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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221128BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20221128BHJP
   H02N 13/00 20060101ALN20221128BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 P
H01L21/68 R
H05B3/74
H02N13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018117495
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019220595
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 光慶
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友希
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157617(JP,A)
【文献】特開2013-239575(JP,A)
【文献】特開2006-013045(JP,A)
【文献】特開2000-058406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/74
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する略平面状の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、有する板状部材と、
第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面に対向するように配置され、内部に冷媒流路が形成されたベース部材と、
前記板状部材の少なくとも一部を前記第1の方向に直交する方向に並ぶ複数のセグメントに仮想的に分割したときの各前記セグメント内に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極と、
前記第1の方向視で各前記ヒータ電極に対応する前記板状部材の前記第2の表面に形成された凹部内に配置された温度検知素子と、
各前記凹部内に充填された充填剤と、
前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接着する接着部と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
各前記充填剤は、前記凹部から突出しており、
各前記充填剤における先端側の一部分は、前記接着部内に食い込んでおり、
各前記充填剤の前記凹部から突出した部分と前記接着部との間には空間が存在せず、
各前記充填剤間での前記凹部からの突出高さの差は、5μm以下である、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記凹部内の空間であって、前記充填剤と前記接着部との間の空間が存在しない、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記板状部材は、セラミックスにより形成されており、
前記充填剤の熱伝導率は、前記板状部材の熱伝導率より低く、かつ、前記接着部の熱伝導率より高い、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の保持装置において、
前記凹部における底面側の角部は、R形状である、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略直交する略平面状の表面(以下、「吸着面」という)を有する板状部材と、例えば金属により構成されたベース部材と、板状部材とベース部材とを接着する接着部と、板状部材の内部に配置されたチャック電極とを備えている。板状部材は、例えば、セラミックスにより形成されている。静電チャックは、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、静電チャックの使用時には、板状部材に配置された複数のヒータ電極による加熱や、ベース部材に形成された冷媒流路に冷媒を供給することによる冷却によって、板状部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる。
【0004】
従来、板状部材の吸着面の温度分布の制御性を向上させるため、板状部材における吸着面とは反対側の表面(以下、「下面」という)の内、上記第1の方向視で各ヒータ電極に対応する部分に凹部を形成し、各凹部内にサーミスタ等の温度検知素子を配置する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構成では、各温度検知素子による温度検知結果に基づき各温度検知素子に対応するヒータ電極への印加電圧を調整することにより、板状部材の吸着面の温度分布の制御性を向上させることができる。温度検知素子による測定温度を、実際の板状部材の温度により近くするため、温度検知素子が配置される各凹部内には、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の充填剤が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-157617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、温度検知素子が配置される各凹部内に充填剤を充填する場合には、充填剤の量が、充填剤が各凹部内の空間にぴったり収まるような量(充填剤の先端が板状部材の下面に略一致するような量)に設定される。しかしながら、実際の充填時における充填剤の量のばらつきにより、ある凹部では、充填剤が凹部内にぴったり充填されて凹部内に空間が残らない一方、他の凹部では、充填剤の量が足りずに凹部内に空間が残る、という事態が発生し得る。なお、ここで言う「空間」とは、凹部内の空間であって、充填剤と接着部との間の空間を意味する。板状部材の下面に形成された凹部内に空間が残ると、該凹部の位置において、板状部材からベース部材への伝熱性(熱引き性)が大きく低下する。