(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】エアゾール容器用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/22 20060101AFI20221128BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20221128BHJP
B65D 83/20 20060101ALI20221128BHJP
B65D 83/24 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B65D83/22
B05B9/04
B65D83/20
B65D83/24
(21)【出願番号】P 2018118474
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】尾形 謙
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105342(JP,A)
【文献】特開2010-274232(JP,A)
【文献】米国特許第03795366(US,A)
【文献】特開2002-255261(JP,A)
【文献】特開2006-143282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/14-83/74
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器本体の容器口部の上部に設けられたステムに接続し、前記ステムを下方に押圧して前記エアゾール容器内の内容物を噴射口から噴射可能な押ボタンと、前記押ボタンを囲んで前記エアゾール容器本体に取付けられるボタンカバーとを有するエアゾール容器用アクチュエータであって、
前記ボタンカバーと前記押ボタンとは、回動することによって互いに係合する回動係合機構を有し、
前記回動係合機構が、係合したときに前記押ボタンの押し下げる前の位置から下方への移動を阻止可能に構成された下方移動規制部と、係合したときに前記押ボタンの押し下げた位置から上方への移動を阻止可能に構成された上方移動規制部とを有し
、
前記ボタンカバーの回転中心は、ステムの中心軸と一致しないことを特徴とするエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項2】
前記押ボタンは、ボタン天井部と、前記ボタン天井部の外周縁から垂下する脚部と、前記脚部よりも内周側の位置で前記ボタン天井部から垂下するステム嵌合部と、前記噴射口とを有し、
前記脚部には、下方に開放した退避スリットが設けられ、
前記ボタンカバーは、前記脚部の周囲に対向するように配置されたボタン対向壁を有し、
前記ボタン対向壁の下部には、前記ボタン対向壁の下部から半径方向内方に突出する押下制止突起が設けられ、
前記下方移動規制部は、前記押ボタンと前記ボタンカバーとの回動位置によって、前記押下制止突起の上面が前記脚部および前記退避スリットのいずれか一方の下端と当接可能に切り替わるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項3】
前記脚部には、前記脚部の下部から半径方向外方に突出するボタンツメが設けられ、
前記ボタン対向壁には、下方に開放され、高さの異なる複数の段差部を有した段付きスリットが設けられ、
前記上方移動規制部は、前記押ボタンと前記ボタンカバーとの回動位置によって、前記ボタンツメの上面が前記段付きスリットの複数の段差部のいずれか一つと当接可能に切り替わるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項4】
前記ボタンカバーは、前記ボタン対向壁よりも半径方向外方に設けられたスカート壁をさらに有し、前記スカート壁に嵌合可能なボタンカバー嵌合部を有する肩カバーを介して前記エアゾール容器本体の容器口部に取付けられ、
前記ボタンカバーと前記肩カバーとは、相対的に回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項5】
前記肩カバーは、頂板部と、前記頂板部の下面から垂下して前記容器口部に嵌合可能に構成された容器嵌合筒部と、前記頂板部の上面から上方に延びて前記ボタンカバーに嵌合可能に構成された前記ボタンカバー嵌合部と、前記頂板部から軸方向に延びて前記ステム嵌合部の周囲を囲む筒状突起とが設けられ、
前記筒状突起には、少なくとも上方に開放した規制用スリットが設けられ、
