(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/26 20060101AFI20221128BHJP
B41J 13/10 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B65H1/26 310Z
B41J13/10
(21)【出願番号】P 2018145062
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 正昭
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170022(JP,A)
【文献】特開2007-119192(JP,A)
【文献】特開2006-206267(JP,A)
【文献】特開平11-059921(JP,A)
【文献】特開2006-043892(JP,A)
【文献】特開2000-128365(JP,A)
【文献】特開2007-245401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B41J 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートを積載する積載面を有し装置本体に対して着脱可能な給送カセットと、
搭載面に記録媒体を搭載するトレイと、
前記給送カセットから給送される記録シートまたは前記トレイに搭載された記録媒体に記録を行う記録手段を備え、
前記給送カセットの前記積載面と反対側の装着面
の装着位置に前記トレイを装着することが可能な記録装置であって、
前記装着面の法線方向から前記トレイが前記給送カセットの載置位置に載置される際の前記給送カセットに対する前記トレイの位置を決める位置決め構造が前記給送カセットと前記トレイとに形成され、
前記トレイは、前記位置決め構造によって移動が規制されている状態で前記載置位置から前記装着位置まで前記装着面上を移動可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録シートを積載する積載面を有し装置本体に対して着脱可能な給送カセットと、
搭載面の凹部
に記録媒体を搭載するトレイと、
前記給送カセットから給送される記録シートまたは前記トレイに搭載された記録媒体に記録を行う記録手段を備え、
前記給送カセットの前記積載面と反対側の装着面の装着位置に前記トレイを装着することが可能な記録装置であって、
前記給送カセットは、前記装着面から突出する複数の突出部を
有し、
前記トレイは前記装着面の法線方向から前記装着面の載置位置に載置された後に、前記載置位置から前記装着位置まで前記装着面上を移動して前記給送カセットに装着され、
前記トレイが前記装着面に装着された状態では、少なくとも1つの前記突出部の一部は、前記凹部の中に位置することを特徴とす
る記録装置。
【請求項3】
前記トレイは、フックと前記フックと係合可能な穴
が係合することよって前記装着面における法線方向の移動が規制されることを特徴とする請求項
1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記位置決め構造は、ボスと前記ボスを保持する保持部材とを含むことを特徴とする請求項
1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記保持部材には、長穴と丸穴が狭小溝部を介して連結した位置決め穴が含まれることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記トレイは、
前記搭載面に搭載する前記記録媒体を収容する凹部を備えており、
前記給送カセットは、前記装着面から突出する複数の突出部を備えており、
前記トレイが前記装着面に装着された状態では、少なくとも1つの前記突出部の一部は、前記凹部の中に位置することを特徴とする請求項
1または4に記載の記録装置。
【請求項7】
前記突出部は、前記記録シートを供給する方向における前記記録シートの移動を規制する第1規制部材と、前記第1規制部材が沿って移動するガイドと、を含んでいることを特徴とする請求項
2または6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記トレイの前記
搭載面は、操作説明用のイラスト、セット位置を示す表示、挿入方向を示す表示の少なくとも1つの表示面を含むことを特徴とする
請求項1ないし7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記載置位置において前記トレイは前記給送カセットの範囲内であり、
