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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】水製造方法及び水製造装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/28 20060101AFI20221128BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20221128BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20221128BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20221128BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
E03B3/28
B01J20/26 A
B01J20/10 D
B01J20/34 E
B01D53/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018022552
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019136657
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515245022
【氏名又は名称】株式会社エム・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】糸山 賢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光二
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6159912(JP,B1)
【文献】特開2002-179401(JP,A)
【文献】特開平11-289875(JP,A)
【文献】特開2005-270570(JP,A)
【文献】特開平09-095117(JP,A)
【文献】特開平03-154614(JP,A)
【文献】特開2015-183931(JP,A)
【文献】特開2014-224398(JP,A)
【文献】特許第5252141(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232383(US,A1)
【文献】特開2013-188701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/28
B01J 20/26
B01J 20/10
B01J 20/34
E03B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂に大気を接触させて、大気中に含まれる水を前記イオン交換樹脂に吸着させる第1工程と、
前記イオン交換樹脂の周囲を減圧して、前記イオン交換樹脂に吸着させた水を蒸発させて、水を含む高湿気体を発生させる第2工程と、
前記高湿気体に含まれる水を液化する第3工程と、
を有し、
前記第3工程では、前記第2工程にて発生させた、大気温度以上相対湿度100%以下の前記高湿気体と、前記第2工程にて水を蒸発させた前記イオン交換樹脂との間で熱交換することにより、前記高湿気体を冷却して前記高湿気体に含まれる水の少なくとも一部を凝縮して液化すると共に前記イオン交換樹脂を加熱する、水製造方法。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂と熱交換した前記高湿気体をさらに冷却して、前記高湿気体に含まれる水を液化する、請求項に記載の水製造方法。
【請求項3】
前記第2工程と前記第3工程とを同時並行して行う、請求項1又は2に記載の水製造方法。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂は、カチオン型イオン交換樹脂である、請求項1からのいずれか一項に記載の水製造方法。
【請求項5】
イオン交換樹脂を内部空間に備える吸湿器と、
前記内部空間に大気を供給する大気供給用ファンと、
前記内部空間を減圧して前記イオン交換樹脂に吸着した水を蒸発させる真空ポンプと、
前記真空ポンプの吐出口に接続され、前記イオン交換樹脂から蒸発させた水を含む高湿気体を移送する高湿気体移送用配管と、
を備え
前記高湿気体移送用配管が前記吸湿器の前記内部空間に通され、前記高湿気体移送用配管内を移送する大気温度以上相対湿度100%以下の前記高湿気体と前記吸湿器内の前記イオン交換樹脂との間で熱交換することにより、前記高湿気体を冷却して前記高湿気体に含まれる水の少なくとも一部を液化すると共に前記イオン交換樹脂を加熱する、水製造装置。
【請求項6】
前記高湿気体移送用配管の少なくとも一部は、前記高湿気体より低い温度の雰囲気に設置されている、請求項に記載の水製造装置。
【請求項7】
前記高湿気体移送用配管に接続された貯水タンクと、前記貯水タンクの上部に取り付けられた凝縮器とをさらに備える、請求項5又は6に記載の水製造装置。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂は、カチオン型イオン交換樹脂である、請求項からのいずれか一項に記載の水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気から水を製造する水製造方法及び水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川及び湖沼が少ない国又は地域においては、水資源として地下水を利用することが多いが、近年、地下水の枯渇による水不足が懸念されている。
