(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】複合構造物のための繊維で改質された中間層、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/498 20120101AFI20221128BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20221128BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20221128BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
D04H1/498
D04H1/4374
B32B5/02 A
B32B5/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017235628
(22)【出願日】2017-12-08
【審査請求日】2020-12-08
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ツォチス, トーマス ケー.
(72)【発明者】
【氏名】スプレンガード, ジョセフ イー.
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529298(JP,A)
【文献】特開2016-104920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023427(US,A1)
【文献】特開2004-084092(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0018073(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009051(US,A1)
【文献】特開2013-155379(JP,A)
【文献】国際公開第2016/019143(WO,A1)
【文献】特開2004-103403(JP,A)
【文献】特開2012-046843(JP,A)
【文献】国際公開第2014/014099(WO,A1)
【文献】特開2013-099940(JP,A)
【文献】特表2016-505699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06M 7/00-17/10
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体製造方法であって、
不織ファブリックに付着した不連続繊維のネットワークを含む繊維改質された中間層を産出するために、連続繊維で形成された不織ファブリックを、分散液中に懸濁された不連続繊維のスラリに通して引き出すこと
を含み、
前記不連続繊維が
、炭素ウィスカ及び
チョップド炭素繊維からなる群から選択される部材を含む、方法。
【請求項2】
前記引き出すことが、前記スラリを保管タンクに収容することと、前記スラリが前記保管タンクに収容されている間に前記不織ファブリックを前記スラリに通して移動させることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記引き出すことが、複数のガイドローラを用いて供給ロールから前記不織ファブリックを引き出すことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記連続繊維が、熱可塑性材料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリを産出するために前記不連続繊維を前記分散液中に分散させることをさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分散液が水を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不連続繊維の前記ネットワークが付着した前記不織ファブリックを、一対の圧力ローラに通過させることをさらに含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不連続繊維の前記ネットワークが付着した前記不織ファブリックを加熱することをさらに含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ネットワークの前記不連続繊維の少なくとも一部分が、前記不織ファブリックの肉厚方向に散在する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
中間層強化補強ファブリックを産出するために、前記繊維改質された中間層に補強層を付着することをさらに含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記付着することが、前記補強層を前記繊維改質された中間層に融着することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記中間層強化補強ファブリックをマトリクス材料で含浸することをさらに含む、請求項
10または
11に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリクス材料を硬化することをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
中間層強化補強ファブリックを産出するために、複数の補強層を複数の前記繊維改質された中間層に、交互の構成で付着することをさらに含む、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記付着することが、前記複数の補強層と前記複数の繊維改質された中間層とを糸で縫い付けることを含む、請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して複合物に関し、詳細には、複合積層板を作製するために使用される補強材料に関し、より詳細には、複合構造物の耐衝撃性及び導電性を向上させる補強材料を作製するために使用される、繊維で改質された中間層に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、高い重量比強度、耐食性、及び他の有益な特性により、航空宇宙応用、自動車応用、及び海洋応用にしばしば使用される。従来型の複合材料は、典型的には、織式構成及び/又は不織構成の補強繊維層(例えばガラス、炭素、又はポリアミドの繊維)を含む。この繊維層は、未硬化のマトリクス材料(エポキシ樹脂など)と一緒に積層されることによって、複合構造物として製造されうる。この積層板は次いで、熱及び/又は圧力を加えることで硬化されて、完成形の固化済み複合部品を形成しうる。
【0003】
複合構造物内の繊維層は、繊維の方向に、相対的に高い強度をもたらす。しかし、耐衝撃性は通常、硬化後のマトリクス材料の特性によって決まる。複合構造物の耐衝撃性を強化する1つの方法は、マトリクス材料に熱可塑性材料の粒子を添加することである。複合部品の耐衝撃性を向上させる別の方法は、繊維層同士の間に熱可塑性の中間層を設けることである。
【0004】
しかし、熱可塑性の粒子又は中間層によって強化されている複合構造物は、落雷中に帯電現象に見舞われることがあり、このことは、エッジグロウの原因になりうる。本書において、「エッジグロウ(edge glow)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、低レベルの電気又は熱による火花発生を含みうる。この火花発生は、繊維間の樹脂の絶縁破壊又は繊維同士の接触により、炭素繊維複合材料のエッジにおいて発生しうる。加えて、熱可塑性の粒子又は中間層によって強化されている複合構造物は、高温における機械的特性保持性が、所望よりも低くなりうる。
【0005】
したがって、当業者は、複合構造物の分野における研究開発の努力を継続している。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、開示されている繊維で改質された中間層は、連続繊維で形成された不織ファブリック層と、この不織ファブリックに付着した不連続繊維とを含む。
【0007】
別の実施形態では、開示されている中間層で強化された補強ファブリックは、構造トウで形成された少なくとも1つの補強層と、補強層に付着した、少なくとも1つの繊維で改質された中間層とを含み、この繊維で改質された中間層は、連続繊維で形成された不織ファブリック層と、不織ファブリックに付着した不連続繊維とを含む。
【0008】
別の実施形態では、開示されている複合構造物は、中間層で強化された補強ファブリックであって、交互構成に配置された、構造トウで形成された少なくとも1つの補強層と、補強層に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層とを含み、かつ、繊維で改質された中間層が、連続繊維で形成された不織ファブリック層、及び、不織ファブリックに付着した不連続繊維を含む、中間層で強化された補強ファブリックの少なくとも1つの層と、中間層で強化された補強ファブリックに導入されたマトリクス材料とを、含む。
【0009】
別の実施形態では、開示されている、繊維で改質された中間層を製造するための方法は、(1)分散液中に懸濁された不連続繊維のスラリに、連続繊維で形成された不織ファブリックを通すステップと、(2)不織ファブリックに付着した不連続繊維のネットワークを形成するステップと、(3)繊維で改質された中間層を形成するステップとを、含む。
【0010】
別の実施形態では、開示されている、中間層で強化された補強ファブリックを製造するための方法は、(1)構造トウで形成された少なくとも1つの補強層と、少なくとも1つの繊維で改質された中間層とを、交互構成に配置するステップであって、繊維で改質された中間層が、連続繊維で形成された不織ファブリック層、及び、不織ファブリックに付着した不連続繊維を含む、交互構成に配置するステップと、(2)補強層と不織ファブリック層とをひとつに結合するステップとを、含む。
【0011】
別の実施形態では、開示されている、複合構造物を製造するための方法は、(1)型の上に中間層で強化された補強ファブリックの少なくとも1つの層をレイアップするステップであって、中間層で強化された補強ファブリックが、交互構成に配置された、構造トウで形成された少なくとも1つの補強層と、補強層に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層とを含み、繊維で改質された中間層が、連続繊維で形成された不織ファブリック層、及び、不織ファブリックに付着した不連続繊維を含む、レイアップするステップと、(2)マトリクス材料を中間層で強化された補強ファブリックに導入するステップと、(3)マトリクス材料を硬化させるステップと、(4)複合構造物を形成するステップとを、含む。
【0012】
別の実施形態では、開示されている、補強材料及びマトリクス材料を含む複合構造物を通して電磁エネルギーを散逸させるための方法は、(1)補強材料及びマトリクス材料を含む複合構造物の表面上に電磁エネルギーを付与するステップと、(2)連続した導電経路に沿って横方向に、電磁エネルギーを散逸させるステップと、(3)複合構造物に連結された接地平面に電磁エネルギーを転位させるステップとを、含む。
【0013】
別の実施形態では、開示されている、複合構造物を通して衝撃エネルギーを散逸させるための方法は、(1)補強材料及びマトリクス材料を含む複合構造物の表面上に衝撃エネルギーを付与するステップと、(2)複合構造物に沿って横方向に、衝撃エネルギーを偏向させるステップと、(3)複合構造物の肉厚方向の損傷成長を抑制するステップとを、含む。
【0014】
開示されている装置及び方法の他の実施形態は、下記の詳細説明、添付図面、及び付随する特許請求の範囲により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】開示されている繊維で改質された中間層の一実施形態の概略的かつ部分的な側方断面図である。
【
図2】
図1の繊維で改質された中間層の概略的かつ部分的な拡大側方断面図である。
【
図3】開示されている繊維で改質された中間層を製造するための装置の一実施形態の概略図である。
【
図4】開示されている繊維で改質された中間層を製造するための開示されている方法の、一実施形態のフロー図である。
【
図5】開示されている繊維で改質された中間層を使用して形成された、開示されている中間層で強化された補強ファブリックの一実施形態の概略的かつ部分的な側方断面図である。
【
図6】
図5の開示されている中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物の一実施形態の概略斜視図である。
【
図7】
図5の開示されている中間層で強化された補強ファブリックを製造するための装置の一実施形態の概略図である。
【
図8】
図5の開示されている中間層で強化された補強ファブリックを製造するための開示されている方法の一実施形態のフロー図である。
【
図9】開示されている繊維で改質された中間層を使用して形成された、開示されている中間層で強化された補強ファブリックの別の実施形態の概略的かつ部分的な側方断面図である。
【
図10】
図9の中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物の別の実施形態の概略斜視図である。
【
図11】
図9の中間層で強化された補強ファブリックを製造するための装置の一実施形態の概略図である。
【
図12】
図9の中間層で強化された補強ファブリックを製造するための開示されている方法の一実施形態のフロー図である。
【
図13】開示されている繊維で改質された中間層を使用して形成された、開示されている中間層で強化された補強ファブリックの別の実施形態の概略的かつ部分的な側方断面図である。
【
図14】
図13の中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物の別の実施形態の概略斜視図である。
【
図15】
図13の中間層で強化された補強ファブリックを製造するための装置の一実施形態の概略図である。
【
図16】
図13の中間層で強化された補強ファブリックを製造するための開示されている方法の一実施形態のフロー図である。
【
図17】事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリックを製造するための装置の一実施形態の概略図である。
【
図18】
図17の事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物の別の実施形態の概略斜視図である。
【
図19】中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物を製造するための開示されている方法の一実施形態のフロー図である。
【
図20】中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物を通して電磁エネルギーを散逸させるための、開示されている方法の一実施形態のフロー図である。
【
図21】中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物を通しての電磁エネルギーの散逸の概略図である。
【
図22】中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物を通して衝撃エネルギーを散逸させるための、開示されている方法の一実施形態のフロー図である。
【
図23】中間層で強化された補強ファブリックを使用して形成された複合構造物を通しての衝撃エネルギーの散逸の概略図である。
【
図25】航空機の製造及び保守方法の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記の詳細説明は添付図面に言及しているが、かかる添付図面は、本開示によって説明されている具体的な実施形態及び/又は例を示している。 種々の構造及び工程を有する他の実施形態及び/又は例も、本開示の範囲から逸脱するわけではない。同様の参照番号は、異なる図面における同じ特徴、要素、又は構成要素を表わしうる。
【0017】
本開示に適合する主題の、特許請求されることもあるが、必ずされるというわけではない、例示的で非網羅的な実施形態を、以下に提示する。