前記トレイは、前記載置位置から前記装着位置まで、前記給送カセットにおける記録シートを供給する方向と交差する方向に移動することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記給送カセットは、前記記録シートを供給する方向と交差する方向における前記記録シートの移動を規制する第2規制部材を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項
9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記給送カセットは、前記トレイを装着した際に、前記積載面の側から前記トレイの有無を確認可能な貫通穴を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項
10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
記録シートを積載する積載面を有し装置本体に対して着脱可能な給送カセットと、
搭載面に記録媒体を搭載するトレイと、
前記給送カセットから給送される記録シートまたは前記トレイに搭載された記録媒体に記録を行う記録手段を備え、
前記給送カセットの前記積載面と反対側の装着面の装着位置に前記トレイを装着することが可能な記録装置であって、
前記トレイは前記装着面の法線方向から前記装着面の載置位置に載置された後に、前記載置位置から前記装着位置まで前記装着面上を移動して前記給送カセットに装着され、
前記給送カセットは、前記トレイを装着した際に、前記積載面の側から前記トレイの有無を確認可能な貫通穴を有し、前記貫通穴から、前記トレイに設けられた表示を確認可能であることを特徴とす
る記録装置。
【請求項13】
前記トレイが搭載する前記記録媒体は、光学ディスクを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項
12のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を記録補助部材にセットして記録を行う記録装置に関し、特には、記録補助部材の不使用時に記録補助部材を記録装置本体に収納可能な記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD-Rなどの記録媒体を記録補助部材に搭載して、記録補助部材を搬送しながら記録媒体に記録を行う記録装置が使用されている。このような記録補助部材は、記録が終了すると、給送カセットに装着されて収納されるものがある。また、記録補助部材には、ユーザーに操作方法を提示したり、記録部への挿入方向などを示すために、印刷、表面の凹凸による表示、ラベル等の貼付による表示などが施されている。
【0003】
特許文献1には、給送カセットの用紙載置部の内部に差し込まれる記録補助部材としての保持体を収納する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成では、記録補助部材の収納時や引出時動作によって、記録補助部材と収納部を構成する部品とが摺擦する部分が多い。そのため、摺擦によって記録補助部材の表面の表示が、削り取られたり剥がされたりして見づらくなる懸念がある。
【0006】
よって本発明は、記録補助部材の汚損や表示の消失を抑えることが可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明の記録装置は、記録シートを積載する積載面を有し装置本体に対して着脱可能な給送カセットと、搭載面に記録媒体を搭載するトレイと、前記給送カセットから給送される記録シートまたは前記トレイに搭載された記録媒体に記録を行う記録手段を備え、前記給送カセットの前記積載面と反対側の装着面の装着位置に前記トレイを装着することが可能な記録装置であって、前記装着面の法線方向から前記トレイが前記給送カセットの載置位置に載置される際の前記給送カセットに対する前記トレイの位置を決める位置決め構造が前記給送カセットと前記トレイとに形成され、前記トレイは、前記位置決め構造によって移動が規制されている状態で前記載置位置から前記装着位置まで前記装着面上を移動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録補助部材の汚損や表示の消失を抑えることが可能な記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】記録装置の内部構成の概要を示す斜視図である。
【
図3】記録装置の内部構成を示した断面模式図である。
【
図6】装置本体と給送カセットとを示した斜視図である。
【
図7】カセット本体に取り付けられたエンドガイドの周辺を示した図である。
【
図8】サイドガイド部の構成部品を示した図である。
【
図9】部品群が組みつけられた給送カセットを示した断面図である。
