量高められている。
【0176】
この第7実施例では、上記のように適切に挟み込み判定値Fthが高められたため、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えることはなく、よって、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると誤判定されないことが確認された。
【0177】
以上説明したように、本実施形態のマイコン100は、モータ4の回転周期を示す信号に基づいて、モータ4の回転周期の変化に基づく加速度項Facc(n)と、加速度項Facc(n)に基づくモータ4に加わる荷重F(n)とを算出する荷重算出部106と、荷重算出部106によって算出された荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超えた場合、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていると判定する判定部111と、モータ4の起動後の一定期間において、所定の単位時間あたりの加速度項Facc(n)の低下量が所定の閾値を超える場合、その時点から第4の期間の間、挟み込み判定値Fthを高める判定値調整部110とを備える。
【0178】
これにより、本実施形態のマイコン100は、「所定の単位時間あたりの加速度項Facc(n)の低下量が所定の閾値を超える」という、パワーウインドウ3が弛みの生じ得るレギュレータを介して駆動され、且つ、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていない場合に特有の現象を検知して、この現象を検知した場合に、挟み込み判定値Fthを一時的に高めることで、荷重F(n)が挟み込み判定値Fthを超え難くすることができる。このため、本実施形態のマイコン100は、パワーウインドウ3による挟み込みが生じていないときの、パワーウインドウ3による挟み込みの誤判定を防止することができる。したがって、本実施形態のマイコン100によれば、モータ4の起動直後における物体の挟み込みの判定精度を高めることができる。
【0179】
本国際出願は、2019年11月26日に出願した日本国特許出願第2019-213651号、および、2019年6月24日に出願した日本国特許出願第2019-116735号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0180】
1 開閉制御システム
2 ドア
2A 窓枠
3 パワーウインドウ
4 モータ
10 モータ駆動回路
20 電圧検出回路
30 電流検出回路
40 スイッチ
100 マイコン(開閉制御装置)
101 操作信号取得部
102 電圧値取得部
103 電流値取得部
104 パルス信号取得部
105 位置特定部
106 荷重算出部
107 基準値算出部
109 判定値設定部
110 判定値調整部
111 判定部
112 モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20