IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社HINO−TECの特許一覧

特許7182789ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器
<>
  • 特許-ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器 図1
  • 特許-ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器 図2
  • 特許-ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器 図3
  • 特許-ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器 図4
  • 特許-ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28G 1/04 20060101AFI20221128BHJP
   F28F 19/00 20060101ALI20221128BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
F28G1/04
F28F19/00 501Z
F28F19/00 521
F28F27/00 511F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019159796
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021038874
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】599018099
【氏名又は名称】株式会社HINO-TEC
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】柿塚 実
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-193394(JP,A)
【文献】特開2015-152299(JP,A)
【文献】米国特許第02233066(US,A)
【文献】特開2008-256303(JP,A)
【文献】特開2007-247978(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00242097(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/04
F28F 19/00
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に配された複数のチューブを有するチューブ式熱交換器のダスト除去装置であって、
軸体と、
前記軸体に接続され前記軸体とともに回動する少なくとも1つのアーム状回動体と、
前記回動体の両端に吊り下げられた枠体をなす第一支持体及び第二支持体と、
前記第一支持体及び前記第二支持体それぞれに吊下げられた複数のリンクチェーンと、
前記軸体を所定の角度範囲内で回動させるための駆動装置と、
を具備し、
前記回動体の回動により前記第一支持体及び前記第二支持体を上下方向及び左右方向に移動させることができ、前記移動により前記チューブ内において前記リンクチェーンを上下方向及び左右方向に移動 させ前記チューブ内のダストを除去すること、
を特徴とするチューブ式熱交換器用ダスト除去装置。
【請求項2】
前記角度範囲が、0度~60度であること、
を特徴とする請求項1に記載のチューブ式熱交換器用ダスト除去装置。
【請求項3】
縦方向に配された複数のチューブを有するチューブ式熱交換器と、
請求項1又は2に記載のダスト除去装置と、
を具備すること、を特徴とするダスト除去装置付きチューブ式熱交換器。
【請求項4】
前記複数のチューブが、それぞれ複数のチューブ列からなる第一チューブ列群及び第二チューブ列群で構成され、
前記軸体の軸方向が、前記チューブ式熱交換器の上方で前記第一チューブ列及び前記第二チューブ列の列方向と、略直交していること、
を特徴とする請求項3に記載のダスト除去装置付きチューブ式熱交換器。
【請求項5】
前記リンクチェーンの幅が、前記チューブの内径に対して20%~85%の寸法比率であること、
を特徴とする請求項3又は4に記載のダスト除去装置付きチューブ式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ式熱交換器の伝熱チューブの内部にダストが付着するのを防止するために、例えば、支持腕に複数のリンクチェーンを吊り下げて支持腕の回動運動によりリンクチェーンを上下運動させるダスト付着防止装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
かかるダスト付着防止装置は、熱交換器の運転中に作動させることができることから、ダスト除去のために熱交換器及びそれを含む設備の運転を停止させる必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3326596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回動軸側のリンクチェーンの上下移動の範囲が先端側のリンクチェーンの上下移動の範囲と比べて小さいため、回動軸側のリンクチェーンにより振り落とされるダストの量は先端側のリンクチェーンにより振り落とされるダストの量よりも少ない。つまり、リンクチェーンによってダスト除去性能にバラツキが生じる。
