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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】可搬型工作機
(51)【国際特許分類】
   B23B 45/02 20060101AFI20221125BHJP
   B23Q 9/02 20060101ALI20221125BHJP
   B23B 47/00 20060101ALI20221125BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20221125BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B23B45/02
B23Q9/02 A
B23B47/00 C
B23Q11/00 D
B23Q17/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021542620
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2020027862
(87)【国際公開番号】W WO2021039185
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2019155647
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 淳
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0108385(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306679(US,A1)
【文献】特開2014-208393(JP,A)
【文献】特開2014-231129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 45/02
B23Q 9/02
B23B 47/00
B23Q 11/00
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機本体と、
該工作機本体に取り付けられ、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該被加工物に対する加工作業を行うように、該工作機本体に取り付けられた加工工具を駆動するための電動モータと、
主電源から供給される電力によって動作し、該電磁石と該電動モータを制御するようにされた制御部と、
該制御部に接続された制御部用蓄電部材と、
該電磁石に接続された電磁石用蓄電部材と、
を備え、
該主電源から該制御部への電力供給が停止したときに、該制御部用蓄電部材に蓄電された電力によって該制御部の動作が継続され、
該制御部が、該電磁石が作動し該電動モータが駆動している間に該主電源からの電力供給が停止したと判断したときに、該電動モータの駆動は停止させ該電磁石の作動は維持させるように制御を行うようにされ
該電磁石の作動中に該主電源からの電力供給が停止したときに、該電磁石用蓄電部材から該電磁石に電力が供給されるようにされた、可搬型工作機。
【請求項2】
工作機本体と、
該工作機本体に取り付けられ、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該被加工物に対する加工作業を行うように、該工作機本体に取り付けられた加工工具を駆動するための電動モータと、
主電源から供給される電力によって動作し、該電磁石と該電動モータを制御するようにされた制御部と、
該制御部に接続された制御部用蓄電部材と、
を備え、
該主電源から該制御部への電力供給が停止したときに、該制御部用蓄電部材に蓄電された電力によって該制御部の動作が継続され、
該制御部が、該電磁石が作動し該電動モータが駆動している間に該主電源からの電力供給が停止したと判断したときに、該電動モータの駆動は停止させ該電磁石の作動は維持させるように制御を行うようにされ、
該主電源からの電力供給が一時的に停止して該制御部が該制御部用蓄電部材の電力で動作を継続している間に該主電源からの電力供給が再開されたときに、該制御部が電動モータの駆動を停止し該電磁石の作動を維持した状態を継続するようにされた可搬型工作機。
【請求項3】
工作機本体と、
該工作機本体に取り付けられ、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該被加工物に対する加工作業を行うように、該工作機本体に取り付けられた加工工具を駆動するための電動モータと、
主電源から供給される電力によって動作し、該電磁石と該電動モータを制御するようにされた制御部と、
該制御部に接続された制御部用蓄電部材と、
を備え、
該主電源から該制御部への電力供給が停止したときに、該制御部用蓄電部材に蓄電された電力によって該制御部の動作が継続され、
該制御部が、該電磁石が作動し該電動モータが駆動している間に該主電源からの電力供給が停止したと判断したときに、該電動モータの駆動は停止させ該電磁石の作動は維持させるように制御を行うようにされ、
