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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】加熱調理容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
A47J37/06 361
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018140900
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020014748
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宏治
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104108(JP,A)
【文献】特開2012-247073(JP,A)
【文献】特開2002-010921(JP,A)
【文献】実開昭50-026445(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱庫及び加熱源を備えるグリル装置の前記加熱庫内で使用され、前記加熱源によって加熱されて被調理物を調理する加熱調理容器であって、
前記被調理物を収容する容器本体と、
前記容器本体を上方から覆う蓋体とを備え、
記蓋体は、第1面と、前記第1面とは反対側を向第2面とを有し、
前記第1蓋面と前記第2蓋面とは、輻射率が異なり、
前記蓋体は、前記第1面が上を向き、かつ前記第2面が下を向く状態と、前記第2面が上を向き、かつ前記第1面が下を向く状態とを選択可能に構成され
前記容器本体は、底壁と、
前記底壁と一体をなして前記底壁の周縁から上向きに延びるように形成され、前記蓋体を支持可能な周壁とを有し、
前記蓋体は、前記第1蓋面を囲む第1リブであって、前記第1蓋面が下を向く状態で前記蓋体が前記容器本体の前記周壁に支持されたときに、下向きに突出して前記周壁に嵌入する前記第1リブと、
前記第2蓋面を囲む第2リブであって、前記第2蓋面が下を向く状態で前記蓋体が前記容器本体の前記周壁に支持されたときに、下向きに突出して前記周壁に嵌入する前記第2リブとを有していることを特徴とする加熱調理容器。
【請求項2】
前記第1蓋面の輻射率及び前記第2蓋面の輻射率は、塗膜によって付与されている請求項記載の加熱調理容器。
【請求項3】
前記第1蓋面の輻射率及び前記第2蓋面の輻射率は、面粗度によって付与されている請求項記載の加熱調理容器。
【請求項4】
加熱庫及び加熱源を備えるグリル装置の前記加熱庫内で使用され、前記加熱源によって加熱されて被調理物を調理する加熱調理容器であって、
前記被調理物を収容する容器本体と、
前記容器本体を上方から覆う蓋体とを備え、
前記蓋体は、第1蓋面と、前記第1蓋面とは反対側を向く第2蓋面とを有し、
前記第1蓋面と前記第2蓋面とは、輻射率が異なり、
前記蓋体は、前記第1蓋面が上を向き、かつ前記第2蓋面が下を向く状態と、前記第2蓋面が上を向き、かつ前記第1蓋面が下を向く状態とを選択可能に構成され、
前記容器本体は、第1容器本体面と、前記第1容器本体面とは反対側を向第2容器本体面とが形成された底壁と、
前記底壁と一体をなして前記底壁の周縁から前記第1容器本体面側に延びるように形成され、前記蓋体を支持可能な第1周壁と、
前記底壁と一体をなして前記底壁の周縁から前記第2容器本体面側に延びるように形成され、前記蓋体を支持可能な第2周壁とを有し、
前記第1容器本体面は凹凸面であり、前記第2容器本体面は平坦面であり、
前記容器本体は、前記第1容器本体面が上を向き、かつ前記第2容器本体面が下を向く状態と、前記第2容器本体面が上を向き、かつ前記第1容器本体面が下を向く状態とを選択可能に構成され、
前記蓋体は、前記第1蓋面を囲む第1リブであって、前記第1蓋面が下を向く状態で前記蓋体が前記容器本体の前記第1周壁及び前記第2周壁に支持されたときに、下向きに突出して前記第1周壁及び前記第2周壁に嵌入する前記第1リブと、
前記第2蓋面を囲む第2リブであって、前記第2蓋面が下を向く状態で前記蓋体が前記容器本体の前記第1周壁及び前記第2周壁に支持されたときに、下向きに突出して前記第1周壁及び前記第2周壁に嵌入する前記第2リブとを有していることを特徴とする加熱調理容器。
【請求項5】
前記容器本体に収容されて前記被調理物を支持する中敷部材をさらに備え、
前記中敷部材は、第1中敷面と、前記第1中敷面とは反対側を向第2中敷面とを有し、
前記第1中敷面は凹凸面であり、前記第2中敷面は平坦面であり、
前記第1中敷面が上を向き、かつ前記第2中敷面が下を向く状態と、前記第2中敷面が上を向き、かつ前記第1中敷面が下を向く状態とを選択可能に構成されている請求項1乃至のいずれか1項記載の加熱調理容器。
【請求項6】
前記加熱源は、前記加熱庫内の前記加熱調理容器を上方から加熱する第1加熱源と、
前記加熱庫内の前記加熱調理容器を側方又は下方から加熱する第2加熱源とを有し、
前記第1加熱源は、遠赤外線を放射して前記加熱調理容器を加熱する請求項1乃至のいずれか1項記載の加熱調理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来の加熱調理容器が開示されている。これらの加熱調理容器は、被調理物を収容する容器本体と、容器本体を上方から覆う蓋体とを備えている。これらの加熱調理容器は、加熱庫及び加熱源を備えるグリル装置の加熱庫内で使用され、加熱源によって加熱されて被調理物を調理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-212840号公報
【文献】特開2014-200627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の加熱調理容器では、被調理物に対する調理態様が1組の容器本体及び蓋体によって特定の態様に限定される。このため、これらの加熱調理容器では、例えば、被調理物に焼き色をつけるか否か、被調理物の水っぽさや油っぽさを抑制するか否か等の複数の調理態様をユーザニーズに応じて選択することが難しいという問題がある。ひいては、被調理物に対する調理態様が異なる複数の加熱調理容器を用意する必要性が高くなるので、調理の準備や調理後の収納等が煩雑になり易い。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、被調理物を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる加熱調理容器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱調理容器は、加熱庫及び加熱源を備えるグリル装置の前記加熱庫内で使用され、前記加熱源によって加熱されて被調理物を調理する加熱調理容器であって、
