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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】集中力向上剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20221128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20221128BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20221128BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20221128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20221128BHJP
   A61P 39/02 20060101ALN20221128BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/22
A23L33/135
A61P17/00
A61P39/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021036915
(22)【出願日】2021-03-09
(62)【分割の表示】P 2017061615の分割
【原出願日】2017-03-27
(65)【公開番号】P2021120371
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2016076242
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-926
(73)【特許権者】
【識別番号】399061916
【氏名又は名称】東海漬物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 美香
(72)【発明者】
【氏名】佐津川 満
(72)【発明者】
【氏名】西尾 翔子
(72)【発明者】
【氏名】河本 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】小室 あゆ美
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007987(JP,A)
【文献】特開2015-213501(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0100068(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0088496(KR,A)
【文献】ファルマシア,2011年,Vol.47, No.5,pp.408-412
【文献】日薬理誌,2008年,Vol.132,pp.260-264
【文献】ツムラ・メディカル・トゥデイ(2009年3月4日放送),「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、 [online],2016年09月11日,インターネット<https://web.archive.org/web/20160911063538/http://medical.radionikkei.jp/tsumura/final/pdf/090304.pdf>[2022.3.8検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
A23L 33/00 -33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする集中力向上剤。
【請求項2】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする集中力向上用経口組成物。
【請求項3】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする集中力向上用飲食品組成物。
【請求項4】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする集中力向上用漬物。
【請求項5】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)の生菌を含む、請求項1に記載の集中力向上剤、請求項2に記載の集中力向上用経口組成物、請求項3に記載の集中力向上用飲食品組成物、または請求項4に記載の集中力向上用漬物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全な美肌促進剤および抗気逆剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より特に女性は美肌に大きな関心を寄せており、近年は美白が求められる傾向がある。例えば、日焼けのみならず、シミやソバカスは皮膚組織でのメラニン色素の沈着が原因であることから、メラニンの出発化合物であるチロシンからドーパ、さらにはドーパキノンへの酸化反応を触媒するチロシナーゼを阻害する物質が、美白用化粧品の有効成分として用いられたことがあった(特許文献1など)。
