IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ピカソ美化学研究所の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】パール剤およびパール感を有する化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20221128BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221128BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/86
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017053596
(22)【出願日】2017-02-28
(65)【公開番号】P2018140979
(43)【公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋誌
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山田 三樹男
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-504113(JP,A)
【文献】特開2005-239555(JP,A)
【文献】特開平06-009341(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0316581(US,A1)
【文献】Hangzhou LG Cosmetic, China,Transparent Scrub Cleanser,Mintel GNPD [online],2010年10月,https://portal.mintel.com,ID#1439762
【文献】Mandom Corporation, Japan,Spiky Stand Up Wax,Mintel GNPD [online],2016年05月,https://portal.mintel.com,ID#4025785
【文献】Mandom, Singapore,Hair Wax Super Hard,Mintel GNPD [online],2014年10月,https://portal.mintel.com,ID#2753365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水5~95重量%と、
カルナウバロウ0.3~30重量%と、
ポリアルキレンオキシ基と、ラウリル基、ミリスチル基、イソセチル基、オクチルドデシル基およびデシルテトラデシル基から選ばれるアルキル基とがエーテル結合した非イオン性エーテル系界面活性剤を少なくとも1種含み、HLBの加重平均が14以上である界面活性剤0.1~60重量%と、
を含み、前記カルナウバロウに対する、前記界面活性剤の重量比が、0.01~40である、パール剤およびパール感を有する化粧料。
【請求項2】
前記エーテル系界面活性剤におけるポリアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ基である請求項1に記載のパール剤およびパール感を有する化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等にパール光沢を付与することができるパール剤およびパール感を有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャンプー、ヘアリンス、化粧水等の化粧料において、外観上の差別化を図り、商品価値を高める目的で、美しい外観を有するパール光沢の付与が行われてきた。化粧料にパール光沢を付与するには、雲母や魚鱗箔などの無機物や、ロウや高級脂肪酸等の油脂類を分散させる方法が行われている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-152609号
【文献】特開平01-228502号
【文献】特開平07-077817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に油脂類を用いてパール光沢を付与する場合には、パール光沢の出方が不十分であったり、沈降あるいは浮上してパール光沢にムラが大きくなったり、さらには高温にてパール光沢がなくなるといった耐温度性が低いなど、美しいパール光沢を維持することが困難であった。
本発明は、沈降や浮上のほとんどない耐温度性・経時安定性に優れたムラのないパール光沢を付与することができるパール剤、およびパール感を有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、カルナウバロウと特定の分散剤としての界面活性剤を用いることにより、パール光沢の耐温度性・経時安定性を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のパール剤は、カルナウバロウと、少なくとも1種の、ポリアルキレンオキシ基およびアルキル基がエーテル結合したエーテル系界面活性剤と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のパール剤は、耐温度性・経時安定性が高くムラのないパール光沢を保持できるため、美観が維持され、特に化粧料への付加価値を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
本発明のパール剤は、水と、カルナウバロウと、少なくとも1種のポリアルキレンオキシ基および炭素数10~24のアルキル基がエーテル結合したエーテル系界面活性剤と、を含むことを特徴とする。
上記の通り、油脂類として、カルナウバロウを選択し、特定の界面活性剤を使用することにより、パール感を出すことができるとともに、パール光沢の経時安定性を高めることができる。これにより、特に化粧料に使用した場合、付加価値を高めることができる。
【0009】
本発明において使用される界面活性剤は、ポリアルキレンオキシ基および炭素数10~24のアルキル基がエーテル結合したエーテル系界面活性剤を含む。
上記ポリアルキレンオキシ基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリブチレンオキシ基等が挙げられ、これらの中でもポリエチレンオキシ基が好ましい。
上記炭素数10~24のアルキル基としては、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、オレイル基、イソセチル基、オクチルドデシル基、デシルテトラデシル基等が挙げられる。これらの中でも、ラウリル基、ミリスチル基、イソセチル基が好ましい。