前記被調理物を収容する容器本体と、
前記容器本体を上方から覆う蓋体とを備え、
前記容器本体及び前記蓋体の少なくとも一方は、第1特性を有する第1面と、前記第1面とは反対側を向き、第2特性を有する第2面とを有し、
前記第1特性の前記被調理物に対する調理態様と、前記第2特性の前記被調理物に対する調理態様とが異なり、
前記第1面が上を向き、かつ前記第2面が下を向く状態と、前記第2面が上を向き、かつ前記第1面が下を向く状態とを選択可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の加熱調理容器では、加熱庫内で使用されるときにユーザが第1面と第2面とを適宜反転させて使用することで、被調理物に対する調理態様を複数の選択肢の中から容易に選択できる。
【0008】
例えば、蓋体が第1面と第2面とを有し、第1面の第1特性及び第2面の第2特性が異なる輻射率である場合、ユーザがその第1面及び第2面の上下関係を選択することにより、被調理物に焼き色をつけるか否かを容易に選択できる。
【0009】
また、例えば、容器本体が第1面と第2面とを有し、第1面の第1特性及び第2面の第2特性が被調理物との接触面積である場合、ユーザがその第1面及び第2面の上下関係を選択することにより、被調理物の水っぽさや油っぽさを抑制するか否かを容易に選択できる。
【0010】
したがって、本発明の加熱調理容器では、被調理物を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる。ひいては、被調理物に対する調理態様が異なる複数の加熱調理容器を用意する必要性が低下するので、調理の準備や調理後の収納等が煩雑になることを抑制できる。
【0011】
蓋体は、第1面である第1蓋面と、第1蓋面とは反対側を向き、第2面である第2蓋面とを有していることが望ましい。そして、第1蓋面の第1特性及び第2蓋面の第2特性は、異なる輻射率であることが望ましい。
【0012】
この場合、ユーザが第1蓋面及び第2蓋面の上下関係を選択することにより、被調理物に焼き色をつけるか否かを容易に選択できる。具体的には、第1蓋面及び第2蓋面のうちの輻射率が低い方が上を向き、かつ第1蓋面及び第2蓋面のうちの輻射率が高い方が下を向く状態をユーザが選択した場合、加熱源によって加熱された蓋体は、上方に輻射熱をあまり放射せず、下方の被調理物に向けて輻射熱を優先的に放射する。その結果、被調理物に焼き色を好適につけることができる。例えば、丸み魚の焼き魚を調理する際に、狐色の焼き色をつけ易い。その一方、第1蓋面及び第2蓋面のうちの輻射率が高い方が上を向き、かつ第1蓋面及び第2蓋面のうちの輻射率が低い方が下を向く状態をユーザが選択した場合、加熱源によって加熱された蓋体は、下方の被調理物に向けて輻射熱をあまり放射しない。その結果、被調理物に焼き色をつけることを好適に抑制できる。例えば、切り身、みりん干し、粕漬等の魚を調理する際に、焦げ色がつき難い。
【0013】
第1蓋面の第1特性及び第2蓋面の第2特性の輻射率は、塗膜によって付与されていることが望ましい。
【0014】
この場合、例えば、第1蓋面と第2蓋面とに輻射率の異なる塗料を塗布することにより、第1蓋面の輻射率と第2蓋面の輻射率とを容易に異ならせることができる。
【0015】
第1蓋面の第1特性及び第2蓋面の第2特性の輻射率は、面粗度によって付与されていることが望ましい。
【0016】
この場合、第1蓋面及び第2蓋面の表面仕上げとして、例えば、ショットブラスト、研磨仕上げ、鏡面研磨仕上げ等を適宜選択することにより、第1蓋面の輻射率と第2蓋面の輻射率とを容易に異ならせることができる。
【0017】
容器本体は、第1面である第1容器本体面と、第1容器本体面とは反対側を向き、第2面である第2容器本体面とを有していることが望ましい。そして、第1容器本体面の第1特性及び第2容器本体面の第2特性は、被調理物との接触面積であることが望ましい。
【0018】
この場合、ユーザが第1容器本体面及び第2容器本体面の上下関係を選択することにより、被調理物の水っぽさや油っぽさを抑制するか否かを容易に選択できる。具体的には、第1容器本体面及び第2容器本体面のうちの被調理物との接触面積が小さい方が上を向く状態をユーザが選択した場合、被調理物から出てくる水分や油分等を被調理物から遠ざけ易い。その結果、被調理物の水っぽさや油っぽさを好適に抑制できる。その一方、第1容器本体面及び第2容器本体面のうちの被調理物との接触面積が大きい方が上を向く状態をユーザが選択した場合、被調理物に対する伝熱面積を大きくし易い。その結果、被調理物を効率よく加熱できるとともに加熱ムラを抑制でき、均一な焼き色を付けることができる。さらに、第1容器本体面及び第2容器本体面の表面形状として、例えば平坦面、複数の溝が形成された凹凸面、複数の凸部が突出する凹凸面等を適宜選択することにより、第1容器本体面と被調理物との接触面積と、第2容器本体面と被調理物との接触面積とを容易に異ならせることができる。
【0019】
容器本体は、第1容器本体面及び第2容器本体面が形成された底壁と、底壁と一体をなして底壁の周縁から第1容器本体面側に延びるように形成され、蓋体を支持可能な第1周壁と、底壁と一体をなして底壁の周縁から第2容器本体面側に延びるように形成され、蓋体を支持可能な第2周壁とを有していることが望ましい。
【0020】
この場合、ユーザが第1容器本体面と第2容器本体面とを適宜反転させて使用する際に、第1周壁又は第2周壁によって蓋体を好適に支持できる。
【0021】
本発明の加熱調理容器は、容器本体に収容されて被調理物を支持する中敷部材をさらに備えていることが望ましい。中敷部材は、第3特性を有する第1中敷面と、第1中敷面とは反対側を向き、第4特性を有する第2中敷面とを有していることが望ましい。第3特性の被調理物に対する調理態様と、第4特性の被調理物に対する調理態様とが異なっていることが望ましい。そして、第1中敷面が上を向き、かつ第2中敷面が下を向く状態と、第2中敷面が上を向き、かつ第1中敷面が下を向く状態とを選択可能に構成されていることが望ましい。