前記ステム嵌合部の外周面には、前記ステム嵌合部を前記ステムに嵌合した際、前記規制用スリットに挿通可能に構成された係止用突条が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項6】
前記ボタンカバーは、カバー天井部と、前記カバー天井部の外周縁から垂下するスカート壁とをさらに有し、
前記ボタン対向壁は、前記スカート壁の内周側の位置で前記カバー天井部から垂下するように設けられ、
前記ボタンカバー嵌合部には、上方に延びて前記スカート壁と前記ボタン対向壁との間に挿入可能に構成された回転ストッパーが設けられていることを特徴とする請求項4
または請求項5に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項7】
前記ボタンカバーは、前記押ボタンの前記噴射口からの内容物の噴射が通過可能な開放孔をさらに有し、
前記開放孔は、前記下方移動規制部および前記上方移動規制部の少なくともいずれか一方によって前記押ボタンの上下動が規制された際、前記押ボタンの前記噴射口からの内容物の噴射方向に延びる仮想線から外れるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項
6のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項8】
前記エアゾール容器は、請求項1乃至請求項
7のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータを備えていることを特徴とするエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール容器用アクチュエータに関し、特に、簡単な操作で通常噴射状態、誤噴射防止(ロック)状態、および噴射維持状態(ガス抜き状態)のそれぞれの状態に切り替え可能なエアゾール容器用アクチュエータおよびエアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、使用済みのエアゾール容器をゴミとして廃棄する際、容器内部に残存するガスを放出しなければならず、そのため、種々のエアゾール容器用ガス抜き機構が提案されている。
例えば、特許文献1には、エアゾール容器A本体の容器口部の上部に設けられたステムを囲んで取付けられる肩カバー3と、ステムに接続し、ステムを下方に押圧してエアゾール容器A内の内容物を噴射口4から噴射可能な押ボタン(噴射ボタン1)と、肩カバー3上に押ボタン(噴射ボタン1)を囲んで取付けられるボタンカバー(キャップ2)とを有するロック機構を備えたエアゾール容器用アクチュエータが記載されている。
【0003】
このエアゾール容器用アクチュエータのロック機構は、押ボタン(噴射ボタン1)の下端部外周面には周方向に複数の直方体状の突起6が設けられるとともに、押ボタン(噴射ボタン1)の背面には切欠部7が設けられている。
また、ボタンカバー(キャップ2)には、爪状の押下制止突起(規制突起9)が設けられており、ロック機構がロック解除されている状態で、キャップを回動させて押下制止突起(規制突起9)を押ボタン(噴射ボタン1)の背面部の第1浅切欠部7bに嵌入することで、押ボタン(噴射ボタン1)の下動を不能とし、ロック機構を作動することができる。
これによって、ボタンカバー(キャップ2)を回転させる動作のみで、押ボタン(噴射ボタン1)の押下動作の可否を切り替えることができる。
【0004】
さらに、肩カバー3の環状周壁17の下端部には複数の第2浅切欠き部20bが形成されており、ボタンカバー(キャップ2)ごと肩カバー3を容器口部から外し、肩カバー3を180度回転させた向きで再び容器口部に嵌着する際、押ボタン(噴射ボタン1)の下端部外周面に設けられた突起6が第2浅切欠き部20bに嵌入することにより、押ボタン(噴射ボタン1)が上昇不能に拘束され、肩カバー3を押し込み完全に容器口部に嵌着すると、押ボタン(噴射ボタン1)がステムを押し下げて内容物を外部に噴射する位置で固定される。
これによって、エアゾール容器の廃棄に際して、押ボタン(噴射ボタン1)を押し下げる動作を行うことなく、容器内の残留内容物を完全に放出するガス抜き操作が可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1で公知のエアゾール容器用アクチュエータには、未だ改善の余地があった。
すなわち、特許文献1で公知のエアゾール容器用アクチュエータは、ガス抜き作業を実施する際に、ボタンカバー及び肩カバーを容器口部から外す必要があるため、作業者にとって手間がかかってしまう虞があった。
