IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミント イノベイション リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-金属回収プロセス 図1
  • 特許-金属回収プロセス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】金属回収プロセス
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/00 20060101AFI20221128BHJP
   C22B 3/02 20060101ALI20221128BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20221128BHJP
   C22B 3/18 20060101ALI20221128BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20221128BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20221128BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20221128BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20221128BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/02
C22B3/04
C22B3/18
C22B3/24
C22B3/22
C22B7/00 G
B01J20/24 B
B01J20/34 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019545234
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 NZ2017050142
(87)【国際公開番号】W WO2018080326
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】725785
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519154461
【氏名又は名称】ミント イノベイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーカー,ウイル
(72)【発明者】
【氏名】クラッシュ,オリバー
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102869764(CN,A)
【文献】国際公開第2016/156409(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/130006(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112637(WO,A1)
【文献】特開2004-180582(JP,A)
【文献】特開昭61-158796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
B01J 20/24
B01J 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解した目的金属を含有する貴水溶液から前記目的金属を回収する方法であって、前記方法は、
(a) 前記溶解した目的金属の少なくとも一部が微生物に生物吸着するように、前記微生物を前記貴水溶液と接触させることを含むバイオソープション工程であって、前記微生物は金属を含み、貴水溶液は貧液になる、バイオソープション工程と、
(b) 前記貧液から前記金属を含む微生物を実質的に分離することを含む、分離する工程と、
(c) 前記貴水溶液から前記微生物への前記目的金属の濃縮係数が5より大きい、前記金属を含む微生物から前記目的金属の回収を含む回収工程と、を含み、前記貴水溶液は、10ppmを超える前記目的金属を含有し、前記貧水溶液が1ppm未満の前記目的金属を含有し、前記目的金属は金である、方法。
【請求項2】
前記貴水溶液から前記微生物への前記目的金属の濃縮係数が10より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バイオソープション工程において、前記微生物は前記貴水溶液と約0.5~48時間接触している、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記微生物は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記分離工程は、
前記貧水溶液から前記金属を含む微生物の重力分離、および前記貧液の除去、
または遠心分離および前記貧液の除去、
または貧液から金属を含む微生物の濾過、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記貧水溶液の少なくとも60%が除去される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回収工程は、前記金属を含む微生物を、前記微生物が前記目的金属を実質的に脱着を引き起こす状態と接触させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記状態は、前記目的金属の脱着を引き起こす化合物を含有する溶液であり、前記化合物は、システイン、またはチオ硫酸塩、またはチオ尿素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記目的金属の脱着を引き起こす前記状態は、5未満のpHである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記回収工程は、前記目的金属を脱着するために前記金属を含む微生物の燃焼または化学的溶解を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記貴液は、少なくとも1つの別の金属を含み、前記微生物は、前記バイオソープション工程において、別の金属よりも優先的に前記目的金属を生物吸着し、前記分離工程において、前記別の金属(複数可)は前記貧液中に残る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物は、前記微生物中の目的金属の前記別の金属に対する質量比が、前記貴液中の前記質量比と比較した場合少なくとも2倍増加するように、前記バイオソープション工程において前記別の金属よりも優先的に前記目的金属を生物吸着する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記別の金属は銅およびニッケルのうちの1つまたは複数から選択される、請求項11又は12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶液または固体原料、例えば鉱石および廃棄物から金属を回収するプロセスに関する。特に、バイオ精錬技術がプロセス中で利用される。
【背景技術】
【0002】
世界中には、水溶液や固体物質を含む、微量金属を含有する物質が豊富にある。しかし、非金属マトリックスと比較して金属成分が相対的に少ないため、効率的で環境的に安全な方法でこれらの金属を回収することは極めて困難である。例えば、水性液体廃棄物の流れから有毒な金属イオンを除去することは、広範囲の産業にとって重要な課題である。
【0003】
同様に、バージンメタルの採掘および精製のための鉱石品位が低下するにつれて、供給源、例えば低品位の鉱石、精錬の尾鉱および電子廃棄物から金属を得ることへの関心が高まっている。しかし、これらの原料から金属を回収することは、経済的に法外なことが多い。あらゆる回収プロセスの実行可能性に影響を与える要因は、原料の金属濃度(および、したがって処理に必要な原料の量)、取扱いにくい物質の存在、および発生する廃液の体積である。したがって、これらの問題のうちの少なくともいくつかを軽減し、それによって低品位原料または難分解性原料からの金属の回収の経済性を改善することを目的とする代替解決策の余地がある。
【0004】
金属を精製する伝統的な技術は乾式精錬および湿式精錬を含む。乾式精錬では、原料を高温で(典型的には好適な還元剤および/または触媒の存在下で)精錬する。これは重要なエネルギー投入(および関連する放出物)を必要とし、したがって原料において実用的な最小金属濃度が必要とされる。湿式精錬では、原料は、所望の金属を(具体的にまたは他の方法で)イオン性または錯体化した可溶性形態に浸出する浸出液で処理される。次の工程(例えば電解採取)は、溶液から目的金属を回収するために必要である。浸出のための温度および圧力要件に応じて、この方法は、乾式精錬と比較してより低い品位の原料を処理することを可能にすることができる。腐食性(例えば、酸性)または有毒(例えば、シアン化物)の溶液の使用、原料処理中のあらゆる溶液成分の消費、および廃水を好適に処理をすること、の可能性について考慮する必要である。乾式精錬および湿式精錬技術は相互に排他的ではなく、特定の金属を精製するために複数の工程にわたって順次使用されてもよい。
【0005】
金を含有する鉱石からの金の回収は、いくつかの問題を有する湿式精錬方法の典型的な例である。金の含有量の多い資源を回収するのがより容易であるため、大規模な採掘によって枯渇し、金含有鉱石中の金の量は百年以上にわたって減少している。つまり、湿式精錬技術は大量の岩石から微量の金を回収するのに用いられてきた。シアン化物系浸出液は長年にわたってうまく使用されてきたが、毒性の問題と特定の種類の鉱石の処理に伴う課題を抱えている。
【0006】
廃電子機器、例えば、コンピュータ、携帯電話、ノートパソコン、およびLCDディスプレイのプリント回路基板も、大量の(金を含む)貴金属を含有する。乾式精錬および湿式精錬方法を用いて電子廃棄物から金を回収することに多くの努力が払われてきたが、持続可能な成功をまだ収めていない。
【0007】
バイオ精錬は、周囲状態下で微生物を用いて原料から金属を露出、浸出、結合および/または回収するより最近の方法である(Zhuangら、Current Opinion in Biotechnology 33,ページ327-335(2015))。微生物を用いることにより、原料の最低必要品位を更に低下させる、または乾式精錬および/または湿式精錬プロセスでは取扱いにくい原料をより経済的に処理できる。しかし、一般的なトレードオフは反応時間であり、バイオ精錬では、多くの場合、原料から金属を回収するのに数週間から数年かかることがある(例えば、硫黄還元細菌を用いる耐火性銅鉱石のバイオ酸化)。
