(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】有機インク装飾および高い耐衝撃性を有する積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 17/10 20060101AFI20221128BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B32B17/10
C03C27/12 D
C03C27/12 N
(21)【出願番号】P 2019563625
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 US2018032625
(87)【国際公開番号】W WO2018213213
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー,トーマス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フリスケ,マーク スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】フーテン,ティモシー スコット
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512175(JP,A)
【文献】特開2004-002055(JP,A)
【文献】特開2011-190133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0084640(US,A1)
【文献】特開2010-138008(JP,A)
【文献】特表2005-523866(JP,A)
【文献】特表平8-500304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 27/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1.5~3mmの外側プライ;
厚さ0.05~1.2mmの強化ガラス基板を含む内側プライ;
前記内側プライと前記外側プライとの間の中間層;ならびに、
前記外側プライと前記中間層との間に、前記内側プライと前記中間層との間に、または前記外側プライと前記中間層との間および前記内側プライと前記中間層との間の双方に配置されるように前記外側プライおよび前記内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾
を含む装飾積層体であって、
時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する、装飾積層体。
【請求項2】
前記外側プライが、
化学的および/または機械的に強化されていないか、アニールされているか、または熱強化されており、かつ前記内側プライよりも低い表面圧縮応力を有し、前記内側プライが
化学的、熱的および/または機械的に強化されている、請求項1記載の装飾積層体。
【請求項3】
前記内側プライが化学強化されている、請求項1または2記載の装飾積層体。
【請求項4】
前記内側プライが0.05~0.7mmの厚さを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【請求項5】
前記有機イン
ク装飾が5~25マイクロメートルの厚さを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【請求項6】
前記外側プライがソーダ石灰ガラスを含み、前記ポリマー中間層がポリビニルブチラールを含み、前記内側プライがイオン交換されたガラスであり、かつ前記有機インク印刷装飾が硬化性インクである、請求項1から5までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【請求項7】
前記中間層が0.125mm~3.0mmの厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【請求項8】
前記中間層が0.25mm~1.6mmの厚さを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【請求項9】
前記中間層が、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、またはそれらの組み合わせから成る群より選択されるポリマーを含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【請求項10】
前記外側プライが厚さ(t
o)を有し、強化ガラスを含む内側プライが厚さ(t
i)を有し、t
o:t
iの比が1~20である、請求項1から9までのいずれか1項記載の装飾積層体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2017年5月15日に出願された米国仮特許出願第62/506018号の優先権を主張するものであり、本明細書では、その内容に依拠し、その全体を参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、有機インク装飾を有する積層体に関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第一の態様は、厚さ1.5~3mmの未強化ガラス基板を含む外側プライ;厚さ0.05~0.7mmの化学強化ガラス基板を含む内側プライ;内側プライと外側プライとの間のポリマー中間層;ならびに、外側プライと中間層との間に、内側プライと中間層との間に、または外側プライと中間層との間および内側プライと中間層との間の双方に配置されるように外側プライおよび内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾を含む装飾積層体であって、時速75~85マイル(時速約120.7~136.8キロメートル)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する装飾積層体に関する。
【0004】
