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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両行動決定方法及び車両行動決定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221125BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/26 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021538938
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 IB2019000786
(87)【国際公開番号】W WO2021028708
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴都
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126249(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/013750(WO,A1)
【文献】特開2017-111575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
G01C 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより検出した、自車両が走行する道路の走行状況情報を取得し、前記走行状況情報より運転行動を決定するコントローラを用いて、
前記自車両が走行する第1経路において、前記走行状況情報を用いて、前記自車両の進行または停止の決定する制御判断点を前記第1経路上に少なくとも1つ設定し、
前記制御判断点に到達する前に前記制御判断点で前記自車両を進行させるか停止させるかの判断を行なう、走行制御装置の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、
前記走行状況情報を用いて、前記自車両が走行する第1経路において、前記自車両が、他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入するか否かを判定し、
前記自車両が他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入すると判定した場合は、他の場合に比べて、前記制御判断点を密に設定する、車両行動決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記第1経路と、他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する前記道路との交点を抽出し、
前記交点を基準に前記制御判断点を密に設定する、車両行動決定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記自車両と前記交点の間で、前記制御判断点を密に設定する、車両行動決定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、前記第1経路と前記他車両または前記歩行者が前記自車両より優先して走行する前記道路とが交差する交差点の開始位置に設定する、車両行動決定方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記制御判断点を密に設定する領域の終了地点を、前記第1経路と前記他車両または前記歩行者とが交錯する位置に設定する、車両行動決定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記自車両が異なる車線への車線変更を実行する場合は、前記制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、車線変更動作または合流動作の開始地点に設定する、車両行動決定方法。
【請求項7】
請求項1に記載の車両行動決定方法において、
前記自車両が、道路脇の施設から道路への合流する場合には、
前記コントローラは、合流先の前記道路の手前に前記制御判断点を密に設定する領域を設ける、車両行動決定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記制御判断点を密に設定する領域の終了地点を、合流先の前記道路と前記第1経路とが交錯する位置に設定する、車両行動決定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、合流先の走行レーンと前記第1経路とが交錯する位置より手前、または、前記施設と前記道路との間に歩道がある場合には、前記歩道と前記第1経路とが交錯する位置に設定する、車両行動決定方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、前記制御判断点を密に設定する領域における前記制御判断点の間隔を、隣り合う前記制御判断点の、それぞれの制御可能範囲が重複するように、または隣り合う前記制御判断点の、それぞれの許容される位置ずれ範囲が重複するように、設定する車両行動決定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の車両行動決定方法において、
前記制御可能範囲及び前記許容される位置ずれ範囲の長さは、制御システムの制御精度に応じて設定する任意の値である、車両行動決定方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の車両行動決定方法において、
