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特許7182832円錐角膜及び乱視等の簡易診断補助装置及び診断補助システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】円錐角膜及び乱視等の簡易診断補助装置及び診断補助システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
A61B3/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022556176
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010745
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2021038152
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513077162
【氏名又は名称】株式会社坪田ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一男
(72)【発明者】
【氏名】小橋 英長
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直子
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530730(JP,A)
【文献】特表2019-514650(JP,A)
【文献】特表2013-510613(JP,A)
【文献】特表2008-523896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと送受信機能とを有するスマートフォンと、該スマートフォンに別体として取り付けられて両眼にリング光を同時に投影するための光源とを有し、円錐角膜及び/又は乱視を簡易に診断する簡易診断補助装置であって、
前記光源は、前記スマートフォンの前記カメラ側の上部フレームに挿入して取り付けるための取付部を有し、自分側又は相手側に向けて取り付けられ
前記送受信機能は、前記カメラで撮影された撮影データをコンピュータ端末に送信、又は、前記カメラで撮影された撮影データを前記スマートフォンで演算処理した場合には該演算データをコンピュータ端末に送信するものであり、
前記リング光は、複数の点光源でリング状に構成された多重リング光又は単一リング光であり、
前記両眼に投影された前記リング光を前記カメラで同時に撮影して撮影データとし、該撮影データを画像処理してプラチド角膜形状測定原理に基づいて解析された前記両眼の形状を解析して、前記円錐角膜、前記乱視、その他の眼球の診断補助が行われる 、ことを特徴とする簡易診断補助装置。
【請求項2】
前記光源は、円錐状又はラッパ状の形態であって、該形態の端部には大径のリング形状の光源が配置され、該形態の内周面には小径のリング形状の光源が配置されている、請求項1に記載の簡易診断補助装置。
【請求項3】
前記光源は、前記リング光のコントラスト及び/又は照度の調整装置を内蔵する、請求項1又は2に記載の簡易診断補助装置。
【請求項4】
カメラと送受信機能とを有するスマートフォンと、該スマートフォンに一体として設けられて両眼にリング光を同時に投影するための光源とを有し、円錐角膜及び/又は乱視を簡易に診断する簡易診断補助装置であって、
前記光源は、前記スマートフォンが有する表示画面から前記リング光を画像として発光するものであって前記表示画面を視認できる側に向けて配置され、
前記送受信機能は、前記カメラで撮影された撮影データをコンピュータ端末に送信、又は、前記カメラで撮影された撮影データを前記スマートフォンで演算処理した場合には該演算データをコンピュータ端末に送信するものであり、
前記リング光は、複数の点光源でリング状に構成された多重リング光又は単一リング光であり、
前記両眼に投影された前記リング光を前記カメラで同時に撮影して撮影データとし、該撮影データを画像処理してプラチド角膜形状測定原理に基づいて解析された前記両眼の形状を解析して、前記円錐角膜、前記乱視、その他の眼球の診断補助が行われる、ことを特徴とする簡易診断補助装置。
【請求項5】
前記スマートフォンは、前記リング光のコントラスト及び/又は照度の調整アプリケーションを内蔵する、請求項4に記載の簡易診断補助装置。
【請求項6】
前記リング光は、その輪郭の所定の位置の色が他の位置の色と異なる、請求項1~5のいずれか1項に記載の簡易診断補助装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の簡易診断補助装置と、該簡易診断補助装置から送信された診断補助情報を受信する端末とを有する、ことを特徴とする診断補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐角膜や乱視等の簡易診断補助装置及び診断補助システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、携帯端末とリング光とを併用して眼球に投影された投影光を撮影し、得られた撮影データに基づいて円錐角膜及び乱視等を簡易的に診断補助する簡易診断補助装置、及びそうした装置で得た診断補助データを用いて遠隔での診断補助を可能にする診断補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼の診断を行うための眼科装置は、その診断目的に応じて様々な装置があり、例えば、眼軸長を測定するための光学系と被検眼の屈折力を測定するための光学系とを備えた眼科装置や、眼軸長を測定するための光学系と角膜形状を測定するための光学系とを備えた眼科装置等が知られている。こうした眼科装置は大型のものが多く、例えば特許文献1のように、眼科装置の小型化を目的とした提案がされている。
【0003】
角膜形状の解析装置として、プラチド角膜形状測定装置が知られている(非特許文献1)。このプラチド角膜形状測定装置での測定は、眼に投影された光の角膜上の反射像の形状や大きさを解析して行われる。そして、その測定原理は、球面での反射像の大きさが、投影された球面の距離が一定であればその曲率半径に比例することに基づいている。通常、眼に投影されたマイヤーリングの反射像の大きさから曲率半径が算出され、その曲率半径と角膜の屈折率によって角膜の屈折力が求められて診断に利用される。
【0004】
特許文献2には、高度なモバイル処理デバイス技術(カメラ、光源、拡張/編集、ソフトウェアアプリケーション)を利用し、それを患者の眼科医療の改善に世界的に結び付けることを目的とした技術が提案されている。この技術は、モバイル処理デバイス及びそれを使用するシステムを提供したものであって、モバイル処理デバイスは、キャプチャされ受信された画像を処理するように構成されたカメラレンズ、光源、及びプロセッサを含んでいる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】高 靜花、「プラチド角膜形状測定装置の特徴と今後」、視覚の科学、第37巻、第4号、2016年12月.
