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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】手すり
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018198760
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020066865
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000112185
【氏名又は名称】ビニフレーム工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 葉一
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-176933(JP,U)
【文献】特開2008-144479(JP,A)
【文献】実開昭56-000708(JP,U)
【文献】実開昭62-118830(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
E01F 15/00-15/14
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所からの転落防止や通路に沿って歩行者を支持あるいは通行を規制する手すりであって、
支柱と笠木と胴縁と格子とを備えており、格子は、笠木と胴縁の間に配置してあり、笠木と格子の間には、遮音材が笠木の全長にわたって一続きに配置してあり、笠木の下端部には、下向きに開放した溝部が設けてあり、当該溝部の溝長手方向の一方側から遮音材を挿入したときに、溝部の下方の溝開口から遮音材の一部が露出し、格子と当接することを特徴とする手すり。
【請求項2】
溝部は、下方の溝開口側が狭まっており、溝部に挿入した遮音材を下方への抜け出しを不能にすることを特徴とする請求項1記載の手すり。
【請求項3】
遮音材は、支柱の配置される位置まで形成してあることを特徴とする請求項1又は記載の手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風による不快な音鳴りを防ぐ手段を有する手すりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
手すりにはアルミなどの金属製の形材から構成されるものがある。その手すりは、主と
して、躯体に間隔をあけて複数立設する支柱と、各支柱の上部に架け渡して取り付ける笠
木と、各支柱間にそれぞれ架け渡して取り付ける胴縁と、笠木と胴縁との間に配置するパ
ネルまたは格子とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭56-176933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手すりは、バルコニーや通路などに設置されるものである。このことから、手すりに受
けた風圧や、あるいは、歩行者や住人の身体を支えたときに、金属製の構成部品同士が接
触することにより、金属材同士が擦れ合って不快な衝突音や摩擦音が発生し、施工された
建物の住人や近隣に迷惑をかける問題点があった。
【0005】
本発明は以上に述べたような実情に鑑み、簡易な構造であり、しかも容易な施工により
風や振動による不快な音鳴りを防ぐことのできる手すりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明は、高所からの転落防止や通路に沿って歩行者を支持する手
すりであって、支柱と笠木と胴縁と格子とを備えており、格子は、笠木と胴縁の間に縦方
向に配置してあるとともに、笠木の長手方向に沿って所定の間隔で複数取り付けてあり、
笠木と各格子の間には、遮音材が笠木の全長にわたって一続きに配置してあり、笠木の下端部には、下向きに開放した溝部が設けてあり、当該溝部の溝長手方向の一方側から遮音材を挿入したときに、溝部の下方の溝開口から遮音材の一部が露出し、各格子と当接することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項記載の発明は、溝部は、下方の溝開口側が狭まっており、溝部に挿入した遮音材を下方への抜け出しを不能にすることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項記載の発明は、支柱の配置される位置まで形成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、笠木の底部に設けてある遮音材が支柱、格
子またはパネルの上端部に当接することで、金属材同士の接触がなくなる。これにより、風や振動で格子が連動して笠木と接触したときの不快な衝突音、摩擦音が発生しない。また、笠木の長手方向に連続して遮音材が配置されるので、格子の本数やピッチの違いに
