(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】電気光学ポリマー
(51)【国際特許分類】
G02F 1/061 20060101AFI20221128BHJP
C07D 409/06 20060101ALI20221128BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G02F1/061 501
C07D409/06 CSP
C07D495/04 101
(21)【出願番号】P 2019569174
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003148
(87)【国際公開番号】W WO2019151318
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2018013469
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】大友 明
(72)【発明者】
【氏名】青木 勲
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 千由美
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-501159(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003842(WO,A1)
【文献】特開2012-042899(JP,A)
【文献】特表2005-504170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267606(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107216320(CN,A)
【文献】HE, M. et al.,Synthesis of Chromophores with Extremely High Electro-optic Activity. 1. Thiophene-Bridge-Based Chromophores,CHEMISTRY OF MATERIALS,2002年10月15日,Vol.14,pp.4662-4668
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π電子供与体とπ電子受容体がπ共役ブリッジを介して共役した電気光学分子とベースポリマーを含み、光通信波長帯全域(波長1260nm~1625nm)での、電気光学係数(EO係数)が30pm/V以上であり、かつ、下記数式で定義される性能指数(Figure of Merit:FOM)が10×10
-6cm/dBV以上
であり、
電気光学分子が下記式(1)で表される化合物である、電気光学ポリマー。
【化1】
[式中、
R
D
1a
、R
D
2a
及びR
D
3a
は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R
1
―OH(式中、R
1
は炭化水素基)、―OR
2
―OH(式中、R
2
は炭化水素基)、―OC(=O)R
3
(式中、R
3
は炭化水素基)、アミノ基、―R
4
―NH
2
(式中、R
4
は炭化水素基)、チオール基、―R
5
―SH(式中、R
5
は炭化水素基)、―NCO又は―R
6
―NCO(式中、R
6
は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
R
D
4a
及びR
D
5a
は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R
1
―OH(式中、R
1
は炭化水素基)、―R
4
―NH
2
(式中、R
4
は炭化水素基)、アリール基、―R
5
―SH(式中、R
5
は炭化水素基)又は―R
6
―NCO(式中、R
6
は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
Xは、連結基を示し、
R
A
1a
及びR
A
2a
は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、―R
1
―OH(式中、R
1
は炭化水素基)、―OR
2
―OH(式中、R
2
は炭化水素基)、アミノ基、―R
4
―NH
2
(式中、R
4
は炭化水素基)、チオール基、―R
5
―SH(式中、R
5
は炭化水素基)、―NCO又は―R
6
―NCO(式中、R
6
は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい]
【数1】
【請求項2】
Oバンド(波長1260nm~1360nm)での、EO係数が35pm/V以上であり、かつ、FOMが13×10
-6cm/dBV以上である、請求項1記載の電気光学ポリマー。
【請求項3】
OEバンド(波長1260nm~1460nm)での、EO係数が32pm/V以上であり、かつ、FOMが11×10
-6cm/dBV以上である、請求項1記載の電気光学ポリマー。
【請求項4】
Eバンド(波長1360nm~1460nm)での、EO係数が32pm/V以上であり、かつ、FOMが20×10
-6cm/dBV以上である、請求項1記載の電気光学ポリマー。
【請求項5】
Sバンド(波長1460nm~1530nm)での、EO係数が32pm/V以上であり、かつ、FOMが25×10
-6cm/dBV以上である、請求項1記載の電気光学ポリマー。
【請求項6】
Cバンド(波長1530nm~1565nm)での、EO係数が31pm/V以上であり、かつ、FOMが30×10
-6cm/dBV以上である、請求項1記載の電気光学ポリマー。
【請求項7】
SCLバンド(波長1460nm~1625nm)での、EO係数が30pm/V以上であり、かつ、FOMが20×10
-6cm/dBV以上である、請求項1記載の電気光学ポリマー。
【請求項8】
R
A
1a及びR
A
2aの少なくとも一方が、ハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、及びハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基からなる群から選ばれる置換基である、請求項
1~7のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【請求項9】
R
D
1a
が、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R
1
―OH(式中、R
1
は炭化水素基)、―OR
2
―OH(式中、R
2
は炭化水素基)、―OC(=O)R
3
(式中、R
3
は炭化水素基)、アミノ基、―R
4
―NH
2
(式中、R
4
は炭化水素基)、チオール基、―R
5
―SH(式中、R
5
は炭化水素基)、―NCO又は―R
6
―NCO(式中、R
6
は炭化水素基)を示し、同一又は異なる置換基を有していてもよい、請求項1~7のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【請求項10】
R
D
1a
が、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R
1
―OH(式中、R
1
は炭化水素基)、―OR
2
―OH(式中、R
2
は炭化水素基)、―OC(=O)R
3
(式中、R
3
は炭化水素基)、アミノ基、―R
4
―NH
2
(式中、R
4
は炭化水素基)、チオール基、―R
5
―SH(式中、R
5
は炭化水素基)、―NCO又は―R
6
―NCO(式中、R
6
は炭化水素基)を示し、同一又は異なる置換基を有していてもよい、請求項8記載の電気光学ポリマー。
【請求項11】
R
A
1a
及びR
A
2a
の一方が、ハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、及びハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基からなる群から選ばれる置換基であり、R
A
1a
及びR
A
2a
のもう一方が、アルキル基である、請求項1~10のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【請求項12】
ハロゲン原子の個数が1~5の整数である、請求項
8、10又は11記載の電気光学ポリマー。
【請求項13】
ハロゲン原子が、フッ素、塩素、及び臭素からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項
8及び10~12のいずれか記載の電気光学ポリマー。
【請求項14】
式(1)におけるXが下記式(B-I)で表される、請求項
1~
13のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【化2】
[式中、
π
1及びπ
2はそれぞれ独立して、同一又は異なる炭素-炭素共役π結合を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい;
R
B
1及びR
B
2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ハロアルキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、―R
1―OH(式中、R
1は炭化水素基)、―OR
2―OH(式中、R
2は炭化水素基)、アミノ基、―R
4―NH
2(式中、R
4は炭化水素基)、チオール基、―R
5―SH(式中、R
5は炭化水素基)、―NCO又は―R
6―NCO(式中、R
6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、R
B
1及びR
B
2は結合する2つの炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい]
【請求項15】
電気光学分子が、式(1)におけるR
D
4a及び/又はR
D
5aを介して、ベースポリマーに結合してなる、請求項
1~
14のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【請求項16】
光制御デバイス用である、請求項1~
15のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【請求項17】
光制御デバイスが、光変調器、光スイッチ、光トランシーバー、光フェーズドアレイ、LiDAR(Light and Detection and Ranging)、電界センサー、又はテラヘルツ発生・検出装置である、請求項16記載の電気光学ポリマー。
【請求項18】
R
A
1a及びR
A
2aの組み合わせが、R
A
1a
がアルキルであり、R
A
2a
がハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、シクロアルキル基を有するアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基である、請求項
1~17のいずれかに記載の電気光学ポリマ
ー。
【請求項19】
請求項1
~18のいずれかに記載の電気光学ポリマーを成形してなる光学素子。
【請求項20】
請求項19記載の光学素子を含む、光制御デバイス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学ポリマーとして有用なポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器、光スイッチ、光インターコネクト、光電子回路、波長変換、電界センサー、THz波発生及び検出、光フェーズドアレイ等の光制御素子(光学素子)に適用できる電気光学(EO)材料としては、従来、無機強誘電体材料が使用されてきた。しかしながら、無機強誘電体材料は、高速性と小型化・集積化において限界があり、次世代の超高速光通信実現のためには、高速動作可能で、かつ、シリコンフォトニクスとハイブリッド可能な材料が必要とされている。