また、ガス抜き作業を実施する際にボタン側の突起にキャップ側の溝を合わせて嵌め直す必要があるため、溝から突起がズレた状態で嵌着作業を行うと、肩カバーが容器口部に正しく嵌らず、各部が干渉して破損する虞や、正しくない姿勢で不意にステムを押し下げてしまい、不意に噴射した内容物が周囲に飛び散ってしまう虞があった。
また、ガス抜き作業を実施する際に肩カバーを一度容器口部から外す必要があり、肩カバーを取り外すことが可能な強度で容器口部に嵌着しているため、ガス抜き作業時にステム側から受ける反発力によって肩カバーが外れてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、簡単な構成で、押ボタンのロックが可能であるとともに、ボタンカバーや肩カバーを取り外すことなく、確実にガス抜き作業を実施可能なエアゾール容器用アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアゾール容器用アクチュエータは、エアゾール容器本体の容器口部の上部に設けられたステムに接続し、前記ステムを下方に押圧して前記エアゾール容器内の内容物を噴射口から噴射可能な押ボタンと、前記押ボタンを囲んで前記エアゾール容器本体に取付けられるボタンカバーとを有するエアゾール容器用アクチュエータであって、前記ボタンカバーと前記押ボタンとは、回動することによって互いに係合する回動係合機構を有し、前記回動係合機構が、係合したときに前記押ボタンの押し下げる前の位置から下方への移動を阻止可能に構成された下方移動規制部と、係合したときに前記押ボタンの押し下げた位置から上方への移動を阻止可能に構成された上方移動規制部とを有し、前記ボタンカバーの回転中心は、ステムの中心軸と一致しないことにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るエアゾール容器用アクチュエータによれば、ボタンカバーと押ボタンとは、回動することによって互いに係合する回動係合機構を有し、回動係合機構が、係合したときに押ボタンの押し下げる前の位置から下方への移動を阻止可能に構成された下方移動規制部と、係合したときに押ボタンの押し下げた位置から上方への移動を阻止可能に構成された上方移動規制部とを有しているため、ボタンカバーを押ボタンから相対的に回転させて下方移動規制部へ移動することで、押ボタンによってステムを押圧操作できなくすることが可能であるとともに、ボタンカバーを押ボタンから相対的に回転させて上方移動規制部へ移動することで、押ボタンによってステムを押圧した状態を保持可能となり、ボタンカバーを外すことなくガス抜き作業を実施できる。
また、押ボタンを押圧操作できなくする際も、ガス抜き作業を実施する際も、ボタンカバーと押ボタンとを相対的に回転させることのみで簡単に切り替えが可能である。
また、ボタンカバーの回転中心は、ステムの中心軸と一致しないため、押ボタンとボタンカバーとの形状を相対的に回転可能にするのみでよく、例えば、噴射パターンをできる限り大きくするために噴射口の位置をステム中心軸側に近づけた場合でも、押ボタンの中心軸をステム中心軸からみて噴射口と反対側の位置にして押ボタンを径大に形成することができ、押ボタンの操作感を維持できる。
【0010】
請求項2に記載の構成によれば、押ボタンには、ボタン天井部の外周縁から垂下する脚部に、下方に開放した退避スリットが設けられ、ボタンカバーのボタン対向壁の下部には、半径方向内方に突出する押下制止突起が設けられ、下方移動規制部は、押ボタンとボタンカバーとの回動位置によって、押下制止突起の上面が脚部および退避スリットのいずれか一方の下端と当接可能に切り替わるように構成されているため、ボタンカバーを押ボタンと相対的に回転させることのみで、押ボタンを押下可能状態と押下制止状態に簡単に切り替えることができ、使用者の負担が少ない。
また、ボタンカバーを取り外す必要がないため、使用時や保管時に常に全ての部品がエアゾール容器に取り付けられており、必要な部品を紛失する虞がない。
【0011】
請求項3に記載の構成によれば、脚部には、脚部の下部から半径方向外方に突出するボタンツメが設けられ、ボタン対向壁には、下方に開放され、高さの異なる複数の段差部を有した段付きスリットが設けられ、上方移動規制部は、押ボタンとボタンカバーとの回動位置によって、ボタンツメの上面が段付きスリットの複数の段差部のいずれか一つと当接可能に切り替わるように構成されているため、ボタンカバーを押ボタンと相対的に回転させることのみで、段差部の高さに合わせてボタンツメの移動量を変化させることができ、例えば、段差部の高さを押ボタンがステムを押下した状態を維持可能な高さに設定すれば、ガス抜き作業を簡単に実施することができる。