【0003】
しかし、チロシナーゼ阻害剤であるロドデンドロール(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール)が皮膚の白斑を引き起こすことが明らかとなり、大問題となったことがある。このように、皮膚に作用する成分として合成化合物を用いると、重大な副作用が生じる可能性がある。
【0004】
メラニン色素の肌組織への沈着の抑制の他に、肌を美しく見せるためには毛穴を目立たなくさせることが求められており、そのための化粧製品としてファンデーションが一般的に市販されている。しかし、根本的な解決にはならないことから、毛穴を小さくしたりその数を低減する化合物が開発されている(特許文献2など)。しかし、合成化合物であればやはり副作用の懸念がある。
【0005】
また、近年、ストレスやそれを原因とする様々な症状が問題となっている。例えば、ストレスを原因として、体調の変化の他、苛立ちや精神不安が起こり、さらには神経衰弱、不眠症、鬱病などに繋がりかねない。ストレスが原因とは限らないが、子供の多動症が問題となることもある。
【0006】
精神疾患に対しては、古くから1,4-ベンゾジアゼピン化合物が用いられている(特許文献3など)。しかし、1,4-ベンゾジアゼピン化合物は睡眠薬としても用いられるなど、眠気を誘起するという問題があり、また、発疹や発熱といった過敏症状の副作用がある。
【0007】
ところで、本願出願人は、免疫賦活作用を示す新規なプロバイオティクス乳酸菌を開発している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2009/081587号パンフレット
【文献】特開2016-28071号公報
【文献】特表平10-505098号公報
【文献】特開2014-7987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、現代社会において、美肌の促進やストレスなどを原因とする苛立ちなどの緩和は大きな課題となっている。その一方で、これらの解決手段としては、安全性も求められている。
そこで本発明は、安全な美肌促進剤および抗気逆剤と、美肌促進作用と抗気逆作用を示す経口組成物、飲食品組成物および漬物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、本願出願人が見出しているLactobacillus plantarum TK61406株が、漬物の製造にも用いられるものであることから安全である上に、優れた美肌促進作用と抗気逆作用を示すことを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0011】
[1] Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする美肌促進剤。
【0012】
[2] Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする抗気逆剤。
【0013】
[3] Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする美肌促進/抗気逆用経口組成物。
【0014】
[4] Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする美肌促進/抗気逆用飲食品組成物。
【0015】
[5] Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)を含むことを特徴とする美肌促進/抗気逆用漬物。
【0016】
[6] Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P-926)の生菌を含む、上記[1]に記載の美肌促進剤、上記[2]に記載の抗気逆剤、上記[3]に記載の美肌促進/抗気逆用経口組成物、上記[4]に記載の美肌促進/抗気逆用飲食品組成物、または上記[5]に記載の美肌促進/抗気逆用漬物。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る美肌促進剤と抗気逆剤の有効成分である乳酸菌TK61406株は、漬物の製造にも利用されるなど、非常に安全なものであり、食品にも適用可能である。また、顔肌における目立つ毛穴の数を顕著に低減することができ、さらに、気を静めて集中力を有意に高める効果も有する。よって本発明は、美肌の促進とストレスの緩和という現代社会の大きな課題を解決できるものとして、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る乳酸菌TK61406株を摂取した群とプラセボ食群で、摂取開始から8週間後における顔肌の毛穴数を比較するためのグラフである。
