(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】多方向入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/00 20060101AFI20221125BHJP
G05G 1/10 20060101ALI20221125BHJP
G05G 9/047 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01H25/00 F
G05G1/10 B
G05G9/047
(21)【出願番号】P 2021528160
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020023065
(87)【国際公開番号】W WO2020255858
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019113912
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】細野 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】小松 勝
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 貞幸
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康嗣
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-065398(JP,A)
【文献】特開2013-047871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/00
G05G 1/10
G05G 9/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作軸と、
前記操作軸の傾きを直交する2つの回転角度に変換する2つの連結手段と、
前記操作軸を直立状態に復帰させる少なくとも1つの復帰バネと、
2つの前記連結手段、少なくとも1つの前記復帰バネ、および、前記操作軸の一部を内部に収める枠体と
を有する操作入力部と、
前記枠体の下に設けられた板状のベース部と、
前記枠体または前記ベース部に設けられ、前記枠体に加わる荷重を検出する荷重検出器と
を備え
、
前記操作入力部は、
前記連結手段の回転角度を検出する回転センサと、
前記荷重検出器が水平方向の荷重を検出しない場合、そのときの前記回転センサの出力値を、前記回転センサの出力の原点とする補正を行う制御手段と
を有する
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記枠体または前記ベース部の中央部に設けられた柱状部をさらに備え、
前記荷重検出器は、前記柱状部の周辺に加わる歪を検出する複数の歪センサを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記柱状部は、前記ベース部と一体に形成され、
前記歪センサは、前記ベース部において前記柱状部を囲う四方向の各々に設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記柱状部は、前記枠体と一体に形成され、
前記歪センサは、前記枠体において前記柱状部を囲う四方向の各々に設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記復帰バネは、四方向の各々に設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記復帰バネは、水平方向に複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多方向入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ゲーム機等に用いられる多方向入力装置として、操作部材による傾倒操作が可能な多方向入力装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、車両等の移動体を操縦可能な移動体操縦装置に関し、操作部材の中立位置から所定角度の傾斜域においては、回転検出センサにより検出される操作角度で移動体を制御し、それ以上の操作では、圧力センサにより操作部材の操作力を検出して移動体を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、操作部材の非操作時に、操作部材が正確な中立状態に無い場合、操作部材が原点にある状態(すなわち、非操作状態)を、回転検出センサの出力からでは、容易に判断することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の多方向入力装置は、操作軸と、操作軸の傾きを直交する2つの回転角度に変換する2つの連結手段と、操作軸を直立状態に復帰させる少なくとも1つの復帰バネと、2つの連結手段、少なくとも1つの復帰バネ、および、操作軸の一部を内部に収める枠体とを有する操作入力部と、枠体の下に設けられた板状のベース部と、枠体またはベース部に設けられ、枠体に加わる荷重を検出する荷重検出器とを備える。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、操作部材が原点にある状態を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る多方向入力装置の上面側を示す外観斜視図