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-77774号公報
【文献】米国特許第10129450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラチド角膜形状測定装置も他の眼科装置と同様に一定の大きさの眼科装置として医療機関に設置される設置型の装置である。こうした角膜形状測定装置についても、より小型化が期待されている。角膜形状測定装置は、診断を正確に行う意味で必要な装置であるので、とこにでも移動可能な小型装置とするほどの要請は乏しい。
【0008】
また、特許文献2のモバイル処理デバイスは、携帯端末にマイヤーリング生成光源を備えたものであり、医師が容易に持参でき、患者の眼を容易に撮影したり、撮影画像を処理したりできる構造形態である。しかし、患者は医師によって撮像して診察もらわなければならず、また、片眼ずつ撮影するものであることから、個人宅、遠隔地、離島、途上国等において、医師がいない場合には使用できない。
【0009】
一方、眼に障害等がある患者にとっては、病院で医師に診断してもらった後の経過観察を継続的にしてもらいたいし、医師にとっても患者の症状を継続的に経過観察することは障害等の悪化を把握したい。特に、設備の整わない個人宅、遠隔地、離島、途上国等においては、何らかの簡易的な装置で眼の診断の参考になる補助的なデータを取得し、そのデータを遠隔地の医師に送信できれば、離れたところにいる医師に現在の経過状況を見てもらうことができる。また、離れたところにいる医師のところに出向いて初診してもらうか、精密検査してもらうかの判断を医師に委ねることもできる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、その目的は、携帯端末とリング光とを併用して眼球に投影された投影光を撮影し、得られた撮影データに基づいて円錐角膜、乱視、斜視等を簡易的に診断補助する簡易診断補助装置、及びそうした装置で得た診断補助データを用いて遠隔での診断補助を可能にする診断補助システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る簡易診断補助装置は、カメラと送受信機能とを有する携帯端末が、両眼にリング光を同時に投影するための光源を一体又は別体として備えてなる円錐角膜及び/又は乱視の簡易診断補助装置であって、前記光源が前記携帯端末に別体として設けられる場合は該携帯端末に取り付けられて前記リング光を発光し、前記光源が前記携帯端末に一体として設けられる場合は該携帯端末から前記リング光を発光し、前記カメラは、前記リング光が投影する両眼の投影像を同時に撮影する、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、携帯端末が光源を一体又は別体として備えてなるので、両眼に投影されたリング光をカメラで同時且つ容易に撮影することができ、得られた撮影データに基づいて、それぞれの眼の円錐角膜、乱視、斜視等の診断を迅速且つ簡易的に行うことができる。携帯端末はカメラと送受信機能を少なくとも有するので、光源を一体又は別体として備えることで、設備の整わない個人宅、遠隔地、離島、途上国等において特に簡易的に撮影データを取得できる有効なツールとなり、離れたところにいる医師に撮影データをみてもらうことで、医師の簡易診断を受けることができ、また、経過観察等においても医師に現状を見てもらうことができる。また、カメラはリング光が投影する両眼の投影像を同時に撮影するので、従来の装置では片眼毎に撮影しているのに対して、両眼同時に撮影することができる。こうすることにより、一度の撮影で済むので、設備の整わない場合や撮影してくれる他者がいない場合の個人宅、遠隔地、離島、途上国等においても、簡便に撮影できる。
【0013】
本発明に係る簡易診断補助装置において、前記光源は、前記携帯端末のディスプレイを視認できる側に向けて配置される、
【0014】
この発明によれば、光源が携帯端末のディスプレイを視認できる側に向けて配置される構造形態であるので、両眼にリング光が映っていることを携帯端末のディスプレイを見て自身で確認した上で、自ら撮影(自撮り)することができる。
【0015】
