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  • 特許-車止め型脱気装置を製造する方法 図1
  • 特許-車止め型脱気装置を製造する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】車止め型脱気装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/16 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
E04D13/16 Y
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022145278
(22)【出願日】2022-09-13
【審査請求日】2022-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522039511
【氏名又は名称】株式会社日建テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】森本 美文
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157411(JP,A)
【文献】特開2000-159074(JP,A)
【文献】特開2017-141641(JP,A)
【文献】特開平11-324258(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217302(JP,U)
【文献】特開2020-203730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16
E04H 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車領域を有する駐車場に設けられる車止め型脱気装置を製造する方法であって、
前記駐車領域の下地の表面に形成された防水層上に設置可能な脱気筒部と、
前記脱気筒部を内部に収納する車止め部と、
を備える車止め型脱気装置を製造する方法であって、
気泡を含むポリスチレンを用いて前記車止め部の外形部を形成する第1工程と、
前記車止め部の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させる第2工程と、
を備え
前記第1工程は、気泡を含むポリスチレンを用いて前記脱気筒部の外形部を前記車止め部とともに一体形成し、
前記第2工程は、前記車止め部の外形部とともに前記脱気筒部の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させることを特徴とする車止め型脱気装置を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車止め型脱気装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗などの施設の屋上に設けられる自走式駐車場には、ウレタン塗膜からなる防水層を用いた露出防水構造が採用されることが多い。この防水構造では、下地の水分管理が不十分となると、日射等の影響による温度上昇によって、下地に含まれる水分が水蒸気となって放出され、防水層の膨れを引き起こすことがある。
【0003】
屋上防水などに用いられる絶縁工法で形成された防水構造は、通気緩衝シートからなる通気緩衝層を用いるため、下地から放出された水蒸気を、通気緩衝層を通して放出できる。しかし、この防水構造は、車両の走行による負荷がかかる駐車場に適用するには強度の点で十分とはいえないため、駐車場では採用されていない。駐車場では、防水層の膨れを防ぐため、例えば、水蒸気を排出する脱気装置が用いられることがある。
【0004】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、中心に開口が形成された台座部と、上端及び下端が開放された内筒と、前記内筒の上端面の直径よりも細い幅であり、前記内筒の上端上に架け渡して設けられた嵩上部と、上端は閉塞され下端は開放された外筒とからなり、前記内筒は、前記開口に取付けられて前記台座部に立設され、前記外筒は前記嵩上部に取り付けられることにより、前記外筒の上端壁と前記内筒の上端が離隔するように配置され、前記外筒が前記内筒の周側面から外側へ所定の間隔を空けると共に、前記内筒の上端面を覆うように設置され、前記台座部の外周縁には、下向きの傾斜を有して下方へ屈曲された外縁傾斜部が形成され、前記台座部の中心に設けられた前記開口の内縁が、鉛直下向きに屈曲されて屈曲保持部が形成され、前記屈曲保持部の下端が前記台座部の下方へ屈曲された前記外縁傾斜部の外縁端よりも上方に位置するように形成され、前記内筒が前記台座部の前記開口に、上方から前記屈曲保持部に内接するように挿通され、前記屈曲保持部の下端と、前記内筒の下端とが同一面内に位置するように設置され、前記屈曲保持部の下端と前記内筒の下端とが接合されていることを特徴とする脱気筒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3144770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、脱気装置は、車両の走行、および歩行者の通行の障害とならない場所に設置する必要があるため、脱気性能の確保に必要な設置場所を選ぶことが難しく、防水層上に突出して設けられるため、駐車場の美観の点で好ましいという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、駐車場の美観の観点で好ましい脱気装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車止め型脱気装置を製造する方法は、駐車領域を有する駐車場に設けられる車止め型脱気装置を製造する方法であって、前記駐車領域の下地の表面に形成された防水層上に設置可能な脱気筒部と、前記脱気筒部を内部に収納する車止め部と、を備える車止め型脱気装置を製造する方法であって、気泡を含むポリスチレンを用いて前記車止め部の外形部を形成する第1工程と、前記車止め部の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させる第2工程と、を備え、前記第1工程は、気泡を含むポリスチレンを用いて前記脱気筒部の外形部を前記車止め部とともに一体形成し、前記第2工程は、前記車止め部の外形部とともに前記脱気筒部の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駐車場の美観の観点で好ましい脱気装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の車止め型脱気装置を示す図である。
図2】本発明に係る実施形態の車止め型脱気装置を製造している手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の車止め型脱気装置10を示す図である。図1(a)は、車止め型脱気装置10を示す斜視図であり、図1(b)は、車止め型脱気装置10の側面図である。
【0014】
図2は、本発明に係る実施形態の車止め型脱気装置10を製造している手順を示す図である。図2(a)は、スラブコンクリート4上に防水層3が設置され、防水層3上にシンダーコンクリート2が設置されている様子を示す図である。
【0015】
図2(b)は、所定の位置に穿孔している様子を示す図であり、図2(c)は、穿孔して形成された孔6に止水処理8を行った後、スラブコンクリート4上に新設の防水層9を設置している様子を示す図である。
【0016】
図2(d)は、止水処理8と新設の防水層9を設置した後に、車止め型脱気装置10を設置している様子を示す図である。
【0017】
店舗などの施設の屋上に設けられる自走式駐車場には防水構造が設けられている。防水構造としては、例えば、図2(a)に示されるように、スラブコンクリート4は、コンクリート製の板である。スラブとは床のことを指しており、一般的に床を施工するときに使用する。鉄筋コンクリート造の建築物では、スラブと呼ばれる床板が荷重を支える役割を持っている。
【0018】
防水層3は、スラブコンクリート4に直接、形成されるか、または、プライマー層を介してスラブコンクリート4の表面に形成される。プライマー層は、スラブコンクリート4に対する防水層3の接着力を確保するためのもので、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂などからなるプライマーが使用できる。
【0019】
防水層3の材料としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、メチルメタクリレート樹脂、ポリウレア樹脂などが使用できる。
【0020】
シンダーコンクリート2は、シンダーを骨材とした軽量コンクリートである。床面レベル調整や屋上防水の押さえ、紫外線からの保護用として用いるコンクリートの総称として、シンダーコンクリートという言葉が使われている。
【0021】
車止め型脱気装置10は、駐車場に設けられ、駐車領域の車止めとして機能を有しつつ、駐車場の水分(水蒸気)を排出する脱気装置としても機能する。車止め型脱気装置10は、脱気筒部12と、車止め部14とを備える。
【0022】
脱気筒部12は、駐車場の駐車領域のシンダーコンクリート2上に配置され、駐車場の水分を排出する脱気筒として機能する。
【0023】
脱気筒部12は、車止め部14内に設けられるT字部12aと、車止め部14から突出したI字部12bとで構成される略T字状の四角筒形状を有している。したがって、I字部12bは1つの流路となるが、T字部12aでは2つに分岐した後、両端部の開口から流体が排出可能な構造になっている。
【0024】
脱気筒部12のI字部12bは、図2(b)(c)に示される孔6に挿入可能である。このI字部12bに連通する形でT字部12aが設けられている。これにより、駐車場の水分がI字部12b内を通り、その後、T字部12aを通過してT字部の12aの両端部12cから排出される。なお、容器本体部12には、両端部12cから排出された水蒸気を排出するための隙間などが形成されている。
【0025】
脱気筒部12は、気泡を含むポリスチレンを用いて構成されており、外形は、ポリウレア樹脂を塗布して硬化することが好適である。ここで使用するポリウレア樹脂は、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって形成された樹脂化合物で、強力な皮膜を形成するライニング(コーティング)材である。
【0026】
