(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】射出成型機の金型位置決め装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/30 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
B29C33/30
(21)【出願番号】P 2018167202
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100092738
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】北浦 一郎
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3199306(JP,U)
【文献】特開2017-001207(JP,A)
【文献】特開平06-270068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/30
B22D 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の金型固定部に、金型の下端面を受け止めて金型を鉛直方向に位置決めする鉛直方向位置決め部と、前記金型の左右一側面を受け止めて金型を水平方向に位置決めする水平方向位置決め部とを備え、
前記水平方向位置決め部は、前記金型固定部に設けられた支持部と、該支持部に水平方向移動自在に支持されて前記金型側面に当接する移動部とを有し、
前記支持部と移動部のいずれか一方に、水平方向に沿った複数の第1孔が設けられ、他方に前記第1孔と同軸心で一致する第2孔が設けられ、
前記第1孔と第2孔にわたって挿入されるロックピンが設けられた射出成形機の金型位置決め装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記金型固定部の左右方向外周部の金型取付面に固定されたブロック材により構成され、該ブロック材に水平方向に沿った係合部が形成され、
前記移動部は、前記ブロック材よりも水平方向に長い長尺材により構成され、該長尺材に前記係合部に摺動自在に係合する被係合部が形成され、
前記長尺材に前記第1孔が鉛直方向に設けられ、前記ブロック材に前記第2孔が設けられている請求項1記載の射出成型機の金型位置決め装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記ブロック材の上下面に形成されている請求項2記載の射出成型機の金型位置決め装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記ブロック材に設けられた水平方向の溝部に形成されている請求項2記載の射出成型機の金型位置決め装置。
【請求項5】
前記係合部は、前記ブロック材に設けられた水平方向に貫通孔に形成されている請求項2記載の射出成型機の位置決め装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記金型固定部の金型取付面と面一の部分により構成され、該支持部に前記金型取付面より凹設された水平方向に沿った係合部が形成され、該係合部の底面に前記第1孔が前記金型取付面に直交する方向に設けられ、
前記移動部は、前記係合部に摺動自在に係合する被係合部と、前記第2孔とを有する請求項1記載の射出成型機の金型位置決め装置。
【請求項7】
前記移動部の端部に、前記金型の側面
に当接するプレート材から成る当接部が設けられている請求項1~6のいずれか一つに記載の射出成型機の金型位置決め装置。
【請求項8】
前記当接部には、前記金型の前面に係合して金型が前記金型固定部から落下するのを防止する凸部が設けられている請求項7記載射出成型機の金型位置決め装置。
【請求項9】
前記水平方向位置決め部の反対側の前記金型固定部に、前記金型を前記水平方向位置決め部側に押圧するアシスト装置が設けられている請求項1~8のいずれか一つに記載の射出成型機の金型位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成型機の金型位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の金型位置決め装置は、射出成形機の固定プラテンの盤面に種々のサイズの金型を鉛直方向と水平方向に位置決めする装置である。この金型位置決め装置は、金型を鉛直方向に位置決めする鉛直方向位置決め機構と、金型を水平方向に位置決めする水平方向位置決め機構とを備えている。
