(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】プローブシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20221128BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R1/073 F
G01R1/073 D
(21)【出願番号】P 2022039529
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-03-14
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304034152
【氏名又は名称】ユニコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】奥野 敏雄
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/049325(WO,A1)
【文献】特表2002-519872(JP,A)
【文献】国際公開第02/001232(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0092934(KR,A)
【文献】特開2008-256362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0208381(US,A1)
【文献】国際公開第2020/012799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/26、
1/06-1/073、
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上下面間を貫通する貫通電極を内包した上下動プローブと、該上下動プローブを包囲して保持するガイド孔と、
該ガイド孔の一部であって、上記上下動プローブの側面と上記ガイド孔の内壁間においてシート上下面間を貫通する平面視環状の貫通スリットを備え、上記上下動プローブは、第一テーパー面と第二テーパー面で構成する膨出角部を側面に有する一方、上記ガイド孔は、上記第一テーパー面に対向する第三テーパー面と上記第二テーパー面に対向する第四テーパー面とで構成する受入角部を内壁に有し、該受入角部及び上記膨出角部により上記上下動プローブの上記ガイド孔からの抜け止めを図りつつ、上記貫通スリットにより上記上下動プローブの上下動を許容することを特徴とするプローブシート。
【請求項2】
上記ガイド孔の受入角部の角度が鈍角であることを特徴とする請求項1記載のプローブシート。
【請求項3】
上記上下動プローブを截頭錐体と截頭逆錐体の底面同士を突き合せた形状とし、該截頭錐体の側面を上記第一テーパー面とすると共に、上記截頭逆錐体の側面を上記第二テーパー面とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプローブシート。
【請求項4】
上記貫通電極は横断面形状が円形又は多角形で且つ縦断面形状がカクテルグラス形状又は砂時計形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のプローブシート。
【請求項5】
絶縁シートに貫通孔を穿設する工程と、該貫通孔の内壁に金属層を生成して貫通電極を形成する工程と、該貫通電極の周囲を平面視環状に包囲しつつシート上下面間を貫通する貫通スリットを形成することにより上記貫通電極を内包する上下動プローブをシート本体から切り離して設けると共に当該上下動プローブの側面を形成し、同貫通スリットにより上記上下動プローブを保持するガイド孔を設けると共に当該ガイド孔の内壁を形成する工程を備え、上記上下動プローブの側面と上記ガイド孔の内壁間に存することとなる上記貫通スリットをシート上面側とシート下面側の双方から彫り進めて形成することにより、上記上下動プローブの側面に第一テーパー面と第二テーパー面で構成する膨出角部を設ける一方、上記ガイド孔の内壁に上記第一テーパー面に対向する第三テーパー面と上記第二テーパー面に対向する第四テーパー面とで構成する受入角部を設けることを特徴とするプローブシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハや、CSP(Chip