(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】電子記録債権処理システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20120101AFI20221128BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2018120079
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2020-05-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598049322
【氏名又は名称】株式会社三菱UFJ銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】谷茶 和人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和紀
(72)【発明者】
【氏名】中澤 広伸
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026512(JP,A)
【文献】特開2016-146179(JP,A)
【文献】特開2015-228120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子債権記録機関から債務者宛の発生記録請求の通知を受信する受信部と、債権の属性が所定の範囲内である場合に前記電子債権記録機関へ前記通知に対する承諾回答を送信する送信部と、を備え、
前記債権の属性が所定の範囲内であることは、前記債権の金額が所定額以下であ
り、
前記属性がさらに前記発生記録請求における債権者を含み、
前記債権の属性が所定の範囲内であることは、前記債権の金額が、前記債権者に応じて定められた所定額以下であることを含む、電子記録債権処理システム。
【請求項2】
前記送信部が債権者請求方式による電子記録債権の発生記録請求の要求を前記電子債権記録機関へ送信する、請求項1に記載の電子記録債権処理システム。
【請求項3】
受信部が電子債権記録機関から債務者宛の発生記録請求の通知を受信し、送信部が、債権の属性が所定の範囲内である場合に前記電子債権記録機関へ前記通知に対する承諾回答を送信することを含み、
前記債権の属性が所定の範囲内であることは、前記債権の金額が所定額以下であ
り、
前記属性がさらに前記発生記録請求における債権者を含み、
前記債権の属性が所定の範囲内であることは、前記債権の金額が、前記債権者に応じて定められた所定額以下であることを含む、電子記録債権の処理方法。
【請求項4】
コンピュータを、電子債権記録機関から債務者宛の発生記録請求の通知を受信する受信部と、債権の属性が所定の範囲内である場合に前記電子債権記録機関へ前記通知に対する承諾回答を送信する送信部とを有することを含み、
前記債権の属性が所定の範囲内であることは、前記債権の金額が所定額以下であ
り、
前記属性がさらに前記発生記録請求における債権者を含み、
前記債権の属性が所定の範囲内であることは、前記債権の金額が、前記債権者に応じて定められた所定額以下であることを含む、電子記録債権処理システムとして動作させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子記録債権処理システム、方法およびプログラムに関する。より詳細には、債権者が取引金融機関を通じて電子債権記録機関へ発生記録請求を行う債権者請求方式への対応を可能にする電子記録債権処理システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子記録債権が決済手段として広く使用されている。電子記録債権の利用者(債権者および債務者)は、取引金融機関を通じて電子債権記録機関(例えば、でんさいネット(登録商標))の記録原簿に記録することで、電子記録債権の発生、譲渡および支払等の手続きを行うことができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子記録債権の発生手続には、債務者が取引金融機関を通じて電子債権記録機関へ発生記録請求を行う債務者請求方式と、債権者が取引金融機関を通じて電子債権記録機関へ発生記録請求を行う債権者請求方式の2つの請求方式がある。従来、2つの請求方式のうち、債務者が債務者請求方式により電子記録債権を発生させる手続が広く利用されてきた。
【0005】