水不足は、飲料水不足になるだけでなく、砂漠化を進行させるため、穀物収穫量の減少及び家畜の死亡率上昇が生じて食糧不足を招く原因になる。また、水を使用する工場においては、水不足によって生産停止を余儀なくされることがある。さらに、地下水の過剰利用によって、地盤沈下、及び地下水位低下による水質の悪化が生じることがある。
そこで、水不足を解消する目的で、様々な水製造装置が開発されている。例えば、水製造装置の一例として、大気を冷却する冷却装置を備え、大気中の水蒸気を液化させて回収する装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-224399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では、大気を冷却する冷却装置を使用するため、エネルギー消費量が多くなる傾向にあり、しかも水の製造量が充分でないことがあった。
本発明は、エネルギー消費量を抑制しながらも充分に液状の水を製造できる水製造方法及び水製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
本発明の一態様の水製造方法は、イオン交換樹脂に大気を接触させて、大気中に含まれる水を前記イオン交換樹脂に吸着させる第1工程と、前記イオン交換樹脂の周囲を減圧して、前記イオン交換樹脂に吸着させた水を蒸発させて、水を含む高湿気体を発生させる第2工程と、前記高湿気体に含まれる水を液化する第3工程と、を有し、前記第3工程では、前記第2工程にて発生させた、大気温度以上相対湿度100%以下の前記高湿気体と、前記第2工程にて水を蒸発させた前記イオン交換樹脂との間で熱交換することにより、前記高湿気体を冷却して前記高湿気体に含まれる水の少なくとも一部を凝縮して液化すると共に前記イオン交換樹脂を加熱する
記態様の水製造方法においては、前記イオン交換樹脂と熱交換した前記高湿気体をさらに冷却して、前記高湿気体に含まれる水を液化してもよい。
前記態様の水製造方法においては、前記第2工程と前記第3工程とを同時並行して行ってもよい。
前記態様の水製造方法においては、前記イオン交換樹脂は、カチオン型イオン交換樹脂であることが好ましい。
本発明の一態様の水製造装置は、イオン交換樹脂を内部空間に備える吸湿器と、前記内部空間に大気を供給する大気供給用ファンと、前記内部空間を減圧して前記イオン交換樹脂に吸着した水を蒸発させる真空ポンプと、前記真空ポンプの吐出口に接続され、前記イオン交換樹脂から蒸発させた水を含む高湿気体を移送する高湿気体移送用配管と、を備え、前記高湿気体移送用配管が前記吸湿器の前記内部空間に通され、前記高湿気体移送用配管内を移送する大気温度以上相対湿度100%以下の前記高湿気体と前記吸湿器内の前記イオン交換樹脂との間で熱交換することにより、前記高湿気体を冷却して前記高湿気体に含まれる水の少なくとも一部を液化すると共に前記イオン交換樹脂を加熱する。
前記態様の水製造装置においては、前記高湿気体移送用配管の少なくとも一部が、前記高湿気体より低い温度の雰囲気に設置されてもよい
記態様の水製造装置においては、前記高湿気体移送用配管に接続された貯水タンクと、前記貯水タンクの上部に取り付けられた凝縮器とをさらに備えてもよい。
前記態様の水製造装置においては、前記イオン交換樹脂は、カチオン型イオン交換樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水製造方法及び水製造装置によれば、エネルギー消費量を抑制しながらも充分に液状の水を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の水製造装置の第一実施形態を示す概略図である。
図2】本発明の水製造装置の第二実施形態を示す概略図である。
図3】本発明の水製造装置の他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第一実施形態>
(水製造装置)
本発明の水製造装置の第一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の水製造装置を示す。本実施形態の水製造装置1は、大気供給用ファン10と吸湿器20と真空ポンプ30と貯水タンク40と凝縮器50と加熱気体供給用ヒータ60とを備える。また、水製造装置1は、大気用配管71と、加熱気体用配管72と、排出用配管73と、大気放出用配管74と、真空ポンプ接続用配管75と、高湿気体移送用配管76と、凝縮器接続用配管77とを備える。
前記各構成については、以下に説明する。
【0009】
大気供給用ファン10は、大気を取り込んで吸湿器20に移送するためのファンである。本実施形態における大気供給用ファン10は、取り込んだ大気を、大気用配管71を介して吸湿器20に移送する。
大気供給用ファン10の送風能力は、例えば、大気の温度及び湿度、目的とする水製造量、吸湿器20の吸湿能力、真空ポンプ30の能力等に応じて適宜決められる。例えば、大気供給用ファン10の送風能力は、10m/h以上10万m/hの範囲とされる。大気供給用ファン10の種類としては特に制限がなく、例えば、遠心送風機、軸流送風機等を使用できる。
