IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

<>
  • 特許-電池及びその製造方法 図1
  • 特許-電池及びその製造方法 図2
  • 特許-電池及びその製造方法 図3
  • 特許-電池及びその製造方法 図4
  • 特許-電池及びその製造方法 図5
  • 特許-電池及びその製造方法 図6
  • 特許-電池及びその製造方法 図7
  • 特許-電池及びその製造方法 図8
  • 特許-電池及びその製造方法 図9
  • 特許-電池及びその製造方法 図10
  • 特許-電池及びその製造方法 図11
  • 特許-電池及びその製造方法 図12
  • 特許-電池及びその製造方法 図13
  • 特許-電池及びその製造方法 図14
  • 特許-電池及びその製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221128BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20221128BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20221128BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20221128BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20221128BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20221128BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20221128BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALN20221128BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20221128BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M4/02 Z
H01M50/44
H01M50/414
H01M50/403 D
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M10/0583
H01M4/13
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017206217
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019079711
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 佑磨
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103082(JP,A)
【文献】特開2012-226910(JP,A)
【文献】中国実用新案第202550009(CN,U)
【文献】特開2016-058282(JP,A)
【文献】特開2014-112486(JP,A)
【文献】特開2005-174653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0160263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/40-50/497
H01M 50/50-50/598
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配置される複数の電極板を備えるとともに、正極及び負極の一方である第1の電極と、
集電体、及び、前記集電体の表面に担持される活物質含有層を備え、前記集電体において前記表面に前記活物質含有層が担持されない部分として、長縁の一方及びその近傍部位によって形成される集電タブを備えるとともに、前記正極及び前記負極の前記第1の電極とは異なる他方であり、前記電極板のそれぞれと隣設される前記電極板との間を通ってジグザグ状に延設される第2の電極と、
前記第2の電極と一体に前記ジグザグ状に延設されるとともに、前記第2の電極の表面において少なくとも前記集電タブ以外の部位を覆い、前記第1の電極の前記電極板のそれぞれを挟む絶縁層と、
前記第1の電極において前記電極板のそれぞれの表面に配置されるとともに、対応する前記電極板と前記絶縁層との間で挟まれる絶縁体と、
を具備し、
前記第2の電極の前記長縁の前記一方から前記第2の電極の前記活物質含有層において前記第2の電極の前記集電タブが位置する側の端までの第1の距離は、前記第2の電極の前記長縁の前記一方から前記絶縁層において前記第2の電極の前記長縁の前記一方が位置する側の端までの第2の距離に比べて、大きい、
電池。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記第2の電極の前記表面において前記集電タブの一部を覆う、請求項1の電池。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記第2の電極の前記表面において前記第2の電極に密着する、請求項1又は2の電池。
【請求項4】
前記絶縁層は、有機繊維によって形成される、請求項1乃至3のいずれか1項の電池。
【請求項5】
正極及び負極の一方である第1の電極の基材となる第1の電極基材、及び、前記正極及び前記負極の前記第1の電極とは異なる他方である第2の電極の基材となる第2の電極基材を形成することであって、前記第2の電極基材の形成において、集電体、及び、前記集電体の表面に担持される活物質含有層を形成するとともに、前記集電体において前記表面に前記活物質含有層が担持されない部分として、前記第2の電極基材の長縁の一方及びその近傍部位に集電タブを形成することと、
前記第1の電極基材を打抜くことにより、複数の電極板を形成することと、
前記第2の電極基材の表面に絶縁層を前記第2の電極基材と一体に形成し、前記第2の電極基材の前記表面において少なくとも長縁の前記一方及びその近傍部位以外の部位を前記絶縁層で覆うことであって、前記第2の電極基材の前記長縁の前記一方から前記第2の電極基材の前記活物質含有層において前記第2の電極基材の前記集電タブが位置する側の端までの第1の距離を、前記第2の電極基材の前記長縁の前記一方から前記絶縁層において前記第2の電極基材の前記長縁の前記一方が位置する側の端までの第2の距離に比べて、大きくすることと、
前記絶縁層が一体に形成された前記第2の電極を、前記電極板のそれぞれと隣設される前記電極板との間を通してジグザグ状に延設させ、前記電極板のそれぞれを前記絶縁層によって挟むことと、
前記第1の電極となる前記電極板のそれぞれの表面に絶縁体を配置することにより、対応する前記電極板と前記絶縁層との間で前記絶縁体を挟むことと、
を具備する電池の製造方法。
【請求項6】