他方、債権者が、債権者請求方式により電子記録債権を発生させて、口座振替的に決済フローを開始したい場合には、債権者は単独で電子記録債権の発生手続きを行うことができない。すなわち、債務者が発生記録請求の通知に対して否認した場合または債務者が発生記録請求の通知に対して所定期間内(例えば、5日間以内)に回答(承諾または否認、以後、両者を併せ「諾否」とも称する。)を送信しない場合には、電子記録債権は発生しない。よって、債権者による発生記録請求の都度、債務者の承諾が必要になるとの問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記債権者請求方式により電子記録債権を発生させる場合における利便性が向上した、電子記録債権処理システム、方法およびプログラムを提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態において、電子債権記録機関から債務者宛の発生記録請求の通知を受信する受信部と、債権の属性が所定の範囲内である場合に前記電子債権記録機関へ前記通知に対する承諾回答を送信する送信部と、を備えた電子記録債権処理システムが提供される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る電子記録債権処理システムにおいて、さらに、債権者請求方式による電子記録債権の発生記録請求の要求を前記電子債権記録機関へ送信する発生記録請求要求手段を備えていてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る電子記録債権処理システムにおいて、前記債権の属性が債権金額であってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る電子記録債権処理システムにおいて、前記債権の属性が債権者であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、受信部が電子債権記録機関から債務者宛の発生記録請求の通知を受信し、送信部が、債権の属性が所定の範囲内である場合に前記電子債権記録機関へ前記通知に対する承諾回答を送信する電子記録債権の処理方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態において、コンピュータを、電子債権記録機関から債務者宛の発生記録請求の通知を受信する受信部と、債権の属性が所定の範囲内である場合に前記電子債権記録機関へ前記通知に対する承諾回答を送信する送信部とを有する電子記録債権処理システムとして動作させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記債権者請求方式により電子記録債権を発生させる場合における利便性が向上した、電子記録債権処理システム、方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システムを示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システムのクライアント管理データベース(DB)において記録管理されるクライアント情報を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システムのクライアント管理DBにおいて記録管理されるサービス利用情報を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システムの履歴管理DBにおいて記録管理される処理履歴情報を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システムのクライアント管理DBにおいて記録管理されるサービス利用情報を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態における情報管理装置、方法およびプログラムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システムを示す構成図である。
図1には、電子記録債権処理システム100にネットワークを介して接続された電子債権記録機関120、債権者端末132および債務者端末134も示されている。
【0017】
電子債権記録機関120は、例えば、全国銀行協会がサービス提供する全国電子債権ネットワーク(でんさいネット)であり、記録原簿DB122を有する。電子記録債権処理システム100は、例えば、でんさいネットの参加金融機関が運用するシステムである。
【0018】
電子記録債権処理システム100は、例えば、プロセッサ、メモリ、記憶装置、通信装置、入出力装置等のハードウェア資源を備えたコンピュータとすることができる。電子記録債権処理システム100は、ハードウェア資源および/またはプログラムにより構成される通信制御部102、照合部104、データ生成部108を備える。
【0019】
また、電子記録債権処理システム100は、クライアント情報(
図2)およびクライアント毎のサービス利用情報(
図3)を記録管理するクライアント管理DB106と、処理履歴情報(
図4)を記録管理する履歴管理DB110とを備える。
【0020】
通信制御部102は、ネットワークを介して電子債権記録機関120、債権者端末132、および債務者端末134とデータを送受する。通信制御部102は、債権者端末132から発生記録請求の要求を受信し、債権者請求方式による発生記録請求の要求を電子債権記録機関120へ送信し、電子債権記録機関120から債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求の通知を受信し、債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求に対する承諾の回答を電子債権記録機関120へ送信することができる。
【0021】