【0003】
有機電気光学ポリマー(有機EOポリマー)は、無機強誘電体材料に比べて大きな電気光学効果を示し、高速動作が可能であることと、シリコンフォトニクスとのハイブリッドにより小型化・集積化が可能であることから、次世代の光通信を担う材料として期待されている。これまでは、長距離光通信で使用されるCバンド(波長1530nm~1565nm)での応用を目的に、EO係数の高いEO分子の開発が行われてきた。
【0004】
EO分子の基本構造は、ドナー/π共役ブリッジ/アクセプター構造であり、EO係数を高くするためには、電子供与性の強いドナー、電子吸引性の強いアクセプターを用い、π共役ブリッジの長さを長くすることが知られている。かかる構造を有するEO分子としては、これまで種々の構造のものが既に知られている(例えば、特許文献1~4、非特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献5では、EO分子に結合させるポリマーに、特定のモノマーを特定の比率で用いることでEO効果の長期安定性に優れることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US6067186A
【文献】特表2004-501159号公報
【文献】特許第5376359号
【文献】特許第5945905号
【文献】特許第6137694号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chem. Mater. 2002, 14, 4662-4668
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、近年は中短距離の光インターコネクトの高速化が求められており、EOポリマーの更なる開発が期待されている。例えば、中短距離の光インターコネクトではOバンド(波長1260nm~1360nm)が使用されるが、Cバンド用のEO分子を用いたEOポリマーの場合にはOバンドでの吸収係数が高いため適用できず、吸収係数が低いもので、かつ、EO係数が十分高いEO分子を用いたEOポリマーが求められていた。
【0009】
また、光通信システムでは、通信容量を拡大するためにCバンドやOバンドなどの特定の波長帯域で複数の波長に信号を分割して通信する波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)通信が用いられている。このため、光変調器はWDMで用いられる特定の波長帯全域での使用が想定され、種々のバンドに対応するものが求められる。
【0010】
本発明は、新規な電気光学ポリマーに関する。また、本発明は、Oバンドを含む所望の光通信波長帯域で有用な電気光学ポリマーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来のEO係数が高いEO分子は、EO係数が高くなると共に吸収スペクトルが長波長側にシフトするものであった。一方、これまで、吸収スペクトルの測定は、通常、厚さ数100nmの薄膜を試料に用いて行われており、このようなスペクトル測定では800nm付近をピークに1100nm以上では吸収がほとんどゼロであり、よって、かかるEO分子は、CバンドやOバンド等の通信波長帯では吸収の問題はないものと考えられてきた。
【0012】
ところが、EO材料のデバイス応用では、導波路構造として数cmの距離を光伝播させる必要があるため、吸収係数は3dB/cm程度以下(好ましくは1dB/cm以下)とすることが求められる。しかし、3dB/cmの吸収係数を有する材料の1μm膜厚の光学濃度(OD)は0.00003程度であり、これは高性能な分光光度計でも測定限界以下となり、評価できないほど小さい。一方、膜厚を厚くすればよいが、EOポリマー材料の厚膜作製は難しく、特殊な方法を用いても数100μmが限界である。仮に、200μmの膜厚が得られたとしてもOD=0.006であり、反射損失0.035よりも小さく正確な評価は困難であると考えられる。このため、これまで吸収係数について詳細な比較検討がなされておらず、EO係数の高さだけが注目されてきた。
【0013】
今回、本発明者らが検討したところ、Cバンド用に開発されてきたEO係数の高いEOポリマー材料の吸収係数は、Cバンドでは3dB/cm前後であり大きな問題はないものの、Oバンドでは20dB/cm以上と高く問題があり、一方、Oバンドで3dB/cm以下の吸収係数を示すポリマーでは、EO係数が30pm/V未満と低く十分ではないことが判明した。
【0014】
そこで、本発明者らが、吸収係数とEO係数の両者に着目して鋭意検討した結果、所望の光通信波長帯域に関して算出される、EO係数と、吸収係数を用いて特定の関係式で定義される性能指数(Figure of Merit:FOM)とがそれぞれ特定の値を満足する場合に、当該電気光学ポリマーが前記波長帯域に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記[1]~[20]に関する。
[1] π電子供与体とπ電子受容体がπ共役ブリッジを介して共役した電気光学分子とベースポリマーを含み、光通信波長帯全域(波長1260nm~1625nm)での、電気光学係数(EO係数)が30pm/V以上であり、かつ、下記数式で定義される性能指数(Figure of Merit:FOM)が10×10-6cm/dBV以上である、電気光学ポリマー。
【0016】
【0017】
[2] Oバンド(波長1260nm~1360nm)での、EO係数が35pm/V以上であり、かつ、FOMが13×10-6cm/dBV以上である、前記[1]記載の電気光学ポリマー。
[3] OEバンド(波長1260nm~1460nm)での、EO係数が32pm/V以上であり、かつ、FOMが11×10-6cm/dBV以上である、前記[1]記載の電気光学ポリマー。
[4] Eバンド(波長1360nm~1460nm)での、EO係数が32pm/V以上であり、かつ、FOMが20×10-6cm/dBV以上である、前記[1]記載の電気光学ポリマー。
[5] Sバンド(波長1460nm~1530nm)での、EO係数が32pm/V以上であり、かつ、FOMが25×10-6cm/dBV以上である、前記[1]記載の電気光学ポリマー。
[6] Cバンド(波長1530nm~1565nm)での、EO係数が31pm/V以上であり、かつ、FOMが30×10-6cm/dBV以上である、前記[1]記載の電気光学ポリマー。
[7] SCLバンド(波長1460nm~1625nm)での、EO係数が30pm/V以上であり、かつ、FOMが20×10-6cm/dBV以上である、前記[1]記載の電気光学ポリマー。
[8] 電気光学分子が下記式(1)で表される化合物である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【0018】
【0019】
[式中、
RD
1a、RD
2a及びRD
3aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
RD
4a及びRD
5aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、アリール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
Xは、連結基を示し、
RA
1a及びRA
2aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい]
[9] RA
1a及びRA
2aの少なくとも一方が、ハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、及びハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基からなる群から選ばれる置換基である、前記[8]記載の電気光学ポリマー。
[10] ハロゲン原子の個数が1~5の整数である、前記[9]記載の電気光学ポリマー。
[11] ハロゲン原子が、フッ素、塩素、及び臭素からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、前記[9]又は[10]記載の電気光学ポリマー。
[12] 式(1)におけるXが下記式(B-I)で表される、前記[8]~[11]のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
【0020】
【0021】
[式中、
π1及びπ2はそれぞれ独立して、同一又は異なる炭素-炭素共役π結合を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい;
RB
1及びRB
2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ハロアルキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、RB
1及びRB
2は結合する2つの炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい]
[13] 電気光学分子が、式(1)におけるRD
4a及び/又はRD
5aを介して、ベースポリマーに結合してなる、前記[8]~[12]のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
[14] 下記式(1)で表される化合物。
【0022】
【0023】
[式中、
RD
1a、RD
2a及びRD
3aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
RD
4a及びRD
5aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、アリール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
Xは、下記式(B-I)で示され、
【0024】
【0025】
(式(B-I)中、π1及びπ2はそれぞれ独立して、同一又は異なる炭素-炭素共役π結合を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい;
RB
1及びRB
2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ハロアルキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、RB
1及びRB
2は結合する2つの炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい)
RA
1a及びRA
2aは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、ハロアリール基、又はハロアルキル基を有するアリール基を示す]
[15] 下記式(1)で表される化合物を含む、電気光学ポリマーの性能指数改善材。
【0026】
【0027】
[式中、
RD
1a、RD
2a及びRD
3aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
RD
4a及びRD
5aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、アリール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
Xは、連結基を示し、
RA
1a及びRA
2aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい]
[16] 光制御デバイス用である、前記[1]~[13]のいずれかに記載の電気光学ポリマー。
[17] 光制御デバイスが、光変調器、光スイッチ、光トランシーバー、光フェーズドアレイ、LiDAR(Light and Detection and Ranging)、電界センサー、又はテラヘルツ発生・検出装置である、前記[16]記載の電気光学ポリマー。
[18] RA
1a及びRA
2aの組み合わせが、RA
1がアルキルであり、RA
2がハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、シクロアルキル基を有するアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基である、前記[8]~[17]のいずれかに記載の電気光学ポリマー、化合物および性能指数改善材。
[19] 前記[1]~[13]、[16]、[17]、[18]のいずれかに記載の電気光学ポリマーを成形してなる光学素子。
[20] 前記[19]記載の光学素子を含む、光制御デバイス装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電気光学ポリマーは、光通信波長帯全域に適用可能であり、光変調器等の導波路デバイスに最適なEOポリマーとして提供することができ、ひいては、データ通信の超高速化・低消費電力化に貢献することができるという優れた効果を奏する。
【0029】
また、光制御デバイスの集積化により超高速の光フェーズドアレイが作製可能になり、これを応用したレーザーレーダーの小型化・高速化・高精細化により自動車やロボットの完全自動運転の実現にも貢献することができる。
【0030】
また、本発明のEOポリマーは2次の非線形光学材料でもあることから、小型・高効率のテラヘルツ発生・検出装置においても、外環境での使用が可能な装置の作製が可能になるという優れた効果も奏する。
【0031】
またさらに、デジタルコヒーレント通信においては、偏波多重を実現するために変調器を多段に構成する必要があるが、本発明のEOポリマーは従来のものに比べて性能指数が高く有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、光通信波長帯全域での吸収係数を測定した結果を示す図である。
【
図2】
図2は、光通信波長帯全域での屈折率を測定値に基づいて算出した結果を示す図である。
【
図3】
図3は、光通信波長帯全域でのEO係数を測定値に基づいて算出した結果を示す図である。
【
図4】
図4は、光通信波長帯全域でのFOMを算出した結果を示す図である。
【
図5】
図5は、OバンドでのEO係数を測定値に基づいて算出した結果を示す図である。
【
図6】
図6は、OバンドでのFOMを算出した結果を示す図である。
【
図7】
図7は、OEバンドでのFOMを算出した結果を示す図である。
【
図8】
図8は、EバンドでのFOMを算出した結果を示す図である。
【
図9】
図9は、SバンドでのFOMを算出した結果を示す図である。
【
図10】
図10は、CバンドでのFOMを算出した結果を示す図である。
【
図11】
図11は、SCLバンドでのFOMを算出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の電気光学ポリマー(EOポリマー)は、π電子供与体とπ電子受容体がπ共役ブリッジを介して共役した電気光学分子とベースポリマーを含み、所望の光通信波長帯域での電気光学係数(EO係数)と、下記数式で定義される性能指数(Figure of Merit:FOM)が特定の値を充足することを特徴とする。なお、ここでいうEO係数とFOMは、いずれも当該波長帯域での最小値のことである。
【0034】
【0035】
従来のEOポリマーでは、例えば、Oバンド(波長1260nm~1360nm)において、EO係数が高い分子を用いたとしても吸収係数が3dB/cm以上と高かったり、吸収係数が3dB/cm未満のポリマーであってもEO係数が30pm/V未満と低かったりして、異なる波長帯域など光通信波長帯全域での適用が困難であった。しかし、本願発明のEOポリマーは所望する波長帯域に関してEO係数と前記式により算出されるFOMが特定の条件を充足して、所望の光通信波長帯域での適用が可能になる。一般に、EO位相変調器における位相変化量は、装置のデバイス長に比例するが、このデバイス長はユーザー側が許容できる伝搬ロス(吸収ロス+散乱ロス)に基づくことから、本願発明では、材料に依存せずに、EOポリマーの性能指数を評価するために、前記したFOMの算出式を用いるものである。例えば、WDMに使用する光変調器では、WDM波長帯全域にわたって機能する必要があるため、使用する波長帯での吸収係数の最大値amaxに基づいてデバイス長が決定されることから、FOMの算出にはamaxを用いる。
【0036】
よって、かかる算出に基づくFOMとEO係数で、本願発明のEOポリマーを定義することができる。具体的には、光通信波長帯全域(波長1260nm~1625nm)を対象とする場合、本発明のEOポリマーは、EO係数が30pm/V以上、好ましくは35pm/V以上であり、かつ、FOMが10×10-6cm/dBV以上、好ましくは15×10-6cm/dBV以上である。
【0037】
また、本発明のEOポリマーの好適態様としては、例えば、Oバンド(波長1260nm~1360nm)における電気光学係数(EO係数)が35pm/V以上、好ましくは40pm/V以上であり、かつ、前記OバンドでのFOMが13×10-6cm/dBV以上、好ましくは15×10-6cm/dBV以上である態様が挙げられる。
【0038】
また、別の好適態様としては、例えば、OEバンド(波長1260nm~1460nm)における電気光学係数(EO係数)が32pm/V以上、好ましくは40pm/V以上であり、かつ、前記OEバンドでのFOMが11×10-6cm/dBV以上、好ましくは20×10-6cm/dBV以上である態様が挙げられる。
【0039】
また、別の好適態様としては、例えば、Eバンド(波長1360nm~1460nm)における電気光学係数(EO係数)が32pm/V以上、好ましくは40pm/V以上であり、かつ、前記EバンドでのFOMが20×10-6cm/dBV以上、好ましくは25×10-6cm/dBV以上である態様が挙げられる。
【0040】
また、別の好適態様としては、例えば、Sバンド(波長1460nm~1530nm)における電気光学係数(EO係数)が32pm/V以上、好ましくは40pm/V以上であり、かつ、前記SバンドでのFOMが25×10-6cm/dBV以上、好ましくは30×10-6cm/dBV以上である態様が挙げられる。
【0041】
また、別の好適態様としては、例えば、Cバンド(波長1530nm~1565nm)における電気光学係数(EO係数)が31pm/V以上、好ましくは35pm/V以上であり、かつ、前記CバンドでのFOMが30×10-6cm/dBV以上、好ましくは35×10-6cm/dBV以上である態様が挙げられる。
【0042】
また、別の好適態様としては、例えば、SCLバンド(波長1460nm~1625nm)における電気光学係数(EO係数)が30pm/V以上、好ましくは35pm/V以上であり、かつ、前記SCLバンドでのFOMが20×10-6cm/dBV以上、好ましくは25×10-6cm/dBV以上である態様が挙げられる。
【0043】
次に、本発明のEOポリマーの具体的な構成を記載する。なお、本発明のEOポリマーは、電気光学分子とベースポリマーを含むものであるが、電気光学分子がベースポリマーに分散する態様と結合する態様のいずれも含むものである。
【0044】
[電気光学分子(EO分子)]
本発明におけるEO分子は、π電子供与体(ドナー構造部:D)とπ電子受容体(アクセプター構造部:A)がπ共役ブリッジ(ブリッジ構造部:B)を介して共役したものであり、EOポリマー中に配合された際に、前記関係式を満たすものであればよい。
【0045】
ドナー構造部Dとしては、例えば、下記式(D-1)で表される構造等が挙げられる。
【0046】
【0047】
[式中、RD
1、RD
2及びRD
3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
RD
4及びRD
5は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、アリール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい]
【0048】
なお、上記式(D-1)で表される構造において、ベンゼン環における置換基のうち、―RD
1、―RD
2、―RD
3及び―NRD
4RD
5以外の残りの一つは、水素原子である。
【0049】
ブリッジ構造部Bとしては、共役系を形成しているものであれば特に限定はなく、例えば、後述の式(B-I)や式(B-IV)で表される基が挙げられる。
【0050】
アクセプター構造部Aとしては、例えば、下記式(A-1)で表される構造等が挙げられる。
【0051】
【0052】
[式中、RA
1及びRA
2は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
Yは、-CRA
1RA
2-、-O-、-S-、-SO-、-SiRA
1RA
2-、-NRA
1-又は-C(=CH2)-を示す]
【0053】
本発明におけるEO分子としては、前記ドナー構造部Dとブリッジ構造部Bとアクセプター構造部Aを有するものを制限されずに挙げることができるが、少なくとも前記アクセプター構造部Aを有するものが好ましい。具体的には、例えば、下記式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0054】
【0055】
[式中、
RD
1a、RD
2a及びRD
3aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
RD
4a及びRD
5aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、アリール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、
Xは、連結基を示し、
RA
1a及びRA
2aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい]
【0056】
式(1)におけるRD
1a、RD
2a及びRD
3aは、式(D-1)におけるRD
1、RD
2及びRD
3と同様に、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示す。但し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい。
【0057】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルキル基としては、例えば、C1~20の直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。好ましくは、C1~6のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0058】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルコキシ基としては、酸素原子に上記「アルキル基」が1個置換したアルキルオキシ基であり、例えば、C1~20の直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。好ましくは、C1~6のアルコキシ基が挙げられ、より好ましくは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0059】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアリールオキシ基としては、酸素原子にC6~20のアリール基であって、単環式又は縮合多環式のものが1個置換した基が挙げられる。ここで、「単環式アリール基(単環式芳香族炭化水素基)」としては、炭素数が好ましくは5~10個、より好ましくは5~7個、さらに好ましくは5~6個、さらに好ましくは6個のアリール基が挙げられる。ここで、例えば、炭素数が5~10個のアリール基とは、環を形成する炭素原子が5~10個であることを意味し、例えば、炭素数6個のアリール基とはフェニル基のことである。また、「多環式アリール基(多環式芳香族炭化水素基)」としては、例えば、二環が縮合したアリール基及び三環が縮合したアリール基等が挙げられる。二環が縮合したアリール基としては、例えば、炭素数が好ましくは8~12個、より好ましくは9~10個、さらに好ましくは10個のアリール基が挙げられ、炭素数10個の多環式アリール基とはナフチル基のことである。前記アリールオキシ基としては、好ましくは、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられ、より好ましくは、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0060】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアラルキルオキシ基としては、少なくとも1つの「単環式又は多環式アリール基」で置換された上記「アルコキシ基」が挙げられる。具体的には、例えば、ベンジルオキシ基、1-フェニルエチルオキシ基、フェネチルオキシ基、1-ナフチルメチルオキシ基、2-ナフチルメチルオキシ基、1-ナフチルエチルオキシ基、2-ナフチルエチルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるシリルオキシ基としては、例えば、tert-ブチルジフェニルシロキシ基、tert-ブチルジメチルシロキシ基等が挙げられる。
