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<図1>
  • -ドレッシング材 図1
  • -ドレッシング材 図2
  • -ドレッシング材 図3
  • -ドレッシング材 図4
  • -ドレッシング材 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ドレッシング材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/14 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
A61F13/14 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020011516
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115296
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391047503
【氏名又は名称】白十字株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 創一
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506205(JP,A)
【文献】実開平1-083005(JP,U)
【文献】米国特許第3968803(US,A)
【文献】特開平9-157910(JP,A)
【文献】特開2008-121131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/14
A41C3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房とその周囲を含む胸部を被覆するドレッシング材であって、
滲出液を吸収可能な吸収体と、乳房とその周囲を含む胸部の肌に当てる液透過性の肌当てシートと、前記吸収体を介して前記肌当てシートに重合された液不透過性の外面シートとを備えて構成され、
更に、伸長自在に収縮して形成されて乳房の下方の胸部外面に当接するギャザー部が下縁にのみ設けられ、上縁にギャザーが設けられておらず、該ギャザー部を下縁として乳房の隆起形状に略対応する乳房収容部を備え
ギャザー部を引き延ばした展開状態での平面視形状が長方形とされており、前記吸収体の下端縁側には、下端縁に沿って、肌当てシート側に折り曲げられる折目が形成されることで前記乳房収容部が形成される ことを特徴とするドレッシング材。
【請求項2】
前記乳房収容部に連続して脇の下から背中の一部を被覆可能とする拡張部を備えることを特徴とする請求項1記載のドレッシング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部である乳房とその周囲を被覆するドレッシング材に関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんが進行すると、がん性皮膚潰瘍を生じる場合がある。がん性皮膚潰瘍は、皮膚に浸潤や転移したがんが潰瘍化した状態であり、滲出液やにおい、激しい痛み等を伴う。
【0003】
そこで、がん性皮膚潰瘍への刺激を抑えると共に、滲出液を吸収して漏れを防止するために、生理用ナプキンや尿とりパッド(例えば、特許文献1参照)を利用して、患部である胸部を覆うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-145661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、がん性皮膚潰瘍の位置や大きさは乳がん患者によって異なるだけでなく、生理用ナプキンや尿とりパッドでは、吸収体が設けられている部分を乳房の隆起形状に追従させることが困難であるため、被覆状態が不充分となりやすく、滲出液の漏れを抑える効果が低い不都合があった。
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、患部である乳房とその周囲を含む胸部を、その形状に合わせて被覆して患部を保護することができ、患部からの滲出液の漏れを十分に抑えることができることにより、乳がんに伴うがん性皮膚潰瘍の被覆に好適なドレッシング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明は、乳房とその周囲を含む胸部を被覆するドレッシング材であって、滲出液を吸収可能な吸収体と、乳房とその周囲を含む胸部の肌に当てる液透過性の肌当てシートと、前記吸収体を介して前記肌当てシートに重合された液不透過性の外面シートとを備えて構成され、更に、伸長自在に収縮して形成されて乳房の下方の胸部外面に当接するギャザー部が下縁にのみ設けられ、上縁にギャザーが設けられておらず、該ギャザー部を下縁として乳房の隆起形状に略対応する乳房収容部とを備え、ギャザー部を引き延ばした展開状態での平面視形状が長方形とされており、前記吸収体の下端縁側には、下端縁に沿って、肌当てシート側に折り曲げられる折目が形成されることで前記乳房収容部が形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、乳房とその周囲を含む胸部を被覆するとき、前記乳房収容部によって乳房の隆起形状に略対応させて覆うことができる。