Size Package)等のICパッケージ(半導体パッケージ)のバーンインテストの接続部材として、又はインターポーザーとして利用できるプローブシート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプローブシートは、ICパッケージ等の半導体部品が備える多数のボール形バンプにそれぞれ対応するプローブを、シート上下面間を貫通するように設け、該各プローブの上端部にボール形バンプを加圧接触してバーンインテスト等を行っている。
【0003】
そして、プローブとボール形バンプとが適正に加圧接触するためには、プローブに上下動代、つまり適度に上下に動く遊びを必要とするが、今日のように半導体部品が小型化しボール形バンプが極小ピッチで高密度に配列されている状況においては、スプリング部材のような弾性部材を介して上下動代を設けることが困難な状況となっている。
【0004】
そこで、本発明の発明者は、下記特許文献1に示すように、プローブの前後左右の二方向又は三方向に直線状の貫通スリットを形成し、これら貫通スリットで囲まれた、プローブを含む領域をシート片とし、該シート片が上下方向に撓むことによりプローブを上下動可能にするプローブシートを開発済みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のプローブシートにあっては、プローブを含むシート片により適度にプローブが上下動するため、ボール形バンプと適切に加圧接触することが可能となるが、反面、シート片の撓み支点となる基部側と、その反対の自由端部側とは上下方向の変異量が異なり、その撓み方によってボール形バンプに対して均質で安定的に接触できない場合があるという問題点を有している。
【0007】
また、繰り返し使用等により、シート片の撓み支点である基部が弾性劣化してしまい、接触圧の保持が困難となる問題点をも抱えている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来のプローブシートが抱える問題点を有効に解決し、適度な上下動代を備え、安定的に且つ適切にボール形バンプと加圧接触できるプローブを備えたプローブシート及びその製造方法を提供する。
【0009】
要述すると、本発明に係るプローブシートは、シート上下面間を貫通する貫通電極を内包した上下動プローブと、該上下動プローブを包囲して保持するガイド孔と、該ガイド孔の一部であって、上記上下動プローブの側面と上記ガイド孔の内壁間においてシート上下面間を貫通する平面視環状の貫通スリットを備え、上記上下動プローブは、第一テーパー面と第二テーパー面で構成する膨出角部を側面に有する一方、上記ガイド孔は、上記第一テーパー面に対向する第三テーパー面と上記第二テーパー面に対向する第四テーパー面とで構成する受入角部を内壁に有し、該受入角部及び上記膨出角部により上記上下動プローブの上記ガイド孔からの抜け止めを図りつつ、上記貫通スリットにより上記上下動プローブの上下動を許容する。よって、上記上下動プローブに上記貫通スリットによって上下動代を付与することができ、該プローブが適切な接触圧でボール形バンプと加圧接触することができる。
【0010】
好ましくは、上記ガイド孔の受入角部の角度を鈍角とすることにより、該受入角部が上記上下動プローブの抜け止めとスムーズな上下動の双方に貢献することができる。
【0011】
また、上記上下動プローブを截頭錐体と截頭逆錐体の底面同士を突き合せた形状とし、該截頭錐体の側面を上記第一テーパー面とすると共に、上記截頭逆錐体の側面を上記第二テーパー面とすることにより、上記上下動プローブのスムーズで安定した上下動を保証する。
【0012】
また、上記貫通電極は横断面形状が円形又は多角形で且つ縦断面形状がカクテルグラス形状又は砂時計形状とすることができる。
【0013】