【
図10】複数種の記録媒体を積載した記録補助部材を示した図である。
【
図12】マルチトレイの位置決め穴を示した拡大斜視図である
【
図13】マルチトレイとマルチトレイをセットする記録装置を示した斜視図である。
【
図14】マルチトレイを給送カセット取り付ける手順を示した図である。
【
図15】マルチトレイを給送カセットに装着した状態を示した断面図である。
【
図16】給送カセットとマルチトレイとを示した斜視図である。
【
図17】給送カセットとマルチトレイとを示した斜視図である。
【
図18】給送カセットとマルチトレイとを示した斜視図である。
【
図19】給送カセットとマルチトレイとを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、記録装置1の外観を示す斜視図である。記録装置1は、本体下部に記録媒体を積載可能な給送カセット3を装着可能に構成されており、給送カセット3に積載した記録媒体が、装置内に供給されて記録が行われる。記録された記録媒体は、排出部6から排出される。
【0012】
図2は、記録装置1の内部構成の概要を示す斜視図であり、
図3は、記録装置1の内部構成を示した断面模式図である。記録部2は、不図示の記録ヘッドが搭載されたキャリッジ21を備えており、キャリッジ21が矢印201の方向に往路走査、復路走査を行いながら記録ヘッドの吐出口から記録媒体に対して液体(インク)を吐出することで記録を行う。記録時に記録媒体は搬送され、記録媒体の高精度な搬送とキャリッジ21の往復動作とを交互に繰り返すことによって記録媒体に対して記録を行う。
【0013】
排出部6は、排出積載面603を持つ排出トレイ601、記録装置1に回動可能に支持されたマルチトレイガイド611、記録装置1に配置された不図示のマルチトレイガイドセンサなどを備えている。排出トレイ601は、装置本体に対して矢印631の方向(
図3(a)参照)に摺動可能であり、装置本体に対して所定の位置まで引き出されると、装置本体との係合部によってそれ以上の引き出し動作を規制される。記録媒体が搬送部5から排出部6まで搬送されると、記録媒体は、排出トレイ601の排出積載面603上に落下し、排出トレイ601に支持される。これで記録動作が終了する。
【0014】
マルチトレイガイド611は、装置本体に対して回動中心613を中心に回動可能に支持されている。マルチトレイガイド611は、ユーザー操作によって
図3(a)で示した排出位置と、
図3(b)で示したセット位置との間を回転移動することができる。記録媒体に対して記録を行う場合には、ユーザーは記録動作を開始する前に、手動で排出トレイ601を所定の位置まで引出し、マルチトレイガイド611を排出位置に移動させる(
図3(a)の状態)。マルチトレイガイド611の位置は、不図示のマルチトレイガイドセンサで検知することができる。マルチトレイガイド611が排出位置に移動したことを不図示のマルチトレイガイドセンサが検知すると、記録媒体に対する記録の準備ができたことを記録装置1が認識し、記録媒体への記録開始を許可する。
【0015】
搬送部5は、装置本体に回動可能に支持された給送アーム502、給送ローラ501、装置本体に固定された斜面503、Uターン搬送路511を備えている。更に搬送部5は、Uターン搬送路511に突出するように配置されたUターンローラ512及びUターンローラ512に圧接して連れ回るUターンコロ513からなるUターンローラ対、主搬送ローラ521、ピンチローラ522からなる主搬送ローラ対を備えている。更に搬送部5は、プラテン523、プラテン523に回転可能に支持された排出ローラ531及び排出拍車532からなる排出ローラ対、排出拍車532を回転可能に支持する拍車ベース533などを備えている。
【0016】
装置本体に記録命令が入力されると、後述する記録準備状況を確認した上で、記録動作を開始する。記録命令が入力されると、給送カセット3に積載された記録媒体は、給送アーム502に回転可能に支持された給送ローラ501が当接して回転することによって、給送方向312に給送される。給送カセット3から給送された記録媒体は、斜面503に接触し、斜面503に沿って搬送される。その後、Uターン搬送路511に侵入して、Uターンローラ512、Uターンコロ513に挟持され、主搬送ローラ521まで搬送される。その後、後述の記録部2による記録と主搬送ローラ521およびピンチローラ522による高精度な所定距離の搬送とを交互に行いながら記録搬送を行う。記録が終了すると、排出ローラ531および排出拍車532によって排出部6まで記録媒体の搬送を行い搬送動作を終了する。
【0017】
図4は、給送カセット3の上面を示した斜視図であり、
図5は、給送カセット3の下面を示した斜視図であり、