【0022】
この場合、ユーザが第1中敷面及び第2中敷面の上下関係を選択して容器本体及び蓋体と共に使用することにより、被調理物に対する調理態様の選択肢をさらに増やすことができる。
【0023】
第3特性及び第4特性は、被調理物との接触面積であることが望ましい。
【0024】
この場合、ユーザが第1中敷面及び第2中敷面の上下関係を選択することにより、被調理物の水っぽさや油っぽさを抑制するか否かを容易に選択できる。具体的には、第1中敷面及び第2中敷面のうちの被調理物との接触面積が小さい方が上を向く状態をユーザが選択した場合、被調理物から出てくる水分や油分等を被調理物から遠ざけ易い。その結果、被調理物の水っぽさや油っぽさを好適に抑制できる。その一方、第1中敷面及び第2中敷面のうちの被調理物との接触面積が大きい方が上を向く状態をユーザが選択した場合、被調理物に対する伝熱面積を大きくし易い。その結果、被調理物を効率よく加熱できるとともに加熱ムラを抑制でき、均一な焼き色を付けることができる。さらに、第1中敷面及び第2中敷面の表面形状として、例えば平坦面、複数の溝が形成された凹凸面、複数の凸部が突出する凹凸面等を適宜選択することにより、第1中敷面と被調理物との接触面積と、第2中敷面と被調理物との接触面積とを容易に異ならせることができる。
【0025】
加熱源は、加熱庫内の加熱調理容器を上方から加熱する第1加熱源と、加熱庫内の加熱調理容器を側方又は下方から加熱する第2加熱源とを有していることが望ましい。そして、第1加熱源は、遠赤外線を放射して加熱調理容器を加熱することが望ましい。
【0026】
この場合、第1加熱源から放射される遠赤外線によって、蓋体を介して被調理物を好適に加熱できる。特に、蓋体が第1蓋面及び第2蓋面を有し、第1蓋面及び第2蓋面のうちの輻射率が高い方が下を向く状態をユーザが選択した場合に、蓋体が被調理物に向けて輻射熱を効率よく放射できるので、被調理物に焼き色を一層好適につけることができる。また、第2加熱源によって、容器本体を介して被調理物を好適に加熱できる。さらに、第2加熱源によって加熱庫内の対流が促進されるので、その対流によって加熱された蓋体が被調理物を上方から好適に加熱できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の加熱調理容器によれば、被調理物を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施例1の加熱調理容器とガスコンロとを示す斜視図であって、蓋体の第1蓋面が上を向き、かつ第2蓋面が下を向く状態を示す図である。
図2図2は、実施例1の加熱調理容器がガスコンロの加熱庫内で使用される状態を示す模式断面図であって、蓋体の第1蓋面が上を向き、かつ第2蓋面が下を向く状態を示す図である。
図3図3は、実施例1の加熱調理容器を示す斜視図であって、蓋体の第2蓋面が上を向き、かつ第1蓋面が下を向く状態を示す図である。
図4図4は、実施例1の加熱調理容器が加熱庫内で使用される状態を示す模式部分断面図であって、蓋体の第2蓋面が上を向き、かつ第1蓋面が下を向く状態を示す図である。
図5図5は、実施例2の加熱調理容器を示す斜視図であって、蓋体の第1蓋面が上を向き、かつ第2蓋面が下を向くとともに、容器本体の第1容器本体面が上を向き、かつ第2容器本体面が下を向く状態を示す図である。
図6図6は、実施例2の加熱調理容器が加熱庫内で使用される状態を示す模式部分断面図であって、蓋体の第1蓋面が上を向き、かつ第2蓋面が下を向くとともに、容器本体の第1容器本体面が上を向き、かつ第2容器本体面が下を向く状態を示す図である。
図7図7は、図5と同様の斜視図であって、蓋体の第2蓋面が上を向き、かつ第1蓋面が下を向くとともに、容器本体の第2容器本体面が上を向き、かつ第1容器本体面が下を向く状態を示す図である。
図8図8は、図6と同様の模式部分断面図であって、蓋体の第2蓋面が上を向き、かつ第1蓋面が下を向くとともに、容器本体の第2容器本体面が上を向き、かつ第1容器本体面が下を向く状態を示す図である。
図9図9は、実施例3の加熱調理容器を示す斜視図であって、蓋体の第1蓋面が上を向き、かつ第2蓋面が下を向くとともに、中敷部材の第1中敷面が上を向き、かつ第2中敷面が下を向く状態を示す図である。
図10図10は、実施例3の加熱調理容器が加熱庫内で使用される状態を示す模式部分断面図であって、蓋体の第1蓋面が上を向き、かつ第2蓋面が下を向くとともに、中敷部材の第1中敷面が上を向き、かつ第2中敷面が下を向く状態を示す図である。
図11図11は、図9と同様の斜視図であって、蓋体の第2蓋面が上を向き、かつ第1蓋面が下を向くとともに、中敷部材の第2中敷面が上を向き、かつ第1中敷面が下を向く状態を示す図である。
図12図12は、図10と同様の模式部分断面図であって、蓋体の第2蓋面が上を向き、かつ第1蓋面が下を向くとともに、中敷部材の第2中敷面が上を向き、かつ第1中敷面が下を向く状態を示す図である。
図13図13は、実施例4の加熱調理容器が加熱庫内で使用される状態の一例を示す模式部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例1~4を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の加熱調理容器1は、本発明の加熱調理容器の具体的態様の一例である。加熱調理容器1は、所謂ビルトイン式のガスコンロ9の加熱庫95内で使用される。ガスコンロ9は、本発明に係るグリル装置の具体的態様の一例である。
【0031】
ガスコンロ9は、略箱状体であるコンロ本体90と、コンロ本体90の上面を覆うように配置された天板99と、コンロ本体90の前面を覆うように配置された前面パネル98とを備えている。
【0032】
図1では、ガスコンロ9の前面パネル98側を前方と規定し、天板99側を上方と規定して、前後方向及び上下方向を表示する。また、前面パネル98に対面する状態でガスコンロ9を見たときに左に来る側を左方と規定して、左右方向を表示する。そして、図2以降の各図に示す前後、左右及び上下の各方向は、全て図1に対応させて表示する。
【0033】
<ガスコンロの構成>
図1及び図2に示すように、ガスコンロ9は、天板99上に設けられた複数のコンロバーナ97を備えている。各コンロバーナ97は、被調理物をフライパンや鍋等で調理するためのものである。
【0034】