また、段差部の高さを押ボタンがステムを押下しない静止状態の高さに設定すれば、押ボタンがステムから外れる方向へ不意に力を受けても、押ボタンは静止状態の高さよりも上昇せず、押ボタンの抜け落ちを防ぐことができる。
【0012】
請求項4に記載の構成によれば、ボタンカバーは、肩カバーを介してエアゾール容器本体の容器口部に取付けられ、ボタンカバーと肩カバーとは、相対的に回転可能に構成されているため、ボタンカバーが容器口部に直接取付けられている場合に比べて、ボタンカバーを回転しやすくなるとともに、肩カバーと容器口部とを強固に嵌合させることができ、不意にエアゾール容器用アクチュエータが容器口部から外れることを防止できる。
【0013】
請求項5に記載の構成によれば、肩カバーは頂板部と、頂板部の下面から垂下して容器口部に嵌合可能に構成された容器嵌合筒部と、頂板部の上面から上方に延びてボタンカバーに嵌合可能に構成されたボタンカバー嵌合部と、頂板部から軸方向に延びてステム嵌合部の周囲を囲む筒状突起とが設けられ、筒状突起には、少なくとも上方に開放した規制用スリットが設けられ、ステム嵌合部の外周面には、ステム嵌合部をステムに嵌合した際、規制用スリットに挿通可能に構成された係止用突条が設けられているため、規制用スリットに係止用突条を挿通するようにステム嵌合部をステムに嵌合することで、肩カバーと押ボタンの相対的な回転を防止でき、ボタンカバーを回転させた際、押ボタンの共回りを防止できる。
請求項6に記載の構成によれば、ボタンカバーは、カバー天井部と、カバー天井部の外周縁から垂下するスカート壁とをさらに有し、ボタン対向壁は、スカート壁の内周側の位置でカバー天井部から垂下するように設けられ、ボタンカバー嵌合部には、上方に延びてスカート壁とボタン対向壁との間に挿入可能に構成された回転ストッパーが設けられているため、スカート壁とボタン対向壁との間隔を調整することで、ボタンカバーを回転させた際に回転ストッパーの回転角度を規制することができ、下方移動規制部や上方移動規制部等の任意の位置に到達させやすくなる。
また、スカート壁とボタン対向壁との間に回転ストッパーを挿入することで、ボタンカバー回転時等に発生するボタンカバーのガタツキを抑制することができる。
【0014】
請求項7に記載の構成によれば、ボタンカバーは、押ボタンの噴射口からの内容物の噴射が通過可能な開放孔をさらに有し、開放孔は、下方移動規制部および上方移動規制部の少なくとも何れか一方によって押ボタンの上下動が規制された際、押ボタンの噴射口からの内容物の噴射方向に延びる仮想線から外れるように構成されているため、開放孔を確認するだけで、エアゾール容器用アクチュエータの噴射可否状態を把握することができるとともに、噴射口が開放孔から外れてボタン対向壁に向かう位置でガス抜き操作を実施するような構成であれば、噴射口から噴射された内容物を含むガスがボタン対向壁にぶつかるため、内容物が広範囲に飛び散ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアゾール製品Pの斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の押ボタン110の正面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の押ボタン110の下面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のボタンカバー120の斜視図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のボタンカバー120の側面断面図。
【
図6】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のボタンカバー120の下面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の肩カバー130の斜視図。
【
図8】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の肩カバー130の側面断面図。
【
図9】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の通常噴射可能状態を示す上面側断面図。
【
図10】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の通常噴射可能状態を示す側面側断面図。