本開示の第二の態様は、厚さ1.5~3mmの外側プライ;厚さ0.05~1.2mmの強化ガラス基板を含む内側プライ;内側プライと外側プライとの間の中間層;ならびに、外側プライと中間層との間に、内側プライと中間層との間に、または外側プライと中間層との間および内側プライと中間層との間の双方に配置されるように外側プライおよび内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾を含む装飾積層体であって、時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する装飾積層体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】商用の積層体(100)、例えばフロントガラスの公知の構成を図示しており、これは通常、2プライガラスおよびポリマー中間層を含む。2プライガラスは、平坦であってもよいし、3次元の形状に形成されていてもよい。本開示において、取付時に乗り物の外側に面する積層体側を、表面1(S1;外側)(110)と表記した。中間層に結合しているS1表面の反対側を、表面2(S2;中間層に結合)(120)と表記する。一方、取付時に乗り物の内側に面する積層体側を、表面4(S4;内側)(140)と表記し、その反対側を、表面3(S3;中間層に結合)(130)と表記する。
【
図2A】外側プライ(210)と、内側プライ(220)と、PVBのようなポリマー中間層(230)とを有する公知の従来の自動車用積層体(200)の断面概略図を示し、装飾ガラス/セラミックスエナメルフリット(240)が、S2、S4、またはS2およびS4双方の表面にあることが示されている。
【
図2B】外側プライ(210)と、内側プライ(220)と、PVBのようなポリマー中間層(230)とを有する公知の従来の自動車用積層体(200)の断面概略図を示し、装飾ガラス/セラミックスエナメルフリット(240)が、S2、S4、またはS2およびS4双方の表面にあることが示されている。
【
図2C】外側プライ(210)と、内側プライ(220)と、PVBのようなポリマー中間層(230)とを有する公知の従来の自動車用積層体(200)の断面概略図を示し、装飾ガラス/セラミックスエナメルフリット(240)が、S2、S4、またはS2およびS4双方の表面にあることが示されている。
【
図3】公知の屋根ガラス積層体を示しており、この屋根ガラス積層体は、(300)の箇所で破損しており、破壊断面(310)は、破損の起点が、S2に存在するガラス/セラミックエナメルフリットにおける前縁部付近(図の下側部分)で生じたことを詳細に示しており、破損部分(ここでは「X」)の概略図(320)は、破壊の起点の位置を示す。
【
図4】ベアフロートガラス、ガラス/セラミックスエナメルフリットを有するフロートガラス、および有機インクを有するフロートガラスについての強度のワイブルプロット(リングオンリング法(ring-on-ring method)により測定)を示す。このデータは、ガラス/セラミックスエナメルフリットによって強度が50%より多く低下する一方で、それとは対照的に、有機インクが存在してもガラスの強度に大きな影響はないことを示す。
【
図5】積層ガラスパネルに45度の入射角で1グラムの玉軸受を衝突させた際に破壊を引き起こす速度を示すワイブルプロットを表す。このデータは、S2上で有機インクを用いて作製された積層体が、表面2上で従来のガラス/セラミックスエナメルフリットを用いて従来の構造により作製された積層体と比べて、破壊を引き起こすのに、はるかにより高い速度を必要とすることを示す。これは、S2上で有機インクを使用しても、S2上で装飾を用いない積層体に比べて、耐衝撃性に対して不利な効果がないことも示す。
【
図6】外側プライ(610)と、内側プライ(620)と、PVBのようなポリマー中間層(630)とを有する積層体(600)を示し、S3上に装飾用有機インク(640)が配置されている、本開示の実施形態の概略図を示す。他の実施形態において、インク(640)は、表面S2、S3、またはS2およびS3上に配置されていてもよい。好ましい実施形態において、積層体は、非対称性が非常に高く、例えば、外側プライは、内側プライより少なくとも2倍厚い。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面があればこれを参照して、本開示の様々な実施形態を詳細に説明する。様々な実施形態を参照することで本発明の範囲が限定されるものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書に記載のいずれの例も、限定するものではなく、単に、特許請求の範囲に記載の本発明の多くの可能な実施形態の幾つかを示すに過ぎない。
【0007】
定義
「含む(Include、includes)」または類似用語は、包含するが、これに限定されないこと、すなわち包括的かつ非排他的であることを意味する。
【0008】
例えば、本開示の実施形態の説明において用いられる、組成物中の原料の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流速、圧力、粘度、ならびに類似する値およびそれらの範囲、または構成要素の寸法、ならびに類似する値およびそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、複合材、濃縮物、構成部品、製品または使用配合物の製造に使用される一般的な測定および取り扱い手順により、これらの手順における不注意な誤りにより、方法を実施するために使用される出発材料または成分の製造、供給源または純度の違い、および類似した考慮すべき事項により生じ得る、数的な量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期濃度または混合度を有する組成物または調製物のエージングを理由に異なる量、および特定の初期濃度または混合度を有する組成物または調製物の混合または加工を理由に異なる量も包含する。
【0009】
「任意の」または「任意で」とは、その後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、およびこの記載が、その事象または状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。
【0010】
不定冠詞「1つの(aまたはan)」およびその相応する定冠詞「その(the)」は、本明細書で使用されているように、特に明記されていない限り、少なくとも1つまたは1つ以上を意味する。
【0011】
当業者によく知られた略語を使用してもよい(例えば、時間を表す「h」または「hrs」、グラム(複数可)を表す「g」または「gm」、ミリリットルを表す「mL」、室温を表す「rt」、ナノメートルを表す「nm」等の略語)。
【0012】
成分、原料、添加剤、寸法、条件、時間および類似した態様、ならびにそれらの範囲について開示されている特定かつ好ましい値は、説明のみを目的としており、その他の定義された値、または定義された範囲内のその他の値を排除するものではない。本開示の組成および方法は、明示または暗示された中間値および範囲を含む、任意の値、またはこれらの値の組み合わせ、具体的な値、より具体的な値、および本明細書に記載の好ましい値を含み得る。
【0013】