前記制御可能範囲及び前記許容される位置ずれ範囲の長さを、前記制御判断点毎に異ならせる、車両行動決定方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の車両行動決定方法において、
前記制御可能範囲及び前記許容される位置ずれ範囲の長さを、路面抵抗の大きさに応じて変化させる、車両行動決定方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、
前記自車両が他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入しないと判定した場合は、前記自車両が走行する第1経路において、前記走行状況情報を用いて、前記自車両の進行または停止の決定が必要となる位置にのみ制御判断点を設定する、車両行動決定方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、
前記自車両が他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入しないと判定した場合は、前記自車両が走行する第1経路において、予め決めた固定間隔で制御判断点を設定する、車両行動決定方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の車両行動決定方法において、
前記コントローラは、
前記自車両が他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入しないと判定した場合は、前記自車両が走行する第1経路において、前記自車両の車速が高いほど間隔が広くなるように、前記自車両の車速に応じて制御判断点を設定する、車両行動決定方法。
【請求項17】
センサにより検出した自車両が走行する道路の走行状況情報を取得し、前記走行状況情報により運転行動を決定するコントローラを備え、
前記コントローラが、
前記自車両が走行する第1経路において、前記走行状況情報を用いて、前記自車両の進行または停止の決定する制御判断点を前記第1経路上に少なくとも1つ設定し、
前記制御判断点に到達する前に前記制御判断点で前記自車両を進行させるか停止させるかの判断を行なう、走行制御装置の車両行動決定装置において、
前記コントローラは、
前記走行状況情報を用いて、前記自車両が走行する第1経路において、前記自車両が、他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入するか否かを判定し、
前記自車両が他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入すると判定した場合は、他の場合に比べて、前記制御判断点を密に設定する、車両行動決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の運転行動を決定する車両行動決定方法及び車両行動決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の運転行動を決定する制御として、JP2015-170233Aには、対向車線を横切って交差点を曲がる際の制御が開示されている。具体的には、自車両の走行経路と対向車線を走行する他車両の走行経路との交点を抽出し、当該交点で自車両と他車両とが衝突するか否かを推定し、衝突しないと判断したら自車両を交差点に進入させ、衝突しないと判断したら自車両を交差点の手前で停止させている。
【発明の概要】
【0003】
しかし、上記文献のように自車両の進行または停止を、両走行経路の交点に対し判断する場合には、いったん交差点に進入可能と判断すると、例えば、交点の前後で、交点に対し判断された内容を引き継ぐことになり、交点の前後で異なる判断を行なうことはない。このため、他車両が優先して走行する道路に自車両が進入するシーンで、他車両の車速が変化した場合のように、状況の変化が起きた状況において、例えば、交点よりも手前で停止したい状況に変化した場合に、柔軟な行動決定ができず、交点まで進入してしまうことや、交点から距離が離れた位置で停止してしまうといったことが生じることがあった。つまり、自車両の走行経路と対向車線を走行する他車両の走行経路との交点の位置に対し、進入可能や停止の判断をするだけでは、走行状況に適した柔軟な行動決定をすることが難しい。
【0004】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、状況の変化に柔軟に対応可能な運転行動の決定方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、センサにより検出した自車両が走行する道路の走行状況情報を取得し、走行状況情報より運転行動を決定するコントローラを用いて、自車両が走行する第1経路において、走行状況情報を用いて、自車両の進行または停止の決定する制御判断点を第1経路上に少なくとも1つ設定し、制御判断点に到達する前に制御判断点で自車両を進行させるか停止させるかの判断を行なう、走行制御装置の車両行動決定方法が提供される。この車両行動決定方法では、コントローラは、走行状況情報を用いて、自車両が走行する第1経路において、自車両が、他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入するか否かを判定し、自車両が他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入すると判定した場合は、他の場合に比べて、制御判断点を密に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、走行支援システムの概略構成図である。
