(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
H01G4/30 201A
H01G4/30 201F
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
H01G4/30 513
(21)【出願番号】P 2018134032
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-01-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 康友
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】富澤 祐寿
(72)【発明者】
【氏名】久慈 俊也
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-146495(JP,A)
【文献】特開2016-009860(JP,A)
【文献】特開2017-216268(JP,A)
【文献】特開2012-094585(JP,A)
【文献】特開2017-152623(JP,A)
【文献】特開2009-004490(JP,A)
【文献】特開平04-352309(JP,A)
【文献】特開2018-121010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向を向いた第1及び第2主面と、前記第1軸に直交する第2軸方向を向いた第1及び第2端面と、前記第1端面に引き出された第1内部電極と、前記第1内部電極に対向し、前記第2端面に引き出された第2内部電極と、を有するセラミック素体と、
前記第1端面を覆う第1被覆部と、前記第1被覆部から前記第2主面に延出する第1延出部と、を有する第1外部電極と、
前記第2端面を覆う第2被覆部と、前記第2被覆部から前記第2主面に延出する第2延出部と、を有する第2外部電極と、
を具備し、
前記セラミック素体の前記第1軸方向の寸法をT1とし、前記第1及び第2延出部の前記第1軸方向の寸法をT2とすると、T1+T2が50μm以下であり、かつT2/(T1+T2)が
0.04以上0.32以下であり、
前記第1及び第2延出部の前記第2軸方向の寸法はそれぞれ、前記セラミック素体の前記第2軸方向の寸法の25%以上であり、
前記第1及び第2の外部電極のいずれも、前記第1の主面に延在していない
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項
1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1及び第2外部電極は、スパッタ膜を含む
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の積層セラミック電子部品であって、
T2が2μm以上である
積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低背型の積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴って、積層セラミック電子部品の低背化が求められている。特許文献1には、低背型の積層セラミックコンデンサが開示されている。この積層セラミックコンデンサでは、外部電極を薄くした分、セラミック素体を厚くすることによって、厚さ方向の強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミック素体の厚さが50μm以下の超薄型の積層セラミックコンデンサでは、セラミック素体のみによっては厚さ方向の強度を確保できない場合がある。つまり、このような積層セラミックコンデンサでは、特許文献1に記載の技術を採用したとしても、充分な強度が得られにくい。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、抗折強度を確保可能な低背型の積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1外部電極と、第2外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1軸方向を向いた第1及び第2主面と、上記第1軸に直交する第2軸方向を向いた第1及び第2端面と、上記第1端面に引き出された第1内部電極と、上記第1内部電極に対向し、上記第2端面に引き出された第2内部電極と、を有する。
上記第1外部電極は、上記第1端面を覆う第1被覆部と、上記第1被覆部から上記第2主面に延出する第1延出部と、を有する。
上記第2外部電極は、上記第2端面を覆う第2被覆部と、上記第2被覆部から上記第2主面に延出する第2延出部と、を有する。
上記積層セラミック電子部品では、上記セラミック素体の上記第1軸方向の寸法をT1とし、上記第1及び第2延出部の上記第1軸方向の寸法をT2とすると、T1+T2が50μm以下であり、かつT2/(T1+T2)が0.32以下である。
【0007】
この構成のセラミック素体では、延出部が設けられた第2主面には第2軸方向の応力が加わる一方で、延出部が設けられていない第1主面には応力が加わらない。つまり、セラミック素体では、第1主面と第2主面との間に応力の差が形成される。これにより、セラミック素体では、第1軸方向の強度が向上するため、高い抗折強度が得られる。
【0008】
上記第1及び第2延出部の上記第2軸方向の寸法はそれぞれ、上記セラミック素体の上記第2軸方向の寸法の25%以上であってもよい。
上記第1及び第2外部電極は、スパッタ膜を含んでもよい。