本発明に係るプローブシートの製造方法は、絶縁シートに貫通孔を穿設する工程と、該貫通孔の内壁に金属層を生成して貫通電極を形成する工程と、該貫通電極の周囲を平面視環状に包囲しつつシート上下面間を貫通する貫通スリットを形成することにより上記貫通電極を内包する上下動プローブをシート本体から切り離して設けると共に当該上下動プローブの側面を形成し、同貫通スリットにより上記上下動プローブを保持するガイド孔を設けると共に当該ガイド孔の内壁を形成する工程を備え、上記上下動プローブの側面と上記ガイド孔の内壁間に存することとなる上記貫通スリットをシート上面側とシート下面側の双方から彫り進めて形成することにより、上記上下動プローブの側面に第一テーパー面と第二テーパー面で構成する膨出角部を設ける一方、上記ガイド孔の内壁に上記第一テーパー面に対向する第三テーパー面と上記第二テーパー面に対向する第四テーパー面とで構成する受入角部を設ける。よって、複雑な工程や絶縁シート以外の新たな部材を用いずに、貫通スリットによる上下動代を有するプローブを備えたプローブシートを製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るプローブシートによれば、上下動プローブが貫通スリットによる上下動代で適切にボール形バンプと加圧接触することができると共に、極小ピッチのボール形バンプにも有効に対応することができる。
【0015】
また、本発明に係るプローブシートの製造方法によれば、複雑な工程や絶縁シート以外の新たな部材を用いずに、貫通スリットによる上下動代を有するプローブを備えたプローブシートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るプローブシートの断面図である。
【
図2】本発明に係るプローブシートの平面図である。
【
図3】ICパッケージのボール形バンプとプローブシートの上下動プローブとが加圧接触した状態を示す断面図である。
【
図4】プローブシートの製造工程を説明する図であり、(A)は絶縁シートの断面図、(B)は絶縁シートに貫通孔を穿設した状態を示す断面図である。
【
図5】プローブシートの製造工程を説明する図であり、(A)は貫通孔を穿設された絶縁シートに金属層を生成し貫通電極を形成した状態を示す断面図であり、(B)は貫通電極の周囲に貫通スリットを形成した状態を示す断面図である。
【
図7】貫通電極及び上下動プローブの他例を示す平面図であり、(A)は貫通電極の上側開口が截頭逆角錐体状で上下動プローブが截頭角錐体と截頭逆角錐体の底面同士を突き合せた形状である例を示し、(B)は貫通電極の上側開口が截頭逆円錐体状で上下動プローブが截頭角錐体と截頭逆角錐体の底面同士を突き合せた形状である例を示し、(C)は貫通電極の上側開口が截頭逆角錐体状で上下動プローブが截頭円錐体と截頭逆円錐体の底面同士を突き合せた形状である例を示している。
【
図8】部分的に膨出角部を有する上下動プローブの例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るプローブシート及びその製造方法の最適な実施例について、
図1乃至
図8に基づき説明する。
【0018】
<プローブシートの基本構成>
図1,
図2に示すように、本発明に係るプローブシート1は、後述するように、絶縁シート1′から成り、次のような基本構成を有している。
【0019】
すなわち、シート上面1aとシート下面1b間を貫通する貫通孔2′で構成する貫通電極2と、該貫通電極2の周囲を平面視環状に包囲しつつシート上面1a・シート下面1b間を貫通する貫通スリット3と、該貫通スリット3を介してシート本体から切り離された上下動プローブ4と、同貫通スリット3を介して上下動プローブ4を包囲するガイド孔5を備える基本構成を有している。
【0020】
なお、絶縁シート1′としては、ガラス、セラミック、ポリイミド樹脂、ゴム等の既知の絶縁材料から成るシートを用いることができるが、好ましくは石英ガラスから成るシートを用いる。後記の貫通スリット3を形成しやすいためである。
【0021】
≪貫通電極の構成≫
貫通電極2は、プローブシート1の上面1aと下面1b間を貫通する貫通孔2′で構成され、上側開口2aの内面及び下側開口2bの内面と、該上側開口2aと該下側開口2b間の内周面2cにメッキ処理により導電性を有する金属の層を生成して成る。