【0008】
本発明の一目的は、伝統的な乾式精錬および湿式精錬法を補完または置換するバイオ精錬技術を用いて金属を回収する方法を提供することである。これによりが、現在無視されている低品位の金属もしくは金属の廃水流から価値を獲得すること、またはこの点に関して世間に有用な選択を少なくとも提供すること、につながることが望まれる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は当該技術分野における要求に応えるものである。本発明は、金属イオンを含有する水溶液、または金属を含有する固体原料から金属を回収する方法を提供する。
【0010】
第1の態様では、本発明は、目的金属を含有する貴水溶液から目的金属を回収する方法を提供し、方法は、
(a) 目的金属の少なくとも一部が微生物に生物吸着するように、微生物を貴水溶液と接触させることを含むバイオソープション工程であって、微生物は金属を含み、貴水溶液は貧液になる、バイオソープション工程と、
(b) 貧液から金属を含む微生物を実質的に分離することを含む、分離する工程と、
(c) 金属を含む微生物から目的金属の回収を含む回収工程と、を含む。
【0011】
好ましくは、貴水溶液は、1000ppmを超える、または500ppmを超える、または200ppmを超える、または100ppmを超える、または50ppmを超える、または20ppmを超える、または10ppmを超える、または5ppmを超える、または1ppmを超える目的金属を含有する。
【0012】
好ましくは、貴水溶液は、約0.1ppm~1500ppm、または約0.1ppm~1000ppm、または約0.1ppm~500ppm、または約0.1ppm~200ppm、または約0.1ppm~100ppm、または約0.1ppm~50ppm、または約0.1ppm~20ppmの目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約0.5ppm~1500ppm、または約0.5ppm~1000ppm、または約0.5ppm~500ppm、または約0.5ppm~200ppm、または約0.5ppm~100ppm、または約0.5ppm~50ppm、または約0.5ppm~20ppmの目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約1ppm~1500ppm、または約1ppm~1000ppm、または約1ppm~500ppm、または約1ppm~200ppm、または約1ppm~100ppm、または約1ppm~50ppm、または約1ppm~20ppmの目的金属を含有する。
【0013】
好ましくは、貧液は、0.1ppm未満、または1ppm未満、または2ppm未満、または5ppm未満、または10ppm未満、または20ppm未満、または50ppm未満、または100ppm未満の目的金属を含有する。好ましくは、貧液は、約0.001~100ppm、または約0.001~50ppm、または約0.001~50ppm、または約0.01~50ppmの目的金属を含有する。
【0014】
好ましくは、貴水溶液は、貧液よりも少なくとも10倍多い目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、貧液よりも少なくとも20倍、または少なくとも40倍、または少なくとも45倍、または少なくとも50倍多い目的金属を含有する。
【0015】
好ましくは、金属を含む微生物は、100ppmを超える、または200ppmを超える、または500ppmを超える、または1000ppmを超える、または30,00ppmを超える目的金属を含む。
【0016】
好ましくは、貴水溶液から微生物への目的金属の濃縮係数は、5より大きい、または10より大きい、または20より大きい、または50より大きい、または100より大きい、または900より大きい。
【0017】
好ましくは、バイオソープション工程において、微生物は約0.5~48時間、貴水溶液と接触している。好ましくは、約0.5~24時間、または約0.5~12時間、または約0.5~4時間、または約1~3時間である。
【0018】
特定の実施形態では、目的金属は金である。
【0019】
好ましくは、バイオソープション工程は周囲温度、例えば約15~30℃で行われる。
【0020】
好ましくは、微生物は藻類または細菌である。好ましくは、微生物はグラム陰性菌またはグラム陽性菌である。好ましくは、微生物は、シュードモナス属、大腸菌属、バチルス属、デススルホビブリオ属、プレクトネマ属、クプリアヴィドゥス属、クロストリジウム属またはデルフチア属のものである。
【0021】
好ましくは、微生物は、目的金属が生理学的に妥当な量で見出される環境から選択される。
【0022】
好ましくは、目的金属が金である場合、微生物は、クプリアヴィドゥス・メタリドゥランス、デルフチア・アシドボランス、緑膿菌、プチダ、デスルホビブリオ・デスルフリカンス、枯草菌、またはラン藻から選択される。
【0023】
好ましくは、目的金属が金である場合、微生物は金が生理学的に妥当な濃度で見出される環境から選択される。好ましくは、微生物は、クプリアヴィドゥス・メタリドゥランスまたはデルフチア・アシドボランスから選択される。
【0024】
特定の実施形態では、分離工程は、
貧液から金属を含む微生物の重力分離、および貧液の除去、
遠心分離および貧液の除去、
貧液から金属を含む微生物の濾過、のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
特定の実施形態では、分離工程は、貧液から金属を含む微生物の重力分離を含み、貧液の少なくとも50%が除去される。
【0026】
好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が除去される。
【0027】
特定の実施形態では、分離工程は遠心分離によって金属を含む微生物を分離することを含み、遠心分離中に貧液の少なくとも50%が金属を含む微生物から除去される。好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が遠心分離の間に除去される。
【0028】
特定の実施形態では、分離工程は濾過によって金属を含む微生物を分離することを含み、濾過中に貧液の少なくとも50%が金属を含む微生物から除去される。好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が濾過中に除去される。
【0029】
特定の実施形態では、分離工程は微生物を乾燥させることを含む。
【0030】
特定の実施形態では、回収工程は、金属を含む微生物を、微生物が目的金属を実質的に脱着を引き起こす状態と接触させることを含む。
【0031】
好ましくは、状態は、目的金属の脱着を引き起こす化合物を含有する溶液である。好ましくは、溶液は、システイン、またはチオ硫酸塩、またはチオ尿素のうちの1つまたは複数を含有する。追加的または代替的に、この状態は、(金属またはイオン形態で)目的金属の脱着を引き起こす。一例として、状態は、5未満のpH、または4未満のpH、または3未満のpH、または2未満のpHであってもよい。あるいは、状態は、pH1~5、またはpH2~5、または2~4であってもよい。更なる例として、状態は、8を超えるpH、または9を超えるpH、または10を超えるpH、または11を超えるpH、または12を超えるpHであってもよい。あるいは、pH8~13、またはpH9~13、または10~13であってもよい。追加的または代替的に、状態は、目的金属の脱着に好適な酸化還元電位であってもよい。あるいは、回収工程は、目的金属を脱着させるために金属を含む微生物の燃焼または化学的溶解を含む。
【0032】
特定の実施形態では、貴液は、目的金属に加えて少なくとも1つの別の金属を含む。好ましくは、微生物は、バイオソープション工程において、別の金属よりも優先的に目的金属を生物吸着し、分離工程において、別の金属は貧液中に残る。好ましくは、微生物は、微生物中の目的金属の別の金属に対する質量比が、貴液中の質量比と比較した場合少なくとも2倍増加するように、バイオソープション工程において別の金属よりも優先的に目的金属を生物吸着する。好ましくは質量比は、少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも8倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍、または少なくとも200倍大きくなる。好ましくは、目的金属は金である。好ましくは、別の金属は銅およびニッケルのうちの1つまたは複数から選択される。
【0033】
第2の態様では、本発明は、目的金属を回収する方法を提供し、方法は、
(a) 目的金属イオンを含有する貴水溶液を形成するために、浸出液で固体原料物質から目的金属を溶解させることを含む溶解工程と、
(b) 目的金属イオンの少なくとも一部が微生物に生物吸着するように、微生物を貴水溶液と接触させることを含むバイオソープション工程であって、微生物が金属を含み、貴水溶液は貧液になる、バイオソープション工程と、
(c) 金属を含む微生物を貧液から実質的に分離することを含む分離工程と、
(d) 金属を含む微生物から目的金属の回収を含む回収工程と、を含む。
【0034】
好ましくは貴水溶液は、1000ppmを超える、または500ppmを超える、または200ppmを超える、または100ppmを超える、または50ppmを超える、または20ppmを超える、または10ppmを超える、または5ppmを超える、または1ppmを超える目的金属を含有する。
【0035】
好ましくは、貴水溶液は、約0.1ppm~1500ppm、または約0.1ppm~1000ppm、または約0.1ppm~500ppm、または約0.1ppm~200ppm、または約0.1ppm~100ppm、または約0.1ppm~50ppm、または約0.1ppm~20ppmの目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約0.5ppm~1500ppm、または約0.5ppm~1000ppm、または約0.5ppm~500ppm、または約0.5ppm~200ppm、または約0.5ppm~100ppm、または約0.5ppm~50ppm、または約0.5ppm~20ppmの目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約1ppm~1500ppm、または約1ppm~1000ppm、または約1ppm~500ppm、または約1ppm~200ppm、または約1ppm~100ppm、または約1ppm~50ppm、または約1ppm~20ppmの目的金属を含有する。
【0036】