図2図2は、本発明に係る乳酸菌TK61406株を摂取した群とプラセボ食群で、摂取開始から12週間後における顔肌の毛穴数を比較するためのグラフである。
図3図3は、本発明に係る乳酸菌TK61406株を摂取した群とプラセボ食群で、計算問題の解答に要する時間を比較するためのグラフである。
図4図4は、本発明に係る乳酸菌TK61406株を摂取した群とプラセボ食群で、摂取開始から12週間後における便のアンモニア濃度を比較するためのグラフである。
図5図5は、培地中のアンモニア濃度と正常ヒト表皮角化細胞の生存率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る美肌促進剤、抗気逆剤、美肌促進/抗気逆用経口組成物、美肌促進/抗気逆用飲食品組成物および美肌促進/抗気逆用漬物(以下、「本発明組成物」と略記する場合がある)において、美肌促進作用および抗気逆作用を示す有効成分は、乳酸菌であるLactobacillus plantarum TK61406株(以下、「乳酸菌TK61406株」または単に「TK61406株」と略記する)である。TK61406株は、下記の通り寄託機関に寄託されている。
(i) 寄託機関の名称およびあて名
名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
あて名: 日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
(ii) 寄託日: 2010年4月9日
(iii) 受託番号: NITE P-926
本発明に係る乳酸菌TK61406株の形態的特徴や生化学的性状などは、以下のとおりである。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明に係る乳酸菌TK61406株の培養条件は特に制限されず、上記特徴に応じた培養条件とすればよい。例えば、グルコースやフルクトースなどの炭素源;酵母エキスやタンパク質加水分解物などの一般的栄養成分;グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸およびその塩;硫酸マグネシウムなどのミネラル成分;乳酸や酢酸ナトリウムなどのpH調整剤を添加した培地中、pH3以上、8以下、より好ましくはpH3.5以上、7.5以下、10℃以上、40℃以下、より好ましくは20℃以上で十分に培養することができる。また、培養は、前培養と、工業的な大量培養の二段階で行ってもよい。
【0022】
なお、本発明における有効成分である乳酸菌TK61406株には、TK61406株自体の他、TK61406株を継代培養したものであって且つ美肌促進作用および/または抗気逆作用を示すものが含まれるものとする。
【0023】
本発明組成物に含まれる乳酸菌TK61406株は、生菌であることが好ましい。ここで生菌とは、培養液などの中で増殖しつつ又は増殖はすることなく生存している菌体の他、乾燥された状態にあり、再び生存可能環境下におかれることにより生存状態になる菌体乾燥物を含むものとする。
【0024】
TK61406株の菌体乾燥物は、例えば、TK61406株を含む培養液またはその菌体懸濁液を、単独で又は他の成分と共に、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより乾燥することにより得られる。
【0025】
本発明に係る乳酸菌TK61406株は、美肌促進作用と抗気逆作用を示す。
【0026】
本発明において美肌促進作用とは、特に顔肌における美肌促進作用を指し、例えば、皮膚細胞の活性化や、皮膚組織での水分や油分の増大などにより、毛穴数の減少;シミ、ソバカス、クスミといった色素沈着の減少;シワ、つっぱり感、乾燥、粉ふき、かゆみといった皮膚トラブルの低減などの効果を挙げることができる。
【0027】
なお、本来、毛穴は肉眼で見えるものではないが、肌の弾力低下や皮脂分泌異常などにより毛穴が開いたり黒ずみが生じたりすることなどにより、肉眼でも見えるようになる。本発明において「毛穴数」とは、肉眼では見えない毛穴の数ではなく、肉眼で確認可能な目立つ毛穴の数をいう。即ち、本発明において「毛穴数の減少」とは、毛穴自体が消滅して数が減少することを意味するのでは無く、肌状態の改善により、肉眼で確認可能な目立つ毛穴の数が減少することを意味するものとする。
【0028】
気逆とは漢方分野の用語であり、不安定な精神状態により「気」と呼ばれるエネルギーに異常が生じ、逆流が起こっている状態を指す。気逆が進行すると、苛立ちや精神不安、さらには、神経衰弱、不眠症、神経症、不安症(パニック)、鬱病、性的神経衰弱、夜尿症などの症状が顕在化することもある。本発明に係る乳酸菌TK61406株は、気逆状態を改善し、苛立ちや精神不安などを鎮め、集中力を高めたり、睡眠を改善したりする作用を示す。
【0029】