窓、自動車用ガラス、例えばフロントガラスまたはサンルーフとして使用可能な中間層が介在する対向ガラスプライ(シートであり得る)を含む積層体。積層体を表面に関して説明することができる。表面4は、1つのガラスプライの第一の主表面上にあり、最も内側の表面(乗り物または建築物の内側の部分を形成)を形成し、表面3は、同じガラスプライの表面4に対向する主表面である。表面2は、その他のガラスプライの主表面であり、表面3に隣接(表面2と表面3とを分離する中間層を有する)しており、表面1は、同じガラスプライの表面2に対向する主表面である。表面1は、積層体の外表面を形成する(すなわち、乗り物または建築物の外側に面する)。特定の用途において、高い機械的強度と、衝突物からの損傷に対する耐久性と、音響減衰特性とを有する積層体は、安全な障壁をもたらすのに望ましく、少なくとも1つの基板が、表面の亀裂を原因として積層体破壊を起こす可能性を低減する。多くの場合、積層体は、表面2、3、4、またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上に溶着された装飾ガラスまたはセラミックエナメルフリットを含む。この装飾ガラス/セラミックスエナメルフリットは、通常積層体の周囲に隣接した領域に施与される。幾つかの実施形態において、フリットは、積層体をその骨組みまたは構造体に取り付けるために使用される接着材料のUV光劣化を防止するためにUV遮断層として作用し、また化粧目的で、例えば、骨組みと、ガラス積層体の位置を固定するために必要な接着剤とが見えないようにするよう作用する。表面2上にガラス/セラミックスエナメルフリットが存在すると、おそらく積層体表面に対する衝撃により引き起こされるこの表面のたわみを原因として、積層体ルーフパネルの破壊を引き起こすことが近年判明した。
【0014】
使用の間、ガラス積層体は、外部衝撃の事象に応じた破壊に対して耐久性を示すことが望ましい。表面2もしくは4または双方における装飾ガラス/セラミックエナメルフリットのたわみを原因とした破壊は、実世界の積層体の破損のメカニズムであると判明した。
【0015】
現場でのガラス積層体の取り換えは、石衝撃を原因とする。石衝撃は、鈍い(ヘルツ)接触、鋭い接触およびたわみを含む幾つかのメカニズムにより、積層体の破壊を招き得る。鈍い(ヘルツ)接触により、表面1(積層体の外側に面する表面を形成する)の既存の欠陥から始まり、その後、外側プライの厚さ全体にわたり伝播するリング/コーンクラックが生じる。鋭い接触により、外側プライの厚さ全体にわたり伝播し、その後、ラジアル/メディアンクラックを生成する損傷が生じる。積層体のたわみにより、表面#2(中間層に隣接した外側プライの表面)および/または表面#4(内側プライの内表面)において欠陥が活発化する。装飾ガラス/セラミックスエナメルフリットは、フリットが付着している表面またはガラスプライの強度を低下させると判明した。耐衝撃性を改善するためには、装飾ガラス/セラミックエナメルフリットを原因とする低い耐衝撃性の破損モードに対処することが望ましい。というのも、衝撃の間の歪みが大きくなるほど、表面2および4の応力場がより高くかつ大きくなり、たわみがより重大になり、特に積層体がより薄くなるからである。
【0016】
本開示の1つ以上の実施形態は、外側プライガラス基板;強化された内側プライガラス基板;内側プライと外側プライとの間に配置された中間層;ならびに、未強化ガラスとポリマー中間層との間、強化ガラスとポリマー中間層との間、またはこれら双方、すなわち、S2、S3もしくはこれら双方の間の一方または双方の積層体内表面上にある有機インク印刷装飾を含む装飾積層体に関する。1つ以上の実施形態において、表面1、表面4、または表面1および4の双方は、実質的にインクを含まない。
【0017】
1つ以上の実施形態において、外側プライは、強化されていなくても、アニールされていても、または熱強化されていてもよいが、外側プライは、(表面圧縮応力、深さもしくは圧縮応力層、または表面圧縮応力および深さもしくは圧縮応力層の双方に関して)強化された内側プライよりも強度レベルが低い。1つ以上の実施形態において、外側プライは、厚さが、例えば、1.5mm超~4mm、1.5mm超~3.8mm、1.5mm超~3.6mm、1.5mm超~3.5mm、1.5mm超~3.4mm、1.5mm超~3.2mm、1.5mm超~3mm、1.5mm超~2.8mm、1.5mm超~2.6mm、1.5mm超~2.5mm、1.5mm超~2.2mm、1.5mm超~2mm、1.6mm~約4mm、1.8mm~約4mm、2mm~約4mm、2.1mm~約4mm、2.5mm~約4mm、2.8mm~約4mm、3mm~約4mm、または3.5mm~約4mmの範囲にあり、これらには、中間の値および範囲が含まれる。
【0018】
1つ以上の実施形態において、内側プライは、厚さが、約0.01mm~約1.5mm、0.02mm~約1.5mm、0.03mm~約1.5mm、0.04mm~約1.5mm、0.05mm~約1.5mm、0.06mm~約1.5mm、0.07mm~約1.5mm、0.08mm~約1.5mm、0.09mm~約1.5mm、0.1mm~約1.5mm、約0.15mm~約1.5mm、約0.2mm~約1.5mm、約0.25mm~約1.5mm、約0.3mm~約1.5mm、約0.35mm~約1.5mm、約0.4mm~約1.5mm、約0.45mm~約1.5mm、約0.5mm~約1.5mm、約0.55mm~約1.5mm、約0.6mm~約1.5mm、約0.65mm~約1.5mm、約0.7mm~約1.5mm、約0.01mm~約1.4mm、約0.01mm~約1.3mm、約0.01mm~約1.2mm、約0.01mm~約1.1mm、約0.01mm~約1.05mm、約0.01mm~約1mm、約0.01mm~約0.95mm、約0.01mm~約0.9mm、約0.01mm~約0.85mm、約0.01mm~約0.8mm、約0.01mm~約0.75mm、約0.01mm~約0.7mm、約0.01mm~約0.65mm、約0.01mm~約0.6mm、約0.01mm~約0.55mm、約0.01mm~約0.5mm、約0.01mm~約0.4mm、約0.01mm~約0.3mm、約0.01mm~約0.2mm、約0.01mm~約0.1mm、約0.04mm~約0.07mm、約0.1mm~約1.4mm、約0.1mm~約1.3mm、約0.1mm~約1.2mm、約0.1mm~約1.1mm、約0.1mm~約1.05mm、約0.1mm~約1mm、約0.1mm~約0.95mm、約0.1mm~約0.9mm、約0.1mm~約0.85mm、約0.1mm~約0.8mm、約0.1mm~約0.75mm、約0.1mm~約0.7mm、約0.1mm~約0.65mm、約0.1mm~約0.6mm、約0.1mm~約0.55mm、約0.1mm~約0.5mm、約0.1mm~約0.4mm、または約0.3mm~約0.7mmの範囲にある。
【0019】