あるいは、通信制御部102は、電子債権記録機関120から受信した債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求の通知を債務者端末134へ送信し、債務者端末134から債権者請求方式による発生記録請求の通知の回答(諾否)を受信して電子債権記録機関120へ送信することができる。
【0022】
照合部104は、電子債権記録機関120からの債務者宛の発生記録請求の通知の受信に応じて、クライアント管理DB106からクライアント(債務者)の情報を抽出し、サービス利用について情報を照合する。より具体的には、照合部104は、例えば、電子債権記録機関120から受信した発生記録請求の通知において電子記録債権の債務者として指定された利用者の番号(利用者番号)および/または債務者として指定された利用者の金融機関の口座番号に合致するクライアントに関するレコードをクライアント管理DB106から抽出する。
【0023】
次いで、照合部104は、抽出したレコードにおいて、そのクライアント(債務者として指定された利用者)が、債権者発生記録方式の発生記録請求の通知に対して、電子記録債権処理システム100が、債権の属性が所定の条件を満たす場合(例えば、所定の債権額である場合、所定の債権者である場合等)に承諾の回答を自動的に電子債権記録機関120へ送信すると設定しているかどうかを照合する。
【0024】
以下、「所定の条件を満たす場合(例えば、所定の債権額である場合、所定の債権者である場合等)に承諾の回答を自動的に電子債権記録機関120へ送信する」ことを、「自動承諾」とも称し、また、該条件を「自動承諾を行う条件」とも称する。
【0025】
自動承諾に関して、さらに説明を行う。自動承諾を行う条件は、債権の属性を判定するものである。言い換えれば、自動承諾は債権の属性を判定してなされる。属性の具体例として、本発明の一実施形態では、所定の債権額と所定の債権者を挙げることができる。すなわち、債務者は、所定の債権額である場合(例えば、所定の債権額の範囲内である場合)および所定の債権者である場合において、自動的に承諾の回答を電子債権記録機関120へ送信すると設定することができるのである。
【0026】
例えば、照合部104は、抽出したレコードにおいてそのクライアント(債務者として指定された利用者)に関連付けて登録された債権者の利用者番号(電子記録債権処理システム100による、所定枠内での自動承諾の回答を許可する債権者の利用者番号)と、電子債権記録機関120から受信した発生記録請求の通知において電子記録債権の債権者として指定された利用者の番号(利用者番号)とが合致するかどうかを照合することができる。
【0027】
データ生成部108は、照合部104の照合結果に応じて、電子債権記録機関120宛の承諾の回答のデータを生成する(電子記録債権処理システム100による自動承諾が許可されている場合)。
【0028】
また、データ生成部108は、電子債権記録機関120から受信した債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求の通知を債務者端末134へ送信するためのデータを生成する(電子記録債権処理システム100による自動承諾が許可されていない場合、および/または自動承諾が許可されている場合)。
【0029】
さらに、データ生成部108は、電子債権記録機関120から受信した債権者および債務者宛の債務者請求方式による発生記録の通知(または結果)を債権者端末132および債務者端末134へ送信するためのデータを生成する。
【0030】
また、データ生成部108は、電子記録債権の発生が記録原簿DB122に登録されたのち、電子債権記録機関120から受信する電子記録債権の発生記録の通知を債権者端末132および債務者端末134へ送信するためのデータを生成する。
【0031】
通信制御部102は、上記承諾通知を電子債権記録機関120へ送信する。以上のとおり、本発明の一実施形態において、金融機関が、債権者による債権者請求方式の発生記録請求の通知に対する承諾の回答を、債務者に代り自動的に電子債権記録機関120へ送信することにより、債権者が電子記録債権を利用して口座振替的に決済を開始することを可能とすることができる。
【0032】
次に、電子記録債権処理システム100における電子記録債権の処理方法を説明する。
【0033】
(クライアント情報の事前登録)
電子記録債権処理システム100のクライアント管理DB106にはクライアント毎に、つまりレコード毎に、電子記録債権の債務者となり得るかを示す債務者利用フラグ、電子記録債権処理システム100が債権者請求方式の発生記録の通知に対して自動承諾の回答を送信するサービスの利用の可否を示すサービス利用フラグ、自動承諾を行う条件、電子記録債権処理システム100による自動承諾の回答の送信が許容される債権者請求方式の発生記録の請求者(債権者に指定される利用者)を識別する利用者番号が登録されている。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システム100のクライアント管理DB106において記録管理されるクライアント情報を示す図である。