好ましくは、貧液は、0.1ppm未満、または1ppm未満、または2ppm未満、または5ppm未満、または10ppm未満、または20ppm未満、または50ppm未満、または100ppm未満の目的金属を含有する。好ましくは、貧液は、約0.001~100ppm、または約0.001~50ppm、または約0.001~50ppm、または約0.01~50ppmの目的金属を含有する。
【0037】
好ましくは、貴水溶液は、貧液よりも少なくとも10倍多い目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、貧液よりも少なくとも20倍、または少なくとも40倍、または少なくとも45倍、または少なくとも50倍多い目的金属を含有する。
【0038】
好ましくは、金属を含む微生物は、100ppmを超える、または200ppmを超える、または500ppmを超える、または1000ppmを超える、または30,000ppmを超える目的金属を含む。
【0039】
好ましくは、貴水溶液から微生物への目的金属の濃縮係数は、5より大きい、または10より大きい、または20より大きい、または50より大きい、または100より大きい、または900より大きい。
【0040】
好ましくは、バイオソープション工程において、微生物は約0.5~48時間、貴水溶液と接触している。好ましくは、約0.5~24時間、または約0.5~12時間、または約0.5~4時間、または約1~3時間である。
【0041】
特定の実施形態では、目的金属は金である。
【0042】
特定の実施形態では、固体原料物質は、5%未満、または1%未満、または0.1%未満、または0.01%未満、または0.001%未満、または0.0001%未満の目的金属を含む固体物質を含む。特定の実施形態では、固体原料物質は、鉱石、尾鉱、または工業プロセスからの廃棄物、例えば採鉱、砂、粘土、廃棄物、例えば電子廃棄物、のうちの任意の1つまたは複数である。
【0043】
特定の実施形態では、溶解工程およびバイオソープション工程は同じ容器内で行うことができる。
【0044】
目的金属が金である特定の実施形態では、好ましくは固体原料物質は、電子廃棄物、または金含有鉱石、または金含有砂、または金含有粘土である。
【0045】
特定の実施形態では、貴液は、目的金属に加えて少なくとも1つの別の金属を含む。好ましくは、微生物は、バイオソープション工程において、別の金属よりも優先的に目的金属を生物吸着し、分離工程において、別の金属は貧液中に残る。好ましくは、微生物は、微生物中の目的金属の別の金属に対する質量比が、貴液中の質量比と比較した場合少なくとも2倍増加するように、バイオソープション工程において別の金属よりも優先的に目的金属を生物吸着する。好ましくは質量比は、少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも8倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍、または少なくとも200倍大きくなる。好ましくは、目的金属は金である。好ましくは、別の金属は銅およびニッケルのうちの1つまたは複数から選択される。
【0046】
特定の実施形態では、浸出液はチオ尿素系溶液、またはチオ硫酸塩系溶液、またはチオシアネート系溶液、またはシアン化物系溶液、またはハロゲン系溶液、または王水系溶液である。
【0047】
特定の実施形態では、分離工程は、
貧液から金属を含む微生物の重力分離、貧液の除去、
遠心分離および貧液の除去、
貧液から金属を含む微生物の濾過、のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
特定の実施形態では、分離工程は、貧液から金属を含む微生物の重力分離を含み、貧液の少なくとも50%が除去される。
【0049】
好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が除去される。
【0050】
特定の実施形態では、分離工程は遠心分離によって金属を含む微生物を分離することを含み、遠心分離中に貧液の少なくとも50%が金属を含む微生物から除去される。好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が遠心分離中に除去される。
【0051】
別の実施形態では、分離工程は濾過によって金属を含む微生物を分離することを含み、濾過中に貧液の少なくとも50%が金属を含む微生物から除去される。好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が濾過中に除去される。
【0052】
特定の実施形態では、分離工程は微生物を乾燥させることを含む。
【0053】
金属を含む微生物を貧液および残りの固体原料物質から分離するために追加の分離工程を必要とする場合がある。
【0054】
特定の実施形態では、回収工程は、金属を含む微生物を、微生物が目的金属を実質的に脱着を引き起こす状態と接触させることを含む。
【0055】
好ましくは、状態は、目的金属の脱着を引き起こす化合物を含有する溶液である。好ましくは、溶液は、システイン、またはチオ硫酸塩、またはチオ尿素のうちの1つまたは複数を含有する。追加的または代替的に、状態は、(金属またはイオン形態で)目的金属の脱着を引き起こす。一例として、状態は、5未満のpH、または4未満のpH、または3未満のpH、または2未満のpHであってもよい。あるいは、状態は、pH1~5、またはpH2~5、または2~4であってもよい。更なる例として、状態は、8を超えるpH、または9を超えるpH、または10を超えるpH、または11を超えるpH、または12を超えるpHであってもよい。あるいは、pH8~13、またはpH9~13、または10~13であってもよい。追加的または代替的に、状態は、目的金属の脱着に好適な酸化還元電位であってもよい。
【0056】
あるいは、回収工程は、目的金属を脱着させるために金属を含む微生物の燃焼または化学的溶解を含む。
【0057】
第3の態様では、第1および/または第2の態様の方法によって回収された目的金属が提供される。好ましくは金属は金である。
【0058】
第4の態様では、目的金属を含有する貴水溶液から目的金属を回収するシステムが提供され、システムは、
(a)目的金属の少なくとも一部が微生物に生物吸着するように、微生物を貴水溶液と接触させるように構成される容器であって、微生物は金属を含み、貴水溶液は貧液になる、容器と、
(b)貧液から金属を含む微生物を実質的に分離するように構成されるセパレータと、
(c)金属を含む微生物から目的金属の回収のために構成される回収手段と、を含む。
【0059】
特定の実施形態では、システムは、(a)の容器から(b)のセパレータに金属を含む微生物を含有する貧液を送る手段を含む。特定の実施形態では、システムは、(b)の金属を含む微生物を(c)の回収手段に送る手段を含む。
【0060】
特定の実施形態では、セパレータは、
貧液から金属を含む微生物を重力分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、重力分離する手段と、
遠心分離により金属を含む微生物を分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、分離する手段と、
濾過により金属を含む微生物を分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、分離する手段と、のうちの少なくとも1つを含む。
【0061】
特定の実施形態では、セパレータは、金属を含む微生物を貧液から重力分離し、少なくとも一部の貧液を除去する手段を含む。
【0062】
特定の実施形態では、セパレータは遠心分離により金属を含む微生物を分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、分離する手段を含む。
【0063】
特定の実施形態では、セパレータは金属を含む微生物を濾過により分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、分離する手段を含む。
【0064】
特定の実施形態では、回収手段は、金属を含む微生物を溶液と接触させるための要素を含む。
【0065】
特定の実施形態では、回収手段は、目的金属を放出させるために金属を含む微生物を燃焼させる要素を含む。
【0066】
第5の態様では、固体原料物質から目的金属を回収するためのシステムが提供され、システムは、
(a)目的金属を含有する貴水溶液を形成するために、浸出液で固体原料物質から目的金属を溶解させるように構成される容器と、
(b)目的金属の少なくとも一部が微生物に生物吸着するように、微生物を貴水溶液と接触させるように構成される容器であって、微生物は金属を含み、貴水溶液は貧液になる、容器と、
(c)貧液から金属を含む微生物を実質的に分離するように構成されるセパレータと、
(d)金属を含む微生物から目的金属の回収のために構成される回収手段と、を含む。
【0067】
特定の実施形態では、システムは、貴水溶液を(a)の容器から(b)の容器に送る手段を含む。特定の実施形態では、(a)で使用される容器は(b)で使用されるものと同じであってもよい。特定の実施形態では、システムは、金属を含む微生物を含有する貧液を(b)の容器から(c)のセパレータに送る手段を含む。特定の実施形態では、システムは、(c)の金属を含む微生物を(d)の回収手段に送る手段を含む。
【0068】
特定の実施形態では、セパレータは、金属を含む微生物を貧液から重力分離し、少なくとも一部の貧液をデカントする手段を含む。
【0069】
特定の実施形態では、セパレータは、
貧液から金属を含む微生物を重力分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、重力分離する手段と、
金属を含む微生物を遠心分離により分離する手段であって、貧液の少なくとも一部を金属を含む微生物から除去する、分離する手段と、
金属を含む微生物を濾過により分離する手段であって、貧液の少なくとも一部が金属を含む微生物から除去される、分離する手段と、のうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
特定の実施形態では、回収手段は、金属を含む微生物を溶液と接触させるための手段を含む。
【0071】
特定の実施形態では、回収手段は、目的金属を放出させるために金属を含む微生物を燃焼させるための手段を含む。
【0072】
好ましくは、微生物は藻類または細菌である。好ましくは、微生物はグラム陰性菌またはグラム陽性菌である。好ましくは、微生物は、シュードモナス属、大腸菌属、バチルス属、デススルホビブリオ属、プレクトネマ属、クプリアヴィドゥス属、クロストリジウム属またはデルフチア属のものである。
【0073】
好ましくは、微生物は、目的金属が生理学的に妥当な量で見出される環境から選択される。
【0074】