本発明に係る簡易診断補助装置において、前記リング光は、多重リング光又は単一リング光である。
【0016】
この発明によれば、リング光は多重リング光であってもよいし、単一リング光であってもよく、こうしたリング光が両眼に投影された投影光を撮影し、その撮影データを画像処理することで、それぞれの眼の形状を解析でき、簡易的に円錐角膜、乱視、斜視等の診断の参考にすることができる。
【0017】
本発明に係る簡易診断補助装置において、前記リング光は、複数の点光源でリング状に構成されている、又は一本の線光源でリング状に構成されている。
【0018】
この発明によれば、リング光は複数の点光源でリング状に構成されているものでもよいし、一本の線光源でリング状に構成されているものでもよく、そのリング光の形態に応じた処理を行うだけで、それぞれの眼の形状を解析でき、簡易的に円錐角膜、乱視、斜視等の診断の参考にすることができる。なお、そうした処理は、携帯端末が内蔵するアプリケーションソフトで行ってもよいし、携帯端末から送信された撮影データを受信するコンピュータ端末が有するアプリケーションソフトで行ってもよい。
【0019】
本発明に係る簡易診断補助装置において、前記リング光は、その輪郭の所定の位置の色が他の位置の色と異なる。
【0020】
この発明によれば、リング光はその輪郭の所定の位置が他の位置と異なる特定色を含むので、例えば、輪郭を時計座標とした場合に0時、3時、6時、9時等の位置を特定色とすることで、座標位置を特定でき、撮影データの解析に効果的に利用できる。特に自撮りで撮影する本発明の簡易診断補助装置においては、こうした座標位置は撮影の助けになることがあり、好ましい。
【0021】
本発明に係る簡易診断補助装置において、前記カメラで撮影した撮影データに基づいて得られた眼球の形状から、前記円錐角膜、前記乱視、その他の眼球の診断補助を行う。
【0022】
この発明によれば、円錐角膜、乱視、その他の眼球の診断補助用として容易に行うことができる。具体的には、撮影した写真を撮影データとして解析し、その撮影データを処理して得た歪み形状等の解析情報を、円錐角膜、乱視、その他の眼球の診断補助に利活用する。
【0023】
本発明に係る簡易診断補助装置において、前記光源が前記携帯端末に一体として設けられる場合において、前記携帯端末は、前記リング光のコントラスト及び/又は照度の調整アプリケーションを内蔵し、前記光源が前記携帯端末に別体として設けられる場合において、前記光源は、前記リング光のコントラスト及び/又は照度の調整装置を内蔵する。
【0024】
この発明によれば、光源が携帯端末に一体として設けられる場合には、リング光のコントラスト及び/又は照度を内蔵するアプリケーションで調整することができ、調製された投影光を撮影することができる。また、光源が携帯端末に別体として設けられる場合には、リング光のコントラスト及び/又は照度を別体の光源が内蔵する調整装置で調整することができる。これらいずれの場合も、撮影された画像が見やすくなり、送信されたデータに基づいた補助診断補助が容易になる。
【0025】
(2)本発明に係る診断補助システムは、上記本発明に係る簡易診断補助装置と、該簡易診断補助装置から送信された診断補助情報を受信する端末とを有する、ことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、簡易診断補助装置が簡易的に円錐角膜、乱視、斜視等の診断等に利用できる撮影データを形成できるので、その撮影データを送信することで、送信データを離れた場所で受信できる。その結果、設備の整わない場合や撮影してくれる他者がいない場合の個人宅、遠隔地、離島、途上国等において特に有効な診断補助システムとなり、離れたところにいる医師に測定データをみてもらうことで、医師の知見を受けることができ、また、経過観察等においても医師に現状を見てもらうことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、携帯端末とリング光とを併用して両眼に同時に投影された投影光を撮影し、得られた撮影データに基づいて円錐角膜、乱視、斜視等を簡易的に診断補助する簡易診断補助装置、及びそうした装置で得た診断補助データを用いて、設備の整わない場合や撮影してくれる他者がいない場合の個人宅、遠隔地、離島、途上国等での診断補助を可能にする診断補助システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る簡易診断補助装置の例を示す概略図であり、(A)はリング形状の光源を別体として自分側に向けて取り付けた一例であり、(B)はリング形状の光源を別体として相手側に向けて取り付けた一例である。