図2図2は、自車両が対向車線を横切って交差点を通過する場面における比較例の制御を説明するための図である。
図3図3は、自車両が対向車線を横切って交差点を通過する場面における本発明の実施形態に係る制御を説明するための図である。
図4図4は、行動決定部が実行する制御ルーチンを示す図である。
図5図5は、車線変更をする場面について説明するための図である。
図6図6は、道路脇の駐車場から道路に合流する場面を説明するための図である。
図7図7は、渋滞中に車線変更する場面を説明するための図である。
図8図8は、交差点を直進する場面を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る車両行動決定装置を、車両に搭載される走行支援システム100に適用する場合について説明する。
【0008】
図1は、走行支援システム100の構成図である。走行支援システム100は、少なくともコントローラとしての走行支援装置1と、センサ類2と、ナビゲーション装置地図3と、車両挙動制御部13と、を含んで構成される。
【0009】
センサ類2は、自車両の周辺環境についての情報を検出する。ここでいう周辺環境には、他車両、歩行者、道路周辺の施設等が含まれる。センサ類2は、車両に搭載されたカメラ、レーダ、LIDAR(Light Detection And Ranging)等が含まれる。カメラは自車両の周辺を撮像し、撮像した画像を画像データとして出力する。カメラは自車両の前方、側方及び後方を撮像するために、複数搭載される。レーダは、自車両の周辺に向けて発した電磁波に対する反射波をレーダ情報として出力する。レーダはカメラと同様に複数搭載される。LIDARは、自車両から全方位に向けて発したレーザの反射波に基づいて、反射点の三次元位置を推定し、これを三次元位置情報として出力する。なお、上述したカメラ、レーダ及びLIDARとしては、公知の方式のものを使用することができる。
【0010】
ナビゲーション装置地図3は、人工衛星から位置情報(緯度および経度)を受信するナビゲーション装置に記憶された地図情報である。なお、地図情報は、ナビゲーション装置の本体に記憶しておくことに限られず、ナビゲーション装置と通信可能な外部記憶装置に記憶しておいてもよい。ここでいう人工衛星は、例えばグローバル・ポジショニング・システム(GPS)衛星、グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム(GLONASS)衛星、準天頂衛星である。
【0011】
走行支援装置1及び車両挙動制御部13は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、走行支援装置1と車両挙動制御部13のそれぞれを、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0012】
走行支援装置1は、センサ類2の出力情報およびナビゲーション装置地図3を読み込み、以下の説明する処理を実行する。
【0013】
自車位置推定部5は、ナビゲーション装置で受信した自車両の現在位置を高精度地図4にマッチングさせることで、自車両の具体的な現在位置を推定する。高精度地図4は走行支援装置1に予め記憶しておいてもよいし、走行支援装置1と通信可能な外部の記憶装置に記憶させておいてもよい。高精度地図4は、ナビゲーション装置地図3よりも位置の精度が高精度である。また、ナビゲーション装置地図3は道路の走行レーンについての詳細情報を持たないが、高精度地図4は走行レーンについての詳細情報を持つ。なお、自車位置推定部5は、人工衛星からの位置情報が得られない場合には、カメラの画像情報を用いて現在位置の特定を図る。
【0014】
物体認識部7は、センサ類2で検出された情報に基づいて、検出した物が車両、歩行者、それ以外の物のいずれなのか、さらにはそれらの進行方向を判断する。
【0015】
周囲認識統合部6は、推定された自車両の位置と、センサ類2で検出された情報と、物体認識部7で認識した情報と、を高精度地図4及びナビゲーション装置地図3とマッチングさせることで、自車両の現在位置と、自車両の周囲の何処に何があるのかというデータを生成する。なお、周囲認識統合部6は、走行中に周囲環境に変化あればデータの書き換えを実行することが可能である。
【0016】
目的地設定部8は、操作者により入力された目的地をナビゲーション装置地図3上に設定する。ルート設定部9は、自車両の現在位置から目的地までのナビゲーション装置地図3上の走行ルートを設定する。
【0017】
行動決定部10は、目的地までの走行ルート、周囲認識統合部6、及び物体認識部7からの情報に基づいて、走行ルート上に複数の制御判断点を設定し、各制御判断点で進行するか停止するかの判断を実行する。上記の目的地までの走行ルート、周囲認識統合部6、及び物体認識部7からの情報を含めて走行状況情報ともいう。走行状況には、交差点や他車両と交錯する状況の他に、停止線や一時停止等といった道路構造上の状況も含む。制御判断点の設定および進行/停止の判断については後述する。なお、制御判断点で、進行、停止、の他の行動を追加して判断するようにしてもよい(例えば、徐行)。
【0018】
走行可能領域生成部11は、高精度地図4、周囲認識統合部6、及び物体認識部7からの情報に基づいて、自車両が走行可能な領域を判断する。具体的には、自車両が走行する走行レーンと、当該走行レーンのどの位置を走行するかを判断する。例えば、現在走行中の走行レーンの前方を自転車が走行している場合には、追い越しの際に自転車との間に適切な距離を確保できるように、走行する位置を設定する。また、現在走行中の走行レーンの前方に駐車車両がある場合には、現在走行中の走行レーンのままで駐車車両を避けられるのか車線変更が必要かを判断する。