また、本発明は、広義には部分、要素、および特徴で構成され、それらは本出願の本明細書において、上記の部分、要素、または特徴のうちの2つ以上の任意のまたは全ての組み合わせにおいて、個別にまたは集合的に参照されるかまたは示され、本発明が関連する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書に記載されている場合、そのような既知の等価物は、あたかも個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれるとみなされる、と言える。
【図面の簡単な説明】
【0075】
その全ての新規な態様において考慮されるべきである本発明のこれらおよび他の態様は、添付の図面を参照して、例としてのみ与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【0076】
図1】本発明の第4の態様による貴水溶液から目的金属を回収するように構成されたシステムである。
図2】本発明の第5の態様に従って固体原料物質から目的金属を回収するように構成されたシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
定義
用語「目的金属」は、特定の目的金属または複数の特定の金属の金属元素およびイオンの両方を含む。本発明の方法またはシステムの異なる部分において、特定の目的金属が異なるイオン状態(元素形態を含む)または複数のイオン状態で存在し得ることが認識される。目的金属は、本発明の水溶液中に、イオン(単数または複数)、塩もしくは錯体もしくは元素形態、またはそれらの組み合わせとして溶解または部分的に溶解することができる。同様に、目的金属は、文脈が指示するように、イオン(単数または複数)、塩もしくは錯体もしくは元素形態、またはそれらの組み合わせのいずれかとして固体形態で存在し得る。
【0078】
用語「貴水溶液」は、溶解した目的金属を含有する水溶液を指す。いくつかの極端な例では、貴水溶液はまた、少なくともいくつかの未溶解の目的金属を含有してもよい。
【0079】
用語「貧液」は、貴水溶液と比較して僅かな量の溶解した目的金属を含有する水溶液を指す。極端な場合には、目的金属は貧液中に全く存在しない場合があることが認識されている。
【0080】
用語「接触させる」は、2つ以上の溶液または物質間の混合および相互作用を指す。これの一例は、貴水溶液と微生物との接触である。これの更なる例は、浸出液と固体原料物質との接触である。
【0081】
用語「生物吸着する」および「バイオソルベント」および「バイオソープション」等は、本発明の方法およびシステムに関連して使用される場合、金属を吸着、吸着もしくは吸収するために使用される微生物、または微生物への金属の吸着、吸着もしくは吸収プロセスを指す。
【0082】
用語「原料」は、処理される投入物質を指す。
【0083】
用語「固体原料物質」は、処理のための投入物質となり得る様々な金属源の固体物質を指す。例としては、鉱石、尾鉱、電子廃棄物が挙げられる。
【0084】
用語「微生物」は、藻類または細菌または菌類または原生生物または古細菌を指す。それは微生物の混合物に対して複数の意味で使用されてもよい。
【0085】
用語「金属を含む微生物」は、1つまたは複数の目的金属を生物吸着した微生物を意味する。
【0086】
用語「ppm」は、百万分の一を意味し、別の基質と比較した基質の濃度に関する。それは、2つの基質間の重量:重量比を指す。水溶液の場合、ppmとmg/Lはほぼ同等である。
【0087】
用語「rcf」は相対遠心力を意味する。
【0088】
用語「デカントした」または「デカントする」等は、固体画分を沈降させた固体/水性混合物から水溶液の上部を移すことを指す。
【0089】
用語「浸出液」は、目的金属を水性形態に溶解することができる水溶液を指す。
【0090】
用語「電子廃棄物」は、電子廃棄物または電気および電子機器の廃棄物(一般的にWEEEと呼ばれる)を指す。
【0091】
「システム」は、配管、および原料から金属の抽出を可能にするために典型的に用いられる他の機構を備える。一例として、「システム」は、容器、導管、ポンプ、圧力弁、熱交換器、フィルター、装置(圧力センサー、流量センサー、pHセンサー)およびミキシングティー(静止型混合器)を備えることができる。
【0092】
ディスカッション
以下の説明は、本発明の特定の実施形態、すなわち貴水溶液または固体原料物質からの金の回収に焦点を合わせているが、本発明が関連する技術分野の当業者に知られるように、本発明は代替の目的金属の製造に適用可能であることを理解されたい。
【0093】
前述したように、本発明者らは、金属イオンおよび/または固体原料物質を含有する水溶液から金属を回収する方法を考案した。特に、本発明は、既存の方法を上回るいくつかのコストおよび環境上の利点を有する方法で水溶液から金属を回収する方法を提供する。
【0094】
本発明の特定の態様では、目的金属を含有する貴水溶液から目的金属を回収する方法が提供され、方法は、
(a)目的金属の少なくとも一部が微生物に生物吸着するように、微生物を貴水溶液と接触させることを含むバイオソープション工程であって、微生物が金属を含み、貴水溶液は貧液になる、バイオソープション工程と、
(b)貧液から金属を含む微生物を実質的に分離することを含む、分離する工程と、
(c)金属を含む微生物から目的金属の回収を含む回収工程と、を含む。
【0095】
図1は、微生物をバイオソープション容器1内で目的金属イオンを含有する貴水溶液と接触させる本発明の実施形態を示す。本発明は、目的金属イオンの希薄流を濃縮するのに特に有用であり、したがって、いくつかの実施形態では、貴水溶液は、1000ppmを超える、または500ppmを超える、または200ppmを超える、または100ppmを超える、または50ppmを超える、または20ppmを超える、または10ppmを超える、または5ppmを超える、または1ppmを超える目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約0.1ppm~1500ppm、または約0.1ppm~1000ppm、または約0.1ppm~500ppm、または約0.1ppm~200ppm、または約0.1ppm~100ppm、または約0.1ppm~50ppm、または約0.1ppm~20ppmの目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約0.5ppm~1500ppm、または約0.5ppm~1000ppm、または約0.5ppm~500ppm、または約0.5ppm~200ppm、または約0.5ppm~100ppm、または約0.5ppm~50ppm、または約0.5ppm~20ppmの目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、約1ppm~1500ppm、または約1ppm~1000ppm、または約1ppm~500ppm、または約1ppm~200ppm、または約1ppm~100ppm、または約1ppm~50ppm、または約1ppm~20ppmの目的金属を含有する。
【0096】
本発明の方法によれば、特定の実施形態では、目的金属イオンを含有する浸出液は貴水溶液として働く。非限定的な例として、金が目的金属である場合、貴水溶液を、チオ尿素系溶液、またはチオ硫酸塩系溶液、またはチオシアネート系溶液、またはシアン化物系溶液、またはハロゲン系溶液、または王水系溶液に目的金属を溶解することによって作製することができ、好適な状態の例は、Aylmore、Developments in Mineral Processing 15、ページ501-539(2005)に見出すことができる。
【0097】
貴液と接触すると、微生物は、少なくとも50%の目的金属を生物吸着するのに必要な期間にわたって目的金属を生物吸着する。特定の実施形態では、微生物を、少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の目的金属を生物吸着するように貴水と接触させる。時間は、好ましくは、約0.5~48時間、または約0.5~24時間、または約0.5~12時間、または約0.5~4時間の間、または約1~3時間である。
【0098】
本発明の特定の好ましい実施形態では、微生物は、貴液中で別の金属または複数の金属上に目的金属を優先的に生物吸着する。次いで、別の金属が貧液中に残っている間に、別の金属が分離工程において目的金属から分離される。実施例7および8は、バイオソープション工程の優先的性質を示す。優先的なバイオソープションの係数は、貴液中の金属の比率にある程度依存し、例えば金属が既に同量である場合、質量比は別の金属が大過剰にある場合ほど大きくは変化しない可能性がある。しかし、好ましくは、微生物は、バイオソープション工程において、別の金属上に目的金属を優先的に生物吸着する。このため、貴液中の目的金属の別の金属に対する質量比は、微生物にバイオ吸着される目的金属の別の金属に対する比と比較して、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも8倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍、または少なくとも200倍大きくなる。比率の増加の上限は、ある程度出発比率に依存するであろうが、1,000以上であってもよい。好ましくは、目的金属は金である。好ましくは、別の金属は銅およびニッケルのうちの1つまたは複数から選択される。
【0099】
いくつかの微生物が金属イオンを生物吸着することができる。微生物は、好ましくは藻類または細菌、好ましくはグラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えばシュードモナス、大腸菌、バチルス、デスルホビブリオ、プレクトネマ、クプリアヴィドゥス、クロストリジウム、またはデルフチア由来のものである。微生物は、目的金属が生理学的に妥当な量、例えば0.5ppm未満で見出される環境から選択されるのが好ましい。金属イオンを生物吸着することができる微生物の例としては、グラム陰性菌の緑膿菌および大腸菌、グラム陽性菌の枯草菌、ならびに出芽酵母菌類が挙げられる。Nancharaiahら(Trends in Biotechnology 34、ページ137-155(2016))は、本発明の方法に従って目的金属を生物吸着させるために用いることができる広範囲の微生物を特定しており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。バイオソープション事象の大部分は本質的に吸着性である(即ち、金属イオンは細胞壁または膜部分との受動的相互作用により微生物の表面に結合する)が、あるものは吸収性である(即ち、金属イオンは微生物により積極的に取り込まれる)。
【0100】