【0018】
図1は、開示されている繊維で改質された中間層100の例示的な一実施形態の、概略的かつ部分的な側方断面図である。本書において、「中間層(interlayer)」又は「積層間層(interlaminar layer)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、硬化済みの複合構造物に強化効果を付与するために、複合材料内の他の層の間、例えば隣接する、複合材料の構造トウ(例えば連続したフィラメント又は繊維)の層の間に置かれた層としての、材料の使用目的を含みうる。
【0019】
繊維で改質された中間層100は、不織ファブリック層102(例えば、不織ファブリック202の層)(
図3)と、不織ファブリック層102に連結された繊維層104(例えば、不連続繊維116の層)(
図2)とを含む。図示されている実施形態では、不織ファブリック層102は、第1(例えば上側)表面106と、反対側の第2(例えば下側)表面108とを含む。第1繊維層104が不織ファブリック層102の第1表面106に連結され、第2繊維層104が不織ファブリック層102の第2表面108に連結される。
【0020】
図2は、
図1の繊維で改質された中間層100の、概略的かつ部分的な拡大側方断面図である。例示的な一実施形態では、不織ファブリック層102は、連続繊維110の構造物112を含むか、又はかかる構造物112で作られる。本書において、「繊維(fiber)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、一又は複数の繊維状材料(例えば繊維又はフィラメント)を含みうる。本書において、「連続繊維(continuous fiber)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、関連する不織ファブリック層102の長さ又は幅の実質的に全体にわたって延在する、不織ファブリック層102を形成するよう適合した細長い繊維又はフィラメントを含みうる。構造物112は、交じり合い、絡み合った連続繊維110のウェブ構造物を含んでよく、連続繊維110は、例えば機械的接合、熱的接合、かつ/又は化学的接合のうちの少なくとも1つによってひとつに接合される。
【0021】
例示的な一実施形態では、不織ファブリック層102は、連続繊維110のスパンボンド式ファブリックでありうる。スパンボンド式ファブリックは、連続的に紡がれ(spun)、熱で接合されている連続繊維110から製造される。
【0022】
別の例示的な実施形態では、不織ファブリック層102は、連続繊維110のスパンレース式ファブリックでありうる。スパンレース式ファブリックは、絡み合うことによって機械的に接合されている、連続した又は不連続な繊維116から調製されうる。
【0023】
更に別の例示的な実施形態では、不織ファブリック層102は、連続繊維110のメッシュファブリックでありうる。一例としては、不織ファブリック層102のメッシュ構造は、経方向及び緯方向に1インチあたりおよそ0.5からおよそ15の繊維を内包しうる。
【0024】
例示的な一実施形態では、不織ファブリック層102は、不織ベールとして実装され、かつ、通常そのように称されうる他の実施形態では、不織ファブリック層102は、不織マット、不織シート、不織テープ、又は他の種類の不織形態の連続繊維の集合体のうちの、少なくとも1つとして実装されうる。
【0025】
例示的な一実施形態では、不織ファブリック層102の連続繊維110は、熱可塑性材料(例えば熱可塑性繊維)を含むか、又は熱可塑性材料で作られる。不織ファブリック層102の熱可塑性材料の融点は、高温圧縮強度などの複合特性が損なわれないことを確実にするよう、典型的には、複合材料を形成するのに使用されるマトリクス材料(例えば熱硬化性マトリクス材料)の硬化温度に近いか、かかる温度を上回る。
【0026】
加えて、熱可塑性材料は、ケトン、水、ジェット燃料、及びブレーキ流体などの溶媒に曝されても複合材料が強度劣化の影響を受けやすくならないことを確実にするよう、これらの溶媒に対する良好な耐性も有する。
【0027】
他の例示的な実施形態では、不織ファブリック層102の連続繊維110は、限定するわけではないが例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファルド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルアミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル-ポリアリレート(Vectran(登録商標)など)、ポリアラミド(Kevlar(登録商標)など)、ポリベンゾオキサゾール(Zylon(登録商標)など)、ビスコース(Rayon(登録商標)など)、炭素繊維、及びガラス繊維を含む、多種多様な他の好適な材料から選択されうる。
【0028】
更に他の実施形態では、連続繊維110は、複合材料を形成するために使用されるマトリクス材料に適合しており、かつ、導入及び硬化中にマトリクス材料に溶解しない、任意の種類の繊維状材料の中からも、選択されうる。換言すると、不織ファブリック層102の繊維状材料は、繊維で改質された中間層100とマトリクス材料との間の接触及び/又は接着の向上を促進するためである場合を除き、下層のマトリクス材料に対して良好に溶解するものではない。
【0029】
例示的な一実施形態では、不織ファブリック層102の連続繊維110は、2つ以上の材料から作られる。一例としては、2つ以上の材料は、不織ファブリック層102を作り出すために使用される異なる種類の連続繊維110を機械的に混合することによって、調製されうる。
【0030】
別の例示的な実施形態では、不織ファブリック層102を作り出すために使用される二成分繊維、三成分繊維、又は成分の数がより多い繊維を形成するために、2つ以上の材料が使用されうる。換言すると、不織ファブリック層102に使用される各連続繊維110が、複数の材料を含みうる。一例としては、複数成分の連続繊維110が、2つ以上の繊維材料を同時押し出しすることによって作られ、かつ、複数の出口部を有する紡糸口金(spinneret)によって製造されうる。
【0031】
不織ファブリック層102の各連続繊維110は、例えば、繊維で改質された中間層100及び結果的に得られる複合材料の特定の応用にしたがって、任意のサイズを有しうる。一例としては、不織ファブリック層102を構成する連続繊維110は、およそ1ミクロンからおよそ100ミクロンの直径を有しうる。別の例としては、不織ファブリック層102を構成する連続繊維110は、およそ10ミクロンからおよそ75ミクロンの直径を有しうる。一例としては、不織ファブリック層102を構成する連続繊維110は、およそ10ミクロンからおよそ30ミクロンの直径を有しうる。更に別の例としては、不織ファブリック層102を構成する連続繊維110は、およそ1ミクロンからおよそ15ミクロンの直径を有しうる。
【0032】
不織ファブリック層102に使用される材料は、広範にわたる目付(areal density)も有しうる。この目付は、例えば衝撃後圧縮試験によって検証される所望の耐衝撃性を付与するために必要な量にしたがって、選ばれうる。一例としては、不織ファブリック層102は、およそ1グラム/平方メートル(g/m2)からおよそ50g/m2の目付を有しうる。別の例としては、各不織ファブリック層102の目付は、およそ2g/m2からおよそ15g/m2でありうる。別の例としては、各不織ファブリック層102の目付は、およそ5g/m2からおよそ15g/m2でありうる。更に別の例としては、各不織ファブリック層102の目付は、およそ3g/m2からおよそ4g/m2でありうる。繊維で改質された中間層100を使用して作られるある特定の複合部材のオプションの面重量は、必要に応じて決定されうるが、典型的には、複合物の全体重量のおよそ2%からおよそ4%である。
【0033】
例示的な一実施形態では、繊維層104は、不連続繊維116のネットワーク114を含むか、又はかかるネットワーク114で作られる。本書において、「不連続繊維(discontinuous fiber)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、不織ファブリック層102の長さ又は幅の実質的に全体にわたって延在しない、繊維層104を形成するよう適合した短い又は細切れの(chopped)繊維又はフィラメントを含みうる。ネットワーク114は、機械的にひとつに接合されている、交じり合い絡み合った不連続繊維116のネットワークを含みうる。換言すると、不連続繊維116は、繊維層104のネットワーク114を形成する他の不連続繊維116と機械的に絡み合い、連結しうる。
【0034】
例示的な一実施形態では、繊維層104の不連続繊維116は、炭素質材料を含むか、又は炭素質材料で作られる。例としては、繊維層104の不連続繊維116は、限定するわけではないが例としては、炭素ナノチューブ、グラフェン板状晶、炭素ウィスカ、チョップト炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び炭素ナノ繊維を含む多種多様な好適な材料から、選択されうる。一例としては、炭素ナノチューブは、単一壁ナノチューブ(SWNT)、二重壁ナノチューブ(DWNT)、又はその他の複数壁ナノチューブ(MWNT)でありうる。それ以外の様々な炭素同位体も想定される。
【0035】
炭素質材料は、不織ファブリック層102の熱可塑性連続繊維110と比較して、繊維で改質された中間層100の導電性及び剛性の向上をもたらす。ゆえに、繊維層104の剛性かつ導電性の不連続繊維116が組み合わされることで、不織ファブリック層102の熱可塑性連続繊維110に導電性が付与されることにより、例えば落雷中に、電磁効果(EME)を散逸させ、かつ/又は、エッジグロウを防止するために、繊維で改質された中間層100を使用して作られた複合構造物が接地されること、及び、この複合構造物の帯電を低減又は排除することが可能になりうる。
【0036】
更に、繊維層104の不連続繊維116の材料の機械的特性が、不織ファブリック層102の剛性などの機械的特性を向上させ又は強化することにより、高温において、発生する可能性がある繊維で改質された中間層100を使用して作られた複合構造物の特性損失をいくらか相殺しうる(例えば、複合特性保持性を向上させうる)。
【0037】
更に他の例示的な実施形態では、繊維層104の不連続繊維116は、抄紙(papermaking)プロセスに適合する任意の種類の繊維状材料の中からも選択されうる。例としては、繊維層104の不連続繊維116は、限定するわけではないが例としては、ナノセルロース繊維、ポリアラミド(例えばKevlar(登録商標))繊維、及び金属繊維を含みうる。
【0038】
繊維層104の不連続繊維116の各々は、例えば、繊維で改質された中間層100及び結果的に得られる複合材料の特定の応用にしたがって、任意のサイズ及び/又は形状を有しうる。一例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、少なくともおよそ5マイクロメートル(μm)の平均長さを有しうる。別の例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、少なくともおよそ0.05ミリメートル(mm)の平均長さを有しうる。別の例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、少なくともおよそ0.1mmの平均長さを有しうる。別の例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、少なくともおよそ0.2mmから少なくともおよそ0.5mmの平均長さを有しうる。別の例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、少なくともおよそ0.5mmから少なくともおよそ1mmの平均長さを有しうる。更に別の例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、少なくともおよそ1mmから少なくともおよそ5mmの平均長さを有しうる。一例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、およそ1ナノメートル(nm)からおよそ50nmの直径を有しうる。別の例としては、繊維層104を構成する不連続繊維116は、およそ5nmからおよそ10nmの直径を有しうる。
【0039】
図2に示しているように、繊維層104を形成する不連続繊維116のネットワーク114は、不織ファブリック層102を形成する連続繊維110の構造物112の対向面上に構築又は形成され、かつ構造物112の対向面に接合される(例えば機械的に接合される)。一例としては、不連続繊維116のネットワーク114が形成される際に、不連続繊維116の第1部分が、不織ファブリック層102の少なくとも一方の表面を形成する連続繊維110の少なくとも一部に機械的に接合されて(例えば、かかる連続繊維110の少なくとも一部と絡み合い、連結して)よく、不連続繊維116の第2部分は、不連続繊維116の第1部分に機械的に接合され(例えば、不連続繊維116の第1部分と絡み合い、連結し)うる。例示的な一実施形態では、ランダムに配向されて均一に分布した、繊維層104は、不織ファブリック層102に接合された不連続繊維116のネットワーク114を含む。
【0040】
繊維層104の密度は、限定するわけではないが例としては、不織ファブリック層102の材料組成、繊維で改質された中間層100の応用目的、繊維で改質された中間層100を使用して作られた複合部材又は複合構造物の応用目的などの、様々な要因に依拠しうる。例示的な一実施形態では、繊維層104は、不織ファブリック層102の重量のおよそ0.1パーセントからおよそ10パーセントでありうる。別の例示的な実施形態では、繊維層104は、不織ファブリック層102の重量のおよそ0.1パーセントからおよそ5パーセントでありうる。更に別の例示的な実施形態では、繊維層104は、不織ファブリック層102の重量のおよそ0.25パーセントからおよそ2.5パーセントでありうる。一例としては、繊維層104の坪量(basis weight)は、およそ0.1グラム/平方メートル(gsm)からおよそ2gsmでありうる。坪量は、繊維層104の厚さによって調整されうる。繊維層104の厚さは、例えば、コーティングスピード、繊維スラリ206(
図3)の濃度、及び/又は分散液208(例えば溶媒)(
図3)の選択に、依拠しうる。繊維層104の均一性は、例えば、不連続繊維116の分散品質及び凝集サイズに依拠しうる。一例としては、繊維層104の厚さは、およそ0.1μmからおよそ10μmまでの範囲内で調整されうる。不織ファブリック層102(例えば不織ファブリック202)の抵抗は、例えば繊維層104の厚さに基づいて、およそ50オーム/平方からおよそ3,000オーム/平方の範囲内で調整されうる。
【0041】
例示的な一実施形態では、繊維層104の不連続繊維116の少なくとも一部分は、少なくとも部分的に不織ファブリック層102の肉厚方向に散在しうる。換言すると、不連続繊維116の少なくとも一部は、不織ファブリック層102の構造物112を形成する連続繊維110の少なくとも一部と機械的に絡み合い、連結しうる。
【0042】
図3は、繊維で改質された中間層100を製造するための装置200及びプロセスの例示的な一実施形態の概略図である。
図4は、繊維で改質された中間層100を製造するための、開示されている方法300の例示的な一実施形態のフロー図である。図示されている実施形態では、繊維で改質された中間層100を作るために、改変された抄紙プロセスが使用されうる。つまり、不連続繊維116が分散液208中に懸濁される。不織ファブリック202が分散液を通過するにつれて、不連続繊維116が、不織ファブリック202上に形を成し、不織ファブリック202と接合する。
【0043】
ブロック302(
図4)に示しているように、不織ファブリック202の連続シートが、例えば供給ロール204に提供される。本書において、材料の「連続シート(continuous sheet)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、シートの幅よりも桁違いに長い長さを有する細長いシートを含みうる。スパンボンド式、スパンレース式、又はメッシュのファブリックの形態などの不織ファブリック202が、市場で広範な供給源から入手されうる。