【0010】
本実施形態における吸湿器20は、吸湿剤21と、吸湿剤21を内部空間に備える容器22とを有する。吸湿剤21と前記内部空間によって吸湿床を形成する。
吸湿剤21は、水を吸着可能な物質である。水の吸着量が多くなることから、吸湿剤21は多孔質体であることが好ましい。多孔質体の吸湿剤21としては、例えば、イオン交換樹脂、シリカゲル、多孔性樹脂、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化アルミニウム、活性炭等が挙げられる。吸湿剤21は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多孔質体の比表面積としては、例えば400m/dry-g以上1200m/dry-g以下とされる。比表面積が大きい程、多孔度が大きい。ここでいう表面積は、窒素吸着によって測定されるBET比表面積であり、BET比表面積測定装置によって測定される。
本発明において、吸湿剤21に吸着した水は気体又は液状の水であり、大気中に含まれる水は水蒸気である。
【0011】
吸湿剤21のなかでも、大気中の水の吸着性及び減圧時の水の脱離性に優れることから、イオン交換樹脂、シリカゲル、及び多孔性樹脂よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、イオン交換樹脂がより好ましく、カチオン型イオン交換樹脂がさらに好ましい。吸湿剤21がカチオン型イオン交換樹脂であると、大気中の、水以外の成分(例えば、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)等)が吸着しにくいため、得られる液状の水の純度をより高めることができる。また、カチオン型イオン交換樹脂は、比較的高温(例えば35℃超60℃未満)での水吸着性が高いため、大気の温度が高い場合には、吸湿剤21としてカチオン型イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
イオン交換樹脂における官能基としては、カチオン型イオン交換樹脂においては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基等が挙げられ、アニオン型イオン交換樹脂においては、例えば、第四級アンモニウム基、第三級アミノ基等が挙げられる。
また、シリカゲルは高温高湿(例えば35℃超60℃未満且つ相対湿度65%以上100%以下)条件下での水の吸着性に優れるため、大気が高温高湿である場合には、吸湿剤21としてシリカゲルを用いてもよい。但し、低温又は低湿であっても、吸湿剤21としてシリカゲルを使用することができる。
多孔性樹脂、例えばイオン交換樹脂の担体となる樹脂は、水の吸着性についての温度依存性及び湿度依存性が小さい。そのため、例えば、0℃以上35℃以下の空気に対しても吸湿能を発揮する。また、温度及び湿度が大きく変化する環境下において、多孔性樹脂を用いると、水の製造量を予測しやすい。
吸湿剤21として活性炭を使用すると共に、吸湿剤21に送る前に大気中の不純物を除去するフィルタとして活性炭を使用する場合には、フィルタの活性炭での水の吸着量が多くならないように、フィルタに用いる活性炭の種類及び量を選択することが好ましい。
【0012】
吸湿剤21は、容器22内で流動不能に充填されてもよいし、容器内で流動可能に充填されてもよい。以下、吸湿剤21が容器22内で流動不能に充填されている吸湿器20は固定床式吸湿器といい、吸湿剤21が容器22内で流動可能に充填されている吸湿器20は流動床式吸湿器という。
大気中の水の吸着量がより多くなる点では、吸湿器20は流動床式吸湿器であることが好ましい。吸湿器20が流動床式吸湿器である場合には、容器22の下部に大気用配管71が接続されることが好ましい。大気供給用ファン10を稼働させて吸湿器20に大気を送り込んだ際には、容器22の下部から大気が噴出し、吸湿剤21が容器22内にて舞い上がり、浮遊する。このように吸湿剤21を容器22内にて流動させると、大気との接触機会が多くなるため、吸湿剤21が水をより吸着しやすくなる。
【0013】
容器22は、槽であってもよいし、塔であってもよく、本態様の水製造装置1の設置場所、気候等の条件によって適宜選択すればよい。容器22の容積は、目的とする水の製造量に応じて適宜決めればよい。例えば、容器22の容量は、10L以上10万L以下の範囲とされる。
【0014】
真空ポンプ30は、吸湿剤21の周囲を減圧して吸湿剤21に吸着した水を蒸発させるための機器である。真空ポンプ30によって、吸湿剤21から水を蒸発させて、水(水蒸気)を含む高湿気体を得る。
真空ポンプ30としては、例えば、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ等を使用できる。真空ポンプ30の能力は、例えば、吸湿剤21の量、大気中の水の含有量(湿度)、吸湿剤21に吸着する水の量等に応じて適宜選択すればよい。例えば、真空ポンプ30の能力は、20m/h以上1800m/h以下の範囲とされる。
真空ポンプ30が稼働している際には、真空ポンプ30の吸引口側は減圧されるが、吐出口側はほぼ大気圧となる。本実施形態では、高湿気体移送用配管76の内部はほぼ大気圧になる。
【0015】