そのため、従来の構成では、板状部材の各位置間での(各凹部が形成された位置間での)板状部材からベース部材への伝熱性(熱引き性)のばらつきが発生し、板状部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、吸着面に保持された対象物の温度分布の制御性)が低下するおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、板状部材と、ベース部材と、板状部材とベース部材とを接着する接着部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する略平面状の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、有する板状部材と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面に対向するように配置され、内部に冷媒流路が形成されたベース部材と、前記板状部材の少なくとも一部を前記第1の方向に直交する方向に並ぶ複数のセグメントに仮想的に分割したときの各前記セグメント内に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極と、前記第1の方向視で各前記ヒータ電極に対応する前記板状部材の前記第2の表面に形成された凹部内に配置された温度検知素子と、各前記凹部内に充填された充填剤と、前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接着する接着部と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、各前記充填剤は、前記凹部から突出している。本保持装置では、各充填剤が、凹部から突出している。そのため、充填剤の充填時における充填剤の量のばらつきがあっても、凹部内に空間(凹部内の空間であって、充填剤と接着部との間の空間)が残ることを回避することができる。その結果、凹部内の該空間の存在に起因して、該凹部の位置での板状部材からベース部材への伝熱性(熱引き性)が大きく低下することを回避することができる。そのため、本保持装置によれば、板状部材の各位置での板状部材からベース部材への伝熱性(熱引き性)のばらつきが発生することを抑制することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記充填剤の熱伝導率は、前記板状部材の熱伝導率より低く、かつ、前記接着部の熱伝導率より高い構成としてもよい。本保持装置では、充填剤の熱伝導率を、接着部の熱伝導率と比較して、板状部材の熱伝導率に近くすることができる。従って、本保持装置によれば、凹部内に充填された充填剤の存在により、板状部材に凹部が形成されていることに起因する温度特異点の発生を抑制することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を抑制することができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記凹部における底面側の角部は、R形状である構成としてもよい。本保持装置では、凹部における底面側の角部に充填剤が充填されずに空間が残ることを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、凹部内の空間の存在に起因して板状部材からベース部材への伝熱性(熱引き性)が大きく低下することを効果的に回避することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、各前記充填剤間での前記凹部からの突出高さの差は、5μm以下である、ことを特徴とする構成としてもよい。本保持装置では、各充填剤間での凹部からの突出高さの差が比較的小さい。そのため、本保持装置によれば、各充填剤間での凹部からの突出高さの差に起因して、板状部材の各位置での板状部材からベース部材への伝熱性(熱引き性)のばらつきが発生することを抑制することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、真空チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】本実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。
図4】ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
図5】各セグメントSEに配置されたヒータ電極500のXY断面構成を模式的に示す説明図である。
図6】サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
図7図6のX1部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.本実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、本実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0017】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
【0018】
セラミックス部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10は、特許請求の範囲における板状部材に相当し、セラミックス部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、セラミックス部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」といい、図3に示すように、面方向の内、吸着面S1の中心点CPを中心とする円周方向を「円周方向CD」といい、面方向の内、円周方向CDに直交する方向を「径方向RD」という。
【0019】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40にチャック用電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0020】