【0019】
軌跡生成部12は、設定された目的地までの走行ルート、行動決定部10における判断の結果、及び走行可能領域生成部11で判断した走行可能な領域に基づいて、自車両の走行軌跡(以下、この走行軌跡を第1経路ともいう)を生成する。ここでいう走行軌跡には、目的地までの走行ルートのどこで車線変更するのか、どこで発進/停止するのかといった位置に関する軌跡の他に、車速のプロファイルも含まれる。例えば、走行ルート上にカーブがある場合には、カーブの前で減速し、カーブを抜けてから加速するような車速プロファイルを設定する。
【0020】
上記のように生成された走行軌跡は、データとして走行支援装置1から車両挙動制御部13へ出力される。車両挙動制御部13は、走行軌跡に基づいて、車両の駆動源、制動装置、操舵装置等を制御する。
【0021】
次に、行動決定部10が設定する制御判断点について説明する。
【0022】
行動決定部10は、第1経路上の、進行するか停止するかの判断を要する事象(以下、要判断事象ともいう)を抽出する。要判断事象とは、信号機が設置されている、自車両が他車両または歩行者の経路である第2経路との交点を通過する、自車両が第1経路から第2経路へ進入する、自車両が他車両すれ違う、等といった事柄、出来事、場面である。事象は、その事柄等に自車両が遭遇する場所として表現できる。そこで本実施形態では、事象を位置情報により特定することもある。
【0023】
行動決定部10は、抽出した複数の要判断事象を第1経路上にプロットし、要判断事象の手前に制御判断点を設定する。この制御判断点の設定は、目的地までの走行ルートが設定された時点で行うことができる。
【0024】
行動決定部10は、制御判断点に到達する前に、その制御判断点で進行するのか停止するのかを判断する。そして、車両挙動制御部13は判断結果に応じて制御判断点で自車両を進行または停止させる。例えば、要判断事象が信号機の設置場所である場合には、信号機の手前に制御判断点を設定し、制御判断点の手前でカメラからの画像情報に基づいて進行または停止の判断を行なう。なお、信号機についての情報は、路車間通信により取得しても構わない。また、要判断事象が一時停止線である場合には、一時停止線の手前に制御判断点を設定し、カメラからの画像情報に基づいて当該制御判断点で自車両を停止させる。
【0025】
これに対し、制御判断点を設けずに走行する場合には、取得し得る全ての情報を取得及び処理しながら走行し、前方に信号機があることを認識してから停止位置を設定し、信号機の状態に応じて進行または停止の判断を行なうこととなる。
【0026】
つまり、制御判断点を設けない制御では、他車両の動きを含む周囲の状況に応じて自車両の停止位置を決定するので、自車両の停止位置を状況に応じて計算し直す必要がある。このため、周囲の状況が変化する度に新たな停止位置を計算することとなる。さらには、停止位置を車両の制御モデルに基づいて決定する必要がある。
【0027】
これに対し、本実施形態のように制御判断点を予め設定すると、停止位置も予め決まるので、制御判断点を設けない制御に比べて、演算負荷を低減することができる。
【0028】
図2は、自車両が対向車線を横切って交差点を通過する場面を示している。図中のAは自車両、Bは他車両、R1は第1経路、R2は第2経路である。
【0029】
この場面では、要判断事象は交差点に設置された信号機と、第1経路R1と第2経路R2との交差である。
【0030】
まず、交差点手前の停止線と、第1経路R1と他車両Bが走行する走行レーンとの交点と、に制御判断点を設定する場合について検討する。信号機が進行を促す点灯状態の場合に、自車両は停止線に設定した第1制御判断点CP1を通過して交差点に進入する。そして、他車両Bが接近していることを認識したら、第1経路R1と他車両Bが走行する走行レーンとが交差する点に設定した第2制御判断点CP2で停止することとなる。一方、他車両Bまでの距離が十分にあることを認識したら第2制御判断点CP2を通過することとなる。
【0031】
なお、図2では第1制御判断点CP1を停止線上に、第2制御判断点CP2をセンターライン上にそれぞれ表示しているが、これは、自車両の先端が停止線及びセンターラインを越えない停止位置を意味する。以下に説明する他の図についても同様である。
【0032】
ところで、第1制御判断点CP1を通過した後に、第2制御判断点CP2についての判断を進行から停止に変更する必要が生じる場合がある。例えば、第2制御判断点CP2に近付き周囲状況を正確に検知できるようになることで、それまで認識していなかった他車両Bを認識した場合や、他車両Bが加減速して自車両Aと他車両Bとの位置関係が変化した場合である。
【0033】
このような場合でも、自車両は、第1制御判断点CP1を通過した後、第2制御判断点CP2まで進もうとするが、その際に次の問題が生じることがある。
【0034】
(1)第2制御判断点CP2の手前でいったん停止し、そこから徐々に第2制御判断点CP2に近づくような運転ができない。
【0035】
(2)第2制御判断点CP2に徐々に近付くためには、第1制御判断点CP1から徐行速度にせざるを得ない。
【0036】
(3)第2制御判断点CP2の手前で徐行または停止して周囲状況を確認してから第2制御判断点CP2に近付く、という運転ができない。
【0037】
(4)人間が運転する場合には、走行レーンの幅が狭いと、すれ違う際の他車両Bとの距離を保つために、第2制御判断点CP2より手前で自車両を停止させる傾向があるが、このような運転はできない。
【0038】
つまり、上述した2つの制御判断点だけでは、第1制御判断点CP1を通過した後の周囲状況の変化に応じた柔軟な運転ができない。