【0003】
前記鉛直方向位置決め機構は、固定プラテンの盤面の下部に装備され、金型の下端面を受け止めて金型を鉛直方向に位置決めするものである。
【0004】
前記水平方向位置決め機構は、固定プラテンの盤面の中段部のうちの、射出成形機の操作側の端部寄り部位に装備され、金型の水平方向と直交する操作側端面(右端面)を操作側から受け止めて金型を水平方向に位置決めするように構成されている。この水平方向位置決め機構は、金型の操作側端面を受け止める位置可変部材であって、水平方向位置を可変にした位置可変部材であるスライド部材を備えている。スライド部材の先端が金型に当接する金型位置決め部とされている。スライド部材は、盤面に固定されたガイド部材のガイド孔にスライド可能に挿通されている。
【0005】
スライド部材の表面には、目盛りが刻まれており、この目盛りをガイド部材の基準面に合わせることにより、スライド部材の水平方向位置を決める。
【0006】
ガイド部材には1対のホロセット(止めネジ)が装着され、スライド部材を水平方向に位置決めした後、1対のホロセットを締結することで、スライド部材をガイド部材と盤面とに摩擦力により固定するようになっている。
【0007】
この金型位置決め装置においては、金型を天井クレーンで吊持して盤面に近接状に搬入する前に、予め鉛直方向位置決め機構の型受け部材の高さ位置を金型のサイズに応じた位置に設定すると共に、水平方向位置決め機構の可動スライド部材の水平方向位置を金型のサイズに応じた位置に設定する。
【0008】
このとき、水平方向位置決め機構においては、1対のホロセットを緩めてから、スライド部材を左方又は右方へ手動にて移動させ、先端の金型位置決め部を金型のサイズに応じた水平方向位置になるように目盛りを読んで設定してから、1対のホロセットを締結してスライド部材を摩擦力により固定状態に保持する。
【0009】
その後、天井クレーンで吊持した金型を上方から搬入して金型の下端を鉛直方向位置決め機構に支持させることで、金型を鉛直方向に位置決めすると共に、金型の操作側端面を水平方向位置決め機構に当接させることで、金型を水平方向に位置決め(センタリング)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1記載のものにおいて、天井クレーンで吊持ちされた金型は、前後左右に傾いており、その傾きを鉛直方向位置決め機構や水平方向位置決め機構により矯正する。しかし、スライド部材の先端の金型位置決め部の面積が狭く、傾いた金型の側面を垂直に矯正するのが困難であった。
【0012】
また、金型の位置決め作業は、射出成型機の可動側プラテンと固定側プラテンとの間の極めて狭い作業空間において行われるが、スライド部材に刻まれた目盛の読み取りによる正確な位置決めは困難であった。
【0013】
さらに、作業空間が狭いため、ガイド部材の調整の時のホロセット(止めネジ)の緩め、締付け作業が困難であった。
【0014】
また、スライド部材の位置固定は、締め付けネジによる摩擦力により行われているが、位置調整作業中に、数トンから数十トンの重量物の金型が衝突すると固定位置が変化するおそれがあった。
【0015】
本発明は、狭い作業空間においてスライド部材の位置調整作業を容易にすることを目的とする。
他の目的は、天井クレーンで吊持ちされた金型の傾きを容易に矯正することである。
また他の目的は、金型がスライド部材に衝突してもスライド部材の位置変化を生じさせないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、本発明は、次の手段を講じた。すなわち、本発明の射出成型機の金型位置決め装置は、射出成形機の金型固定部に、金型の下端面を受け止めて金型を鉛直方向に位置決めする鉛直方向位置決め部と、前記金型の左右一側面を受け止めて金型を水平方向に位置決めする水平方向位置決め部とを備え、前記水平方向位置決め部は、前記金型固定部に設けられた支持部と、該支持部に水平方向移動自在に支持されて前記金型側面に当接する移動部とを有し、前記支持部と移動部のいずれか一方に、水平方向に沿った複数の第1孔が設けられ、他方に前記第1孔と同軸心で一致する第2孔が設けられ、前記第1孔と第2孔にわたって挿入されるロックピンが設けられたものである。
【0017】