セラミックス部材10の内部には、また、それぞれ導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのヒータ用ドライバ51および各種ビア53,54とが配置されている。本実施形態では、ヒータ電極層50はチャック電極40より下側に配置され、ヒータ用ドライバ51はヒータ電極層50より下側に配置されている。これらの構成については、後に詳述する。
【0021】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10と同径の、または、セラミックス部材10より径が大きい円形平面のセラミックス部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0022】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着部30によって、セラミックス部材10に接合されている。接着部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0023】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着部30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0024】
A-2.ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成:
次に、ヒータ電極層50の構成およびヒータ電極層50への給電のための構成について詳述する。上述したように、セラミックス部材10には、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのヒータ用ドライバ51および各種ビア53,54とが配置されている。また、静電チャック100には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成(後述するヒータ端子用孔Ht1に収容されたヒータ用給電端子72等)が設けられている。図4は、ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成を模式的に示す説明図である。図4の上段には、セラミックス部材10に配置されたヒータ電極層50の一部のYZ断面構成が模式的に示されており、図4の中段には、セラミックス部材10に配置されたヒータ用ドライバ51の一部のXY平面構成が模式的に示されており、図4の下段には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成のYZ断面構成が模式的に示されている。
【0025】
ここで、図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10に、面方向(Z軸方向に直交する方向)に並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSE(図3において一点鎖線で示す)が設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、セラミックス部材10が、吸着面S1の中心点CPを中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点CPを含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。図4の上段には、一例として、セラミックス部材10に設定された3つのセグメントSEが示されている。
【0026】
図4の上段に示すように、ヒータ電極層50は、複数のヒータ電極500を含んでいる。ヒータ電極層50に含まれる複数のヒータ電極500のそれぞれは、セラミックス部材10に設定された複数のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに、1つのヒータ電極500が配置されている。換言すれば、セラミックス部材10において、1つのヒータ電極500が配置された部分(主として該ヒータ電極500により加熱される部分)が、1つのセグメントSEとなる。
【0027】
図5は、各セグメントSEに配置されたヒータ電極500のXY断面構成を模式的に示す説明図である。図5に示すように、ヒータ電極500は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部502と、ヒータライン部502の両端部に接続されたヒータパッド部504とを有する。本実施形態では、ヒータライン部502は、Z軸方向視で、セグメントSE内の各位置をできるだけ偏り無く通るような形状とされている。他のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の構成も同様である。
【0028】
なお、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに1つのヒータ電極500が配置されているが、ここで言う1つのヒータ電極500とは、独立して制御可能なヒータ電極500の単位を意味しており、必ずしも単一のヒータ電極500に限定されるものではない。例えば、1つのセグメントSEに、互いに共通に制御される複数のヒータ電極500が配置されているとしてもよい。また、1つのセグメントSEに配置されたヒータ電極500のヒータライン部502の構成が、Z軸方向における位置が互いに異なる複数層のヒータライン部502の部分が互いに直列に接続された構成であるとしてもよい。
【0029】
また、図4の中段に示すように、セラミックス部材10に配置されたヒータ用ドライバ51は、複数の導電領域(導電ライン)510を有している。複数のヒータ電極500のそれぞれについて、ヒータ電極500の一端は、ビア53を介して、ヒータ用ドライバ51の1つの導電領域510に電気的に接続されており、該ヒータ電極500の他端は、ビア53を介して、ヒータ用ドライバ51の他の1つの導電領域510に電気的に接続されている。なお、図4に示す例のように、各ヒータ電極500の一端については、互いに同一の導電領域510に電気的に接続されていてもよい。
【0030】