【0044】
ブロック304(
図4)に示しているように、不連続繊維116のスラリ206及び分散液208が、例えば保管タンク又は混合タンク210に内包されて、提供される。本書において、「スラリ(slurry)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、分散液208中に懸濁された不連続繊維116の流体混合物又は懸濁液を含みうる。
【0045】
例示的な一実施形態では、分散液208は水である。オプションで、分散液208は、分散液208中の不連続繊維116の分散及び懸濁を向上させ、かつ安定化するための、一又は複数の化合物も含みうる。
【0046】
別の例示的な実施形態では、分散液208は、不連続繊維116を分散及び懸濁させるための、他の非溶媒和液を含みうる。本書において、「非溶媒和(non-solvating)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、不連続繊維116と実質的に反応せず、かつ、不連続繊維116が実質的に溶解しない、液体形態の化合物を含みうる。
【0047】
更に別の例示的な実施形態では、分散液208は、オプションで、繊維層104を形成する不連続繊維116及びその湿式ネットワーク114の分散、形成、又は脱水を維持するために、一又は複数の界面活性物質(例えば分散剤及び抗凝集物)を含みうる。
【0048】
通常、不連続繊維116は、当該技術分野においては既知であるように、一又は複数の撹拌デバイス又は分散デバイスを使用して、混合条件下で一定量の分散液208に添加される。スラリ206は、不織ファブリック202がスラリ206に通される際に不織ファブリック202の表面を適切に覆うのに十分なほど濃い、不連続繊維116の濃度を有する。しかし、スラリ206は、不織ファブリック202がスラリ206に通される際に不織ファブリック202を破らないよう、さもなければ不織ファブリック202を歪め、若しくは損傷することがないようにするのに十分なほど薄い、不連続繊維の濃さ又は濃度を有するようにも構成される。一例としては、分散液208中の不連続繊維116の濃度は、およそ0.05グラム/リットル(g/L)からおよそ5g/Lでありうる。別の例としては、スラリ206中の不連続繊維116の重量パーセントは、およそ0.005wt%からおよそ0.5wt%でありうる。
【0049】
ブロック306(
図4)に示しているように、不織ファブリック202がスラリ206に通される。一例としては、不織ファブリック202は、供給ロール204によって供給され、かつ、供給ロール204から引き出されうる。例示的な一実施形態では、複数のガイドローラ212又はプーリが、供給ロール204からスラリの中へと不織ファブリック202を引き出し、かつ、不織ファブリック202をスラリ206に連続的に通すよう、構成される。不織ファブリック202は多孔性である。一例としては、連続繊維110の構造物112は、不織ファブリック202がスラリ206を通過するにつれて分散液208から不連続繊維116を濾し取るよう、構成される。この例では、不織ファブリック202は、相対的に低い張力で引っ張られうる。不織ファブリック202に加わる張力は、不織ファブリック202がスラリ206に通される際に不織ファブリック202を破り、ゆがめ、さもなければ損傷することがないように、不織ファブリック202の重量及び/又は強度に基づいて、好適に選択されうる。
【0050】
別の例示的な実施形態では、不織ファブリック202は、連続多孔ベルト(明確には図示せず)上で、支持され、スラリ206を通って運ばれる。この例では、スラリ206を通して不織ファブリック202を運ぶベルトは、ベルトと接触している不織ファブリック202の表面上での、不連続繊維116の接合又は繊維層104の形成の妨害、或いは、かかる接合又は形成への干渉がないよう、構成されうる。一例としては、不織ファブリック202の材料の可撓性かつ軽量な性質により、不織ファブリック202がスラリ206に通される際に、不織ファブリック202は、ベルトとずっと密接に接触しているわけではないことがある。ゆえに、分散液208中に懸濁された不連続繊維116が多孔性の不織ファブリック202にろ過されることが可能になる。別の例では、ベルトの有孔率は、分散液208から不連続繊維116を濾し取らないよう設定され、不連続繊維116が、不織ファブリック202と接触し、接合するように、多孔ベルトを容易に通過することを可能にする。例としては、多孔ベルトは、複数の開口を有する運搬ベルト、メッシュ、又はスクリーンでありうる。
【0051】
装置200及び方法300の処理ラインスピードは、例えば製造環境、不織ファブリック202(
図3)上に形成された繊維層104の厚さ、スラリ206(
図3)の粘度、不織ファブリック202の強度などに応じて、変動しうる。処理スピードは、スループットを最大化するために、例えば上記の要因に基づいて、可能な限り早くなるよう設定されうる。例示的な一実施形態では、処理スピードは、およそ6インチ/分からおよそ10フィート/分でありうる。
【0052】
ブロック308(
図4)に示しているように、不連続繊維116のネットワーク114が不織ファブリック202上に形成される。一例としては、不織ファブリック202がスラリ206を通過するにつれて、分散液208中に懸濁された不連続繊維116が多孔不織ファブリック202にろ過される。不連続繊維116が不織ファブリック202によってろ過される際に、不連続繊維116は、不織ファブリック202の表面(例えば上面106及び底面108)(
図1)と接合(例えば機械的に接合)して、不織ファブリック202の連続繊維110の構造物112上に、かつ少なくとも部分的にかかる構造物を通って、不連続繊維116のネットワーク114を構築する。構築された不連続繊維116のネットワーク114は、不織ファブリック層102上に繊維層104を形成する(
図2)。
【0053】
ブロック310(
図4)に示しているように、オプションで、繊維で改質された中間層100に熱及び/又は圧力の少なくとも一方が加えられうる。繊維で改質された中間層100(例えば、不織ファブリック202と不連続繊維116との組み合わせ)に圧力及び/又は熱を加えることにより、不連続繊維116の不織ファブリック202内への散在及び不織ファブリック202との統合、余剰量の分散液208があればそれを除去することによる繊維で改質された中間層100の乾燥、並びに、繊維で改質された中間層100の圧密などが更に行われ、不連続繊維116と不織ファブリック202とがひとつに接合されうる。一例としては、不織ファブリック202がスラリ206を通過する際に不織ファブリック202上に不連続繊維116が構築されることに続いて、繊維で改質された中間層100が、ヒータ214及び/又は一対の圧力ローラ216の少なくとも一方を通過しうる。
【0054】
ブロック312(
図4)に示しているように、繊維で改質された中間層100が形成される。一例としては、例えば乾燥済みの、繊維で改質された中間層100の連続シートが、製品回収ロールに巻き取られ、例としては複合材料の製造における更なる使用まで、そこに保管される。
【0055】
別の例示的な実施形態では、不織ファブリック202は、不連続繊維116のスラリ206及び分散液208の中で浸漬コーティングされうる。一例としては、不織ファブリック202がスラリ206内に浸漬される際に、分散液208中に懸濁された不連続繊維116が多孔不織ファブリック202にろ過される。不連続繊維116が不織ファブリック202によってろ過される際に、不連続繊維116は、不織ファブリック202の表面(例えば上面106及び底面108)(
図1)に付着(例えば機械的に付着)して、不織ファブリック202の連続繊維110の構造物上に、かつ、少なくとも部分的にかかる構造物を通って、不連続繊維116のネットワーク114を構築する。構築された不連続繊維116のネットワーク114は、不織ファブリック層102上に繊維層104を形成する(
図2)。この実施形態では、オプションで、熱及び/又は圧力の少なくとも一方が、スラリ206から引き出された後の繊維で改質された中間層100に加えられうる。
【0056】
別の例示的な実施形態では、不織ファブリック202は、例えばマンドレル上にレイアップされ、不連続繊維116で噴霧コーティングされうる。一例としては、不連続繊維116が、不織ファブリック202の一方又は両方の表面上に直接噴霧される。別の例としては、不連続繊維116のスラリ206及び分散液208が、不織ファブリック202の一方又は両方の表面上に噴霧されうる。不連続繊維116が不織ファブリック202上に噴霧される際に、不連続繊維116は、不織ファブリック202の少なくとも一方の表面(例えば上面106及び/又は底面108)(
図1)に接合(例えば機械的に接合)して、不織ファブリック202の連続繊維110の構造物上に、かつ、少なくとも部分的にかかる構造物を通って、不連続繊維116のネットワーク114を構築する。構築された不連続繊維116のネットワーク114は、不織ファブリック層102上に繊維層104を形成する(
図2)。この実施形態では、オプションで、熱及び/又は圧力の少なくとも一方が、噴霧が行われた後の繊維で改質された中間層100に加えられうる。
【0057】
不連続繊維116を付着させ、繊維層104を形成する、他の方法も想定される。別の例示的な実施形態としては、不連続繊維116が、静電コーティングプロセスによって、不織ファブリック202の一方又は両方の表面上に付着しうる。更に別の例示的な実施形態としては、不連続繊維116が、静電堆積プロセスによって、不織ファブリック202の一方又は両方の表面上に付着しうる。
【0058】
開示されている繊維で改質された中間層100は、中間層で強化された補強ファブリックを形成するために使用されてよく、中間層で強化された補強ファブリックは次いで、所望の構成を有する複合部材又は複合構造物を形成するために使用されるプリフォームとして、使用されうる。繊維で改質された中間層100(例えば、熱可塑性連続繊維110の不織ファブリック層102)は、複合部材の耐衝撃性及び破壊靱性の向上をもたらす。更に、繊維で改質された中間層100(例えば、剛性かつ導電性の不連続繊維116の繊維層104)は、例えば高温において、複合部材の導電性及び剛性の向上をもたらす。
【0059】
図5は、繊維で改質された中間層100を使用して形成された、開示されている中間層で強化された補強ファブリック400の一実施形態の、概略的かつ部分的な側方断面図である。この実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400は単方向性ファブリックである。中間層で強化された補強ファブリック400は、補強層402と繊維で改質された中間層100とが交互になっている複数の層を含む。本書で上述しているように、繊維で改質された中間層100の各々は、不織ファブリック層102と繊維層104とを含む(
図1)。繊維で改質された中間層100は、補強層402の間に配置され、かつ、補強層402に接合される(例えばニットで縫い付けられる)。
【0060】
図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400は、1つの補強層402と、2つの繊維で改質された中間層100とを含む。補強層402は、両側の繊維で改質された中間層100の間に挟まれている。図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400の外(例えば最外)表面は、繊維で改質された中間層100で形成される。しかし、他の実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400の一方の外表面は、補強層402から形成されることがある。
【0061】
中間層で強化された補強ファブリック400は、多種多様な寸法を有するプリフォームを作るために製造されうる。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック400から製造されるプリフォームは、長さがおよそ12インチ(in)から300inであり、幅が少なくともおよそ50inでありうる。
【0062】
補強層402は、補強材料で作られた構造トウ404を含むか、又はかかる構造トウで作られる。一例としては、補強層402は、互いに概して平行に配置された複数の単方向性トウ404を含む。本書において、「トウ(tow)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、連続フィラメント406の無撚束を含みうる。本書において、「単方向性(unidirectional)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、単一の配向又は方向に配置されている補強トウ(例えば連続したフィラメント又は繊維)を含みうる。トウ404は、マルチフィラメントトウ又はマルチフィラメントヤーンとも称されうる。一例としては、各トウ404は、およそ1,000からおよそ100,000のフィラメント406で構成されうる。一例としては、各トウ404は、およそ12,000からおよそ24,000のフィラメント406で構成されうる。しかし、他の例では、トウ404のサイズは、具体的な応用に適応するよう、必要に応じて変更されうる。
【0063】
本書において、「フィラメント(filament)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、複合材料の補強のための補強層402に適合した一又は複数の繊維状材料を含みうる。本書において、「連続フィラメント(continuous filament)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、関連する補強層402の長さ又は幅の実質的に全体にわたって延在する、細長いフィラメント(例えば細長い繊維状材料)を含みうる。
【0064】
例示的な一実施形態では、補強層402を形成するトウ404は、単一の配向又は方向に、互いに平行に配置される。ゆえに、補強層402の配向又は方向が、トウ404の配向又は方向によって決定されうる。一例としては、トウ404は、補強層402を形成するよう単一の配向又は方向に配置された連続フィラメント406のシートを形成するために、互いに対してばらばらに広がって位置付けられる。
【0065】
トウ404(例えば連続フィラメント406)は、補強材料で作られる。例示的な一実施形態では、補強層402のトウ404は、炭素繊維を含むか、又は炭素繊維で作られる。換言すると、補強材料は炭素であり、マルチフィラメント補強トウ404を形成する連続フィラメント406は、連続炭素フィラメントである。他の例示的な実施形態では、トウ404は、限定するわけではないが例としては、ガラス繊維、アラミド繊維などを含みうる。トウ404向けの他の補強材料も想定される。
【0066】
図示されている実施形態では、繊維で改質された中間層100と補強層402とをひとつに固定するために、繊維で改質された中間層100が、ニット糸408で補強層402に縫い付けられる(例えば、ニットで縫い付けられるか又は綴じられる)。中間層で強化された補強ファブリック400を安定させ、かつ、例えばレイアッププロセス中及び/又はマトリクス材料の導入中に、補強層402(例えばトウ404)の配向を所定のままに維持するために、糸408は、繊維で改質された中間層100と補強層402とを通って、互い違いの方向に延在する。一例としては、ステッチ(ニット糸のひと縫いであり、参照番号408で集合的にも表わされる)が、補強層402に一又は複数の繊維で改質された中間層100を接続しうる。
【0067】
ステッチ408は、補強層402、繊維で改質された中間層100、ニット糸408などの性質に応じて、様々なパターン、密度、及び/又はステッチ長さにされうる。例示的な一実施形態では、ニット糸408はトリコットステッチを形成しうる。他の例示的な実施形態では、限定するわけではないが例としては、ロックステッチ、チェーンステッチ、ジグザグニットステッチなどを含む、他のステッチパターンが使用されうる。
【0068】
糸408は、限定するわけではないが例としては、ポリエステル、ポリエステル-ポリアリレート(Vectran(登録商標)など)、ポリアラミド(Kevlar(登録商標)など)、ポリベンゾオキサゾール(Zylon(登録商標)など)、ビスコース(Rayon(登録商標)など)、アクリル、ポリアミド、炭素、ガラス、繊維ガラス、アラミドなどを含む、様々な太さの多種多様な好適な材料から選択されうる。