また、ガスコンロ9は、コンロ本体90の内部に設けられた加熱庫95を備えている。加熱庫95は、被調理物のグリル調理やオーブン調理を行うためのものである。図1に示すように、加熱庫95は、前面パネル98に開く開口部95Hを有している。開口部95Hは、グリル扉96によって閉鎖されている。加熱庫95の内部空間は、図示しない排気筒を通じて天板99の上面に設けられた排気口99Hと連通している。
【0035】
図2に示すように、加熱庫95内の底部側には、トレー保持部材94が前後方向にスライド可能に設けられている。トレー保持部材94は、被調理物の油や水分を受けるための皿状のグリルトレー94Aを保持している。
【0036】
図1に二点鎖線で簡略して示すように、トレー保持部材94の前端部は、グリル扉96の下端部に接続されている。グリル扉96を前向きに引くことにより、開口部95Hを開放し、トレー保持部材94及びグリルトレー94Aを加熱庫95の外部に引き出すことができる。そして、グリル扉96を後向きに押すことにより、トレー保持部材94及びグリルトレー94Aを加熱庫95内に収容し、開口部95Hを閉鎖することができる。
【0037】
図2に示すように、本実施例では、グリルトレー94Aの上面に、容器固定部材93が取り付けられている。容器固定部材93は、金属製の複数の線材が互いに接合されてなる。容器固定部材93は、加熱庫95内で使用される加熱調理容器1を下から支持可能である。
【0038】
なお、容器固定部材93の代わりに、図示しない焼き網をグリルトレー94Aの上面に取り付け、その焼き網に被調理物を載置することによっても、加熱庫95による被調理物の調理を実施できる。
【0039】
加熱庫95の上壁95Uの中央部には、上火バーナ91が設けられている。加熱庫95の左の側壁95Lにおける上下方向の中間部よりも下方にずれた位置には、下火バーナ92Lが設けられている。加熱庫95の右の側壁95Rにおける上下方向の中間部よりも下方にずれた位置には、下火バーナ92Rが設けられている。
【0040】
上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rは、本発明の「加熱源」の一例である。上火バーナ91は、本発明の「第1加熱源」の一例である。下火バーナ92L、92Rは、本発明の「第2加熱源」の一例である。
【0041】
上火バーナ91は、セラミック製の燃焼板91Aを有している。燃焼板91Aは、加熱庫95の上壁95Uの下面に沿って配置されている。図示は省略するが、燃焼板91Aは、上面視略U字状である。燃焼板91Aの下面の略全域には、複数の炎孔91Hが開設されている。
【0042】
上火バーナ91が点火した際には、燃焼板91Aの炎孔91Hから噴射されたガスの燃焼炎が燃焼板91Aの下面の略全域に形成される。これにより、上火バーナ91は、輻射熱H1及び燃焼熱を加熱庫95内の中央の領域へ向けて下向きに放射する。これにより、上火バーナ91は、加熱庫95内の容器固定部材93に支持された加熱調理容器1や、加熱庫95内の図示しない焼き網に載置された被調理物を上方から加熱する。
【0043】
左方の下火バーナ92Lは、加熱庫95の側壁95Lに沿って前後方向に延びるように配置されている。右方の下火バーナ92Rは、加熱庫95の側壁95Rに沿って前後方向に延びるように配置されている。下火バーナ92L、92Rのそれぞれにおける加熱庫95の中央を向く側端面の略全域には、複数の炎孔92Hが開設されている。
【0044】
下火バーナ92L、92Rが点火した際には、下火バーナ92L、92Rのそれぞれの炎孔92Hから噴射されたガスの燃焼排ガスが加熱庫95内の中央及び下方の領域に向けて放出される。これにより、下火バーナ92L、92Rは、加熱庫95内の容器固定部材93に支持された加熱調理容器1や、加熱庫95内の図示しない焼き網に載置された被調理物を側方及び下方から加熱する。
【0045】
<加熱調理容器の容器本体及び蓋体の構成>
図1図4に示すように、加熱調理容器1は、容器本体30及び蓋体10を備えている。そして、図2及び図4に示すように、加熱調理容器1は、容器本体30が被調理物F1を収容し、蓋体10が容器本体30を上方から覆う状態で、加熱庫95内で使用され、上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rによって加熱されることにより被調理物F1を調理するものである。
【0046】
図2に一例として示す被調理物F1(F1A)は、丸み魚等のきれいな焼き色をつけたい食材である。図4に一例として示す被調理物F1(F1B)は、切り身魚、みりん干し、粕漬等の焦げ易い食材である。
【0047】
本実施例では、容器本体30及び蓋体10はそれぞれ、鉄やアルミニウム合金等の金属材料によって形成されている。
【0048】
図1図4に示すように、容器本体30は、上面が開放された略箱状体である。容器本体30は、底壁35及び周壁36を有している。
【0049】
底壁35は、水平に延在する略矩形平板形状である。底壁35の上面は平坦面であり、被調理物F1との接触面積を大きく確保するようになっている。
【0050】
周壁36は、底壁35と一体をなして底壁35の周縁から上向きに延びるように形成された略角筒状の壁である。周壁36は、その先端縁によって、蓋体10を支持可能である。周壁36の高さは、容器本体30に収容される被調理物F1と蓋体10との間に十分な隙間を確保できる大きさに設定されている。
【0051】
容器本体30の左側面には、持ち手30Lが形成されている。容器本体30の右側面には、持ち手30Rが形成されている。左の持ち手30Lと右の持ち手30Rとは、左右方向において互いに離間するように突出し、かつ前後方向にリブ状に延びている。持ち手30L、30Rは、加熱調理容器1を移動させる際に使用される。
【0052】
蓋体10は、水平に延在する略矩形状の平板である。蓋体10の前後方向及び左右方向の長さは、容器本体30の底壁35よりも大きく設定されている。
【0053】
蓋体10における上下方向の一方を向く面には、第1リブ11R及び第1蓋面11が形成されている。蓋体10における上下方向の他方を向く面には、第2リブ12R及び第2蓋面12が形成されている。
【0054】
図1に示すように、第1リブ11Rは、蓋体10における上下方向の一方を向く面から略角筒状をなして短く突出している。第1蓋面11は、第1リブ11Rに囲まれた略矩形状の面である。第1蓋面11は、本発明の「第1面」の一例である。