【
図11】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100の通常噴射状態を示す側面側断面図。
【
図12】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のロック状態を示す斜視図。
【
図13】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のロック状態を示す上面側断面図。
【
図14】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のロック状態を示す側面側断面斜視図。
【
図15】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のロック状態でのA-A’断面のカット位置を示す上面図。
【
図16】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のロック状態でのA-A’断面図。
【
図17】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のガス抜き状態を示す斜視図。
【
図18】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のガス抜き状態を示す上面側断面図。
【
図19】本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のガス抜き状態を示す側面側断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100について、図面に基づいて説明する。
エアゾール容器用アクチュエータ100は、
図1および
図10に示すように、エアゾール容器本体Cの容器口部の上部に設けられたステムSに接続し、ステムSを下方に押圧してエアゾール容器内の内容物を噴射可能な押ボタン110と、エアゾール容器本体CのマウンティングカップMに取付けられる肩カバー130と、肩カバー130に取付けられて押ボタン110を囲むボタンカバー120を有するエアゾール容器用アクチュエータ100として、エアゾール製品Pの一部を構成するものである。
【0017】
押ボタン110は、
図2および
図3に示すように、ボタン天井部111と、ボタン天井部111の外周縁から垂下する脚部112と、脚部112よりも内周側の位置でボタン天井部111から垂下するステム嵌合部115と、ステムSを下方に押圧した際にエアゾール容器内の内容物を噴射する噴射口117とを有し、脚部112には、下方に開放した退避スリット113と、脚部112の下部から半径方向外方に突出するボタンツメ114とが設けられ、ステム嵌合部115には、ステム嵌合部115から半径方向外方に突出する係止用突条116が設けられている。
また、脚部112とステム嵌合部115とは、互いの中心が異なる円筒状に形成されている。
【0018】
ボタンカバー120は、
図4乃至
図6に示すように、カバー天井部121と、カバー天井部121から垂下するボタン対向壁125と、ボタン対向壁125よりも外周側の位置でカバー天井部121から垂下するスカート壁122とを有し、ボタン対向壁125には、下方に開放され、高さの異なる段差部(第1段差部127a、第2段差部127b、第3段差部127c)を有した段付きスリット127と、ボタン対向壁125の下部から半径方向内方に突出する押下制止突起126とが設けられ、スカート壁122の下部には、半径方向内方に突出し、肩カバー130と係合可能な係合突起124が設けられている。
第1段差部127aは、エアゾール容器用アクチュエータ100を容器口部に取付けた際、段付きスリット127内でボタンツメ114の上下動を妨げることのない十分な高さを有し、第2段差部127bは、押ボタン110が押し込まれていない状態で、ボタンツメ114が段付きスリット127内で上下方向に干渉しない高さを有し、第3段差部127cは、押ボタン110が押し込まれていない状態で、ボタンツメ114が段付きスリット127内で干渉するとともに、押ボタン110が押し込まれた状態でボタンツメ114が段付きスリット127内で干渉しない高さを有している。
【0019】
ボタンカバー120は、ボタン対向壁125とスカート壁122とを貫通する開放孔123をさらに有し、開放孔123と対向する位置には、カバー天井部121が他の位置よりも低く形成された凹部128が設けられている。