【
図2】第1実施形態に係る多方向入力装置の底面側を示す外観斜視図
【
図3】第1実施形態に係る多方向入力装置の分解斜視図
【
図5】第1実施形態に係る多方向入力装置が備える操作入力部の分解斜視図
【
図6】第1実施形態に係る多方向入力装置の電気的接続構成を示すブロック図
【
図7】第2実施形態に係る多方向入力装置の上面側を示す外観斜視図
【
図8】第2実施形態に係る多方向入力装置の底面側を示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第1実施形態〕
初めに、
図1~
図6を参照して、第1実施形態について説明する。なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸方向を、上下方向とし、図中X軸方向を、前後方向とし、図中Y軸方向を、左右方向とする。
【0009】
(多方向入力装置10の概要)
図1は、第1実施形態に係る多方向入力装置10の上面側を示す外観斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る多方向入力装置10の底面側を示す外観斜視図である。
【0010】
図1および
図2に示す多方向入力装置10は、ゲーム機等のコントローラ等に用いられる入力装置である。
図1および
図2に示すように、多方向入力装置10は、ケース210、操作部材220、およびFPC(Flexible Printed Circuits)230を備える。
【0011】
ケース210は、「枠体」の一例である。ケース210は、操作部材220を傾倒操作可能に支持する箱状の部材である。操作部材220は、「操作軸」の一例である。操作部材220は、ケース210の上面且つ中央部に形成された開口部211Aから上方に突出して設けられ、ユーザによる傾倒操作がなされる部分である。FPC230は、ケース210の内部からケース210の外部へ引き出された、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。
【0012】
多方向入力装置10は、操作部材220による前後方向(図中矢印D1,D2方向)および左右方向(図中矢印D3,D4方向)の傾倒操作が可能である。また、多方向入力装置10は、操作部材220による前後方向と左右方向とを組み合わせた傾倒操作が可能である。
【0013】
また、多方向入力装置10は、操作部材220の傾倒操作(傾倒方向および傾倒角度)に応じた操作信号として、X軸方向(前後方向)の回転角度検出信号と、Y軸方向(左右方向)の回転角度検出信号とを、FPC230を介して外部へ出力することができる。
【0014】
また、
図1および
図2に示すように、多方向入力装置10は、ケース210の下に設けられた板状のベース部120と、ケース210とベース部120との間に設けられた荷重検出器130とを備える。多方向入力装置10は、荷重検出器130によって、ケース210に荷重が加わることによってベース部120に生じる歪みを検出し、検出された歪みを表す歪み検出信号を外部へ出力することができる。
【0015】
(多方向入力装置10の構成)
図3は、第1実施形態に係る多方向入力装置10の分解斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る多方向入力装置10の断面図である。
図3および
図4に示すように、多方向入力装置10は、上方から順に、操作入力部200、スペーサ140、荷重検出器130、およびベース部120を備える。
【0016】
操作入力部200は、
図1および
図2を参照して説明したとおり、ケース210、操作部材220、およびFPC230を備え、操作部材220による傾倒操作がなされる部分である。操作入力部200は、操作部材220の操作方向および操作量に応じた操作信号を出力可能な、いわゆるアナログコントローラである。なお、操作入力部200の詳細な構成については、
図5を用いて後述する。
【0017】
ベース部120は、操作入力部200のケース210の下側に取り付けられる平板状の部材である。ベース部120は、任意の固定方法によってケース210に固定される。ベース部120は、柱状部121および4つの梁部122X1,122X2,122Y1,122Y2を有する。
【0018】
柱状部121は、ベース部120の中央(操作部材220の中心軸AXと同軸上)に設けられており、且つ、下方に突出した円筒状の部分である。柱状部121の底面は、多方向入力装置10が外部の設置面に実装されることによって、当該設置面に固定される。
【0019】
4つの梁部122X1,122X2,122Y1,122Y2の各々は、柱状部121の上端部を、4つの方向の各々から支持する部分である。具体的には、梁部122X1は、柱状部121の上端部を、柱状部121の前側(X軸正側)から支持する。また、梁部122X2は、柱状部121の上端部を、柱状部121の後側(X軸負側)から支持する。また、梁部122Y1は、柱状部121の上端部を、柱状部121の左側(Y軸負側)から支持する。また、梁部122Y2は、柱状部121の上端部を、柱状部121の右側(Y軸正側)から支持する。
【0020】
荷重検出器130は、操作入力部200とベース部120との間に設けられる。荷重検出器130は、ケース210に荷重が加わることによってベース部120に生じる歪みを検出し、検出された歪みを表す歪み検出信号を外部へ出力する。荷重検出器130は、FPC131および4つの歪センサ132X1,132X2,132Y1,132Y2を備える。