上記積層セラミック電子部品では、T2/(T1+T2)が0.04以上であってもよい。
上記積層セラミック電子部品では、T2が2μm以上であってもよい。
これらの構成では、延出部によって抗折強度を高める効果をより有効に得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
抗折強度を確保可能な低背型の積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを模式的に示す斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサのA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサのB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサのセラミック素体の分解斜視図である。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサの
図2を拡大して示す部分断面図である。
【
図6】実施例に係る積層セラミックコンデンサの抗折強度測定について説明するための模式図である。
【
図7】実施例に係る積層セラミックコンデンサの抗折強度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0012】
[積層セラミックコンデンサ10の全体構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0013】
積層セラミックコンデンサ10は、低背型に構成され、例えば厚さ(Z軸方向の寸法)を50μm以下とすることができる。また、積層セラミックコンデンサ10では、例えば、長手方向(X軸方向)の寸法を0.4mm~2.0mmとすることができ、短手方向(Y軸方向)の寸法を0.2mm~1.0mmとすることができる。
【0014】
より具体的に、積層セラミックコンデンサ10のサイズは、例えば、0.4mm×0.2mm×50μm、0.6mm×0.3mm×50μm、1.0mm×0.5mm×50μmなどとすることができる。勿論、積層セラミックコンデンサ10は、これら以外にも様々なサイズとすることができる。
【0015】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を具備する。セラミック素体11は、積層セラミックコンデンサ10の本体として構成され、X軸方向に長尺に形成されている。外部電極14,15はそれぞれ、セラミック素体11の表面を部分的に覆っている。
【0016】
セラミック素体11は、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、Z軸方向を向いた2つの主面と、を含む6面体形状を有する。なお、セラミック素体11は厳密に6面体形状でなくてもよく、例えば、セラミック素体11の各面が曲面であってもよく、セラミック素体11が全体として丸みを帯びた形状であってもよい。
【0017】
第1外部電極14は、セラミック素体11の一方の端面を覆う第1被覆部14aと、第1被覆部14aからセラミック素体11のZ軸方向下側の主面のみにX軸方向に沿って延出する第1延出部14bと、を有する。これにより、第1外部電極14では、X-Z平面に平行な断面がL字状となっている。
【0018】
第2外部電極15は、セラミック素体11の他方の端面を覆う第2被覆部15aと、第2被覆部15aからセラミック素体11のZ軸方向下側の主面のみにX軸方向に沿って延出する第2延出部15bと、を有する。これにより、第2外部電極15でも、X-Z平面に平行な断面がL字状となっている。
【0019】
セラミック素体11のZ軸方向の寸法である厚さT1は、45μm以下である。このようにセラミック素体11の厚さT1を非常に小さくすることにより、外部電極14,15の延出部14b,15bの厚さを含めた積層セラミックコンデンサ10の厚さを50μm以下とすることが可能となる。
【0020】
この一方で、セラミック素体11の厚さT1を非常に小さくすると、セラミック素体11における厚さT1に対する長手方向の寸法の比率(アスペクト比)が大きくなる。これにより、セラミック素体11では、長手方向における抗折強度が小さくなるため、長手方向の中央部に加わる厚さ方向の応力によって亀裂などの機械的損傷が発生しやすくなる。
【0021】
セラミック素体11では、厚さT1が長手方向の寸法の5分の1以下である場合に、特に機械的損傷が発生しやすくなる。セラミック素体11には、様々なタイミングで厚さ方向の応力が加わることが考えられるが、特に、積層セラミックコンデンサ10の実装時に加わる厚さ方向の応力に耐えることが求められる。
【0022】
つまり、積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11の一方の主面の中央部を吸着保持するチップマウンタによって基板に実装される。このとき、チップマウンタからセラミック素体11の主面に厚さ方向の応力が加わる。セラミック素体11単体では、この応力に耐える抗折強度が得られない場合がある。
【0023】
本実施形態では、セラミック素体11におけるZ軸方向上側の第1主面とZ軸方向下側の第2主面との間にX軸方向の応力の差を設ける。これにより、セラミック素体11では、第1主面に加わる応力が、第1主面及び第2主面に沿ってX軸方向に分散されることにより、局所的に集中しにくくなるため、抗折強度が向上する。
【0024】
