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  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図1
  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図2
  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図3
  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図4
  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図5
  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図6
  • 特許-面状ヒーターを用いた融雪システム 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】面状ヒーターを用いた融雪システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/28 20060101AFI20221128BHJP
   E01H 5/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
H05B3/28
E01H5/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018071962
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2018181844
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017082371
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017082372
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521138660
【氏名又は名称】株式会社アイアールエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100130823
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 誠一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直宏
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-057775(JP,A)
【文献】特開2010-003487(JP,A)
【文献】特開2011-074565(JP,A)
【文献】実開昭56-101890(JP,U)
【文献】特開2008-184755(JP,A)
【文献】特開平11-71707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20-3/38;
3/84-3/86
E01H 5/00;
5/10
E01C 11/24-26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス材を押出成形して形成されるヒーター本体と、ヒーター本体を被覆絶縁するシリコーンゴムと、シリコーンゴム中にヒーター本体に沿って埋め込むヒーター本体を補強する抗張力補強材と、シリコーンゴムを被覆するガラス繊維とからなる紐状のものであって、圧着スリーブにより接続電線と結線されている面状ヒーターを用いて融雪する融雪システムであり、面状ヒーターを挿入する導管と、導管を着脱自在に取り付ける導管コネクタ部と、底面に複数の穴部を形成し各穴部に導管コネクタ部を設ける中継ボックスと、中継ボックスに導かれる面状ヒーターの電線に接続する制御盤と備え、中継ボックスを地上に配置し、融雪場所に面状ヒーターを挿入する導管を埋設しまたは設置し、面状ヒーターの電線を導管コネクタ部を通じて中継ボックスに導き集約し、融雪のための配線を行うことを特徴とする面状ヒーターを用いた融雪システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場や屋根などの融雪を行う面状ヒーターと面状ヒーターを用いた融雪システムに関する。
【背景技術】
【0002】
豪雪地帯における除雪を人力で行うことは、大変な労力を伴うものであり、危険を伴うこともあった。従来から、除雪の労力や危険を回避するための有効な融雪手段が求められている。
【0003】
従来の電気融雪装置では、ビニールで絶縁したニクロム線をそのままコンクリート・アスファルト下部に設置して融雪するものが多数であり、なんらかの原因で漏電したときは、コンクリートやアスファルトを撤去し、新たにコンクリートやアスファルトを施工し直ししなければならなかったため、電気融雪装置の設置費用は高額なものとなっていた。
また、電力の消費も多く、融雪装置の設置が伸びない要因となっていた。
【0004】
上記課題を解決するために、面状発熱体を用いて融雪する面状発熱体の設置構造が提供されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭54-135427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の面状発熱体の設置構造は、筒型の保護ケース内に面状発熱体と弾性体を在置し、弾性体により面状発熱体を保護ケースに押圧密着させて、面状発熱体の加熱面を保護ケースに固定するとともに、弾性体の変形性を利用して面状発熱体の交換を行うものである。これにより、コンクリートやアスファルトの撤去・再施工が必要なくなり、面状発熱体の設置費用を軽減することができる。