【0021】
FPC131は、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。FPC131は、基部131A、引き出し部131B、および接続部131Cを有して構成されている。基部131Aは、ケース210の下側かつ中央部(操作部材220の中心軸AXと同軸上)に配置される円形状の部分である。基部131Aには、4つの歪センサ132X1,132X2,132Y1,132Y2が配置される。引き出し部131Bは、基部131Aから水平方向且つ直線状にケース210の外部へ延在する部分である。接続部131Cは、引き出し部131Bの先端に設けられており、外部(コネクタ等)と接続される部分である。FPC131は、4つの歪センサ132X1,132X2,132Y1,132Y2の各々から出力された歪み検出信号を、接続部131Cから外部へ出力する。
【0022】
4つの歪センサ132X1,132X2,132Y1,132Y2の各々は、FPC131の基部131Aにおいて、中心軸AXに対して4つの方向の各々に配置され、ケース210に加わった荷重がベース部120に伝わることによる、ベース部120に生じた歪みを検出する。
【0023】
具体的には、歪センサ132X1は、基部131Aにおいて、中心軸AXよりも前側(X軸正側)の梁部122X1上に配置される。歪センサ132X1は、梁部122X1に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0024】
また、歪センサ132X2は、基部131Aにおいて、中心軸AXよりも後側(X軸負側)の梁部122X2上に配置される。歪センサ132X2は、梁部122X2に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0025】
また、歪センサ132Y1は、基部131Aにおいて、中心軸AXよりも左側(Y軸負側)の梁部122Y1上に配置される。歪センサ132Y1は、梁部122Y1に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0026】
また、歪センサ132Y2は、基部131Aにおいて、中心軸AXよりも右側(Y軸正側)の梁部122Y2上に配置される。歪センサ132Y2は、梁部122Y2に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0027】
スペーサ140は、操作入力部200とベース部120との間に設けられる平板状の部材である。スペーサ140は、操作入力部200とベース部120との間に、荷重検出器130の設置スペースを形成する。具体的には、スペーサ140は、荷重検出器130の最大厚さ寸法よりも僅かに大きい厚さ寸法を有する。また、スペーサ140には、荷重検出器130(基部131Aおよび引き出し部131B)の外周形状に沿った形状の開口140Aが形成されている。これにより、スペーサ140は、操作入力部200とベース部120との間において、当該スペーサ140の開口140A内に、荷重検出器130(基部131Aおよび引き出し部131B)を設置することができる。
【0028】
(操作入力部200の構成)
図5は、第1実施形態に係る多方向入力装置10が備える操作入力部200の分解斜視図である。
【0029】
図5に示すように、多方向入力装置10は、ケース210を有している。ケース210は、上側ケース211、下側ケース212、および中間ケース213を有して構成されている。ケース210は、上側ケース211の上面に、操作部材220を上下方向に貫通した状態で配置するための開口部211Aを有する。ケース210は、上側ケース211、下側ケース212、および中間ケース213が組み合わされることにより、内部に収容空間を有する箱状に形成される。
【0030】
図5に示すように、多方向入力装置10におけるケース210の上部には、操作部材220が設けられる。操作部材220は、上側ケース211の開口部211Aから上方に突出し、操作者による傾倒操作がなされる操作部221と、操作部221から下方に延在し、開口部211Aを貫通して配置される軸部222とを有する。操作部材220は、軸部222の下端部が、後述する第1連動部材116の軸部116Bと係合する。
【0031】
ケース210の内部(上側ケース211と中間ケース213との間)には、4つのコイルばね114a,114b,114c,114d、ばね受け部材115、第1連動部材116、および第2連動部材117が収容される。
【0032】
4つのコイルばね114a,114b,114c,114dは、「復帰ばね」の一例である。4つのコイルばね114a,114b,114c,114dは、中心軸AXに対して4つの方向の各々に、上下方向に弾性変形可能に、中間ケース213の貫通孔213A内に配置される。4つのコイルばね114a,114b,114c,114dは、各自の弾性復帰力により、中心軸AXに対する4つの方向の各々で、ばね受け部材115を上方に付勢する。
【0033】
ばね受け部材115は、金属板が加工されることによって形成される部材である。ばね受け部材115は、中心軸AXに対する4つの方向の各々に設けられた4つの受け部115Aを有し、当該4つの受け部115Aによって、4つのコイルばね114a,114b,114c,114dの各々の上端部を受ける。ばね受け部材115は、第1連動部材116と第2連動部材117の下面に弾接しており、4つのコイルばね114a,114b,114c,114dの各々からの付勢力を、第1連動部材116および第2連動部材117に作用させる。