具体的に、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体における第1主面と第2主面との間の応力の差が外部電極14,15の延出部14b,15bによって形成される。つまり、セラミック素体11では、延出部14b,15bによって第2主面のみに圧縮応力又は収縮応力を加えることができる。
【0025】
延出部14b,15bからセラミック素体11の第2主面に充分な応力を加えるために、延出部14b,15bのX軸方向の寸法L2はそれぞれ、セラミック素体11のX軸方向の寸法L1の25%以上であることが好ましい。つまり、セラミック素体11の第2主面の半分以上の領域が延出部14b,15bに覆われていることが好ましい。
【0026】
延出部14b,15bからセラミック素体11の第2主面に加わる応力の種類及び大きさは、例えば、外部電極14,15の形成方法によって制御可能である。本実施形態では、外部電極14,15の下地膜をスパッタリング法で形成することにより、延出部14b,15bにおける応力の種類及び大きさを制御可能となる。
【0027】
積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向の寸法である厚さは、セラミック素体11の厚さT1と、延出部14b,15bの厚さT2と、の合計(T1+T2)として表すことができる。つまり、積層セラミックコンデンサ10では、厚さ(T1+T2)が50μm以下となるように、厚さT1,T2の比率を決定可能である。
【0028】
延出部14b,15bによってセラミック素体11の第2主面に充分な応力を加えるためには、積層セラミックコンデンサ10の厚さ(T1+T2)に対して延出部14b,15bの厚さT2がある程度確保されていることが好ましい。具体的に、積層セラミックコンデンサ10では、T2/(T1+T2)が0.04以上であることが好ましい。
【0029】
また、同様の観点から、積層セラミックコンデンサ10では、延出部14b,15bの厚さT2が、2μm以上であることが好ましく、4μm以上であることが更に好ましい。また、この場合、積層セラミックコンデンサ10の実装時に延出部14b,15bにおける半田喰われを防止することできるという効果も得られる。
【0030】
この一方で、積層セラミックコンデンサ10の厚さ(T1+T2)に対する延出部14b,15bの厚さT2の比率を大きくしすぎると、セラミック素体11の厚さT1が小さくなりすぎ、セラミック素体11単体としての抗折強度が不充分となる。したがって、セラミック素体11の厚さT1がある程度確保されている必要がある。
【0031】
具体的に、積層セラミックコンデンサ10では、T2/(T1+T2)が0.32以下となるように、厚さT1,T2の比率が決定される。また、積層セラミックコンデンサ10では、T2/(T1+T2)が0.3以下であることが好ましい。これにより、積層セラミックコンデンサ10の長手方向における抗折強度が向上する。
【0032】
つまり、積層セラミックコンデンサ10では、厚さT1,T2の比率を上記のようにすることにより、延出部14b,15bを設けない構成や、延出部14b,15bをセラミック素体11の両方の主面に設ける構成よりも高い抗折強度が得られやすくなる。したがって、延出部14b,15bによる効果がより有効に得られる。
【0033】
なお、延出部14b,15bの厚さT2は均一でなくてもよい。この場合、延出部14b,15bの厚さT2は、延出部14b,15bの厚さの最大値として規定することができる。また、外部電極14,15の被覆部14a,15aのX軸方向の寸法である厚さT3は、延出部14b,15bの厚さT2と同程度であっても、異なっていてもよい。
【0034】
外部電極14,15はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の端子として機能する。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金を用いることができる。
【0035】
外部電極14,15は、応力を発現可能な構成であればよく、特定の構成に限定されない。例えば、外部電極14,15は、単層構造であっても複層構造であってもよい。複層構造の外部電極14,15は、例えば、下地膜と表面膜との2層構造や、下地膜と中間膜と表面膜との3層構造として構成されていてもよい。
【0036】
下地膜は、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分として形成することができる。本実施形態では、スパッタリング法によって下地膜を形成する。しかし、下地膜は、スパッタリング法以外に、例えば、スプレー法などでも形成することもできる。
【0037】
中間膜は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などを主成分として形成することができる。表面膜は、例えば、銅(Cu)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、金(Au)、亜鉛(Zn)などを主成分として形成することができる。中間膜及び表面膜は、例えば、電解メッキ法などで形成することができる。
【0038】
セラミック素体11は、容量形成部16と、カバー部17と、サイドマージン部18と、を有する。容量形成部16は、セラミック素体11のY軸及びZ軸方向における中央部に配置されている。カバー部17は容量形成部16をZ軸方向から覆い、サイドマージン部18は容量形成部16をY軸方向から覆っている。
【0039】