前記支持部は、前記金型固定部の左右方向外周部の金型取付面に固定されたブロック材により構成され、該ブロック材に水平方向に沿った係合部が形成され、前記移動部は、前記ブロック材よりも水平方向に長い長尺材により構成され、該長尺材に前記係合部に摺動自在に係合する被係合部が形成され、前記長尺材に前記第1孔が鉛直方向に設けられるのが好ましい。
【0018】
前記係合部は、前記ブロック材の上下面に形成されることができる。
【0019】
前記係合部は、前記ブロック材に設けられた水平方向の溝部に形成されることができる。
【0020】
前記係合部は、前記ブロック材に設けられた水平方向に貫通孔に形成されることができる。
【0021】
前記支持部は、前記金型固定部の金型取付面と面一の部分により構成され、該支持部に前記金型取付面より凹設された水平方向に沿った係合部が形成され、該係合部の底面に前記第1孔が前記金型取付面に直交する方向に設けられ、前記移動部は、前記係合部に摺動自在に係合する被係合部と、前記第2孔とを有するのが好ましい。
【0022】
前記移動部の端部に、前記金型の側面に当接するプレート材から成る当接部が設けられているのが好ましい。
【0023】
前記当接部には、前記金型の前面に係合して金型が前記金型固定部から離脱するのを防止する凸部が設けられているのが好ましい。
【0024】
前記水平方向位置決め部の反対側の前記金型固定部に、前記金型を前記水平方向位置決め部側に押圧するアシスト装置が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ロックピンを設けたので、従来のねじの締付によるものに比べて、狭い作業空間での金型位置決め作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の装置を用いた金型位置決めの概要を示す説明図。
【
図2】本発明の実施の形態で金型装着前の待機状態を示す正面図。
【
図3】
図2の状態から金型位置決め状態に至った図面。
【
図4】垂直方向位置決め部の位置決め状態での正面図。
【
図6】水平方向位置決め部の実施の形態を示す正面図。
【
図9】
図6に示す実施の形態の斜視図であり、移動部が前進位置にある状態。
【
図10】アシスト装置を有する本発明の実施の形態で待機状態を示す正面図。
【
図12】アシスト装置の一部断面正面図で前進位置を示す。
【
図14】水平方向位置決め部の他の実施の形態を示す正面図。
【
図17】
図14に示す実施の形態の斜視図であり、移動部が前進位置にある状態。
【
図18】水平方向位置決め部の他の実施の形態を示す正面図。
【
図21】
図18に示す実施の形態の斜視図であり、移動部が前進位置にある状態。
【
図22】水平方向位置決め部の他の実施の形態を示す正面図。
【
図25】
図22に示す実施の形態の斜視図であり、移動部が前進位置にある状態。
【
図26】
図22におけるA部拡大図で(イ)はねじ込み式、(ロ)はマグネット式固定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0028】
図1において、射出成型機は、金型固定部1である固定プラテン1aと可動プラテン1bを有する。天井クレーンで吊り持ちされた金型2が、両プラテン1a,1b間に挿入される。金型2は、固定プラテン1aに取り付けられる固定金型2aと、可動プラテン1bに取り付けられる可動金型2bが、一体的に結合されて、吊り持ちされている。固定金型2aの端面のセンタに、ロケートリング3が突設されている。固定プラテン1aに、ロケートリング3が嵌合する嵌合凹部4が形成されている。金型の位置決めは、ロケートリング3を嵌合凹部4に嵌合させることにより行われる。
【0029】
射出成型機の金型位置決め装置は、固定プラテン1aに設けられており、金型2の下端面を受け止めて金型2を鉛直方向に位置決めする鉛直方向位置決め部5と、金型2の左右一側面を受け止めて金型2を水平方向に位置決めする水平方向位置決め部6とを備えている。なお、可動プラテン1bにも鉛直方向位置決め部5及び水平方向位置決め部6が設けられている。
【0030】
可動プラテン1b側の水平方向位置決め部6は、センターを介して上下一対設けられているが、固定プラテン1a側の水平方向位置決め部6は、センタに設けられてる。
【0031】
図2、
図3に示すように、固定プラテン1aには、マグネットクランプ7が設けられている。マグネットクランプ7の表面が金型固定部1の金型取付面8とされている。マグネットクランプ7は、磁力により金型2を吸着固定するものである。マグネットクランプ7のセンタに、金型2のロケートリング3を嵌合する嵌合凹部4が形成されている。