目的金属イオンが金である特定の実施形態では、微生物、例えばグラム陰性菌の緑膿菌、シュードモナス・プチダおよびデスルホビブリオ・デスルフリカンス、グラム陽性菌の枯草菌および/または藻類のラン藻は、金を生物吸着することが示されている(Reithら、International Society for Microbial Ecology Journal 1,ページ567-584(2007))。特定の好ましい実施形態では、微生物、例えばグラム陰性菌のクプリアヴィドゥス・メタリドゥランスおよびデルフチア・アシドボランスは、生理学的に妥当な濃度で金が見出される環境から選ばれる(Reaら、FEMS Microbiology Ecology 92,ページfiw082(2016))。別の好ましい実施形態では、微生物、例えばグラム陽性菌のクロストリジウム・オートエタノゲナムは、他の工業プロセスで使用されるものから選ばれる(Abriniら、Arch Microbiol 161,ページ345-351(1994))。
【0101】
環境中よりもむしろ、本発明において使用する場合、微生物は一般的に単培養物、または少なくとも限られた2~5の微生物の混合物である。更に、自然環境では、微生物は一般的に、低濃度、例えば0.5ppm未満の目的金属にのみ曝される。本発明の好ましい実施形態では、貴液は、比較的多量の、例えば0.5ppm超または1ppm超の目的金属を含有する。したがって、微生物はそれでも高濃度の目的金属を生物吸着する能力を有することは驚くべきことである。追加的または代替的に、目的金属が低濃度または高濃度であっても、微生物が比較的短期間、例えば12時間未満で目的金属を生物吸着することができることは驚くべきことである。
【0102】
本発明者らは、金が目的金属である本発明において、クプリアヴィドゥス・メタリドゥランス(C.メタリドゥランス)が特に有用であることを見出した。本発明者らはC.メタリドゥランスが比較的容易に成長し、金の生物吸着に優れ、および/または目的金属を比較的速く生物吸着し、および/または金を優先的に生物吸着するのに適しており(実施例7および8を参照)、および/または貴液中に存在する別の金属に対して比較的許容性がある。
【0103】
目的金属イオンが金であり、貴水溶液がチオ硫酸塩系溶液、またはシアン化物系溶液、または塩化物系溶液である特定の実施形態では、C.メタリドゥランスを用いてそれぞれ金-チオ硫酸塩錯体、または第一金シアン化合物、または塩化金酸塩を生物吸着することができる(Reithら、PNAS 106,ページ17757-17762(2009);Etschmannら、Chemical Geology 438,ページ103-111(2016))。
【0104】
目的金属イオンの少なくとも部分的なバイオソープションの際に、溶液は貧液になり、ここで貧液は貴液よりも少ない目的金属を含有する。特定の実施形態において、貧液は、0.1ppm未満、または1ppm未満、または2ppm未満、または5ppm未満、または10ppm未満、または20ppm未満、または50ppm未満、または100ppm未満の目的金属を含有する。好ましくは、貧液は、約0.001~100ppm、または約0.001~50ppm、または約0.001~50ppm、または約0.01~50ppmの目的金属を含有する。特定の実施形態では、貴水溶液は、貧液よりも少なくとも10倍多い目的金属を含有する。好ましくは、貴水溶液は、貧液よりも少なくとも20倍、または少なくとも40倍、または少なくとも45倍、または少なくとも50倍多い目的金属を含有する。
【0105】
微生物を、バイオソープション容器1内の貴水溶液と接触させる前に、当業者によく知られている任意の方法によって別の容器内で培養することができることが認識されている。一例として、微生物は、好適な増殖培地を含むバイオリアクター(図示せず)内で培養され、そしてバイオソープション容器1に移されることができる。微生物を移す前に濃縮してもよく、または更に濃縮することなく直接送ってもよい。特定の実施形態では、微生物は重力分離により濃縮され、最小容量の増殖培地中の濃縮微生物スラリーとしてバイオソープション容器1に送られる。関連する実施形態では、濃縮微生物スラリーを、バイオソープション容器1に送る前に別の溶液で洗浄してもよい。
【0106】
特定の実施形態では、対数増殖期中期または増殖定常期に達するまで微生物はリッチな液体媒地(例えば栄養のある培養液またはトリプシン大豆培養液)で培養される。
【0107】
図1を参照すると、目的金属の少なくとも部分的なバイオソープションの際に、分離モジュール3において金属を含む微生物は貧液から分離される。分離工程の最初の部分はバイオソープション工程と同じ容器内で行うことができ、金属を含む微生物は単に重力分離によって濃縮されることができると予想される。別の実施形態では、金属を含む微生物および貧液は、分離のために導管手段2を介して分離モジュール3に送られる。微生物を貧液から分離するための手段の例は当業者によく知られているであろう。しかし、一例として、金属を含む微生物を、重力分離、遠心分離、濾過またはそれらの組み合わせによって分離することができ、それぞれの場合に貧液は金属を含む微生物から除去される。
【0108】
実質的に分離するという言及は、金属を含む微生物から貧液の少なくとも一部を物理的に分離することを意味すると解釈されるべきである。物理的に分離するとは、それらを別々の非接触位置に有すること、例えば同じ容器内で層が接触しているのではなく別々の容器に入れることを指す。
【0109】
特定の実施形態では、金属を含む微生物を、バイオソープション容器1または分離モジュール3内である期間にわたって貧液から重力分離する。重力分離の後、貧液の少なくとも一部をデカントする、サイフォンで取り出す、あるいは濃縮金属を含む微生物を残して除去し、これを回収モジュール5に送って回収工程を実施することができる。
【0110】
特定の実施形態では、分離工程は、貧液から金属を含む微生物の重力分離を含み、貧液の少なくとも50%が除去される。好ましくは貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が除去される。一例として、貧液を除去する前に、微生物の溶液を、最大2時間、または最大6時間、または最大12時間、または最大24時間、または最大48時間、または最大で72時間、重力により沈殿させることができる。
【0111】
別の実施形態では、金属を含む微生物を、貧液の重力分離および除去によって分離モジュール3において貧液から分離することができる。当業者であれば、金属を含む微生物から、分離後に導管手段4を介して回収モジュール5に送ることができる貧液を分離するのに必要な適切な状態および装置を認識するであろう。
【0112】
特定の実施形態では、分離工程は遠心分離によって金属を含む微生物を分離することを含み、遠心分離中に貧液の少なくとも50%が金属を含む微生物から除去される。好ましくは、貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が遠心分離の間に除去される。
【0113】
当業者であれば、遠心分離の作業は処理される液体の体積および必要とされる分離速度に依存するであろうことを認識するであろう。好適な連続流遠心分離またはデカンタ遠心分離装置を含む本発明の方法およびシステムと共に使用することができるいくつかの遠心分離システムもある。
【0114】
更なる実施形態では、金属を含む微生物を、分離モジュール3内で濾過によって貧液から分離することができる。当業者であれば、金属を含む微生物から、分離後に導管手段4を介して回収モジュール5に送ることができる貧液を分離するのに必要な適切な状態および装置を認識するであろう。
【0115】
特定の実施形態では、分離工程は、濾過により金属を含む微生物を分離することを含み、濾過中、貧液の少なくとも50%が金属を含む微生物から除去される。好ましくは貧液の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が濾過中に除去される。
【0116】
一例として、金属を含む微生物を含有する溶液を、約0.45μm、または約0.65μm、または約0.8μm、または約1μmの細孔径を有するフィルターを通して真空下で濾過して、貧液を除去することができる。別の例として、クロスフロー濾過装置または膜バイオリアクター装置を使用して貧液を除去することができる。
【0117】
分離工程はいくつかの理由で重要である。分離工程は、貴液中の他の成分から金属を含む微生物、したがって金属を除去する。貴液中の他の成分は有毒または腐食性、例えばシアン化物または酸である可能性がある。分離工程はまた、目的金属の濃縮を可能にする。分離工程に続いて、乾燥させた金属を含む微生物は、好ましくは100ppmを超える、または200ppmを超える、または500ppmを超える、または1000ppmを超える、または30,00ppmを超えるの目的金属を含む。更に、本発明者らは、貴液から分離される微生物への目的金属の重要な濃縮係数を示した。貴水溶液から微生物への目的金属の濃縮係数(即ち、濃縮された目的金属が貴液よりも微生物中に存在する倍数)は、5より大きい、または10より大きい、または20より大きい、または50より大きいまたは100より大きい、または900より大きい。例えば、実施例1では、貴液から微生物への目的金属の濃縮係数990を示す。湿った微生物バイオマスは、通常、その乾燥質量の5倍、即ち、乾燥質量は湿った質量の約20%である(Luria, The Bacteria, vol.1.Academic Press, Inc., New York, ページ1-34(1960))と推定される。したがって、乾燥した微生物の濃縮係数を推定するために、実施例1および5で使用される湿った微生物バイオマスの計算された金属濃縮係数を、5倍にすることができる。微生物の乾燥は実施例8に例示されている。例えば、金属を抽出するために浸出液が湿式精錬で使用されるが、金属はまだ浸出液から回収されなければならないので、この濃度は重要である。
【0118】
分離工程は、場合によっては金属の選択的分離および/または濃縮も可能にし、例えば、実施例7は優先的なバイオソープション、次いで銅からの金の分離および/または濃縮を示す。金は微生物に選択的に生物吸着され、そのため分離工程において微生物に生物吸着される金は貧液中の銅から分離される。
【0119】
当業者であれば、回収モジュール5において金属を含む微生物から目的金属を回収する好適な回収手段を認識するであろう。しかし、非限定的な例として、微生物の状態を変えることにより金属を含む微生物から金属を脱着することができる。例えば、本発明の特定の実施形態では、微生物のpHを変えることによって、例えば微生物を酸または塩基を含有する溶液と接触させることによって、金属を含む微生物から金属を脱着することができる。このような実施形態では、微生物を特定のpHを有する液体と接触させて、液体中への目的金属の脱着を誘発させる。特定の実施形態では、系の特性に応じて、接触した液体のpHは貧液よりも高いpHであるが、他の実施形態では、pHはより低い。