【0069】
図6は、例えば
図5に示す中間層で強化された補強ファブリック400を使用して形成された、複合構造物150の一実施形態の概略斜視図である。中間層で強化された補強ファブリック400は、プリフォーム410(例えば単方向性プリフォーム)として使用されうる。一例としては、プリフォーム410は補強層402を含み、補強層402と繊維で改質された中間層とをひとつに付着させて中間層で強化された補強ファブリック400を形成し、安定させるために、繊維で改質された中間層100(第1の繊維で改質された中間層100A及び第2の繊維で改質された中間層100Bと個々に特定される)が、補強層402の外側に配置され、かつ、(例えばニット糸408で)縫い付けられている。典型的には、各プリフォーム410は1つの補強層402を有するが、プリフォーム410がより多くの補強層402を有することもある。換言すると、中間層で強化された補強ファブリック400は、繊維で改質された中間層100/補強層402/繊維で改質された中間層100という交互構成を形成するように重ねられうる。
【0070】
別の例示的な実施形態では、プリフォーム410は、中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層(すなわちスタック)を含みうる。一例としては、典型的には、各プリフォーム410は、中間層で強化された補強ファブリック400の4つ以上の層を有する換言すると、中間層で強化された補強ファブリック400の層は、繊維で改質された中間層100/補強層402/繊維で改質された中間層100/繊維で改質された中間層100/補強層402/繊維で改質された中間層100というような交互構成を形成するように、重ねられうる。この実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400の各層が、同じ方向に配向されうる。オプションでは、繊維で改質された中間層100がレイアップの外表面を画定する場合、別の補強層(明確には図示せず)が、この繊維で改質された中間層100を覆って置かれうる。
【0071】
図7は、例えば1つの補強層402と2つの繊維で改質された中間層100とを有する(
図5及び
図6)、中間層で強化された補強ファブリック400を製造するための装置500及びプロセスの例示的な一実施形態の概略図である。
図8は、中間層で強化された補強ファブリック400を製造するための開示されている方法600の、例示的な一実施形態のフロー図である。
【0072】
ブロック602(
図8)に示しているように、補強層402が提供される。一例としては、単方向性トウ404が、例えば連続フィラメント406の複数のスプールを内包する一又は複数のクリール(creel)502から取り出され、スプレッダ504に供給されうる。スプレッダ504は、トウ404の連続フィラメント406の束を広げて、例えば拡散トウ506を形成し、かつ、補強層402を形成するよう、構成される。トウ404は、補強層402向けに、望ましい幅に広げられ、望ましい配向に配置される。
【0073】
ブロック604(
図8)に示しているように、複数の(例えば2つの)繊維で改質された中間層100が提供される。一例としては、繊維で改質された中間層100は、本書で上述し、
図3及び
図4に示したプロセスにしたがって、提供されうる。
【0074】
ブロック606(
図8)に示しているように、補強層402と繊維で改質された中間層100とは、交互構成に配置又は構成される。図示されている実施形態では、2つの繊維で改質された中間層100(例えば第1の繊維で改質された中間層100A及び第2の繊維で改質された中間層100B)が、第1の繊維で改質された中間層100Aと繊維で第2の改質された中間層100Bとの間に挟まれた補強層402に重ねられる。
【0075】
しかし、他の実施形態では、より多い又は少ない数の補強層402及び/又は繊維で改質された中間層100が、提供されうる。場合によっては、追加の繊維で改質された中間層及び/又は追加の補強層402(明確には図示せず)が、中間層で強化された補強ファブリック400の上部及び/又は底部に提供されることもある。
【0076】
補強層402と繊維で改質された中間層100とは、ひとつに接合されるか、さもなければ固定される。ブロック608(
図8)に示しているように、補強層402と繊維で改質された中間層100とは、ニット糸408(
図5)でひとつに縫い付けられる。
図7に示している実施形態では、補強層402及び繊維で改質された中間層100は、ニップローラ508の間の隙間(nip)を通過しうる。補強層402及び繊維で改質された中間層100は次いで、中間層で強化された補強ファブリック400にステッチ408を形成する編ユニット(knitting unit)510によって、処理されうる。
【0077】
ブロック610(
図8)に示しているように、中間層で強化された補強ファブリック400が形成される。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック400は、
図6に示しているように、複合構造物150の製造においてプリフォーム410として使用されうる。
【0078】
図6を参照するに、例示的な一実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400は、所望の構成を有する複合構造物150(例えば複合積層板)を形成するために使用されるプリフォーム410として、使用されうる。
【0079】
一例としては、プリフォーム410は、型414の表面上に配置され、かつ、例えば液状成形プロセスにおいてマトリクス材料416(例えば熱硬化性樹脂)が導入され、次いで、マトリクス材料416をゲル化し、固めるために、型414内で加熱される。繊維で改質された中間層100は、軽量かつ多孔性であることにより、補強層402のゆがみを最小化し、かつ、補強層402への導入中に繊維で改質された中間層100を通るマトリクス材料416の流動抵抗を低減しうる。この例示的な実施形態では、プリフォーム410は単方向性の乾式プリフォームである、すなわち、中間層で強化された補強ファブリック400内にマトリクス材料は存在しない。
【0080】
一例としては、中間層で強化された補強ファブリック400の所望の数の層(例えば、プリフォーム410を形成する所望の数の補強層402及び繊維で改質された中間層100)が、所望の配向で型414の表面上に集積されると、この複合積層板は、当該技術分野において既知である多種多様な液状成形プロセスを使用して、完成形の複合構造物150に形成されうる。かかる方法は、例えば真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)を含む。VARTMにおいては、真空バッグがプリフォーム410を覆って置かれ、マトリクス材料416(樹脂など)が、真空によって発生する圧力差を使用してプリフォーム410に導入される。複合積層板は次いで、樹脂を硬化させるために、オートクレーブやオーブンなどの中に置かれ、加熱されうる。
【0081】
別の例では、真空バッグがプリフォーム410を覆って置かれ、真空バッグの下にあると同時にオートクレーブ内に置かれているプリフォーム410内に、マトリクス材料416(例えば樹脂)が導入される。オートクレーブはこの時、真空バッグの周りの真空チャンバとプリフォーム410の周りの真空バッグという二重真空チャンバを活性化させるのに十分なほど、圧力が低減されている。
【0082】
他の液状成形プロセスは、樹脂トランスファー成形(RTM)及び樹脂膜導入(RFI)を含む。RTMでは、樹脂が、圧力のもとで密閉型の中のプリフォーム410に導入される。RFIでは、半固形樹脂がプリフォーム410の下方又は上方に置かれ、ツールが複合積層板の上方に位置付けられる。複合積層板は、次いで真空バッグに包まれ、半固形樹脂を溶解させ、それがプリフォーム410内に滲出するようにするために、オートクレーブ内に置かれる。
【0083】
図9は、繊維で改質された中間層100を使用して形成された、開示されている中間層で強化された補強ファブリック450の別の実施形態の、概略的かつ部分的な側方断面図である。この実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450は多軸性ファブリックでありうる。中間層で強化された補強ファブリック450は、補強層402と繊維で改質された中間層100とが交互になっている複数の層を含む。本書で上述しているように、繊維で改質された中間層100の各々は、不織ファブリック層102と繊維層104とを含む(
図1)。繊維で改質された中間層100は、補強層402の間に配置され、かつ、補強層402に接合される(例えばニットで縫い付けられる)。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック450は、積重構成の、中間層で強化された補強ファブリック400(
図5)の複数の層を含む。
【0084】
図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450は、中間層で強化された補強ファブリック400(
図5)の4つの層を含む。換言すると、中間層で強化された補強ファブリック450は、繊維で改質された中間層100の対が隣接する補強層402の間に配置されている状態で、4つの補強層402及び8つの繊維で改質された中間層100を含む。しかし、中間層で強化された補強ファブリック450は、それ以外の数及び/又は構成の補強層402及び繊維で改質された中間層100を含みうる。典型的には、中間層で強化された補強ファブリック450は、2つの繊維で改質された中間層100が隣接する補強層402の間に配置されている状態で、4つ以上の補強層402を含む。しかし、他の例示的な実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450は、繊維で改質された中間層100隣接する補強層402の間に配置されている状態で、2から16、又はそれを上回る数の補強層402を含みうる。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック450は、1つの繊維で改質された中間層100が隣接する補強層402の間に配置されている状態で、複数の補強層402を含みうる。別の例としては、中間層で強化された補強ファブリック450は、3つの繊維で改質された中間層100が隣接する補強層402の間に配置されている状態で、複数の補強層402を含みうる。
【0085】
同様に、図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450の少なくとも1つの外(例えば最外)表面は、繊維で改質された中間層100で形成される。一例としては、様々な実施形態が、各補強層402同士の間に、かつ/又はスタックの外側に、対応する繊維で改質された中間層100がある状態で、2つ以上の補強層402を含みうる。しかし、他の例示的な実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450の一方又は両方の外表面が、補強層402から形成されることがある。
【0086】
加えて、様々な繊維で改質された中間層100及び補強層402が、異なる厚さや異なる材料組成などを有しうる。
【0087】
図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400は多軸性の未捲縮ファブリックである。本書において、「未捲縮ファブリック(non-crimp fabric)」という用語は、当業者には既知である通常の意味を有し、補強トウ(例えば連続したフィラメント又は繊維)の複数の層が、互いに重なり合って(例えば重ねられて)おり、かつ、縫い付けることによって又はオプションでバインダを添加することによってファブリックに変質し、それにより、連続トウが実質的に捲縮されずに真っ直ぐに保たれる、ファブリックを含みうる。
【0088】
中間層で強化された補強ファブリック450は、多種多様な寸法を有するプリフォームを作るために、製造されうる。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック450から製造されるプリフォームは、長さがおよそ12インチ(in)から300in、幅が少なくともおよそ50inでありうる。
【0089】
例示的な一実施形態では、補強層402の各々を形成するトウ404は、単一の配向又は方向に、互いに平行に配置される。ゆえに、各補強層402(又は中間層で強化された補強ファブリック450を形成する中間層で強化された補強ファブリック400の各層)の配向又は方向は、トウ404の配向又は方向によって決定されうる。
【0090】
図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層を固定するために、中間層で強化された補強ファブリック400の層は、糸452で互いに縫い付けられる(例えば、経糸で縫い付けられるか又は綴じられる)。中間層で強化された補強ファブリック450を安定させ、かつ、例えばレイアッププロセス中及び/又はマトリクス材料の導入中に、補強層402の配向を所定のままに維持するために、糸452は、繊維で改質された中間層100と補強層402とを通って、互い違いの方向に延在する。一例としては、糸の各ステッチ(参照番号408で集合的にも表わされる)が、一又は複数の補強層402に一又は複数の繊維で改質された中間層100を接続しうる。
【0091】
ステッチは、補強層402、繊維で改質された中間層100、糸408などの性質に応じて、様々なパターン、密度、及び/又はステッチ長さにされうる。例示的な一実施形態では、糸452はトリコットステッチを形成しうる。他の例示的な実施形態では、限定するわけではないが例としてはロックステッチ、チェーンステッチ、ジグザグニットステッチなどを含む、他のステッチパターンが使用されうる。
【0092】
糸452は、限定するわけではないが例としては、ポリエステル、ポリエステル-ポリアリレート(Vectran(登録商標)など)、ポリアラミド(Kevlar(登録商標)など)、ポリベンゾオキサゾール(Zylon(登録商標)など)、ビスコース(Rayon(登録商標)など)、アクリル、ポリアミド、炭素、ガラス、繊維ガラス、アラミドなどを含む、様々な太さの多種多様な好適な材料から選択されうる。
【0093】
図10は、中間層で強化された補強ファブリック450を使用して形成された複合構造物150の一実施形態の概略斜視図である。中間層で強化された補強ファブリック450は、プリフォーム454(例えば多軸性プリフォーム)として使用されうる。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック450は、中間層で強化された補強ファブリック400(
図5)の複数の層(第1の中間層で強化された補強ファブリック400A、第2の中間層で強化された補強ファブリック400B、第3の中間層で強化された補強ファブリック400C、及び第4の中間層で強化された補強ファブリック400Dと個々に特定される)を含む。中間層で強化された補強ファブリック400の層の各々は補強層402を含み、繊維で改質された中間層100(第1の繊維で改質された中間層100A及び第2の繊維で改質された中間層100Bと個々に特定される)が、補強層402の外側に配置されている。中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層(例えば、補強層402及び繊維で改質された中間層100)をひとつに付着させて、中間層で強化された補強ファブリック450を形成し、安定させるために、中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層は、(例えば糸452で)ひとつに縫い付けられる。
【0094】