また、図2および図4に示すように、静電チャック100には、複数のヒータ端子用孔Ht1が形成されている。図4に示すように、各ヒータ端子用孔Ht1は、ベース部材20を上面S3から下面S4まで貫通する貫通孔22と、接着部30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10の下面S2側に形成されたヒータ端子用凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。ヒータ端子用孔Ht1の延伸方向に直交する断面形状は任意に設定できるが、例えば、円形や四角形、扇形等である。また、セラミックス部材10の下面S2における各ヒータ端子用孔Ht1に対応する位置(Z軸方向においてヒータ端子用孔Ht1と重なる位置)には、導電性材料により構成された複数のヒータ用給電パッド70が形成されている。各ヒータ用給電パッド70は、ビア54を介して、ヒータ用ドライバ51の導電領域510に電気的に接続されている。
【0031】
各ヒータ端子用孔Ht1には、導電性材料により構成された複数のヒータ用給電端子72が収容されている。各ヒータ用給電端子72は、例えばろう付けによりヒータ用給電パッド70に接合されている。また、各ヒータ端子用孔Ht1内において、各ヒータ用給電端子72は、ヒータ用コネクタ90を介して、ヒータ用電源(図示しない)に接続されたヒータ用配線80に電気的に接続されている。
【0032】
このような構成において、各ヒータ電極500は、ヒータ用電源に対して互いに並列に接続されている。ヒータ用電源からヒータ用配線80、ヒータ用コネクタ90、ヒータ用給電端子72、ヒータ用給電パッド70、ビア54、ヒータ用ドライバ51の導電領域510およびビア53を介して、ヒータ電極500に電圧が印加されると、ヒータ電極500が発熱する。これにより、ヒータ電極500が配置されたセグメントSEが加熱され、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(ひいては、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。本実施形態では、各ヒータ電極500がヒータ用電源に対して互いに並列に接続されているため、各ヒータ電極500単位で(すなわち、各セグメントSE単位で)ヒータ電極500の発熱量を制御することができ、セグメントSE単位でのセラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、よりきめ細かい単位での温度分布制御)を実現することができる。
【0033】
A-3.サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成:
図2に示すように、本実施形態の静電チャック100は、温度検知素子としてのサーミスタ600と、サーミスタ600への給電のための構成(例えば、サーミスタ用ドライバ61)とを備える。図6は、サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成を模式的に示す説明図である。図6の上段には、図4の上段と同様に、セラミックス部材10に配置されたヒータ電極層50の一部のYZ断面構成が模式的に示されており、図6の中段には、セラミックス部材10に配置されたサーミスタ用ドライバ61の一部のXY平面構成が模式的に示されており、図6の下段には、サーミスタ600の構成およびサーミスタ600への給電のための他の構成のYZ断面構成が模式的に示されている。また、図7は、図6のX1部を拡大して示す説明図である。
【0034】
図2図6および図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の下面S2に複数のサーミスタ用凹部14が形成されており、各サーミスタ用凹部14内に1つのサーミスタ600が配置されている。各サーミスタ用凹部14は、Z軸方向視で各ヒータ電極500に対応するセラミックス部材10の下面S2に形成されている。換言すれば、各サーミスタ用凹部14は、セラミックス部材10の各セグメントSEにおける下面S2に形成されている。すなわち、本実施形態では、サーミスタ用凹部14の個数、すなわち、サーミスタ600の個数は、ヒータ電極500の個数(セラミックス部材10に設定されたセグメントSEの個数)と同一である。なお、各サーミスタ用凹部14は、Z軸方向視で、対応するヒータ電極500と重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。ただし、各サーミスタ用凹部14は、Z軸方向視で、複数のヒータ電極500と重なっていることはない。サーミスタ用凹部14は、特許請求の範囲における凹部に相当する。
【0035】
各サーミスタ用凹部14内に配置されたサーミスタ600は、温度が変化すると抵抗値が変化する導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されており、抵抗値に基づき温度を測定することができる。サーミスタ600は、サーミスタ用凹部14の底面15に配置された一対のサーミスタ用電極604に、例えば半田付けにより接合されている。
【0036】
また、図6の中段に示すように、セラミックス部材10に配置されたサーミスタ用ドライバ61は、複数の導電領域(導電ライン)610を有している。複数のサーミスタ600のそれぞれについて、サーミスタ600に接続された一方のサーミスタ用電極604は、ビア63を介して、サーミスタ用ドライバ61の1つの導電領域610に電気的に接続されており、該サーミスタ600に接続された他方のサーミスタ用電極604は、ビア63を介して、サーミスタ用ドライバ61の他の1つの導電領域610に電気的に接続されている。なお、各サーミスタ600に接続された一方のサーミスタ用電極604については、互いに同一の導電領域610に電気的に接続されていてもよい。
【0037】
また、図2および図6に示すように、静電チャック100には、複数のサーミスタ端子用孔Ht2が形成されている。図6に示すように、各サーミスタ端子用孔Ht2は、ベース部材20を上面S3から下面S4まで貫通する貫通孔23と、接着部30を上下方向に貫通する貫通孔33と、セラミックス部材10の下面S2側に形成されたサーミスタ端子用凹部13とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。サーミスタ端子用孔Ht2の延伸方向に直交する断面形状は任意に設定できるが、例えば、円形や四角形等である。また、セラミックス部材10の下面S2における各サーミスタ端子用孔Ht2に対応する位置(Z軸方向においてサーミスタ端子用孔Ht2と重なる位置)には、導電性材料により構成された複数のサーミスタ用給電パッド170が形成されている。各サーミスタ用給電パッド170は、ビア64を介して、サーミスタ用ドライバ61の導電領域610に電気的に接続されている。