【0032】
鉛直方向位置決め部5は、一般的にダイセッタと呼ばれるものであり、マグネットクランプ7の下部の左右方向センタに設けられている。
【0033】
水平方向位置決め部6は、一般的にスライドブロックと呼ばれ、マグネットクランプ7の左側部の上下方向センタに設けられている。しかし、左側に限定されず右側であっても良い。また、センタ配置でなく上下一対設けられていても良い。この実施の形態では射出成型機の操作側が左側であるので、作業者が操作しやすい左側に設けられている。
【0034】
なお、左右とは、
図2、3における左右をいい、この左右方向が水平方向である。
【0035】
図4、
図5にも示すように、鉛直方向位置決め部5は、マグネットプクランプ7の下部センタに固定されたベース9と、このベース9の上側に配設された金型位置決め用のプッシャ10と、このプッシャ10をベース9に対して昇降可能に案内する左右一対のガイド11と、ベース9に装備されてプッシャ10を昇降駆動可能な流体圧シリンダ12と、ベース9とプッシャ10の間に着脱自在に装着される左右一対のレベリングブロック13とを備えている。
【0036】
前記ベース9は、左右方向に長い部材から構成されており、その左右がボルト14によりマグネットクランプ7に固定されている。ベース9とマグネットクランプ7間に左右一対の平行キー15が介在されて、ベース9の水平度が確保されている。
【0037】
プッシャ10は、ベース9と同じ左右方向の長さを有する。プッシャ10に左右一対のガイド11が垂下状に固定されている。ガイド11は、ベース9に設けられたガイド孔16に摺動自在に貫挿されている。
【0038】
流体圧シリンダ12はベース9の下面センタ設けられ、シリンダロッド17がベース9を貫通して上方に延出し、その上端がプッシャ10の下面に固定されている。流体圧シリンダ12は複動式のエアシリンダであるが、油圧シリンダであっても良い。
【0039】
レベリングブロック13は、長さの異なる複数種類のものが予め準備されており、金型2のサイズに応じた長さのレベリングブロック13が、手動によりベース9とプッシャ10間に挿入される。レベリングブロック13は円柱状に形成され、その上下端面には、突出部18が同軸心に設けられている。ベース9とプッシャ10には、前記突出部18を受け入れる嵌合孔が形成されている。
【0040】
レベリングブロック13を装着するには、プッシャ10を所定位置より少し上昇させ、ベース9の嵌合孔に突出部18を嵌め込んで、レベリングブロック13を自立状態とする。プッシャ10を降下させ、レベリングブロック13の上側の突出部18をプッシャ10の嵌合孔に嵌め入れて、レベリングブロック13を挟持する。プッシャ10上に金型2が載置されたとき、左右一対のレベリングブロック13が、金型2の重量を支承するとともに、プッシャ10の水平度を確保する。
【0041】
図6~
図9に示すように、水平方向位置決め部6は、金型固定部1に設けられた支持部19と、支持部19に水平方向移動自在に支持されて金型2の側面に当接する移動部20とを有する。支持部19と移動部20のいずれか一方に、水平方向に沿った複数の第1孔21が設けられ、他方に前記第1孔21と同軸心で一致する第2孔22が設けられている。第1孔21と第2孔22にわたって挿入されるロックピン23が設けられている。
なお、
図6~
図9においては、水平方向位置決め部6は、
図2、3の左側配置でなく、右側配置のものとして描かれている。
【0042】
この実施の態様では、支持部19は、前記金型固定部1の左右方向外周部の金型取付面8に固定されたブロック材19aにより構成されている。ブロック材19aに水平方向に沿った係合部24が形成されている。
【0043】
移動部20は、ブロック材19aよりも水平方向に長い長尺材20aにより構成されている。この長尺材20aに前記係合部23に摺動自在に係合する被係合部25が形成されている。
【0044】
長尺材20aにその長手方向に沿って多数の第1孔21が鉛直方向に設けられ、ブロック材19aに2個の第2孔22が設けられている。なお、第2孔22は、2個に限られず1個であっても良い。多数の第1孔21のそれぞれは、金型のサイズに応じた位置に設けられている。
図9に示すように、第1孔21が設けられている長尺材20aの表面に、金型の幅寸法が刻印またはレーザマークとして示されている。
【0045】