【0055】
図4に示すように、第1蓋面11が下を向く状態で蓋体10が容器本体30の周壁36に支持されたときに、下向きに突出する第1リブ11Rが周壁36に嵌入することにより、蓋体10が容器本体30に対して位置決めされる。
【0056】
図3に示すように、第2リブ12Rは、蓋体10における上下方向の他方を向く面から略角筒状をなして短く突出している。第2蓋面12は、第2リブ12Rに囲まれた略矩形状の面であって、第1蓋面11とは反対側を向く面である。第2蓋面12は、本発明の「第2面」の一例である。
【0057】
図2に示すように、第2蓋面12が下を向く状態で蓋体10が容器本体30の周壁36に支持されたときに、下向きに突出する第2リブ12Rが周壁36に嵌入することにより、蓋体10が容器本体30に対して位置決めされる。
【0058】
こうして、加熱調理容器1は、図1及び図2に示すように、第1蓋面11が上を向き、かつ第2蓋面12が下を向く状態と、図3及び図4に示すように、第2蓋面12が上を向き、かつ第1蓋面11が下を向く状態とを選択可能となっている。
【0059】
<第1蓋面の第1特性>
図2及び図4に示すように、蓋体10における第1蓋面11が形成される下地面11Bは、研磨仕上げが施された平滑面、又は鏡面研磨仕上げが施された鏡面となっており、面粗度が低くなっている。そして、第1蓋面11は、下地面11Bに低輻射率塗料が塗布されてなる塗膜によって形成されている。
【0060】
第1蓋面11は、下地面11Bの面粗度を反映した面粗度を有する平滑面又は鏡面である。また、第1蓋面11を形成する塗膜に研磨仕上げ又は鏡面研磨仕上げをさらに施して、第1蓋面11の面粗度をさらに低くしてもよい。
【0061】
第1蓋面11を形成する塗膜は、耐熱塗料をベースとして、銀色の金属粉末等の光を反射し易い材料や、輻射熱を発生し難い材料が混入されてなる。
【0062】
第1蓋面11は、このような面粗度及び塗膜によって、第1特性を付与されている。第1蓋面11の第1特性は、輻射率が低いという特性である。これにより、図4に示すように、第1蓋面11が下を向く状態で蓋体10が容器本体30の周壁36に支持されたときに、第1蓋面11の第1特性の被調理物F1に対する調理態様は、蓋体10から被調理物F1に向けて放射する輻射熱H2を弱くするというものになる。
【0063】
<第2蓋面の第2特性>
図2及び図4に示すように、蓋体10における第2蓋面12が形成される下地面12Bは、ショットピーニング加工等が施された凹凸面となっており、第1蓋面11と比較して、面粗度が大幅に高くなっている。そして、第2蓋面12は、下地面12Bに高輻射率塗料が塗布されてなる塗膜によって形成されている。この高輻射率塗料は、第1蓋面11に用いられる低輻射率塗料と比較して、塗膜の輻射率が大幅に高い。
【0064】
第2蓋面12は、下地面12Bの面粗度を反映した面粗度を有する凹凸面である。
【0065】
第2蓋面12を形成する塗膜は、耐熱塗料をベースとして、黒色の炭素系粉末等の光を吸収し易い材料、食材加熱(焼き色付け)に有効な電磁波の遠赤外線(3~20μm)波長域で高い輻射率を有する材料、輻射熱を発生し易い材料等が混入されてなる。
【0066】
第2蓋面12は、このような面粗度及び塗膜によって、第2特性を付与されている。第2蓋面12の第2特性は、第1蓋面11と比較して、輻射率が大幅に高いという特性である。
【0067】
これにより、図2に示すように、第2蓋面12が下を向く状態で蓋体10が容器本体30の周壁36に支持されたときに、第2蓋面12の第2特性の被調理物F1に対する調理態様は、第1蓋面11の第1特性の被調理物F1に対する調理態様と比較して、蓋体10から被調理物F1に向けて大幅に強い輻射熱H2を放射するというものになる。
【0068】
<作用効果>
実施例1の加熱調理容器1では、加熱庫95内で使用されるときにユーザが蓋体10の第1蓋面11と第2蓋面12とを適宜反転させて使用することで、被調理物F1に対する調理態様を2つの選択肢の中から容易に選択できる。
【0069】
具体的には、蓋体10において、第1蓋面11の第1特性及び第2蓋面12の第2特性が異なる輻射率であるので、図2及び図4に示すように、ユーザが第1蓋面11及び第2蓋面12の上下関係を選択することにより、蓋体10から被調理物F1に向けて放射される輻射熱H2の強弱を選択できる。その結果、ユーザは、被調理物F1に焼き色をつけるか否かを容易に選択できる。
【0070】
図2に示す例は、輻射率が低い第1蓋面11が上を向き、かつ輻射率が第1蓋面11よりも大幅に高い第2蓋面12が下を向く状態をユーザが選択した場合である。この場合、第2蓋面12の第2特性に対応する調理態様が被調理物F1に対して施される。このため、上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rによって加熱された蓋体10は、下方の被調理物F1に向けて強い輻射熱H2を放射できる。この際、第1蓋面11の輻射率が低いことにより、蓋体10の上方に放射される輻射熱を弱くできるので、蓋体10は、下方の被調理物F1に向けて輻射熱H2を優先的に放射できる。その結果、被調理物F1に焼き色を好適につけることができる。例えば、丸み魚等である被調理物F1(F1A)に、狐色の焼き色をつけ易い。
【0071】
図4に示す例は、輻射率が第1蓋面11よりも大幅に高い第2蓋面12が上を向き、かつ輻射率が低い第1蓋面11が下を向く状態をユーザが選択した場合である。この場合、第1蓋面11の第1特性に対応する調理態様が被調理物F1に対して施される。このため、上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rによって加熱された蓋体10は、下方の被調理物F1に向けて輻射熱H2をあまり放射しない。その結果、被調理物F1に焼き色をつけることを好適に抑制できる。例えば、切り身魚等である被調理物F1(F1B)に焦げ色がつき難い。
【0072】
したがって、実施例1の加熱調理容器1では、被調理物F1を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる。ひいては、被調理物F1に対する調理態様が異なる複数の加熱調理容器を用意する必要性が低下するので、調理の準備や調理後の収納等が煩雑になることを抑制できる。
【0073】