図2】別体の光源を携帯端末に取り付けるための取付部の構造形態の一例であり、(A)は表示画面側の斜視図であり、(B)は表示画面の反対側の斜視図である。
図3】本発明に係る簡易診断補助装置の他の例を示す概略図であり、リング光を表示画面に表示して一体型の光源とした例である。
図4】リング光の形態の例であり、(A)は二重リング光の例であり、(B)は単一リング光の例である。
図5】多重リング光又は単一リング光において、(A)はそれぞれのリング光が複数の点光源でリング状に構成された例であり、(B)はそれぞれのリング光が一本の線光源でリング状に構成された例である。
図6】リング光の形状において、(A)は円形リング形状の例であり、(B)は矩形リング形状の例である。
図7】二重リングを備えた光源の他の一例を示す斜視図である。
図8】リング光が投影する両眼の投影像を同時に撮影した場合の例である。
図9】本発明に係る診断補助システムを利用した診断形態の例である。
図10】本発明に係る診断補助システムを利用したウエルネスシステムの例である。
図11】本発明に係る簡易診断補助装置を使用し、自撮りにより被験者の両眼の角膜面にリングが投影されている例である。
図12】得られた画像の処理の一例である。
図13】得られたリング画像の解析例である
図14】LEDの個数を変えたリングを用いた撮影画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る簡易診断補助装置及び診断補助システムについて図面を参照しつつ説明する。本発明は、本願記載の要旨を含む限り以下の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、種々の態様に変形可能である。
【0030】
[簡易診断補助装置]
本発明に係る簡易診断補助装置10は、図1及び図2に示すように、カメラ2と送受信機能3とを有する携帯端末10Aが、両眼にリング光を同時に投影するための光源1を一体又は別体として備えてなる円錐角膜及び/又は乱視の簡易診断補助装置10であって、光源1が携帯端末10Aに別体として設けられる場合はその携帯端末10Aに取り付けられてリング光を発光し、光源1が携帯端末10Aに一体として設けられる場合はその携帯端末10Aからリング光を発光し、カメラ2はリング光が投影する両眼の投影像を同時に撮影する、ことに特徴がある。
【0031】
この簡易診断補助装置10は、携帯端末10Aが光源1を一体又は別体として備えてなるので、両眼に投影されたリング光をカメラ2で同時且つ容易に撮影することができ、得られた撮影データに基づいて、それぞれの眼の円錐角膜、乱視、斜視等の診断を迅速且つ簡易的に行うことができる。携帯端末10Aはカメラ2と送受信機能3を少なくとも有するので、光源1を一体又は別体として備えることで、設備の整わない個人宅、遠隔地、離島、途上国等において特に簡易的に撮影データを取得できる有効なツールとなり、離れたところにいる医師に撮影データをみてもらうことで、医師の簡易診断を受けることができ、また、経過観察等においても医師に現状を見てもらうことができる。また、カメラ2はリング光が投影する両眼の投影像を同時に撮影するので、従来の装置では片眼毎に撮影しているのに対して、両眼同時に撮影することができる。こうすることにより、一度の撮影で済むので、設備の整わない場合や撮影してくれる他者がいない場合の個人宅、遠隔地、離島、途上国等においても、簡便に撮影できる。
【0032】
以下、各構成要素について説明する。
【0033】
[携帯端末]