典型的には、各プリフォーム454は、中間層で強化された補強ファブリック400の4つ以上の層を有する。しかし、プリフォーム454は、より少ない又は多い数の中間層で強化された補強ファブリック400の層(例えば、2から16、又はそれを上回る数の中間層で強化された補強ファブリック400の層)を有しうる。換言すると、中間層で強化された補強ファブリック450は、繊維で改質された中間層100/補強層402/繊維で改質された中間層100/繊維で改質された中間層100/補強層402/繊維で改質された中間層100というような交互構成を形成するように、重ねられうる。この実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400の一又は複数の層が、中間層で強化された補強ファブリック400の少なくとも1つの他の層とは異なる方向に配向されうる。オプションでは、繊維で改質された中間層100がレイアップの外表面を画定する場合、別の補強層(明確には図示せず)が、この繊維で改質された中間層100を覆って置かれうる。
【0095】
図9及び
図10に示している例示的な実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450を形成する中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層は、準等方性(quasi-isotropic)又は直向性(orthotropic)のパターンで載置されうる。換言すると、中間層で強化された補強ファブリック450の少なくとも1つの層を形成する中間層で強化された補強ファブリック400の補強層402のレイアップ角度は、中間層で強化された補強ファブリック450の少なくとも1つの他の層を形成する中間層で強化された補強ファブリック400の補強層402のレイアップ角度とは、異なる方向に配向されうる。このパターンは、完成形の複合構造物150の所望の厚さを実現するために、必要に応じて反復されうる。反復されるパターンは、プリフォーム454全体を通じて一定であることも、変動することもある。反復されるパターンがプリフォーム454全体を通じて変動する場合、例えば中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層をひとつに縫い付けることによって、局所的に異なる厚さが所定の位置に機械的に保持されうる。
【0096】
中間層で強化された補強ファブリック400の層(例えば中間層で強化された補強ファブリック400を形成する補強層402)の数及びレイアップ角度は、仮想的かつ無限に調整可能である。典型的には、多軸性複合構造物150に関して、0°、90°、プラスマイナス(±)30°、±45°、±60°の角度が設定され、その構造は、0度方向について対称な構造物が生じるように選択される。
【0097】
図9及び
図10に示しているように、一例としては、(例えば、中間層で強化された補強ファブリック450の層又は薄層を形成する)中間層で強化された補強ファブリック400の補強層402は、準等方性パターンで載置されうる。準等方性パターンは、トウ404(例えば連続したフィラメント又は繊維)の平面における等方性材料に近似するパターンである。これは、横等方性としても既知である。一例としては、これも
図9に描かれているように、第1の中間層で強化された補強ファブリック400Aが0°に配置されて、中間層で強化された補強ファブリック400の横方向を画定し、第2の中間層で強化された補強ファブリック400Bがこの横方向に対して+45°に配置され、第3の中間層で強化された補強ファブリック400Cが横方向に対して-45°に配置され、かつ、第4の中間層で強化された補強ファブリック400Dが横方向に対して90°に配置される。限定するわけではないが例としては、0°/+45°/90°/-45°パターン、+45°/0°/-45°/90°パターン、-45°/0°/+45°/90°、0°/+60°/-60°パターンなどを含む、他の準等方性パターンも想定される。
【0098】
あるいは、(例えば、中間層で強化された補強ファブリック450の層又は薄層を形成する)中間層で強化された補強ファブリック400の補強層402は、直向性パターンで載置されうる。直向性とは、最終結果が上述の準等方性パターンと同様の平面における準等方性にならないように、トウ404(例えば連続したフィラメント又は繊維)を有することを意味する。直向性パターンの一例は、トウ404の44%が0°になり、トウ404の22%が+45°になり、トウ404の22%が-45°になり、かつ、トウ404の12%が90°になる、パターンである。
【0099】
図11は、例えば複数の補強層402と複数の繊維で改質された中間層100とを有する(
図9及び
図10)、中間層で強化された補強ファブリック450を製造するための装置550及びプロセスの例示的な一実施形態の概略図である。
図12は、中間層で強化された補強ファブリック450を製造するための開示されている方法650の、例示的な一実施形態のフロー図である。
【0100】
ブロック652(
図8)に示しているように、中間層で強化された補強ファブリック400の複数の層が提供される。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック400は、単方向性の中間層で強化された補強テープ456(
図11)の形態をとりうる。例えば、装置500(
図7)はテープ製造ユニットであってよく、装置500を使用して作られた中間層で強化された補強ファブリック400(
図5から
図7)は、中間層で強化された補強テープ456でありうる。
【0101】
装置550(例えばファブリック製造ユニット)は、中間層で強化された補強テープ456(第1の中間層で強化された補強テープ456A、第2の中間層で強化された補強テープ456B、第3の中間層で強化された補強テープ456C、及び、第4の中間層で強化された補強テープ456Dと個々に特定される)から、中間層で強化された補強ファブリック450を作りうる。そのため、
図10を再度参照するに、第1の中間層で強化された補強テープ456Aは、中間層で強化された補強ファブリック450の中間層で強化された補強ファブリック400Aという第1層を形成し(又はこの第1層に対応し)、第2の中間層で強化された補強テープ456Bは、中間層で強化された補強ファブリック450の中間層で強化された補強ファブリック400Bという第2層を形成し(又はこの第2層に対応し)、第3の中間層で強化された補強テープ456Cは、中間層で強化された補強ファブリック450の中間層で強化された補強ファブリック400Cという第3層を形成し(又はこの第2層に対応し)、第4の中間層で強化された補強テープ456Dは、中間層で強化された補強ファブリック450の中間層で強化された補強ファブリック400Dという第4層を形成する(又はこの第2層に対応する)、等々である。
【0102】
一例としては、装置550は、任意の標準的な作製製造ユニットを使用して実装されうる。非限定的な一例は、編機(knitting machine)である。編機は、ファブリックを作り出すために通常使用されるトウの代わりに、中間層で強化された補強テープ456を使用するよう、改変されうる。
【0103】
ブロック654(
図8)に示しているように、中間層で強化された補強テープ456の複数の層が載置される。一例としては、装置550(
図11)は、中間層で強化された補強ファブリック450を作る材料を載置するために、中間層で強化された補強テープ456のロールを使用しうる。中間層で強化された補強テープ456は、中間層で強化された補強ファブリック450を作り出すために、互いに対して異なる角度で載置されうる。一例としては、装置550は、中間層で強化された補強テープ456を、ある表面上に引き出し、かつ、適切なサイズ(例えば、通常は装置550の移動床の幅)に切断する。
【0104】
中間層で強化された補強テープ456の複数の層は、ひとつに接合されるか、さもなければ固定される。ブロック656に示しているように、中間層で強化された補強テープ456の複数の層は、糸452でひとつに縫い付けられる(
図9及び
図10)。一例としては、様々な長さの中間層で強化された補強テープ456が表面上に引き出されて複数の配向に置かれ、中間層で強化された補強ファブリック450を形成するために、ひとつに編まれるか、又は縫い付けられる。
図11に示している実施形態では、中間層で強化された補強テープ456の配置済みの複数の層が、ニップローラ552の間の隙間を通過しうる。中間層で強化された補強テープ456の複数の層は次いで、中間層で強化された補強ファブリック450にステッチ452を形成する編ユニット554によって、処理されうる。
【0105】
ブロック658(
図8)に示しているように、中間層で強化された補強ファブリック450が形成される。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック450は、
図10に示しているように、複合構造物150の製造においてプリフォーム454として使用されうる。
図10を参照するに、様々な例示的な実施形態において、中間層で強化された補強ファブリック450は、所望の構成を有する複合構造物150(例えば複合積層板)を形成するために使用されるプリフォーム454として、使用されうる。
【0106】
一例としては、プリフォーム454は、型460の表面上に配置され、かつ、例えば液状成形プロセスにおいてマトリクス材料458(例えば熱硬化性樹脂)が導入され、次いで、マトリクス材料458をゲル化し、固めるために、型460内で加熱される。繊維で改質された中間層100は、軽量かつ多孔性であることにより、補強層402のゆがみを最小化し、かつ、補強層402への導入中に繊維で改質された中間層100を通るマトリクス材料416の流動抵抗を低減しうる。この例示的な実施形態では、プリフォーム454は、多軸性の乾式プリフォームである。すなわち、中間層で強化された補強ファブリック450内にマトリクス材料は存在しない。
【0107】
一例としては、中間層で強化された補強ファブリック450の所望の数の層が、所望の配向で型460の表面上に集積されると、この複合積層板は、当該技術分野において既知である多種多様な液状成形プロセスを使用して、完成形の複合構造物150に形成されうる。かかる方法は、例えば真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)を含む。VARTMにおいては、真空バッグがプリフォーム454を覆って配置され、基材458(樹脂など)が、真空によって発生する圧力差を使用してプリフォーム454に導入される。複合積層板は次いで、樹脂を硬化させるために、オートクレーブやオーブンなどの中に置かれ、加熱されうる。
【0108】
別の例では、真空バッグがプリフォーム454を覆って置かれ、真空バッグの下にあると同時にオートクレーブ内に置かれているプリフォーム454に、マトリクス材料458(例えば樹脂)が導入される。オートクレーブはこの時、真空バッグの周りの真空チャンバとプリフォーム454の周りの真空バッグという二重真空チャンバを活性化させるのに十分なほど、圧力が低減されている。
【0109】
他の液状成形プロセスは、樹脂トランスファー成形(RTM)及び樹脂膜導入(RFI)を含む。RTMでは、樹脂が、圧力のもとで密閉型の中のプリフォーム454に導入される。RFIでは、半固形樹脂がプリフォーム410の下方又は上方に置かれ、ツールが複合積層板の上方に位置付けられる。複合積層板は、次いで真空バッグに包まれ、半固形樹脂を溶解させ、それがプリフォーム410内に滲出するようにするために、オートクレーブ内に置かれる。
【0110】
図13は、繊維で改質された中間層100を使用して形成された、開示されている中間層で強化された補強ファブリック700の別の実施形態の、概略的かつ部分的な側方断面図である。この実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック700は単方向性ファブリックである。中間層で強化された補強ファブリック700は、補強層702と繊維で改質された中間層100とが交互になっている複数の層を含む。本書で上述しているように、繊維で改質された中間層100の各々は、不織ファブリック層102と繊維層104とを含む(
図1)。補強層402は、繊維で改質された中間層100の間に配置され、繊維で改質された中間層100に接合される(例えば融着される)。
【0111】
図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック700は、2つの繊維で改質された中間層100と、隣接する繊維で改質された中間層100の間に配置された1つの補強層702とを含む。しかし、中間層で強化された補強ファブリック400は、それ以外の数及び/又は構成の補強層402及び繊維で改質された中間層100を含みうる。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック700は1つの補強層702を含んでよく、中間層で強化された補強ファブリック700を作るために、1つの繊維で改質された中間層100が、補強層702の一方又は両方の面(例えば側)に接合されている。
【0112】
加えて、様々な繊維で改質された中間層100及び補強層702が、異なる厚さや異なる材料組成などを有しうる。
【0113】
図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック700は単方向性ファブリックである。
【0114】
補強層702の各々は、補強材料で作られた構造トウ704を含むか、又はかかる構造トウで作られる。一例としては、補強層702は、互いに概して平行に配置された複数の未捲縮の単方向性トウ704を含む。トウ704は、連続フィラメント706の無撚束を含む。一例としては、トウ704は、補強層702を形成するように単一の配向又は方向に配置された連続フィラメント706のシートを形成するために、互いに対してばらばらに広がって位置付けられる。
【0115】
トウ704(例えば連続フィラメント706)は、補強材料で作られる。例示的な一実施形態では、補強層702のトウ704は、炭素繊維を含むか、又は炭素繊維で作られる。換言すると、補強材料は炭素であり、マルチフィラメント補強トウ704を形成する連続フィラメント706は、連続炭素フィラメントである。他の例示的な実施形態では、トウ704は、限定するわけではないが例としては、ガラス繊維、アラミド繊維などを含みうる。トウ404向けの他の補強材料も想定される。
【0116】
繊維で改質された中間層100と補強層702とをひとつに固定するために、繊維で改質された中間層100が、補強層702に融着される。図示されている実施形態では、2つの繊維で改質された中間層100が補強層702の両側に融着される。しかし、別の実施形態では、繊維で改質された中間層100は、補強層702の片側にだけ融着されうる。
【0117】
図14は、中間層で強化された補強ファブリック700を使用して形成された複合構造物150の別の実施形態の概略斜視図である。中間層で強化された補強ファブリック700は、プリフォーム708(例えば単方向性プリフォーム)として使用されうる。一例としては、プリフォーム708は、2つの繊維で改質された中間層100(第1の繊維で改質された中間層100A及び第2の繊維で改質された中間層100Bと個々に特定される)の間に配置された、少なくとも1つの補強層702を含む。典型的には、各プリフォーム708は1つの補強層702を有するが、プリフォーム708がより多くの補強層702を有することもある。換言すると、中間層で強化された補強ファブリック700は、繊維で改質された中間層100/補強層702/繊維で改質された中間層100という交互構成を形成するように重ねられうる。オプションでは、中間層で強化された補強ファブリック700が重ねられることにより、繊維で改質された中間層100/補強層702/繊維で改質された中間層100/補強層702という交互構成を形成しうるように、別の補強層(明確には図示せず)が、繊維で改質された中間層100のうちの最外部のものを覆って置かれうる。
【0118】
別の例示的な実施形態では、プリフォーム708は、中間層で強化された補強ファブリック700の複数の層(すなわちスタック)を含みうる。一例としては、典型的には、各プリフォーム708は、中間層で強化された補強ファブリック700の4つ以上の層を有する換言すると、中間層で強化された補強ファブリック700の複数の層が、繊維で改質された中間層100/補強層702/繊維で改質された中間層100/繊維で改質された中間層100/補強層702/繊維で改質された中間層100というような交互構成を形成するように、重ねられうる。この実施形態の一例では、中間層で強化された補強ファブリック700の各層は、同じ方向に配向されうる(例えば単方向性プリフォーム)。この実施形態の別の例では、中間層で強化された補強ファブリック700の一又は複数の層は、中間層で強化された補強ファブリック700の少なくとも1つの他の層とは異なる方向に配向されうる(例えば多軸性プリフォーム)。オプションでは、繊維で改質された中間層100がレイアップの外表面を画定する場合、別の補強層(明確には図示せず)が、この繊維で改質された中間層100を覆って置かれうる。