関わらず、一回の作業ですべての格子や支柱に当接するので施工性が高くなる。さらに、笠木の下端部に下方が開口した溝部を設け、その溝部に遮音材を挿入することで、遮音材が笠木の所定の箇所に位置決めされて各格子や支柱の上端部に確実に当接する。
【0010】
本発明のうち請求項記載の発明によれば、笠木の溝部の溝開口側が狭くなっていることから、溝部に挿入した遮音材が溝開口側で抜け出しを規制される。これにより、遮音材が笠木から離脱せず、しっかりと格子や支柱と当接する。これにより、遮音材が安定して位置を保持されて格子と確実に接触することで、金属材同士が接触する機会がなくなり、不快な衝突音や摩擦音を確実に解消する。
【0011】
本発明のうち請求項記載の発明によれば、格子のほか、支柱に及ぶ範囲で遮音材が介
在することから、音鳴りの発生の可能性をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施による(a)は、手すりの要部を拡大して示す縦断面図であり、(b )は、手すり支持材に遮音材を取り付けるときの手順を示す拡大した斜視図である。
図2】本実施による手すりを示す斜視図である。
図3】(a)は、図2中A-A線を断面し、本実施による手すりにおける遮音材と 支柱ならびに各格子との接触状態を示す縦断面図である。(b)は、(a)中B-B 線を断面し、手すりにおける遮音材と支柱ならびに各格子の接触状態を示す横断面図 である。
図4】(a)~(d)は、本実施による手すりの施工手順を示す簡略化した図であ る。
図5】実施例に使用する(a)は、本願を踏襲した試験体であり、左図が全体正面 図、右図がC-C線断面図である。(b)は、対象となる試験体であり、左図が全体 正面図、右図がD-D線断面図である。
図6図5(b)に示す対象となる試験体に対して風速、風向きの条件を変更して 試験した結果を示すものである。
図7図5(a)に示す本願を踏襲した試験体に対して風速、風向きの条件を変更 して試験した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の笠木Kと、その笠木Kを適用した手すりの実施形態を各図面に基づいて
説明する。なお、本実施では、格子手すり(笠木K、支柱7、格子8、胴縁9などから構
成する。)に適用したものについて説明する。
【0014】
笠木(笠木本体)Kは、笠木支持材1と、覆い材2と、遮音材3とから構成するもので
ある。
覆い材2は、本実施のものは、上側の内外のコーナー部R,Rが面取りされており、断
面形状がいわゆる「かまぼこ」型をなしている。また、覆い材2の下端は、下方に開放し
ており、その両端は、覆い材2の内周側に跳ね上がるように屈曲しており、それぞれが係止部4,4となって笠木支持材1に係止する。
【0015】
笠木支持材1は、図1(a)のように、下端部が水平に形成してあり、さらに、笠木K
の内外方向の両側部には、覆い材2を係止する被係止部5,5がそれぞれ設けてある。さ
らに、笠木支持材1の中央には、溝部6が設けてあり、この溝部6は、溝底側6aよりも
溝開口側6bのほうが溝幅を狭く形成している。これにより、図1(b)のように、溝部
6に、遮音材3を溝底側6aに入れたときに、遮音材3の両端部が溝部6の溝開口側6b
の狭まりに引っ掛かるので、遮音材3が落下しない。なお、笠木支持材1の溝部6は、上
記の形状に限定するものではなく、格子8や笠木Kの上端との接触する面積をできるだけ
大きくすることが望ましい。さらに、溝部6の溝開口側6bの溝幅は、溝底側6aに比べ
てできるだけその差を小さくし、笠木支持材1からの遮音材3の離脱と、笠木支持材1や
格子8などの金属材への遮音材3による接触面積の確保の両立を図っている。次に被係止
部5,5は、その先端が外周側に張り出した膨大状をなしており、笠木支持材1の内外両
端部にそれぞれが上方に突出するかたちで設けてある。また、両側にあるそれぞれの被係
止部5,5の外周側部には、上部に水平面を有する載置部10,10がそれぞれ設けてあ
り、この載置部10,10は、笠木支持材1の被係止部5に覆い材2の係止部4を係止し
たとき、係止部4の下部が載せられることで、笠木支持材1からの覆い材2の不意な落下
を防止する。
【0016】
遮音材3は、R.PVC(硬質塩化ビニル)とS.PVC(軟質塩化ビニル)とから矩形の薄板状に成形するものである。そして、笠木支持材1とほぼ同じ長さを有しており、笠木支持材1の溝部6の全体に収まる。また、遮音材3の下部は、上部よりも段状に狭幅となっており、その断面形状が下向き凸型をなしている。これにより、遮音材3を笠木支持材1の溝部6に収めたときに、遮音材3の上部3aは、笠木支持材1の溝底側6aに収まるとともに、段状に幅狭となった下部3bが溝開口側6bの部位に係止されることで、遮音材3が笠木支持材1から落下不能となる。さらに、遮音材3の下部は、笠木支持材1の溝開口側6bに配置され、遮音材3の下部3bが笠木支持材1の下端から僅かに突出する。さらに、溝部6の溝開口側6bから僅かに突出した遮音材3は、図3(a)()b)のように、
支柱7の上端部と複数の格子8の上端部にそれぞれ接触し、さらに、その状態を保ってネ