しかも、前記乳房収容部の下縁を形成する前記ギャザー部は、乳房の下方の胸部外面に当接して隙間の発生を小さくするので、滲出液の漏れを抑制できる。
【0009】
以上のように、本発明によれば、患部である乳房とその周囲を含む胸部を、その形状に合わせて被覆して患部を保護することができ、患部からの滲出液の漏れを十分に抑えることができる。
【0010】
また、本発明において、前記乳房収容部に連続して脇の下から背中の一部を被覆可能とする拡張部を備えることが好ましい。
【0011】
前記拡張部を設けることにより、より広い範囲を被覆して滲出液を効率よく吸収することができるだけでなく、万一、滲出液が背中側への回り込んでも、滲出液の背中側からの漏れを良好に抑えることができる。なお、拡張部は、乳房収容部の左右両側に連設することで、患部が左右の何れであっても背中側を覆うことができ、使い勝手が向上する。
【0012】
また、本発明において、前記外面シートは、その外観が肌に近似した色とされていることが好ましい。これにより、ドレッシング材の装着状態を目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のドレッシング材の実施形態であるギャザー付ドレッシングを示す斜視図。
図2】本実施形態のギャザー付ドレッシングを肌当てシート側から示す説明的平面図。
図3図2のIII-III線による説明的断面図。
図4】本実施形態のギャザー付ドレッシングの使用状態の外観を正面視した説明図。
図5】本実施形態のギャザー付ドレッシングの使用状態の外観を側面視した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示したギャザー付ドレッシング1は、本発明のドレッシング材であって、後述するように、乳がん患者の患部乳房とその周囲を被覆するために用いられるものである。
【0015】
図1に示すように、ギャザー付ドレッシング1は、下端縁に沿って形成されたギャザー部2と、ギャザー部2の上方に位置する乳房収容部3とを備えている。ギャザー部2は弾性をもって柔軟に引き延ばし可能となっている。乳房収容部3は、収縮状態のギャザー部2によって立体形状(大略ドーム状)に形成される。乳房収容部3の両側の夫々には、拡張部4が連設されている。ギャザー付ドレッシング1は、図2に示すように、ギャザー部2を引き延ばした展開状態での平面視形状が長方形とされている。
【0016】
ギャザー付ドレッシング1は、図3に示すように、肌当てシート5、外面シート6、及び両シート5,6の間に設けた吸収体7によって構成されている。図2に示すように、肌当てシート5及び外面シート6は、吸収体7よりも大きな面積を有する。
【0017】
肌当てシート5は液体を透過させる液透過性のシートで、例えばPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等からなる不織布である。
【0018】
肌当てシート5は、肌に固着し難い素材、例えばポリウレタンフィルムとすることもできる。
【0019】
肌当てシート5は、粘性のある体液を吸収しやすくするために複数の開孔部を設けた孔明き不織布、孔明きフィルムとすることもできる。
【0020】
外面シート6は、液体を透過させない疎水性或いは液不透過性のシートで、例えばPE等のフィルム状のもの、或いはフィルムの外面側に不織布を貼り合せたものである。
【0021】
外面シート6がフィルム状の場合には透湿性があるものが好ましい。
【0022】
更に、図3に示すように、外面シート6は、その片面(本実施形態においては吸収体7側の面)に有色層8を備えている。有色層8は、外面シート6を外側から見たとき、外面シート6を透過して肌に近似した色となる。なお、外面シート6は、外観が肌に近似した色となっていればよく、例えば外面シート6を構成する不織布を有色であってもよい。
【0023】
有色層8を備えた場合、有色層8を吸収体7より大きく形成し、PE等の透湿性フィルムとし、外面シート6を不織布とすることで外面シート6からの液の漏れを防止すると共に最外面が不織布になるため肌触りが良くなる。
【0024】
肌当てシート5と外面シート6とは吸収体7の周囲を包囲するようにして接合されている。吸収体7は、滲出液などの液体が浸透して保持することができる材料が用いられ、例えば、パルプ等の吸収性繊維、ティッシュ等の吸収性シート、高分子吸収材、或いはこれらの組み合わせが好適である。
【0025】
また、吸収体7には消臭剤を入れることもできる。
【0026】
図2及び図3に示すように、吸収体7の下端縁側には、下端縁に沿って、肌当てシート側に折り曲げられる折目aが形成されていることが好ましい。折目aに沿って吸収体7が折曲がることで乳房収容部3が容易に形成される。
【0027】
折目aを形成する方法としては例えば溝、エンボス等が挙げられる。また、折目aは、必ずしも吸収体7の長さ全部にわたって形成される必要はなく、例えば弾性部材9が配設されている長さと同じ長さに配設されてもよい。
【0028】
ギャザー部2は、肌当てシート5と外面シート6とに介設されたゴム糸等の弾性部材9により収縮した状態に維持される。
【0029】
図3に示すように有色層8を備えた場合には、弾性部材の伸縮性を良くするために、弾性部材9は有色層が位置していない肌当てシート5と外面シート6の間に挟まれていることが好ましい。
【0030】
弾性部材9は吸収体7の両側縁より内側に位置していることが好ましい。吸収体7の両側縁より弾性部材9が外側に位置していると、当該部分は肌当てシート5と外面シート6しかないため、当該部分が収縮して内側に折れるように曲がりすぎてしまい使い勝手が悪くなる。弾性部材9を吸収体7の両側縁より内側に位置させることで、肌当てシート5と外面シート6しかない部分の不要な収縮を防止することができる。
【0031】
本実施形態において、図2に示した展開状態で、全体(肌当てシート5及び外面シート6)の大きさは、幅(高さ方向の寸法)約23cm、長さ(横方向の寸法)約50cmとされ、吸収体7の大きさは、幅約15cm、長さ約34cmとされている。
【0032】
本実施形態のギャザー付ドレッシング1は、図4及び図5に示すようにして使用される。即ち、図4に示すように、乳がんによるがん性皮膚潰瘍患者の胸部とその周囲を覆うように、ギャザー付ドレッシング1を当てる。
【0033】
このとき、図5に示すように、ギャザー部2が乳房の下方の胸部外面肌に当接して隙間の発生が小さい。しかも、ギャザー部2の上方に位置する乳房収容部3がドーム状の立体的な形状を有していることにより、患部である乳房をその隆起形状に沿って覆うことができる。
【0034】
これにより、胸部の隆起形状に略対応して立体的に変形した乳房収容部3の吸収体7により、患部である胸部から生じるがん性皮膚潰瘍に伴う滲出液を効率よく吸収保持することができる。しかも、乳房収容部3の下方位置では、ギャザー部2が患部である乳房の下方位置の肌に密着するので、滲出液の漏れや流下を抑制することができる。
【0035】
また、乳房収容部3には拡張部4が連設されているので、図5に示すように、拡張部4が患者の脇の下から背中の一部を被覆する。これにより、例えば、患者が仰向け姿勢となっても、患部である胸部から生じた滲出液が背中側に回って流出することが抑制できる。
【0036】
拡張部4は背中側の一部を被覆する場合があり、背中側には乳房ほどの凹凸がないので、拡張部4にはギャザー部2が形成されないように弾性部材9が配設されない方が好ましい。つまり拡張部4は肌当てシート5と外面シート6と吸収体7から構成される。
【0037】
更に、外面シート6は外観が肌に近似した色となる構造として有色層8を備えることにより、胸当てパッド1の装着状態が目立たなくなり、胸当てパッド1を抵抗感なく装着すことができる。
【0038】
なお、ギャザー付ドレッシング1は、エチレンオキサイドガス滅菌工程処理を施されて製品化することで、患部における感染症のリスクを減少させる。
【0039】
また、ギャザー付ドレッシング1の大きさは、本実施形態のものに限るものではない。患部の大きさに対応可能な各種の大きさのギャザー付ドレッシングが複数準備される。
【0040】
また、本実施形態のギャザー付ドレッシング1は、ギャザー部2が下縁にのみ設けており、上縁に同様のギャザーを設けない構成が好ましい。上縁にギャザーがあると上縁側も立体形状となってしまう。上縁にギャザーを設けないことによって、図5に示すように乳房収容部3で立体的な形状になると共に乳房収容部の上側はフラットになるので、乳房をその隆起形状に沿って覆う事ができる。
【0041】
また、本実施形態のギャザー付ドレッシング1は拡張部4を備えるが、患部が小さい場合には拡張部は設けなくともよい。しかし、患部の大きさによらず、拡張部4を設けておくことにより、滲出液の漏れや流下を抑制する効果が飛躍的に向上する。
【符号の説明】
【0042】
1…ギャザー付ドレッシング(ドレッシング材)
2…ギャザー部
3…乳房収容部
4…拡張部
5…肌当てシート
6…外面シート
7…吸収体
8…有色層
9…弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5