【0062】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルケニルオキシ基としては、酸素原子に「アルケニル基」が1個置換した基である。ここで、「アルケニル基」としては、C2~20の直鎖又は分枝鎖の、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む炭化水素であり、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペン-1-イル基、2-メチルアリル基、ブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、パルミトレイル基、オレイノイル基、リノレイル基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基としては、好ましくはC2~6のアルケニルオキシ基であり、より好ましくは、例えば、エテニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-プロペニルオキシ基、1-メチルエテニルオキシ基、1-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、1-メチル-1-プロペニルオキシ基、1-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-メチル-1-プロペニルオキシ基、2-メチル-2-プロペニルオキシ基等が挙げられる。
【0063】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルキニルオキシ基としては、酸素原子に「アルキニル基」が1個置換した基である。ここで、「アルキニル基」としては、C2~20の直鎖又は分枝鎖の、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む炭化水素であり、具体的には、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基等が挙げられる。前記アルキニルオキシ基としては、好ましくはC3~6のアルキニルオキシ基であり、より好ましくは、例えば、2-プロピニルオキシ基、1-メチル-2-プロピニルオキシ基、1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、3-ブチニルオキシ基、1-ペンチニルオキシ基、2-ペンチニルオキシ基、3-ペンチニルオキシ基、4-ペンチニルオキシ基等が挙げられる。
【0064】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおける、―R1―OH、―OR2―OH、―R4―NH2、―R5―SH、―R6―NCOにおいて、R1、R2、R4、R5及びR6の炭化水素基としては、例えば、脂肪族基{例えば、アルキレン基[例えば、C1-10アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等)、好ましくは、C1-4アルキレン基等]}、芳香族基[例えば、C6-20芳香族基(例えば、フェニレン基、ベンジレン基等)等]等が挙げられる。中でも、C1-10アルキレン基、C6-20芳香族基が好ましい。
【0065】
具体的な―R1―OHとしては、例えば、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシC1-10アルキル基等)、ヒドロキシアリール基(例えば、ヒドロキシフェニル基などのヒドロキシC6-10アリール基)、ヒドロキシアラルキル基(例えば、ヒドロキシベンジル基などのヒドロキシC6-10アリールC1-4アルキル基)等が挙げられる。
【0066】
具体的な―OR2―OHとしては、例えば、ヒドロキシアルコキシ基(例えば、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ヒドロキシブトキシ基等のヒドロキシC1-10アルコキシ基等)、ヒドロキシアリールオキシ基(例えば、ヒドロキシフェノキシ基などのヒドロキシC6-10アリールオキシ基)、ヒドロキシアラルキルオキシ基(例えば、ヒドロキシベンジルオキシ基などのヒドロキシC6-10アリールC1-4アルキルオキシ基)等が挙げられる。
【0067】
具体的な―R4―NH2としては、例えば、アミノアルキル基(例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等のアミノC1-10アルキル基等)等が挙げられる。
【0068】
具体的な―R5―SHとしては、例えば、メルカプトアルキル基(例えば、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、メルカプトブチル基等のメルカプトC1-10アルキル基等)等が挙げられる。
【0069】
具体的な―R6―NCOとしては、例えば、イソシアナトアルキル基(例えば、イソシアナトメチル基、イソシアナトエチル基、イソシアナトプロピル基、イソシアナトブチル基等のイソシアナトC1-10アルキル基等)等が挙げられる。
【0070】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおける―OC(=O)R3において、R3の炭化水素基としては、例えば、脂肪族基[例えば、C1-10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、C2-10アルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等)、好ましくは、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基等]、脂環族基[例えば、C3-12シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、好ましくは、C3-7シクロアルキル基等]、芳香族基{例えば、C6-20芳香族基[例えば、C6-20アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等)、C7-20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)等]}等が挙げられる。中でも、脂肪族基が好ましく、C2-10アルケニル基がより好ましい。
【0071】
RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおいて、RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aのうちのいずれか一つが、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は、炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は、炭化水素基)、―OC(=O)R3(式中、R3は、炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は、炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は、炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は、炭化水素基)であることが好ましい。
【0072】
式(1)におけるRD
4a及びRD
5aは、式(D-1)におけるRD
4及びRD
5と同様に、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アシルオキシアルキル基、シリルオキシアルキル基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、アリール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示す。但し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい。
【0073】
RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアルキル基としては、上記RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルキル基と同様のものが挙げられる。好ましくは、C1~6アルキル基等が挙げられる。より好ましくは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0074】
RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるハロアルキル基としては、例えば、少なくとも1つの同一又は異なるハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換された上記「アルキル基」が挙げられる。当該ハロアルキル基としては、好ましくは、ハロC1~6アルキル基等が挙げられ、より好ましくは、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、1,2-ジクロロエチル基、ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、1-ブロモプロピル基、2-ブロモプロピル基、3-ブロモプロピル基、ヨードメチル基等が挙げられる。
【0075】
RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおいて、アシルオキシアルキル基としては、例えば、少なくとも1つの同一又は異なるアシルオキシ基で置換された直鎖状または分枝鎖状のC1~20アルキル基等が挙げられる。
【0076】
RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおいて、シリルオキシアルキル基としては、例えば、少なくとも1つのシリルオキシ基で置換された直鎖状または分枝鎖状のC1~20アルキル基等が挙げられる。
【0077】
RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおいて、アリール基としては、例えば、単環式アリール基又は多環式アリール基等が挙げられる。
【0078】
RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおいて、―R1―OH、―R4―NH2、―R5―SH及び―R6―NCOにおける炭化水素基としては、前記した炭化水素基であれば特に制限はない。具体的には、上記RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおける―R1―OH、―R4―NH2、―R5―SH及び―R6―NCOと同様のものであればよく、例えば、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシC1-10アルキル基等)、ヒドロキシアリール基(例えば、ヒドロキシフェニル基などのヒドロキシC6-10アリール基)、ヒドロキシアラルキル基(例えば、ヒドロキシベンジル基などのヒドロキシC6-10アリールC1-4アルキル基)などが挙げられる。