前記第2の電極基材に前記絶縁層を形成することは、電界紡糸法によって有機繊維の前記絶縁層を前記第2の電極基材の前記表面に形成することを備える、請求項5の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池等の電池では、電極群は、正極及び負極の一方である第1の電極と、正極及び負極の第1の電極とは異なる他方である第2の電極と、を備える。そして、電極群には、第1の電極が複数の第1の電極板から形成されるとともに、第2の電極が複数の第2の電極板から形成され、第1の電極板及び第2の電極板が交互に積層されるものがある。このような電極群では、第2の電極板の表面に、例えば電界紡糸法等によって絶縁層が第2の電極板と一体に形成され、第2の電極板は、絶縁層によって、隣設される第1の電極板から電気的に絶縁される。
【0003】
前述のような電極群を形成する際には、第1の電極の基材となる第1の電極基材を例えばビク型等で打抜くことにより、第1の電極板を形成する。そして、第2の電極の基材となる第2の電極基材の表面に、電界紡糸法等によって絶縁層を形成する。そして、絶縁層が形成された状態において第2の電極基材を例えばビク型等で打抜くことにより、絶縁層と一体の第2の電極板を形成する。このように第2の電極板及び絶縁層を形成した場合、第2の電極板のそれぞれにおいて、アルミニウム箔等から形成される第2の電極板が縁で露出する。このため、電極群では、第2の電極板の縁が第1の電極板と接触し易くなり、電極群の絶縁抵抗が低下する可能性がある。
【0004】
第2の電極基材を打抜いて第2の電極板を形成した後に、第2の電極板のそれぞれについて電界紡糸法等によって絶縁層を形成し、第2の電極板の縁を絶縁層で覆うことは可能である。ただし、このように第2の電極板及び絶縁層を形成すると、電極群及び電池の製造における手間が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5624653号公報
【文献】特許第5558265号公報
【文献】国際公開2016/203137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電極群における第1の電極と第2の電極との間の絶縁が適切に確保され、容易に製造される電池、及び、この電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、電池は、第1の電極、第2の電極、絶縁層及び絶縁体を備える。第1の電極は、並んで配置される複数の電極板を備える。第2の電極は、集電体、及び、集電体の表面に担持される活物質含有層を備え、集電体において表面に活物質含有層が担持されない部分として、長縁の一方及びその近傍部位によって形成される集電タブを備える。第2の電極は、電極板のそれぞれと隣設される電極板との間を通ってジグザグ状に延設される。絶縁層は、第2の電極と一体にジグザグ状に延設される。絶縁層は、第2の電極の表面において少なくとも集電タブ以外の部位を覆い、第1の電極の電極板のそれぞれを挟む。絶縁体は、第1の電極において電極板のそれぞれの表面に配置されるとともに、対応する電極板と絶縁層との間で挟まれる。第2の電極の長縁の前述の一方から第2の電極の活物質含有層において第2の電極の集電タブが位置する側の端までの第1の距離は、第2の電極の長縁の前述の一方から絶縁層において第2の電極の長縁の前述の一方が位置する側の端までの第2の距離に比べて、大きい。
【0008】
実施形態によれば、電池の製造方法では、正極及び負極の一方である第1の電極の基材となる第1の電極基材、及び、正極及び負極の第1の電極とは異なる他方である第2の電極の基材となる第2の電極基材を形成する。第2の電極基材の形成では、集電体、及び、集電体の表面に担持される活物質含有層を形成するとともに、集電体において表面に活物質含有層が担持されない部分として、第2の電極基材の長縁の一方及びその近傍部位に集電タブを形成する。そして、第1の電極基材を打抜くことにより、複数の電極板を形成する。また、第2の電極基材の表面に絶縁層を第2の電極基材と一体に形成し、第2の電極基材の表面において少なくとも長縁の前述の一方及びその近傍部位以外の部位を絶縁層で覆う。絶縁層の形成では、第2の電極基材の長縁の前述の一方から第2の電極基材の活物質含有層において第2の電極基材の集電タブが位置する側の端までの第1の距離を、第2の電極基材の長縁の前述の一方から絶縁層において第2の電極基材の長縁の前述の一方が位置する側の端までの第2の距離に比べて、大きくする。そして、絶縁層が一体に形成された第2の電極を、電極板のそれぞれと隣設される電極板との間を通してジグザグ状に延設させ、電極板のそれぞれを絶縁層によって挟む。そして、第1の電極となる電極板のそれぞれの表面に絶縁体を配置することにより、対応する電極板と絶縁層との間で絶縁体を挟む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る電池を示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電極群の構成を示す概略図である。
図3図3は、図2のZ1-Z1断面を概略的に示す断面図である。
図4図4は、図2のZ2-Z2断面を概略的に示す断面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る電極群の製造において、正極基材を打抜いて、複数の電極板を形成する工程を示す概略図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る電極群の製造において、負極基材に絶縁層を形成し、絶縁層が形成された負極基材を切断し負極を形成する工程を示す概略図である。
図7図7は、比較例に係る電極群を、電極板のそれぞれの横方向に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図8図8は、比較例に係る電極群を、電極板のそれぞれの縦方向に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図9図9は、第1の実施形態の電極群及び比較例の電極群について、正極と負極との間の電気的な絶縁性に関する実験データを示すグラフである。
図10図10は、第1の変形例に係る電極群を、図2のZ1-Z1断面に相当する断面で概略的に示す断面図である。
図11図11は、第1の変形例に係る電極群を、図2のZ2-Z2断面に相当する断面で概略的に示す断面図である。
図12図12は、第2の変形例において、電極群が収納される外装缶等の一例を示す概略図である。
図13図13は、第3の変形例において、電極群が収納される外装容器の一例を示す概略図である。
図14図14は、第4の変形例に係る電極群を示す概略図である。