【0120】
一例として、状態は、5未満のpH、または4未満のpH、または3未満のpH、または2未満のpHであってもよい。更なる例として、状態は、8を超えるpH、または9を超えるpH、または10を超えるpH、または11を超えるpH、または12を超えるpHであってもよい。
【0121】
別の実施形態では、金属を含む微生物を化合物を含有する液体と接触させて液体中への目的金属の脱着を誘発させることができる。一例として、水性システインを特定の実施形態で使用して目的金属の脱着を誘発させることができる。目的金属が金である特定の実施形態では、約0.3mM、または約1mM、または約10mM、または約30mM、または約60mMのシステイン溶液を金属を含む微生物と接触させることができる(Kenneyら、Geochimica et Cosmochimica Acta 82,ページ51-60(2012))。関連する実施形態では、チオ硫酸塩水溶液、チオ尿素水溶液、チオシアネート水溶液、シアン化物水溶液または他のチオール配位子を用いて、微生物からの金の脱着を誘発させることができる。実施例10に示すように、塩素ガスを用いて状態を変えることができる。追加的または代替的に、他の状態、例えば酸化還元電位または温度の変化を用いて目的金属の脱着を促進させることができる。
【0122】
次に、濃縮溶液を、分離および精製手順、例えば不純物の沈殿、溶媒抽出、吸着およびイオン交換を行い、目的金属を単離および/または更に濃縮することができる。続いて、溶液を、電解精製プロセス、化学還元、または目的金属回収のための結晶化、または当業者が知っている他の方法によって処理することができる。
【0123】
別の実施形態では、当業者に公知の従来の乾式精錬または湿式精錬技術を用いて灰から分離されることができる目的金属を回収するために、分離された金属を含む微生物を乾燥させて燃焼してもよい(Hennebelら、New Biotechnology 32,ページ121-127(2015))。
【0124】
回収工程が目的金属を金属またはイオン形態で回収できることは明らかであろう。したがって、目的金属を回収するという言及は、金属性金属または金属イオンの回収を含むと解釈されるべきである。
【0125】
本発明の方法およびシステムの特定の実施形態では、目的金属は金である。そのような実施形態では、分離された金を含む微生物を、水分含有量を最小限に抑えるために周囲温度または30℃もしくは50℃で乾燥させ、そして発生する灰の損失を最小限に抑えるために例えばガストーチによって穏やかに灰化することができる。そしてこの灰を硝酸で処理して卑金属を可溶化し、濾過し、そして金含有残渣を王水(硝酸1対塩酸3)で処理して塩化金酸の溶液を生成することができる。関連する実施形態では、金を含む微生物は、事前の灰化を必要とせずに上記の酸処理を直接行ってもよい。金は、当業者に公知の方法を用いて塩化金酸から沈殿させそして精錬することができる。
【0126】
本発明の別の態様によれば、目的金属を回収する方法が提供され、方法は、
(a)目的金属を含有する貴水溶液を形成するために、浸出液で固体原料物質から目的金属を溶解させることを含む溶解工程と、
(b)少なくとも一部の目的金属イオンが微生物に生物吸着するように、微生物を貴水溶液と接触させることであって、微生物が金属を含むようになり、貴水溶液が貧液となる、接触させることを含むバイオソープション工程と、
(c)金属を含む微生物を貧液から実質的に分離することを含む分離工程と、
(d)金属を含む微生物から目的金属の回収を含む回収工程と、を含む。
【0127】
図2を参照すると、目的金属を、適切な浸出液と接触させることによって、溶解容器6内で固体原料物質から選択的に溶解させることができる。当業者は、特定の目的金属を選択的に溶解するための好適な浸出液を理解するであろう。非限定的な例として、金が目的金属である場合、浸出液は、チオ尿素系溶液、またはチオ硫酸塩系溶液、またはチオシアネート系溶液、またはシアン化物系溶液、またはハロゲン系溶液、または王水系溶液から選択されることができ、好適な状態の例は、Aylmore,Developments in Mineral Processing 15,ページ501-539(2005)に見出すことができる。
【0128】
特定の実施形態では、貴水溶液を製造するために、固体原料物質を浸出液と、少なくとも50%の目的金属、または少なくとも60%の目的金属、または少なくとも70%の目的金属、または少なくとも80%の目的金属、または少なくとも90%の目的金属、または少なくとも95%の目的金属を溶解するのに必要な期間、接触させる。特定の実施形態では、固体原料物質/浸出液混合物を、溶解を促進するために30℃を超える、または40℃を超える、または50℃を超えるまで穏やかに加熱する必要がある場合がある。同様に、混合物を攪拌、超音波処理、振動または他の方法で処理して溶解を促進してもよい。
【0129】
固体原料物質は、目的金属残渣を含む任意の物質であってもよい。一例として、固体原料物質は、目的金属を含む金属鉱石、砂、粘土、残渣、または廃棄物を含むことができる。非限定的な例として、目的金属が金である本発明の特定の実施形態では、固体原料物質は、金選鉱プロセスから取り出される金鉱石または電子廃棄物から取り出されるプリント回路基板である。特定の実施形態では、固体原料物質は、浸出液と接触する前に少なくとも部分的にまたは完全に粉砕されてもよい。しかし、これは、目的金属が固体原料物質上に表面被覆されている実施形態のような全ての場合において、必ずしも必要とは限らない。
【0130】
特定の実施形態では、固体原料物質は、5%未満、または1%未満、または0.1%未満、または0.01%未満、または0.001%未満、または0.0001%未満の目的金属を含む固体物質を含む。特定の実施形態では、目的金属は金である。
【0131】
固体原料物質が金鉱石または電子廃棄物の金である特定の実施形態では、浸出液はチオ尿素系溶液、チオ硫酸塩系溶液、チオシアネート系溶液、またはシアン化物系溶液から、またはハロゲン系溶液、または王水系溶液から選択されることができ、好適な状態の例は、Aylmore,Developments in Mineral Processing 15,ページ501-539(2005)に見出すことができる。
【0132】
図2を参照すると、溶解容器6内の浸出液中に目的金属が少なくとも部分的に溶解すると、貴水溶液は導管手段7を介してバイオソープション容器1に送られ、ここで前述のバイオソープション-分離-回収プロセスは完了する。当業者は、溶解容器6およびバイオソープション容器1は、使用される方法および状態に応じて同じ容器でも異なる容器でもよいと認識するであろう。本発明の特定の実施形態では、溶解容器6とバイオソープション容器1は別々の容器である。
【0133】
特に指示しない限り、本明細書に記載の方法に記載の工程の順序は非常に好ましく、プロセスが効率的な収率と経済的に実行可能な回収方法を確実に提供するように発明者によって行われた試験によって最適化された。
【実施例
【0134】
実施例1 王水に溶解された金のバイオソープション
物質および方法:
微生物培養物を無菌状態下で増殖させたが、その後の処理を非滅菌溶液および装置を用いて行った。
【0135】
1.25mLの栄養培養液(0.5%ペプトン、0.3%酵母エキス)にクプリアヴィドゥス・メタリドゥランス株CH34(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH#2839)を接種し、30℃、約200rpmで定常期まで少なくとも16時間増殖させた。
2.培養物を3,100rcfで15分間遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレット(約0.1g)を0.1M過塩素酸ナトリウム30mLに再懸濁して洗浄した。この遠心分離/洗浄工程を10mL体積で再度繰り返した。
3.培養物を上記のように再度遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレットを25mLの0.1M過塩素酸ナトリウム、25μM塩化金酸(約5ppmのAu)、pH4(水酸化ナトリウムで調整)で再懸濁した(貴液)。金/微生物混合物のpHを調べ、必要に応じて水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いて4.0~4.5に調整した。
4.金/微生物混合物を室温で2時間培養した。微生物を懸濁状態に保つために、混合物を終始オービタルシェーカーで穏やかに撹拌した。
5.混合物を工程2に従って遠心分離し、上澄み(貧液)を捨て、そしてペレットを4℃で保存した。
6.工程5からのペレット(バイオソープションペレット)(約100μL体積)を水100mLに再懸濁し、70%硝酸1mLを加え、そして誘導結合プラズマ質量分析法により総金含有量について分析した(Watercare Services Ltd,Auckland, New Zealandにより提供されるサービス)。
【0136】
結果:
バイオソープション期間(工程4)の終わりに、混合物のpHを調べたところ、4.5~5.0であることがわかった。
【0137】
分析のために提出された体積に基づいて、総金含有量はmg/Lで報告され、生物吸収された量とバイオソープション収率を計算するために用いられた(表1)。総金含有量の精度は15~20%のばらつきと推定された。
【0138】
【表1】
【0139】
バイオ吸収された金の量に基づくと、貴液は、貧液よりも約4倍多い目的金属(金)を含有していた。
【0140】
表1のデータを使用して、貧液上澄みに残った金の濃度を約1ppm([0.125mg~0.099mg]/0.025L)であると逆算した。バイオソープションプロセスによる濃縮係数、即ち貴液からバイオソープションペレット(湿った微生物)へのAu濃度の増加も、元のバイオソープションペレットの体積約100μL(表2)を用いて計算された。湿った微生物バイオマスは、通常、その乾燥質量の5倍であると推定され、即ち、乾燥質量は、湿った質量の約20%である(Luria,The Bacteria,vol.1Academic Press,Inc.,New York,ページ1-34(1960))。したがって、これは貴液から乾燥微生物へのAuの濃縮係数の約990に近い。
【0141】
【表2】
【0142】
実施例2 塩化金のバイオソープションおよび脱着
物質および方法:
微生物培養物を無菌状態下で増殖させたが、その後の処理を非滅菌溶液および装置を用いて行った。
【0143】