貯水タンク40は、真空ポンプ30を通過した高湿気体に含まれる水を液化させた液状の水を貯めるタンクである。貯水タンク40の容積は、本態様の水製造装置1によって製造される水の量、水の消費量等に応じて適宜決められる。例えば、貯水タンク40の容量は、5L以上10万L以下の範囲とされる。
本実施形態においては、貯水タンク40の下部に、得られた水を水使用設備等に供給するための水供給用配管41が接続されている。水供給用配管41には、第5開閉弁41aが取り付けられている。
【0016】
凝縮器50は、高湿気体移送用配管76を通って貯水タンク40に達した気体(高湿気体)を冷却して水を液化する機器である。貯水タンク40に到達した気体は、まだ液化していない水が多く含まれている高湿気体である場合がある。そのため、凝縮器50によって、貯水タンク40に達した高湿気体中に残っている水を凝縮して液化する。
凝縮器50は、貯水タンク40の上部に接続された凝縮器接続用配管77を介して、貯水タンク40に取り付けられていることが好ましい。
本実施形態において使用される凝縮器50は、高湿気体を凝縮するための凝縮用配管51と、凝縮用配管51の周囲に設けられた冷却部52とを備える。
凝縮用配管51は、液化した水が重力によって下方に流れ落ちるよう、ほぼ鉛直方向に沿って設けられることが好ましい。ここで、ほぼ鉛直方向とは、水平方向に対して90°±45°のことである。また、高湿気体の冷却効率を高め、水の回収量を増やす点から、凝縮用配管51は複数本であってもよい。
冷却部52は、冷媒が充填される部分である。冷媒としては、例えば、空気、水、フロン等が挙げられる。本実施形態では、容易に使用できる点から、空気、水が好ましい。冷媒の温度は、凝縮用配管51内の高湿気体の温度より低くし、例えば0℃以上25℃以下とする。通常、冷却部52の内部は冷媒が循環するようになっており、冷却部52に冷媒を導入するための冷媒導入用配管52aと、冷却部52から冷媒を導出する冷媒導出用配管52bが設けられていることが好ましい。
【0017】
本実施形態における加熱気体供給用ヒータ60は、真空ポンプ30によって吸引された大気を加熱して加熱気体を調製する機器である。加熱気体は、加熱気体用配管72を介して吸湿器20に供給される。但し、後述するように、加熱気体の供給は、吸湿剤21から水を蒸発させるときのみとすることが好ましい。
【0018】
大気用配管71は、大気供給用ファン10から送気された大気を吸湿器20に移送するための配管である。大気用配管71には、第1開閉弁71aが取り付けられている。本実施形態においては、大気用配管71は、吸湿器20の容器22の下部に接続されている。
加熱気体用配管72は、加熱気体供給用ヒータ60によって調製された加熱気体を吸湿器20に移送するための配管である。加熱気体用配管72には、第2開閉弁72aが取り付けられている。
大気用配管71及び加熱気体用配管72の少なくとも一方には、必要に応じて、PM2.5等の粒子状物質を捕捉して除去する粒子除去フィルタが取り付けられてもよいし、塩分を除去するための塩分除去フィルタが取り付けられてもよい。
また、大気用配管71及び加熱気体用配管72の少なくとも一方には、必要に応じて、窒素酸化物(NO)及び硫黄酸化物(SO)を捕捉して除去する酸化物除去フィルタが取り付けられてもよい。酸化物除去フィルタとしては、例えば、アニオン活性炭等が使用される。
【0019】
排出用配管73は、吸湿器20から排出された気体を、大気放出用配管74又は真空ポンプ接続用配管75に送るための配管である。具体的に、排出用配管73の一方の端部である第1端部は、吸湿器20の容器22に接続され、他方の端部である第2端部は、大気放出用配管74及び真空ポンプ接続用配管75に接続されている。本実施形態における排出用配管73は、吸湿器20の容器22の上部に接続されていることが好ましい。
【0020】
大気放出用配管74は、排出用配管73を通った空気を、大気中に放出するための配管である。具体的に、大気放出用配管74の一方の端部である第1端部は、排出用配管73に接続され、大気放出用配管74の他方の端部である第2端部は、大気中に開放されている。
大気放出用配管74には、第3開閉弁74aが取り付けられている。
【0021】
真空ポンプ接続用配管75は、排出用配管73を通った空気を、真空ポンプ30に送るための配管である。具体的に、真空ポンプ接続用配管75の一方の端部である第1端部は、排出用配管73に接続され、真空ポンプ接続用配管75の他方の端部である第2端部は、真空ポンプ30に接続されている。通常、真空ポンプ接続用配管75を通る空気は、吸湿剤21から蒸発した水を含む高湿気体である。
真空ポンプ接続用配管75には、第4開閉弁75aが取り付けられている。
【0022】
高湿気体移送用配管76は、真空ポンプ30から吐出された高湿気体を貯水タンク40に向けて移送するための配管である。また、高湿気体移送用配管76は、高湿気体に含まれる水が凝縮して液化した水を貯水タンク40に送るための配管でもある。具体的に、高湿気体移送用配管76の一方の端部である第1端部は、真空ポンプ30の吐出口に接続され、高湿気体移送用配管76の他方の端部である第2端部は、貯水タンク40に接続されている。
高湿気体移送用配管76の長さ及び太さは、目的とする水の製造量を勘案して適宜決めればよい。例えば、高湿気体移送用配管76の長さは、0.5m以上100m以下の範囲、太さは1cm以上25cm以下の範囲とされる。高湿気体移送用配管76が長い程、高湿気体の自然冷却時間が長くなるため、水の製造量を多くしやすい。高湿気体移送用配管76が細い程、高湿気体の冷却面積が大きくなるから、水の製造量を多くしやすい。