【0034】
第1連動部材116は、「連結手段」の一例である。第1連動部材116は、操作部材220のX軸方向への傾倒操作に伴って、X軸方向に回動する部材である。第1連動部材116は、上方からの平面視において長方形状の開口部116Dを有する。開口部116D内には、X軸方向に延在する円柱状の軸部116Bが設けられている。軸部116Bは、操作部材220の軸部222の下端部と係合することにより、操作部材220の上下方向への移動を規制することができる。第1連動部材116は、Y軸方向における両端部に、Y軸方向に突出する円柱状の一対の軸部116Cを有する。第1連動部材116は、一対の軸部116Cの各々が、上側ケース211に設けられた軸受け部(図示省略)によって軸支されることにより、上側ケース211によってX軸方向に回動可能に支持される。一方の軸部116Cの先端部には、第1連動部材116の回動動作を検出するための磁石116Aが設けられている。なお、ばね受け部材115と当接する第1連動部材116の下面は、平坦面となっている。操作部材220の非操作時において、第1連動部材116の下面は、4つのコイルばね114a,114b,114c,114dの各々の付勢力により、ばね受け部材115と面接触する。これにより、第1連動部材116は、X軸方向に回動していない状態(すなわち、操作部材220を中立状態にさせる状態)となる。
【0035】
第2連動部材117は、「連結手段」の他の一例である。第2連動部材117は、操作部材220のY軸方向への傾倒操作に伴って、Y軸方向に回動する部材である。第2連動部材117は、第1連動部材116の上側において、第1連動部材116と直交して配置される。第2連動部材117は、上方側に向かってアーチ状に湾曲形成されており、そのアーチ状部分の長手方向に沿って開口部117Bが形成されている。開口部117B内には、操作部材220の軸部222が貫通して配置される。第2連動部材117は、X軸方向における両端部に、X軸方向に突出する円柱状の一対の軸部117Cを有する。第2連動部材117は、一対の軸部117Cの各々が、上側ケース211に設けられた軸受け部(図示省略)によって軸支されることにより、上側ケース211によってY軸方向に回動可能に支持される。一方の軸部117Cの先端部には、第2連動部材117の回動角度を検出するための、磁石117Aが設けられている。なお、ばね受け部材115と当接する第2連動部材117の下面は、平坦面となっている。操作部材220の非操作時において、第2連動部材117の下面は、4つのコイルばね114a,114b,114c,114dの各々の付勢力により、ばね受け部材115と面接触する。これにより、第2連動部材117は、Y軸方向に回動していない状態(すなわち、操作部材220を中立状態にさせる状態)となる。
【0036】
また、
図5に示すように、多方向入力装置10におけるケース210の内部(中間ケース213と下側ケース212との間)には、回転センサ118および回転センサ119が設けられる。本実施形態では、回転センサ118および回転センサ119として、GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子が用いられている。
【0037】
回転センサ118は、FPC230上の、第1連動部材116に設けられた磁石116Aと対向する位置に配置され、第1連動部材116の回転角度(すなわち、操作部材220のX軸方向の傾倒角度)を検出する。回転センサ118は、FPC230を介して、第1連動部材116の回転角度を表す回転角度検出信号を出力する。
【0038】
回転センサ119は、FPC230上の、第2連動部材117に設けられた磁石117Aと対向する位置に配置され、第2連動部材117の回転角度(すなわち、操作部材220のY軸方向の傾倒角度)を検出する。回転センサ119は、FPC230を介して、第2連動部材117の回転角度を表す回転角度検出信号を出力する。
【0039】
以上のように構成された多方向入力装置10は、操作部材220の傾倒操作がなされると、第1連動部材116および第2連動部材117の一方または双方が回動する。これにより、操作部材220の傾倒方向および傾倒角度に応じて、回転角度検出信号が、回転センサ118および回転センサ119の一方または双方から、FPC230を介して、外部(例えば、後述する制御装置150)へ出力される。
【0040】
そして、多方向入力装置10は、操作部材220の傾倒操作が解除されると、4つのコイルばね114a,114b,114c,114dからの付勢力により、ばね受け部材115、第1連動部材116、および第2連動部材117を介して、操作部材220が中立状態に復帰する。
【0041】
また、多方向入力装置10は、操作部材220の傾倒操作が行われた場合に限らず、ケース210に荷重が加えられると、ベース部120において、柱状部121が固定されているのに対して、4つの梁部122X1,122X2,122Y1,122Y2に、荷重が加えられた方向および荷重の大きさに応じた歪みが生じる。この場合、4つの歪みセンサ132X1,132X2,132Y1,132Y2の各々によって、4つの梁部122X1,122X2,122Y1,122Y2の各々の歪みが検出される。そして、4つの歪みセンサ132X1,132X2,132Y1,132Y2の各々から、歪み検出信号が、FPC131を介して、外部(例えば、後述する制御装置150)へ出力される。
【0042】