図15図15は、第4の変形例に係る電極群の製造において、負極基材に突出部分及び絶縁層を形成し、絶縁層が形成された負極基材を切断し負極を形成する工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図1乃至図15を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電池1を示す。電池1は、非電解質二次電池又はアルカリ二次電池等である。電池1は、外装容器2と、外装容器2内に収納される電極群3と、外装容器2の内部から外部に突出する正極端子5及び負極端子6と、を備える。外装容器2は、例えば、ラミネートフィルム製である。この場合、外装容器2を形成するラミネートフィルムは、アルミニウム、銅及びステンレス等の金属層及び樹脂層を含み、ラミネートフィルムを熱融着により袋状に成形したものが、外装容器2として用いられる。外装容器2の内部では、電極群3に、電解液(図示しない)が含浸される。
【0012】
図2は、電極群3の構成を示す。また、図3は、図2のZ1-Z1断面を示し、図4は、図2のZ2-Z2断面を示す。なお、図1では、電極群3は、図2の矢印Y1側から視た状態で示される。図2乃至図4に示すように、電極群3は、正極11及び負極12と、正極11と負極12との間を電気的に絶縁する絶縁層(セパレータ)13と、を備える。正極端子5は、正極11に電気的に接続される金属リボン、金属板又は金属棒である。正極11は、正極端子5を介して、電池1の外部と電気的に接続される。正極端子5には、アルミニウム及びチタン等の導電材料が用いられる。また、負極端子6は、負極12に電気的に接続される金属リボン、金属板又は金属棒である。負極12は、負極端子6を介して、電池1の外部と電気的に接続される。負極端子6には、アルミニウム、銅及びステンレス等の導電材料が用いられ、軽量かつ溶接性に優れたアルミニウムが用いられることが好ましい。
【0013】
本実施形態では、正極(第1の電極)11は、複数の電極板15を備え、電極板15は、並んで配置される。電極板15のそれぞれは、隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)に対して、対向して配置される。また、本実施形態では、負極(第2の電極)12の表面に、絶縁層13が負極12と一体に形成される。
【0014】
ここで、電極板15のそれぞれにおいて、縦方向、縦方向に対して垂直又は略垂直な横方向、及び、縦方向に対して垂直又は略垂直で、かつ、横方向に対して垂直又は略垂直な厚さ方向を、規定する。電極板15のそれぞれは、厚さ方向についての寸法が縦方向についての寸法及び横方向についての寸法のそれぞれに比べて小さい板状(シート状)に、形成される。そして、電極板15のそれぞれは、厚さ方向に対して垂直又は略垂直な一対の面21,22を備える。また、電極板15のそれぞれは、縦方向に沿って形成される一対の縦縁23,24と、横方向に沿って形成される一対の横縁25,26と、を備える。なお、電極板15のそれぞれでは、縦方向についての寸法は、横方向についての寸法に対して、大きくてもよく、小さくてもよい。また、電極板15のそれぞれにおいて、縦方向についての寸法が、横方向についての寸法と同一又は略同一であってもよい。
【0015】
負極12は、帯状に形成され、長手方向に沿って延設される。ここで、負極12において、長手方向に対して垂直又は略垂直な幅方向、及び、長手方向に対して垂直又は略垂直で、かつ、幅方向に対して垂直又は略垂直な厚さ方向を規定する。負極12では、長手方向についての寸法が、幅方向についての寸法に比べて大きく、幅方向についての寸法が、厚さ方向についての寸法に比べて大きい。そして、負極12は、厚さ方向に対して垂直又は略垂直な一対の面31,32を備える。また、負極12は、長手方向に沿って形成される一対の長縁33,34と、幅方向に沿って形成される一対の短縁35,36と、を備える。
【0016】
なお、図3では、電極板15のそれぞれは、横方向に対して垂直又は略垂直な断面で示され、図4では、電極板15のそれぞれは、縦方向に対して垂直又は略垂直な断面で示される。また、図3では、負極12は、幅方向に対して垂直又は略垂直な断面で示され、図4では、負極12は、長手方向に対して垂直又は略垂直な断面で示される。
【0017】
正極11の電極板15のそれぞれは、正極集電体としての正極集電箔41と、正極集電箔41の表面に担持される正極活物質含有層42と、を備える。正極集電箔41は、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔等であり、厚さが10μm~20μm程度である。正極集電箔41には、正極活物質、結着剤及び導電剤を含むスラリーが塗布される。正極活物質としては、これらに限定されるものではないが、リチウムを吸蔵放出できる酸化物、硫化物及びポリマー等が挙げられる。また、高い正極電位を得られる観点から、正極活物質は、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物及びリチウム燐酸鉄等が、用いられることが好ましい。
【0018】
負極12は、負極集電体としての負極集電箔45と、負極集電箔45の表面に担持される負極活物質含有層46と、を備える。負極集電箔45は、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔又は銅箔等であり、厚さが10μm~20μm程度である。負極集電箔45には、負極活物質、結着剤及び導電剤を含むスラリーが塗布される。負極活物質としては、特に限定されるものではないが、リチウムイオンを吸蔵放出できる金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物及び炭素材料等が挙げられる。負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵放出電位が金属リチウム電位に対して0.4V以上となる物質、すなわち、リチウムイオンの吸蔵放出電位が0.4V(vs.Li/Li)以上になる物質であることが好ましい。このようなリチウムイオン吸蔵放出電位を有する負極活物質を用いることにより、アルミニウム又はアルミニウム合金とリチウムとの合金反応が抑えられるため、負極集電箔45及び負極12に関連する構成部材に、アルミニウム及びアルミニウム合金を使用可能になる。リチウムイオンの吸蔵放出電位が0.4V(vs.Li/Li)以上になる負極活物質としては、例えば、チタン酸化物、チタン酸リチウム等のリチウムチタン複合酸化物、タングステン酸化物、アモルファススズ酸化物、ニオブ・チタン複合酸化物、スズ珪素酸化物、及び、酸化珪素等が挙げられ、リチウムチタン複合酸化物を負極活物質として用いることが、特に好ましい。なお、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を負極活物質として用いる場合は、負極集電箔45は銅箔を用いると良い。負極活物質として用いられる炭素材料は、リチウムイオンの吸蔵放出電位が0V(vs.Li/Li)程度になる。
【0019】
正極集電体及び負極集電体に用いられるアルミニウム合金は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される1種または2種以上の元素を含むことが望ましい。アルミニウムおよびアルミニウム合金の純度は、98重量%以上にすることができ、99.99重量%以上が好ましい。また、純度100%の純アルミニウムを、正極集電体及び/または負極集電体の材料として用いることが可能である。アルミニウムおよびアルミニウム合金における、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は100重量ppm以下(0重量ppmを含む)にすることが好ましい。