高湿気体移送用配管76は直線状の配管でなくてもよく、例えば、複数折り返した配管、螺旋状の配管等であってもよい。
【0023】
凝縮器接続用配管77は、貯水タンク40から排出された高湿気体を凝縮器50に送るための配管である。具体的に、凝縮器接続用配管77の一方の端部である第1端部は、貯水タンク40の上部に接続され、凝縮器接続用配管77の他方の端部である第2端部は、凝縮器50の下部に接続されている。
【0024】
(水製造方法)
前記実施形態の水製造装置1を用いた水製造方法について説明する。
本実施形態の水製造方法は、下記の第1工程、第2工程及び第3工程を有する。
【0025】
第1工程は、吸湿剤21に大気を接触させて、大気中に含まれる水(水蒸気)を吸湿剤21に吸着させて捕捉させる工程である。
具体的に、本実施形態における第1工程では、第1開閉弁71aを開くと共に第2開閉弁72aを閉じた状態で、大気供給用ファン10を稼働させて、大気を、大気用配管71に通して吸湿器20の容器22の下部に供給する。大気の相対湿度は、例えば15%以上100%以下である。大気の供給量は、例えば、50m/h以上50000m/h以下の範囲とする。
容器22内に導入された大気は、吸湿剤21と接触する。これにより、大気中の水を吸湿剤21に吸着させて捕捉させる。なお、第1工程においては、大気中に含まれる、水以外の各気体成分を、吸湿剤21に吸着させないことが好ましい。
【0026】
吸湿器20が固定床式の場合には、吸湿剤21が固定されているため、容器22の下部から大気が導入されても吸湿剤21は容器22内部にて流動しない。吸湿器20が流動床式の場合には、容器22の下部から大気が導入された際に吸湿剤21が大気と同伴して容器22の内部にて上方に舞い上がり、浮遊して流動し、いずれ降下して循環する。そのため、流動床式の場合は、固定床式に比べてSV値(空間速度)が低いので、床面積を小さくすることできる。また、流動床式の場合は、大気が吸湿剤21により接触しやすくなるため、吸湿剤21における水の吸着量がより多くなる。
容器22の内部にて吸湿剤21を流動させる場合には、容器22の内部のゲージ圧が300Pa以上になるように大気を容器22に供給することが好ましい。容器22の内部のゲージ圧が300Pa以上になるように大気を供給すれば、容器22の内部にて吸湿剤21を容易に浮遊させることができる。

吸湿剤21における水の吸着量は、吸湿剤21への大気の供給量、大気の湿度、大気の温度、吸湿剤21の温度、第1工程の実施時間等によって変動する。具体的には、吸湿剤21への大気の供給量が多い程、大気の湿度が高い程、大気の温度が低い程、吸湿剤21の温度が低い程、第1工程の実施時間が長い程、吸湿剤21における水の吸着量が多くなる。例えば、吸湿剤21としてカチオン型イオン交換樹脂を用いた場合には、水の吸着量は、イオン交換樹脂1g当たり0.2g以上0.6g以下の範囲となることがある。
【0027】
第1工程の最中においては、第3開閉弁74aを開くと共に第4開閉弁75aを閉じて、吸湿器20にて吸湿剤21に水が捕捉されて残った空気を、容器22の上部から排出し、排出用配管73及び大気放出用配管74に通して大気中に放出する。吸湿剤21に水が捕捉されて残った空気は、単に水が減少した低湿空気である。低湿空気の相対湿度は、大気の相対湿度より低く、例えば10%以上90%以下である。
【0028】
第2工程は、吸湿剤21を減圧して、吸湿剤21に吸着させた水を蒸発させて、水(水蒸気)を含む高湿気体を発生させる工程である。
具体的に、本実施形態における第2工程では、第3開閉弁74aを閉じると共に第4開閉弁75aを開き、真空ポンプ30を稼働させ、吸湿器20の容器の内部を減圧して真空状態にする。これにより、水を吸着した吸湿剤21の周囲を減圧する。吸湿剤21の周囲を減圧することによって、吸湿剤21に吸着した水を蒸発させる。そして、吸湿剤21から蒸発させた水を含む気体を、容器22の上部から排出し、排出用配管73及び真空ポンプ接続用配管75に通して真空ポンプ30に送る。真空ポンプ30に送られた気体は、水の含有量が多い高湿気体である。高湿気体の絶対湿度は、大気の絶対湿度より高い。
【0029】
また、第2工程では、第1開閉弁71aを閉じると共に第2開閉弁72aを開いた状態で、真空ポンプ30を用いて吸気することにより吸湿器20に加熱気体を供給する。具体的には、吸気された大気をヒータ62によって加熱することにより、加熱気体を吸湿器20に供給する。加熱気体の温度は、35℃以上且つ大気の温度より高くすることが好ましい。
第2工程の最中に真空ポンプ30を用いて加熱気体を吸湿器20に供給すれば、吸湿剤21から加熱気体に水を容易に移すことができ、水を蒸発させやすくなる。
また、第2工程の最中に加熱気体を吸湿器20に供給すれば、吸湿剤21の温度低下を抑制できる。具体的に説明すると、吸湿剤21から水を蒸発させると、蒸発潜熱分の熱が奪われて吸湿剤21の温度が低下する。例えば、吸湿剤21の温度は、大気の温度より低く、0℃以下となる。その結果、吸湿剤21に吸着している水が凍結することがある。しかし、加熱気体を吸湿器20に供給して吸湿剤21を加熱すれば、吸湿剤21から水を蒸発させても、吸湿剤21の温度低下を抑制できる。
また、吸湿器20の容器22を減圧する場合には、容器22を高真空に耐えうる容器としなければならないが、減圧時においても気体を吸湿器20に供給することによって、耐真空性が低い容器を用いることができ、水製造のコストを抑制できる。