1つ以上の実施形態において、外側プライは、外側プライ厚さ(to)を、内側プライは、内側プライ厚さ(ti)を、0.05mm~1mmの範囲で有し、to/tiは、1~20、3~20、3~15、4~10等の範囲の比にあり、これらには、中間の値および範囲が含まれる。
【0020】
外側プライは、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリ含有アルミノケイ酸ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリ含有ホウアルミノケイ酸ガラスのうちのいずれか1つであってもよい。内側プライは、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウアルミノケイ酸ガラス、アルカリ含有アルミノケイ酸ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリ含有ホウアルミノケイ酸ガラスのうちのいずれか1つであってもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを強化してもよい。1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを、表面から圧縮深さまたは圧縮応力層深さ(DOL)にまで広がる圧縮応力を含むように強化してもよい。表面の圧縮応力は、表面CSと称される。CS領域は、引張応力を示す中央部分によりバランスがとられている。DOLでは、圧縮応力から引張応力へと応力が移っている。本明細書において、圧縮応力および引張応力は、絶対値として記載される。
【0022】
1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを2つ以上の工程で強化して、第一の部分的な強度レベル(すなわち、表面CSおよびDOLに関して部分的な最終強度レベルの程度まで強化すること)および最終強度レベルを達成する。1つ以上の実施形態において、内側ガラスプライを強化するために使用される強化プロセスは、熱的な強化プロセス、化学的な強化プロセスおよび機械的な強化プロセスのうちのいずれかまたは組み合わせを含んでいてもよい。
【0023】
1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを、圧縮応力領域と、引張応力を示す中央領域とを生じさせる物品部分の間の熱膨張係数の不一致を利用することにより、機械的に強化してもよい。幾つかの実施形態では、内側ガラスプライを、ガラスをガラス転移点超の温度に加熱し、その後、急速に焼き入れすることにより、熱的に強化してもよい。
【0024】
1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを、イオン交換により化学的に強化してもよい。イオン交換プロセスにおいて、内側ガラスプライの表面にある、または表面付近にあるイオンは、同じ価数または酸化状態を有するより大きなイオンで置き換え(または交換)される。内側ガラスプライがアルカリアルミノケイ酸ガラスを含む実施形態において、物品の表面層のイオンおよびより大きなイオンは、一価アルカリ金属カチオン、例えば、Li+、Na+、K+、Rb+およびCs+である。あるいは、表面層の一価カチオンを、アルカリ金属カチオン以外の一価カチオン、例えばAg+等と置き換えてもよい。そのような実施形態では、内側ガラスプライに交換で導入された一価イオン(またはカチオン)により応力が生じる。アルカリ金属酸化物を含有する内側ガラスプライを、イオン交換プロセスにより化学的に強化することができるものと理解されるべきである。
【0025】
イオン交換プロセスは、内側ガラスプライ中のより小さなイオンと交換すべきより大きなイオンを含有する溶融塩浴(または2種以上の溶融塩浴)中に内側プライを浸漬することにより実施されることが一般的である。また、水性塩浴を用いてもよいことに言及したい。さらに、浴(複数可)組成物は、1種より多くのより大きなイオン(例えば、Na+およびK+)または単一のより大きなイオンを含んでいてもよい。イオン交換プロセスのパラメーターは、浴の組成および温度、浸漬時間、塩浴(または浴)への内側ガラスプライの浸漬回数、複数の塩浴の使用、アニ-リング、洗浄等のさらなる工程を含むが、これらに限定されることはなく、通常、内側ガラスプライの組成(物品および存在する結晶相の構造を含む)、ならびに強化により生じる内側ガラスプライの望ましいDOLおよびCSにより決まると当業者により理解されるだろう。例示的な溶融浴組成物は、より大きなアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩および塩化物を含んでいてもよい。一般的な硝酸塩としては、KNO3、NaNO3、LiNO3、NaSO4およびそれらの組み合わせが挙げられる。溶融塩浴の温度は、約380℃~約450℃までの範囲にあることが一般的であるが、浸漬時間は、内側ガラスプライの厚さ、浴温度およびガラス(または一価イオン)の拡散率に応じて、約15分~約100時間までの範囲にある。しかしながら、上記とは異なる温度および浸漬時間を使用してもよい。
【0026】
1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを、約370℃~約480℃の温度を有する、100%のNaNO3、100%のKNO3、またはNaNO3とKNO3との組み合わせの溶融塩浴中に浸漬してもよい。幾つかの実施形態では、内側ガラスプライを、約1%~約99%のKNO3と約1%~約99%のNaNO3とを含む溶融した混合塩浴中に浸漬してもよい。1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを、第一の浴中での浸漬後に、第二の浴中に浸漬してもよい。第一の浴および第二の浴は、互いに異なる組成および/または温度を有していてもよい。第一の浴および第二の浴の浸漬時間は、異なっていてもよい。例えば、第一の浴の浸漬は、第二の浴の浸漬より長くてもよい。
【0027】
1つ以上の実施形態では、内側ガラスプライを、約420℃未満の温度(例えば、約400℃または約380℃)を有する、NaNO3とKNO3とを含む溶融した混合塩浴(例えば、49%/51%、50%/50%、51%/49%)を、約5時間未満にわたって、または約4時間以下にわたってさえ浸漬してもよい。
【0028】
「スパイク」が生じるように、または得られる内側ガラスプライの表面における、または表面付近の応力プロファイルの傾斜が増加するように、イオン交換条件を調整してもよい。スパイクにより、表面CS値が増加することがある。このスパイクは、本明細書に記載の内側ガラスプライ中で使用されるガラス組成物の独自の特性を理由として、単一の組成物または混合された組成物を有する単一の浴または複数の浴により達成することができる。