図2に示すクライアント管理DB106のクライアント情報の最初のレコードには、利用者番号「1214」で識別される利用者について、口座識別情報(金融機関コード、支店コード、支店名、口座番号および口座種別コード等、図示せず)とともに、電子記録債権の債務者となり得ることを示す債務者利用フラグの値(1:債務者になる/0:債務者にならない(債権者にはなる))およびサービスの利用が可能であることを示すサービス利用フラグの値(1:利用可/0:利用不可)が登録されている。
【0035】
値が1(利用可)に設定されたサービス利用フラグは、金融機関(電子記録債権処理システム100)が、電子債権記録機関120から通知の受信に応答して、または当該通知に対する利用者(債務者または債権者)からの回答を所定の期間内に受信しない場合に、金融機関が債務者に代り自動的に承諾の回答を電子債権記録機関120へ送信することを示す。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システム100のクライアント管理DB106において記録管理されるサービス利用情報を示す図である。
図3に示すサービス利用情報には、利用者番号「1214」で識別される利用者について、電子記録債権処理システム100による自動承諾の回答の送信が許容される債権者請求方式の発生記録の請求者として利用者番号「2017」で識別される利用者が登録されている。
【0037】
クライアント管理DB106のレコード中に利用者番号「1214」で識別される利用者の名称(利用者名)に加え、カナ名称、代表者名、代表者カナ名、住所、連絡先(電話番号、電子メールアドレス)等や、利用者番号「2017」で識別される利用者の利用者名等を登録してもよい。
【0038】
また、
図3に示すサービス利用情報には、利用者番号「3150」で識別される利用者(「Y」)については、利用者番号「4410」で識別される利用者(「B」)および利用者番号「6666」で識別される利用者(「C」)がそれぞれ債権者請求方式で請求した発生記録の通知に対して電子記録債権処理システム100による自動承諾の回答の送信が許容されることが登録されている。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システム100の履歴管理DB110において記録管理される処理履歴情報を示す図である。電子記録債権処理システム100は、電子記録債権の情報を送受信する毎に、債権者の利用者番号および名称、ならびに債務者の利用者番号および名称に関連付けて、電子債権記録機関120への発生記録請求送信日時、承諾通知送信日時、承諾通知送信種別、その他情報(債権金額、支払期日、発生記録請求受信日時、記録請求通知受信日時、発生記録通知受信日時、発生記録通知送信日時等、図示せず)を記憶する。
【0040】
承諾通知送信種別は、設定又は通常と記憶される。設定は、電子記録債権処理システム100が生成した承諾の回答データを電子債権記録機関120へ送信したことを示す。通常は、電子記録債権処理システム100が債務者から承諾又は否認の通知するための回答データを受信し、同回答データを電子債権記録機関120へ送信したことを示す。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理システム100のクライアント管理DB106において記録管理されるサービス利用情報を示す図である。
図5に示すサービス利用情報には、債権者の利用者番号および名称、債務者の利用者番号および名称、ならびに電子記録債権の取引開始を示す取引開始フラグの値(1:取引開始をした/0:取引開始をしていない)が登録されている。
【0042】
債権者Aと債務者Xとの間で取引が開始されると、取引開始フラグが「1」と記憶される。一方、債権者Bと債務者Zとの間では取引が開始されていないので、取引開始フラグは「0」と記憶されている。
【0043】
(電子記録債権の処理方法)
図6は、本発明の一実施形態にかかる電子記録債権処理方法を示すフローチャートである。以下、
図6を参照して電子記録債権処理システム100における電子記録債権の処理方法を説明する。
【0044】
例示として、
図5に示した取引開始フラグが「1」の関係にある利用者番号「2017」で識別される債権者「A」が、利用者番号「1214」で識別される債務者「X」に、債権者請求方式により電子記録債権の記録請求をするフローを説明する。債権者「A」の債権者端末132が、電子記録債権処理システム100(通信制御部102)に電子記録債権の発生記録請求の要求を送信すると、
図6のフローは開始する。
【0045】
ステップS301において、電子記録債権処理システム100(通信制御部102)が、債権者「A」の債権者端末132から電子記録債権の発生記録請求の要求を受信する。
【0046】
発生記録請求の要求は、債権者「A」の利用者番号および口座識別情報および債務者「X」の利用者番号および口座識別情報を含む。また、発生記録請求の要求は、債権金額、支払期日等の情報等の電子債権記録機関120の記録原簿DB122への登録に必要な情報を含む。
【0047】
電子記録債権処理システム100は、発生記録請求の要求からこれらの情報を抽出して履歴管理DB110(
図4)へ記録し、処理履歴情報の記録管理を開始する。
【0048】