また、この加熱調理容器1では、第1蓋面11の第1特性及び第2蓋面12の第2特性の輻射率は、塗膜及び面粗度によって付与されている。このため、例えば、第1蓋面11と第2蓋面12とに輻射率の異なる塗料を塗布することにより、第1蓋面11の輻射率と第2蓋面12の輻射率とを容易に異ならせることができる。また、第1蓋面11及び第2蓋面12の表面仕上げとして、例えば、ショットブラスト、研磨仕上げ、鏡面研磨仕上げ等を適宜選択することにより、第1蓋面11の輻射率と第2蓋面12の輻射率とを容易に異ならせることができる。
【0074】
さらに、この加熱調理容器1では、上火バーナ91から放射される遠赤外線の輻射熱H1によって、蓋体10を介して被調理物F1を好適に加熱できる。特に、第1蓋面11よりも輻射率が大幅に高い第2蓋面12が下を向く状態をユーザが選択した場合に、蓋体10が上火バーナ91から放射される遠赤外線の輻射熱H1を有効に利用して、被調理物F1に向けて輻射熱H2を効率よく放射できる。その結果、被調理物F1に焼き色を一層好適につけることができる。また、下火バーナ92L、92Rによって、容器本体30を介して被調理物F1を側方及び下方から好適に加熱できる。さらに、下火バーナ92L、92Rによって加熱庫95内の対流が促進されるので、その対流によって加熱された蓋体10が被調理物F1を上方から好適に加熱できる。
【0075】
(実施例2)
図5図8に示すように、実施例2の加熱調理容器は、実施例1の加熱調理容器1に係る容器本体30の代わりに容器本体40を採用し、容器本体40を実施例1に係る蓋体10と共に使用する。実施例2のその他の構成は、実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0076】
<容器本体の構成>
容器本体40は、底壁45、第1周壁46及び第2周壁47を有している。
【0077】
底壁45は、実施例1に係る容器本体30の底壁35と同一サイズの略矩形平板状である。底壁45には、第1容器本体面41及び第2容器本体面42が形成されている。
【0078】
第1容器本体面41は、底壁45における上下方向の一方を向く面である。第2容器本体面42は、底壁45における上下方向の他方を向く面であって、第1容器本体面41とは反対側を向く面である。第1容器本体面41は、本発明の「第1面」の一例である。第2容器本体面42は、本発明の「第2面」の一例である。
【0079】
第1周壁46は、底壁45と一体をなして底壁45の周縁から第1容器本体面41側に延びるように形成された略角筒状の壁である。図6に示すように、第1周壁46は、第1容器本体面41が上を向く状態において、その先端縁によって、蓋体10を支持可能である。第1周壁46の高さは、底壁45と第1周壁46とによって区画される空間に収容される被調理物F1と蓋体10との間に十分な隙間を確保できる大きさに設定されている。
【0080】
図5図8に示すように、第2周壁47は、底壁45と一体をなして底壁45の周縁から第2容器本体面42側に延びるように形成された略角筒状の壁である。図8に示すように、第2周壁47は、第2容器本体面42が上を向く状態において、その先端縁によって、蓋体10を支持可能である。第2周壁47の高さは、底壁45と第2周壁47とによって区画される空間に収容される被調理物F1と蓋体10との間に十分な隙間を確保できる大きさに設定されている。
【0081】
容器本体40の左側面には、持ち手40Lが形成されている。容器本体40の右側面には、持ち手40Rが形成されている。持ち手40L、40Rの構成は、実施例1に係る持ち手30L、30Rと同様である。
【0082】
図6に示すように、第2蓋面12が下を向く状態で蓋体10が容器本体40の第1周壁46に支持されたときに、下向きに突出する第2リブ12Rが第1周壁46に嵌入することにより、蓋体10が容器本体40に対して位置決めされる。
【0083】
図示は省略するが、図6に示す蓋体10を上下反転させたときにも同様に、下向きに突出する第1リブ11Rが第1周壁46に嵌入する。
【0084】
図8に示すように、第1蓋面11が下を向く状態で蓋体10が容器本体40の第2周壁47に支持されたときに、下向きに突出する第1リブ11Rが第2周壁47に嵌入することにより、蓋体10が容器本体40に対して位置決めされる。
【0085】
図示は省略するが、図8に示す蓋体10を上下反転させたときにも同様に、下向きに突出する第2リブ12Rが第2周壁47に嵌入する。
【0086】
こうして、この加熱調理容器は、図5及び図6に示すように、第1容器本体面41が上を向き、かつ第2容器本体面42が下を向く状態と、図7及び図8に示すように、第2容器本体面42が上を向き、かつ第1容器本体面41が下を向く状態とを選択可能となっている。
【0087】
<第1容器本体面の第1特性>
図6及び図8に示すように、容器本体40の第1容器本体面41には、前後方向に延びる複数の凸部41Aが左右方向において所定の間隔を有して並ぶように形成されている。そして、各凸部41Aの間に溝41Bが形成されている。
【0088】
第1容器本体面41は、各凸部41A及び各溝41Bからなる凹凸面によって、第1特性を付与されている。第1容器本体面41の第1特性は、被調理物F1との接触面積が小さいという特性である。
【0089】
これにより、図6に示すように、第1容器本体面41が上を向く状態で被調理物F1と接触するときに、第1容器本体面41の第1特性の被調理物F1に対する調理態様は、各凸部41Aによって小さい接触面積で被調理物F1に接触して熱を伝える一方、各溝41Bによって被調理物F1から出てくる水分や油分を被調理物F1から遠ざけるというものになる。
【0090】
<第2容器本体面の第2特性>
図6及び図8に示すように、容器本体40の第2容器本体面42は、略水平に延在する平坦面である。
【0091】
第2容器本体面42は、平坦面によって、第2特性を付与されている。第2容器本体面42の第2特性は、第1容器本体面41と比較して、被調理物F1との接触面積が大幅に大きいという特性である。
【0092】
これにより、図8に示すように、第2容器本体面42が上を向く状態で被調理物F1と接触するときに、第2容器本体面42の第2特性の被調理物F1に対する調理態様は、平坦面によって第1容器本体面41と比較して大幅に大きい接触面積で被調理物F1に接触して熱を効率よく伝えるというものになる。
【0093】
<作用効果>
実施例2の加熱調理容器では、加熱庫95内で使用されるときにユーザが蓋体10の第1蓋面11と第2蓋面12とを適宜反転させるとともに、容器本体40の第1容器本体面41と第2容器本体面42とを適宜反転させて使用することで、被調理物F1に対する調理態様を4つの選択肢の中から容易に選択できる。