また、特許文献1の面状発熱体の設置構造では、面状発熱体として、sus430薄膜(新日本製鐵(株)製)、厚さ80μm、幅38mm、波形分布幅4mm、比抵抗6.38×10-5Ω・cmからなる金属波形状素子を低密度ポリエチレンで絶縁被覆したもの(厚さ5.5mm、幅60mm、長さ100cm、50W/m)を用いている。
【0007】
しかし、特許文献1の面状発熱体の設置構造は、ヒーターレイアウトによっては施工が複雑となり、施工コストが高額となる可能性があった。
【0008】
上述の欠点を解決するために、施工の簡素化及び施工コスト削減を可能にする面状ヒーターと面状ヒーターを用いた融雪システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の面状ヒーターを用いた融雪システムは、ステンレス材を押出成形して形成されるヒーター本体と、ヒーター本体を被覆絶縁するシリコーンゴムと、シリコーンゴム中にヒーター本体に沿って埋め込むヒーター本体を補強する抗張力補強材と、シリコーンゴムを被覆するガラス繊維とからなる紐状のものであって、圧着スリーブにより接続電線と結線されている面状ヒーターを用いて融雪する融雪システムであり、面状ヒーターを挿入する導管と、導管を着脱自在に取り付ける導管コネクタ部と、底面に複数の穴部を形成し各穴部に導管コネクタ部を設ける中継ボックスと、中継ボックスに導かれる面状ヒーターの電線に接続する制御盤と備え、中継ボックスを地上に配置し、融雪場所に面状ヒーターを挿入する導管を埋設しまたは設置し、面状ヒーターの電線を導管コネクタ部を通じて中継ボックスに導き集約し、融雪のための配線を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の面状ヒーターは、本願発明者が消費電力の省エネ化を図るべく試行錯誤を繰り返して発見したものである。これにより、消費電力の省エネ化を図ることができる。
本発明の面状ヒーターを用いた融雪システムは、面状ヒーターに接続する配線を集約する中継ボックスを設けるものである。これにより、施工の簡素化・コスト削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の面状ヒーターの構成を表わす図である。
図2】面状ヒーターと接続電線との結線部分を表わす図である。
図3】駐車場に設置する本発明の面状ヒーターを用いた融雪システムの構成を表わす図である。
図4図3の駐車場に埋設される導管のレイアウト図(ヒーターレイアウト)を表わす図である。
図5図3のA-A断面図である。
図6図3の中継ボックスの導管コネクタ部を表わす図である。
図7】建物の屋根に設置する本発明の融雪システムの構成を表わす図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、面状ヒーターを用いて融雪システムのコスト削減を実現可能にするものである。
【実施例
【0014】
本発明の面状ヒーター及び面状ヒーターを用いた融雪システムを図に基づいて説明する。図1は、本発明の面状ヒーターの構成を表わす図である。図2は、面状ヒーターと接続電線との結線部分を表わす図である。図3は、駐車場に設置する本発明の面状ヒーターを用いた融雪システムの構成を表わす図である。図4は、図3の駐車場に埋設される導管のレイアウト図(ヒーターレイアウト)を表わす図である。図5は、図3のA-A断面図ある。図6は、図3の中継ボックスの導管コネクタ部を表わす図である。
図1に基づいて、本発明の面状ヒーターについて説明する。
本発明の面状ヒーター10は、ステンレス材を押出成形して形成される厚さ50μm、幅5mmのヒーター本体12(ステンレス箔)と、ヒーター本体12を被覆絶縁するシリコーンゴム14と、シリコーンゴム14中にヒーター本体12に沿って埋め込むヒーター本体12を補強する抗張力補強材16(ケブラー(登録商標)製のもの)と、シリコーンゴム14を被覆するガラス繊維18とからなり、厚さ4mm、幅7mm、長さ10m乃至20mに形成する紐状のものである。
面状ヒーター10は、消費電力の省エネ化を可能にするため、本願発明者が試行錯誤を繰り返し、発見したものである。融雪場所(面状ヒーター10の設置場所)に設置するために必要な面状ヒーター10の長さは概ね10m乃至20mである。融雪に必要な温度は、53℃以上である。例えば、厚さ30μm、幅5mmのヒーター本体12(ステンレス箔)によると、長さ10m乃至14mにおいて53℃以上の融雪に必要な温度を確保できたが、14mを超える長さでは融雪に必要な温度を確保できなかった。本願発明者が試行錯誤を繰り返した結果、ヒーター本体12(ステンレス箔)を厚さ50μm、幅5mmとすることで、10m乃至20mにおいて53℃以上の融雪に必要な温度を確保できることを発見した。
また、従来の電気ヒーターとの消費電力を比較したところ、融雪に必要な消費電力は、従来の電気ヒーターの半分であることが分かった。
本実施例の駐車場では、厚さ50μm、幅5mm、長さ15m(図4において一の導管コネクタ部32aから導管28を通じて他の導管コネクタ部32bに至るまでの面状ヒーター10の長さ)の面状ヒーター10(ステンレスヒーター)をAC200V1回路とし、設定温度を53℃から68℃としたものをコンクリート・アスファルトの内部に敷設した。
【0015】