また、ボタン対向壁125とスカート壁122との間は、回転ガイド溝129を形成している。
【0020】
肩カバー130は、
図7および
図8に示すように、頂板部131と、頂板部131の外周縁から垂下し、容器口部のマウンティングカップMに嵌合可能な容器嵌合壁部132と、頂板部131の上面から上方に延びて回転ガイド溝129に進入し、ボタンカバー120と係合可能に構成されたボタンカバー係合部133と、ステムSに嵌合したステム嵌合部115を囲むように頂板部131の上面から上方に延びる筒状突起136とを有し、ボタンカバー係合部133には、ボタンカバー係合部133の外周面から膨出形成された膨出部134と、ボタンカバー係合部133の上面から上方に延びる回転ストッパー135が設けられ、筒状突起136には、上下方向に開放され、係止用突条116を挿通可能な規制用スリット137が設けられている。
【0021】
次に、エアゾール容器用アクチュエータ100の、容器口部への取付け手順について、
図9および
図10を用いて説明する。
まず、肩カバー130を、エアゾール容器本体Cの容器口部のマウンティングカップMに取付ける。
このとき、肩カバー130の容器嵌合壁部132とマウンティングカップMとは、マウンティングカップMと肩カバー130との相対回転が簡単に発生しない程度に十分に強く嵌合する。
【0022】
次に、肩カバー130のボタンカバー係合部133をボタンカバー120の回転ガイド溝129に挿入して、肩カバー130とボタンカバー120とを、互いが相対的に回転可能に係合する。
このとき、ボタンカバー120の係合突起124が、ボタンカバー係合部133の膨出部134を乗り越えた位置で肩カバー130とボタンカバー120とは係合するため、ボタンカバー120を持ち上げても係合突起124が膨出部134に引っかかり、ボタンカバー120が不意に抜けることを防止できる。
また、ボタンカバー120には凹部128と開放孔123が設けられており、肩カバー130には回転ストッパー135が設けられているため、ボタンカバー120と肩カバー130とを相対的に回転させた場合、回転ストッパー135を凹部128の端部や開放孔123に干渉させることで、必要以上にボタンカバー120が肩カバー130に対して回転してしまうことを防止できるとともに、ボタンカバー120のカバー天井部121付近まで回転ストッパー135を伸ばすことで、ボタンカバー120のガタツキを抑えることができる。
【0023】
次に、ボタンカバー120および肩カバー130が取り付けられた状態で、押ボタン110をステムSに嵌合する。
このとき、ステム嵌合部115の係止用突条116を筒状突起136の規制用スリット137に挿通するように、押ボタン110をステムSに嵌合することで、係止用突条116が規制用スリット137によって相対位置を固定されるため、ボタンカバー120を肩カバー130と相対的に回転させた際、押ボタン110に回転方向に力がかかっても、押ボタン110のボタンカバー120との共回りを防止できる。
【0024】
さらに、押ボタン110の中心軸とステムSの中心軸を異なるものにすることで、噴射位置の調整等のために噴射口117の先端位置をステムSの中心軸側に配置しても、押ボタン110を小さい円筒状に形成する必要がなく、押し込みやすい大きさの押ボタンを設けることができる。
また、ボタンカバー120と押ボタン110とを、ボタンツメ114が第1段差部127aに位置するように配置することで、噴射口117の向きが開放孔123と一致するため、通常の噴射が可能な位置関係となる。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ100を用いた、通常噴射可能状態と、ロック状態と、ガス抜き状態との切り替え方法について、図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、通常噴射可能状態について、
図9乃至
図11を用いて説明する。
通常噴射可能状態では、押下制止突起126が押ボタン110に設けられた退避スリット113の下方に位置するため、押下制止突起126は脚部112に干渉することがなく、押ボタン110のボタン天井部111を押し込むことができ、押ボタン110を介してステムSを押下することで、エアゾール容器内の内容物をステムSを介して取り出し、噴射口117から噴射できる。
【0027】
このとき、噴射口117の向きと開放孔123の向きが一致し、噴射口117から噴射方向に延びる仮想線Lが開放孔123を通るため、噴射口117から噴射された内容物は、開放孔123を通り、目的の位置へ向けて噴射することができる。