(多方向入力装置10の電気的接続構成)
図6は、第1実施形態に係る多方向入力装置10の電気的接続構成を示すブロック図である。
図6に示すように、多方向入力装置10は、各回転センサ118,119および各歪みセンサ132X1,132X2,132Y1,132Y2に加えて、制御装置150をさらに備える。
【0043】
制御装置150は、「制御手段」の一例である。制御装置150は、多方向入力装置10の各種制御を行う。制御装置150は、例えば、IC(Integrated Circuit)である。
【0044】
制御装置150は、FPC230を介して、各回転センサ118,119と接続されている。制御装置150は、FPC230を介して、各回転センサ118,119から出力された回転角度検出信号を取得する。
【0045】
また、制御装置150は、FPC131を介して、各歪みセンサ132X1,132X2,132Y1,132Y2と接続されている。制御装置150は、FPC131を介して、各歪みセンサ132X1,132X2,132Y1,132Y2から出力された歪み検出信号を取得する。
【0046】
そして、例えば、制御装置150は、回転センサ118から取得した回転角度検出信号に基づいて、操作部材220のX軸方向の傾倒角度を検出することができる。
【0047】
また、例えば、制御装置150は、回転センサ119から取得した回転角度検出信号に基づいて、操作部材220のY軸方向の傾倒角度を検出することができる。
【0048】
また、例えば、制御装置150は、各歪みセンサ132X1,132X2,132Y1,132Y2から取得した各歪み検出信号に基づいて、ケース210に対して各方向(X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向)に加えられた荷重を検出することができる。
【0049】
そして、例えば、制御装置150は、検出された荷重に基づいて、操作部材220による操作内容を判定することができる。
【0050】
例えば、制御装置150は、X-Y平面上における特定の方向の歪み量が増加した場合、操作部材220によってその方向への傾倒操作がなされたと判定することができる。この場合、制御装置150は、歪み量に応じて、操作部材220の傾倒角度を判定することができる。
【0051】
また、制御装置150は、X-Y平面上における4つの方向の各々の歪み量が略均等に増加した場合、操作部材220によってZ軸方向への押圧操作がなされたと判定することができる。この場合、制御装置150は、X-Y平面上における4つの方向の各々の歪み量に応じて、操作部材220に対するZ軸方向への押圧荷重を判定することができる。
【0052】
また、例えば、制御装置150は、操作部材220が物理的に特定の方向に最大角度まで傾倒した状態において、その方向への歪み量がさらに増加した場合、操作部材220によってその方向へのさらなる押し込み操作がなされたと判定することができる。この場合、制御装置150は、歪み量に応じて、操作部材220のさらなる押し込み操作の荷重の大きさを判定することができる。
【0053】
また、例えば、制御装置150は、4つの方向の各々の歪み量に基づいて、操作部材220に対する操作者の接触および非接触を検出することができる。
【0054】
例えば、制御装置150は、4つの方向の各々の歪み量の少なくとも一つが略ゼロではない場合、操作部材220に対する操作者の接触を検出することができる。
【0055】
また、例えば、制御装置150は、4つの方向の各々の歪み量がいずれも略ゼロである場合、操作部材220に対する操作者の非接触を検出することができる。この場合、制御装置150は、回転角度検出信号によらず、操作部材220が非操作状態にあると判定することができる。したがって、制御装置150は、そのときの回転角度検出信号の値を、回転角度検出信号の原点とする補正を行うことができる。
【0056】
また、例えば、制御装置150は、4つの方向の各々の歪み量に基づいて、ケース210に対する操作者の接触および非接触を検出することができる。
【0057】
以上説明したように、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、操作部材220と、操作部材220の傾きを直交する2つの回転角度に変換する第1連動部材116および第2連動部材117と、操作部材220を直立状態に復帰させるコイルばね114a,114b,114c,114dと、第1連動部材116、第2連動部材117、コイルばね114a,114b,114c,114d、および操作部材220の一部を内部に収めるケース210とを有する操作入力部200と、ケース210の下に設けられた板状のベース部120と、ベース部120に設けられ、ケース210に加わる荷重を検出する荷重検出器130とを備える。
【0058】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、操作部材220が非操作状態の場合、荷重検出器130によって検出される荷重が略ゼロとなるため、回転角度検出信号によらず、操作部材220が非操作状態にあると判定することができる。したがって、第1実施形態に係る多方向入力装置10によれば、操作部材220が原点にある状態を容易に判断することができる。
【0059】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、ベース部120の中央部に設けられた柱状部121をさらに備え、荷重検出器130は、柱状部121の周囲に加わる歪を検出する4つの歪センサ132X1,132X2,132Y1,132Y2を有する。