【0038】
各サーミスタ端子用孔Ht2には、導電性材料により構成された複数のサーミスタ用給電端子172が収容されている。各サーミスタ用給電端子172は、例えばろう付けによりサーミスタ用給電パッド170に接合されている。また、各サーミスタ端子用孔Ht2内において、各サーミスタ用給電端子172は、サーミスタ用コネクタ190を介して、サーミスタ用電源(図示しない)に接続されたサーミスタ用配線180に電気的に接続されている。
【0039】
このような構成において、各サーミスタ600は、サーミスタ用電源に対して互いに並列に接続されている。サーミスタ用電源からサーミスタ用配線180、サーミスタ用コネクタ190、サーミスタ用給電端子172、サーミスタ用給電パッド170、ビア64、サーミスタ用ドライバ61の導電領域610、ビア63およびサーミスタ用電極604を介して、サーミスタ600に電圧が印加されると、サーミスタ600に電流が流れる。静電チャック100は、各サーミスタ600に印加された電圧と各サーミスタ600に流れる電流とを測定するための構成(例えば、電圧計や電流計(いずれも図示しない))を有しており、各サーミスタ600の電圧および電流の測定値に基づき、各サーミスタ600の抵抗値から、各サーミスタ600の温度、すなわち、各サーミスタ600が配置されたセラミックス部材10の部分(各サーミスタ600が配置されたセグメントSE)の温度をリアルタイムで個別に測定することができる。従って、本実施形態の静電チャック100では、該温度測定結果に基づき各ヒータ電極500への印加電圧を個別に制御することにより、セラミックス部材10の各部分(各セグメントSE)の温度を精度良く制御することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。なお、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が高いとは、吸着面S1全体の温度分布が均一に近いことと、セグメントSE毎に吸着面S1の温度分布が均一に近いこととの少なくとも一方の意味を含む。
【0040】
A-4.充填剤602の構成:
図6および図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の下面S2に形成された各サーミスタ用凹部14の内部に、充填剤602が充填されている。充填剤602は、樹脂接着剤(例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂)やセラミックス(例えば、アルミナ)等により構成されている。なお、充填剤602を樹脂接着剤により構成する場合には、例えば、樹脂接着剤にセラミックス等のフィラーを添加したものがサーミスタ用凹部14内に充填される。また、充填剤602をセラミックスにより構成する場合には、例えば、セラミックス材料にバインダを添加したペーストがサーミスタ用凹部14内に充填されるとしてもよいし、セラミックス材料をサーミスタ用凹部14内に溶射したり3Dプリンタにより造形したりすることにより充填剤602が形成されるとしてもよい。
【0041】
本実施形態では、充填剤602の熱伝導率は、セラミックス部材10(本実施形態ではセラミックスの焼結体)の熱伝導率より低く、かつ、接着部30(本実施形態では樹脂接着剤)の熱伝導率より高い。サーミスタ用凹部14内に充填剤602が配置されていることにより、サーミスタ600による測定温度を、実際のセラミックス部材10の温度により近くすることができ、サーミスタ600によるセラミックス部材10の温度測定の精度が向上し、ひいては、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が向上する。
【0042】
ここで、図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、各充填剤602は、サーミスタ用凹部14から突出している。すなわち、各充填剤602の先端(下端)は、セラミックス部材10の下面S2(より詳細には、下面S2の内のサーミスタ用凹部14周りの部分)より、ベース部材20の上面S3側(すなわち、下側)に位置している。その結果、各充填剤602における先端(下端)側の一部分は、接着部30内に食い込んでいる。
【0043】
本実施形態では、各充填剤602におけるサーミスタ用凹部14からの突出高さH1は、互いに略同一である。具体的には、各充填剤602間でのサーミスタ用凹部14からの突出高さH1の差は、5μm以下である。なお、各充填剤602におけるサーミスタ用凹部14からの突出高さH1は、30μm以下であることが好ましい。各充填剤602におけるサーミスタ用凹部14からの突出高さH1が接着部30μmを超えると、例えば、充填剤602の外周付近におけるセラミックス部材10と接着部30との界面に空間が形成されて伝熱性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、好ましくない。
【0044】
また、図7に示すように、本実施形態では、サーミスタ用凹部14における底面15側の角部16は、R形状である。そのため、充填剤602は、サーミスタ用凹部14における底面15側の角部16においても、隙間無く充填されている。
【0045】
A-5.静電チャック100の製造方法:
本実施形態の静電チャック100の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、ヒータ電極層50やヒータ用ドライバ51、ヒータ用給電パッド70、サーミスタ用ドライバ61、サーミスタ用給電パッド170、サーミスタ用電極604等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビア53,54,63,64の形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。なお、この熱圧着の際には、セラミックス部材10の下面S2の各種凹部(サーミスタ用凹部14等)となる位置にスペーサが配置される。このとき、角部の形状がR形状であるスペーサを用いることにより、サーミスタ用凹部14における底面15側の角部16をR形状とすることができる。作成されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、セラミックス部材10を作製する。