【0022】
したがって、たとえば、
図3に示すように、貫通電極2の上側開口2aにICパッケージ11のボール形バンプ11aを加圧接触し、下側開口2bに検査機器等に繋がる基盤12の平板電極12aを加圧接触させることにより、容易に両者間に通電を行うことができる。
【0023】
好ましくは、
図1,
図2に示すように、貫通電極2の上側開口2aを截頭逆
錐体状に形成して、断面視カクテルグラス形状とすることにより、ボール形バンプの3次元の位置バラツキを吸収すると共に、適圧で加圧接触することができる。さらに、
図6に示すように、下側開口2bを截頭
錐体状に形成して、断面視砂時計形状とすることにより、該下側開口2bにもボール形バンプを適切に加圧接触することができ、上側開口2aに第一部材13のボール形バンプ13aを加圧接触し、下側開口2bに第二部材14のボール形バンプ14aを加圧接触して、インターポーザーとして活用することができる。
【0024】
なお、上側開口2aも、下側開口2bも、最大開口径は接触対象のボール形バンプの直径よりも小さく設定するのが望ましい。ボール形バンプが貫通電極2内に入り込んでしまうのを防止すると共に、プローブシート1がICパッケージ等の基盤と接触しないようにするためである。
【0025】
また、本発明にあっては、上側開口2aを截頭逆錐体状にするにあたり、
図2,
図7(B)に示すように、截頭逆円錐体状にする他、
図7(A),
図7(C)に示すように、截頭逆角錐体状にすることも実施に応じ任意である。具体的には図示しないが、下側開口2bについても、同様に、截頭錐体状には截頭円錐体状の他、截頭角錐体状とすることができる。なお、截頭角錐体・截頭逆角錐体には截頭三角錐体・截頭逆三角錐体、截頭五角錐体・截頭逆五角錐体のような截頭多角
錐体・截頭逆多角
錐体が含まれることは言うまでもない。
【0026】
≪上下動プローブ及びガイド孔の構成≫
上下動プローブ4は、
図1,
図2に示すように、貫通スリット3によってシート本体から切り離され、貫通電極2を内包し、側面に第一テーパー面4aと第二テーパー面4bを有し、該第一・第二テーパー面4a・4bで構成する膨出角部4cを有する構成となっている。
【0027】
換言すると、上下動プローブ4は、上端部4dから下方に向かうにつれ貫通電極2の内周面2cから遠ざかる向きに傾斜する第一テーパー面4aと、該第一テーパー面4aと共に膨出角部4cをなし、下端部4eから上方に向かうにつれ貫通電極2の内周面2cから遠ざかる向きに傾斜する第二テーパー面4bを有する。よって、上下動プローブ4は、第一テーパー面4aにより上端部4dから下方に向けて漸次拡径し、第二テーパー面4bにより下端部4eから上方に向けて漸次拡径し、これら第一・第二テーパー面4a・4bとでなす膨出角部4cにおいて最も拡径した形状を呈する。
【0028】
また、ガイド孔5は、後述するように、上下動プローブ4をシート本体から切り離すための貫通スリット3形成時に、上下動プローブ4と同時に形成される。そのため、上下動プローブ4の側面形状とガイド孔5の内壁形状は相似形である。
【0029】
ガイド孔5は、貫通スリット3を介して、上下動プローブ4を包囲することにより、上下動プローブ4を保持しつつ貫通スリット3による上下動代の範囲で上下動プローブ4の上下動を許容する。よって、上下動プローブ4が適切な接触圧でボール形バンプと加圧接触することができる。
【0030】
また、ガイド孔5は、上述した上下動プローブ4の第一テーパー面4aに対向する第三テーパー面5aと上下動プローブ4の第二テーパー面4bに対向する第四テーパー面5bとで構成する受入角部5cを内壁に有し、該受入角部5cを上下動プローブ4の膨出角部4cと係合させることにより上下動プローブ4の抜け止めを図りつつ上下動を許容する。
【0031】
好ましくは、
図1,
図3に示すように、ガイド孔5の受入角部5cの角度(入隅角度)θを鈍角とすることにより、該受入角部5cが上下動プローブ4の抜け止めとスムーズな上下動の双方に貢献することができる。角度θは上下動プローブ4の上下動代のストロークの長さによって適宜調整することができる。同様に、上下動プローブ4の膨出角部4cの角度(出隅角度)θ′も鈍角とし、上記受入角部5cと係合する。