携帯端末10Aは、図1及び図2に示すように、通常、カメラ2と送受信機能3とを少なくとも有する。送受信機能3は、通信携帯端末として機能する携帯端末10Aが通常有する機能であるが、通信契約がされずにデータの送受信ができない場合でも送受信機能自体は備えている。カメラ2も、携帯端末10Aに通常設けられており、表示画面(「ディスプレイ」ともいう。)の反対面に設けられているメインカメラと、表示画面側に設けられているサブカメラとを有している。メインカメラは、自分側ではない撮影対象を表示画面で見ながら撮影する場合に使用され、サブカメラは、自分側の撮影対象を表示画面で見ながら撮影する場合に使用される。本発明では自ら両眼を撮影(自撮り)するので、サブカメラが使用される。光源も、携帯端末10Aに通常設けられており、写真撮影時のフラッシュ用や非常灯用等として利用されているが、本発明で適用する光源1は、この光源ではない。本発明で適用する光源1は、携帯端末10Aと一体又は別体として設けられるものである。
【0034】
(光源)
光源1は、携帯端末10Aが予め有している光源1(1a,1b)をそのまま使用するものではなく、一体又は別体の光源である。光源1が携帯端末10Aに別体として設けられる場合は、携帯端末10Aに取り付けられてリング光を発光する。一方、光源1が携帯端末10Aに一体として設けられる場合は、携帯端末10Aが有する表示画面5からリング光を発光する。
【0035】
別体の光源1は、図1及び図7に示すように、携帯端末10Aの上部に別部材として取り付けた光源1aを代表例として挙げることができる。図1(A)は、リング形状の光源1aを別体として自分側に向けて取り付けた一例であり、図1(B)は、リング形状の光源1aを別体として相手側に向けて取り付けた一例である。図1(A)及び図1(B)の光源1aは、設置の向きが自分側であるか相手側であるかは違うが、同じリング形状の光源1aとすることができる。また、図7に示す光源1は、円錐状又はラッパ状といえる形態であり、端部には大径のリング形状の光源1aが配置され、内周面には小径のリング形状の光源1aが配置されている。
【0036】
別体の光源1は、図2及び図7に示すように、携帯端末10Aに取り付けるための取付部1bを有している。取付部1bは、携帯端末10Aのカメラ側の上部に光源1aを取り付けるための構造部材であり、その構造形態は特に限定されないが、図2に示すように、カメラや表示画面を隠さずに携帯端末10Aの上部を挿入できる構造形態を例示できる。別体の光源1aの設置の向きを、自分側とすることも相手側とすることも可能であるが、本発明では、自撮りできることが望ましいので、取付部1bの構造形態は、自分側に向けて取り付け容易な形態であることが好ましい。具体的には、図1(A)及び図7に示すように光源1aの設置の向きを自分側として取り付けるので、取付部1bは、撮影用のサブカメラ2bを覆わなければよく、表示画面5がない側の平坦面側を広く覆う構造形態としてもよい。なお、図1(B)に示すように、光源1aの設置の向きを相手側とすることも可能であり、この場合では取付部1bは撮影用のメインカメラ2aを覆わず、且つ表示画面5を過度に覆わない構造形態とする必要があり、取付部1bが携帯端末10Aのフレームに係合する構造形態とすることが好ましい。
【0037】
なお、別体の光源1aは、図1図2及び図7に示すリング形状の光源に限定されず、リング光を発光できる液晶パネル1cを携帯端末10Aの上部に取り付ける形態にものであってもよい。また、光源1は、USB等の有線、WiFi等の無線通信で携帯端末10Aに接続される。
【0038】
一体の光源1aは、図3に示すように、携帯端末10Aが有する表示画面5からリング光を発光するものである。この場合のリング光は、表示画面5にリング光を形成するアプリケーションソフトにより表示する。一体の光源1aを使用する場合は、表示画面の表れるリング光を自分で見るので、サブカメラ2bを使用しての自撮り撮影になり、本願発明では好ましく適用される。なお、一体の光源1aでは、別体の光源は不要であり、取付部1bも不要である。
【0039】
携帯端末10Aが有する表示画面5からリング光を発光する場合には、その発光形態を、図3に示す4重リングから、2重リング、3重リング又は単一リングに変更した画像を併せて得てもよいし、後述の図14のLED個数を変えたリング光に変更した画像を併せて得てもよい。リング光形態の異なる複数の画像を得ることにより、それらの画像を処理して定量化することで、様々な診断材料として活用できる。
【0040】
(リング光)