【0006】
そこで、本発明は、熱交換器の運転中にダスト除去を行うことができ、しかも、複数のリンクチェーン間において更に均一なダスト除去性能を得ることができるダスト除去装置及びダスト除去装置付きチューブ式熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく、本発明は、縦方向に配された複数のチューブを有するチューブ式熱交換器のダスト除去装置であって、
軸体と、
前記軸体に接続され前記軸体とともに回動する少なくとも1つのアーム状回動体と、
前記回動体の両端に吊り下げられた枠体をなす第一支持体及び第二支持体と、
前記第一支持体及び前記第二支持体それぞれに吊下げられた複数のリンクチェーンと、
前記軸体を所定の角度範囲内で回動させるための駆動装置と、
を具備し、
前記回動体の回動により前記第一支持体及び前記第二支持体を上下方向及び左右方向に移動させることによって、前記チューブ内において前記リンクチェーンを上下方向及び左右方向に移動させ、前記チューブ内のダストを除去すること、
を特徴とするチューブ式熱交換器用ダスト除去装置を提供する。

【0008】
上記のような構成を有する本発明のチューブ式熱交換器用ダスト除去装置では、前記角度範囲が、0度~60度であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、縦方向に配された複数のチューブを有するチューブ式熱交換器と、
上記に記載のダスト除去装置と、
を具備すること、を特徴とするダスト除去装置付きチューブ式熱交換器をも提供する。
【0010】
上記のような構成を有する本発明のダスト除去装置付きチューブ式熱交換器では、前記複数のチューブが、それぞれ複数のチューブ列からなる第一チューブ列群及び第二チューブ列群で構成され、
前記軸体の軸方向が、前記チューブ式熱交換器の上方で前記第一チューブ列及び前記第二チューブ列の列方向と、略直交していることが好ましい。
【0011】
また、上記のような構成を有する本発明のダスト除去装置付きチューブ式熱交換器では、前記リンクチェーンの幅が、前記チューブの内径に対して20%~85%の寸法比率であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のリンクチェーンの上下移動の範囲を均一にすることができるから、均一なダスト除去性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】チューブ式熱交換器1を概略的に示す断面図である。
図2】ダスト除去装置10の部分拡大図である。
図3】回動体13の回動とリンクチェーン21,23の上下運動との関係を示す図である。
図4】回動体13の回動とリンクチェーン21,23の左右方向の移動との関係を示す図である。
図5】リンクチェーン20の配列例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るチューブ式熱交換器の代表的な実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではない。図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0015】
以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、説明の便宜上、鉛直方向をZ軸方向とし、軸体11の軸方向をX軸方向とし、X軸及びZ軸に直交する方向をY軸方向とする。また、縦及び上下はZ軸方向を指し、前後はX軸方向を指し、左右はY軸方向を指すものとする。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように、チューブ式熱交換器1は、縦方向に複数のチューブ7を配した流路3、及び、チューブ7の外面に接触する流路5を含み、ダスト除去装置10を付設している。
【0017】
ここで、流路3に配置される複数のチューブ7は、前後方向及び左右方向に整列している。つまり、複数のチューブ7は、チューブ列群(第一チューブ列群及び第二チューブ列群に相当する)で構成され、チューブ列群はそれぞれ複数のチューブ列からなる。そして、チューブ列の列方向は、軸体11の軸方向と略直交している。なお、複数のチューブ7の配置に応じて、後述する複数のリンクチェーン20が配置されることになる。
【0018】
ダスト除去装置10は、複数のチューブ7の内部へのダストの付着を防止する。あるいは、ダスト除去装置10は、複数のチューブ7の内部に付着したダストを除去する、と言ってもよい。かかるダスト除去装置10は、軸体11、回動体13、支持体15,17、リンクチェーン20、及び駆動装置19を具備する。ここで、リンクチェーン20は、リンクチェーン列群21,23に含まれるリンクチェーンを総称するものである。また、支持体15,17は、第一支持体及び第二支持体に相当する。
【0019】