【0032】
上記説明したように、上下動プローブ4は側面の第一・第二テーパー面4a・4bにより膨出角部4cを形成し、ガイド孔5は内壁の第三・第四テーパー面5a・5bにより受入角部5cを形成する。
【0033】
よって、上下動プローブ4の側面の周方向全域(全周)に第一・第二テーパー面4a・4bを形成して環状に繋がった膨出角部4cを形成し、ガイド孔5の内壁の周方向全域(全周)に第三・第四テーパー面5a・5bを形成して環状に繋がった受入角部5cを形成すれば、これら環状の膨出角部4c・受入角部5cによって上下動プローブ4の保持及び上下動をより安定化できる。
【0034】
たとえば、
図1、
図2に示す上下動プローブ4は、截頭円
錐体と截頭逆円錐体の底面同士を突き合せた形状とし、該截頭円錐体の側面を第一テーパー面4aとすると共に、截頭逆円
錐体の側面を第二テーパー面4bとすることにより、恰も算盤玉のような全体形状を呈し、円環状に繋がった膨出角部4cを形成することができる。そしてガイド孔5の第三・第四テーパー面5a・5bは第一・第二テーパー面4a・4bに対応して形成され、円環状に繋がった受入角部5cを形成する。よって、上下動プローブ4のスムーズで安定した上下動を保証することができる。
【0035】
また、本発明にあっては、截頭錐体と截頭逆錐体の底面同士を突き合わせるにあたり、截頭錐体は円錐体に限らず、
図7(A)・(B)に示すように、截頭角錐体としても同様の効果が得られると共に、截頭逆錐体も截頭逆円錐体に限らず、截頭逆角錐体としても同様の効果が得られる。よって、截頭円錐体又は截頭角錐体と截頭逆円錐体又は截頭逆角錐体の底面同士を自由に組み合わせて突き合わせることも実施に応じ任意である。なお、截頭角錐体・截頭逆角錐体には截頭三角錐体・截頭逆三角錐体、截頭五角錐体・截頭逆五角錐体のような截頭多角
錐体・截頭逆多角
錐体が含まれることはもちろんである。
【0036】
上述の構成の本発明に係るプローブシート1は、
図3に示すように、ICパッケージ等の半導体部品のバーンインテストに用いる他、インターポーザーとして用いることもでき、いずれの利用形態においても、上下動プローブ4が貫通スリット3による上下動代で適切にボール形バンプと加圧接触することができると共に、貫通スリット3を形成するだけで弾性部材等のシート以外の部材を用いることがないので、極小ピッチのボール形バンプにも有効に対応することができる。
【0037】
<プローブシートの製造方法>
本発明に係るプローブシートの製造方法について、工程を順を追って説明する。
【0038】
≪貫通孔穿設工程≫
本工程においては、
図4(A)に示すような絶縁シート1′に、
図4(B)に示すように、シート上面1′a(プローブシート1のシート上面1a)とシート下面1′b(プローブシート1のシート下面1b)間を貫通する貫通孔2′を穿設する工程を備える。該貫通孔2′は、最終的に貫通電極2を構成するものであり、貫通電極2の接触対象たるボール形バンプの配列やピッチに基づき数やピッチを調整して穿設するものである。なお、穿設方法は既知のレーザー又はエッチングによる穿設方法を用いることができる。
【0039】
また、後述する貫通電極2の上側開口2aを截頭逆錐体状にする場合には、貫通孔2′の上側開口2′aを本工程において形成する。下側開口2bについても同様に本工程において貫通孔2′の下側開口2′bに加工を施す。
【0040】
≪貫通電極形成工程≫
本工程は、貫通孔2′の内壁、つまり後の貫通電極2の上側開口2aの内面、下側開口2bの内面及びこれらに続く内周面2cにメッキ処理により金属層を生成して貫通電極2を形成する工程である。なお、メッキ処理としては、既知の電気メッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理を施すことができる他、銅下ニッケル上に金メッキを施し、銅の高通電性と金の耐久性を利用したメッキ処理を施すことができる。
【0041】
貫通孔2′の内壁だけにメッキ処理を施しても良いが、本発明にあっては、次のようにメッキ処理を行うことにより、効率的に貫通電極2を形成することができる。