【0094】
具体的には、実施例1で説明したように、蓋体10において、第1蓋面11及び第2蓋面12の上下関係を選択することにより、被調理物F1に焼き色をつけるか否かを容易に選択できる。
【0095】
また、容器本体40において、第1容器本体面41の第1特性及び第2容器本体面42の第2特性が被調理物F1との接触面積であるので、図6及び図8に示すように、ユーザが第1容器本体面41及び第2容器本体面42の上下関係を選択することにより、被調理物F1から出てくる水分や油分等を被調理物F1から遠ざける否かを選択できる。その結果、ユーザは、被調理物F1の水っぽさや油っぽさを抑制するか否かを容易に選択できる。
【0096】
図6に示す例は、被調理物F1との接触面積が小さい第1容器本体面41が上を向く状態をユーザが選択した場合である。この場合、第1容器本体面41の第1特性に対応する調理態様が被調理物F1に対して施される。このため、上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rによって加熱された容器本体40の第1容器本体面41は、各凸部41Aによって小さい接触面積で被調理物F1に接触して熱を伝える一方、各溝41Bによって被調理物F1から出てくる水分や油分を被調理物F1から確実に遠ざけることができる。その結果、被調理物F1の水っぽさや油っぽさを抑制できる。例えば、丸み魚等である被調理物F1(F1A)の下を向く面のべたつきを抑制できる。
【0097】
図8に示す例は、被調理物F1との接触面積が第1容器本体面41よりも大幅に大きい第2容器本体面42が上を向く状態をユーザが選択した場合である。この場合、第2容器本体面42の第2特性に対応する調理態様が被調理物F1に対して施される。このため、上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rによって加熱された容器本体40の第2容器本体面42は、平坦面によって、第1容器本体面41よりも大幅に大きい接触面積で被調理物F1に接触して熱を伝えることができる。その結果、被調理物F1を効率よく加熱できるとともに加熱ムラを抑制でき、均一な焼き色を付けることができる。例えば、切り身魚等である被調理物F1(F1B)の下を向く面を均一に加熱して、その下を向く面に均一な焼き色を付けることができる。
【0098】
したがって、実施例2の加熱調理容器では、実施例1の加熱調理容器1と同様に、被調理物F1を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる。
【0099】
また、この加熱調理容器では、第1容器本体面41の第1特性及び第2容器本体面42の第2特性は、被調理物F1との接触面積である。このため、第1容器本体面41の各凸部41A及び各溝41Bの本数、幅又は配置パターンを適宜変更したり、第2容器本体面42にも凸部や溝を設けたりすることにより、第1容器本体面41と被調理物F1との接触面積と、第2容器本体面42と被調理物F1との接触面積とを容易に異ならせることができる。
【0100】
さらに、この加熱調理容器では、ユーザが第1容器本体面41と第2容器本体面42とを適宜反転させて使用する際に、第1周壁46又は第2周壁47によって蓋体10を好適に支持できる。
【0101】
(実施例3)
図9図12に示すように、実施例3の加熱調理容器は中敷部材50を備えており、中敷部材50を実施例1に係る容器本体30及び蓋体10と共に使用する。実施例3のその他の構成は、実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0102】
<中敷部材の構成>
中敷部材50は、実施例1に係る容器本体30の底壁35よりも前後方向及び左右方向の長さが小さい略矩形平板である。本実施例では、中敷部材50は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料によって形成されている。
【0103】
中敷部材50は、容器本体30に収容されて底壁35の上面に載置された状態で、被調理物F1を支持可能である。中敷部材50には、第1中敷面51及び第2中敷面52が形成されている。
【0104】
第1中敷面51は、中敷部材50における上下方向の一方を向く面である。第2中敷面52は、中敷部材50における上下方向の他方を向く面であって、第1中敷面51とは反対側を向く面である。
【0105】
この加熱調理容器は、図9及び図10に示すように、第1中敷面51が上を向き、かつ第2中敷面52が下を向く状態と、図11及び図12に示すように、第2中敷面52が上を向き、かつ第1中敷面51が下を向く状態とを選択可能となっている。
【0106】
<第1中敷面の第3特性>
図10及び図12に示すように、中敷部材50の第1中敷面51には、前後方向に延びる複数の凸部51Aが左右方向において所定の間隔を有して並ぶように形成されている。そして、各凸部51Aの間に溝51Bが形成されている。
【0107】
第1中敷面51は、各凸部51A及び各溝51Bからなる凹凸面によって、第3特性を付与されている。第1中敷面51の第3特性は、容器本体30の底壁35の上面と比較して、被調理物F1との接触面積が小さいという特性である。
【0108】
これにより、図10に示すように、第1中敷面51が上を向く状態で被調理物F1と接触するときに、第1中敷面51の第3特性の被調理物F1に対する調理態様は、各凸部51Aによって小さい接触面積で被調理物F1に接触して熱を伝える一方、各溝51Bによって被調理物F1から出てくる水分や油分を被調理物F1から遠ざけるというものになる。
【0109】
<第2中敷面の第4特性>
図10及び図12に示すように、中敷部材50の第2中敷面52は、略水平に延在する平坦面である。図示は省略するが、第2中敷面52には、フッ素樹脂コーティング等の焦げ付きを抑制する表面処理が施されている。
【0110】
第2中敷面52は、焦げ付きを抑制する表面処理が施された平坦面によって、第4特性を付与されている。第2中敷面52の第4特性は、第1中敷面51と比較して、被調理物F1との接触面積が大幅に大きいとともに、容器本体30の底壁35の上面と比較して、被調理物F1が焦げ付き難いという特性である。なお、第2中敷面52に対して焦げ付きを抑制する表面処理を施さないことにより、第2中敷面52の第4特性を容器本体30の底壁35の上面の特性、すなわち、被調理物F1との接触面積が大幅に大きいという特性と同じにしてもよい。