図6は、装置本体と給送カセット3とを示した斜視図である。以下、
図4から
図6を参照して給送カセット3の概要について説明する。
【0018】
記録装置1に装着される給送カセット3は、A4、LTRサイズ~A5サイズのカット紙(記録シート)を積載できるよう構成されている。
図6に示すように、給送カセット3は、装置本体に対して、矢印318の方向にスライドすることで引き出しや収納を行うことができる。給送カセット3は、カセット本体310、記録媒体の後端を規制するエンドガイド320、記録媒体の側端を規制する左サイドガイド331及び右サイドガイド332を備えている。カセット本体310は、記録媒体を積載する記録媒体積載面311(以下、積載面ともいう)を備え、積載面311の周囲のうち3方向は、積載する記録媒体を囲うように周囲に外周リブ352が形成された略箱形状に形成されている。また給送カセット3には、給送カセット3を装置本体から引き出す際に、ユーザーが手をかけるための把手353が外周リブ352の一部に形成されている。
【0019】
積載面311に積載された記録媒体は3方向を外周リブ352で囲われ、積載された記録媒体は、囲われた3方向以外の残りの1方向である、給送方向312に給送される。
【0020】
また、
図5に示すように、カセット本体310の積載面311の裏側の面319には、凸形状の他に、記録補助部材を装着可能な装着部340がある。装着部340には記録補助部材を装着するために、複数の装着フック(第1保持部)341、位置決めボス(第2保持部)342、摺動リブ343などが配置されている。さらに、表示穴313、認識コード穴314が表側まで貫通した穴形状として配置されている。これら装着部340の詳細に関しては後述する。
【0021】
図7(a)は、カセット本体310に取り付けられたエンドガイド(規制部材)320の周辺を示した拡大図であり、
図7(b)は、
図7(a)で示したエンドガイド320付近を中央でカットした断面図である。カセット本体310は、積載面311から潜り込むように一体的に設けられたエンドガイドレール321を備えている。エンドガイド320は、エンドガイドレール321上を移動可能に取り付けられ、積載面311上に積載された記録媒体の後端を規制部327によって規制する。エンドガイド320は、このエンドガイドレール321に案内されて、矢印326に沿って移動可能に構成されており、ユーザーはつまみ部322を持ってエンドガイド320を所望の位置に移動させることができる。エンドガイド320は、弾性部323を備えており、この弾性部323によってエンドガイドレール321に対するエンドガイド320の位置決めが行われる。
図7(a)は、B5サイズの記録媒体の後端を規制している状態である。
【0022】
図7(b)に示すように、エンドガイド320に設けられた弾性部323の先端にはカセット本体310側に向かって突出した凸形状部325が形成され、エンドガイドレール321には凹形状部324が形成されている。この凸形状部325と、凹形状部324とが係合することでエンドガイドレール321に対するエンドガイド320の位置決めが行われる。凸形状部325が凹形状部324と係合したときには、エンドガイド320はカセット本体310に移動を制限される。ユーザーが矢印326方向に所定以上の力を加えると、弾性部323が撓んで凸形状部325が凹形状部324からの係合が解かれ、エンドガイド320はエンドガイドレール321上を移動することができるようになる。
【0023】
図8(a)は、サイドガイド部330の構成部品を示した図であり、
図8(b)は、構成部品を組み合わせたサイドガイド部330の裏面を示した図である。サイドガイド部330は、左サイドガイド331、右サイドガイド332、ピニオンギア333を備えている。カセット本体310には、左サイドガイド331および右サイドガイド332の対が、カセット本体310上に形成されたサイドガイドレール335に案内されて矢印338方向に移動可能に取り付けられている(
図4参照)。サイドガイド部330では、左サイドガイド331と右サイドガイド332とで、積載された記録媒体の(供給する方向と交差する方向の)両側端部を各々規制部337によってガイドする。
【0024】
図8(b)に示すように、左サイドガイド331と右サイドガイド332とには、各々ラック部334が形成され、カセット本体310に回転可能に取り付けられたピニオンギア333とかみ合うことで、互いに連動して移動するよう構成されている。
【0025】
図9は、エンドガイド320およびサイドガイド部330の部品群がカセット本体310に組みつけられた給送カセット3を示した断面図である。エンドガイド320は、積載面311とほぼ同一面をなすエンドガイド積載面328を備え、左サイドガイド331と右サイドガイド332とは、積載面311とほぼ同一面をなすサイドガイド積載面339を備えている。エンドガイド320、左サイドガイド331と右サイドガイド332(以下、サイドガイド対ともいう)は、それぞれ規制部327、337として積載面311より突出している部分以外は、積載面311よりも下側に潜り込むように配置されている。