【0060】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、ケース210に加わる荷重の検出精度を高めることができる。また、4つの歪みセンサを有する既存の荷重検出器を、荷重検出器130として流用することができる。
【0061】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置10において、柱状部121は、ベース部120と一体に形成され、歪センサ132X1,132X2,132Y1,132Y2は、ベース部120において柱状部121を囲う四方向の各々に設けられる。
【0062】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、操作部材220の水平方向(X軸方向およびY軸方向)の操作の検出精度を高めることができる。
【0063】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、コイルばね114a,114b,114c,114dが、四方向の各々に設けられている。
【0064】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、操作部材220から入力された水平方向(X軸方向およびY軸方向)の荷重が、鉛直方向(Z軸方向)への力に変換され難くなるため、水平方向の荷重の検出精度を高めることができる。
【0065】
また、第1実施形態に係る多方向入力装置10において、操作入力部200は、第1連動部材116および第2連動部材117の回転角度を検出する回転センサ118,119と、荷重検出器130が水平方向の荷重を検出しない場合、そのときの回転センサ118,119の出力値を、回転センサ118,119の出力の原点とする補正を行う制御装置150とを有する。
【0066】
これにより、第1実施形態に係る多方向入力装置10は、操作部材220の非操作状態にあるときに、操作部材220が正確な中立状態にならない場合であっても、そのときの回転センサ118,119の出力値を、回転センサ118,119の出力の原点として、回転角度検出信号の原点補正を行うことができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
次に、
図7~
図9を参照して、第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態に係る多方向入力装置10Aの上面側を示す外観斜視図である。
図8は、第2実施形態に係る多方向入力装置10Aの底面側を示す外観斜視図である。
図9は、第2実施形態に係る多方向入力装置10Aの断面図である。
【0068】
以下、第2実施形態に係る多方向入力装置10Aに関し、主に、第1実施形態に係る多方向入力装置10からの変更点について説明する。すなわち、多方向入力装置10Aに関し、以下に説明しない点については、多方向入力装置10と同様の構成および効果を有する。
【0069】
第2実施形態に係る多方向入力装置10Aは、操作入力部200のケース210の下側に、ベース部120および荷重検出器130の代わりに、ベース部320および荷重検出器330を備える点で、第1実施形態に係る多方向入力装置10と異なる。
【0070】
ベース部320は、操作入力部200のケース210の下側に取り付けられる平板状の部材である。ベース部320は、柱状部321および凹み部322を有する。
【0071】
柱状部321は、ベース部320の上面の中央(操作部材220の中心軸AXと同軸上)において、上方に突出して設けられた円柱状の部分である。
図9に示すように、柱状部321の上面は、ベース部320がケース210の下側に取り付けられることによって、ケース210の底面に固定される。
【0072】
凹み部322は、ベース部320の底面に形成されており、荷重検出器330のFPC331の外周形状に沿った形状を有する。凹み部322内には、荷重検出器330が配置される。
【0073】
荷重検出器330は、ベース部320の底面に形成された凹み部322内に設けられる。荷重検出器330は、ケース210に荷重が加わることによってベース部320における柱状部321の周囲に生じる歪みを検出し、検出された歪みを表す歪み検出信号を外部へ出力する。荷重検出器330は、FPC331および4つの歪センサ332X1,332X2,332Y1,332Y2を備える。
【0074】
FPC331は、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。FPC331は、基部331Aおよび引き出し部331Bを有して構成されている。基部331Aは、ベース部320の凹み部322内かつ中央部(操作部材220の中心軸AXと同軸上)に配置される円形状の部分である。基部331Aの下面(Z軸負側の面)には、4つの歪センサ332X1,332X2,332Y1,332Y2が、柱状部321の周囲四方向に配置される。引き出し部331Bは、基部331Aから水平方向且つ直線状にケース210の外部へ延在する部分である。FPC331は、4つの歪センサ332X1,332X2,332Y1,332Y2の各々から出力された歪み検出信号を外部へ出力する。
【0075】
4つの歪センサ332X1,332X2,332Y1,332Y2の各々は、FPC331の基部331Aの、下面且つ柱状部321の周囲において、中心軸AXに対して4つの方向の各々に配置され、ケース210に荷重が加わったことによる、ベース部320における柱状部321の周囲に生じた歪みを検出する。