但し、加熱空気の供給量が多いと、真空ポンプ30を稼働させても容器22内を真空状態にすることが困難になるため、加熱空気の供給量は、真空ポンプ30能力で容器22内を減圧状態にできる程度の少量の供給量とする。
【0030】
第3工程は、第2工程にて生じた高湿気体に含まれる水を液化する工程である。第3工程は、水の生産性向上の点から、第2工程と同時並行で行ってもよい。
具体的に、本実施形態における第3工程では、真空ポンプ30から排出された高湿気体を高湿気体移送用配管76に通す。真空ポンプ30から排出された高湿気体は圧縮されて、圧力がほぼ大気圧となり、また、水蒸気に由来する顕熱によって温度が上昇する。例えば、高湿気体の温度は、大気の温度より高く、相対湿度は100%以下となる。
飽和水蒸気量は圧力が上昇すると、減少する。したがって、真空ポンプ30を通過して圧力が上昇した高湿気体は飽和水蒸気量が低下するため、高湿気体移送用配管76の内部にて、高湿気体に含まれる水の一部が凝縮して液化する。これにより、液状の水が得られる。
また、飽和水蒸気量は温度が低下すると、減少する。したがって、高湿気体移送用配管76を冷却することによって、高湿気体移送用配管76の内部にて、高湿気体に含まれる水の一部がさらに凝縮して液化する。本実施形態では、高湿気体移送用配管76の周囲が大気雰囲気であり、また、熱源に接しておらず、高湿気体より温度が低い。そのため、高湿気体移送用配管76は自然冷却されて、高湿気体移送用配管76の内部の高湿気体が冷却される。これにより、高湿気体に含まれる水の一部がさらに凝縮して液化し、液状の水がさらに得られる。
高湿気体の水が液化して製造された液状の水は、高湿気体と共に高湿気体移送用配管76の内部を通って貯水タンク40に送られ、貯水タンク40にて貯留される。貯水タンク40に水を貯留する際には、第5開閉弁41aを閉じておく。
【0031】
上記のような水の製造に加えて、本実施形態における第3工程では、高湿気体移送用配管76を通過した高湿気体を冷却し、高湿気体に含まれる残留水を凝縮して、さらに水を得る。
本実施形態においては、高湿気体移送用配管76を通って貯水タンク40に達した高湿気体を、貯水タンク40に取り付けた凝縮器50に導入して冷却する。これにより、高湿気体中の残留水を凝縮し、液化して、液状の水をさらに得る。
具体的には、高湿気体移送用配管76から貯水タンク40に導入された高湿気体は、貯水タンク40の上部の空間及び凝縮器接続用配管77を通って凝縮器50の凝縮用配管51内に導入される。凝縮器50の冷却部52においては、冷媒導入用配管52aから冷媒を導入し、冷媒導出用配管52bから冷媒を排出することで冷媒を循環させている。これにより、冷却部52に囲まれた凝縮用配管51を冷却できる。冷却部52によって凝縮用配管51を冷却すると、その内部の高湿気体も冷却でき、残存していた高湿気体中の水を凝縮させて液化できる。液化した水は、重力によって凝縮用配管51を伝って貯水タンク40に落下する。高湿気体は凝縮器50にて前記のように脱水されて脱水気体となる。
前記脱水気体は、凝縮用配管51の内部を上昇し、凝縮器50の上部から大気中に放出される。脱水気体の相対湿度は、例えば12℃、100%以下とされる。
貯水タンク40に貯留された水は、第5開閉弁41aを開いた状態で、水供給用配管41を介して、上水道、水を使用する装置等に送られる。
【0032】
高湿気体から、ある程度の量の水が得られたら、つまり吸湿剤21から水が充分に蒸発して乾いたら、真空ポンプ30を停止し、第1開閉弁71a及び第3開閉弁74aを開け、第2開閉弁72a及び第4開閉弁75aを閉じ、大気供給用ファン10を稼働させる。これにより、再び第1工程を開始する。
第1工程、第2工程及び第3工程を有する水製造方法を繰り返すことによって、水の製造量を増やすことができる。
【0033】
(作用効果)
本実施形態の水製造装置1及び水製造方法では、大気中の水を吸湿剤21に吸着させ、その水を回収して水を製造する。この水製造装置1及び水製造方法では、例えば大気を冷却する冷却装置を必要とせず、エネルギー消費量が少ない簡便な装置構成で液状の水を製造できる。したがって、本実施形態の水製造装置1及び水製造方法では、液状の水を製造する際の消費エネルギー量を抑制できる。
また、本実施形態の水製造装置1及び水製造方法では、吸湿剤21によって大気中の水を吸着させた後、その水を蒸発させることによって、水を濃縮した高湿気体を発生させ、その高湿気体に含まれる水を液化して水を得る。このような水の製造方法によれば、液状の水の製造量を容易に多くできる。
よって、本実施形態の水製造装置1及び水製造方法によれば、エネルギー使用量を抑制しながらも充分に液状の水を製造できる。
また、本実施形態の水製造装置1及び水製造方法では、大気中の、水以外の各気体成分が吸湿剤21に吸着しにくいため、水を精製でき、不純物が少ない液状の水を得ることができる。本実施形態の水製造装置1及び水製造方法により得られた水は、蒸留水とほぼ同等の純度であり、飲料水として利用できるだけでなく、高純度の水を使用する装置等にも利用できる。
【0034】
<第二実施形態>
(水製造装置)
本発明の水製造装置の第二実施形態について説明する。
図2に、本実施形態の水製造装置を示す。本実施形態の水製造装置2は、高湿気体移送用配管76が吸湿器20の内部に通されている以外は第一実施形態の水製造装置1と同様である。