支持部19であるブロック材19aは、所定厚みの矩形状に形成されたものであり、その上下面は、平行な摺動面とされている。ブロック材19aにボルト挿通孔26が形成され、厚み方向に挿通されるボルト26aにより、マグネットクランプ7の表面に固定される。
【0046】
移動部20である長尺材20aは、ブロック材19aの厚みと同じ幅を有する板材であり、ブロック材19aを上下方向から挟持して、ブロック材19aの摺動面に摺接するように配置されている。
【0047】
支持部19に設けられた係合部24は、ブロック材19aの上下面に形成されている。すなわち、係合部24は、ブロック材19aの摺動面とマグネットクランプ7の表面との間に形成されたキー溝27により構成されている。被係合部25は、長尺材20aの対向面に形成されたスライドキー28により構成されている。スライドキー28がキー溝27に摺動自在に係合している。
【0048】
移動部20である長尺材20aの端部に、金型2の側面に広範囲にわたって当接する当接部29が設けられている。当接部29が設けられている反対側の長尺材20aの端部に、ストッパー30が設けられ、このストッパー30がブロック材19aに当接することにより、長尺材20aのブロック材19aからの抜け落ちが防止されている。
【0049】
当接部29は、上下の長尺材20aの端部にわたって固定されているので、上下方向に長いものとすることができ、金型2の側面に広範囲にわたって当接することができる。
【0050】
ロックピン23は、円柱状の本体23aと、本体23aの上端に大径の頭部23bを有し、移動部20である長尺材20aの上方から、軸心を一致させた第1孔21と第2孔22に挿通される。頭部23bが上側の長尺材20aに当接して下方への落下が防止され、ロックピン23の本体23aの下端は、下側の長尺材20aの第1孔21にも挿通されている。本体23aの下端は面取り23cされ、支持部20の第2孔22への挿入を容易としている。第2孔22の入り口側にも面取りされ、ロックピン23の挿入を容易としている。
【0051】
水平方向位置決め部6を、
図6、7の待機位置から
図9に示す前進位置(位置決め位置)に位置変更させるには、ロックピン23を第1孔21及び第2孔22から抜き、移動部20を
図6の左方向に移動させる。当接部29が金型2のサイズに合う位置にまで移動させて、ロックピン23を長尺材20aの第1孔21に挿通させる。このとき、第1孔21と第2孔22の軸心が正確に一致していなくとも、一致するように移動部20を寸動させると、ロックピン23の先端は、面取り23cされているので、ロックピン23は第1孔21から第2孔22に簡単に挿通させることができる。このように、第1孔21と第2孔22は、金型2のサイズに応じて一致する位置に設けられている。したがって、狭い作業空間における従来のねじ締め作業よりも、位置決め作業が簡単になる。
上記実施の形態によれば、金型位置決め装置は、
図2に示す待機位置にある。すなわち、鉛直方向位置決め部5のプッシャ10は、下端位置に待機し、水平方向位置決め部6の移動部20は左端に待機している。
【0052】
次に、
図3に示すように、金型固定部1に取り付ける金型2の大きさに合わせて、鉛直方向位置決め部5のプッシャ10を流体圧シリンダ12により上昇させ、そして、プッシャ10とベース9との間に所定長さのレベリングブロック13を挿入して、プッシャ10を下降させて、レベリングブロック13を挟持して所定位置に位置決めする。
【0053】
水平方向位置決め部6においても、金型2の大きさに合わせて、移動部20を待機位置から右方向にスライドさせて位置決めする。
【0054】
すなわち、ロックピン23を抜いて、当接部29が所定の位置に来るよう、移動部20を右方向に移動させる。第1孔21と第2孔22は、取り付ける金型2の大きさに応じて、その軸心が一致するように設けられているので、一致した第1孔21と第2孔22にロックピン23を挿通する。
【0055】
上記位置決めされたプッシャ10に、クレーンで吊られた金型2を下ろすことにより、金型2の上下方向の位置決めがされる。金型2を手で左方向に押し、金型2を水平方向位置決め部6の当接部29に押し当てることにより、水平方向の位置決めがされる。
【0056】
しかして、金型2のロケートリング3と金型固定部1の嵌合凹部4のセンタリングが行われ、金型2を金型固定部1に取り付けることができる。
【0057】