なお、面状ヒーター10は、銅線用圧着スリーブ(B5.5)20により接続電線(KIV 1.25)22と結線さている(図2)。また、結線部分は、熱収縮チューブ(レイケム社製、1/4ES2000接着剤入り)24で60mm被覆されている。これにより、防水基準IP68を満たすことが可能となった。
【0016】
本発明の面状ヒーターを用いた融雪システム26は、面状ヒーター10と、面状ヒーター10を挿入する導管28と、面状ヒーター10に接続される電線22と、面状ヒーター10の電線22に接続する制御盤30と備え、面状ヒーター10の電線22と制御盤30との間に電線22を接続する導管コネクタ部32を備える中継ボックス34を設け、導管28に面状ヒーター10を挿入して融雪場所に埋設しまたは融雪場所に設置し、面状ヒーター10の電線22を導管コネクタ部32を通じて中継ボックス34に導き融雪のための配線を行うものである。融雪システム26により、施工の簡素化及び施工コスト削減を図ることができる。
【0017】
図3では、導管28として、樹脂管(PF-16)36と亜鉛メッキした鋼管(E19金属亜鉛メッキ管)38を使用する。樹脂管36は、面状ヒーター10に繋がっている配線(電線22)を保護するものである。また、樹脂管36は、中継ボックス34を経由し制御盤30に繋がり、点検口の役割もはたす。
駐車場に埋設される一の導管28は、鋼管38をU字に形成したものである(図4)。図3において、導管28の折り返し部分は、樹脂管36で形成されている。また、鋼管38と樹脂管36は連結機器40(PF管用CPアダプター)によりワンタッチで接続できるようになっており、施工時間を大幅に削減することができる。
なお、導管28は、樹脂管(PF-16)36、亜鉛メッキした鋼管(E19パイプ) 38に限るものではなく、同等の性能を有するものであればよい。
【0018】
図3において、面状ヒーター10を挿入した鋼管38が地中に埋設されている(図5)。鋼管38には、連結機器40(PF管用CPアダプター)を介して樹脂管36(樹脂管PF-16)が連結(ワンタッチで接続)されている。樹脂管36は、中継ボックス34の導管コネクタ部32に着脱自在に取付けられている。また、中継ボックス34を通じて制御盤30に連絡している。
中継ボックス34の底面には複数の穴部が形成されており、各穴部に導管コネクタ部32が備えられている(図4図6)。導管コネクタ部32に取り付けられる樹脂管36を通じて中継ボックス34に導かれる面状ヒーター10の接続電線22は、中継ボックス34内において敷設されている面状ヒーター10を直列接続又は並列接続になるよう繋がれている(図示せず)。これにより、融雪が可能となる。
面状ヒーター10に異常が発生した場合は、異常が発生した面状ヒーター10を樹脂管36及び鋼管38から抜くとともに、正常な面状ヒーター10を樹脂管36及び鋼管38に挿入して、交換する。なお、交換作業では、異常が発生した面状ヒーター10の一端と正常な面状ヒーター10の一端を結びつけて、異常が発生した面状ヒーター10を抜いて行う。これにより、駐車場の表面42(コンクリート、アスファルト等)を壊さなくても簡単にかつ短時間で面状ヒーター10を交換できる。
また、中継ボックス34に複数の導管コネクタ部32を設けることにより、埋設する又は設置する面状ヒーター10を中継ボックス34に集約できることから、一元管理ができる。すなわち、中継ボックス34は、融雪システム26の設置・面状ヒーター10の交換に係る作業を向上させるとともに、点検口としての役割を果たすものである。これにより、面状ヒーターの点検などの融雪システムのメンテナンスを中継ボックスのみにて行うことができることから、メンテナンス作業が容易になり、融雪システムの故障も防止できる。
以上のように、面状ヒーター10を用いた融雪システム26は、面状ヒーター10の電線22(ケーブル)を地上に設置する中継ボックス(プールボックス)に集約した簡素な構造のものであるため、施工を簡素化でき施工コストも削減することができる。
また、面状ヒーター10を埋設するコンクリート・アスファルトを壊すことなく、面状ヒーター10を出し入れするだけで交換できることから、設置後のコストも削減することができる。
【0019】
本発明の融雪システム26は、他の融雪場所にも設置できる。建物の屋根に設置する場合について図7に基づいて説明する。図7は、建物の屋根に設置する本発明の面状ヒーターを用いた融雪システムの構成を表わす図である。
建物44の屋根の軒先44aに雪庇・氷柱(つらら)が形成される場合は、軒先44aの唐草(淀)46に沿って導管28(樹脂管)を設置する。なお、屋根に設置する導管28は、角パイプの形状のものが取り付け易い。
また、雪庇・氷柱が形成される屋根に融雪システムを新たに設置する場合、屋根表面のカラー鉄板を一度剥がして鉄板の下に電気ヒーターを敷設する従来の設置工法に比べ、建物の屋根の唐草部分46に面状ヒーター10を挿入した導管28を取付ける本願発明の設置工法が、設置が簡易であり、施工コストを削減することができる。
【0020】
以上のとおり、本発明の面状ヒーター及び面状ヒーターを用いた融雪システムによると、面状ヒーターの設置に係る施工を簡素化でき施工コストを削減できる。また、従来の電気ヒーターに比べ、消費電力のコストを削減することができることから、ランニングコストの削減も可能になる。
【符号の説明】
【0021】
10 面状ヒーター
12 ヒーター本体
14 シリコーンゴム
16 抗張力補強材
18 ガラス繊維
22 電線
26 融雪システム
28 導管
30 制御盤
32 導管コネクタ部
34 中継ボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7