該制御部は、該電動モータの駆動中に該電動モータに流れる電流を検出して、該電動モータに流れる電流が所定の閾値以下となったときに該主電源からの電力供給が停止したと判断するようにされた可搬型工作機。
【請求項4】
工作機本体と、
該工作機本体に取り付けられ、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該被加工物に対する加工作業を行うように、該工作機本体に取り付けられた加工工具を駆動するための電動モータと、
主電源から供給される電力によって動作し、該電磁石と該電動モータを制御するようにされた制御部と、
該制御部に接続された制御部用蓄電部材と、
を備え、
該主電源から該制御部への電力供給が停止したときに、該制御部用蓄電部材に蓄電された電力によって該制御部の動作が継続され、
該制御部が、該電磁石が作動し該電動モータが駆動している間に該主電源からの電力供給が停止したと判断したときに、該電動モータの駆動は停止させ該電磁石の作動は維持させるように制御を行うようにされ、
該主電源が、接続検知用端子を有するバッテリであり、
該工作機本体が、該バッテリを着脱可能に装着するようにされ、該バッテリが装着されたときに該接続検知用端子に接続される本体側端子を備えており、
該制御部は、該電動モータに流れる電流が所定の閾値以下となり且つ該接続検知用端子と該本体側端子との接続が切断されたことを検知したときに、該主電源からの電力供給が停止したと判断するようにされた可搬型工作機。
【請求項5】
工作機本体と、
該工作機本体に取り付けられ、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該被加工物に対する加工作業を行うように、該工作機本体に取り付けられた加工工具を駆動するための電動モータと、
主電源から供給される電力によって動作し、該電磁石と該電動モータを制御するようにされた制御部と、
を備える可搬型工作機であって、
該制御部に接続された制御部用蓄電部材と、
当該可搬型工作機の状態を表示する表示部と、
をさらに備え、
該主電源から該制御部への電力供給が停止したときに、該制御部用蓄電部材に蓄電された電力によって該制御部の動作が継続され、
該制御部が、該電磁石が作動し該電動モータが駆動している間に該主電源からの電力供給が停止したと判断したときに、該電動モータの駆動は停止させ該電磁石の作動は維持させるように制御を行うようにされ、
該主電源からの電力供給が停止して該制御部が該制御部用蓄電部材の電力で動作を継続している間に該主電源からの電力供給が再開されたときに、電力供給が一時的に停止していたことを該表示部が表示するようにされた可搬型工作機。
【請求項6】
該制御部用蓄電部材がコンデンサであり、該コンデンサが該主電源から供給される電力によって蓄電されるようにされた、請求項1乃至のいずれか一項に記載の可搬型工作機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型工作機に関し、より詳細には工作機本体を電磁石によって被加工物に対して固定した状態で加工作業を行うようにした可搬型工作機に関する。
【背景技術】
【0002】
穿孔機などの工作機において、作業現場に持ち運んで被加工物の加工作業を行うようにした可搬型の工作機がある。このような可搬型工作機は、種々の方法で被加工物に対して固定されるが、取り扱いの容易性や利便性を考慮して電磁石による磁気吸着により被加工物に対して固定するようにしたものがある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-231129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁石によって工作機本体を被加工物に対して固定するようにした場合には、工作機に対する電力供給が停止すると電磁石による磁気吸着力が急激に低下し、工作機本体を十分な力で固定することができなくなる。特にドリルなどの加工工具によって加工作業を行っている間は可搬型工作機には加工作業に伴う反力が作用しているため、加工作業中に電力供給が停止した場合にはその反力により可搬型工作機が浮き上がったり倒れたりして危険である。
【0005】
そこで本発明は、電力供給が停止したときの安全性を向上させることができる可搬型工作機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
工作機本体と、
該工作機本体に取り付けられ、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該被加工物に対する加工作業を行うように、該工作機本体に取り付けられた加工工具を駆動するための電動モータと、
主電源から供給される電力によって動作し、該電磁石と該電動モータを制御するようにされた制御部と、
該制御部に接続された制御部用蓄電部材と、
を備え、
該主電源から該制御部への電力供給が停止したときに、該制御部用蓄電部材に蓄電された電力によって該制御部の動作が継続され、
該制御部が、該電磁石が作動し該電動モータが駆動している間に該主電源からの電力供給が停止したと判断したときに、該電動モータの駆動は停止させ該電磁石の作動は維持させるように制御を行うようにされた、可搬型工作機を提供する。
【0007】