なお、ステップS301において、さらに、電子記録債権処理システム100(照合部104)が、後述するステップS307と同様の処理により、クライアント管理DB106から「X」のレコードを抽出し、債務者利用フラグの値が1(「X」が債務者になり得る)に登録されているかどうかを照合してもよい。
【0049】
この場合において、「X」が債務者になれない場合には、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、債権者「A」へエラーを通知するためのデータを生成し、通信制御部102を介して債権者端末132へ送信し、処理を終了する。
【0050】
ステップS303において、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、受信した債権者請求方式の発生記録請求のデータを生成し、通信制御部102を介し、生成したデータを電子債権記録機関120へ送信する。
【0051】
発生記録請求のデータは、債権者および債務者の利用者番号および口座識別情報等の電子債権記録機関120の記録原簿DB122への登録に必要な情報を含む。電子記録債権処理システム100は、発生記録請求送信日時を記録することで処理履歴情報の記録管理を更新する(
図4)。
【0052】
電子債権記録機関120は、債権者請求方式の発生記録請求のデータを受信したのち、債務者に指定された利用者「X」(利用者番号「1214」)宛の発生記録請求の通知を電子記録債権処理システム100へ送信し、債務者からの回答を待つ。
【0053】
電子債権記録機関120において「X」が債務者になり得る利用者としての利用登録がされておらず、債務者になれない場合、電子債権記録機関120は、電子記録債権処理システム100へエラー通知を送信してもよい。
【0054】
電子債権記録機関120からのエラー通知を受信した場合、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、債権者「A」へエラーを通知するためのデータを生成し、通信制御部102を介して債権者端末132へ送信し、処理を終了してもよい。
【0055】
ステップS305において、電子記録債権処理システム100(通信制御部102)が、電子債権記録機関120から、債務者「X」宛の発生記録請求の通知を受信する。発生記録請求の通知は、債権者および債務者の利用者番号および口座識別情報等を含む。
【0056】
ステップS307において、電子記録債権処理システム100(照合部104)は、サービス利用フラグを照合するとともに、債権の属性を確認する。
【0057】
より具体的には、電子記録債権処理システム100(照合部104)は、受信した発生記録請求の通知に示された債務者「X」の利用者番号および/または口座識別情報をキーとしてクライアント管理DB106から「X」のレコードを抽出し、抽出したレコードにおいて「X」に関連付けて登録された債権者「A」の利用者番号「2017」(電子記録債権処理システム100による自動承諾の回答が可能な利用者の利用者番号として登録されている)と、電子債権記録機関120から受信した発生記録請求の通知において電子記録債権の債権者として指定された利用者の利用者番号(「A」の「2017」)とが合致するかどうかを照合する。
【0058】
利用者番号の照合に先立って、電子記録債権処理システム100(照合部104)は、抽出したレコード中のサービス利用フラグの値が1(利用可)に登録されているかどうか(「X」がサービス利用者かどうか)を照合した上で、サービス利用フラグの値が1(利用可)である場合には自動承諾を行う条件を確認し、自動承諾を行ってもよいか判定する(ステップS309)。
【0059】
図2を参照すれば、「X」サービス利用フラグの値が1(利用可)になっているから、自動承諾を行う条件を確認することになる。自動承諾を行う条件は「A(番号2017)であれば、300万円以下」と記載されているから、債権者がAである場合であって、300万円以下の債権である場合には、自動承諾を行うことができる。そこで、本件で承諾を得ることになっている債権が、「債権者がAである場合であって、300万円以下の債権である」かどうかを判定することになる。
【0060】
照合成功の場合(ステップS309でYesの場合:抽出した「X」のレコードに登録された債権者「A」の利用者番号「2017」と、発生記録請求の通知に示された利用者「A」の利用者番号 「2017」とが合致した場合)、ステップS311において、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、債務者に代り自動的に、電子債権記録機関120宛の発生記録請求の通知に対する承諾の回答データを生成する。
【0061】
すなわち、電子債権記録機関120から受信した債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求の通知を債務者「X」の債務者端末134へ送信するためのデータは、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)によって生成されず、また、送信もされず、債務者「X」における承諾の回答の手間も発生しない。
【0062】