【0029】
CSは、当技術分野において公知の手段を使用して測定され、例えば、Orihara Industrial Co., Ltd.(日本)製のFSM-6000のような市販で入手可能な機器を使用する表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)を正確に測定することによる。またSOCは、当技術分野において公知の方法、例えば、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」という表題のASTM規格C770-98(2013)に記載されており、本明細書において、その内容が全体として参照により援用されている繊維および4点曲げ法により、またバルクシリンダー法(bulk cylinder method)により測定される。本明細書で使用されているように、CSは、圧縮応力層内で測定される最も高い圧縮応力値である「最大圧縮応力」であってもよい。幾つかの実施形態において、最大圧縮応力は、内側ガラスプライの表面にかかる。他の実施形態において、最大圧縮応力は、表面より下の深さで生じ、圧縮プロファイルに「埋まったピーク」の見た目をもたらすことがある。
【0030】
DOLは、強化の方法および条件に応じて、FSMまたは散乱光偏光器(SCALP)(例えば、エストニアのタリンにあるGlasstress Ltd.から入手可能なSCALP-04散乱光偏光器)により測定することができる。内側ガラスプライをイオン交換処理により化学的に強化する場合、どのイオンが内側ガラスプライに交換で入れられるのかに応じて、FSMまたはSCALPを使用してもよい。内側ガラスプライにおける応力が、カリウムイオンを内側ガラスプライに交換で入れることにより生じる場合、FSMを使用してDOLを測定する。応力が、ナトリウムイオンを内側ガラスプライに交換で入れることにより生じる場合、SCALPを使用してDOLを測定する。内側ガラスプライにおける応力が、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの双方をガラスに交換で入れることにより生じる場合、DOLはSCALPで測定される。というのも、ナトリウムの交換深さがDOLを示し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化(圧縮から引張の応力の変化ではない)を示すと考えられているからである。そのような内側ガラスプライにおけるカリウムイオンの交換深さはFSMで測定される。中央張力またはCTは、最大引張応力であり、SCALPで測定される。
【0031】
1つ以上の実施形態において、内側ガラスプライを、内側ガラスプライ(本明細書に記載)の厚さtの一部とされるDOLを示すように強化してもよい。例えば、1つ以上の実施形態において、DOLは、約0.05t以上、約0.1t以上、約0.11t以上、約0.12t以上、約0.13t以上、約0.14t以上、約0.15t以上、約0.16t以上、約0.17t以上、約0.18t以上、約0.19t以上、約0.2t以上、約0.21t以上であってもよい。幾つかの実施形態において、DOLは、約0.08t~約0.25t、約0.09t~約0.25t、約0.18t~約0.25t、約0.11t~約0.25t、約0.12t~約0.25t、約0.13t~約0.25t、約0.14t~約0.25t、約0.15t~約0.25t、約0.08t~約0.24t、約0.08t~約0.23t、約0.08t~約0.22t、約0.08t~約0.21t、約0.08t~約0.2t、約0.08t~約0.19t、約0.08t~約0.18t、約0.08t~約0.17t、約0.08t~約0.16t、または約0.08t~約0.15tの範囲にあってもよい。幾つかの場合において、DOLは、約20μm以下であってもよい。1つ以上の実施形態において、DOLは、約40μm以上、例えば、約40μm~約300μm、約50μm~約300μm、約60μm~約300μm、約70μm~約300μm、約80μm~約300μm、約90μm~約300μm、約100μm~約300μm、約110μm~約300μm、約120μm~約300μm、約140μm~約300μm、約150μm~約300μm、約40μm~約290μm、約40μm~約280μm、約40μm~約260μm、約40μm~約250μm、約40μm~約240μm、約40μm~約230μm、約40μm~約220μm、約40μm~約210μm、約40μm~約200μm、約40μm~約180μm、約40μm~約160μm、約40μm~約150μm、約40μm~約140μm、約40μm~約130μm、約40μm~約120μm、約40μm~約110μm、または約40μm~約100μmであってもよい。
【0032】
1つ以上の実施形態において、強化された内側ガラスプライは、約200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、約930MPa以上、約1000MPa以上、または約1050MPa以上のCS(表面または内側ガラスプライ内の深さにあり得る)を有していてもよい。1つ以上の実施形態において、強化された内側ガラスプライは、約200MPa~約1500MPa、約250MPa~約1500MPa、約300MPa~約1500MPa、約350MPa~約1500MPa、約400MPa~約1500MPa、約450MPa~約1500MPa、約500MPa~約1500MPa、約550MPa~約1500MPa、約600MPa~約1500MPa、約200MPa~約1400MPa、約200MPa~約1300MPa、約200MPa~約1200MPa、約200MPa~約1100MPa、約200MPa~約1050MPa、約200MPa~約1000MPa、約200MPa~約950MPa、約200MPa~約900MPa、約200MPa~約850MPa、約200MPa~約800MPa、約200MPa~約750MPa、約200MPa~約700MPa、約200MPa~約650MPa、約200MPa~約600MPa、約200MPa~約550MPa、または約200MPa~約500MPaのCS(表面または内側ガラスプライ内の深さにあり得る)を有していてもよい。
【0033】
1つ以上の実施形態において、強化された内側ガラスプライは、約20MPa以上、約30MPa以上、約40MPa以上、約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、または約85MPa以上の最大引張応力または中央張力(CT)を有していてもよい。幾つかの実施形態において、最大引張応力または中央張力(CT)は、約40MPa~約100MPa、約50MPa~約100MPa、約60MPa~約100MPa、約70MPa~約100MPa、約80MPa~約100MPa、約40MPa~約90MPa、約40MPa~約80MPa、約40MPa~約70MPa、または約40MPa~約60MPaの範囲にあってもよい。