【0076】
具体的には、歪センサ332X1は、基部331Aの底面において、柱状部321よりも前側(X軸正側)に配置される。歪センサ332X1は、ベース部320の柱状部321よりも前側の部分に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0077】
また、歪センサ332X2は、基部331Aの底面において、柱状部321よりも後側(X軸負側)に配置される。歪センサ332X2は、ベース部320の柱状部321よりも後側の部分に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0078】
また、歪センサ332Y1は、基部331Aの底面において、柱状部321よりも左側(Y軸負側)に配置される。歪センサ332Y1は、ベース部320の柱状部321よりも左側の部分に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0079】
また、歪センサ332Y2は、基部331Aの底面において、柱状部321よりも右側(Y軸正側)に配置される。歪センサ332Y2は、ベース部320の柱状部321よりも右側の部分に生じた歪みを検出し、当該歪みを表す歪み検出信号を出力する。
【0080】
以上のように構成された第2実施形態に係る多方向入力装置10Aは、操作部材220の傾倒操作が行われた場合に限らず、ケース210に荷重が加えられると、当該荷重がベース部320の柱状部321に伝達し、よってベース部320における柱状部321の周囲において、荷重が加えられた方向および荷重の大きさに応じた歪みが生じる。この場合、4つの歪みセンサ332X1,332X2,332Y1,332Y2の各々によって、ベース部320における柱状部321の周囲4か所の各々の歪みが検出される。そして、4つの歪みセンサ332X1,332X2,332Y1,332Y2の各々から、歪み検出信号が、FPC331を介して、外部(例えば、
図6に示す制御装置150)へ出力される。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0082】
例えば、上記各実施形態では、ケース210の下側に設けられた歪みセンサを用いて、ケース210に加わる荷重を検出する構成を採用しているが、これに限らず、ケース210の下側に設けられた圧力センサを用いて、ケース210に加わる荷重を検出する構成を採用してもよい。
【0083】
また、例えば、上記第2実施形態では、柱状部321がベース部320に一体的に形成されているが、これに限らず、柱状部321がケース210に一体的に形成されたものであってもよい。すなわち、柱状部321がケース210の底面から下方に突出して設けられてもよい。この場合、ケース210の底面における柱状部321の周囲に、各歪みセンサが設けられてもよい。この場合も、操作部材220の水平方向(X軸方向およびY軸方向)の操作の検出精度を高めることができる。
【0084】
また、例えば、上記各実施形態では、ベース部120,320がケース210とは別部材であるが、これに限らず、ベース部120,320がケース210と一体的に形成されたものであってもよい。
【0085】
また、例えば、上記各実施形態では、操作入力部200が回転センサ118,119を有しているが、これに限らず、操作入力部200が回転センサ118,119を有しなくともよい。制御装置150が、各歪みセンサから取得した歪み検出信号に基づいて、操作部材220の傾倒方向および傾倒角度を判定できるからである。
【0086】
また、例えば、上記各実施形態では、柱状部の周囲に4つの歪みセンサを配置しているが、これに限らず、柱状部の周囲に3つ以下または5つ以上の歪みセンサを配置してもよい。
【0087】
また、例えば、上記各実施形態では、操作部材220を中立状態に復帰させるための「復帰バネ」の一例として、操作部材220の中心軸AXに対して、4つの方向の各々に配置された、上下方向に弾性変形可能な4つのコイルばね114a,114b,114c,114dを用いているがこれに限らない。例えば、「復帰バネ」の他の一例として、レバーを介して2つの連結手段の各々の回動軸を復帰方向に回動させるように付勢する、水平方向に弾性変形可能な複数のコイルばねを用いてもよい。この場合も、操作部材220から入力された水平方向(X軸方向およびY軸方向)の荷重が、鉛直方向(Z軸方向)への力に変換され難くなるため、水平方向の荷重の検出精度を高めることができる。
【0088】
本国際出願は、2019年6月19日に出願した日本国特許出願第2019-113912号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0089】
10,10A 多方向入力装置
114a,114b,114c,114d コイルばね
115 ばね受け部材
116 第1連動部材(連結手段)
117 第2連動部材(連結手段)
118,119 回転センサ
120 ベース部
121 柱状部
122X1,122X2,122Y1,122Y2 梁部
130 荷重検出器
131 FPC
132X1,132X2,132Y1,132Y2 歪センサ
140 スペーサ
150 制御装置(制御手段)
200 操作入力部
210 ケース
220 操作部材(操作軸)
230 FPC
320 ベース部
321 柱状部
322 凹み部
330 荷重検出器
331 FPC
332X1,332X2,332Y1,332Y2 歪センサ