【0020】
電極板15のそれぞれでは、一方の縦縁23及びその近傍部位によって、正極集電タブ43が形成される。正極集電タブ43は、正極集電箔41の一部から形成され、正極集電タブ43では、正極集電箔41の表面に正極活物質含有層42が担持されない。本実施形態の電極板15のそれぞれでは、横縁25,26の間に連続する縦縁23に、横方向について外側に突出する突出部分27が設けられる。そして、縦縁23の突出部分27及びその近傍部位によって、正極集電タブ43が形成される。また、別の実施例では、電極板15のそれぞれにおいて、縦縁23が、横縁25,26の間で直線的に連続する。そして、電極板15のそれぞれでは、横方向について内側へ縦縁23から所定の距離に渡って、正極集電タブ43が形成される。
【0021】
前述のように正極集電タブ43が形成されるため、電極板15のそれぞれでは、正極集電箔41の正極集電タブ43は、正極活物質含有層42に対して、横方向について外側(縦縁23が位置する側)へ突出する。また、電極群3では、正極活物質含有層42からの正極集電タブ43の突出方向が全ての電極板15で互いに対して一致又は略一致する状態に、電極板15が配置される。また、互いに対して隣設される電極板(15の対応する2つ)においては、一方の電極板(15の対応する1つ)の面21が、他方の電極板(15の対応する1つ)の面22と対向する。
【0022】
負極12では、一方の長縁33及びその近傍部位によって、負極集電タブ47が形成される。負極集電タブ47は、負極集電箔45の一部から形成され、負極集電タブ47では、負極集電箔45の表面に負極活物質含有層46が担持されない。本実施形態では、負極12において、幅方向について内側へ長縁33から所定の距離に渡って、負極集電タブ47が形成される。前述のように負極集電タブ47が形成されるため、負極12では、負極集電箔45の負極集電タブ47は、負極活物質含有層46に対して、幅方向について外側(長縁33が位置する側)へ突出する。
【0023】
また、負極12と一体の絶縁層13は、他の媒体等を介することなく負極12の表面に直接的に密着し、負極12に対して固定される。絶縁層13は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。ある実施例では、絶縁層13は、例えば、有機繊維から形成され、有機繊維のシートである。有機繊維を形成する有機材料としては、エンプラ、スーパーエンプラ及びポリイミドが挙げられる。そして、エンプラとしては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン及び変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。また、スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルニトリル、ポリサルホン、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド及び熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。絶縁層13では、単位面積当たりの有機繊維の量は、1.0g/m~10g/m程度である。また、絶縁層13の厚さは、0.5μm~10μm程度である。
【0024】
なお、絶縁層13として有機繊維のシートを形成する場合、電界紡糸法(エレクトロスピニング法)、インクジェット法、ジェットディスペンサー法及びスプレー塗布法のいずれかによって、絶縁層13が形成される。また、ある実施例では、絶縁層13は、無機材料から形成されてもよく、前述の有機繊維と無機材料との混合物から形成されてもよい。絶縁層13を形成する無機材料としては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、リン酸化物、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化チタン)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化バリウム)等が挙げられる。無機材料から形成される絶縁層は、例えば、層状の母材に無機材料粒子が分散しているもの、無機材料粒子の層状集合体、無機材料粒子が結着剤で結合されたものであり得る。
【0025】
絶縁層13は、負極12の表面において、少なくとも負極集電タブ47以外の部位を覆う。このため、負極12では、少なくとも負極活物質含有層46が担持される部位は、絶縁層13によって覆われる。すなわち、負極12では、少なくとも長縁33及びその近傍部位以外の部位が、絶縁層13によって覆われる。したがって、負極12では、長縁33と反対側の長縁34は、絶縁層13によって覆われる。また、面31,32のそれぞれも、少なくとも負極集電タブ47以外の部位は、絶縁層13によって覆われる。
【0026】
また、本実施形態では、絶縁層13は、負極集電タブ47の一部も覆う。すなわち、負極活物質含有層46を無担持の部位でも、一部は、絶縁層13によって覆われる。ここで、負極12の長縁33から負極活物質含有層46の長縁33が位置する側(負極集電タブ47が位置する側)の端までの距離L1、及び、負極12の長縁33から絶縁層13の長縁33が位置する側の端までの距離L2を、規定する。本実施形態では、負極集電タブ47の一部が絶縁層13で覆われるため、距離L1は、距離L2に比べて大きい。
【0027】
電極群3では、負極12は、短縁35,36の間において、ジグザグ状に延設される。したがって、電極群3では、負極12の長縁33,34のそれぞれは、ジグザグ状に延設される。ジグザグ状に延設される負極12は、電極板15のそれぞれと対向する電極板(15の対応する1つ又は2つ)との間を通過する。すなわち、負極12は、電極板15のそれぞれと隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)との間を通って、延設される。これにより、電極板15のそれぞれと隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)の間には、負極12が配置される。そして、電極群3では、正極11(電極板15)及び負極12が交互に積層される。
【0028】
電極板15のそれぞれでは、横縁25,26の一方で、ジグザグ状に延設される負極12が、略U字状に折返される。電極板15の中の1つの電極板15Aでは、負極12は、横縁25で折返され、電極板15Aに対して面22側に隣設される電極板15Bでは、負極12は、横縁26で折返される。すなわち、電極板15のそれぞれでは、隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)において負極12が折返される横縁(25;26)とは反対側の横縁(26;25)で、負極12が折返される。また、電極群3では、負極12の幅方向が、電極板15のそれぞれの横方向と一致又は略一致する状態で、負極12が延設される。なお、図3に示す一例では、負極12の短縁35,36は、電極板15のそれぞれの縦方向について互いに対して同一の側に位置しているが、これに限るものではない。ある実施例では、負極12の短縁35,36は、電極板15のそれぞれの縦方向について互いに対して反対側に位置する。