【0042】
すなわち、まず、
図5(A)に示すように、上述の貫通孔穿設工程によって貫通孔2′が穿設された絶縁シート1′の露出面全体をメッキ処理して導電性を有する金属の層2′′を生成する。
【0043】
このように露出面全体をメッキ処理することにより、露出面である貫通孔2′の内壁、つまり後の貫通電極2の上側開口2aの内面、下側開口2bの内面及びこれらに続く内周面2cに金属層2′′が施される。ただし、露出面全体が金属層2′′で繋がった状態となるが、後述する貫通スリット3により、貫通電極2の部分だけが独立した通電経路を有するようになる。したがって、複数の貫通孔2′の個々にメッキ処理を施す必要はなく、絶縁シート1′全体にメッキ処理を施すことによって、複数の貫通孔2′の全てに一気にメッキ処理を施して貫通電極2を形成することができる。
【0044】
≪貫通スリット形成工程≫
本工程は、
図5(B)に示すように、上述の貫通電極2の周囲を平面視環状に包囲し、且つシート上下面間を貫通する貫通スリット3を形成する工程である。形成方法としては、既知のレーザーによる切削方法等を用いることができる。
【0045】
本工程では、貫通スリット3を形成すると同時に、貫通スリット3によりシート本体から切り離された上下動プローブ4及び該上下動プローブ4を保持するガイド孔5を形成することができ、
図1に示すような、本発明に係るプローブシート1を完成させることができる。また、貫通電極形成工程において、絶縁シート1′の露出面全体にメッキ処理を施した場合には、貫通スリット3により貫通電極2に施された金属層2′′が独立し、正常に機能する貫通電極2となる。
【0046】
本工程においては、貫通スリット3をシート上面1a側とシート下面1b側の双方から彫り進めて形成することにより、同時に形成される上下動プローブ4の側面に第一テーパー面4aと第二テーパー面4bで構成する膨出角部4cを設けることができる。加えて、同時に形成されるガイド孔5の内壁に第一テーパー面4aに対向する第三テーパー面5aと第二テーパー面4bに対向する第四テーパー面5bとで構成する受入角部5cを容易に設けることができる。
【0047】
なお、貫通スリット3の幅は、所望の上下動代のストロークに応じて適宜調整することができる。
【0048】
以上説明した、本発明に係るプローブシートの製造方法においては、複雑な工程や絶縁シート1′以外の新たな部材を用いずに、貫通スリット3による上下動代を有するプローブ4を備えたプローブシート1を製造することができる。
【符号の説明】
【0049】
1′…絶縁シート、1′a…シート上面、1′b…シート下面、
1…プローブシート、1a…シート上面、1b…シート下面、
2′…貫通孔、2′a…上側開口、2′b…下側開口、2′′…金属層、
2…貫通電極、2a…上側開口、2b…下側開口、2c…内周面、
3…貫通スリット、
4…上下動プローブ、4a…第一テーパー面、4b…第二テーパー面、4c…膨出角部、4d…上端部、4e…下端部、
5…ガイド孔、5a…第三テーパー面、5b…第四テーパー面、5c…受入角部、
θ…受入角部の角度、θ′…膨出角部の角度、
11…ICパッケージ、11a…ボール形バンプ、
12…基盤、12a…平板電極、
13…第一部材、13a…ボール形バンプ、
14…第二部材、14a…ボール形バンプ。
【要約】
【課題】 適度な上下動代を備え、安定的に且つ適切にボール形バンプと加圧接触できるプローブを備えたプローブシートの提供。
【解決手段】 本発明に係るプローブシートは、シート上下面間を貫通する貫通孔で構成する貫通電極と、該貫通電極の周囲を平面視環状に包囲しつつシート上下面間を貫通する貫通スリットと、該貫通スリットを介してシート本体から切り離された上下動プローブと、同貫通スリットを介して上記上下動プローブを包囲するガイド孔を備え、上記上下動プローブは、第一テーパー面と第二テーパー面で構成する膨出角部を側面に有する一方、上記ガイド孔は、上記第一テーパー面に対向する第三テーパー面と上記第二テーパー面に対向する第四テーパー面とで構成する受入角部を内壁に有し、該受入角部及び上記膨出角部により上記上下動プローブの抜け止めを図りつつ上下動を許容する。
【選択図】
図1