より詳細に、カバー部17は、容量形成部16のZ軸方向両側にそれぞれ配置されている。サイドマージン部18は、容量形成部16のY軸方向両側にそれぞれ配置されている。カバー部17及びサイドマージン部18は、主に、容量形成部16を保護するとともに、容量形成部16の周囲の絶縁性を確保する機能を有する。
【0040】
容量形成部16には、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、が設けられている。内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。内部電極12,13は、容量形成部16においてZ軸方向に相互に対向している。
【0041】
図4は、セラミック素体11の分解斜視図である。セラミック素体11は、
図4に示すようなシートが積層された構造を有している。容量形成部16及びサイドマージン部18は、内部電極12,13が印刷されたシートで構成することができる。カバー部17は、内部電極12,13が印刷されていないシートで構成することができる。
【0042】
図2に示すように、第1内部電極12は、第1外部電極14側のセラミック素体11の端面に引き出され、第1外部電極14に接続されている。第2内部電極13は、第2外部電極15側のセラミック素体11の端面に引き出され、第2外部電極15に接続されている。これにより、内部電極12,13が外部電極14,15と導通している。
【0043】
また、第1内部電極12は、第2外部電極15との間に間隔をあけて配置され、第2外部電極15から絶縁されている。第2内部電極13は、第1外部電極14との間に間隔をあけて配置され、第1外部電極14から絶縁されている。つまり、第1内部電極12は第1外部電極14のみと導通し、第2内部電極13は第2外部電極15のみと導通している。
【0044】
内部電極12,13はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金が用いられる。
【0045】
容量形成部16は、誘電体セラミックスによって形成されている。積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13間の各誘電体セラミック層の容量を大きくするため、容量形成部16を形成する材料として高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0046】
また、容量形成部16を構成する誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系以外にも、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などであってもよい。
【0047】
カバー部17及びサイドマージン部18も、誘電体セラミックスによって形成されている。カバー部17及びサイドマージン部18を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、容量形成部16と同様の組成系の材料を用いることより、製造効率が向上するとともに、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0048】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15の間に電圧が印加されると、容量形成部16において内部電極12,13の間の複数の誘電体セラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15の間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0049】
なお、積層セラミックコンデンサ10の構成は、特定の構成に限定されず、積層セラミックコンデンサ10に求められるサイズや性能などに応じて、公知の構成を適宜採用可能である。例えば、各内部電極12,13の枚数や、内部電極12,13の間の誘電体セラミック層の厚さは、適宜決定可能である。
【0050】
[外部電極14,15の詳細構成]
図5は、
図2を拡大して示す積層セラミックコンデンサ10の部分断面図である。
図5は、第2外部電極15のZ軸方向上端部付近を示している。なお、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14が第2外部電極15と同様の構成を有するため、
図5には第2外部電極15の符号に併せて第1外部電極14の符号も付している。
【0051】
積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15が、スパッタリング法で形成されたスパッタ膜14c,15cと、電解メッキ法で形成されたメッキ膜14d,15dで構成されている。スパッタ膜14c,15cは、下地膜として構成される。メッキ膜14d,15dは、単層構造であっても複層構造であってもよい。
【0052】
スパッタ膜14c,15cは、セラミック素体11の端面に設けられている。メッキ膜14d,15dはスパッタ膜14c,15cの全体を覆い、スパッタ膜14c,15cの周囲に回り込んでいる。外部電極14,15では、スパッタ膜14c,15cを形成するスパッタリングの条件によって、延出部14b,15bの応力を制御可能である。
【0053】
スパッタ膜14c,15cのZ軸方向上端部は、セラミック素体11の第1主面からZ軸方向に寸法T4だけ間隔をあけて配置されていることが好ましい。これにより、メッキ膜14d,15dがスパッタ膜14c,15cのZ軸方向上側に回り込んでも、外部電極14,15がセラミック素体11の第1主面からZ軸方向に突出しにくくなる。