【0119】
図15は、例えば1つの補強層402と2つの繊維で改質された中間層100とを有する(
図13及び
図14)、中間層で強化された補強ファブリック700を製造するための装置800及びプロセスの例示的な一実施形態の概略図である。
図16は、中間層で強化された補強ファブリック700を製造するための開示されている方法900の、例示的な一実施形態のフロー図である。
【0120】
ブロック902(
図16)に示しているように、少なくとも1つの補強層702が提供される。一例としては、単方向性トウ704が、例えば連続フィラメント706の複数のスプールを内包する一又は複数のクリール802から取り出され、スプレッダ804に供給されうる。スプレッダ704は、各補強層702を形成する拡散トウ806を形成するために、トウ704による束の中の連続フィラメント406を広げるよう構成される。トウ704は、補強層702向けに、望ましい幅に広げられ、望ましい配向に配置される。
【0121】
ブロック904(
図16)に示しているように、複数の繊維で改質された中間層100が提供される。一例としては、繊維で改質された中間層100は、本書で上述し、
図3及び
図4に示したプロセスにしたがって、提供されうる。
【0122】
ブロック906(
図16)に示しているように、補強層702及び繊維で改質された中間層100は、交互構成に配置又は構成される。図示されている実施形態では、2つの繊維で改質された中間層100(例えば第1の繊維で改質された中間層100A及び第2の繊維で改質された中間層100B)が、(例えばそれらの間の)1つの補強層702に重ねられる。
【0123】
しかし、他の実施形態では、より多い又は少ない数の補強層702及び/又は繊維で改質された中間層100が、提供されうる。場合によっては、追加の補強層702(明確には図示せず)が、中間層で強化された補強ファブリック700の上部及び/又は底部に提供されることもある。場合によっては、中間層で強化された補強ファブリック700は、第1の繊維で改質された中間層100Aと第2の繊維で改質された中間層100Bとの間のこの補強層702だけを含みうるか、又は、一又は複数の追加の補強層と組み合わされている補強層402Aを含みうる。
【0124】
補強層702と繊維で改質された中間層100とは、ひとつに接合されるか、さもなければ固定される。ブロック908(
図16)に示しているように、補強層702及び繊維で改質された中間層100とは、ひとつに融着される。図示されている実施形態では、繊維で改質された中間層100が補強層702に融着されている圧密済の中間層で強化された補強ファブリック700を作るために、補強層702及び繊維で改質された中間層100は、例えば、加熱されたローラ808の間を通り、かつ/又は、オーバ810を通過しうる。
【0125】
ブロック910(
図16)に示しているように、中間層で強化された補強ファブリック700が形成される。一例としては、中間層で強化された補強ファブリック700は、
図14に示しているように、複合構造物150の製造においてプリフォーム708として使用されうる。
【0126】
図14を参照するに、この例示的な実施形態において、中間層で強化された補強ファブリック700は、所望の構成を有する複合構造物150(例えば複合積層板)を形成するために使用されるプリフォーム708として、使用されうる。一例としては、プリフォーム708は、型712の表面上に配置され、かつ、例えば液状成形プロセスにおいてマトリクス材料714(例えば熱硬化性樹脂)が導入され、次いで、マトリクス材料714をゲル化し、固めるために、型712内で加熱される。繊維で改質された中間層100は、軽量かつ多孔性であることにより、補強層702のゆがみを最小化し、かつ、補強層702への導入中に繊維で改質された中間層100を通るマトリクス材料714の流動抵抗を低減しうる。この例示的な実施形態では、プリフォーム708は、乾式プリフォームである。すなわち、中間層で強化された補強ファブリック700内にマトリクス材料は存在しない。
【0127】
別の例示的な実施形態では、中間層で強化された補強700は、型712上に置かれる前に、マトリクス材料(例えばエポキシ樹脂)で事前含浸され、かつ、部分的に硬化され(プリプレグされ)うる。この例示的な実施形態では、プリフォーム752は、湿式プリフォームである。すなわち、中間層で強化された補強ファブリック700内にマトリクス材料が存在している。
【0128】
図17は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750を製造するための装置850及びプロセスの例示的な一実施形態の概略図である。図示されている実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック700は、供給ロール854から供給される、樹脂膜でコーティングされた剥離紙852の2つの層の間に配置されうる。樹脂膜でコーティングされた剥離紙852は、剥離ライナ860の表面上に配置された、又は剥離ライナ860に運ばれているマトリクス材料858(例えばマトリクス材料858の膜)であって、中間層で強化された補強ファブリック700を事前含浸するのに使用される、マトリクス材料858を含む。中間層で強化された補強ファブリック700の中にマトリクス材料858を導入(例えば事前含浸)し、かつ、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750を圧密するために、中間層で強化された補強ファブリック700及び樹脂膜でコーティングされた剥離紙852の層は、加熱されたローラ856の間の隙間を通過しうる。事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750は次いで、部分的に硬化されうる。
【0129】
図18は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750を使用して形成された複合構造物150の別の実施形態の概略斜視図である。事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750は、プリフォーム752(例えば単方向性プリプレグ)として使用されうる。一例としては、プリフォーム752は、2つの繊維で改質された中間層100(第1の繊維で改質された中間層100A及び第2の繊維で改質された中間層100Bと個々に特定される)の間に配置された少なくとも1つの補強層を含む。この例示的な実施形態では、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750は、所望の構成を有する複合構造物150(例えば複合積層板)を形成するために使用されるプリフォーム752として、使用されうる。一例としては、一又は複数のプリフォーム752が、所望の構成で、型712の表面上に配置される。プリフォーム752は次いで、複合積層板を真空バッグの下に置き、高温及び/又は高圧でマトリクス材料714を硬化させることによって、完全に硬化されて、複合構造物150を形成しうる。
【0130】
別の例示的な実施形態では、プリフォーム752は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の複数の層(すなわちスタック)を含みうる。一例としては、典型的には、各プリフォーム752は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の4つ以上の層を有する。換言すると、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の複数の層が、繊維で改質された中間層100/補強層702/繊維で改質された中間層100/繊維で改質された中間層100/補強層702/繊維で改質された中間層100というような交互構成を形成するように、重ねられうる。この実施形態の一例では、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の各層は、同じ方向に配向されうる(例えば単方向性プリフォーム)。この実施形態の別の例では、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の一又は複数の層は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の少なくとも1つの他の層とは異なる方向に配向されうる(例えば多軸性プリフォーム)。
【0131】
図19は、複合構造物(例えば
図6、
図10、
図14、及び
図18に示している複合構造物150)を製造するための開示されている方法1000の例示的な一実施形態のフロー図である。
【0132】
ブロック1002(
図19)に示しているように、少なくとも1つのプリフォーム702が提供される。例示的な一実施形態では、このプリフォームは、交互構成に配置され、かつひとつに縫い付けられて中間層で強化された補強ファブリック400を形成する、補強層402と複数の繊維で改質された中間層100とを有する、
図6に示しているプリフォーム410に実質的に類似した、乾式プリフォームでありうる。別の例示的な実施形態では、プリフォームは、交互構成に配置され、かつひとつに縫い付けられて中間層で強化された補強ファブリック450を形成する、複数の補強層402と複数の繊維で改質された中間層100とを有する、
図10に示しているプリフォーム454に実質的に類似した、乾式プリフォームでありうる。別の例示的な実施形態では、プリフォームは、交互構成に配置され、かつひとつに融着されて中間層で強化された補強ファブリック700を形成する、少なくとも1つの補強層702と一又は複数の繊維で改質された中間層100とを有する、
図14に示しているプリフォーム708に実質的に類似した、乾式プリフォームでありうる。更に別の例示的な実施形態では、プリフォームは、ひとつに融着されて交互構成に配置され、かつ樹脂で事前含浸されて事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750を形成する、少なくとも1つの補強層702と一又は複数の繊維で改質された中間層100とを有する、
図18に示しているプリフォーム752に実質的に類似した、湿式プリフォームでありうる。
【0133】
ブロック1004(
図19)に示しているように、一又は複数のプリフォームが、所望の構成に、型の表面上でレイアップされる。例示的な一実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400(例えばプリフォーム410)(
図6)の一又は複数の層が、複合構造物150の最終的な(例えば三次元の)形状に、型の表面上でレイアップされうる。例示的な一実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450(例えばプリフォーム454)(
図10)の一又は複数の層が、複合構造物150の最終的な(例えば三次元の)形状に、型の表面上でレイアップされうる。別の例示的な実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック700(例えばプリフォーム708)(
図14)の一又は複数の層が、複合構造物150の最終的な(例えば三次元の)形状に、型の表面上でレイアップされうる。更に別の例示的な実施形態では、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750(例えばプリフォーム752)(
図18)の一又は複数の層が、複合構造物150の最終的な(例えば三次元の)形状に、型の表面上でレイアップされうる。
【0134】
ブロック1006(
図19)に示しているように、プリフォーム(例えば、プリフォーム410、プリフォーム454、プリフォーム708、又はプリフォーム752)に、マトリクス材料が導入される。例示的な一実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック400(例えばプリフォーム410)の一又は複数の層が型の表面上でレイアップされた後に、これらの層にマトリクス材料416(
図6)が導入される。別の例示的な実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック450(例えばプリフォーム454)の一又は複数の層が型の表面上でレイアップされた後に、これらの層にマトリクス材料458(
図10)が導入される。別の例示的な実施形態では、中間層で強化された補強ファブリック700(例えばプリフォーム708)の一又は複数の層が型の表面上でレイアップされた後に、これらの層にマトリクス材料714(
図14)が導入される。別の例示的な一実施形態では、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750(例えばプリフォーム752)の一又は複数の層が型の表面上でレイアップされる前に、これらの層にマトリクス材料858(
図18)が導入される。
【0135】
ブロック1008(
図19)に示しているようにマトリクス材料は硬化され、ブロック1010に示しているように複合構造物150が形成される。
【0136】
図20は、複合構造物1500を通して電磁エネルギー1350を散逸させるための開示されている方法1300の、例示的な一実施形態のフロー図である。
図21は、電磁エネルギー1350の散逸の概略図である。
【0137】
ブロック1302(
図20)に示しているように、複合構造物1500の表面上に電磁エネルギー1350が付与される。一例としては、電磁エネルギー1350は落雷からのエネルギーでありうる。
【0138】
例示的な一実施形態では、複合構造物1500は、複合構造物150(
図6、
図10、
図14、及び
図18)の一例である。複合構造物1500は、補強材料1502、及び、補強材料1502に導入され、硬化されたマトリクス材料1508を含む。一例としては、補強材料1502は、中間層で強化された補強ファブリックの少なくとも1つの層を含む。補強材料1502は、中間層で強化された補強ファブリック400(
図5及び
図6)、中間層で強化された補強ファブリック450(
図9及び
図10)、中間層で強化された補強ファブリック700(
図13及び
図14)、又は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750(
図17及び
図18)の一例である。補強材料1502は、交互構成に配置された、少なくとも1つの補強層1504と、補強層1504に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層1506とを含む。補強層1504は、補強層402(
図5、
図6、
図9、及び
図10)、又は補強層702(
図13、
図14、及び
図18)の一例である。繊維で改質された中間層1506は、繊維で改質された中間層100(
図5、
図6、
図9、
図10、
図13、
図14、及び
図18)の一例である。マトリクス材料1508は、マトリクス材料416(
図6)、マトリクス材料458(
図10)、マトリクス材料714(
図14)、又はマトリクス材料858(
図18)の一例である。
【0139】
ブロック1304(
図20)に示しているように、電磁エネルギー1350(
図21)は、少なくとも1つの連続した導電経路1352(
図21)に沿って、横方向に散逸する。一例としては、連続した導電経路は、繊維で改質された中間層1506(
図21)によって形成される。一例としては、例えば繊維で改質された中間層1506は、例えば複合構造物1500に落雷が発生した場合に、電磁エネルギー1350(例えば大電流/大電圧)を導くために使用されうる。
【0140】
ブロック1306(
図20)に示しているように、電磁エネルギー1350(
図21)は、複合構造物1500に連結された接地平面1354(
図21)に転位される。一例としては、複合構造物1500の繊維で改質された中間層1506のうちの一又は複数が、電磁エネルギー1350を接地平面1354に向けて、かつ繊細な領域から離れるように導くか又は進めるよう、機能する。