当該可搬型工作機においては、電磁石が作動し電動モータが駆動している間に主電源からの電力供給が停止したときに、制御部が制御部用蓄電部材の電力によって動作を継続して、電動モータの駆動は停止させて電磁石の作動は継続させるように制御を行うようになっている。これにより、電磁石による磁気吸着が継続している間に、駆動中の電動モータを停止させて加工工具の駆動を停止させるようにして、可搬型工作機が加工工具から受ける反力によって浮き上がったり倒れたりすることを防止することが可能となる。
【0008】
また、
該電磁石に接続された電磁石用蓄電部材をさらに備え、
該電磁石の作動中に該主電源からの電力供給が停止したときに、該電磁石用蓄電部材から該電磁石に電力が供給されるようにすることができる。
【0009】
これにより電力供給が停止した後の電磁石の作動をより長く継続させることが可能となる。
【0010】
また、該主電源からの電力供給が一時的に停止して該制御部が該制御部用蓄電部材の電力で動作を継続している間に該主電源からの電力供給が再開されたときに、該制御部が電動モータの駆動を停止し該電磁石の作動を維持した状態を継続するようにすることができる。
【0011】
さらには、該制御部は、該電動モータの駆動中に該電動モータに流れる電流を検出して、該電動モータに流れる電流が所定の閾値以下となったときに該主電源からの電力供給が停止したと判断するようにすることができる。
【0012】
または、
該主電源が、接続検知用端子を有するバッテリであり、
該工作機本体が、該バッテリを着脱可能に装着するようにされ、該バッテリが装着されたときに該接続検知用端子に接続される本体側端子を備えており、
該制御部は、該電動モータに流れる電流が所定の閾値以下となり且つ該接続検知用端子と該本体側端子との接続が切断されたことを検知したときに、該主電源からの電力供給が停止したと判断するようにすることができる。
【0013】
これにより、回路の故障などではなく、バッテリが取り外されたことにより電力供給が停止したことを判断することが可能となる。
【0014】
また、
当該可搬型工作機の状態を表示する表示部をさらに備え、
該主電源からの電力供給が停止して該制御部が該制御部用蓄電部材の電力で動作を継続している間に該主電源からの電力供給が再開されたときに、電力供給が一時的に停止していたことを該表示部が表示するようにすることができる。
【0015】
具体的には、該制御部用蓄電部材がコンデンサであり、該コンデンサが該主電源から供給される電力によって蓄電されるようにすることができる。
【0016】
以下、本発明に係る可搬型工作機の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る可搬型工作機の側面図である。
図2図1の可搬型工作機の断面図である。
図3図1の可搬型工作機の機能ブロック図である。
図4】本発明の可搬型工作機の動作を示す第1のフローチャートである。
図5】本発明の可搬型工作機の動作を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る可搬型工作機1は、図1に示すように、工作機本体10と、工作機本体10の下側に取り付けられた電磁石12と、を備える。工作機本体10の後方には、当該可搬型工作機1の主電源となるバッテリ14が着脱可能に取り付けられている。工作機本体10は、図2に示すように、環状カッター16(加工工具)が着脱可能に取り付けられる加工工具取付部18を備え、工作機本体10内には加工工具取付部18を回転駆動するための電動モータ20が設けられている。加工工具取付部18と電動モータ20とは複数のギヤからなるギヤ機構22を介して駆動連結されている。図1に示すように、工作機本体10にはレバー24が取り付けられており、このレバー24を枢動させることで加工工具取付部18を環状カッター16とともに上下動させるようになっている。図2に示すように、電磁石12は、リング状の第1コイル26と同じくリング状の第2コイル30とを有する。当該可搬型工作機1を磁性体材料の上に載置した状態でこれら第1コイル26及び第2コイル30にバッテリ14からの電力を供給すると、電磁石12によって生じる磁気吸着力によって、工作機本体10が磁性体材料である被加工物に対して固定される。当該可搬型工作機1は、電磁石12によって工作機本体10を被加工物に対して固定した状態で、電動モータ20によって回転駆動された環状カッター16を被加工物に押し当てることで、被加工物に対する加工作業を行うようにした穿孔機である。
【0019】
図1に示すように、工作機本体10の側面には、電動モータ20の駆動を開始するためのモータ駆動スイッチ34と、電動モータ20の駆動を停止するためのモータ停止スイッチ36と、電磁石12の作動を開始及び停止させるための電磁石スイッチ38とが配置されている。工作機本体10の側面にはさらに、照明スイッチ40も配置されている。照明スイッチ40は、工作機本体10の前方下面に配置された図示しない照明装置を点灯及び消灯するために使用される。これらのスイッチ34、36、38、40はいずれも、押している間だけON状態となり手を離すとOFF状態に戻る押しボタン式モーメンタリスイッチである。工作機本体10にはさらに、当該可搬型工作機1の状態を作業者に示すためのLED表示部41が設けられている。
【0020】