【0054】
外部電極14,15におけるセラミック素体11の第1主面からの突出を防止するために、スパッタ膜14c,15cとセラミック素体11の第1主面との間の寸法T4は、外部電極14,15の被覆部14a,15a上におけるメッキ膜14d,15dのX軸方向の寸法である厚さT5よりも大きいことが好ましい。
【0055】
また、外部電極14,15におけるセラミック素体11の第1主面からの突出を防止するために、メッキ膜14d,15dのZ軸方向上端部も、セラミック素体11の第1主面からZ軸方向に寸法T6だけ間隔をあけて配置されていることが好ましい。寸法T6は、5μm以上であることが更に好ましい。
【0056】
なお、外部電極14,15では、スパッタ膜14c,15cがZ軸方向にカバー部17まで到達していることが好ましい。これにより、すべての内部電極12,13がスパッタ膜14c,15cによって一括して接続されるため、内部電極12,13と外部電極14,15とをより確実に接続することができる。
【0057】
[実施例]
積層セラミックコンデンサ10について、厚さ(T1+T2)を45μmに統一し、厚さ(T1+T2)に対する延出部14b,15bの厚さT2の比率T2/(T1+T2)が異なる4種類のサンプルを作製した。いずれのサンプルにおいても、X軸方向の寸法を1.0mmとし、Y軸方向の寸法を0.5mmとした。
【0058】
各サンプルのセラミック素体11は、内部電極を形成するための導電性ペーストが適宜印刷された誘電体セラミックスのグリーンシートの積層体を切断して得られたチップを焼成することによって作製した。セラミック素体11の焼成温度は、1000℃~1400℃とした。
【0059】
積層セラミックコンデンサ10について、セラミック素体11の焼成時における収縮量を考慮した上で、厚さ0.5~3μmのグリーンシートの積層数を調整することによって、セラミック素体11の厚さT1が41μm、38μm、32μm、29μm、25μmの5種類のサンプルを作製した。
【0060】
各サンプルの外部電極14,15は、スパッタリング法で成膜した下地膜にメッキ処理を施すことにより形成した。各サンプルの外部電極14,15の延出部14b,15bの厚さT2は、メッキ処理の条件(電流及び時間など)を調整することによって4μm、7μm、13μm、16μm、20μmとした。
【0061】
以上により得られた積層セラミックコンデンサ10のサンプルについて、抗折強度測定を行った。
図6は、抗折強度測定について説明するための模式図である。抗折強度測定には、Z軸方向下方に窪む凹部S1が設けられた架台Sと、架台Sの凹部S1のZ軸方向上方に配置された押圧子Pと、を用いる。
【0062】
架台Sの凹部S1のX軸方向の寸法は、各サンプルの長手方向の寸法の0.6倍である。また、押圧子PのZ軸方向下端部は、半径500μmの円弧状の断面となるように形成されている。各サンプルは、長手方向において凹部S1を跨ぎ、押圧子Pがセラミック素体11の主面の中央部に対向するように、架台S上にセットされる。
【0063】
図6は、積層セラミックコンデンサ10のサンプルを架台S上にセットした状態を示す。この状態から、押圧子PをZ軸方向下方に移動させ、各サンプルのZ軸方向上面に対して、各サンプルに機械的損傷が発生するまでZ軸方向下方への応力を加える。この間、押圧子Pから各サンプルに加えている荷重を逐次測定した。
【0064】
そして、各サンプルに機械的損傷が発生したときの荷重を各サンプルの抗折強度とした。
図7は、各サンプルの抗折強度の測定結果を示すグラフである。
図7の横軸は各サンプルにおける厚さ(T
1+T
2)に対する延出部14b,15bの厚さT
2の比率T
2/(T
1+T
2)を示し、
図7の縦軸は各サンプルの抗折強度を規格化した相対値を示している。
【0065】
図7を参照すると、T
2/(T
1+T
2)の増加に伴って、抗折強度が低下していることがわかる。より詳細に、0<T
2/(T
1+T
2)≦0.32の範囲では抗折強度の低下が直線的であるのに対し、T
2/(T
1+T
2)が0.32を超えると抗折強度が急激に低下していることがわかる。
【0066】
これにより、積層セラミックコンデンサ10では、T2/(T1+T2)を0.32以下とすることにより、高い抗折強度が得られる傾向があることが確認された。また、積層セラミックコンデンサ10では、T2/(T1+T2)が0.04以上であれば、高い抗折強度が得られることが確認された。
【0067】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0068】
例えば、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15がセラミック素体11の端面からZ軸方向下側の主面のみならずY軸方向を向いた両側面のうち少なくとも一方にも延出していてもよい。つまり、積層セラミックコンデンサ10の外部電極14,15では、X-Y平面に沿った断面がU字状又はL字状であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明は一対の外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0070】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
14a,15a…被覆部
14b,15b…延出部
14c,15c…スパッタ膜
14d,15d…メッキ膜
16…容量形成部
17…カバー部
18…サイドマージン部