本発明に係る乳酸菌TK61406株が美肌促進作用と抗気逆作用を示す機構は必ずしも明らかではないが、本発明者らの実験的知見によれば、乳酸菌TK61406株が、肌状態の悪化の原因となったり神経毒性を示すことも知られているアンモニアの生体内における量を低減することによる可能性がある。
【0030】
本発明に係る乳酸菌TK61406株の投与量は適宜調整すればよいが、例えば、1日あたり0.2回以上、5回以下程度で、1回あたり5×107cfu以上、5×1010cfu以下程度、投与すればよい。
【0031】
美肌促進作用および/または抗気逆作用を示す本発明に係る組成物は、効果が得られた実験結果に基づいて、経口で投与するものであることが好ましい。例えば、食品、飲料、健康食品、健康飲料、医薬品などとして利用することができる。食品としては、例えば、漬物、ヨーグルト、ドレッシング類を挙げることができる。特に、本発明菌は乳酸菌であることから、漬物やヨーグルトの製造に本発明に係る新規乳酸菌を直接用い、そのまま食品としてもよい。以下、特に、本発明に係る乳酸菌TK61406株を用いた漬物について説明する。
【0032】
漬物の種類は特に制限されないが、例えば、浅漬、キムチ、糠漬、塩漬、粕漬、酢漬、麹漬、味噌漬、醤油漬、辛子漬などを挙げることができる。
【0033】
本発明に係る漬物の原料として用いる野菜類は、漬物の材料として一般的なものであれば特に制限されない。例えば、キュウリ、ゴーヤ、ズッキーニ、冬瓜などのウリ科果菜類;トウガラシ、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科果菜類;ニンニク、ネギ、ラッキョウなどのユリ科茎菜類;空心菜などのヒルガオ科茎菜類;ショウガなどのショウガ科茎菜類;タケノコなどのイネ科茎菜類;カブ、ザーサイ、大根などのアブラナ科根菜類;ニンジンなどのセリ科根菜類;ミョウガなどのショウガ科花菜類;青菜、キャベツ、小松菜、山東菜、ターサイ、高菜、チンゲンサイ、野沢菜、白菜、ホウレンソウ、水菜、壬生菜などのアブラナ科葉菜類;ニラなどのユリ科葉菜類;レタスなどのキク科葉菜類を挙げることができる。
【0034】
原料野菜としては、当然ながら、収穫後、洗浄したものが好ましい。また、原料野菜は、事前に皮を除去したり、適当な大きさに裁断しておいてもよい。
【0035】
以下、漬物の一例として浅漬の製法につき簡単に説明する。上記工程を経た原料野菜を、調味液に漬ける前に下漬してもよい。当該工程は任意であるが、下漬処理により原料野菜の細胞が脱水されて組織が柔軟になり、調味液が野菜類に浸透し易くなる。下漬処理の一例としては、原料野菜に塩化ナトリウムをまぶし、圧力をかけつつ一昼夜静置することが挙げられる。
【0036】
次に、原料野菜を調味液へ漬けることにより漬物とする。その際、乳酸菌TK61406株を用いる。具体的には、調味液へTK61406株を添加してもよいし、また、TK61406株を事前培養し、培養液と共に原料野菜へ塗布してもよい。なお、原料野菜を調味液に漬けるとは、原料野菜が調味液と十分に接触することを意味し、例えば、原料野菜を調味液に完全に浸漬してもよいし、原料野菜が調味液に浸る程度にしてもよいし、原料野菜と調味液の混合物を振とうしたり攪拌してもよいものとする。
【0037】
調味液は、浅漬の製造に用いられるものであれば特に制限されない。浅漬用調味液の配合成分としては、例えば、食塩や塩化ナトリウム;グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;グアニル酸やイノシン酸などの核酸;砂糖、異性化液糖、水飴、オリゴ糖、ステビア、サッカリン、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトールなどの甘味料;クエン酸、乳酸、酢酸、酢酸ナトリウムなどのpH調整剤;醤油、魚醤、酸分解アミノ酸液、タンパク質加水分解物、動植物エキス、酵母エキス、みりんなどの調味料などを挙げることができる。
【0038】
上記で得られた浅漬は、野菜類が調味液に漬けられた状態のまま小分け包装して製品としてもよいし、調味液を原料野菜から除去して製品としてもよい。本発明に係る乳酸菌TK61406株は、調味液中に含まれるか或いは野菜内に浸透しているので、浅漬の摂取により体内に取り込まれ、美肌促進作用や抗気逆作用を示す。
【0039】
以下では、漬物の一例としてキムチの製法につき簡単に説明する。なお、キムチの製法としては様々なものが知られており、以下に限定されないものとする。
【0040】
キムチを製造するに当たっては、浅漬の場合と同様に、上記工程を経た原料野菜をキムチタレに漬ける前に下漬してもよい。当該工程は任意であるが、下漬処理により原料野菜の細胞が脱水されて組織が柔軟になり、キムチタレが野菜類に浸透し易くなる。下漬処理の一例としては、原料野菜に塩化ナトリウムをまぶし、圧力をかけつつ一昼夜静置することが挙げられる。
【0041】
次に、原料野菜、薬味およびキムチタレを混合し、数日間熟成させることによりキムチとする。乳酸菌TK61406株のキムチへの添加については、製造工程の任意の段階に、任意の方法で実施してよい。具体的には、下漬時に添加してもよいし、キムチタレの混合時に添加してもよいし、熟成後に添加してもよい。また、TK61406株を事前培養し、培養液と共に添加してもよい。