すなわち、本実施形態の水製造装置2においても、大気供給用ファン10と吸湿器20と真空ポンプ30と貯水タンク40と凝縮器50と加熱気体供給用ヒータ60を備える。また、本実施形態の水製造装置2においても、大気用配管71と、加熱気体用配管72と、排出用配管73と、大気放出用配管74と、真空ポンプ接続用配管75と、高湿気体移送用配管76と、凝縮器接続用配管77とを備える。
また、本実施形態において使用する吸湿剤21は、第一実施形態と同様である。
【0035】
上述したように、本実施形態では、高湿気体移送用配管76が吸湿器20の内部に通されている。具体的には、吸湿器20の容器22の内部に高湿気体移送用配管76が挿入され、容器22の内部にて高湿気体移送用配管76が複数折り返されて配置されている。複数折り返された高湿気体移送用配管76の下流側は容器22の外部に出され、貯水タンク40に接続されている。容器22の内部の高湿気体移送用配管76の周囲には吸湿剤21が存在している。
第一実施形態において説明したように、真空ポンプ30から排出された高湿気体は圧縮されて温度が上昇し、例えば大気温度以上相対湿度100%以下となる。したがって、高湿気体移送用配管76を通る高湿気体は高温となっている。一方、真空ポンプ30によって水を蒸発させた吸湿剤21は熱が奪われて温度が低下し、例えば0℃以上35℃以下となる。
本実施形態は、高温の高湿気体と低温の吸湿剤21とを利用するものである。すなわち、本実施形態では、高湿気体移送用配管76内の高湿気体と吸湿器20内の吸湿剤21との間で熱交換することによって、高湿気体を冷却して高湿気体に含まれる水の少なくとも一部を凝縮して液化すると共に、吸湿剤21を加熱して吸湿剤21の温度低下を抑制する。前記熱交換は、高湿気体移送用配管76の管壁を介して行われる。
高湿気体移送用配管76は、図示例のように、容器22の内部空間に設置されてもよいし、容器22の内部空間を形成する容器22の壁部に埋め込まれて設置されてもよい。
【0036】
(作用効果)
本実施形態では、吸湿器20の内部に挿入される前の高湿気体移送用配管76と凝縮器50とにおいて水を液化することに加え、吸湿器20の内部にて高湿気体移送用配管76を冷却して、高湿気体に含まれる水を凝縮させて液化する。そのため、本実施形態によれば、大気から、より多くの水を製造できる。
また、高温の高湿気体と低温の吸湿剤21を利用するから、熱効率に優れ、例えば、加熱気体の温度を下げることができ、水を製造する際のエネルギー消費量をより少なくできる。
したがって、本実施形態の水製造装置2及び水製造方法によれば、エネルギー使用量をより抑制しながら、より多くの水を製造できる。
【0037】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
第一実施形態の水製造装置においては、加熱気体供給用ヒータを備えていなくてもよい。その場合、水製造装置が、吸湿器を加熱するヒータを備えて、吸湿剤からの水の蒸発によって生じる温度低下を抑制してもよい。
第一実施形態の水製造装置においては、高湿気体移送用配管の周囲に、高湿気体移送用配管を冷却する冷却器を設けて、高湿気体に含まれる水を凝縮させてもよい。
第二実施形態の水製造装置においては、吸湿器の容器の内部に挿入された高湿気体移送用配管が、吸湿器の容器を貫通しているだけの1本の配管であってもよい。しかし、高湿気体と吸湿剤との間の熱交換効率が高くなるため、吸湿器の容器の内部に挿入された高湿気体移送用配管は、複数折り返された配管とすることが好ましい。
第二実施形態の水製造装置においては、吸湿器の容器の内部に挿入された高湿気体移送用配管は分枝してもよいし、放熱フィンを備えていてもよい。
高湿気体移送用配管の断面は、通常、円形であるが、円形でなくてもよく、例えば、四角形等であってもよい。
【0038】
第一実施形態及び第二実施形態の水製造装置においては、貯水タンクに接続された凝縮器を備えていなくてもよい。しかし、大気中からの水の製造量を増やす点からは、水製造装置は、前記凝縮器を備えていることが好ましい。
第一実施形態及び第二実施形態の水製造装置においては、貯水タンクを備えず、高湿気体移送用配管が水供給用配管に直接接続されてもよい。しかし、得られた水を一時的に貯留する貯水タンクを備えていれば、水の製造量の変動、水の使用量の変動に対して容易に対応できる。したがって、水製造装置は、貯水タンクを備えていることが好ましい。
第一実施形態及び第二実施形態の水製造装置においては、加熱気体供給用ヒータ及び加熱気体用配管を備えなくてもよい。しかし、減圧時に温度が低下する吸湿剤を加熱でき、吸湿器の容器として耐真空性が低い容器を使用できるようになることから、水製造装置は、加熱気体供給用ヒータ及び加熱気体用配管を備えることが好ましい。
第一実施形態及び第二実施形態の水製造装置においては、大気放出用配管を備えなくてもよい。但し、水製造装置が大気放出用配管を備えない場合には、真空ポンプを通らずに、真空ポンプ供給用配管と高湿気体移送用配管とを接続するバイパス配管を設置する。第1工程においては、吸湿剤に水が捕捉されて残った低湿空気をバイパス配管に通し、最終的に大気に放出する。第2工程においては、バイパス配管を閉じて、吸湿剤の周囲を減圧して発生させた高湿気体を真空ポンプに通す。
第一実施形態及び第二実施形態の水製造装置においては、エネルギー消費量の増大が問題ならない程度で、コンプレッサを用いた冷却装置を使用して高湿気体中の水を凝縮させて液化させても構わない。
【0039】