【0039】
そこで本実施形態では、以下に説明するように制御判断点を設定する。
【0040】
図3は、図2と同様の場面における、本実施形態で設定する制御判断点の一例を示している。交差点手前の停止線と、第1経路R1とセンターラインとが交差する点の2箇所に制御判断点(第1制御判断点CP1、第7制御判断点CP7)を設定することは図2と同様であるが、本実施形態では、第1制御判断点CP1と第7制御判断点CP7との間に、第2制御判断点CP2-第6制御判断点CP6の5つの制御判断点を設定する。また、交差点を曲がるという制御の最初の制御判断点CP0を停止線よりも手前に設定する。隣り合う制御判断点の間隔については後述する。
【0041】
上記のように、本実施形態では、交差点の開始位置としての停止線から、第1経路R1と他車両Bが走行する走行レーンとの交点までの区間に、制御判断点を密に設定する。なお、停止線がない場合には、地図情報に基づいて交差点の開始位置を設定する。
【0042】
このように、交差点内に制御判断点を密に設定すると、例えば、交差点進入前は第3制御判断点CP3までは進行、第4制御判断点CP4以降は停止、という判断し、第4制御判断点CP4で停止した状態で周囲状況を検知し、第7制御判断点CP7まで進行するよう判断を変更することができる。また、交差点進入前は第3制御判断点CP3までは進行、第4制御判断点CP4以降は停止という判断をしていた場合に、交差点進入後に周囲状況の変化に応じて第5制御判断点CP5及び第6制御判断点CP6の判断を進行に変更し、第7制御判断点CP7で停止することもできる。このように、交差点内に制御判断点を密に設定することで、上述した問題を解消した、高い信頼度での行動決定が可能となる。
【0043】
次に、本実施形態においてコントローラの一部としての行動決定部10が実行する制御ルーチンを説明する。
【0044】
図4は、行動決定部10が実行する制御ルーチンについてのフローチャートである。以下、ステップにしたがって説明する。
【0045】
ステップS100で、行動決定部10は自車両の走行経路である第1経路を取得する。
【0046】
ステップS110で、行動決定部10は、第1経路と他車両または歩行者の経路である第2経路との交点を地図情報に基づいて抽出する。第2経路とは、他車両または歩行者が走行する道路のうち、他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路である。なお、本ステップにおける他車両または歩行者が走行する道路とは、他車両または歩行者が走行する可能性がある道路のことである。すなわち、本ステップの処理は、センサ類2により具体的な他車両または歩行者を検出することなく、地図情報に基づいて実行する。
【0047】
ステップS120で、行動決定部10は、抽出した交点に基づいて、制御判断点を設ける範囲の最終の制御判断点を設定する。図3の場面であれば、第1経路R1と第2経路R2との交点に基づいて、それよりも手前の、他車両Bが走行する走行レーンとセンターラインとの交点に最終の制御判断点としての第7制御判断点CP7を設定する。
【0048】
ステップS130で、行動決定部10は、制御判断点を設ける範囲の最初の制御判断点を設定する。図3の場面であれば、最初の制御判断点CP0を設定する。
【0049】
ステップS140で、行動決定部10は最初の制御判断点と最終の制御判断点の間に、複数の制御判断点を設定する。このとき、制御判断点が密に位置する範囲を設ける。設定する制御判断点の数は任意である。具体的には、交差点手前の停止線に密になる範囲の最初の制御判断点としての第1制御判断点CP1を設定する。なお、第1制御判断点CP1は交差点よりも手前であればよく、停止線より手前に設定しても構わない。ただし、制御判断点の数が多くなるほど演算負荷が増大するので、本実施形態では演算負荷を考慮して停止線に設定する。また、密になる範囲の最終の制御判断点は、第7制御判断点CP7とする。
【0050】
隣り合う制御判断点の間隔は、それぞれの制御判断点の制御可能範囲が重複するように設定する。制御可能範囲とは、制御判断点からずれた位置に停止させるよう制御する際に、設定することができる制御判断点からのずれの範囲である。これは、行動決定部10が自車両を制御判断点に停止させるという制御だけでなく、制御判断点よりX[cm]手前に停止させる、または制御判断点よりY[cm]奥に停止させる、という制御が可能であることが前提となる。
【0051】
制御可能範囲は任意に設定することができる。ただし、制御判断点を基準として手前の制御可能範囲と奥の制御可能範囲を同じにする必要はない。また、制御判断点を密に設定する範囲において、複数の制御判断点を等間隔に設定する必要はない。例えば、最終の制御判断点に近付くほど間隔を短くすることによって、交差点に進入してからの状況変化により対応し易くしてもよい。
【0052】
上記のように複数の制御判断点を制御可能範囲が重複するように設定することで、隣り合う制御判断点の間の任意の位置に自車両を停止させることが可能となる。
【0053】
また、制御可能範囲を重複させる代わりに、許容される位置ずれ範囲が重複するように設定してもよい。許容される位置ずれ範囲とは、制御判断点で停止させるよう制御した際に許容し得る、実際に停止した位置と制御判断点とのずれの範囲である。例えば、登り勾配路で停止させる場合や、低速走行から停止させる場合には制御判断点より手前で停止しがちであるが、これを一切許容しないと制御が複雑化してしまう。そこで、上記の位置ずれについては許容範囲を設けている。どの程度を許容するのかは任意に設定することができる。許容される位置ずれ範囲が重複するように設定することで、停止させるべき制御判断点から許容し得る範囲内に自車両を停止させることができる。なお、許容される位置ずれ範囲は、任意に設定し得るが、路面抵抗の大きさに応じて変化させてもよい。例えば、雨が降っている状況では路面抵抗が小さくなり、制動距離が伸びるので、制御判断点より奥の許容範囲を広げてもよい。