【0079】
本発明におけるπ電子供与体は、例えば、前記した置換基を有することで構成することができる。また、前記RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a、RD
3又はRD
3a、RD
4又はRD
4a及び/又はRD
5又はRD
5aを介して、本願発明におけるEO分子がベースポリマーに結合することも可能となる。
【0080】
式(1)におけるXは連結基を示して、本発明におけるπ共役ブリッジを構成する。
【0081】
連結基としては、公知のπ共役ブリッジであれば特に限定はなく、例えば、下記式(B-I)で表される基が挙げられる。
【0082】
【0083】
[式中、
π1及びπ2はそれぞれ独立して、同一又は異なる炭素-炭素共役π結合を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい;
RB
1及びRB
2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ハロアルキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、RB
1及びRB
2は結合する2つの炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい]
【0084】
式(B-I)におけるπ1及びπ2としては、例えば、下記式(B-IV)で表される構造等が挙げられる。
【0085】
【0086】
(ここで、nは1~5の整数を示す)
【0087】
式(B-I)におけるRB
1及びRB
2は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ハロアルキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示す。但し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよく、RB
1及びRB
2は結合する2つの炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。前記RB
1及びRB
2は、いずれか一つ又は双方を介して、ベースポリマーとEO分子を結合することができる。
【0088】
RB
1及びRB
2におけるアルキル基としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアルキル基として例示した上記アルキル基等が挙げられる。当該アルキル基としては、好ましくは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられる。また、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基などの炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0089】
RB
1及びRB
2におけるアルコキシ基としては、例えば、RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルコキシ基として例示した上記アルコキシ基等が挙げられる。当該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基等が挙げられる。
【0090】
RB
1及びRB
2におけるアリール基としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアリール基として例示した上記アリール基等が挙げられる。当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基等が挙げられる。
【0091】
RB
1及びRB
2におけるアルケニル基としては、例えば、RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルケニルオキシ基の項で例示した上記アルケニル基が挙げられる。当該アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0092】
RB
1及びRB
2におけるシクロアルキル基としては、例えば、C3~15の単環式又は多環式の飽和脂肪族環基等が挙げられる。当該シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられ、より好ましくは、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0093】
RB
1及びRB
2におけるシクロアルケニル基としては、例えば、C3~15の単環式又は多環式の不飽和脂肪族環基等が挙げられる。当該シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプタジエニル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられる。
【0094】
RB
1及びRB
2におけるハロアルキル基としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるハロアルキル基として例示したハロアルキル基等が挙げられる。当該ハロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、クロロメチル、2-クロロエチル基、1,2-ジクロロエチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基等が挙げられ、好ましくは、例えば、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0095】
RB
1及びRB
2におけるアラルキル基としては、例えば、少なくとも1つのアリール基で置換されたアルキル基等が挙げられる。当該アリール基としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアリール基として例示した上記アリール基等が挙げられる。当該「アルキル基」としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアルキル基として例示した上記アルキル基等が挙げられる。当該アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等が挙げられ、好ましくは、ベンジル基等が挙げられる。
【0096】
RB
1及びRB
2におけるアリールオキシ基としては、例えば、RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアリールオキシ基として例示した上記アリールオキシ基等が挙げられる。当該アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられ、好ましくはフェノキシ基等が挙げられる。
【0097】
RB
1及びRB
2におけるアラルキルオキシ基としては、例えば、RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアラルキルオキシ基として例示した上記アラルキルオキシ基等が挙げられる。当該アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、1-ナフチルメトキシ基、2-ナフチルメトキシ基等が挙げられ、好ましくは、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0098】
RB
1及びRB
2において、―R1―OH、―OR2―OH、―R4―NH2、―R5―SH及び―R6―NCOにおける炭化水素基としては、前記した炭化水素基であれば特に制限はない。具体的には、上記RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおける―R1―OH、―R4―NH2、―R5―SH及び―R6―NCOと同様のものであればよく、例えば、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシC1-10アルキル基等)、ヒドロキシアルコキシ基(例えば、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ヒドロキシブトキシ基等のヒドロキシC1-10アルコキシ基等)などが挙げられる。
【0099】
また、式(B-I)のRB
1及びRB
2におけるR1、R2、R4、R5及びR6の炭化水素基としては、上記式(1)におけるR1、R2、R4、R5及びR6の炭化水素基として例示した上記炭化水素基等が挙げられる。
【0100】
式(B-I)において、RB
1及びRB
2が形成していてもよい環としては、特に限定されないが、例えば、
【0101】
【0102】
で表される構造等が挙げられる。
【0103】
式(1)におけるRA
1a及びRA
2aは、式(A-1)におけるRA
1及びRA
2と同様に、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、―R1―OH(式中、R1は炭化水素基)、―OR2―OH(式中、R2は炭化水素基)、アミノ基、―R4―NH2(式中、R4は炭化水素基)、チオール基、―R5―SH(式中、R5は炭化水素基)、―NCO又は―R6―NCO(式中、R6は炭化水素基)を示す。但し、それぞれ同一又は異なる置換基を有していてもよい。前記RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aは、いずれか一つ又は双方を介して、ベースポリマーとEO分子を結合することができる。
【0104】
RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aにおいて、アルキル基としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアルキル基として例示した上記アルキル基等が挙げられる。
【0105】
RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aにおいて、アルケニル基としては、例えば、RB
1及びRB
2におけるアルケニル基として例示した上記アルケニル基等が挙げられる。
【0106】
シクロアルキル基としては、例えば、例えば、RB
1及びRB
2におけるシクロアルキル基として例示した上記シクロアルキル基等が挙げられる。
【0107】
シクロアルケニル基としては、例えば、RB
1及びRB
2におけるシクロアルケニル基として例示した上記シクロアルケニル基等が挙げられる。
【0108】
アルコキシ基としては、例えば、RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるアルコキシ基として例示した上記アルコキシ基等が挙げられる。
【0109】
アリール基としては、例えば、RD
4又はRD
4a及びRD
5又はRD
5aにおけるアリール基として例示した上記アリール基等が挙げられる。
【0110】
また、RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aにおけるR1、R2、R4、R5及びR6の炭化水素基としては、上記RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a及びRD
3又はRD
3aにおけるR1、R2、R4、R5及びR6の炭化水素基として例示した上記炭化水素基等が挙げられる。
【0111】
上記RD
1又はRD
1a、RD
2又はRD
2a、RD
3又はRD
3a、RD
4又はRD
4a、RD
5又はRD
5a、RB
1、RB