また、ボタンカバー120の開放孔123と反対側は、凹部128によってカバー天井部121が低く形成されているため、指を凹部128に合わせることで、押ボタン110を押し込みやすい。
【0028】
次に、ロック状態について、
図12乃至
図16を用いて説明する。
まず、通常噴射可能状態から、ボタンカバー120を押ボタン110に対して反時計回りに回転させる。
このとき、押ボタン110は係止用突条116を規制用スリット137に挿通しているため、ボタンカバー120と押ボタン110が一部接触していた場合でも、押ボタン110はボタンカバー120と共に回転することはなく、一定の位置を維持し続ける。
【0029】
さらに、押ボタン110は非押下状態であるため、押下制止突起126は脚部112よりも低く位置しており、押下制止突起126はボタンカバー120の回転に合わせて退避スリット113の下方から脚部112の下方へ移動する。
これによって、ボタンカバー120の回転後は押ボタン110を押し込んでも、押下制止突起126が脚部112に干渉して回動係合機構の下方移動規制部として機能するため、押下を防止でき、ステムSを押下してエアゾール容器内の内容物を取り出すことができず、使用時以外に不意に押ボタン110に触れて内容物が噴出することを防止できる。
【0030】
また、ボタンカバー120の回転後、ボタンツメ114は第1段差部127aの下方から第2段差部127bの下方へ移動するため、押ボタン110は押下方向だけでなく上昇方向へも移動を制限されるため、押ボタン110が不意に上昇方向へ力を受けてステムSから抜け落ちてしまうことを防止できる。
さらに、噴射口117が開放孔123からズレて、噴射口117から噴射方向に延びる仮想線Lが開放孔123から外れ、開放孔123から噴射口117が確認できないため、エアゾール容器用アクチュエータ100が通常噴射可能状態ではないことを容易に確認できるとともに、ロック状態で押ボタン110に過剰な力がかかって無理矢理ステムSを押下されてしまった場合でも、噴射口117から噴射した内容物は、ボタン対向壁125にぶつかり、広範囲に内容物が拡散することを防止できる。
【0031】
次に、ガス抜き状態について、
図17乃至
図19を用いて説明する。
まず、通常噴射可能状態で押ボタン110を押下したまま、ボタンカバー120を押ボタン110に対して時計回りに回転させる。
このとき、押ボタン110は押下状態であるため、押下制止突起126は退避スリット113内に位置しており、ボタンカバー120の回転とともに、退避スリット113内のみを移動可能となる。
ボタンツメ114は、ボタンカバー120の回転後、第1段差部127aの下方から第3段差部127cの下方へ移動する。
【0032】
これによって、押ボタン110の押下を解除しても、ボタンツメ114は第3段差部127cに干渉して回動係合機構の上方移動規制部として機能するため、押ボタン110を介してステムSの押し込みは維持され、エアゾール容器内の内容物は噴射口117から噴射され続ける。
すなわち、押ボタン110を押し続ける必要がなく、エアゾール容器内の内容物を最後まで噴射することが可能であり、廃棄前のガス抜き作業を簡単に実施できる。
また、噴射口117が開放孔123からズレて、噴射口117から噴射方向に延びる仮想線Lが開放孔123から外れ、噴射口117から噴射した内容物は、ボタン対向壁125にぶつかるため、広範囲に内容物が拡散することを防止できる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
なお、上述した実施形態では、ボタンカバーの開放孔と対向する位置には、カバー天井部が他の位置よりも低く形成された凹部が設けられているものとして説明したが、ボタンカバーの構成はこれに限定されず、例えば、凹部を設けずに、ボタン天井部がカバー天井部よりも高い位置に設けられていてもよく、ボタン天井部を押下可能に構成されたレバーをカバー天井部に設けてもよい。
また、上述した実施形態では、ボタン対向壁には、下方に開放され、高さの異なる段差部(第1段差部、第2段差部、第3段差部)を有した段付きスリットがあるものとして説明したが、段付きスリットの構成はこれに限定されず、例えば、ロック状態でボタンツメの上方移動を規制する第2段差部がなくてもよく、ロック状態やガス抜き状態以外の機能を有した第4段差部を設けてもよく、段差部の代わりに1つの斜面を設けて、斜面の高さでそれぞれの段差部に相当する箇所を構成するようにしてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では、ボタンツメを段付きスリットに挿通することで押ボタンの上昇を制限する上方移動規制部として機能するものとして説明したが、上方移動規制部の構成はこれに限定されず、例えば、押ボタン側にスリットを設けて、ボタンカバー側にスリット内に挿通可能な突部を設けるように構成してもよい。