【0054】
上記の通り複数の制御判断点を設定したら、行動決定部10は、ステップS150で自車両の現在位置よりも進行方向前方の制御判断点までの距離が閾値より小さいか否かを判定し、判定結果が肯定的であればステップS160の処理を実行し、否定的であればステップS150の処理を繰り返す。閾値は任意に設定可能であるが、制御判断点での進行または停止の判断に必要な情報、例えば信号機の状態や対向車の有無等、を検出可能な距離を考慮して設定する。
【0055】
ステップS160で、行動決定部10は閾値よりも近い制御判断点での発進または停止を、周囲認識統合部6からの情報に基づいて判断する。つまり、本ステップの判断は、センサ類2で検知した他車両または歩行者等を対象として行う。例えば、図3において第1制御判断点CP1から第7制御判断点CP7が閾値より近い場合には、信号機の状態と他車両Bの位置及び車速等に基づいて発進または停止を判断する。なお、周囲認識統合部6でのデータ生成は、本制御ルーチンとは別の制御ルーチンにより行われる。
【0056】
ステップS170で、行動決定部10は、ステップS150での判断結果を車両挙動制御部13に出力する。車両挙動制御部13は、判断結果に応じて駆動源、制動装置、及び操舵装置を制御する。
【0057】
ステップS180で、行動決定部10は目的地に到着したか否かを判断し、到着したら本ルーチンを終了し、到着していなければステップS150の処理に戻る。
【0058】
以上説明した行動決定方法、つまり複数の制御判断点を密に設定する範囲を設けて自車両の行動決定を行なうという方法は、図3の場面だけでなく、以下に説明する他の場面にも適用可能である。
【0059】
図5は、自車両Aが走行する走行レーンの前方に駐車車両Cがあり、駐車車両Cを避けるために車線変更する場面である。この場面では、変更先の走行レーンを他車両Bが走行しており、他車両Bの第2経路R2が第1経路R1と交点を有する。
【0060】
駐車車両Cを避けるための第1経路R1が生成されたら、行動決定部10は、車線変更動作の起点としての制御判断点CP0と、同じく終点としての制御判断点CP6を設定し、これらの間に第1制御判断点CP1から第5制御判断点CP5を密に設定する。密な範囲の最初の制御判断点である第1制御判断点CP1は、操舵を開始する位置である。密な範囲の最終の制御判断点である第5制御判断点CP5は、変更先の走行レーンと第1経路R1との交点である。なお、この場面では、変更先の走行レーンの車速が高いほど、密な範囲を変更先の走行レーンと第1経路R1との交点手前側に設定する。これは、密な範囲において車速が低下した場合でも、最終の第5制御判断点CP5から変更先の走行レーンに進入するまでに加速する区間を確保するためである。
【0061】
上記のように複数の制御判断点を設定することで、駐車車両C及び他車両Bとの衝突を回避しつつ車線変更をすることができる。そして、複数の制御判断点を車線変更動作の開始地点から密に設定することで、他車両Bが加減速する等の状況の変化があった場合でも、柔軟に対応することができる。なお、高速道路の合流等のように、自車両Aが走行する走行レーンが、他車両Bが走行する走行レーンに合流する場合も図5の場合と同様である。
【0062】
図6は、自車両Aが道路脇の駐車場から他車両Bが走行する道路へ合流する場面である。駐車場と道路との間には歩道があるものとする。
【0063】
駐車場から歩道を通過して道路に合流する第1経路R1が生成されたら、行動決定部10は、合流動作の起点としての第1制御判断点CP1と、同じく終点としての第5制御判断点CP5を設定し、これらの間に第2制御判断点CP2から第4制御判断点CP4を密に設定する。なお、この場面では、第1制御判断点CP1から第4制御判断点CP4が密な範囲となる。
【0064】
密な範囲の終点である第4制御判断点CP4は歩道と道路との境界である。また、駐車場と歩道との境界にも制御判断点を設定する。図6では第2制御判断点CP2がこれにあたる。
【0065】
上記のように制御判断点を設定すると、まずは歩道の手前で停止すべきか否かを判断し、第1経路R1と交差する経路を有する歩行者がいる場合には第2制御判断点CP2で停止することとなる。歩行者がいない場合、または通過した場合には、第2制御判断点CP2及び第3制御判断点CP3を通過して第4制御判断点CP4に近付く。そして、合流先の道路状況を検知して、第4制御判断点CP4で停止するか否かを判断する。
【0066】
上記のように複数の制御判断点を設定することで、歩行者及び道路を走行する他車両Bとの衝突を回避しつつ合流をすることができる。そして、複数の制御判断点を密に設定する範囲を設けることで、歩道や合流先の道路の状況に変化があった場合でも、柔軟に対応することができる。
【0067】
ところで、進行または停止の判断が難しい場合がある。そのような場合には、密な範囲の終点よりも進行方向側に制御判断点を追加してもよい。これについて図7を参照して説明する。
【0068】
図7は、図5と同様に自車両Aが走行する走行レーンの前方にいる駐車車両を避けるために車線変更する場面である。ただし、変更先の走行レーンが渋滞しており、第1他車両C-第3他車両Eが自車両Aの周辺にいる。最終制御判断点CPendは、図5における第5制御判断点CP5に相当する制御判断点である。
【0069】
この場面において、第2他車両Dと第3他車両Eとの間に入る第1経路R1が生成されたものとする。
【0070】