1. トリプシン大豆培養液600mL(1.7%トリプトン、0.3%ソイトン、0.25%グルコース、0.5%塩化ナトリウム、0.25%リン酸二カリウム)に枯草菌株(Ehrenberg 1835)Cohn 1872(Landcare Research New Zealand Ltd#20567)またはシュードモナス・プチダ株(Trevisan 1889)Migula (Landcare Research New Zealand Ltd #15057)を接種し、30℃、約200rpmで少なくとも16時間、定常期まで増殖させた。
2. 各培養物を2,500rcfで10分間遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレットを水300mLに再懸濁した。この遠心分離/洗浄工程を2回繰り返した。
3. 各培養物を上記のように再度遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレットを0.1M過塩素酸ナトリウム20mLに再懸濁した。この遠心分離/洗浄工程を2回繰り返した。
4. 各培養物を上記のように再度遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレットの湿った質量を秤量した。各ペレットを0.1M過塩素酸ナトリウムに再懸濁して250g/Lの濃度にした。
5. 25μM塩化金酸(約5ppmのAu)pH4(水酸化ナトリウムで調整)(貴液)117.5mLに、250g/L微生物溶液2.4mLを加えて、120mL中、約5g/Lの微生物の最終濃度にした。これは、枯草菌とP.プチダの両方に対して別々に行われた。金/微生物混合物のpHを調べ、必要に応じて水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いて3.0~4.0に調整した。
6. 各金/微生物混合物を30℃で2時間培養した。微生物を懸濁状態に保つために、各混合物を終始オービタルシェーカーで穏やかに撹拌した。
7. 各混合物を工程2に従って遠心分離し、上澄み(貧液)をデカントし、4℃で保存した。
8. 各ペレットを上澄み7mLに再懸濁し、0.11gのL-システイン塩酸塩一水和物を加え、そしてpHを1M NaOHで7.9~8.1に調整した。各混合物に上澄みを補充して最終体積を10mLとし、システイン濃度を約62mMとした。
9. 各システイン/金/微生物混合物を、ステップ6に従って30℃で2時間培養した。
10. 各混合物を工程2に従って遠心分離し、上澄みをデカントした。上澄みとペレットの両方を4℃で保存した。
11. 以下の枯草菌およびP.プチダ試料を、誘導結合プラズマ質量分析法により総金含有量について分析した(Watercare Services Ltd, Auckland, New Zealandにより提供されるサービス)。
a. 貧液上澄み(工程7):70%硝酸1mLを加えて100mL
b. 脱着上澄み(工程10):7mLを水で100mLにし(約14.3倍希釈)、70%硝酸1mLを加える
【0144】
結果:
枯草菌培養物600mLからの洗浄ペレットの湿った質量は3gであり、したがって0.1M過塩素酸ナトリウム12mLに再懸濁して250g/Lの濃度とした。P.プチダでは、質量および再懸濁はそれぞれ2.6gおよび10.4mLであった。
【0145】
バイオソープション期間(工程6)の最後に、各混合物のpHを調べたところ、3.0~4.0であることがわかった。
【0146】
分析のために提出された体積に基づいて、総金含有量はmg/Lで報告され、生物吸収された量または脱着量、および金の投入量と比較する場合の収率を計算するために用いられる(表3)。総金含有量の精度は15~20%のばらつきと推定された。
【0147】
【表3】
【0148】
枯草菌については、貴液は、貧液よりも約49倍多い目的金属を含有していた。P.プチダについては、貴液は、貧液よりも約16倍多い目的金属を含有していた。
【0149】
表3の結果は、枯草菌およびP.プチダの両方が貴液から90%を超える金を生物吸着したことを示す。回収工程(工程8~10)に続いて、P.プチダはシステイン状態を用いて容易に金を脱着することが見出された。枯草菌はシステイン状態を用いて金を容易に放出しないが、必要ならば別の状態を用いて回収率を高めることができると考えられる。
【0150】
これらの結果を用いて、バイオソープションプロセスからの濃縮係数を、10mLの脱着上澄み体積を用いて計算した(表4)。この実施例では、濃縮係数は貴液から回収されるAu(即ち、脱着上澄み)に対する濃度の変化である。枯草菌のより低い値は、バイオソープションステップよりもむしろ、上記のより低い脱着速度によるものである。
【0151】
【表4】
【0152】
実施例3:金溶解性浸出液
物質および方法:
約16ppmのAuおよび約260ppmのAgを含有する(<100μmの粒子径に粉砕された)金含有石英鉱石の試料は、ニュージーランドのコロマンデル地域の鉱山の採掘で得られた。プリント回路基板は、廃棄されたデスクトップコンピュータから収集され、金メッキされたコネクタピンを有する部分はボードから切り取られ、典型的な電子廃棄物原料として使用された。
【0153】
1. 金の浸出液は以下のように調製された:
a. チオ硫酸塩系浸出液:0.2Mチオ硫酸ナトリウム五水和物、0.4Mアンモニア、12mM硫酸銅五水和物;1M硫酸を用いてpHを9.5~10.0に調整した。
b. チオ尿素系浸出液:0.13Mチオ尿素、5mM塩化鉄(III);1M硫酸を用いてpHを1.0~1.5に調整した。
2. 各原料/浸出液の組み合わせを500mLの平底ガラス瓶に別々に入れ、100mLの浸出液を次の各金原料に加えた。
a. 金粉2~20mg
b. (Au約0.4mg含有)粉砕鉱石25g
c. 電子廃棄物の2つの約0.5cmの金メッキされたピン部分
3. 反応液を30℃、約100rpmで20時間培養した。空気が交換できるように瓶の蓋を緩めた。
4. (粉砕された鉱石固体を沈殿させるために)反応物を放置し、貴浸出液をデカントした。以下の試料を、誘導結合プラズマ質量分析法により総金含有量について分析した(Watercare Services Ltd,Auckland,New Zealandにより提供されるサービス):
a. 金粉末(チオ硫酸塩系浸出液):20mLを水で100mLにし(2倍希釈)、70%硝酸1mLを加えた。
b. 金粉末(チオ尿素系浸出液):10mLを水で100mLにし(2倍希釈)、70%硝酸1mLを加えた。
c. 粉砕鉱石(チオ硫酸塩系浸出液):50mLを水で100mLにし(2倍希釈)、70%硝酸1mLを加えた。
d. 粉砕鉱石(チオ尿素系浸出液):50mLを水で100mLにし(2倍希釈)、70%硝酸1mLを加えた。
e. 電子廃棄物(チオ硫酸塩系浸出液):50mLを水で100mLにし(2倍希釈)、70%硝酸1mLを加えた。
【0154】
結果:
チオ硫酸塩系浸出液の場合、初期酸化還元電位は(標準水素電極に対して)230~260mVと測定された。浸出の終わりには、これは160~180mVであった。チオ尿素系浸出液の場合、これらの値はそれぞれ360~400mV、および340~370mVであった。チオ硫酸塩系浸出液の出発色は水色で、浸出の終わりまでに濃青色に変化した。チオ尿素系浸出液の出発色は肌色であり、浸出の終わりまでに無色に変化した(白色沈殿物形成を伴う)。
【0155】
浸出液中で金粉末の溶解を観察することができた。粉砕された鉱石については、明白な変化は明らかではなかったが、電子廃棄物については、金めっきの変色および溶解が観察された。リストにある他の原料に同様の結果をもたらさないと信じる理由はないが、電子廃棄物はチオ尿素系浸出液で試験されなかった。
【0156】
分析のために提出された体積に基づいて、総金含有量はmg/Lで報告され、原料から浸出した量、および該当する場合、金投入量と比較した収率を算出するために用いられた(表5)。総金含有量の精度は15~20%のばらつきと推定された。
【0157】
【表5】
Lix.:浸出液、*:電子廃棄物Auの推定投入量
【0158】
実施例4:塩素浸出液
物質および方法:
典型的な電子廃棄物原料として、プリント回路基板を廃棄されたデスクトップコンピュータから収集し、金メッキされたコネクタピンを有する部分をボードから切り取った。
【0159】
1. 電子廃棄物の5個の約1cmの金メッキされたピン部分(総質量1.21g)を平底反応フラスコに入れ、水100mLを加えた。フラスコをマグネチックスターラプレート上に置き、撹拌子を入れた。電子廃棄物がフラスコの周りを動き続けるのに好適な速度で撹拌を行った。
2. 塩素ガスをゆっくりと反応液に注入して、塩素系浸出液を形成した。
a. シリンジポンプを用いて、別のフラスコ内の過マンガン酸カリウム3gに32%塩酸12mLを9mL/時で滴下することにより塩素ガスを発生させた。
b. 中和するために、電子廃棄物反応フラスコからの過剰の塩素ガスを7mMチオ硫酸ナトリウム五水和物溶液50mLに注入することによって逃がした。
3. 7時間後、反応が完了したことが観察され、貴浸出液を別のフラスコにデカントした。
4. 貴浸出液5mLを誘導結合プラズマ質量分析法による総金含有量の分析のために送った(University of Auckland Mass Spectrometry Centre, Auckland, New Zealandにより提供されるサービス)。
【0160】
結果:
分析のために提出された体積に基づいて、総金含有量はmg/Lで報告され、原料から浸出した量を計算するために用いられた(表6)。総金含有量の精度は15~20%のばらつきと推定された。
【0161】
【表6】
【0162】
原料から浸出した金の量は、電子廃棄物の全質量の割合としては比較的少ないが、これは浸出可能な金の量を反映する。0.8%は質量基準で8,000ppmに相当し、これは当業者にとって高濃度である。
【0163】
実施例5:塩素溶液からのバイオソープション
物質および方法:
微生物培養物を無菌状態下で増殖させたが、その後の処理を非滅菌溶液および装置を用いて行った。
【0164】
実施例4に従って、電子廃棄物原料から金を含む塩素系浸出液を調製した。
【0165】
1. 実施例1に従って、クプリアヴィドゥス・メタリドゥランス株CH34、25mLを培養した。
2. 培養物を4,000rcfで12分間遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレット(約0.1g)を0.85%生理食塩水30mLに再懸濁して洗浄した。この遠心分離/洗浄工程を2回繰り返した。
3. 培養物を上記のように再度遠心分離し、上澄みを捨てた。
4. 電子廃棄物原料からの金を有する(約95ppmのAu)塩素系浸出液30mLに空気を45分間穏やかに注入して残留塩素ガスを追い出し、水酸化ナトリウムでpHを4.5~5.0に調整した。そしてこの溶液を用いて工程3からの微生物ペレットを再懸濁した。
5. 金/微生物混合物を室温で22時間培養した。微生物を懸濁状態に保つために、混合物を終始オービタルシェーカーで穏やかに撹拌した。