【0029】
負極12と一体の絶縁層13も、負極12と同様に、電極板15のそれぞれと隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)の間を通って、ジグザグ状に延設される。このため、電極板15のそれぞれは、絶縁層13によって挟まれる。すなわち、電極群3では、絶縁層13は、電極板15のそれぞれに対して、面21に隣接する領域を通過するとともに、面22に隣接する領域も通過する。これにより、電極群3では、電極板15のそれぞれと負極12との間に絶縁層13が配置される。なお、電極板15のそれぞれでは、負極12及び絶縁層13が折返される横縁(25,26の対応する一方)と絶縁層13と間に、数mm程度の隙間が形成されてもよい。
【0030】
また、電極群3では、負極12は、正極11の電極板15のそれぞれに対して、負極12の幅方向について(すなわち、電極板15のそれぞれの横方向について)ずれた状態で、配置される。このため、電極板15のそれぞれでは、正極活物質含有層42が無担持の正極集電タブ43は、負極12及び絶縁層13に対して、横方向(負極12の幅方向)について一方側へ突出する。このため、電極板15のそれぞれでは、縦縁23の少なくとも一部が、負極12及び絶縁層13に対して、横方向について一方側へ突出する。そして、負極12では、負極活物質含有層46が無担持の負極集電タブ47は、電極板15のそれぞれに対して、幅方向(電極板15のそれぞれの横方向)について正極集電タブ43が突出する側とは反対側に突出する。このため、負極12では、長縁33が、電極板15のそれぞれに対して、幅方向について一方側へ突出する。
【0031】
次に、電池1の電極群3の製造について説明する。電極群3の製造においては、第1の電極である正極11の基材となる正極基材(第1の電極基材)11Aを形成するとともに、第2の電極である負極12の基材となる負極基材(第2の電極基材)12Aを形成する。図5に示すように、正極基材11Aは、長手方向及び幅方向を有する帯状に形成される。そして、正極基材11Aは、長手方向に沿って形成される一対の長縁71,72、及び、幅方向に沿って形成される一対の短縁73,74を備える。正極基材11Aでは、正極集電箔41の表面に、正極活物質を含むスラリーが塗布され、正極活物質含有層42が担持される。また、正極基材11Aでは、長縁71及びその近傍部位に、正極活物質含有層42が担持されていない活物質無担持部43Aが形成される。
【0032】
電極群3の製造においては、正極基材11Aをビク型、トムソン型等で打抜くことにより、前述した複数の電極板15を形成する。この際、正極基材11Aの活物質無担持部43Aの一部が、電極板15のそれぞれにおいて、正極集電タブ43を形成する。なお、図5は、正極基材11Aを打抜いて、複数の電極板15を形成する工程を示す。図5では、正極活物質含有層42は、ドットのハッチングで示す。
【0033】
複数の電極板15を前述のように形成すると、電極板15を並べる。この際、電極板15のそれぞれは、隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)に対して離れて配置される。また、正極活物質含有層42からの正極集電タブ43の突出方向が全ての電極板15で互いに対して一致又は略一致する状態に、電極板15が並べられる。
【0034】
図6に示すように、負極基材12Aは、長手方向及び幅方向を有する帯状に形成される。そして、負極基材12Aは、長手方向に沿って形成される一対の長縁75,76を備える。負極基材12Aでは、負極集電箔45の表面に、負極活物質を含むスラリーが塗布され、負極活物質含有層46が担持される。また、負極基材12Aでは、長縁75及びその近傍部位に、負極活物質含有層46が担持されていない活物質無担持部47Aが形成される。ここで、負極基材12Aの長縁75から負極活物質含有層46の長縁75が位置する側の端までは、距離L1であり、負極基材12Aでは、幅方向について内側へ向かって長縁75から距離L1に渡って、活物質無担持部47Aが形成される。
【0035】
電極群3の製造においては、前述の絶縁層13を負極基材12Aと一体に形成する。絶縁層13は、例えば、電界紡糸法等によって形成される。この場合、負極基材12Aの表面に、有機繊維のシートが絶縁層13として形成される。形成された絶縁層13は、他の媒体等を介することなく負極基材12Aの表面に直接的に密着し、負極基材12Aに対して固定される。なお、絶縁層13は、前述した無機材料から形成されてもよく、有機繊維と無機材料との混合物から形成されてもよい。
【0036】
絶縁層13を形成する際には、負極基材12Aの表面において、少なくとも長縁75及びその近傍部位以外の部位を絶縁層13で覆う。このため、絶縁層13を形成することにより、負極基材12Aにおいて少なくとも活物質無担持部47A以外の部位が、絶縁層13によって覆われる。また、絶縁層13を形成することにより、活物質無担持部47Aの一部も、絶縁層13によって覆われる。実際に、負極基材12Aの長縁75から絶縁層13の長縁75が位置する側の端までは、距離L1より小さい距離L2である。そして、絶縁層13が一体に形成された負極基材12Aを、長手方向について所定の長さに切断し、負極12を形成する。図6では、負極基材12Aを、破線A1,A2で切断することにより、負極12が形成される。これにより、絶縁層13と一体の負極12が形成される。この際、負極12のそれぞれの長縁33は、負極基材12Aの長縁75の一部から形成され、負極12のそれぞれの長縁34は、負極基材12Aの長縁76の一部から形成される。また、負極12のそれぞれの負極集電タブ47は、負極基材12Aの活物質無担持部47Aの一部から形成される。そして、負極12のそれぞれの短縁35,36は、負極基材12Aの切断部分(A1,A2)によって、形成される。なお、図6は、負極基材12Aに絶縁層13を形成し、絶縁層13が形成された負極基材12Aを切断し負極12を形成する工程を示す。図6では、負極活物質含有層46は、ドットのハッチングで示し、絶縁層13は、斜線のハッチングで示す。
【0037】
そして、絶縁層13が一体に形成された負極12を、電極板15のそれぞれと隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)との間を通して、ジグザグ状に延設させる。これにより、図3に示すように、電極板15のそれぞれが、絶縁層13によって挟まれる。そして、図2乃至図4に示す電極群3が、組立てられる。
【0038】