【0034】
1つ以上の実施形態において、内側ガラスプライと外側ガラスプライとの間に配置された中間層は、ポリマー中間層である。1つ以上の実施形態において、中間層は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリ塩化ビニル、アイオノマー(SentryGlas(登録商標))、アクリル、熱可塑性エラストマー(TPE)のうちの1種以上を含んでいてもよい。実施形態において、中間層は、厚さが、例えば、0.125mm~3.0mmまたは0.25mm~1.6mmであってもよい。
【0035】
実施形態において、装飾積層体は、例えば、時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する。
【0036】
実施形態において、有機インク印刷装飾は、厚さが、5~25マイクロメートル、5~20マイクロメートル、5~15マイクロメートル、5~12マイクロメートル、6~12マイクロメートル、7~10マイクロメートルであってもよく、これらには、中間の値および範囲が含まれる。1つ以上の実施形態において、有機インク印刷装飾は、厚さが、例えば、印刷、乾燥および硬化の後に、例えば8~10マイクロメートルであってもよい。硬化は、適切な手段により、例えば、熱(すなわち熱的に)、照射(例えばUV光)および類似した方法、またはそれらの組み合わせを使用して実現することができる。
【0037】
本開示の別の態様は、先に言及した積層体を製造する方法に関する。1つ以上の実施形態において、方法は、外側プライ、中間層および内側プライをこの順序でスタック状に組み合わせる工程と、スタックに熱および圧力を加えて積層体を形成する工程とを含む。
【0038】
実施形態において、スタック内の少なくとも1つの内表面(例えば、S2、S3、またはS2およびS3の双方)は、スタック状に組み合わせる前に、その上に有機インク印刷装飾を有する。
【0039】
記載の積層体の実施形態により、ガラス表面#2(S2)、#4(S2)、またはこれら双方に融着されていることが一般的な装飾ガラス/セラミックエナメルフリットを、強度(したがって耐衝撃性)の低下を招かない有機インク材料で置き換えることにより、エナメル領域における衝撃破損モードが軽減される。有機インクの性質から、これを、例えば、S2、S3、またはこれら双方に堆積させることができる。有機インクは、例えば、インク層の連続的なマトリックスとして作用するポリマー系、例えば、アクリル、エポキシ、またはポリエステル;有機または無機顔料;およびインク層の望ましい色および不透明度を達成するのに適したフィラー;有機インクをガラス表面に均質に施与するのを容易にするために必要な添加剤および溶媒を含む材料から成っていてもよい。有機インクは、ガラス表面への塗布の間は液体であることが好ましく、例えば、UV光への曝露による硬化、熱への曝露による硬化、周囲条件での経時的な硬化、溶媒の蒸発または除去、またはそれらの組み合わせを含む1つ以上の方法により固体層に変えられる。
【0040】
1つ以上の特定の実施形態において、積層体は、アニールされたガラスの比較的厚い(1.6~3mmの厚さの)外側プライを含み、有機インク層は、S2上に配置されており、中間層、例えばポリビニルブチラール(PVB)は、有機インク層上に配置されており、強化されたガラスの薄い内側プライ(例えば、化学的、熱的および/または機械的に強化されたガラスプライ)は、中間層上に配置されている。実施形態では、S2もしくはS3上の赤外反射(「IRR」)コーティング、またはPVB層の間で積層化されたIRRフィルムのようなさらなる望ましい構成要素を選択してもよい。実施形態において、音響減衰性を有する中間層を選択してもよい。実施形態では、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムで使用するために、音響減衰中間層を有する、または有しないくさび型PVBを選択してもよい。
【実施例】
【0041】
以下の例は、開示される積層体の製造、使用および分析、ならびに上記の包括的な手順による方法を説明している。
【0042】
実施例1
積層体の製造 建築および自動車の開口部、例えば自動車用ガラスにおいて光学的に透明なバリアが得られるように、ガラス積層体を適合させてもよい。様々なプロセスを使用して、ガラス積層体を形成することができる。例示的な実施形態において、組み立てには、第一のガラスシートを置き、ポリマー中間層、例えばPVBシートをかぶせ、第二のガラスシートを置き、その後、ガラスシートの縁に対して余剰のPVBをトリミングする工程が含まれる。これらのガラスシートのいずれかまたは双方は、強化ガラスであってもよいし、未強化ガラスであってもよい。仮付け工程としては、例えば、大部分の空気を界面から排出し、PVBをガラスシートに部分的に結合する工程を挙げることができる。総じて高温および高圧で実施される仕上げ工程により、ポリマー中間層への各ガラスシートの接合が完了する。前述の実施形態において、第一のシートが化学的に強化されたガラスシートであって、第二のシートが非化学的に強化されたガラスシートであってよく、またその逆も可能である。
【0043】
熱可塑性材料、例えばPVBを、予備成形されたポリマー中間層として施与してもよい。特定の実施形態において、熱可塑性層は、厚さが、少なくとも0.125mm、例えば、0.125、0.25、0.38、0.5、0.7、0.76、0.81、1、1.14、1.19、または1.2mmであってもよい。中間層または熱可塑性層は、厚さが、1.6mm以下、例えば、0.4~1.2mm、例えば、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、または1.2mmであってもよい。中間層または熱可塑性層は、厚さが、1.6mm超、例えば、1.6mm~3.0mm、2.0mm~2.54mm、および類似範囲であってもよく、これらには、中間の値および範囲が含まれる。熱可塑性層は、2つの対向するガラス主要面の大部分、または好ましくは実質的にすべてを覆っていてもよい。また、熱可塑性層は、ガラスの端面を覆っていてもよい。熱可塑性層と接触しているガラスシートを加熱して、熱可塑性物質の軟化点より高く、例えば、軟化点より少なくとも5℃または10℃高くして、各ガラスシートへの熱可塑性材料の結合を促進してもよい。圧力下で、熱可塑性層と接触したガラスを用いて加熱を実施してもよい。1つ以上のポリマー中間層を例示的なガラス積層体構造物に組み込んでもよい。複数の中間層によって、例えば、衝撃性能、接着促進、音響制御、UV透過制御、着色、配色、IR透過制御、および類似機能を含む、相補的または別個の機能を得ることができる。