上記金型2のセンタリングに際し、移動部20をロックピン23の挿脱により行っているので、従来のねじ締め作業に比べ、狭い作業空間での作業が容易になる。また、従来のネジの締め付けによる摩擦力により移動部20を固定するのではなく、ロックピン23で位置固定するので、確実な固定が得られる。また、当接部29が金型側面に広範囲にわたって当接するので、金型2の傾きを容易に矯正できる。
【0058】
図10~
図13に示すものは、本発明の他の実施の形態である。前記の実施の形態は、水平方向の位置決めを、金型を手で押して行っていたが、この実施の形態では、手動に代えて、アシスト装置31により行う点が異なっている。
【0059】
すなわち、水平方向位置決め部6の反対側の金型固定部1に、金型2を水平方向位置決め部6側に押圧するアシスト装置31が設けられている。
【0060】
アシスト装置31は、金型固定部1の
図10、
図11における左側に設けられ、水平方向位置決め部6が右側に設けられている。
【0061】
図12、
図13に示すアシスト装置31は、マグネットクランプ7の左側センタに固定されたベース32と、このベース32の右側に配設された金型押圧用のプッシャ33と、このプッシャ33をベース32に対して移動可能に案内する上下一対のガイド34と、ベース32に装備されてプッシャ33を左右方向移動可能な流体圧シリンダ35とを備えている。ベース32にはガイド34を摺動自在に案内するリニアブッシュ36が設けられている。
【0062】
この実施の形態によるセンタリングは、前記
図2、
図3に示す手で押すものに比べ、アシスト装置31により、金型2を押す点において相違し、その他は同じであるので詳細な説明は省略する。
【0063】
図14~
図17に示すものは、水平方向位置決め部6の他の実施の形態である。
【0064】
水平方向位置決め部6は、金型固定部1に設けられた支持部19と、支持部19に水平方向移動自在に支持されて金型2側面に当接する移動部20とを有する。
【0065】
支持部19は、前記金型固定部1の左右方向外周部の金型取付面8に固定されたブロック材19aにより構成されている。ブロック材19aは所定間隔を介して上下一対設けられ、ボルト挿通孔26に挿通されるボルトで金型取付面に固定されている。上下一対のブロック材19aの対向面に水平方向に沿った係合部24が形成されている。上下一対のブロック材19aと金型固定部1により水平方向の溝部37が形成され、この溝部37が係合部24とされている。溝部37はアリ溝状に形成されている。
【0066】
なお、この実施の形態では、上下一対のブロック材19a間にアリ溝37が形成されているが、一体のブロック材に同様のアリ溝が形成されていても良い。
【0067】
移動部20は、ブロック材19aよりも水平方向に長い長尺材20aにより構成されている。この長尺材20aに前記係合部24に摺動自在に係合する被係合部25が形成されている。すなわち、長尺材20aの上下面に前記係合部24であるアリ溝37に係合する凸状部38が被係合部25ととして設けられている。
【0068】
水平方向に沿った複数の第1孔21が移動部20である長尺材20aに設けられ、この第1孔21に同軸心で一致する2つの第2孔22が支持部19であるブロック材19aに設けられている。
【0069】
これら第1孔21及び第2孔22にわたって挿通されるロックピン23が設けられている。
【0070】
長尺材20aの端部に金型2に当接する当接部29が設けられ、その反対側端部に抜け落ち防止のストッパー30が設けられている。
【0071】
この実施の形態による水平方向位置決め部6の作用効果は、前記のものと同じである。
【0072】
図18~
図21に示すものは、水平方向位置決め部6の他の実施の形態である。
【0073】
水平方向位置決め部6は、金型固定部1に設けられた支持部19と、支持部19に水平方向移動自在に支持されて金型2側面に当接する移動部20とを有する。
【0074】
支持部19は、前記金型固定部1の左右方向外周部の金型取付面8に固定されたブロック材19aにより構成されている。ブロック材19aに水平方向に貫通する貫通孔39が形成されている。この貫通孔39が係合部24とされている。
【0075】
移動部20は、ブロック材19aよりも水平方向に長い長尺材である丸棒材20bにより構成されている。この丸棒材20bの外周面が前記係合部24に摺動自在に係合する被係合部25とされている。
【0076】
丸棒材20bの端部に、金型2の側面に当接する当接部29が設けられている。当接部29とは反対側の丸棒材20bの端部に、ブロック材19aに当接して抜け止めをするストッパー42が設けられている。
【0077】