本実施形態では前述のように電極群3が製造されるため、負極12の表面において少なくとも負極集電タブ47以外の部位が、絶縁層13によって覆われる。このため、負極集電タブ47以外の部位では、長縁34も、絶縁層13によって覆われる。すなわち、負極集電タブ47とは反対側の部位では、負極12の縁が露出しない。このため、負極12の縁への正極11の電極板15のそれぞれの接触が、有効に防止され、電極群3における正極11と負極12との間の絶縁抵抗の低下が、有効に防止される。したがって、電極群3において正極11と負極12との間の電気的な絶縁が確保される。
【0039】
特に、電極群3では、正極集電タブ43が、負極12の縁等に近い位置に配置される。ただし、本実施形態では、負極集電タブ47とは反対側の縁である長縁34の全体が、絶縁層13によって覆われる。このため、正極集電タブ43の長縁34等の縁への接触が、有効に防止される。
【0040】
また、本実施形態では、負極集電タブ47の一部、すなわち、負極集電タブ47において負極活物質含有層46に近い側の部位が、絶縁層13によって覆われる。このため、負極集電タブ47の正極11への接触も、有効に防止される。これにより、電極群3において正極11と負極12との間の電気的な絶縁性が向上する。
【0041】
ここで、本実施形態の構成の電極群3、及び、図7及び図8に示す比較例の構成の電極群3Aについて、正極11と負極12との間の電気的な絶縁性について、比較及び検証を行った。図7及び図8の比較例の構成でも、正極11は、本実施形態と同様に複数の電極板(正極板)15から形成され、本実施形態と同様にして電極板(第1の電極板)15が並んで配置される。ただし、比較例では、負極12も、複数の電極板(負極板)16から形成され、電極板(第2の電極板)16のそれぞれは、隣設される電極板(16の対応する1つ又は2つ)から離れて配置される。そして、電極板15のそれぞれは、互いに対して隣設される対応する電極板(16の対応する2つ)の間に、配置される。これにより、電極群3Aでは、電極板15及び電極板16がその間に交互に積層される。
【0042】
また、比較例では、電極板16のそれぞれは、一対の縦縁33A,34A及び一対の横縁35A,36Aを備える。また、電極板16のそれぞれは、本実施形態の負極12と同様に、負極集電箔45及び負極活物質含有層46を備える。そして、電極板16のそれぞれでは、縦縁33A及びその近傍部位によって、負極活物質含有層46が無担持の負極集電タブ47が、形成される。電極群3Aでは、正極集電タブ43のそれぞれは、電極板16に対して突出する。また、電極群3Aでは、負極集電タブ47のそれぞれは、電極板15に対して、正極集電タブ43が突出する側とは反対側に突出する。なお、図7では、電極板15,16のそれぞれは、横方向に垂直又は略垂直な断面で示され、図8では、電極板15,16のそれぞれは、縦方向に垂直又は略垂直な断面で示される。
【0043】
また、比較例では、電極板16のそれぞれと一体に絶縁層13が形成される。電極板16のそれぞれでは、負極活物質含有層46が絶縁層13で覆われるとともに、負極集電タブ47の一部も、絶縁層13で覆われる。ここで、比較例の電極板16の形成においては、例えば、本実施形態と同様にして負極基材12Aを形成し、本実施形態と同様にして負極基材12Aの表面に絶縁層13を一体に形成する(図6参照)。そして、絶縁層13が一体に形成された負極基材12Aをビク型、トムソン型等で打抜くことにより、電極板16のそれぞれが形成される。
【0044】
前述のように電極板16が形成されるため、電極板16のそれぞれでは、負極集電タブ47以外の部位でも、縦縁34A等の縁は、絶縁層13によって覆われない。すなわち、電極板16のそれぞれでは、負極集電タブ47以外の部位においても、縁が露出する。このため、電極板16のそれぞれは、正極11の電極板15に縁が接触し易い。特に、電極板16のそれぞれでは、負極集電タブ47とは反対側の縁である縦縁34Aが、正極集電タブ43と接触し易い。
【0045】
図9は、本実施形態の構成の電極群3及び比較例の構成の電極群3Aについて、正極11と負極12との間の電気的な絶縁性に関する実験データを示す。正極11と負極12との間の電気的な絶縁性に関しては、本実施形態の構成の24個の電極群3、及び、比較例の構成の10個の電極群3Aについて、検証を行った。検証では、電極群3,3Aのいずれにおいても、正極集電箔41は、アルミニウムの純度が99%以上で、かつ、厚さ15μmのアルミニウム合金箔を用い、負極集電箔45は、アルミニウムの純度が99%以上で、かつ、厚さ15μmのアルミニウム合金箔を用いた。そして、電極群3,3Aのいずれにおいても、正極活物質にコバルト酸リチウムを使用し、負極活物質にスピネル構造のチタン酸リチウムを使用した。また、電極群3,3Aのいずれにおいても、絶縁層13は、電界紡糸法によって形成し、有機繊維を形成する有機材料の溶液としてポリイミド溶液を用いた。そして、電極群3,3Aのいずれでも、絶縁層13における単位面積当たりの有機繊維の量は、1.0g/m~2.4g/mとした。また、絶縁層13の厚さを0.5μm~5μmとした。
【0046】
検証では、テスターを用いて、電極群3,3Aのそれぞれについて、正極11と負極12との間の抵抗値を測定した。そして、測定した抵抗値に基づいて、電極群3,3Aのそれぞれが、良品であるか否かを判断した。この際、抵抗値が10kΩ以上の場合は、良品であると判断し、抵抗値が10kΩより小さい場合は、良品でないと判断した。また、検証では、24個の電極群3の中での良品の割合を示す良品率を算出し、10個の電極群3Aの中での良品の割合を示す良品率を算出した。
【0047】
検証においては、まず、電池1の製造過程の段階S1において、全ての電極群3,3Aについて抵抗値を測定し、良品であるか否かを判断した。そして、段階S1で良品であると判断された電極群(3)のみ、電池1の製造過程の段階S2において、抵抗値を測定し、良品であるか否かを判断した。そして、段階S2で良品であると判断された電極群(3)のみ、電池1の製造過程の段階S3において、抵抗値を測定し、良品であるか否かを判断した。そして、段階S3で良品であると判断された電極群(3)のみ、電池1の製造過程の段階S4において、抵抗値を測定し、良品であるか否かを判断した。ここで、段階S1は、電極群(3,3A)を組立てた直後であり、段階S2は、組み立てられた電極群(3)において、正極集電タブ43を超音波溶接等によって接合し、かつ、負極集電タブ47を超音波溶接等によって接合した直後である。そして、段階S3は、電極群(3)を、ラミネートフィルム製の外装容器2に収納した直後であり、段階S4は、外装容器2の内部に電解液を注入する直前である。
【0048】
図9に示すように、検証では、段階S1において、比較例の構成の全ての電極群3Aの抵抗値が10kΩより小さくなり、全ての電極群3Aが良品でないと判断された。一方、段階S1~S4のそれぞれでは、本実施形態の構成の全ての電極群3の抵抗値が10kΩ以上になり、全ての電極群3が良品であると判断された。実際に、段階S1~S4のそれぞれでは、全ての電極群3の抵抗値が、1MΩ以上となった。したがって、検証結果からも、本実施形態の電極群3において、正極11と負極12との間の電気的な絶縁が確保されることが証明された。
【0049】