この場面では、第2他車両Dの運転者が自車両Aの合流を受け入れる意思の有無によって停止すべきか否かが決まるので、第2他車両Dと自車両Aとの位置関係だけでは進行すべきか否かの判断は難しい。つまり、第2他車両Dを検知したという理由に基づいて最終制御判断点CPendで停止するという判断をしたとしても、その判断の信頼度は低いといえる。このような場合には、最終制御判断点CPendよりも進行方向側に、追加制御判断点CPaddを設定する。そして、追加制御判断点CPaddまで徐行させる。追加制御判断点CPaddを設定する場合には、最終制御判断点CPendとの間隔を、上述した制御可能範囲または許容し得る位置ずれ範囲が重複するように設定する。
【0071】
また、図6の場面においても、道路に駐車車両がある等の理由により第4制御判断点CP4までの間では信頼度の高い判断を行なうことが難しい場合には、制御判断点を追加してもよい。
【0072】
以上のように本実施形態では、センサにより検出した自車両が走行する道路の走行状況情報を取得し、走行状況情報より運転行動を決定するコントローラを用いて、自車両が走行する第1経路において、走行状況情報を用いて、自車両の進行または停止の決定する制御判断点を第1経路上に少なくとも1つ設定し、制御判断点に到達する前に制御判断点で自車両を進行させるか停止させるかの判断を行なう。コントローラはさらに、走行状況情報を用いて、自車両が走行する第1経路において、自車両が、他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入するか否かを判定し、自車両が他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入すると判定した場合は、他の場合に比べて、制御判断点を密に設定する。なお、走行状況情報には、上述した通り交差点や他車両と交錯する状況の他、停止線や一時停止等といった道路構造上の状況も含む。したがって、ここでいうセンサは上述したセンサ類2だけに限定されず、道路構造を検出するためのグローバル・ナビゲーション・サテライト・システム(GNSS)情報から地図データを抽出するものも含む。
【0073】
これにより、事象の手前を走行している際に周囲状況が変化した場合でも、その状況に合わせて適切な制御を実行することができる。例えば、それまで検出できなかった他車両等を検出した場合に、自車両の判断を切り替え、切り替え後の判断に基づいて走行できる。事象の手前で停止または徐行に切り替えて、徐々に事象に近付くこともできる。制御判断点を増加させることで、事象の手前の適切な位置から徐行に切り替えることもできる。また、進行または停止を確実に判断すべき状況において、事象の手前で停止し、周囲状況を検知してから進行に切り替えて事象に近付くこともできる。このように、本実施形態によれば、複数の制御判断点についての判断を累積して停止または進行の判断をすることになるので、高い信頼度の判断結果を得ることができる。
【0074】
以上、自車両が、他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入する場合について説明したが、当該道路に進入しない場合には、第1経路において自車両の進行または停止の決定が必要となる位置にのみ制御判断点を設定すればよい。例えば、狭路走行中に前方に駐車車両が存在しており、駐車車両の手前で停止する場合や、交差点の一時停止線で停止する場合には、停止位置にのみ制御判断点を設定する。
【0075】
本実施形態では、第1経路と、他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路との交点を抽出し、交点を基準に制御判断点を密に設定する。これにより、他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入する前に、制御判断点を増やすことが可能となる。その結果、進行すべき位置と停止すべき位置とを、走行中の周囲状況に応じて柔軟に設定することができる。
【0076】
本実施形態では、自車両と他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路との交点の間で制御判断点を密に設定する。これにより、制御判断点を増加する領域が限定されるので、制御判断点を余計に増やすことを抑制し、演算負荷を軽減することができる。
【0077】
本実施形態では、上記の交差点を通過する場面において、コントローラは、制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、第1経路と他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路とが交差する交差点の開始位置に設定する。これにより、判断を切り替える必要が生じる可能性のある区間で、確実に切り替えに対応することができる。なお、交差点の開始位置は、停止線がある場合にはその停止線としてもよい。交差点の手前に横断歩道がある場合には、その横断歩道より所定距離だけ手前としてもよい。また、制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、同領域の終了地点から所定距離だけ手前としてもよい。
【0078】
本実施形態では、上記の交差点を通過する場面において、コントローラは、制御判断点を密に設定する領域の終了地点を第1経路と他車両または歩行者とが交錯する位置に設定する。これにより、他車両または歩行者との接触を確実に回避できる。他車両または歩行者との交錯位置は、第1経路と他車両が走行する走行レーンとの交錯位置、または第1経路と歩行者が歩行する横断歩道との交錯位置とする。なお、終了地点を、上記開始地点から所定距離だけ進行方向に進んだ地点としてもよい。