リング光は、両眼に投影される。リング光は、多重リング光(「2以上のリング光」又は「複数のリング光」と言い換えることができる。)であってもよいし、単一リング光であってもよい。両眼に投影されたリング光は、そのリング光が多重であっても単一であってもよく、カメラで撮影されて撮影データとし、その撮影データを画像処理することで、眼の形状を解析でき、簡易的に円錐角膜、乱視、斜視等の診断の参考にすることができる。円錐角膜、乱視、斜視等の診断は、非特許文献1等で知られているプラチド角膜形状測定装置での測定原理を利用した評価結果に基づいて行うことができる。その測定原理は、それぞれの眼球の表面に投影されたリング光の大きさから曲率半径が算出され、その曲率半径と角膜の屈折率によって角膜の屈折力が求められて診断に利用される。なお、撮影データの画像処理は、携帯端末10Aが内蔵するアプリケーションソフトで行ってもよいし、携帯端末10Aから送信された撮影データを受信するコンピュータ端末が有するアプリケーションソフトで行ってもよい。
【0041】
図4は、リング光の形態の例である。図4(A)は二重リング光21aの例であり、図4(B)は単一リング光21bの例である。リング光は、図4(A)のような二重でなくてもよく、三重でもそれ以上であってもよい。
【0042】
多重リング光又は単一リング光は、複数の点光源でリング状に構成されているものでもよいし、一本の線光源でリング状に構成されているものでもよい。図5(A)は、それぞれのリング光が複数の点光源でリング状に構成された例であり、図5(B)は、それぞれのリング光が一本の線光源でリング状に構成された例である。点光源としてはLEDが用いられ、LEDをリング状に配置して図5(A)に示すリング光が構成される。線光源としては蛍光管又はLED管でリング状に配置して図5(B)に示すリング光が構成される。なお、図7でも、それぞれのリング光が複数の点光源でリング状に構成された例を示しているが、これに限定されない。
【0043】
リング光は、図5に示すように、その輪郭の所定の位置(a,b,c,d)の色が他の位置の色と異なるようにしてもよい。こうすることにより、輪郭を時計座標とした場合に0時、3時、6時、9時等の位置(a,b,c,d)を特定することができ、撮影データの解析に効果的に利用できる。所定の位置の色は特に限定されないが、異なる色のLEDを各位置(a,b,c,d)に配置することで実現できる。特に自撮りで撮影する本発明の簡易診断補助装置10においては、こうした座標位置は撮影の助けになることがあり、好ましい。
【0044】
リング光の形状は、図6(A)に例示する円形リング形状であってもよいし、図6(B)に例示する矩形リング形状であってもよい。円形リング形状は、真円、楕円等を挙げることができる。光源の形状が円形の場合は、円形リング形状とすることが好ましい。矩形リング形状は、正三角形、正四角形、正五角形、その他多角形を挙げることができる。光源の形状が矩形の場合は、矩形のリング形状とすることが好ましい。矩形の光源としては、スマートフォン等の携帯端末10Aの外縁部を光源とする場合や、携帯端末10Aを保護する保護カバー等の周縁部を光源とする場合を挙げることができる。こうした形状のリング光を投影した撮影データは、アプリケーションソフトで処理され、眼の形状が解析される。
【0045】
(カメラ)
カメラ2は、携帯端末10Aに通常設けられており、表示画面(「ディスプレイ」ともいう。)の反対面に設けられているメインカメラ2aと、表示画面側に設けられているサブカメラ2bとを有している。メインカメラ2aは、自分側ではない撮影対象を表示画面5で見ながら撮影する場合に使用されるが、本発明では自撮りが望ましい態様であるので、サブカメラ2bは、自分側の撮影対象を表示画面5で見ながら自撮り撮影することができ、好ましく使用される。なお、光源1は、カメラ2の撮影の邪魔にならない位置に設けられている。
【0046】
カメラ2は、本発明では、リング光が投影する両眼の投影像(図8及び図11等を参照)を同時に撮影する。従来の装置では片眼毎に撮影しているのに対して、本発明ではカメラ2で両眼の投影像を同時に撮影するので、一度の撮影で済む。その結果、設備の整わない場合や撮影してくれる他者がいない場合の個人宅、遠隔地、離島、途上国等においても、簡便に撮影できる。
【0047】