なお、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)は、債権者「A」により請求された発生記録請求の通知に対して契約に基づいて自動的に承諾の回答を電子債権記録機関120へ送信した旨のデータを生成して、債務者「X」に対する単なるお知らせとして、通信制御部102を介して債務者「X」の債務者端末134へ送信してもよい。
【0063】
ただし、債務者が債権者請求方式により債権者が発生記録請求を要求した電子債権の内容を確認し否認する機会を確保する場合には、ステップS311において、まず、データ生成部108が、電子債権記録機関120から受信した債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求の通知を債務者「X」の債務者端末134へ送信するためのデータを生成し、通信制御部102を介して債務者「X」の債務者端末134へ送信して、クライアント管理DB106から債務者「X」の情報を抽出し、発生記録請求の通知に記載された債権の属性(例えば、債権額、債権者)が情報に定められた範囲内であるか判定し、発生記録請求の通知に記載された債権の属性が前記情報に定められた範囲内であると判定された場合に、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、債務者に代り自動的に、電子債権記録機関120宛の発生記録請求の通知に対する承諾の回答データを生成する。これにより、債務者が電子債権の内容を確認し否認する機会を確保するとともに、債務者から所定の期間内に回答を受信しないことによる「見なし否認」を回避することができる。
【0064】
ステップS313において、電子記録債権処理システム100(通信制御部102)が、生成した承諾の回答データを電子債権記録機関120へ送信する。電子記録債権処理システム100は、承諾通知送信日時を記録するとともに承諾通知送信種別を「設定」とすることで処理履歴情報の記録管理を更新することができる(
図4)。
【0065】
照合失敗の場合(ステップS309でNoの場合:「X」がサービス利用者ではない場合、または抽出した「X」のレコードに登録された債権者の利用者番号と、発生記録請求の通知に示された利用者「A」の利用者番号「2017」とが合致しない場合)には従来技術と同様に、ステップS315において、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、電子債権記録機関120から受信した債務者宛の債権者請求方式による発生記録請求の通知を債務者「X」の債務者端末134へ送信するためのデータを生成し、通信制御部102を介して債務者「X」の債務者端末134へ送信するということになる。
【0066】
ステップS317において、電子記録債権処理システム100(通信制御部102)が、債務者「X」の債務者端末134から承諾の回答を受信する。回答の受信に応答して、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、承諾の回答データを生成し、ステップS313において、通信制御部102を介して電子債権記録機関120へ送信する。
【0067】
電子記録債権処理システム100が、電子記録債権処理システム100は、承諾通知送信日時を記録するとともに承諾通知送信種別を「通常」とすることで処理履歴情報の記録管理を更新することができる(
図4)。これにより、処理履歴情報上において、ステップS313の電子記録債権処理システム100による自動的な承諾の回答データの送信と区別ができるようになる。
【0068】
ステップS319において、電子記録債権処理システム100(通信制御部102)が、電子債権記録機関120から債権者「A」宛の電子記録債権の発生記録の通知および債務者「X」宛の電子記録債権の発生記録の通知を受信する。
【0069】
ステップS321において、電子記録債権処理システム100(データ生成部108)が、債権者「A」の債権者端末132および債務者「X」の債務者端末134へ電子記録債権の発生記録の通知を送信するためのデータを生成し、通信制御部102を介して債権者「A」の債権者端末132および債務者「X」の債務者端末134へ送信することにより、
図6のフローは終了する。
【0070】
なお、債権者請求方式による電子記録債権の発生記録請求の要求を電子債権記録機関120へ送信することおよび発生記録請求要求手段は、本実施形態において必須の構成ではない。これにより、他の金融機関から電子記録債権の発生記録請求の要求を行った場合にも、本発明の作用効果を奏することが可能となる。
【0071】
以上説明したように本実施形態の電子記録債権の処理方法によれば、債権者請求方式における、債務者の負担を軽減することができ、利便性の高い電子記録債権処理システム、処理方法、処理装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
100:電子記録債権処理システム、102:通信制御部、104:照合部、106:クライアント管理DB、108:データ生成部、110:履歴管理DB、120:電子債権記録機関、122:記録原簿DB、132:債権者端末、134:債務者端末