【0079】
本実施形態では、コントローラは、自車両が異なる車線への車線変更を実行する場合は、制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、車線変更動作または合流動作の開始地点に設定する。これにより、判断を切り替える必要が生じる可能性のある区間で、確実に切り替えに対応することができる。
【0080】
なお、開始地点は、車線変更または合流する車線の制限速度に応じて変更してもよい。この場合、制限車速が高いほど手前になるよう設定する。また、開始地点は、車線変更または合流する車線の道幅に応じて変更してもよい。この場合、道幅が狭いほど手前になるよう設定する。いずれの場合も、乗員の恐怖心を緩和することができる。また、開始地点は、終了地点から所定距離だけ手前の地点としてもよい。
【0081】
本実施形態では、自車両が道路脇の施設(例えば駐車場)から道路へ合流する場合には、コントローラは、合流先の道路の手前に制御判断点を密に設定する領域を設ける。これにより、道路に合流するまで、状況変化に対応したスムーズな走行が可能となる。
【0082】
本実施形態では、上記道路脇の施設から道路に合流する場面において、コントローラは、制御判断点を密に設定する領域の終了地点を、合流先の道路と第1経路とが交錯する位置に設定する。これにより、他車両および歩行者との接触を確実に回避できる。
【0083】
なお、終了地点は、合流する道路の制限速度に応じて変更してもよい。この場合、制限車速が高いほど手前になるよう設定する。また、終了地点は、合流する道路の道幅に応じて変更してもよい。この場合、道幅が狭いほど手前になるよう設定する。いずれの場合も、乗員の恐怖心を緩和することができる。また、終了地点は、開始地点から所定距離だけ進行方向に進んだ地点としてもよい。
【0084】
本実施形態では、上記道路脇の施設から道路に合流する場面において、コントローラは、制御判断点を密に設定する領域の開始地点を、合流先の走行レーンと第1経路とが交錯する位置より手前、または、施設と道路との間に歩道がある場合には、歩道と第1経路とが交錯する位置に設定する。これにより、判断を切り替える必要が生じる可能性のある区間で、確実に切り替えに対応することができる。なお、開始地点を、終了地点から所定距離だけ手間の地点としてもよい。また、開始地点を、道路脇の施設から道路を見た場合の死角に応じて設定してもよい。例えば図6の状況で手前側の走行レーンに駐車車両がいて、自車両Aが道路に近付くほど死角が大きくなる場合には、開始地点を手前側に設定する。
【0085】
本実施形態では、コントローラは、制御判断点を密に設定する領域における制御判断点の間隔を、隣り合う制御判断点の、それぞれの制御可能範囲が重複するように、または隣り合う制御判断点の、それぞれの許容される位置ずれ範囲が重複するように、設定する。これにより、停止すべき状況となった場合に、所望の位置で自車両を停止させることができる。なお、隣り合う制御判断点の間隔は、全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
本実施形態では、制御可能範囲及び許容される位置ずれ範囲の長さは、制御システムの制御精度に応じて設定する任意の値とする。これにより、制御判断点の間隔を適切に設定することができる。
【0087】
本実施形態では、制御可能範囲及び許容される位置ずれ範囲の長さを、制御判断点毎に異ならせてもよい。これにより、事象に応じて適切に制御判断点を配置することができる。
【0088】
本実施形態では、制御可能範囲及び許容される位置ずれ範囲の長さを、路面抵抗の大きさに応じて変化させてもよい。これにより、路面状況に応じて適切に制御判断点を配置することができる。
【0089】
本実施形態では、コントローラは、自車両が他車両または歩行者が前記自車両より優先して走行する道路に進入しないと判定した場合は、自車両が走行する第1経路において、走行状況情報を用いて、自車両の進行または停止の決定が必要となる位置にのみ制御判断点を設定する。これにより、制御判断点を無駄に増やすことがなくなるので、演算負荷を軽減できる。
【0090】
本実施形態では、コントローラは、自車両が他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入しないと判定した場合は、自車両が走行する第1経路において、予め決めた固定間隔で制御判断点を設定してもよい。これによっても、制御判断点を無駄に増やすことがなくなるので、演算負荷を軽減できる。
【0091】
本実施形態では、コントローラは、自車両が他車両または歩行者が自車両より優先して走行する道路に進入しないと判定した場合は、自車両が走行する第1経路において、自車両の車速が高いほど間隔が広くなるように、自車両の車速に応じて制御判断点を設定する。これは、車速が高いほど一定車速で直進している可能性が高く、一定車速で直進している場合は、他車両や歩行者と交錯する頻度は低いからである。これにより、自車両の車速、つまり他車両や歩行者と交錯する確率に合わせて制御判断点を設定することになるので、制御判断点を無駄に増やすことを防止して、演算負荷を軽減できる。
【0092】
なお、本実施形態では、自車両の経路と他車両または歩行者の経路とが交点を有する場合について説明したが、制御判断点を密に設定する範囲を設けることは、他の場合でも有効である。例えば、図8に示すように、交差点を直進する場合に、交差点の前後にわたって制御判断点を密に設定してもよい。これにより、交差点内の状況に変化があった場合に、柔軟に対応することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8