図9に示すように、エンドガイド320及びサイドガイド対331、332を各々の移動方向に案内するエンドガイドレール321、サイドガイドレール335、凹部324などの案内形状部、ピニオンギア333等は全て積載面311よりも下側に配置される。このためカセット本体310の積載面311の裏側の面319には、前述のような案内形状部やピニオンギア333のような部品が凸形状として配置されている。
【0026】
図10(a)から(d)は、複数種の記録媒体を積載した記録補助部材4を示した図であり、
図13は、記録補助部材4を示した斜視図である。記録補助部材(以下、マルチトレイともいう)4は、記録媒体11を搭載する(搭載面に設けられた)凹部41、記録媒体11を押圧する押圧部材42、また押圧部材42を付勢する付勢部材43A、43Bを備えている。マルチトレイ4は、複数の記録媒体を積載し保持することを可能にするため、記録媒体に対応した突き当て部44、45を備えている。凹部41に、例えば他の記録媒体に対応した円形記録媒体701(11)用の突き当て部44A、44Bを設けることで、同一の凹部41の中で、異なる種類の記録媒体の位置決めを行うことが可能となっている。記録媒体11の代表的な例として、
図10(a)では円形記録媒体701(11)、
図10(b)は汎用性のある記録媒体702(以下、台紙ともいう)を搭載している。本実施形態における円形記録媒体701(11)は、表面に印刷受容層を持つプリンタブルディスクを想定している。近年ではCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc)などのプリンタブルな光学ディスクが一例である。
【0027】
台紙702(11)は、様々な媒体を搭載できることを想定している。一例として
図10(c)に示す、記録媒体の表面にネイルアート用の記録面704を持つ記録媒体703などが考えられる。また、
図10(d)に示す台紙702(11)には、印刷したい媒体をセットする穴709が開いているものを想定している。穴709に例えばJIS等で定型サイズが規定されているカード媒体(カードなど)や、定型サイズを持たないコースターをセット可能な媒体である。これらは、定型サイズの媒体厚みがマルチトレイ4の表面を越えないものを印刷可能な対象としている。記録する媒体の厚みによって、台紙702(11)の穴は、貫通穴の場合もあれば、台紙702(11)の厚みに対して一定量の非貫通穴を開けることが考えられる。
【0028】
マルチトレイ4には、ユーザー操作性向上や、製造工程におけるマルチトレイ4の欠品防止の為、その表面に複数種の印刷が(表示される表示面が設けられている)施されている。例えば、
図11(a)に示すように、例えば、操作方向表示印刷410、挿入位置表示印刷411、操作方法表示印刷412、記録補助部材位置表示印刷(以下、表示印刷ともいう)413、認識コード印刷414、操作説明用のイラスト等である。これらの表示は、一度の工程で印刷が完了するように、すべてマルチトレイ4の同じ面に印刷されている。またマルチトレイ4にはマルチトレイ4を給送カセット3の裏側の面319に装着する装着穴420、マルチトレイ4を給送カセット3(の装着面)に装着した際に所定位置に固定する位置決め穴421及び位置決め長穴422等が貫通穴として形成されている。
【0029】
マルチトレイ4には、円形記録媒体701(11)を搭載することを想定しており、凹部41は、凹部41A、41Bから構成されている。これは、円形記録媒体701(11)がJIS上で定義されている公差から考えられる突起などの形状があったとしても、マルチトレイ4上に搭載した円形記録媒体701(11)の印刷面が記録ヘッドに対して水平を保持できるようになっている。
【0030】
図12は、給送カセット3に装着されるマルチトレイ4の位置決め穴421を示した拡大斜視図である。マルチトレイ4に設けられた位置決め穴421は、ランナー形状のリブで形成された長穴部424と略丸穴部425とを備えている。長穴部424と略丸穴部425との間の狭小溝部426は、所定の力でリブが弾性変形し、その幅が略丸穴部425の直径と同等まで拡大することができる。マルチトレイ4の上面には、ユーザーが保持しやすいように、滑り止め形状部430が凹形状として設けられ、更に、光を反射する反射板431を貼付した凹形状部432が設けられている。マルチトレイ4は、プリンタブルディスクなどを装着して固定し、記録装置1の中で搬送され、かつ高精度な位置検出等を可能にすることが必要である。そのため、マルチトレイ4は、プリンタブルディスクの120mmに加え、固定用の構成、位置検出用のセンサ光反射板431等を装備するのに十分な長さが必要であり、一辺が150~200mm程度の大きさの略方形となっている。