水平方向に沿った複数の第1孔21が移動部20である丸棒材20bに設けられ、この第1孔21に同軸心で一致する2つの第2孔22が支持部19であるブロック材19aに設けられている。
【0078】
これら第1孔21及び第2孔22にわたって挿通されるロックピン23が設けられている。
【0079】
この実施の形態による水平方向位置決め部6の作用効果は、前記のものと同じである。
【0080】
図22~
図25に示すものは、水平方向位置決め部6の他の実施の形態である。
【0081】
水平方向位置決め部6は、金型固定部1に設けられた支持部19と、支持部19に水平方向移動自在に支持されて金型2側面に当接する移動部20とを有する。
【0082】
支持部19は、金型固定部1の金型取付面8と面一の部分により構成されている。この部分とは、金型固定部自身であっても良く、また、金型固定部と別体の部材で構成されたものであっても良い。
【0083】
この実施の形態では、金型固定部1に、金型取付面8と面一となるように埋め込まれるプレート19bにより支持部19が形成されている。
【0084】
支持部19であるプレート19bには、金型取付面8より凹設された水平方向に沿った係合部24が形成されている。この係合部24はアリ溝43により構成されている。係合部24の底面に、水平方向に沿った複数の第1孔21が金型取付面8に直交する方向に設けられている。
【0085】
移動部20は、係合部24に摺動自在に係合する被係合部25を有する矩形のブロック材20cからなる。被係合部25は、ブロック材20cの側面からアリ溝43に係合する凸状部44により形成されている。この移動部20に、前記第1孔21に同軸心で一致する第2孔22が2個設けられている。
【0086】
移動部20には、金型2の側面に当接する当接部29が設けられている。当接部29はプレート材から成り、移動部20であるブロック材20cの端面にボルト45で固定されている。
【0087】
なお、支持部19であるプレート19bの端面に、アリ溝43に突出するストパー46が設けられ、移動部20がアリ溝43から抜け落ちるのを防止している。
【0088】
当接部29には、金型2の前面に係合して金型2が金型固定部1から離脱するのを防止する突出部47が設けられている。
【0089】
この突出部47は、
図26の(ア)に示すように、ねじ48により当接部29にねじ込まれたものであっても良く、また、(イ)に示すように、マグネット49により当接部29に固定されたものであっても良い。
【0090】
この実施の形態による作用効果は、ロックピン23を第1孔21及び第2孔22に対して水平方向から挿脱するようにしている点、及び、当接部29に突出部47を設けて金型離脱防止を図っている点が前記各実施の形態のものと異なり、その他の作用効果は同じである。
【0091】
今回開示された実施例の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。例えば、固定プラテン1aにマグネットクランプ7を設けずに、固定プラテン1aに金型2を直接取り付けるものにあっては、金型位置決め装置は、固定プラテンに設けられる。また、係合部24と被係合部25は、支持部19と移動部20が分離しないように互いが係合しあう機能を有するものであればよい。
【0092】
本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 金型固定部
1a 固定プラテン
1b 可動プラテン
2 金型
2a 固定金型
2b 可動金型
3 ロケートリング
4 嵌合凹部
5 鉛直方向位置決め部
6 水平方向位置決め部
7 マグネットクランプ
8 金型取付面
9 ベース
10 プッシャ
11 ガイド
12 流体圧シリンダ
13 レベリングブロック
14 ボルト
15 平行キー
16 ガイド孔
17 シリンダロッド
18 突出部
19 支持部
19a ブロック材
19b プレート
20 移動部
20a 長尺材
20b 丸棒材
21 第1孔
22 第2孔
23 ロックピン
23a 本体
23b 頭部
23c 面取り
24 係合部
25 被係合部
26 ボルト挿通孔
26a ボルト
27 キー溝
28 スライドキー
29 当接部
30 ストッパー
31 アシスト装置
32 ベース
33 プッシャ
34 ガイド
35 流体圧シリンダ
36 リニアブッシュ
37 溝部
38 凸状部
39 貫通孔
42 ストッパー
43 アリ溝
44 凸状部
45 ボルト
46 ストッパー
47 突出部
48 ねじ
49 マグネット