【0111】
これにより、図12に示すように、第2中敷面52が上を向く状態で被調理物F1と接触するときに、第2中敷面52の第4特性の被調理物F1に対する調理態様は、第1中敷面51と比較して大幅に大きい接触面積で被調理物F1に接触して熱を効率よく伝えるとともに、容器本体30の底壁35の上面と比較して、被調理物F1の焦げ付きを確実に抑制するというものになる。
【0112】
<作用効果>
実施例3の加熱調理容器では、加熱庫95内で使用されるときにユーザが蓋体10の第1蓋面11と第2蓋面12とを適宜反転させるとともに、中敷部材50を容器本体30内に収容するか否かを適宜選択し、さらに、中敷部材50を容器本体30内に収容することを選択した場合において、中敷部材50の第1中敷面51と第2中敷面52とを適宜反転させて使用することで、被調理物F1に対する調理態様を6つの選択肢の中から容易に選択できる。
【0113】
したがって、実施例3の加熱調理容器では、実施例1、2の加熱調理容器1と同様に、被調理物F1を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる。
【0114】
(実施例4)
図13に示すように、実施例4の加熱調理容器は、実施例2に係る容器本体40及び蓋体10と、実施例3に係る中敷部材50とを共に使用する。実施例4のその他の構成は、実施例2、3と同様である。このため、実施例2、3と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0115】
実施例4では、第1中敷面51の第3特性及び第2中敷面52の第4特性は、容器本体40の第1容器本体面41及び第2容器本体面42に対応して、以下のように変更されている。
【0116】
<第1中敷面の第3特性>
中敷部材50の第1中敷面51の各凸部51Aの本数は、容器本体40の第1容器本体面41の各凸部41Aの本数よりも少ない。また、第1中敷面51の各溝51Bの幅は、第1容器本体面41の各溝41Bの幅よりも大きい。
【0117】
第1中敷面51の第3特性は、容器本体40の第1容器本体面41と比較して、被調理物F1との接触面積が小さいという特性である。
【0118】
<第2中敷面の第4特性>
第2中敷面52には、平坦面にフッ素樹脂コーティング等の焦げ付きを抑制する表面処理が施されているのに対して、容器本体40の第2容器本体面42には、平坦面にそのような表面処理が施されていない。
【0119】
このため、第2中敷面52の第4特性は、第1中敷面51と比較して、被調理物F1との接触面積が大幅に大きいとともに、容器本体40の第2容器本体面42と比較して、被調理物F1が焦げ付き難いという特性である。
【0120】
<作用効果>
実施例4の加熱調理容器では、加熱庫95内で使用されるときにユーザが蓋体10の第1蓋面11と第2蓋面12とを適宜反転させ、また、容器本体40の第1容器本体面41と第2容器本体面42とを適宜反転させるとともに、中敷部材50を容器本体40内に収容するか否かを適宜選択し、さらに、中敷部材50を容器本体40内に収容することを選択した場合において、中敷部材50の第1中敷面51と第2中敷面52とを適宜反転させて使用することで、被調理物F1に対する調理態様を8つの選択肢の中から容易に選択できる。
【0121】
したがって、実施例4の加熱調理容器では、実施例1~3の加熱調理容器1と同様に、被調理物F1を調理する際に複数の調理態様をユーザニーズに応じて容易に選択できる。
【0122】
以上において、本発明を実施例1~4に即して説明したが、本発明は上記実施例1~4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0123】
実施例1~4に係る蓋体10では、第1蓋面11及び第2蓋面12に塗膜が形成されているがこの構成には限定されない。第1蓋面及び第2蓋面の少なくとも一方に塗膜が無い構成も本発明に含まれる。また、実施例1~4に係る蓋体10に、第1蓋面11及び第2蓋面12を貫通する孔を設け、その孔を経由して、上火ヒータ91の輻射熱H1や燃焼熱の一部が被調理物F1に伝わるようにしてもよい。
【0124】
実施例2、4の加熱調理容器について、容器本体40は反転可能であるが、蓋体10は反転できないように変更した構成も本発明に含まれる。
【0125】
実施例1~4に係る蓋体10は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料によって形成されているがこの構成には限定されない。蓋体は、例えばセラミック材料等、金属材料とは異なる材料によって形成されていてもよい。容器本体30、40及び中敷部材50についても同様である。
【0126】
実施例1~4では、グリル装置が上火バーナ91及び下火バーナ92L、92Rを備えたガスコンロ9であるがこの構成には限定されない。グリル装置は、上火バーナのみを備えた片面焼き式のガスコンロであってもよい。また、グリル装置は、電気式の加熱プレートや、電気式の遠赤外線ヒータ等を備えていてもよい。
【0127】
実施例2に係る第1容器本体面41では、各凸部41A及び各溝41Bが前後方向に延びているがこの構成には限定されない。例えば、各凸部41A及び各溝41Bが左右方向に延びるように変更してもよい。また、複数の溝が放射状、又は格子状に凹設されていてもよい。実施例3に係る第1中敷面51についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、グリル装置等の調理装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0129】
1…加熱調理容器
9…グリル装置(ガスコンロ)
95…加熱庫
91、92L、92R…加熱源(91…第1加熱源(上火バーナ)、92L、92R…第2加熱源(下火バーナ))
F1…被調理物
30、40…容器本体
10…蓋体
11、41…第1面(11…第1蓋面、41…第1容器本体面)
12、42…第2面(12…第2蓋面、42…第2容器本体面)
35、45…底壁
46…第1周壁
47…第2周壁
50…中敷部材
51…第1中敷面
52…第2中敷面
図1
図2
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図13