【0042】
キムチタレは、キムチの製造に用いられるものであれば特に制限されない。キムチタレの配合成分としては、例えば、食塩や塩化ナトリウム;グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;グアニル酸やイノシン酸などの核酸;砂糖、異性化液糖、水飴、オリゴ糖、ステビア、サッカリン、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトールなどの甘味料;クエン酸、乳酸、酢酸、酢酸ナトリウムなどのpH調整剤;粉トウガラシ、粗びきトウガラシなどの香辛料;醤油、魚醤、酸分解アミノ酸液、タンパク質加水分解物、動植物エキス、酵母エキス、みりんなどの調味料などを挙げることができる。
【0043】
薬味は、キムチの製造に用いられるものであれば特に制限されない。薬味に使用する野菜としては、例えば、ダイコン、ネギ、ニンジン、ニンニク、ショウガ、ニラなどを挙げることができる。
【0044】
本発明に係る乳酸菌TK61406株は、キムチタレ中に含まれるか或いは野菜内に浸透しているので、キムチの摂取により体内に取り込まれ、美肌促進作用や抗気逆作用を示す。
【0045】
また、本発明に係る経口組成物は、賦形剤など他の添加剤と共に錠剤やカプセル剤などに製剤化してもよい。他の添加剤は、特に制限されず適宜選択すればよいが、例えば、トウモロコシデンプンなどのデンプン類;グルコースやフルクトースなどの単糖類;乳酸水和物、ショ糖、トレハロースなどの二糖類;シクロデキストリンやデキストリンなどの多糖類;結晶セルロースやヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類;ビタミンCなどのビタミン類;香料;矯味剤;ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどの結合材;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、カルボキシメチルエチルセルロースなどの腸溶性コーティング材などが挙げられる。その他、TK61406株の生体内での増殖や活動を促進するために、フラクトオリゴ糖もしくはセロオリゴ糖、またはフラクトオリゴ糖とセロオリゴ糖との組合せなどのプレバイオティクスを添加してもよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0047】
なお、以下に示す試験では、「ヘルシンキ宣言」、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)」および「厚生労働科学研究における利益相反の管理に関する指針」を遵守している。
【0048】
実施例1: 顔肌状態検査
(1) 被験者
医療法人メドック健康クリニックの治験ボランティアに登録された日本国籍を有する20歳以上、50歳以下の男女を候補とし、参加希望者の中から、ボディマス指数(BMI)が18.5以上30.0未満、収縮期血圧が159mmHg以下で拡張期血圧が99mmHg以下、脈拍が50~100回/分、体温が35.5~37.0℃であり、治療を受けていない者で、疾患を有するなど臨床研究責任医師が不適格と判断した者を除き、本人の意思により文書による同意を得られた34名を選択し、任意に本発明乳酸菌摂取群とプラセボ食群に分けた。その内、試料摂取開始前のスクリーニング期間に3名が不適格と判断され、また、試料摂取期間中に1名が疾患の治療のために離脱した。最終的にそのデータが統計解析に用いられた30名の被験者を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
(2) 試料
被検試料としては、Lactobacillus plantarum TK61406株の生菌25億cfuを含む発酵液2.5mLに、飲用水40mLを加えて希釈したものを用いた。
【0051】
プラセボ試料としては、乳酸菌を含まず、外観、香りおよび味について被検試料と区別できないよう作成した溶液を2.5mL作製し、飲用水40mLを加えて希釈したものを用いた。被検試料とプラセボ試料の成分組成を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
(3) 試験スケジュール
試料摂取開始前に4週間のスクリーニング期間を設けた後、12週間にわたり試料を1日一回、食後に経口摂取させた。摂取は、可能な限り同一時刻とした。次に、4週間の後観察期間を設けた。
【0054】
試料摂取開始から4週間後、8週間後および12週間後、並びに試料摂取終了日から4週間後に、顔肌状態を検査した。
【0055】