カメラ2で撮影した撮影データにより、画像処理により眼球の形状を解析できる。その結果、円錐角膜、乱視、その他の眼球の診断補助を行うことができる。具体的には、撮影した写真を撮影データとして解析し、その撮影データを処理して得た歪み形状等の解析情報を、円錐角膜、乱視、その他の眼球の診断補助に利活用する。
【0048】
(送受信機能)
送受信機能3は、通信装置として機能する携帯端末10Aが通常有する機能である。なお、通信契約がされずにデータの送受信ができない場合でも、携帯端末10Aは送受信機能自体を備えている。この送受信機能3により、撮影された撮影データを遠隔のコンピュータ端末等に送信したり、撮影データを携帯端末10Aで演算処理した場合にはその演算データを遠隔のコンピュータ端末等に送信したりすることができる。送受信機能は、撮影データを専用アプリケーションであってもよいし、電子メール等のような携帯端末10Aが有する汎用アプリケーションであってもよく、特に限定されない。
【0049】
(光源調整等)
図3に示すように光源1が携帯端末10Aに一体として設けられる場合、携帯端末10Aは、リング光のコントラスト及び/又は照度の調整アプリケーションを内蔵してもよい。こうすることにより、撮影された画像が見やすくなり、送信されたデータに基づいた診断補助が容易になる。
【0050】
また、携帯端末10Aは、撮影時にアライメント調整するアプリケーションや、センタリング調整するアプリケーションを有していてもよい。こうすることにより、画像を診断しやすい状態で撮影できる。
【0051】
また、図1に示すように光源1が携帯端末10Aに別体として設けられる場合、光源1は、リング光のコントラスト及び/又は照度の調整装置(図示しない)を内蔵してもよい。こうすることにより、撮影された画像が見やすくなり、送信されたデータに基づいた補助診断補助が容易になる。なお、光源1が調整装置を内蔵しない場合は、携帯端末10Aが調整アプリケーションを内蔵し、その調整アプリケーションが光源1のコントラストや照度を制御してもよい。
【0052】
[診断補助システム]
本発明に係る診断補助システムは、上記本発明に係る簡易診断補助装置10と、その簡易診断補助装置10から送信された診断補助情報を受信する端末(「診断補助端末」という。)とを有することに特徴がある。簡易診断補助装置10が簡易的に円錐角膜、乱視、斜視等の診断等に利用できる撮影データを形成できるので、この診断補助システムによって、実際に得た撮影データを携帯端末10Aから診断補助端末に送信することで、送信データを離れた場所で受信できる。その結果、設備の整わない個人宅、遠隔地、離島、途上国等において特に有効な診断補助システムとなり、離れたところにいる医師に測定データをみてもらうことで、医師の知見を受けることができ、また、経過観察等においても医師に現状を見てもらうことができる。なお、簡易診断補助装置10については既に詳しく説明したのでここではその説明を省略する。
【0053】
診断補助端末は、医療機関で医師が診療に使用するコンピュータ端末等であることが好ましいが、医師が使用するスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末であってもよい。
【0054】
図9は、本発明に係る診断補助システムを利用した診断形態の一例である。本発明に係る診断補助システムは、先ず、図9(A)のステップAでは、簡易診断補助装置10で自分の両眼を自撮り撮影し、必要に応じて処理したデータを医療機関に送信する。受信したデータに基づいて医師の簡易診断が行われる。送信されたデータに基づく簡易診断は、例えば、集団検診、再診、経過観察等が対象となり得るが、簡易診断を経ることにより、医師は、来院して直接診療が必要であるか否かの判断や、来院せずに遠隔のまま指導や経過観察等の継続判断を行うことができる。その結果、設備の整わない場合や撮影してくれる他者がいない場合の個人宅、遠隔地、離島、途上国等でも容易に使用でき、離れたところにいる医師にデータをみてもらうことで、医師の知見を受けることができる。
【0055】
図9(B)のステップBは、来院して直接診療する場合であり、医師は医療機関に設置された眼科装置で詳しい検査を行い、その後の治療方針等を判断することができる。
【0056】