2、RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aにおいて、有していてもよい「置換基」としては、例えば、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキシラニル基、メルカプト基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基、ニトロ基、シアノ基、アミジノ基、イミノ基、ジヒドロボロノ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等)、スルフィニル基、スルホニル基、アシル基、オキソ基、チオキソ基等が挙げられる。当該置換基は、1つの置換基であってもよいし、同一又は異なる2以上の置換基であってもよい。
【0112】
なかでも、上記RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aにおいて有していてもよい「置換基」としては、ハロゲン原子又はアリール基が好ましく、その個数としては、1~5個が挙げられる。
【0113】
また、上記RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aにおけるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素、塩素、及び臭素からなる群より選ばれる1種又は2種以上のハロゲン原子が好ましい。
【0114】
RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aの好適な態様としては、その少なくとも一方が、ハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、シクロアルキル基を有するアリール基及びハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基である場合が挙げられる。具体的には、例えば、RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aの少なくとも一方が、フロロクロロフェニル基、トリフルオロメチルクロロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、ビフェニル基である場合が挙げられる。また、上記RA
1又はRA
1a及びRA
2又はRA
2aの具体的な組み合わせとしては、例えば、RA
1がアルキル基である場合、RA
2がハロゲン原子を有するアリール基、ハロアルキル基を有するアリール基、シクロアルキル基を有するアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアリール基を有するアリール基である場合が挙げられる。なお、前記において、アリール基が置換基を有する位置は特に限定されず、オルト位、パラ位、メタ位のいずれであってもよい。
【0115】
本発明におけるπ電子受容体は、例えば、前記した置換基を有することで構成することができる。具体的には、以下に表される構造等が挙げられる。よって、本発明におけるEO分子としては、以下に表されるアクセプター構造部を有するものが例示される。
【0116】
【0117】
EO分子は、市販品を使用しても、自体公知の方法によって製造したものを使用してもよい。製造方法としては、例えば、Ann., 580, 44 (1953)、Angew.Chem., 92, 671 (1980)、Chem. Ber., 95, 581 (1962)、Macromolecules, 2001, 34, 253、Chem. Mater., 2007, 19, 1154、Org. Synth., VI, 901 (1980)、Chem. Mater., 2002, 14, 2393、J. Mater. Sci., 39, 2335 (2004)、“Preparative Organic Chemistry”, John Wiley (1975), p.217、J. Org. Chem., 42, 353 (1977)、J. Org. Chem., 33, 3382 (1968)、Synthesis, 1981, 165、WO2011/024774号公報等に記載された方法及びそれらの方法を適宜改良した方法、それらの方法を組み合わせた方法等、種々の方法を用いることができる。
【0118】
かくして得られたEO分子は、ベースポリマーに混合することで得られるEOポリマーの性能指数を向上することができることから、電気光学ポリマーの性能指数改善材としても用いることができる。
【0119】
EOポリマーにおけるEO分子の含有量は、電気光学係数の観点から、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、EO分子の会合の観点から、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。なお、後述の実施例において、EOポリマーを評価する際に、EO分子の含有量が30重量%時の材料についてEO係数とFOMを算出しているが、これは指標として便宜上30重量%に設定したのであって、実際のポリマーではEO分子の含有量はこの限りではない。
【0120】
[ベースポリマー]
本発明におけるベースポリマーとしては、ポリオール{例えば、ジオール[例えば、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコールなどのC2-10アルキレングリコール)、芳香族ジオール(例えば、レゾルシノールなどのジヒドロキシアレーン、ビスフェノールAなど)など]、トリオール[例えば、脂肪族トリオール(グリセロール、トリメチロールプロパンなど)など]、テトラオール[例えば、脂肪族テトラオール(例えば、ペンタエリスリトール)など]など}、ポリチオール{例えば、ジチオール[例えば、脂肪族ジチオール(エタンジチオールなど)など]、テトラチオール[例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)など]など}、ポリアミン{例えば、ジアミン[例えば、脂肪族ジアミン(例えば、エチレンジアミン、ブタン-1,4-ジアミンなどのC2-10アルカンジアミン)など]など}などの官能基(ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基など)を有する化合物を含んでいてもよい。また、ポリウレタン、アクリル系ポリマー(例えば、イソ(チオ)シアナト基を含有してもよい(メタ)アクリレートを含むポリマーなど)、ビニルポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキルシロキサン、エポキシ樹脂などの光学グレードのポリマー材料を用いることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0121】
EOポリマーにおけるベースポリマーの含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは40重量%以上、より好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、他の成分を配合する観点から、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0122】
また、本発明のEOポリマーは、前記以外の他の成分として、重合開始剤、重合促進剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他のEOポリマー組成物を含有することも可能である。
【0123】
本発明のEOポリマーは、前記ベースポリマー及びEO分子、さらに必要により各種成分を含有する原料を公知の混練機を用いて混合して調製することができる。必要により、得られた混合物を乾燥して粉末化してもよい。
【0124】
本発明のEOポリマーのガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、通常は、約105~230℃であり、好ましくは、約120~200℃である。なお、本明細書において、Tgは後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0125】
本発明のEOポリマーは、様々な成形加工方法を用いることにより、光制御デバイス装置の部品、例えば、光学素子として成形し、好適に用いることができる。よって、本発明の一態様として、本発明のEOポリマーを成形してなる光学素子を挙げることができる。
【0126】
本発明はまた、本発明のEOポリマーを成形してなる光学素子を含む光制御デバイス装置を提供する。光制御デバイス装置としては、当該分野で公知のものであれば特に限定されず、例えば、光変調器、光スイッチ、光トランシーバー、光フェーズドアレイ、LiDAR(Light and Detection and Ranging)、電界センサー、又はテラヘルツ発生・検出装置等を挙げることができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
ベースポリマーの合成例1(共重合ポリマーA-1)
メチルメタクリレート(MMA)12.0g(119.86mmol)、2-(イソシアナトエチル)メタクリレート(MOI)1.42g(9.15mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)635mg(3.87mmol)をトルエン22.4mLに溶解し、アルゴンを封入した後、遮光下60℃油浴中2時間攪拌した。冷却後ジイソプロピルエーテル(IPE)560mL中に注いで析出物をろ取した。IPEで洗浄した後70℃に加熱下減圧乾燥して共重合ポリマー(A-1)を8.31g得た。
【0129】
上記で得られた共重合ポリマー(A-1)1.0gをテトラヒドロフラン(THF)35mLに溶解した。これにメタノール3.0mL及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)40μLを加えて60℃油浴中2時間攪拌した。反応液を冷却後IPE 400mL中に注いで攪拌した。析出した粉末をろ取し、IPEで洗浄した後70℃に加熱下減圧乾燥し、共重合ポリマー(A-1)のメチルカルバメート体を無色粉末として0.93g得た。
【0130】
ベースポリマーの合成例2~25(共重合ポリマーA-2~A-25)
MMAとMOIの仕込み比率を表1に記載の比率とし、合成例1に記載の方法に従って、共重合ポリマー(A-2)~(A-25)及びこれらのメチルカルバメート体を得た。
【0131】
得られた共重合ポリマーのメチルカルバメート体について、下記方法に従って、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量測定装置(Rigaku Thermo plus DSC 8230、リガク社製)を使用し、測定試料10mg、基準試料はAl空容器、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定を行った。
【0133】
<重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)>
分子量は、Alliance e2695(日本ウォーターズ社製)を用いたGPCにより求めた(カラム:Shodex GPC KF-804L(8mmφ×300mm)、展開溶媒:THF、カラム温度:40℃)。
【0134】
【0135】
EO分子の合成例1:2-[4-[(E)-2-[5-[(E)-2-(ベンジルオキシ)-4-[ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ]スチリル]チオフェン-2-イル]ビニル]-3-シアノ-5-メチル-5-(パーフルオロフェニル)フラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル(EO-1)
(1) 3-ヒドロキシ-3-(パーフルオロフェニル)-2-ブタノン〔3a〕
【0136】
【0137】