ジ11で固定される。
【0017】
次に、上記の笠木Kを手すりに適用したときの、施工手順について説明する。
第一の手順として、図4(a)のように、躯体Pの上に間隔をあけて複数の支柱7を立
設し、各支柱7の下部間に胴縁9を架け渡してそれぞれを固定する。
第二の手順として図4(b)のように、胴縁9の上部に、その胴縁9の長手方向に沿っ
て間隔をあけて複数の格子8を立設する。
第三の手順として、図4(c)のように、笠木支持材1の溝部6に、笠木支持材1の一
方の小口側から遮音材3を挿入し、笠木支持材1の溝底側6bから遮音材3の下部3bを
僅かに突出させた笠木支持材1を用意する。
第四の手順として、各支柱7の上部を架け渡すように笠木支持材1を載置する。このとき
に、各格子8の上端部が笠木支持材1の溝部6に挿入された遮音材3の突出部分に各々が
当接し、笠木支持材1と各格子8の間に遮音材3が挟まった状態となる。
第五の手順として、図4(d)のように、笠木支持材1と各格子8をネジ11で固定し、
さらに、笠木支持材1の上部に覆い材2を被せて互いを係止する。
以上の第一~第五の各手順を経ることにより、本実施による笠木Kを適用した手すりが完
成する。
【0018】
以上のように、本実施による笠木Kを構成することにより、以下に示す作用・効果を奏す
ることになる。
上記の笠木Kを支柱7および各格子8の上部に取り付けたときに、笠木Kを構成している笠木支持材1の溝部6に挿入された遮音材3が、支柱7および各格子8の上端部に当接
する。これにより、笠木Kと支柱7および各格子8との間に遮音材3が介するので、金属
材同士の接触が避けられる。このように、金属材同士の接触が避けられることから、風や
地盤振動に伴う手すりへの振動伝達時に、格子の震えによる不快な金属音が発生しない。
さらに、笠木支持材1の溝部6に遮音材3を入れ、笠木支持材1の長手方向の全長にわ
たって遮音材3が連続して配置される構造である。これにより、支柱7や格子8の本数や
ピッチを考慮することなく、遮音材3を一つ挿入するだけで、すべての支柱7や格子8と
の間に介することになるので、従来のように、支柱や格子の1本1本に遮音手段を配置する手間がなく、簡単に遮音構造の手すりを形成できる。
【0019】
<実施例>
実施例として、本願を踏襲した試験体(以下、本願試験体と記す。)と遮音材を備えな
い試験体(以下、対象試験体)を設置し、それぞれの試験体に所定の風速ならびに所定の
風向きで風を順次当てて、振動音の発生の有無と音量の発生を確認した。

<本願試験体>
本願試験体は、以下のとおりである。
試験体の全体: 図5(a)のように、二本の支柱9間の上部に笠木K、下部に胴縁9
を固定し、笠木Kと胴縁9の間に複数の縦格子8を配した構造である。
試験体の寸法: 幅1100mm(支柱9,9間ピッチは1100mm)、高さ112
0mm(GLから笠木K上端までは1215mm)
笠木: 幅60mm、高さ45mm(構造は上記実施形態に準ずる。)

格子: 見付幅15mm、見込幅31mmで断面は矩形状。
格子ピッチは60mm。

<対象試験体>
対象試験体として、図5(b)のように、本願の遮音材3を備えない笠木Kを取り付け
たものを用意した。
また、対象試験体の寸法は、本願と同じく幅1100mm、高さ1120mmであり、
笠木Kと格子8についても同じ条件で行った。
【0020】
上記の試験結果は、図6図7のとおりである。
対象試験体では、風速が12.5~15(m/s)の間で弱い振動音が発生し始めた。
さらに、風速22.5(m/s)からは振動音がはっきりと聞こえるようになった。
これに対して本願試験体は、対象試験体と同様、風速12.5(m/s)から振動音が発
生するものの、風速25(m/s)までは、風向きが10°以内の場合に発生が確認でき
たが、それ以上の角度の風向きでは振動音の発生が抑えられていた。
【0021】
本願発明は、上記の実施形態のほか、特許請求の範囲内での変更できるものである。
本発明による手すりを構成する格子8、笠木K、支柱7の断面や大きさは、適宜変更が
できる。また、遮音材3の肉厚は、格子8と笠木Kの笠木支持材1下端部を突き合わせた
ときに、格子8の押圧力で大きな変形がしない程度であればよい。さらに、遮音材3は、
上記実施形態では笠木支持材1の長手方向の全長にわたって設けてあるが、笠木Kに沿っ
て連続したものであれば任意の箇所に切欠部や孔部などの肉抜きなどがあってもよい。ま
た、笠木支持材1に遮音材4を取り付ける手段は、上記実施形態のように溝部6を設けて
挿入する構造のほか、笠木支持材1の下端側部に接着またはネジなどの固定具で固定する
ものでもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 笠木支持材
2 覆い材
3 遮音材
3a 上部
3b 下部
4 係止部
5 被係止部
6 溝部
6a 溝底側
6b 溝開口側
7 支柱
8 格子
9 胴縁
10 載置部
11 ネジ
12 パネル
K 笠木
P 躯体
R コーナー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7