【0046】
次に、セラミックス部材10に形成されたヒータ用給電パッド70およびサーミスタ用給電パッド170に、それぞれ、ヒータ用給電端子72およびサーミスタ用給電端子172を、例えばろう付けにより接合する。次に、セラミックス部材10のサーミスタ用凹部14内に形成されたサーミスタ用電極604に、サーミスタ600を、例えば半田付けにより接合する。次に、セラミックス部材10のサーミスタ用凹部14内に充填剤602を充填する。このとき、充填剤602の充填量を、充填剤602がサーミスタ用凹部14から必ず突出するような量(サーミスタ用凹部14内の空間容積に対して多めの量)に設定する。次に、各充填剤602の先端部(下端部)に対して例えばマシニング加工を施すことにより、各充填剤602におけるセラミックス部材10の下面S2からの突出高さH1が互いに略同一となるようにする。次に、例えばシート状の接着部30を用いて、セラミックス部材10とベース部材20とを接合する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック100が製造される。
【0047】
A-6.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略直交する略平面状の吸着面S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2とを有する板状のセラミックス部材10と、上面S3を有し、上面S3がセラミックス部材10の下面S2に対向するように配置されたベース部材20と、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置されてセラミックス部材10とベース部材20とを接着する接着部30とを備え、セラミックス部材10の吸着面S1上にウェハW等の対象物を保持する保持装置である。ベース部材20の内部には、冷媒流路21が形成されている。また、本実施形態の静電チャック100は、セラミックス部材10の少なくとも一部をZ軸方向に直交する方向(面方向)に並ぶ複数のセグメントSEに仮想的に分割したときの各セグメントSE内に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極500と、Z軸方向視で各ヒータ電極500に対応するセラミックス部材10の下面S2に形成されたサーミスタ用凹部14内に配置されたサーミスタ600と、各サーミスタ用凹部14内に充填された充填剤602とを備える。また、本実施形態の静電チャック100では、各充填剤602は、サーミスタ用凹部14から突出している。
【0048】
このように、本実施形態の静電チャック100では、各充填剤602が、サーミスタ用凹部14から突出している。そのため、充填剤602の充填時における充填剤602の量のばらつきがあっても、サーミスタ用凹部14内に空間(サーミスタ用凹部14内の空間であって、充填剤602と接着部30との間の空間)が残ることを回避することができる。その結果、サーミスタ用凹部14内の該空間の存在に起因して、該サーミスタ用凹部14の位置でのセラミックス部材10からベース部材20への伝熱性(熱引き性)が大きく低下することを回避することができる。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の各位置でのセラミックス部材10からベース部材20への伝熱性(熱引き性)のばらつきが発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハW等の対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。なお、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性の低下を抑制することができるとは、吸着面S1全体の温度分布にばらつきが発生することを抑制することができることと、セグメントSE毎に吸着面S1の温度分布にばらつきが発生することを抑制することができることとの少なくとも一方の意味を含む。
【0049】
また、本実施形態の静電チャック100では、充填剤602の熱伝導率は、セラミックス部材10の熱伝導率より低く、かつ、接着部30の熱伝導率より高い。そのため、本実施形態の静電チャック100では、充填剤602の熱伝導率を、接着部30の熱伝導率と比較して、セラミックス部材10の熱伝導率に近くすることができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、サーミスタ用凹部14内に充填された充填剤602の存在により、セラミックス部材10にサーミスタ用凹部14が形成されていることに起因する温度特異点の発生を抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハW等の対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の静電チャック100では、サーミスタ用凹部14における底面15側の角部16は、R形状である。そのため、本実施形態の静電チャック100では、サーミスタ用凹部14における底面15側の角部16に充填剤602が充填されずに空間が残ることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、サーミスタ用凹部14内の空間の存在に起因してセラミックス部材10からベース部材20への伝熱性(熱引き性)が大きく低下することを効果的に回避することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハW等の対象物の温度分布の制御性)の低下を効果的に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の静電チャック100では、各充填剤602間でのサーミスタ用凹部14からの突出高さH1の差は、5μm以下である。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、各充填剤602間でのサーミスタ用凹部14からの突出高さH1の差が比較的小さい。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、各充填剤602間でのサーミスタ用凹部14からの突出高さH1の差に起因して、セラミックス部材10の各位置でのセラミックス部材10からベース部材20への伝熱性(熱引き性)のばらつきが発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハW等の対象物の温度分布の制御性)の低下を効果的に抑制することができる。