また、本実施形態では、負極12となる負極基材12Aと絶縁層13を一体に形成し、負極基材12A及び絶縁層13を電極板15のそれぞれと隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)との間を通してジグザグ状に延設させることにより、電極群3が形成される。したがって、負極基材を打抜いて複数の電極板(負極板)を形成する必要もなく、また、打抜かれた電極板(負極板)のそれぞれに絶縁層を形成する必要もない。したがって、容易に電極群3が形成される。このため、電池1が容易に製造される。
【0050】
また、本実施形態では、負極12と一体に絶縁層13が、正極11と負極12との間のセパレータとして形成される。このため、セパレータである絶縁層13の厚さが、薄くなる。実際に、正極11及び負極12とは別体の絶縁シートをセパレータとして形成した場合は、セパレータの厚さが15μm~20μmとなるが、本実施形態の絶縁層13では、厚さが5μm程度となる。絶縁層13が薄くなることにより、正極活物質含有層42及び負極活物質含有層46のそれぞれを厚くすることが可能になり、電極群3において、正極活物質及び負極活物質を多くすることが可能となる。これにより、電極群3の容量を大きくすることが可能になる。
【0051】
また、本実施形態の構成の電極群3では、絶縁層13を形成する有機繊維の単位面積当たりの量等を適切な範囲になる場合、放電容量も適切な範囲になることが、検証された。
【0052】
(変形例等)
なお、図10及び図11に示す第1の変形例では、負極12と一体の絶縁層13に加えて、正極11の電極板15のそれぞれの表面にも、絶縁体(51の対応するいずれか)が配置される。絶縁体51のそれぞれは、対応する電極板(15の対応する1つ)と絶縁層13との間で挟まれる。絶縁体51は、電気的絶縁性を有する。絶縁体51を形成する材料としては、絶縁層13と同様の材料が挙げられる。したがって、絶縁体51は、有機繊維から形成されてもよく、無機材料から形成されてもよく、有機繊維及び無機材料の混合物から形成されてもよい。特に、有機材料の絶縁層13に無機材料の絶縁体51を組合わせることにより、電池抵抗を低い値に抑えつつ、自己放電を抑制することが可能となる。また、絶縁体51のそれぞれは、対応する電極板(15の対応する1つ)と一体の層であってもよく、負極12及び電極板15のそれぞれとは別体の絶縁シート等であってもよい。ここで、図10は、図2のZ1-Z1断面に相当する断面を示し、図11は、図2のZ2-Z2断面に相当する断面を示す。
【0053】
本変形例では、電極板15のそれぞれの表面において、正極活物質含有層42が担持される部位、及び、正極集電タブ43の一部が、絶縁体51で覆われる。ただし、電極板15のそれぞれでは、縦縁23,24及び横縁25,26は、絶縁層で覆われない。
【0054】
また、図12に示す第2の変形例では、ラミネートフィルム製の外装容器2の代わりに、外装缶81内に電極群3が収納される。本変形例では、外装缶81の開口に蓋82が取付けられ、蓋82に正極端子83及び負極端子84を備える。また、外装缶81内に正極リード85及び負極リード86が配置される。本変形例では、例えば、正極集電タブ43の突出方向及び負極集電タブ47の突出方向が蓋82の長手方向と平行又は略平行となる状態で、電極群3が外装缶81内に収納される。そして、正極集電タブ43は、正極バックアップリード(図示しない)及び正極リード85を介して、正極端子83に電気的に接続される。同様に、負極集電タブ47は、負極バックアップリード(図示しない)及び負極リード86を介して、負極端子84に電気的に接続される。外装缶81の内部では、電極群3に、電解液(図示しない)が含浸される。
【0055】
外装缶81は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から形成され、アルミニウム合金としては、Mg、Zn及びSi等の元素を含む合金が好ましい。また、蓋82は、アルミニウム又はアルミニウム合金等から形成される。正極リード85及び負極リード86のそれぞれは、帯状の導電板であり、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から形成される。また、正極端子83及び負極端子84のそれぞれは、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から形成され、アルミニウム合金としては、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiの少なくとも1種類の元素を含む。なお、本変形例の外装缶81及び蓋82等と同様の外装部分は、例えば、特許文献2に示される。
【0056】
また、図13に示す第3の変形例では、ステンレス製の外装容器90の内部に、電極群3が収納される。外装容器90は、箱部材91及び蓋部材92を備える。ここで、外装容器90において、長手方向、長手方向に対して垂直又は略垂直な幅方向、及び、長手方向に対して垂直又は略垂直で、かつ、幅方向に対して垂直かつ略垂直な厚さ方向を規定する。箱部材91は、厚さ方向について一方側へ向かって開口する。そして、蓋部材92は、箱部材91の開口に取付けられる。
【0057】
本変形例では、外装容器90の長手方向について箱部材91の一端に凹部93が形成され、外装容器90の長手方向について箱部材91の他端に凹部94が形成される。そして、凹部93に正極端子95が設けられ、凹部94に負極端子96が設けられる。本変形例では、例えば、正極集電タブ43の突出方向及び負極集電タブ47の突出方向が外装容器90の長手方向と平行又は略平行となる状態で、電極群3が外装容器90内に収納される。そして、正極集電タブ43は、複数の正極リード(図示しない)を介して、正極端子95に電気的に接続される。同様に、負極集電タブ47は、複数の負極リード(図示しない)を介して、負極端子96に電気的に接続される。外装容器90の内部では、電極群3に、電解液(図示しない)が含浸される。なお、本変形例の外装容器90と同様の外装部分は、例えば、特許文献3に示される。
【0058】
また、前述の実施形態等では、電極群3において正極集電タブ43及び負極集電タブ47は互いに対して反対側に突出するが、これに限るものではない。図14及び図15に示す第4の変形例では、電極群3において、正極集電タブ43が突出する側が、負極集電タブ47が突出する側と同一になる。本変形例でも前述の実施形態等と同様に、電極板15のそれぞれの縦縁23に、横方向について外側に突出する突出部分27が設けられ、電極板15のそれぞれでは、縦縁23の突出部分27 及びその近傍部位によって、正極集電タブ43が形成される。ただし、本変形例では、電極板15のそれぞれにおいて、突出部分27の縦方向に沿った寸法が、縦方向についての電極板15の全寸法の半分以下となる。そして、電極板15のそれぞれでは、例えば、縦方向について中央位置に対して横縁25に近い側の領域にのみ、突出部分27が延設され、縦方向について中央位置に対して横縁26に近い側の領域には、突出部分27が延設されない。
【0059】