【0141】
一例としては、
図21に示しているように、電磁エネルギー1350が複合構造物1500の表面上に付与された場合(例えば雷が落ちた場合)、電流及び/又は電圧は、複合構造物1500のこの表面を形成する、又はかかる表面に隣接した、繊維で改質された中間層1506によって導かれ、一又は複数の導電経路1352に沿って下層の接地平面1354へと流れる。一例としては、接地平面1354は、複合構造物1500(例えば複合外板パネル)が接続され、接地されている、下層の支持構造物1356(例えば航空機の機体)によって形成されうる。電磁エネルギー1350の一部分が複合構造物1500の肉厚方向に流れた場合には、繊維で改質された中間層1506のうちの(例えば、内側層を画定しているか、又は、複合構造物1500の反対表面を形成している、若しくはかかる反対表面に隣接している)別の1つが、電流及び/又は電圧を下層の接地平面1354へと導く。
【0142】
図22は、複合構造物1500を通して衝撃エネルギー1450を散逸させるための開示されている方法1400の、例示的な一実施形態のフロー図である。
図23は、衝撃エネルギー1450の散逸の概略図である。
【0143】
ブロック1402(
図22)に示しているように、複合構造物1500の表面上に衝撃エネルギー1450が付与される。一例としては、衝撃エネルギー1450は、物体が複合構造物1500に衝突することによって生じるエネルギーでありうる。
【0144】
例示的な一実施形態では、複合構造物1500は、複合構造物150(
図6、
図10、
図14、及び
図18)の一例である。複合構造物1500は、補強材料1502、及び、補強材料1502内に導入され、硬化された基材1508を含む。一例としては、補強材料1502は、中間層で強化された補強ファブリックの少なくとも1つの層を含む。補強材料1502は、中間層で強化された補強ファブリック400(
図5及び
図6)、中間層で強化された補強ファブリック450(
図9及び
図10)、中間層で強化された補強ファブリック700(
図13及び
図14)、又は、事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750(
図17及び
図18)の一例である。補強材料1502は、交互構成に配置された、少なくとも1つの補強層1504と、補強層1504に付着した少なくとも15つの繊維で改質された中間層1506とを含む。補強層1504は、補強層402(
図5、
図6、
図9、及び
図10)、又は補強層702(
図13、
図14、及び
図18)の一例である。繊維で改質された中間層1506は、繊維で改質された中間層100(
図5、
図6、
図9、
図10、
図13、
図14、及び
図18)の一例である。マトリクス材料1508は、マトリクス材料416(
図6)、マトリクス材料458(
図10)、マトリクス材料714(
図14)、又はマトリクス材料858(
図18)の一例である。
【0145】
ブロック1404(
図22)に示しているように、衝撃エネルギー1450(
図23)は、複合構造物(
図23)に沿って横方向に偏向する。一例としては、衝撃エネルギー1450は、少なくとも1つの繊維で改質された中間層1506に沿って横方向に偏向する。一例としては、繊維で改質された中間層1506は、複合構造物1500を強化し、かつ、例えば複合構造物1500に衝突が発生した場合に、複合構造物1500を通る亀裂成長を抑制するために、使用されうる。
【0146】
ブロック1406(
図22)に示しているように、衝撃エネルギー1450(
図23)よって生じる複合構造物1500の肉厚方向の損傷成長が、抑制される。一例としては、衝撃エネルギー1450によって生じる複合構造物1500の肉厚方向の損傷成長は、複合構造物1500の繊維で改質された中間層1506のうちの一又は複数によって抑制される。
【0147】
一例としては、
図23に示しているように、繊維で改質された中間層1506に沿って亀裂を偏向させることで、複合構造物の肉厚方向の、例えば複合積層板の1つのプライから隣のプライへの、亀裂の伝播を防止することによって、損傷成長が抑制される。そのため、繊維で改質された中間層1506は、補強層1504のプライ同士の間の中間層における局所的亀裂偏向装置として作用する。
【0148】
開示されている、繊維で改質された中間層100、繊維で改質された中間層100を使用して作られた中間層で強化された補強ファブリック400、700、中間層で強化された補強ファブリック400、700を使用して作られた複合構造物150、及び、本書で開示されている、これらを作るための方法の例は、
図25に示す航空機の製造の及び保守方法1100、及び、
図25に示す航空機1200に照らして説明されうる。
【0149】
製造前の段階では、例示的な方法1100は、航空機1200の、ブロック1102に示す仕様及び設計と、ブロック1104に示す材料調達とを含みうる。製造段階では、航空機1200の、ブロック1106に示す構成要素及びサブアセンブリの製造とブロック1108に示すシステムインテグレーションとが行われうる。本書に記載の、繊維で改質された中間層100の製造、並びに、中間層で強化された補強ファブリック400、450、700又は事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750、及びそれに続き複合構造物150を作製するための繊維で改質された中間層100の使用は、製造の一部分、構成要素及びサブアセンブリの製造のステップ(ブロック1106)として、かつ/又は、システムインテグレーション(ブロック1108)の一部分として、実現されうる。その後、航空機1200はブロック1110に示す認可及び納品を経て、ブロック1112に示す運航に供されうる。運航期間中、航空機1200には、ブロック1114に示す定期的な整備及び保守が予定されうる。定期的な整備及び保守は、航空機1200の一又は複数のシステムの改変、再構成、改修などを含みうる。
【0150】
例示的な方法1100の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。この明細書の解釈上、システムインテグレータは、任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請業者を含みうるがそれらに限定されず、第三者は、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含みうるがそれらに限定されず、かつ、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0151】
図25に示しているように、例示的な方法1100によって製造される航空機1200は、例えば、繊維で改質された中間層100を使用して作製された中間層で強化された補強ファブリック400、450、700又は事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750から作られた複合パネル又は他の複合構造物150を有する、機体1202と、複数の高レベルシステム1204と、内装1206とを含みうる。高レベルのシステム1204の例は、推進システム1208、電気システム1210、油圧システム1212、及び環境システム1214のうちの一又は複数を含む。任意の数の他のシステムも含まれうる。航空宇宙産業の例を示しているが、本書で開示されている原理は、自動車産業、海洋産業などといった他の産業にも適用されうる。
【0152】
本書で図示され説明されているシステム、装置及び方法は、製造及び保守方法1100の、一又は複数の任意の段階において用いられうる。例えば、構成要素及びサブアセンブリの製造(ブロック1106)に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機1200の運航(ブロック1112)期間中に製造される構成要素又はサブアセンブリと同様の様態で製作又は製造されうる。また、システム装置、及び方法、若しくはそれらの組み合わせの一又は複数の例は、製造段階(ブロック1108及びブロック1110)において利用されうる。同様に、システム、装置、及び方法、若しくはそれらの組み合わせの1つ又は複数の例は、限定するわけではないが例としては、航空機1200の運航(ブロック1112)期間中に、及び整備及び保守の段階(ブロック1114)において、利用されうる。
【0153】
本書における「実施形態(embodiment)」への言及は、実施形態に関連して説明されている一又は複数の特徴、構造、要素、構成要素、又は特性が、開示されている発明の少なくとも1つの実行形態に含まれることを意味する。ゆえに、本開示全体にわたる「一実施形態(one embodiment)」、「別の実施形態(another embodiment)」という表現、及び類似の文言は、同一の実施形態を指していることもあるが、必ずそうだというわけではない。更に、いずれか1つの実施形態例を特徴付ける主題は、それ以外の実施形態のいずれかを特徴付ける主題を含みうるが、必ずそうだというわけではない。
【0154】
同様に、本書における「例(example)」への言及は、この例に関連して説明されている一又は複数の特徴、要素、構成要素、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、本開示全体にわたる「一例(one example)」、「別の例(another example)」という表現、及び類似の文言は、同一の例を指していることもあるが、必ずそうだというわけではない。更に、いずれか1つの例を特徴付ける主題は、それ以外の例のいずれかを特徴付ける主題を含みうるが、必ずそうだというわけではない。
【0155】
別途提示されない限り、「第1(first)」、「第2(second)」などの用語は、本書では単に符号として使用されており、これらの用語が表わすアイテムに対して、順序的、位置的、又は序列的な要件を課すことを意図するものではない。更に、「第2」のアイテムへの言及が、より小さい数が振られたアイテム(例えば、「第1」アイテム)及び/又はより大きい数が振られたアイテム(例えば、「第3」アイテム)の存在を必要とすることも、除外することもない。
【0156】
本書において、列挙されたアイテムと共に使用される「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、列挙されたアイテムのうちの一又は複数の種々の組み合わせが使用可能であり、必要とされうるのは列挙されたアイテムのうち1つだけでありうることを、意味する。アイテムとは、特定の物体、物品、又はカテゴリでありうる。換言すると、「~のうちの少なくとも1つ」は、任意の組み合わせのアイテム又は任意の数のアイテムが列挙された中から使用されうることを意味するが、列挙されたアイテムの全てが必要とされるわけではない。例えば、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」とは、「アイテムA」、「アイテムAとアイテムB」、「アイテムB」、「アイテムAとアイテムBとアイテムC」、又は「アイテムBとアイテムC」を意味しうる。場合によっては、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」とは、限定するわけではないが例としては、「2つのアイテムA、1つのアイテムB、及び10のアイテムC」、「4つのアイテムB及び7つのアイテムC」、又は他の好適な組み合わせを意味しうる。
【0157】
本書において、「およそ(approximately)」及び「約(about)という用語は、規定された量に近い量であって、なおかつ所望の機能を果たすか、又は所望の結果を実現する、量を表わす。例えば、「およそ」及び「約」という用語は、規定の量の、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、及び、0.01%未満の範囲内の量を表わしうる。
【0158】
本書において、「実質的に(substantially)」という用語は、「正確に(exactly)」と「類似した(similar)」の意味を含んでよく、正確であると認知されうる程度に、ということである。限定的な例としてではなく例示のためにのみであるが、「実質的に」という用語は、正確な又は実際の値からの+/-5%の差異として、数量化されうる。例えば、「AはBと実質的に同じである(A is substantially the same as B)」という表現は、AがBとまさしく同じである、又は、Aが、Bの(例えば値の)+/-5%の差異の範囲内にありうる(若しくはその逆の)実施形態を、包含しうる。
【0159】
本書において、「部分的に(partially)」又は「~の少なくとも一部分(at least a portion of)」という語は、全体を含みうる全体量を含む、全体量を表わしうる。例えば、「~の一部分(a portion of)」とい表現は、全体の、0.01%を上回る、0.1%を上回る、1%を上回る、10%を上回る、20%を上回る、30%を上回る、40%を上回る、50%を上回る、60%を上回る、70%を上回る、80%を上回る、90%を上回る、95%を上回る、99%を上回る量、及び、全体の100%の量を、表わしうる。
【0160】
上記で言及した
図25では、様々な要素及び/又は構成要素を接続する実線が存在する場合、それらは、機械的、電気的、流体的、光学的、電磁的な連結、及びその他の連結、並びに/又はそれらの組合せを表わす。本書において、「連結され(coupled)」とは、直接的並びに間接的に関連付けられていることを意味する。例えば、部材Aは部材Bに直接関連付けられうるか、又は、例えば別の部材Cを介して、間接的に関連付けられうる。開示されている様々な要素同士の間の全ての関連が必ずしも表わされているわけではないことが、理解されよう。したがって、ブロック図に描かれているもの以外の連結も存在しうる。様々な要素及び/又は構成要素を指し示すブロックを接続する破線が存在する場合、それらは、実線によって表わされているものに機能及び目的の点で類似した連結を表わす。しかし、破線によって表わされた連結は、選択的に提供されるか、又は、本開示の代替例に関連するかのいずれかである。同様に、破線で表された要素及び/又は構成要素が存在する場合、それらは本開示の代替例を示す。実線及び/又は破線で示されている一又は複数の要素は、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の例から省略されうる。環境要素が存在する場合、それらは点線で表わされる。分かりやすくするために、仮想的な(架空の)要素も示されうる。
図25に示す特徴の一部は、
図25、他の図、及び/又はそれらに伴う開示において説明されている他の特徴を含むことを必要とせずに、様々な方法で組み合わされうるが、一又は複数のかかる組み合わせは本書で明示的に示されていないことを、当業者は認識しよう。同様に、提示した例には限定されない追加の特徴も、本書で図示され説明されている特徴の一部又は全部と組み合わされうる。
【0161】
上記で言及した
図4、
図8、
図12、
図16、
図19、
図20、及び
図22では、ブロックは工程及び/又はその一部分を表わしてよく、様々なブロックを接続する線は、工程又はその一部分の、いかなる特定の順序又は従属関係も暗示しない。破線で表わされたブロックが存在する場合、それらは代替的な工程及び/又はその一部分を示す。様々なブロックを接続する破線が存在する場合、それらは工程又はその一部分の代替的な従属関係を表わす。開示されている様々な工程間のすべての従属関係が必ずしも表わされているわけではないことが、理解されよう。本書に明記された、開示されている複数の方法の工程を説明している、
図4、
図8、
図12、
図16、
図19、
図20、及び
図22、並びにこれらに付随する開示は、必ずしも、工程が実施されるシーケンスを決定するものであると解釈すべきではない。むしろ、1つの例示的な順序が示されていても、工程のシーケンスは、適宜改変されうると理解されたい。したがって、図示されている工程には改変、追加、及び/又は省略が行われてよく、特定の複数の工程は、異なる順序で、又は同時に、実施されうる。加えて、記載されている全ての工程を実行する必要はないことを、当業者は認識しよう。
【0162】
本発明はまた、特許請求の範囲と混同すべきでない下記の条項においても言及される。
【0163】
A1.