ポリウレア樹脂は、対象物に塗布するだけで、耐摩耗性・耐候性などを大幅に向上させることができる画期的な素材である。硬化時間が数秒~数十秒と極めて短く、防水・耐薬品・耐摩耗・耐熱に優れ、様々な変状要因から基材を保護するライニング材で、400%以上の伸び率を有しているグレードもあり、下地のひび割れの発生や挙動に対して高い追従性を発揮するとともに、軍事施設やプラント施設、主要建物の防爆対策としても注目されている。
【0027】
ポリウレア樹脂の特徴は、耐摩耗性、耐候性、耐衝撃性に優れている点である。耐摩耗性は、FRP(繊維強化プラスチック)の60倍以上の耐摩耗性を有している点で優れている。耐候性は、10年以上の耐候性テストでも吹き付け時点の性能を維持する。耐衝撃性は、TNT火薬による爆風にも耐え、約1トンの車が衝突しても問題が生じない程度の強度がある。
【0028】
ポリウレア樹脂のその他の特徴として、超速硬化、高伸度、高破壊力、防食防錆、耐塩害、耐薬品性、防水性、無溶剤、無触媒である。
【0029】
車止め部14は、天板部と側板部と端板部とを有し、図1(b)に示されるように側面視が略台形形状の構造であり、十分な機械的強度を有する。また、車止め部14は、脱気筒部12を包囲して外から見えなくすることで、駐車場の美観を良好にすることができる。
【0030】
車止め部14の側板部および端板部は、平面視において脱気筒部12を囲んでいる。車止め部14は、脱気筒部12を覆うカバー状に形成されており、内部空間に脱気筒部12を収容している。そのため、脱気筒部12は、車止め部14によって隠されており、車止め部14の外からはほとんど視認できない。
【0031】
車止め部14は、気泡を含むポリスチレンを用いて構成されており、外形は、ポリウレア樹脂を塗布して硬化することが好適である。ここで使用するポリウレア樹脂は、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって形成された樹脂化合物で、強力な皮膜を形成するライニング材であり、脱気筒部12の塗布に用いるポリウレア樹脂と同じものを用いる。
【0032】
続いて、上記構成の車止め型脱気装置10を製造する手順について説明する。最初に、 気泡を含むポリスチレンを用いて車止め部14の外形部を形成する(S2)。S2の工程とは別に、気泡を含むポリスチレンを用いて脱気筒部12の外形部を形成する(S4)。
【0033】
そして、S2の工程とは別に、車止め部14の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させる(S6)。そして、S4の工程とは別に、脱気筒部12の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させる(S8)。
【0034】
そして、図1(a)(b)に示されるように、車止め部14と脱気筒部12を一体化する(S10)。ここでは、車止め部14と脱気筒部12を別々に形成するものとして説明したが、車止め部14と脱気筒部12を一体的に形成してもよい。
【0035】
このように形成した車止め型脱気装置10を設置する手順について説明する。まず、図2(a)に示されるような防水機構の中から孔6を形成する所望の位置を選定する。次に、図2(b)に示されるように、所望の位置を穿孔する。孔6は、深さ方向にわたって一定の内径を有するストレート形状であって、回転工具に連結したドリルなどを用いて形成される。
【0036】
そして、図2(c)に示されるように、孔6に対して止水処理8を行うとともに、シンダーコンクリート2上をポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、メチルメタクリレート樹脂、ポリウレア樹脂などを用いて新設の防水層9を形成する。
【0037】
その後、図2(d)に示されるように、孔6に車止め型脱気装置10の脱気筒部12のI字部12bを挿入して設置した後、車止め型脱気装置10を駐車領域に固定する。このように設置した車止め型脱気装置10により、駐車場の水分(水蒸気)をT字状の脱気筒部12を介して排出することが出来る。また、車止め型脱気装置10によれば、駐車スペースの車止めの代用することができるため、美観を損なうこともない。
【0038】
なお、車止め型脱気装置10によれば、脱気筒部12と車止め部14とを一体化して形成するものとして説明したが、既存の脱気筒に車止め部14を被せることで脱気筒を隠すことも考えられる。
【符号の説明】
【0039】
2 シンダーコンクリート、3 防水層、4 スラブコンクリート、6 孔、8 止水処理、9 新設の防水層、10 車止め型脱気装置、12 脱気筒部、12a T字部、12b I字部、12c 両端部、14 車止め部。
【要約】
【課題】駐車場の美観の観点で好ましい脱気装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】車止め型脱気装置10を製造する方法は、駐車領域を有する駐車場に設けられる車止め型脱気装置10を製造する方法であって、駐車領域の下地の表面に形成された防水層上に設置可能な脱気筒部12と、脱気筒部12を内部に収納する車止め部14と、 を備える車止め型脱気装置10を製造する方法であって、気泡を含むポリスチレンを用いて車止め部14の外形部を形成する第1工程と、車止め部14の外形部にポリウレア樹脂を吹き付けて硬化させる第2工程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1


図1
図2