【0044】
実施例2
耐石衝撃性の評価 開示されている積層体および市販の比較用積層体の耐石衝撃性について、1gの玉軸受(直径6.35mm)を45度の入射角で用いて試験した。低速で開始して、破壊が観察されるまで速度を約5mph(約8.05kph)ずつ上昇させるという、段階式の方法を用いた。
図5のワイブルプロットにおける各データ点についてこの手順を繰り返したところ、開示されている積層体の破損率または破損パーセンテージは、時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で40~95%となった。
【0045】
図5は、厚さ2.1mmのアニールされたソーダ石灰ガラスの外側プライと、厚さ2.1mmのアニールされたソーダ石灰ガラスの内側プライとを有する積層体について、破壊速度50mph(約80.5kph)で約99%の破損率が観察されることをさらに示す。積層体は、表面2上に配置されたエナメルフリット装飾を含む。この対称的な積層体の破壊速度は、
図5において正方形の記号として示され、比較例である。それとは対照的に、同じガラスおよび中間層構造を含むが装飾は含まない積層体は、約1%の積層体の破損のみで、ほとんど破損を示さなかった(点記号で示される)。さらに、同じガラスおよび中間層構造を含み表面2上に有機インク装飾を有する積層体は、破損が1%未満であった(ひし形で示される)。最終的に、厚さ2.1mmのアニールされたソーダ石灰ガラスと、厚さ0.7mmの化学的に強化されたガラスの内側プライと、表面2上の有機インク装飾とを含む積層体構造物は、約1%の積層体の破損のみで、ほとんど破損を示さなかった(三角形で示される)。
【0046】
本開示の態様(1)は、厚さ1.5~3mmの未強化ガラス基板を含む外側プライ;厚さ0.05~0.7mmの化学強化ガラス基板を含む内側プライ;内側プライと外側プライとの間のポリマー中間層;ならびに、外側プライと中間層との間に、内側プライと中間層との間に、または外側プライと中間層との間および内側プライと中間層との間の双方に配置されるように外側プライおよび内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾を含む装飾積層体であって、時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する装飾積層体に関する。
【0047】
本開示の態様(2)は、有機インク印刷装飾が5~25マイクロメートルの厚さを有する、態様(1)記載の装飾積層体に関する。
【0048】
本開示の態様(3)は、外側プライがソーダ石灰ガラスを含み、ポリマー中間層がポリビニルブチラールを含み、内側プライがイオン交換されたガラスであり、かつ有機インク印刷装飾が硬化性インクである、態様(1)または(2)記載の装飾積層体に関する。
【0049】
本開示の態様(4)は、ポリマー中間層が0.125mm~3.0mmの厚さを有する、態様(1)から(3)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0050】
本開示の態様(5)は、ポリマー中間層が0.25mm~1.6mmの厚さを有する、態様(1)から(4)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0051】
本開示の態様(6)は、ポリマー中間層が、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される、態様(1)から(5)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0052】
本開示の態様(7)は、少なくとも1つの装飾積層体を有する乗り物をさらに含む、態様(1)から(6)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0053】
本開示の態様(8)は、外側プライが厚さ(to)を有し、強化ガラスを含む内側プライが厚さ(ti)を有し、to:tiの比が1~20である、態様(1)から(7)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0054】
本開示の態様(9)は、外側プライ、中間層および内側プライをこの順序でスタック状に組み合わせる工程と、スタックに熱および圧力を加えて積層体を形成する工程とを含む、態様(1)から(8)までのいずれか1つ記載の装飾積層体の製造に関する。
【0055】
本開示の態様(10)は、スタック内の少なくとも1つの内表面が、スタック状に組み合わせる前に、有機インク印刷装飾を有する、態様(9)記載の方法に関する。
【0056】
本開示の態様(11)は、厚さ1.5~3mmの外側プライ;厚さ0.05~1.2mmの強化ガラス基板を含む内側プライ;内側プライと外側プライとの間の中間層;ならびに、外側プライと中間層との間に、内側プライと中間層との間に、または外側プライと中間層との間および内側プライと中間層との間の双方に配置されるように外側プライおよび内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾を含む装飾積層体であって、時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する装飾積層体に関する。
【0057】
本開示の態様(12)は、外側プライが、強化されていないか、アニールされているか、または熱強化されており、かつ内側プライよりも低い表面圧縮応力を有し、内側プライが強化されている、態様(11)記載の装飾積層体に関する。
【0058】
本開示の態様(13)は、有機インク印刷装飾が5~25マイクロメートルの厚さを有する、態様(11)または(12)記載の装飾積層体に関する。
【0059】
本開示の態様(14)は、外側プライがソーダ石灰を含み、中間層がポリビニルブチラールを含み、内側プライが化学的に強化されており、有機インク印刷装飾が硬化性インクである、態様(11)から(13)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0060】
本開示の態様(15)は、ポリマー中間層が0.125mm~3.0mmの厚さを有する、態様(11)から(14)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0061】
本開示の態様(16)は、ポリマー中間層が0.25mm~1.6mmの厚さを有する、態様(11)から(15)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0062】