【0052】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、Z軸方向視で各ヒータ電極500に対応するセラミックス部材10の下面S2にサーミスタ用凹部14が形成されており(すなわち、セラミックス部材10の各セグメントSEにおける下面S2にサーミスタ用凹部14が形成されており)、サーミスタ用凹部14の個数(すなわち、サーミスタ600の個数)がヒータ電極500の個数(すなわち、セラミックス部材10に設定されたセグメントSEの個数)と同一であるとしているが、必ずしもすべてのヒータ電極500に対応して(すなわち、すべてのセグメントSEに対応して)サーミスタ600が設けられる必要はなく、一部のヒータ電極500に対応するサーミスタ600が存在しない(すなわち、一部のセグメントSEにはサーミスタ600が配置されていない)としてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、充填剤602の熱伝導率は、セラミックス部材10の熱伝導率より低く、かつ、接着部30の熱伝導率より高いとしているが、各部材間の熱伝導率の関係は、これに限られない。また、上記実施形態では、各充填剤602間でのサーミスタ用凹部14からの突出高さH1の差は5μm以下であるとしているが、必ずしもこのような構成である必要はない。また、上記実施形態では、サーミスタ用凹部14における底面15側の角部16はR形状であるが、該角部16の形状は他の形状であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、サーミスタ用ドライバ61のZ軸方向における位置に関し、サーミスタ用ドライバ61の全体が同一位置にある(すなわち、サーミスタ用ドライバ61が単層構成である)としているが、サーミスタ用ドライバ61の一部が異なる位置にある(すなわち、サーミスタ用ドライバ61が複数層構成である)としてもよい。また、上記実施形態では、各サーミスタ600はサーミスタ用ドライバ61を介してサーミスタ用給電端子172に電気的に接続されているが、各サーミスタ600がサーミスタ用ドライバ61を介さずにサーミスタ用給電端子172に電気的に接続されるとしてもよい。これらの点は、ヒータ用ドライバ51についても同様である。
【0056】
また、上記実施形態におけるサーミスタ用給電端子172やサーミスタ用コネクタ190、サーミスタ用配線180の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。同様に、上記実施形態におけるヒータ用給電端子72やヒータ用コネクタ90、ヒータ用配線80の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0057】
また、上記実施形態におけるセグメントSEの設定態様(セグメントSEの個数や、個々のセグメントSEの形状等)は、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、各セグメントSEが吸着面S1の円周方向CDに並ぶように複数のセグメントSEが設定されているが、各セグメントSEが格子状に並ぶように複数のセグメントSEが設定されてもよい。また、例えば、上記実施形態では、静電チャック100の全体が複数のセグメントSEに仮想的に分割されているが、静電チャック100の一部分が複数のセグメントSEに仮想的に分割されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。
【0060】
また、上記実施形態の静電チャック100の各部材(セラミックス部材10、ベース部材20、接着部30、ヒータ電極500、サーミスタ600、充填剤602等)の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、静電チャック100が、セラミックスにより形成されたセラミックス部材10を備えているが、静電チャック100が、セラミックス部材10の代わりに、セラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成された同様の板状部材を備えるとしてもよい。
【0061】
また、本発明は、セラミックス部材10とベース部材20とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、板状部材と、ベース部材と、板状部材とベース部材とを接着する接着部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10:セラミックス部材 12:ヒータ端子用凹部 13:サーミスタ端子用凹部 14:サーミスタ用凹部 15:底面 16:角部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 23:貫通孔 30:接着部 32:貫通孔 33:貫通孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極層 51:ヒータ用ドライバ 53:ビア 54:ビア 61:サーミスタ用ドライバ 63:ビア 64:ビア 70:ヒータ用給電パッド 72:ヒータ用給電端子 80:ヒータ用配線 90:ヒータ用コネクタ 100:静電チャック 170:サーミスタ用給電パッド 172:サーミスタ用給電端子 180:サーミスタ用配線 190:サーミスタ用コネクタ 500:ヒータ電極 502:ヒータライン部 504:ヒータパッド部 510:導電領域 600:サーミスタ 602:充填剤 604:サーミスタ用電極 610:導電領域 BL1:第1の境界線 BL2:第2の境界線 CD:円周方向 CP:中心点 H1:突出高さ Ht1:ヒータ端子用孔 Ht2:サーミスタ端子用孔 RD:径方向 S1:吸着面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 SE:セグメント W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7