具体的には、ジェルメイク落とし(「キュレル」花王社製)と洗顔フォームで洗顔してもらった後、使い捨てミニパックタオルで水分を拭き取り、約20分後にヘアバンドとケープを着用させ、肌画像診断解析機器(「Robo Skin Analyzer R SA50」インフォワード社製)を用い、正面および左右の3方向から顔を撮影した。得られた撮影画像を、解析ソフト(「Clinical Suite 2.1」インフォワード社製)を使って、肉眼でも確認可能な毛穴の数を測定した。試験は5~10月と長期に渡るものであったため、室内は冷暖房器を使用して24±4℃の過ごしやすい温度に設定した。室内の湿度調整は行わなかった。結果を表4と図1,2に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
(4) 結果の考察
表4と図1,2に示す結果の通り、プラセボ食群と比べ、本発明乳酸菌摂取群の摂取開始から8週後および12週後において、肉眼でも見えるような目立つ毛穴の数が有意に減少した。但し、摂取終了から4週間後においては、群間における統計上の有意差は認められなかった。よって、本発明に係るTK61406株には美肌効果があることが実証され、また、美肌促進効果を効果的に得るためにはTK61406株の継続的な摂取が有効であることが分かった。
【0058】
実施例2: 連続計算負荷試験
上記顔肌状態の検査において、試料の摂取開始から4週間後、8週間後および12週間後、並びに試料摂取終了日から4週間後に、連続計算負荷試験を実施した。具体的には、iPad(登録商標) mini 2の連続計算用ソフトである「脳トレーニング 暗算ドリル」を用い、2桁の足し算を30問実施した際の正解数と計算時間を記録した。結果を表5と図3に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表5と図3に示す結果の通り、試料の摂取開始から4週後において、計算時間の早さに群間で有意差が認められた。この結果は、本発明乳酸菌の摂取によりストレスが緩和されて気分が落ち着き、作業に集中できるようになったことによると考えられる。なお、試料の摂取開始から8週後および12週後に有意差が認められないのは、おそらくは計算問題の形式などに対する慣れが原因であると考えられた。
【0061】
実施例3: アンモニア量測定
上記実施例1において、試料摂取開始前、試料摂取開始から4週間後、8週間後および12週間後、並びに試料摂取終了日から4週間後に、被験者から便を採取し、便中のアンモニア濃度を測定し、試験食群とプラセボ食群との間でWilcoxon検定を行い、P値を求めた。結果を表6に示す。表6中、「*」はP<0.05で試験食群とプラセボ食群との間に有意差があったことを示す。また、摂取開始から12週間後における便のアン
モニア濃度を試験食群とプラセボ食群との間で比較するグラフを図4に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6の通り、本発明に係る乳酸菌TK61406株の投与により便に含まれるアンモニアの量が有意に低減されていた。アンモニアは生体内におけるアミノ酸の代謝などにより生成し、その大部分が肝臓で尿素に変換されて尿中などに排出されるが、疾患や体調不良などにより肝臓の働きが弱まると、生体内中のアンモニアが増加し、尿などにおけるアンモニア濃度も上昇することになる。アンモニアには、神経毒性といった毒性が知られている。しかし上記実験結果の通り、本発明に係る乳酸菌TK61406株には、生体内のアンモニア量自体を低減する作用があることが証明された。
【0064】
参考例1: アンモニア負荷試験
正常ヒト表皮角化細胞増殖用培地(「HuMedia-KG2」倉敷紡績社製)中の正常ヒト表皮角化細胞(倉敷紡績社製)を、5×103cell/wellの割合で96well plateに播種し、37℃で96時間培養した。次いで、8wellずつ、各wellにおける濃度が300μ/L、500μ/L、800μ/Lまたは1000μ/Lとなるように同培地にアンモニアを溶解した溶液を添加し、さらに37℃で96時間培養した。なお、ヒト血中のアンモニア濃度の基準値は300~860μg/Lである。また、対照として、アンモニアを添加しないwellも8例設けた。培養後、WST-1キット(「Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System」タカラバイオ社)を用いて細胞生存数を吸光度として測定し、対照例に対する各アンモニア濃度中の細胞生存率を求めた。また、対照例と各アンモニア濃度例との間でStudent’s-T検定を行った。結果を図5に示す。図5中、「***」はP<0.001で有意差があることを示す。
図5に示す結果の通り、培地中のアンモニア濃度が高くなるほど正常ヒト表皮角化細胞の生存率は低くなった。かかる結果の通り、アンモニアは皮膚組織の構成細胞に悪影響を与え、また、上記実施例3の結果の通り本発明に係る乳酸菌TK61406株は生体内のアンモニア量を低減することから、本発明に係る乳酸菌TK61406株の投与により、肌の状態を改善できることが示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5