また、上述した実施形態では、退避スリットおよび脚部と、押下制止突起との位置関係が、押ボタンの下降を制限する下方移動規制部として機能するものとして説明したが、下方移動規制部の構成はこれに限定されず、例えば、押ボタン側に突部を設けて、ボタンカバー側に突部が挿通可能な退避スリットを設けるように構成してもよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、ステムの中心軸と押ボタンの中心軸とは一致しないものとして説明したが、ステムと押ボタンの位置関係はこれに限定されず、ステムの中心軸と押ボタンの中心軸とが互いに一致していてもよく、ステムと押ボタンとボタンカバーの中心軸が互いに一致していてもよい。
また、上述した実施形態では、係止用突条が規制用スリットに挿通するものとして説明したが、係止用突条と規制用スリットの構成はこれに限定されず、例えば、係止用突条や規制用スリットがなくてもよく、肩カバー側に係止用の突起を設けて、押ボタン側に突起を挿通可能なスリットを設けるように構成してもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、ボタンカバーは、カバー天井部と、カバー天井部から垂下するボタン対向壁と、ボタン対向壁よりも外周側の位置でカバー天井部から垂下するスカート壁とを有しているものとして説明したが、ボタンカバーの構成はこれに限定されず、例えば、カバー天井部とスカート壁を設けずに、ボタン対向壁のみを設けて肩カバーと係合するように構成してもよい。
また、上述した実施形態では、ボタンカバーは、通常噴射可能時以外は噴射口をボタン対向壁で隠すように構成されているものとして説明したが、ボタンカバーの構成はこれに限定されず、例えば、ロック時やガス抜き時でも噴射口が開放孔から見えていてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、エアゾール容器用アクチュエータは、押ボタンと、ボタンカバーと、肩カバーとで構成されているものとして説明したが、エアゾール容器用アクチュエータの構成はこれに限定されず、例えば、肩カバーを設けずに、ボタンカバーを容器口部に直接取り付けるとともに、ボタンカバーが容器口部と相対的に回転可能に構成してもよい。
また、上述した実施形態では、通常噴射可能状態からボタンカバーを反時計回りに回すことでロック状態に移行し、通常噴射可能状態からボタンカバーを時計回りに回すことでガス抜き状態に移行するものとして説明したが、各状態への移行方法はこれに限定されず、例えば、通常噴射可能状態からボタンカバーを時計回りに回すことでロック状態に移行するように構成してもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、エアゾール容器用アクチュエータは、容器口部のマウンティングカップに取付けられるものとして説明したが、エアゾール容器用アクチュエータの取り付け位置はこれに限定されず、例えば、エアゾール容器の胴部と肩カバーとを強固に嵌合するように取付けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
100 ・・・ エアゾール容器用アクチュエータ
110 ・・・ 押ボタン
111 ・・・ ボタン天井部
112 ・・・ 脚部
113 ・・・ 退避スリット
114 ・・・ ボタンツメ
115 ・・・ ステム嵌合部
116 ・・・ 係止用突条
117 ・・・ 噴射口
120 ・・・ ボタンカバー
121 ・・・ カバー天井部
122 ・・・ スカート壁
123 ・・・ 開放孔
124 ・・・ 係合突起
125 ・・・ ボタン対向壁
126 ・・・ 押下制止突起
127 ・・・ 段付きスリット
127a ・・・ 第1段差部
127b ・・・ 第2段差部
127c ・・・ 第3段差部
128 ・・・ 凹部
129 ・・・ 回転ガイド溝
130 ・・・ 肩カバー
131 ・・・ 頂板部
132 ・・・ 容器嵌合壁部
133 ・・・ ボタンカバー係合部
134 ・・・ 膨出部
135 ・・・ 回転ストッパー
136 ・・・ 筒状突起
137 ・・・ 規制用スリット
C ・・・ エアゾール容器本体
M ・・・ マウンティングカップ
S ・・・ ステム
L ・・・ 仮想線
P ・・・ エアゾール製品