また、上記界面活性剤のHLB(混合している場合には加重平均HLB)は、14以上であることが好ましい。なかでも好ましい界面活性剤としては、(C12-14)-パレス-12、イソセテス-20、イソセテス-25、イソセテス-15とイソセテス-20又はイソセテス-25との組み合わせ等が挙げられる。
なお、HLBとは親水性-親油性のバランス(Hydrophile-Lypophile Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
HLB={(Σ無機性値)/(Σ有機性値)}×10
【0010】
また、本発明のパール剤およびパール感を有する化粧料は、カルナウバロウに対する界面活性剤の重量比が、0.01~40であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のパール剤およびパール感を有する化粧料は、カルナウバロウと、上記界面活性剤とを、溶媒中に分散させることにより、見た目のパール感を出していると考えられる。
【0011】
前記溶媒としては、通常、水、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、低級1価アルコール等が用いられ、特に水が好ましい。これらの、溶媒の含有量はパール剤およびパール感を有する化粧料全体の5~95%であることが好ましい。
なお、パール剤は、上記溶媒およびその他の成分で希釈することにより、パール感を有する組成物とすることができるものである。つまり、パール剤を上記溶媒およびその他の成分にて希釈することによりパール感を有する化粧料となり得る。
【0012】
本発明のパール剤およびパール感を有する化粧料には、上記成分に加えて、必要に応じてその他公知の化粧料で使用される成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合できる。具体的には、抽出物、湿潤剤、溶媒、甘味剤、着色剤、香料、有効成分等が配合される。
【0013】
前記抽出物としては、対象の植物の粉砕物等を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水蒸気蒸留物、各種抽出溶剤による粗抽出物、粗抽出物を分配又はカラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで精製して得られた抽出物画分などを本発明における抽出物として用いることができる。
抽出に使用する植物の部位は特に限定されず、種子、種皮、果肉、花、葉、茎、根、根茎又は全草等のいずれの部位も適宜選択して使用することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0014】
前記湿潤剤としては、例えばキシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0015】
前記甘味剤としては、キシリトール、マルチトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、アスパルテーム等を通常量で配合することができる。
【0016】
前記着色料としては、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号や、カラメルなど、安全性の高い水溶性色素、青色403号、緑色202号、黄色201号、黄色204号、黄色404号、黄色405号、赤色215号、赤色223号、赤色225号、赤色505号、だいだい色201号、だいだい色403号、紫色201号等の油溶性色素等を添加することができる。
【0017】
有効成分としては、例えばイソプロピルメチルフェノール、塩酸クロロロヘキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン等の殺菌剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、アズレン、塩化リゾチーム、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2,ビタミンB6、ビタミンP、CoQ10、CoQ9、CoQ8などのビタミン類及び補酵素、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリリン酸ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ポリビニルピロリドン、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等を添加することができる。
【0018】
前記防腐剤としては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、エタノール、デヒドロ酢酸などが挙げられる。
【0019】
本発明のパール剤およびパール感を有する化粧料は、カルナウバロウと界面活性剤とを、場合によっては溶媒を加えて加熱して溶解混合した後、水等の溶媒と混合することにより製造することができる。また、必要に応じて、上記のような他の成分を適宜添加してもよい。
さらに、本発明のパール剤は、他の化粧料と混合することにより、パール感を有する化粧料とすることができる。
【0020】
【実施例
【0021】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない(但し、実施例1~7、9~11は参考例である)
【0022】
合成例1
デシルテトラデシルアルコール1モルに酸化エチレン28モルを付加重合させて、POE(28)デシルテトラデシルエーテルを合成した。
【0023】
合成例2
オクチルドデシルアルコール1モルに酸化エチレン34モルを付加重合させて、POE(34)オクチルドデシルエーテルを合成した。
【0024】
<パール剤およびパール感を有する化粧料の調製および評価>
下記表1に示す割合で▲1▼を加熱混合して均一化したのち、加熱した▲2▼水に投入し、撹拌しながら冷却することにより、パール剤およびパール感を有する化粧料を調製した。
さらに、パール剤について、製造直後のパール感(パール光沢)の有無、および45℃で30日間保管し、耐温度性・経時安定性を確認した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記の通り、本発明の実施例においては、パール感を出すことができるとともに、パール感の耐温度性・経時安定性が高いものであった。なお、カルナウバロウ以外の油脂類を使用した場合には、パール感を出すことができなかった。
さらに、実施例8の組成物と水との重量比を1:99の割合で混合した場合、当該希釈物についてもパール感を有するものであった。さらにこの希釈物を45℃で30日間保管したものについてもパール感を保っており、耐温度性・経時安定性が高いものであった。