図2に示すように、電磁石12には、磁気センサ42が取り付けられている。磁気センサ42は、電磁石12の周囲に被加工物を通って形成される電磁石12の磁気回路における磁束密度の大きさを測定するようになっている。
【0021】
当該可搬型工作機1は、工作機本体10内に制御回路基板46を有し、制御回路基板46には電動モータ20や電磁石12などを制御するための制御部48(図3)が設けられている。バッテリ14を工作機本体10に装着すると、バッテリ14から制御用電源回路50を介して制御部48に電力が供給されて制御部48が起動する。制御部48は、モータ駆動スイッチ34、モータ停止スイッチ36、及び電磁石スイッチ38の操作状態並びにそのときの当該可搬型工作機1の動作状態に応じて、電動モータ20の駆動及び電磁石12の作動を制御する。制御部48は、電動モータ20を駆動させているときには、モータ制御部52に制御信号を送信して電動モータ20の回転速度を制御する。このとき制御部48は、モータ電流検出部54で電動モータ20に流れる電流量を検出して電動モータ20の負荷状況を監視する。制御部48は、電磁石12を作動させているときには、コイル制御回路56を介して第1コイル26及び第2コイル30に供給する電力を制御する。第1コイル26と第2コイル30は直列に接続されているため、第1コイル26と第2コイル30に供給される電力は通常同じになる。コイル断線検出回路58は、第1コイル26と第2コイル30に流れる電流を検知して第1コイル26と第2コイル30の断線を検出する。第1コイル26又は第2コイル30の断線が検出された場合には、制御部48は制御を停止するとともにLED表示部41を点灯させてコイル26、30が断線したことを使用者に知らせる。また制御部48は、コイル26、30が断線したことを記憶して、バッテリ14が一旦外された後に再接続されて制御部48の制御が再開されたときにLED表示部41を点灯させてコイル26、30が断線していることを使用者に知らせるようにもなっている。
【0022】
制御回路基板46にはさらに、制御部48に接続された制御部用コンデンサ60(制御部用蓄電部材)と、電磁石12に接続された電磁石用コンデンサ62(電磁石用蓄電部材)とを備える。これら制御部用コンデンサ60と電磁石用コンデンサ62は、バッテリ14が接続されたときにバッテリ14から供給される電力によって蓄電される。そして、バッテリ14からの電力供給が停止したときには、制御部用コンデンサ60に蓄電された電力によって制御部48の動作が継続され、電磁石用コンデンサ62に蓄電された電力によって電磁石12の作動が継続されるようになっている。
【0023】
バッテリ14は接続検知用端子64を備えており、バッテリ14を工作機本体10に装着すると接続検知用端子64が工作機本体10に設けられた本体側端子66に接続されるようになっている。制御部48は、本体側端子66と接続検知用端子64との接続状態を検知するようになっている。
【0024】
図4及び図5のフローチャートは、電磁石12のコイル26、30が断線していない状態での当該可搬型工作機1の動作を示している。工作機本体10にバッテリ14を装着して制御部48に電力が供給されると制御部48による制御が開始される(S10)。電磁石スイッチ38が押されてOFF状態からON状態になると(S12)、制御部48はコイル制御回路56を介して電磁石12の作動を開始する(S14)。電磁石12が作動すると、当該可搬型工作機1は電磁石12の磁気吸着力により被加工物に固定される。この状態でモータ駆動スイッチ34が押されてOFF状態からON状態になると(S16)、制御部48はモータ制御部52を介して電動モータ20の駆動(加工工具取付部18の回転駆動)を開始する(S18)。
【0025】
電動モータ20の駆動が開始されると、制御部48は電動モータ20の電流を検知する。電動モータ20の電流が所定の閾値A[A]以下ではない場合には(S20)、電動モータ20の駆動が継続される。ここで、閾値であるA[A]は、バッテリ14から正常に電力が供給されている状態では生じ得ない程度に小さい値である。電動モータ20の駆動が継続しているときにモータ駆動スイッチ34とモータ停止スイッチ36と電磁石スイッチ38のうちのいずれかのスイッチが押されてON状態になると(S22)、制御部48は電動モータ20の駆動を停止する(S24)。モータ停止スイッチ36が押されたときにのみ電動モータ20の駆動を停止するようにしてもよいが、例えば緊急時に慌てて電動モータ20の駆動を停止させようとしてモータ停止スイッチ36以外のスイッチ34、38を押してしまうことも考えられ、そのような場合にも電動モータ20の駆動を停止することにより、危険な状態をより確実に回避できるようにしている。
【0026】
制御部48は、電動モータ20の電流がA[A]以下であることを検知したときには(S20)、電動モータ20の駆動を停止させるが(S24)、その前に本体側端子66が接続検知用端子64に接続されているかを確認する(S26)。本体側端子66と接続検知用端子64との接続が切断されている場合には、制御部48は、バッテリ14が工作機本体10から外れてバッテリ14からの電力供給が停止していると判断して(S28)、これをメモリに記憶する。バッテリ14が工作機本体10から外れてバッテリ14からの電力供給が停止している場合には、制御部48は制御部用コンデンサ60に蓄電された電力によって動作を継続する。また、このとき電磁石12は作動中であり制御部48は電磁石12の作動を継続させるように制御されているが、電磁石12は電磁石用コンデンサ62に蓄電された電力によって作動を継続する。なお、電磁石12は電力供給が停止してもそれまでの作動により磁化されているため、電磁石12への電力供給が完全に停止した後もある程度の磁気吸着力は維持する。また電力供給が停止して電動モータ20が停止する際には、電動モータ20に起電力が生じてある程度の電力が電磁石12に供給されることになるため、その電力によっても電磁石12の作動は継続される。