図9(C)のステップCは、診断の結果、例えば円錐角膜の兆候が見つかったら、そうした円錐角膜の治療や進行抑制に効果がある処置を行うことができる。例えば、本発明者らが既に提案した特許第6175210号のめがね型のバイオレットライト照射装置等を適用することができる。
【0057】
図9(D)のステップDでは、その後、経過観察を継続的に行うことができ、来院せずに遠隔のまま指導や経過観察等の継続判断を行うことができる。
【0058】
図10は、本発明に係る診断補助システムを利用したウエルネスシステムの例である。診断補助システムにより、設備の整わない個人宅、遠隔地、離島、途上国等のように、離れたところにいる人々にとって、医師の簡易診断により、早期診断や早期予防が可能となり、来院して直接診療が必要であるか否かの判断や、来院せずに遠隔のまま指導や経過観察等の継続判断をしてもらうことができる。
【実施例
【0059】
以下に、実際に撮影した画像を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0060】
図11は、自撮りにより被験者の両眼の角膜面にリングが投影されている例である。図11(A)は二重リングを投影させた例であり、被験者の乱視度は3dioptersの場合である。図11(B)も二重リングを投影させた例であり、被験者の乱視度は0.5dioptersの場合である。図11(C)は単一リングを投影させた例であり、被験者は不正乱視の例である。乱視度が大きい又は不正乱視の被験者の画像は、リングが楕円形であったが、乱視度が小さい被験者は正円であり、両者の違いを簡易に判断することができる。こうした画像を医師に送信して画像処理すれば、医師による診断が可能であり、定量化することができる。
【0061】
図12は、得られた画像の処理の一例であり、一番左側の撮影画像をEdge detection処理、Segmentation処理、SURF処理した例である。これらより、臨床的な角膜トポグラフィーとは異なることが理解でき、画像処理により定量化することで、簡易診断をより効率的に行うことができる。
【0062】
図13は、得られたリング画像の解析例である。これは真円度分析を行った例である。図13の例は、真円度分析では楕円となり、正乱視眼と判断できる。真円度分析により、楕円性や不整性がある場合には円錐角膜の疑についても簡易判断できる。
【0063】
図14は、LEDの個数を変えたリングを用いた撮影画像の例である。LEDの個数や配置を変更することにより、眼球に投影されたリング光の画像はそれぞれの特徴をもっている。リングの特徴に応じた画像を処理して定量化することで、簡易診断をより効率的に行うことができる。また、携帯端末10Aが有する表示画面5から、こうした他形態のリング光を発光した画像を併せて得ることで、リング光形態の異なる複数の画像を得て画像処理することで、様々な診断材料として活用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 光源
1a 別体としての光源
1b 取付部
1c 液晶パネル
2 カメラ
2a メインカメラ
2b サブカメラ
3 送受信機能
5 表示画面
10 簡易診断補助装置
10A 携帯端末
21a 二重リング光
21b 単一リング光
a,b,c,d 所定の位置



【要約】
【課題】携帯端末とリング光とを併用して眼球に投影された投影光を撮影し、得られた撮影データに基づいて円錐角膜及び乱視等を簡易的に診断補助する簡易診断補助装置及び診断補助システムを提供する。
【解決手段】カメラ2と送受信機能3とを有する携帯端末10Aが、両眼にリング光を同時に投影するための光源1を一体又は別体として備えてなる円錐角膜及び/又は乱視の簡易診断補助装置10であって、光源1が携帯端末10Aに別体として設けられる場合はその携帯端末10Aに取り付けられてリング光を発光し、光源1が携帯端末10Aに一体として設けられる場合はその携帯端末10Aからリング光を発光し、カメラ2はリング光が投影する両眼の投影像を同時に撮影するように構成して上記課題を解決した。リング光は、多重リング光又は単一リング光とすることができ、複数の点光源でリング状に構成されている又は一本の線光源でリング状に構成されているように構成できる。
【選択図】図1



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14