軸体11は、複数のチューブ7の上方(又は上流)に配置され、駆動装置19の駆動力を回動体13に伝達する。軸体11と駆動装置19との間には、例えばユニバーサルジョイントなどのジョイントが介在してもよい。
【0020】
回動体13は、軸体11に接続され軸体11とともに回動するアーム状の部材であり(図3参照)、少なくとも1つ設けられている。回動体13が回動する角度範囲θは、リンクチェーン20の上下移動(ストローク)の範囲Hを十分に確保する観点から、0度~60度であることが好ましい。チューブ7の長さとの関係で必要最小限の上下移動でより確実にダスト除去効果が得られるという観点からは、15度~45度であるのが更に好ましい。なお、角度範囲θは例えば60度である。
【0021】
回動体13の両端には、枠体をなす支持体15,17が吊り下げられている。したがって、支持体15,17は、回動体13の回動(又は揺動運動)に伴って、上下方向及び左右方向への移動を繰り返す。このとき、支持体15,17は、図2及び図3に示すように、回動体13の回動位置に関わらず、XY平面に略平行な姿勢を保持することができる。
【0022】
支持体15,17のそれぞれには、複数のリンクチェーン20が吊り下げられている。具体的には、支持体15には、それぞれ複数のリンクチェーンからなるリンクチェーン列211~214を含むリンクチェーン列群21が吊り下げられている。また、支持体17には、それぞれ複数のリンクチェーンからなるリンクチェーン列231~234を含むリンクチェーン列群23が吊り下げられている。
【0023】
図5(a)、(b)に示すように、複数のリンクチェーン20は、複数のチューブ7の配置に対応するように前後方向及び左右方向に整列している。例えば、図5(a)のように、リンクチェーン列群21(23)を構成するリンクチェーン列211~214(231~234)において、複数のリンクチェーンが前後方向のほぼ同じ位置に配置されてもよい。あるいは、図5(b)のように、リンクチェーン列211,213(231,233)における複数のリンクチェーンの前後方向の位置が、リンクチェーン列212,214(232,234)における複数のリンクチェーンの前後方向の位置に対してずれるように、複数のリンクチェーンが配置されてもよい。
【0024】
一般に、チューブ式熱交換器では、チューブ7の長さ方向に略垂直な方向からみた場合に、例えば図5(a)の配列のように、縦及び横において同じ間隔で等配列しているが、本発明者らは、例えば図5(b)の配列のように、縦及び横において異なる間隔で配列した場合に、チューブ7と流体との接触面積が大きくなって熱交換効率が向上することに着目し、これに適合するように、チューブ7を配列するのが好ましい。
【0025】
個々のリンクチェーン20は、多数のリング部材を繋ぎ合わせることで形成された鎖であり、対応するチューブ7内に挿通されている。リンクチェーン20は、支持体15,17の上下方向及び左右方向の移動に伴ってチューブ7内を移動し、チューブ7の内面に衝突する。
【0026】
個々のリンクチェーン20の長さは、チューブ7よりも長いことが好ましい。リンクチェーン20の下端部は、少なくともリンクチェーン20が最も低い位置にあるときには、チューブ7の下端から露出することが好ましい。
【0027】
リンクチェーン20の幅Dは、チューブ7の内側面により確実に接触させてダスト除去効果を担保するという観点から、チューブ7の内径Rに対して20%~85%の寸法比率であることが好ましい。チューブ7の内径Rとの関係及び上記のストロークとの関係でより確実にダスト除去効果が得られるという観点から、45%~60%であるのが更に好ましい。
【0028】
また、リンクチェーン20がチューブ7の内面に接触することでダストを除去することからすれば、リンクチェーン20の幅Dとリンクチェーン20の左右方向の移動範囲Wとの合計がリンクチェーンの内径R以上であることが好ましい(図4参照)。つまり、
D+W≧R
の関係式を満たすのが好ましい。
【0029】
駆動装置19は、軸体11を所定の角度範囲θ内で回動させる。駆動装置19としては、例えば電動機、エアーシリンダーなどが挙げられる。
【0030】
そして、チューブ式熱交換器1の運転中、ダスト除去装置10は、チューブ7内において複数のリンクチェーン20を上下及び左右に移動させる。また、チューブ7内を通過する流体の圧力などによって、リンクチェーン20に不規則な動き(例えば、横揺れ、円運動、跳ね上がり)が生じる。これらにより、リンクチェーン20がチューブ7の内面に衝突し、ダストをチューブ7の内面から落とすのである。つまり、チューブ式熱交換器1の運転中にダスト除去を行うことができる。
【0031】
このとき、複数のリンクチェーン20の上下移動の範囲Hは、リンクチェーン20の吊下げ位置によらず均一であるから、均一なダスト除去性能を得ることができる。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更した態様も全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・チューブ式熱交換器、
7・・・チューブ、
10・・・ダスト除去装置、
11・・・軸体、
13・・・回動体、
15,17・・・支持体、
19・・・駆動装置、
20・・・リンクチェーン。

図1
図2
図3
図4
図5