【0027】
電動モータ20の駆動を停止した後(S24)、制御部48はバッテリ14からの供給電圧を確認し、それが所定のC[V]よりも大きい場合には(S30)、バッテリ14が工作機本体10に装着されていて電力供給が継続している又はバッテリ14が一旦外れた後に再装着されて電力供給が再開されたと判断して、図5に示す制御に移行する。ここで、C[V]は、制御部48、電動モータ20、及び電磁石12を正常に動作させるのに十分な大きさの電圧値である。制御部48は、バッテリ14からの電力供給が停止して制御部用コンデンサ60の電力で動作を継続している間にバッテリ14からの電力供給が再開されたときには、電動モータ20の駆動を停止し電磁石12の作動を維持した状態を継続する。
【0028】
図5に示すように、制御部48は上記制御においてバッテリ14が一時的に外れていたか否かを確認する(S32)。S28においてバッテリ14が外れたと判断していた場合には(S32)、制御部48はバッテリ14が一時的に外れたことを作業者に知らせるためにLED表示部41を点灯する(S34)。LED表示部41が点灯している状態でいずれかのスイッチ34、36、38が押されてON状態になると(S36)、制御部48はLED表示部41を消灯する(S38)。LED表示部41の点灯により、作業者にバッテリ14の装着状態を確認するように促すことができる。LED表示部41が消灯している状態でモータ駆動スイッチ34が押されてON状態になると(S40)、図4のS18に戻り電動モータ20の駆動が再び開始される。モータ駆動スイッチ34は押されずに電磁石スイッチ38が押されてON状態になると(S42)、電磁石12の作動が停止される(S44)。これで一連の制御が終了し(S46)、制御部48の制御はS10に戻る。
【0029】
環状カッター16による加工をしている状態では回転する環状カッター16が被加工物から反力を受けその力が可搬型工作機1に伝わることになるが、通常は電磁石12による十分な磁気吸着力により可搬型工作機1がしっかりと固定されているため、反力により可搬型工作機1が浮き上がったり倒れたりする虞はない。しかしながら、バッテリ14からの電力供給が停止すると電磁石12による磁気吸着力が急激に低下するため、反力により可搬型工作機1が倒れたりする虞がある。当該可搬型工作機1においては、上述の通り電磁石12が作動され電動モータ20が駆動されている間にバッテリ14からの電力供給が停止したときに、制御部48が制御部用コンデンサ60の電力によって動作を継続して、電動モータ20の駆動は停止させて電磁石12の作動は継続させるように制御を行うようになっている。これにより、電磁石12による磁気吸着が継続している間に駆動中の電動モータ20を停止させて環状カッター16の回転を停止させるようにして、可搬型工作機1が環状カッター16から受ける反力により倒れたりすることを防止することが可能となる。
【0030】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、環状カッターではなくドリルなどの他の先端工具が取り付けられるようにした工作機としてもよい。また、上記実施形態においては1つのバッテリを主電源として電動モータ、電磁石、及び制御部に電力を供給するようになっているが、電動モータや電磁石への電力供給を別のバッテリによって行うようにすることもできる。また、バッテリに代えて、AC電源などの外部電源を電源としてもよい。電力供給が停止したときに制御部や電磁石に電力を供給するための蓄電部材は、コンデンサに代えて一次電池や二次電池を利用することもできる。また、電磁石用の蓄電部材は必ずしも必要ではない。バッテリが外れるなどして電力供給が停止したことの判断は、電動モータの電流量とバッテリの接続検知用端子との接続のいずれか一方のみに基づいて行っても良い。または、主電源からの供給電圧を直接検知して電力供給が停止したことを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 可搬型工作機
10 工作機本体
12 電磁石
14 バッテリ
16 環状カッター
18 加工工具取付部
20 電動モータ
22 ギヤ機構
24 レバー
26 第1コイル
30 第2コイル
34 モータ駆動スイッチ
36 モータ停止スイッチ
38 電磁石スイッチ
40 照明スイッチ
41 LED表示部
42 磁気センサ
46 制御回路基板
48 制御部
50 制御用電源回路
52 モータ制御部
54 モータ電流検出部
56 コイル制御回路
58 コイル断線検出回路
60 制御部用コンデンサ
62 電磁石用コンデンサ
64 接続検知用端子
66 本体側端子
図1
図2
図3
図4
図5