また、本変形例では、負極12においてで長縁33及びその近傍に、幅方向について外側に突出する複数の突出部分37が設けられる。突出部分37は、長手方向に対して互いに対して離れて配置され、突出部分37のそれぞれでは、負極活物質含有層46が担持されていない。負極12では、突出部分37によって、負極集電タブ47が形成される。本変形例でも前述の実施形態等と同様に、負極12と一体に絶縁層13が形成される。そして、絶縁層13は、負極12の表面において、負極活物質含有層46が担持されている部位を覆うとともに、負極集電タブ47の一部を覆う。したがって、本変形例では、突出部分37のそれぞれにおいて、一部が絶縁層13によって覆われる。
【0060】
本変形例でも前述の実施形態等と同様に、負極12及び絶縁層13は、電極板15のそれぞれと隣設される電極板(15の対応する1つ又は2つ)の間を通って、ジグザグ状に延設され、電極板15のそれぞれは、絶縁層13によって挟まれる。そして、電極板15のそれぞれでは、横縁25,26の対応する一方で、負極12及び絶縁層13が折返される。ただし、本変形例では、電極板15のそれぞれの縦縁23側及び負極12の長縁33側が互いに対して一致する状態で、電極群3において負極12が延設される。このため、本変形例では、正極集電タブ43が突出する側が、負極集電タブ47が突出する側と同一になる。なお、本変形例では、電極板15のそれぞれの縦方向について、負極集電タブ47は、正極集電タブ43から離れて位置し、正極集電タブ43及び負極集電タブ47の互いに対する接触が防止される。例えば、正極集電タブ43は、電極板15のそれぞれの縦方向について、中央位置に対して横縁25に近い側の領域に配置され、負極集電タブ47は、電極板15のそれぞれの縦方向について、中央位置に対して横縁26に近い側の領域に配置される。
【0061】
本変形例でも、図15に示すように、前述の実施形態等と同様の負極基材12Aから、負極12が形成される。ただし、本変形例では、負極基材12Aに絶縁層13を形成する前に、負極基材12Aにおいて活物質無担持部47Aの一部が、切削等によって切落とされる。これにより、負極活物質含有層46が担持されていない活物質無担持部47Aによって、複数の突出部分37が形成される。突出部分37は、負極基材12Aの長手方向について、互いに対して離れて配置される。
【0062】
本変形例では、突出部分37が形成された状態で、電界紡糸法等によって、負極基材12Aと一体に絶縁層13が形成される。本変形例でも、絶縁層13は、少なくとも活物質無担持部47A(突出部分37)以外の部位が、絶縁層13によって覆われる。また、本変形例でも、活物質無担持部47Aの一部が絶縁層13によって覆われる。本変形例では、突出部分37のそれぞれにおいて、負極活物質含有層46に近い側の部位が、絶縁層13によって覆われる。そして、本変形例でも、絶縁層13が一体に形成された負極基材12Aを、長手方向について所定の長さに切断し、負極12を形成する。図15では、負極基材12Aを、破線A1,A2で切断することにより、負極12が形成される。これにより、絶縁層13と一体の負極12が形成される。また、電極群3では、例えば、図15において破線B1で示す部分が山折りで折返され、図15において破線B2で示す部分が谷折りで折返される。なお、図15は、負極基材12Aに突出部分37及び絶縁層13を形成し、絶縁層13が形成された負極基材12Aを切断し負極12を形成する工程を示す。図15では、負極活物質含有層46は、ドットのハッチングで示し、絶縁層13は、斜線のハッチングで示す。
【0063】
また、前述の実施形態等では、正極11が複数の電極板15から形成される第1の電極となり、負極12が絶縁層13と一体に形成される第2の電極となるが、これに限るものではない。ある変形例では、負極12が複数の電極板から形成される第1の電極となり、正極11が絶縁層13と一体に形成される第2の電極となる。この場合、正極11は、電極板のそれぞれと隣設される電極板との間を通って、ジグザグ状に延設され、絶縁層13は、正極11と一体にジグザグ状に延設される。この場合も、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0064】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例の電池によれば、第1の電極は複数の電極板を備えるとともに、第2の電極は、少なくとも集電タブ以外の部位が絶縁層で覆われる。そして、第2の電極及び絶縁層は、電極板のそれぞれと隣設される電極板との間を通ってジグザグ状に延設される。このため、電極群における第1の電極と第2の電極との間の絶縁が適切に確保され、容易に製造される電池を提供することができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された事項を付記する。
[1]並んで配置される複数の電極板を備えるとともに、正極及び負極の一方である第1の電極と、
長縁の一方及びその近傍部位によって形成される集電タブを備えるとともに、前記正極及び前記負極の前記第1の電極とは異なる他方であり、前記電極板のそれぞれと隣設される前記電極板との間を通ってジグザグ状に延設される第2の電極と、
前記第2の電極と一体に前記ジグザグ状に延設されるとともに、前記第2の電極の表面において少なくとも前記集電タブ以外の部位を覆い、前記第1の電極の前記電極板のそれぞれを挟む絶縁層と、
を具備する電池。
[2]前記第1の電極において前記電極板のそれぞれの表面に配置されるとともに、対応する前記電極板と前記絶縁層との間で挟まれる絶縁体をさらに具備する、[1]の電池。
[3]前記絶縁層は、前記第2の電極の前記表面において前記集電タブの一部を覆う、[1]又は[2]の電池。
[4]前記絶縁層は、前記第2の電極の前記表面において前記第2の電極に密着する、[1]乃至[3]のいずれか1項の電池。
[5]前記絶縁層は、有機繊維によって形成される、[1]乃至[4]のいずれか1項の電池。
[6]正極及び負極の一方である第1の電極の基材となる第1の電極基材、及び、前記正極及び前記負極の前記第1の電極とは異なる他方である第2の電極の基材となる第2の電極基材を形成することと、
前記第1の電極基材を打抜くことにより、複数の電極板を形成することと、
前記第2の電極基材の表面に絶縁層を前記第2の電極基材と一体に形成し、前記第2の電極基材の前記表面において少なくとも長縁の一方及びその近傍部位以外の部位を前記絶縁層で覆うことと、
前記絶縁層が一体に形成された前記第2の電極を、前記電極板のそれぞれと隣設される前記電極板との間を通してジグザグ状に延設させ、前記電極板のそれぞれを前記絶縁層によって挟むことと、
を具備する電池の製造方法。
[7]前記第2の電極基材に前記絶縁層を形成することは、電界紡糸法によって有機繊維の前記絶縁層を前記第2の電極基材の前記表面に形成することを備える、[6]の製造方法。
【符号の説明】
【0066】
1…電池、3…電極群、11…正極、12…負極、11A…正極基材、12A…負極基材、13…絶縁層、15…電極板、33,34…長縁、43…正極集電タブ、47…負極集電タブ、51…絶縁体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15