連続繊維110で形成された不織ファブリック層102と、
前記不織ファブリック層102に付着した不連続繊維116とを備える、繊維で改質された中間層100。
【0164】
A2.分散液208中に懸濁された前記不連続繊維116のスラリ206に前記不織ファブリック層102を通すことによって、前記不連続繊維116が前記不織ファブリック層102に付着する、条項A1に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0165】
A3.前記不連続繊維116が前記連続繊維110に機械的に接合され、前記不織ファブリック層102の少なくとも一方の表面106、108を形成する、条項A1に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0166】
A4.前記不連続繊維116が前記連続繊維110に機械的に接合され、前記不織ファブリック層102の対向面106、108を形成する、条項A1に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0167】
A5.前記連続繊維110が熱可塑性材料で作られ、前記不連続繊維が炭素質材料で作られる、条項A1に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0168】
A6.前記炭素質材料が、炭素ナノチューブ、グラフェン板状晶、炭素ウィスカ、チョップト炭素繊維、ミルド炭素繊維、及び炭素ナノ繊維のうちの少なくとも1つを含む、条項A5に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0169】
A7.不連続繊維116の少なくとも一部は、前記不織ファブリック層102の肉厚方向に散在し、かつ、前記連続繊維110の少なくとも一部と絡み合う、条項A1に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0170】
A8.前記繊維で改質された中間層100は、中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750を形成するために、構造トウ404、704で形成された補強層402,702の間に配置され、前記中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750は、複合構造物150を形成するために、マトリクス材料416、458、714、858が導入されるよう構成され、前記繊維で改質された中間層100は、前記複合構造物150の耐衝撃性及び導電性を向上させるよう構成される、条項A1に記載の繊維で改質された中間層100も提供される。
【0171】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0172】
B1.
構造トウ404、704で形成された少なくとも1つの補強層402,702と、
前記補強層404、704に付着した、少なくとも1つの繊維で改質された中間層100であって、
連続繊維110で形成された不織ファブリック層102、及び、
前記不織ファブリック層102に付着した不連続繊維116を備える、繊維で改質された中間層100とを備える、中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750。
【0173】
B2.前記中間層で強化された補強ファブリック400、450、700の少なくとも1つの層のレイアップは、複合構造物150を形成するために、マトリクス材料416、458、714が導入され、硬化されるよう構成され、前記繊維で改質された中間層416、458、714、858は、前記複合構造物150の耐衝撃性及び導電性を向上させるよう構成される、条項B1に記載の中間層で強化された補強ファブリック400、450、700も提供される。
【0174】
B3.前記繊維で改質された中間層100が前記補強層702に融着される、条項B1に記載の中間層で強化された補強ファブリック700、750も提供される。
【0175】
B4.事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750を形成するために、前記中間層で強化された補強ファブリック700内に導入され、部分的に硬化される、マトリクス材料858を更に含み、前記事前含浸済みの中間層で強化された補強ファブリック750の少なくとも1つの層のレイアップは、完全に硬化されて複合構造物150を形成するよう構成され、前記繊維で改質された中間層100が、前記複合構造物150の耐衝撃性及び導電性を向上させるよう構成される、条項B3に記載の中間層で強化された補強ファブリック700も提供される。
【0176】
B5.
前記構造トウ404、704で形成された複数の補強層402、702と、
前記補強層402、702の間に交互に配置された複数の繊維で改質された中間層100であって、各々が、
前記連続繊維110で形成された前記不織ファブリック層102、及び、
前記不織ファブリック層102に付着した不連続繊維116を備える、複数の繊維で改質された中間層100とを更に備える、条項B1に記載の中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750も提供される。
【0177】
B6.前記補強層402及び前記繊維で改質された中間層100を通って延在して、前記補強層402と前記繊維で改質された中間層100とをひとつに接合する、ステッチ408、452を更に備える、条項B5に記載の中間層で強化された補強ファブリック400、450も提供される。
【0178】
B7.前記中間層で強化された補強ファブリック400、450、700の少なくとも1つの層のレイアップは、複合構造物150を形成するために、マトリクス材料416、458、714が導入され、硬化されるよう構成され、前記繊維で改質された中間層100は、前記複合構造物150の耐衝撃性及び導電性を向上させるよう構成される、条項B5に記載の中間層で強化された補強ファブリック400、450、700も提供される。
【0179】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0180】
C1.
中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750であって、交互構成に配置された、構造トウ404、704で形成された少なくとも1つの補強層402、702と、前記補強層402、702に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層100とを備え、かつ、前記繊維で改質された中間層100が、連続繊維110で形成された不織ファブリック層102、及び、前記不織ファブリック層102に付着した不連続繊維116を備える、中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750の、少なくとも1つの層と、
前記中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750内に導入されたマトリクス材料416、458、714、858とを備える、複合構造物150。
【0181】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0182】
D1.繊維で改質された中間層100を製造するための方法300であって、
分散液208中に懸濁された不連続繊維116のスラリ206に、連続繊維110で形成された不織ファブリック202を通すこと306と、
前記不織ファブリック202に付着した前記不連続繊維116のネットワーク114を形成すること308と、
前記繊維で改質された中間層100を形成することとを含む、方法300。
【0183】
D2.前記不織ファブリック202に付着した前記不連続繊維116の前記ネットワーク114を形成することが、
前記不織ファブリック202の少なくとも一方の表面106、108を形成する前記連続繊維110の少なくとも一部に、前記不連続繊維116の第1部分を機械的に接合することと、
前記不連続繊維116の前記第1部分に、前記不連続繊維116の第2部分を機械的に接合することとを含む、条項D1に記載の方法300も提供される。
【0184】
D3.前記不織ファブリック202に付着した前記不連続繊維116の前記ネットワーク114を形成することが、前記不連続繊維116の第1部分の少なくとも一部を、前記不織ファブリック202の肉厚方向に散在させることを更に含む、条項D2に記載の方法300も提供される。
【0185】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0186】
E1.中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750を製造するための方法600、650、900であって、
構造トウ404、704で形成された少なくとも1つの補強層402、702と、少なくとも1つの繊維で改質された中間層100とを、交互構成に配置すること606、654、906であって、前記繊維で改質された中間層100が、連続繊維110で形成された不織ファブリック層102、及び、前記不織ファブリック層102に付着した不連続繊維116を備える、交互構成に配置すること606、654、906と、
前記補強層402、702と前記繊維で改質された中間層100とをひとつに結合すること608、656、908とを含む、方法600、650、900。
【0187】
E2.前記補強層702と前記繊維で改質された中間層100とをひとつに結合することが、前記補強層702に前記繊維で改質された中間層100を融着することを含む、条項E1に記載の方法900も提供される。
【0188】
E3.前記補強層702及び前記繊維で改質された中間層100をマトリクス材料858で事前含浸することを更に含む、条項E2に記載の方法900も提供される。
【0189】
E4.
前記構造トウ404、704で形成された複数の補強層402、702と、複数の繊維で改質された中間層100とを交互構成に配置すること606、654、906であって、前記繊維で改質された中間層100の各々が、
前記連続繊維110で形成された前記不織ファブリック層102、及び、
前記不織ファブリック層102に付着した前記不連続繊維116を備える、交互構成に配置すること606、654、906と、
前記補強層402、702と前記繊維で改質された中間層100とをひとつに結合すること608、656、908とを更に含む、条項E1に記載の方法600、650、900も提供される。
【0190】
E5.前記補強層402と前記繊維で改質された中間層100とをひとつに結合すること608、656が、糸で前記補強層と前記繊維で改質された中間層とをひとつに縫い付けること608、652を含む、条項E4に記載の方法600、650も提供される。
【0191】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0192】
F1.複合構造物150を製造するための方法1000であって、
型414、460、712の上に中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750の少なくとも1つの層をレイアップすること1004であって、前記中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750が、交互構成に配置された、構造トウ404、704で形成された少なくとも1つの補強層402、702と、前記補強層402、702に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層100とを備え、かつ、前記繊維で改質された中間層100が、連続繊維110で形成された不織ファブリック層102、及び、前記不織ファブリック層102に付着した不連続繊維116を備える、レイアップすること1004と、
マトリクス材料416、458、714、858を前記中間層で強化された補強ファブリック400、450、700、750に導入すること1106と、
前記マトリクス材料416、458、714、858を硬化させることとを含む、方法1000。
【0193】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0194】
G1.複合構造物1500を通して電磁エネルギー1350を散逸させるための方法1300であって、
補強材料1502及びマトリクス材料1508を含む前記複合構造物1500の表面上に前記電磁エネルギー1350を付与すること1302と、
連続した導電経路1352に沿って横方向に、前記電磁エネルギー1350を散逸させること1304と、
前記複合構造物1500に連結された接地平面1354に前記電磁エネルギー1350を転位させること1306とを含む、方法1300。
【0195】
G2.
前記補強材料1502が、交互構成に配置された、少なくとも1つの補強層1504と、前記補強層1504に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層1504とを備え、
前記連続した導電経路1352が、前記繊維で改質された中間層1506によって形成される、条項G1に記載の方法1300も提供される。
【0196】
本発明の更なる態様により、下記が提示される。
【0197】
H1.複合構造物1500を通して衝撃エネルギー1450を散逸させるための方法1400であって、
補強材料1502及びマトリクス材料1508を含む前記複合構造物1500の表面上に前記衝撃エネルギー1450を付与すること1402と、
前記複合構造物1500に沿って横方向に、前記衝撃エネルギー1450を散逸させること1404と、
前記複合構造物1500の肉厚方向の損傷成長を抑制すること1406とを含む、方法1400。
【0198】
H2.
前記補強材料1502が、交互構成に配置された、少なくとも1つの補強層1504と、前記補強層1504に付着した少なくとも1つの繊維で改質された中間層1506とを備え、
前記衝撃エネルギー1450が、前記繊維で改質された中間層1506に沿って横方向に偏向し、
前記複合構造物1500の前記肉厚方向の前記損傷成長が、前記繊維で改質された中間層1506によって抑制される、条項H1に記載の方法1400も提供される。
【0199】
開示されている装置、システム、及び方法の様々な実施形態を図示し、説明してきたが、当業者は本明細書を読むことで、改変例を想起しうる。本願は、かかる改変例を含み、かつ、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。