第一実施形態及び第二実施形態の水製造装置においては、図3に示すように、加熱気体用配管72と真空ポンプ接続用配管75とを入れ替えてもよい。すなわち、加熱気体用配管72が排出用配管73に接続され、真空ポンプ接続用配管75が大気用配管71に接続されてもよい。なお、図3は、第二実施形態の水製造装置2において、真空ポンプ接続用配管75を大気用配管71に接続し、加熱気体用配管72を排出用配管73に接続した変形例である。
【実施例
【0040】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
本実施例においては、大気供給用ファンと吸湿器と真空ポンプと凝縮器とを備える、図1に類似した水製造装置を用いた。また、本実施例において使用した水製造装置は、大気用配管と、真空ポンプ接続用配管と、高湿気体移送用配管とを備える。
大気供給用ファンは、大気を、大気用配管を介して吸湿器に移送するためのファンである。大気の温度は20℃とし、相対湿度は62%とした。大気供給用ファンの能力は、標準状態(NPT)において5L/minであり、20℃に換算すると、5.366L/minとなる。また、100torrの供給とすると、流量は0.706L/min({5.366L/min/760torr}×100torr)となる。この値に気体密度1.198270413kg/mを乗じると、大気供給量は0.000846kg/minとなる。
吸湿器に充填される吸湿剤としては、カチオン型イオン交換樹脂(レバチット社製S1567)2000gを用いた。吸湿剤から水を蒸発させる第2工程に際してはヒータによって吸湿剤を加熱して、吸湿剤の温度を30℃とした。
真空ポンプは、吸湿器の容器の絶対圧力を13kPa(ゲージ圧では-88kPa)にできるポンプを使用した。
凝縮器としては、高湿気体移送用配管を冷却水によって冷却して高湿気体移送用配管内の高湿気体を凝縮させる凝縮用トラップを用いた。
【0041】
前記水製造装置を用い、下記の製造方法により大気より水を製造した。
大気供給用ファンを稼働させて、大気(温度27℃、相対湿度70%)を、大気用配管に通して吸湿器の容器に供給し、吸湿剤に大気中の水を吸着させた。その吸着時間は約1時間とした。次いで、大気供給用ファンを停止し、真空ポンプを稼働させて、吸湿器の容器の絶対圧力を13kPaとし、吸湿剤に吸着した水を蒸発させた。これにより得られた高湿気体を、真空ポンプ接続用配管に通し、真空ポンプで吸引し、高湿気体移送用配管に吐出した。次いで、高湿気体移送用配管内の高湿気体を凝縮器によって冷却し、水を液化して、液状の水を回収した。液状の水を回収する時間は約1時間とした。
これら一連の操作を繰り返して、水を製造した。
【0042】
また、上記の製造方法と同様の製造方法において、表1に示す条件でシミュレートして、大気からの水製造量の理論値を求めた。
【0043】
【表1】
【0044】
前記水製造装置を用いて実際に大気から水を製造した結果、149mg/minで水を製造できた。一方、シミュレートによる水製造量の理論値は、(166.7mg/min)-(14.1mg/min)より153mg/minと求められた。(149mg/min)/(153mg/min)=0.974であるから、実際の水製造量は理論値にかなり近い値であった。これより、本実施例の水製造装置及び水製造方法では、充分な量の水を製造できることが確認できた。
また、本実施例の水製造装置及び水製造方法では、エネルギーを消費する機器が、大気供給用ファン、吸湿剤を加熱するヒータ、真空ポンプのみであるから、エネルギー消費量が少ないといえる。
よって、本実施例の水製造方法及び水製造装置によれば、エネルギー消費量を抑制しながらも充分に液状の水を製造できる。
【0045】
(実施例2)
カチオン型イオン交換樹脂を多孔性樹脂(レバチット社製MP64)に変更した以外は実施例1と同様にして、液状の水を製造した。本例において使用した多孔性樹脂は、イオン交換樹脂の担体であり、イオン交換官能基を有さない。
本例における実際の水の製造量は、145mg/minであった。
【0046】
(実施例3)
カチオン型イオン交換樹脂をシリカゲル(山仁薬品社製S型)に変更した以外は実施例1と同様にして、液状の水を製造した。
本例における実際の水の製造量は、143mg/minであった。
【0047】
[結果]
上記のように、水の製造量は、実施例1の水の製造量>実施例2の水の製造量>実施例3の水の製造量であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の水の製造方法及び水製造装置は、水資源が不足しがちな地域、例えば、離島、取水できる河川が乏しく且つ地下水が不足している地域等での利用に適している。また、本発明の水の製造方法及び水製造装置は、高湿環境の地域、例えば、東南アジア、南アジア、中南米、ポリネシア、ミクロネシア、メラニシア等にとりわけ適している。
【符号の説明】
【0049】
1,2 水製造装置
10 大気供給用ファン
20 吸湿器
21 吸湿剤
22 容器
30 真空ポンプ
40 貯水タンク
50 凝縮器
51 凝縮用配管
52 冷却部
52a 冷媒導入用配管
52b 冷媒導出用配管
60 加熱気体供給用ヒータ
61 送気ファン
62 ヒータ
71 大気用配管
71a 第1開閉弁
72 加熱気体用配管
72a 第2開閉弁
73 排出用配管
74 大気放出用配管
74a 第3開閉弁
75 真空ポンプ接続用配管
75a 第4開閉弁
76 高湿気体移送用配管
77 凝縮器接続用配管
図1
図2
図3