アルゴン雰囲気下エチルビニルエーテル〔1〕13.7g(0.19mol)をTHF 85mLに溶解した。ドライアイス/アセトン浴で冷却しながらtert-ブチルリチウム(1.9molペンタン溶液)100mL(0.19mol)を滴下した。生じた黄色スラリーを50分攪拌した後、浴を外して0℃まで昇温した。直ちに再度-70℃まで冷却し、2’,3’,4’,5’,6’-ペンタフルオロアセトフェノン〔2a〕25.07g(0.119mol)をTHF 40mL溶液として30分で滴下した。約2時間攪拌した後ゆっくり昇温し、室温下一夜攪拌した。氷冷下メタノール/水/濃塩酸(6/2/2)混合液を滴下して微酸性とし、室温下2.5時間攪拌した。反応液を濃縮した後エーテルにて抽出し、有機層を飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水後濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/3)にて精製した。目的化合物〔3a〕を無色油状物として16.6g得た(収率54.7%)。
〔化合物3a〕
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δppm: 1.84 (3H, t), 2.23 (3H, s), 4.57 (1H, s)
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δppm: 23.46, 25.27, 78.04, 115.18, 137.92, 140.38, 145.87, 206.13
【0138】
(2) 2-[3-シアノ-4,5-ジメチル-5-(パーフルオロフェニル)フラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル〔4a〕
【0139】
【0140】
3-ヒドロキシ-3-(パーフルオロフェニル)-2-ブタノン〔3a〕14.7g(57.8mmol)及びマロノニトリル8.06g(122.0mmol)をエタノール60mLに溶解した。これにリチウムエトキシド(1molエタノール溶液)3.1mLを加えて70℃油浴中16時間攪拌した。減圧下エタノールを留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)にて精製した。さらに酢酸エチル/ヘキサン(1/2)に溶解後冷却し、析出した結晶をろ取して目的化合物〔4a〕を無色結晶として1.40g得た(収率6.9%)。
〔化合物4a〕
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δppm: 2.13(3H, t), 2.34(3H, s)
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δppm: 14.18, 24.92, 61.11, 97.25, 106.14, 108.36, 109.51, 110.10, 137.55, 139.25, 144.90, 146.63, 174.30, 177.39
【0141】
(3) 2-[4-[(E)-2-[5-[(E)-2-(ベンジルオキシ)-4-[ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ]スチリル]チオフェン-2-イル]ビニル]-3-シアノ-5-メチル-5-(パーフルオロフェニル)フラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル〔EO-1〕
【0142】
【0143】
エタノール30mL及びTHF 10mLに、5-[(E)-2-[2-ベンジルオキシ-4-[ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ]フェニル]ビニル]チオフェン-2-カルバルデヒド〔5〕1.84g(3.97mmol)及び2-[3-シアノ-4,5-ジメチル-5-(パーフルオロフェニル)フラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル〔4a〕1.4g(3.99mmol)を懸濁させ、室温下23時間、さらに50℃油浴中17時間攪拌した。析出した結晶をろ取してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)にて精製した。メタノール中で結晶化後ろ取し、目的化合物〔EO-1〕を暗褐色結晶として2.13g得た(収率67.4%、mp 215-216℃)。
〔EO-1〕
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δppm: 0.93(3H, t, J = 7.6 Hz), 1.28-1.34(2H, m), 1.48-1.64(6H, m), 2.16(3H, s), 3.26(2H, t, J = 7.6 Hz), 3.30(2H, t, J = 7.6 Hz), 3.62(2H, q, J = 6.2 Hz), 5.21(2H, s), 6.11(1H, d, J = 2.7 Hz), 6.28(1H, dd, J = 2.0 Hz, 9.0 Hz), 6.47(1H, d, J = 15.1 Hz), 6.93(1H, d, J = 4.1 Hz), 7.13(1H, d, J = 15.8 Hz), 7.27(1H, d, J = 4.1Hz), 7.34-7.45(7H, m), 7.50(1H, d, J = 15.8 Hz)
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δppm: 13.95, 20.27, 23.81, 27.47, 29.49, 29.97, 50.95, 51.01, 56.86, 62.53, 70.38, 93.94, 96.17, 107.34, 110.30, 110.89, 111.17, 111.88, 112.85, 116.03, 126.90, 128.08, 128.74, 129.69, 131.96, 136.86, 136.98, 139.14, 139.29, 150.62, 158.23, 158.97, 169.23, 175.51
【0144】
EO分子の合成例2~17:(EO-2~17)
EO分子の合成例1の(1)~(3)と同様にして、EO分子(EO-2~17)を合成した。合成例1の(1)と同様にして得られた中間化合物のNMR測定結果を表2に、合成例1の(2)と同様にして得られた中間化合物のNMR測定結果を表3に、得られたEO分子(EO-2~17)のNMR測定結果を表4~7に示す。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
EO分子の合成例18:2-[5-[1,1’-(4-ビフェニル)]-4-[(E)-2-[5-[(E)-2-(ベンジルオキシ)-4-[ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ]スチリル]チオフェン-2-イル]ビニル]-3-シアノ-5-メチルフラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル(EO-18)
(1) 3-[1,1’-(4-ビフェニル)]-3-ヒドロキシ-2-ブタノン〔3l〕
【0152】
【0153】
アルゴン雰囲気下エチルビニルエーテル〔1〕13.7g(0.19mol)をTHF 85mLに溶解した。ドライアイス/アセトン浴で冷却しながらtert-ブチルリチウム(1.9molペンタン溶液)100mL(0.19mol)を滴下した。生じた黄色スラリーを30分攪拌した後、冷却浴を外して0℃まで昇温した。直ちに再度-73℃まで冷却し、4-アセチルビフェニル〔2l〕25.18g(0.128mol)をTHF 135mL溶液として滴下した。1.5時間攪拌した後ゆっくり昇温し、室温下一夜攪拌した。氷冷下メタノール/水/濃塩酸(6/2/2)混合液を滴下して微酸性とし、室温下2.5時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後エーテルにて抽出した。飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄した後無水硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した。残留物を酢酸エチル/ヘキサン(1/10)中で晶出させ、目的化合物〔3l〕を無色結晶として17.05g得た(収率55.3%、mp 92-95℃)。
〔化合物3l〕
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δppm: 1.83(3H, s), 2.14(3H, s), 4.57(1H, s), 7.36(1H, t, J = 7.6 Hz), 7.45(2H, t, J = 7.6 Hz), 7.51(2H, d, J = 8.2 Hz), 7.58-7.62(4H, m)
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δppm: 23.53, 24.09, 79.77, 126.47, 127.10, 127.41, 127.53, 128.83, 140.39, 140.98, 209.55
【0154】
(2) 2-[5-[1,1’-(4-ビフェニル)]-3-シアノ-4,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル〔4l〕
【0155】
【0156】
3-[1,1’-(4-ビフェニル)]-3-ヒドロキシ-2-ブタノン〔3l〕10.6g(44.1mmol)及びマロノニトリル6.36g(96.3mmol)をエタノール45mLに溶解した。これにリチウムエトキシド(1molエタノール溶液)2.4mLを加えて70℃油浴中4時間攪拌した。減圧下エタノールを留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=30/1)にて精製した。さらに酢酸エチル/ヘキサンで再結晶し、目的化合物〔4l〕を白色結晶として5.76g得た(収率38.7%、mp 205-206℃)。
〔化合物4l〕
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δppm: 2.06(3H, s), 2.28(3H, s), 7.28(2H, d, J = 9.0 Hz), 7.40-7.43(1H, m), 7.47-7.49(2H, m), 7.57-7.59(2H, m), 7.68(2H, d, J = 9.0 Hz)
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δppm: 14.53, 22.49, 59.34, 101.32, 104.93, 108.91, 110.15, 110.74, 125.54, 127.15, 128.28, 128.33, 129.06, 132.60, 139.36, 143.61, 175.47, 181.76
【0157】
(3) 2-[5-[1,1’-(4-ビフェニル)]-4-[(E)-2-[5-[(E)-2-(ベンジルオキシ)-4-[ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ]スチリル]チオフェン-2-イル]ビニル]-3-シアノ-5-メチルフラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル〔EO-18〕
【0158】
【0159】
エタノール45mL及びTHF 20mLに、5-[(E)-2-[2-ベンジルオキシ-4-[ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ]フェニル]ビニル]チオフェン-2-カルバルデヒド〔5〕2.5g(5.39mmol)及び2-[5-[(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-3-シアノ-4,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル〔4l〕2.0g(5.93mmol)を加えて50℃に加熱溶解した。同温度で3.5時間攪拌した後濃縮乾涸し、残留物をメタノール中で結晶化した。これをろ取し、得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)にて精製した。次いでメタノール中で結晶化後ろ取し、目的化合物(EO-18)を暗褐色結晶として2.77g得た(収率65.5%、mp 161-163℃)。