6. 混合物を工程2に従って遠心分離し、上澄みをデカントし、4℃で保存した。ペレットを水30mLに再懸濁して洗浄し、ステップ2に従って遠心分離した。
7. 上澄みを捨て、ペレットを水2mLに再懸濁した。これを4℃で保存した。
8. 以下の試料を、誘導結合プラズマ質量分析法により総金含有量について分析した(University of Auckland Mass Spectrometry Centre, Auckland, New Zealandにより提供されるサービス):
a. 貧液上澄み(工程6):5mL
b. バイオソープションペレット(工程7):1mL
【0166】
結果:
分析のために提出された体積に基づいて、総金含有量はmg/Lで報告され、生物吸収された量とバイオソープション収率を計算するために用いられた(表7)。総金含有量の精度は15~20%のばらつきと推定された。
【0167】
【表7】
【0168】
貴液は、貧液よりも約2倍多い目的金属を含有していた。
【0169】
これらの結果を用いて、バイオソープションプロセスからの濃縮係数、即ち貴液から湿ったバイオソープションペレットへのAuの濃度の増加を計算した(表8)。これは貴液から乾燥バイオマスへのAuの濃縮係数の約34.5に近い。
【0170】
【表8】
【0171】
実施例6:貧液から含む微生物を分離
物質および方法:
微生物培養物を無菌状態下で増殖させたが、その後の処理を非滅菌溶液および装置を用いて行った。
【0172】
一例として、金/微生物混合物を実施例6に従って調製した。
【0173】
1. 金を含む微生物を貧浸出液から分離するために、試料を遠心分離または濾過によって処理した。
a. 遠心分離:混合物を3,000から8,000rcfで少なくとも10分間遠心分離し、そして貧浸出液上澄みを金を含む微生物ペレットからデカントした。洗浄のために、ペレットを一定量の洗浄液に再懸濁し、続いて別の遠心分離工程で回収した。
b. 濾過:全ての液体が通過するまで数分間、混合物を約20cmHgの真空下で0.45μmのPVDFフィルターにそそいだ。濾液は貧浸出液であり、残渣は金を含む微生物であった。洗浄のために、一定量の洗浄液を残渣に加え、そして真空下で濾過した。金を含む微生物が再懸濁されるまで、一定量の洗浄液を用いて50mLのFalconチューブ内でフィルターを洗浄することによって残留物を回収し、その後フィルターを廃棄した。
【0174】
結果:
遠心分離または濾過の両方は、金を含む微生物から貧浸出液を分離するのに十分に役立つ。
【0175】
実施例7:金/銅溶液からの金の優先的バイオソープション
物質および方法:
微生物培養物を無菌状態下で増殖させたが、その後の処理を非滅菌溶液および装置を用いて行った。
【0176】
1. 実施例1に従って、クプリアヴィドゥス・メタリドゥランス株CH34、120mLを培養した。
2. 培養物を6等分し、4,350rcfで10分間遠心分離し、上澄みを捨て、そしてペレットを0.85%食塩水30mLに再懸濁して洗浄した。この遠心分離/洗浄工程を合計2回繰り返し、最後の洗浄上澄みを捨てた。
3. ペレット(平均0.15gの湿重量)を、元の調整されたpH5.5、0.85%生理食塩水中の325μM(約64ppm)~10μM(約2ppm)の範囲の塩化金酸の2倍塩化金酸段階希釈液30mLに再懸濁した。
4. ペレットを再懸濁する前に、塩化銅も各希釈試料に加えて32.5mM(2,060ppm)の最終濃度にした。
5. 金/銅/微生物混合物を室温で4時間培養した。微生物を懸濁状態に保つために、混合物を終始オービタルシェーカーで穏やかに撹拌した。
6. 混合物を工程2に従って遠心分離し、そして上澄みを捨てた。ペレットを工程2に従って水に再懸濁/洗浄し、そして最後に水1.2mLに再懸濁した(総体積は1.3mLと推定される)。
7. 工程6の各試料の半分(0.65ml)を酸混合物(69%硝酸3mL、1mL)4mL中に分解し、そして誘導結合プラズマ質量分析法(University of Auckland Mass Spectrometry Centre,Auckland,New Zealandにより提供されるサービス)によって総金および銅含有量を分析した。
【0177】
結果:
分析のために提出された体積に基づいて、総金属含有量はmg/Lで報告され、生物吸収された量とバイオソープション収率を計算するために用いられた(表9)。総金含有量の精度は15~20%のばらつきと推定された。
【0178】
【表9】
【0179】
これは、微生物(この場合はC.メタリドゥランス)が金属を選択的に生物吸着することができることを示している。この場合、金は銅よりも非常に選択的に生物吸着された。これにより、分離工程、すなわち金属を含む微生物を貧液から分離することにおいて金属を選択的に分離することができる。この場合、金を含む微生物を銅の大部分を保持している貧液から分離することができる。
【0180】
表9から、金の銅に対する質量比はバイオソープション後に変化することが分かる。例えば、試料「325μM Au」では、金属投入時の金対銅の比は約1:32であり、バイオソープションの後、この比率は金が優勢で約9:1であることがわかる。これにより、質量比が288倍に増加する。サンプル「10μM Au」についても同様に、金対銅の比は1:1,000から1:3に増加し、銅に対して300倍を超える濃縮度である。
【0181】
実施例8:金属を含む微生物の金/銅/ニッケル溶液から金の優先バイオソープションおよび乾燥
物質および方法:
1. (実施例5と同様の方法で生成した)湿ったC.メタリドゥランス・バイオマス84gを、穏やかに攪拌しながら22℃で2.25時間、(実施例4と同様の方法で電子廃棄物を浸出させて生成した)金、銅、およびニッケルを含む浸出液250mLと接触させた。
2. 混合物を遠心分離機ジャー中で4,000rcfで40分間遠心分離し、そして上澄みを取っておいた。ペレットを1.1Lの水中に再懸濁して洗浄し、上記のように遠心分離し、そして洗浄上澄みを取っておいた。
3. ペレット化した金属を含むバイオマスをトレイに広げ、72時間かけて乾燥させ、約22gの乾燥質量を得た。
4. この乾燥バイオマス125mgを粉砕し、王水4mL中で分解し、島津AA-6300(島津製作所、京都、日本)を用いてメーカーの使用説明書に従って原子吸光分析法により金、銅およびニッケルの総含有量について分析した。
【0182】
結果:
総金属含有量はmg/Lで報告され、生物吸着された各金属の量およびバイオソープション収率を計算するために使用した(表10)。総金属含有量の精度は、15~20%のばらつきと推定された。
【0183】
【表10】
*:貴浸出液(250 mL)に含まれる総金属量
【0184】
表10のデータを使用して、浸出液250mLのバイオソープションプロセスおよびその後の乾燥による濃縮係数を、乾燥させた金属を含むバイオマス22グラムを使用して計算した(表11)。
【0185】
【表11】
【0186】
金は濃度が約10倍増加し、銅は濃度がわずか約3倍増加するが、ニッケルは濃度がほぼ同しであることが分かる。
【0187】
実施例9:精錬による微生物からの金属の回収
物質および方法:
(原子吸光分析法により、36,250mg/kg[ppm]の金、1,686mg/kgの銅、および82mg/kgのニッケルを含有すると以前測定された;実施例8参照)金属を含む微生物の試料を有機物を灰化除去し、生物吸着された金属を回収した。
【0188】
1. 乾燥させた金属を含む微生物粉末0.5gを等量の四ホウ酸ナトリウムフラックスと混合し、るつぼに入れた。
2. フラックスが溶解し始めるまで、混合物をメチルアセチレン・プロパジエン・プロパンガストーチで注意深く加熱した。それから炎の強さを徐々に増加させ、有機物をゆっくり焼き飛ばした。
3. るつぼ内に残っている溶融金属残渣を単一の塊に凝固させ、冷却させ、続いて秤量した。
4. 冷却した金属ボタンを王水4mL中で分解し、そして得られた溶液を、島津AA-6300(島津製作所、京都、日本)を用いてメーカーの使用説明書に従って原子吸光分析により金、銅およびニッケルの総含有量について分析した。
【0189】
結果:
精錬後に得られた金属ボタンの質量は20.94mgであった。総金属含有量はmg/Lで報告され、金属収率を計算するために使用された(表10)。総金属含有量の精度は、15~20%のばらつきと推定された。
【0190】
【表12】
【0191】
実施例10:化学的溶解および沈殿による微生物からの金の回収
物質および方法:
実施例9と同様に、塩素系浸出液抽出を用いることにより、金属を含む微生物から生物吸着された金属を回収した。
【0192】
1. 水100mLを反応容器に入れ、45分間塩素ガスを充填した。
2. 乾燥させた金属を含む微生物粉末0.3g(実施例8参照)を浸出液に加え、穏やかに撹拌しながら一晩反応させた。
3. 次に溶液に空気を注入して過剰の塩素を除去し、メタ重亜硫酸ナトリウム0.5gを加えて溶液から金属イオン、例えば金を沈殿させた。
【0193】
結果:
金属を含む微生物粉末の金属含有量は、以前に36,250ppmのAu、1,688ppmのCu、および82ppmのNiであると測定された(実施例8参照)。22℃で24時間放置した後、溶液中に目に見える沈殿物が形成された。これは金粉末であった。
【0194】
全般
読者が過度の実験をすることなく本発明を実施することができるように、本明細書では特定の好ましい実施形態を参照して本発明を説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの構成要素およびパラメータをある程度変形または変更すること、あるいは既知の均等物に置き換えることができることを容易に理解するであろう。このような変更および等価物は、あたかも個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれることが理解されよう。本文書の読者の理解を高めるために表題、見出しなどが提供されており、本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
【0195】
上記および下記に引用した全ての出願、特許および刊行物の全開示は、もしあれば、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0196】
本明細書におけるいかなる先行技術への言及は、その先行技術がアメリカ合衆国または世界のいずれかの国における共通の一般的知識の一部を形成するという承認またはいかなる形態の示唆でもなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0197】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除いて、「含む」、「含んでいる」などの語は、排他的な意味ではなく包括的な意味、即ち「含むが、これに限定されない」で解釈されるべきである。
図1
図2