本開示の態様(17)は、ポリマー中間層が、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される、態様(11)から(16)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0063】
本開示の態様(18)は、少なくとも1つの装飾積層体を有する乗り物をさらに含む、態様(11)から(17)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0064】
本開示の態様(19)は、外側プライが厚さ(to)を有し、強化ガラスを含む内側プライが厚さ(ti)を有し、to:tiの比が1~20である、態様(11)から(18)までのいずれか1つ記載の装飾積層体に関する。
【0065】
様々な特定の実施形態および技術を参照して、本開示を説明してきた。しかし、本開示の範囲内にありながら、多くの変形形態および変更形態が可能であると理解されるべきである。
【0066】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0067】
実施形態1
厚さ1.5~3mmの未強化ガラス基板を含む外側プライ;
厚さ0.05~0.7mmの化学強化ガラス基板を含む内側プライ;
前記内側プライと前記外側プライとの間のポリマー中間層;ならびに、
前記外側プライと前記中間層との間に、前記内側プライと前記中間層との間に、または前記外側プライと前記中間層との間および前記内側プライと前記中間層との間の双方に配置されるように前記外側プライおよび前記内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾
を含む装飾積層体であって、
時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する、装飾積層体。
【0068】
実施形態2
前記有機インク印刷装飾が5~25マイクロメートルの厚さを有する、実施形態1記載の装飾積層体。
【0069】
実施形態3
前記外側プライがソーダ石灰ガラスを含み、前記ポリマー中間層がポリビニルブチラールを含み、前記内側プライがイオン交換されたガラスであり、かつ前記有機インク印刷装飾が硬化性インクである、実施形態1または2記載の装飾積層体。
【0070】
実施形態4
前記ポリマー中間層が0.125mm~3.0mmの厚さを有する、実施形態1から3までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0071】
実施形態5
前記ポリマー中間層が0.25mm~1.6mmの厚さを有する、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0072】
実施形態6
前記ポリマー中間層が、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される、実施形態1から5までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0073】
実施形態7
少なくとも1つの装飾積層体を有する乗り物をさらに含む、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0074】
実施形態8
前記外側プライが厚さ(to)を有し、強化ガラスを含む前記内側プライが厚さ(ti)を有し、to:tiの比が1~20である、実施形態1から7までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0075】
実施形態9
外側プライ、中間層および内側プライをこの順序でスタック状に組み合わせる工程と、
前記スタックに熱および圧力を加えて積層体を形成する工程と
を含む、実施形態1記載の積層体を製造する方法。
【0076】
実施形態10
前記スタック内の少なくとも1つの内表面が、スタック状に組み合わせる前に、有機インク印刷装飾を有する、実施形態9記載の方法。
【0077】
実施形態11
厚さ1.5~3mmの外側プライ;
厚さ0.05~1.2mmの強化ガラス基板を含む内側プライ;
前記内側プライと前記外側プライとの間の中間層;ならびに、
前記外側プライと前記中間層との間に、前記内側プライと前記中間層との間に、または前記外側プライと前記中間層との間および前記内側プライと前記中間層との間の双方に配置されるように前記外側プライおよび前記内側プライの一方または双方に配置された有機インク装飾
を含む装飾積層体であって、
時速75~85マイル(時速約120.7~136.8km)の破壊速度で測定した場合に40~95%の疑似耐石衝撃性を有する、装飾積層体。
【0078】
実施形態12
前記外側プライが、強化されていないか、アニールされているか、または熱強化されており、かつ前記内側プライよりも低い表面圧縮応力を有し、前記内側プライが強化されている、実施形態11記載の装飾積層体。
【0079】
実施形態13
前記有機インク印刷装飾が5~25マイクロメートルの厚さを有する、実施形態11または12記載の装飾積層体。
【0080】
実施形態14
前記外側プライがソーダ石灰を含み、前記中間層がポリビニルブチラールを含み、前記内側プライが化学的に強化されており、前記有機インク印刷装飾が硬化性インクである、実施形態11から13までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0081】
実施形態15
前記ポリマー中間層が0.125mm~3.0mmの厚さを有する、実施形態11から14までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0082】
実施形態16
前記ポリマー中間層が0.25mm~1.6mmの厚さを有する、実施形態11から15までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0083】
実施形態17
前記ポリマー中間層が、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタン、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される、実施形態11から16までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0084】
実施形態18
少なくとも1つの装飾積層体を有する乗り物をさらに含む、実施形態11から17までのいずれか1つ記載の装飾積層体。
【0085】
実施形態19
前記外側プライが厚さ(to)を有し、強化ガラスを含む前記内側プライが厚さ(ti)を有し、to:tiの比が1~20である、実施形態11から18までのいずれか1つ記載の装飾積層体。