〔EO-18〕
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δppm: 0.93(6H, t, J = 7.6 Hz), 1.26-1.33(2H, m), 1.47-1.63(6H, m), 2.15(3H, s), 3.24(2H, t, J = 7.6 Hz), 3.29(2H, t, J = 6.2 Hz), 3.64(2H, t, J = 6.2 Hz), 5.19(2H, s), 6.10(1H, d, J = 2.1 Hz), 6.27(1H, dd, J = 2.8 Hz, 9.0 Hz), 6.58(1H, d, J = 15.8 Hz), 6.86(1H, d, J = 4.1 Hz), 7.09(1H, d, J = 15.8 Hz), 7.15(1H, d, J = 4.1 Hz), 7.31-7.48(13H, m), 7.59(2H, d, J = 7.6 Hz), 7.67(2H, d, J = 8.3 Hz)
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δppm: 13.96, 20.28, 23.81, 24.71, 29.48, 30.01, 50.93, 50.99, 55.75, 62.54, 70.38, 95.85, 96.32, 98.26, 105.28, 111.16, 111.63, 111.72, 112.33, 112.91, 116.15, 126.52, 126.58, 126.89, 127.18, 128.02, 128.12, 128.71, 128.98, 129.41, 131.01, 134.66, 137.04, 137.09, 138.18, 139.58, 140.46, 143.34, 150.36, 156.76, 158.74, 172.13, 175.99
【0160】
EO分子の合成例19~23:(EO-19~23)
EO分子の合成例18の(1)~(3)と同様にして、EO分子(EO-19~23)を合成した。得られたEO分子(EO-19~23)のNMR測定結果を表8に示す。
【0161】
【0162】
EO分子の合成例24~28:(EO-24~28)
EO分子の合成例1の(1)~(3)を参照して、合成例1の(1)と同様にして得られた中間化合物のNMR測定結果を表9に、合成例1の(2)と同様にして得られた中間化合物のNMR測定結果を表10に、得られたEO分子(EO-24~28)のNMR測定結果を表11~12に示す。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
実施例1 電気光学ポリマー(EOP-1)の製造
テトラヒドロフラン(THF)65mLに、ベースポリマー(共重合ポリマーA-1)1.74gを溶解した。これに、EO分子(EO-1)0.75g及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)45μLを加えて60℃油浴中3時間攪拌した。次いでメタノール3mL及びDBTDL 20μLを加えて45分攪拌した。反応液を冷却後ジイソプロピルエーテル(IPE)790mL中に注いで攪拌した。析出した粉末をろ取し、THF/IPE(1/9)100mL、さらにIPEで洗浄した後70℃に加熱下減圧乾燥した。電気光学ポリマー(EOP-1)を黒色粉末として2.17g得た。
【0168】
実施例2~14 電気光学ポリマー(EOP-2~14)の製造
ベースポリマーとEO分子を表13に記載の組み合わせとし、EO分子の含有量が表13に記載の量となるよう実施例1の記載を参照して、電気光学ポリマー(EOP-2~14)を得た。
【0169】
得られた電気光学ポリマーについて、ベースポリマーと同様の方法にて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表13に示す。
【0170】
【0171】
上記より、得られたポリマーは、ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも高い温度を示していることから、得られたポリマーはベースポリマーとEO分子が結合していることが明らかである。
【0172】
実施例15 電気光学ポリマー(EOP-15)の製造
テトラヒドロフラン(THF)70mLに、ベースポリマー(共重合ポリマーA-1)1.9gを溶解した。これに、EO分子(EO-18)0.818g及びDBTDL 50μLを加えて60℃油浴中3時間攪拌した。次いでメタノール3mL及びDBTDL 20μLを加えて45分攪拌した。反応液を冷却後ジイソプロピルエーテル(IPE)850mL中に注いで攪拌した。析出した粉末をろ取し、THF/IPE(1/9)100mL、さらにIPEで洗浄した後70℃に加熱下減圧乾燥した。電気光学ポリマー(EOP-15)を黒色粉末として2.39g得た。
【0173】
実施例16~19 電気光学ポリマー(EOP-16~19)の製造
ベースポリマーとEO分子を表14に記載の組み合わせとし、EO分子の含有量が表14に記載の量となるよう実施例15の記載を参照して、電気光学ポリマー(EOP-16~19)を得た。
【0174】
得られた電気光学ポリマーについて、前記と同様の方法にて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表14に示す。
【0175】
【0176】
実施例20~24 電気光学ポリマー(EOP-20~24)の製造
ベースポリマーとEO分子を表15に記載の組み合わせとし、EO分子の含有量が表15に記載の量となるよう実施例1の記載を参照して、電気光学ポリマー(EOP-20~24)を得た。
【0177】
得られた電気光学ポリマーについて、前記と同様の方法にて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表15に示す。
【0178】
【0179】
なお、前記した電気光学ポリマー以外に、合成したEO分子でEOポリマーが得られることについて確認した。
【0180】
比較例1~4 電気光学ポリマーの製造
ベースポリマーとEO分子を表16に記載の組み合わせとし、EO分子の含有量が表16に記載の量となるよう実施例15の記載を参照して、電気光学ポリマーを得た。なお、EO分子は、EO-1を参照にしてそれぞれ合成したものを用いた。
【0181】
得られた電気光学ポリマーについて、前記と同様の方法にて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表16に示す。
【0182】
【0183】
試験例1
実施例1、15及び比較例1、4のEOポリマーについて、下記の方法に従って、吸収係数、屈折率、EO係数を測定し、EO係数とFOM(それぞれ、光通信波長帯全域、各バンドについて)を算出した。結果を
図1~11に示す。EO係数については、代表的なものとして、光通信波長帯全域とOバンドの結果を示す。なお、各電気光学ポリマーの特性を測定するにあたって、下記の方法に従って成膜したものを用いた。
【0184】
[電気光学ポリマー(EOポリマー)の成膜方法]
得られたポリマーをシクロヘキサノンに1~20重量%の濃度で調整した溶液を、ミカサ社製スピンコーター1H-DX2を使用し、500~6000回転/分の条件で、洗浄済みの基板(シリコン、ガラス、石英ガラス)に塗布した後、ガラス転移温度(Tg)近傍で1時間真空乾燥した。ポリマー溶液の濃度及びスピンコーターの回転速度の条件は、所望の膜厚となるように適宜選択した。
【0185】
[EOポリマーの薄膜吸収スペクトル]
石英ガラス上に成膜した膜厚約0.15μmのEOポリマー薄膜の吸収スペクトルを、日立ハイテクノロジー製分光光度計U-4000を使用して測定した。測定した値を下記のローレンツ分散式に当てはめ、最小二乗法により強度係数(Aa)、共鳴波長(λ0)、減衰係数(γ)を求めた。
【0186】
【0187】
[EOポリマーの屈折率]
EOポリマーの屈折率(n)の測定は、石英ガラス上に成膜した膜厚約3μmのEOポリマー膜について、Metricon社製プリズムカプラー2010/Mを使用して行った。波長1308nmと1532nmにおいて測定した値を下記のローレンツ分散式に当てはめ、最小二乗法により強度係数(An)、背景屈折率(nb)を求めた。各波長における屈折率は、このローレンツ分散式に基づいて算出したものを用いた。
【0188】
【0189】
[EOポリマーの厚膜吸収係数]
石英ガラス上に40~350μmの3種類の深さの凹みを作製し、EOポリマーを充填し表面を研磨することで、3種類の膜厚のEOポリマー厚膜を作製した。それぞれの膜厚のEOポリマー膜の吸収スペクトルを、日立ハイテクノロジー製分光光度計U-4000を使用し測定した。それぞれの波長において、各膜厚に対して吸光度をプロットしたグラフを1次関数で近似し、その傾きから吸収係数を算出した。
【0190】
[EOポリマーのEO係数測定方法]
参考論文(“Transmission ellipsometric method without an aperture for simple and reliable evaluation of electro-optic properties”,Toshiki Yamada and Akira Otomo,Optics Express,vol.21,pages 29240-48(2013))に記載の方法と同様に行ってEO係数を測定した。レーザー光源は、アジレント・テクノロジー社製DFBレーザー81663A(波長1308nm及び1550nm)を用いた。
【0191】
次に、波長1308nmと1550nmにおいて測定した値を下記の2準位モデル分散式に当てはめ、最小二乗法により強度係数(Ar)を求めた。各波長におけるEO係数は、この2準位モデル分散式に基づいて算出したものを用いた。
【0192】
【0193】
[EOポリマーのFOM算出方法]
下記式に当てはめて、算出する。
【0194】
【0195】
試験例2
実施例5~11、13、14及び比較例1~4のEOポリマーについて、試験例1と同様にして、吸収係数、屈折率、EO係数を測定し、EO係数とFOM(それぞれ、光通信波長帯全域、Oバンド、OEバンドについて)を算出した。結果を表17に示す。なお、実施例1と実施例15についても、試験例1より併せて結果を示す。
【0196】
【0197】
試験例3
実施例5~11、13、14のEOポリマーについて、試験例1と同様にして、吸収係数、屈折率、EO係数を測定し、EO係数とFOM(それぞれ、Eバンド、Sバンド、Cバンド、SCLバンドについて)を算出した。結果を表18に示す。なお、実施例1と実施例15についても、試験例1より併せて結果を示す。
【0198】
【0199】
試験例3
実施例20~24のEOポリマーについて、試験例1と同様にして、吸収係数、屈折率、EO係数を測定し、EO係数とFOM(それぞれ、光通信波長帯全域、Oバンド、OEバンド、Eバンド、Sバンド、Cバンド、SCLバンドについて)を算出した。結果を表19~20に示す。
【0200】
【0201】
【0202】
以上の結果より、比較例のEOポリマーは、EO係数が高いものはFOMが低くまたは、FOMが高いものはEO係数が低いが、本発明のEOポリマーは、EO係数が高くかつ、FOMも高いものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明のEOポリマーは、光通信波長帯全域における性能に優れることから、光変調器、光スイッチ、光トランシーバー、光フェーズドアレイ、LiDAR(Light and Detection and Ranging)、電界センサー、又はテラヘルツ発生・検出装置等に好適に用いることができる。