【0031】
図13は、マルチトレイ4とマルチトレイ4をセットする記録装置1とを示した斜視図である。記録媒体701(11)に記録を行う場合、
図3(b)のように、排出部6に設けられたマルチトレイガイド611をセット位置に回動させて、マルチトレイ4をセット可能な状態にする。この状態で記録装置1は、不図示のマルチトレイガイドセンサによってマルチトレイガイド611がセット位置に移動したことを検知する。
【0032】
その後、記録媒体701(11)が搭載されたマルチトレイ4をマルチトレイガイド611に載置する。そして、
図13(b)に示すように、挿入位置表示印刷411とマルチトレイガイド611に印刷された挿入位置表示印刷613とが一致する位置まで、マルチトレイ4を装置本体内に押し込む。
図3に示すように、挿入位置表示印刷411と挿入位置表示印刷613とが一致する位置までマルチトレイ4を移動すると、マルチトレイ4は、排出ローラ対531、532まで到達しニップされる。ここで記録動作開始の命令を出すと、排出ローラ対531、532によってマルチトレイ4を記録部の方向に搬送される。その後、排出ローラ対531、532によって搬送されたマルチトレイ4の先端は、主搬送ローラ521とピンチローラ522に挟持されて搬送される。
【0033】
マルチトレイ4の上面には、
図11(a)に示すようにトレイの位置を検知するための反射部431が設けられている。キャリッジ21上に搭載された不図示のセンサによって反射部431を検出することで、マルチトレイ4の位置を検出し記録位置を補正して、記録媒体11にずれることなく記録を行うことが可能である。その後、排出方向にマルチトレイ4を搬送しながら記録ヘッドを搭載したキャリッジ21を走査させて、マルチトレイ4上の記録媒体11の表面に記録を行う。記録動作が終了すると記録媒体11を搭載したマルチトレイ4はマルチトレイガイド611の上に排出される。
【0034】
以下、本発明の特徴事項であるマルチトレイ4を給送カセット3に装着する構成について説明する。
【0035】
図14(a)、(b)は、マルチトレイ4を給送カセット3に装着する手順を説明する図である。不使用時のマルチトレイ4は、給送カセット3の裏側の装着部に装着することができるように構成されている。給送カセット3の裏面319には6つの装着フック341が設けられている。また、マルチトレイ4には、4か所の装着穴420と、2か所の装着凹形状部423が設けられている。装着フック341と、マルチトレイ4の装着穴420及び装着凹形状部423が係合することによって、マルチトレイ4の-Z方向への移動が規制される。また、給送カセット3の裏面319には位置決めボス342が設けられている。位置決めボス342とマルチトレイ4の位置決め穴421および位置決め長穴(保持部材)422と係合することによって、マルチトレイ4のX方向およびY方向への(装着面内の)移動が規制される。なお、装着フック341や装着穴420の数は、これに限定されるものでない。また、位置決めボス342や位置決め穴421の数も、これに限定されるものではない。
【0036】
先ず給送カセット3の裏面319とマルチトレイ4の凹部41とが対向した状態で、マルチトレイ4を積載面311の法線方向を含む方向へ移動して、位置決めボス342が位置決め穴421の長穴部424および位置決め長穴422内に位置し、装着フック341が装着穴420内に位置する状態とする。この状態で、マルチトレイ4は、給送カセット3の装着面上の載置位置に位置している。このとき、給送カセット3に設けられた摺動リブ343とマルチトレイ4とが接触することによって+Z方向の位置は決まる。
【0037】
給送カセット3に対してマルチトレイ4は、X方向及びY方向についてはガタを持った状態であり、+Z方向については突き当たった状態である。Z方向から見たとき、マルチトレイ4は給送カセット3内(範囲内)に位置している。
【0038】
図14(b)の状態から、-X方向にマルチトレイ4を給送カセット3に対して相対的に移動することで、マルチトレイ4を給送カセット3に取り付けることができる。装着フック341と装着穴420の係合部344とは、準備位置では係合されておらず、マルチトレイ4が装着位置まで移動すると、装着フック341の先端が装着穴420の端部と当接しつつ係合部344と係合する。装着フック341は、準備位置および装着位置のいずれにおいても、装着穴420の内部に納まっており、装着穴420から突出することはない。
【0039】
準備位置で位置決め穴421の長穴部に位置していた位置決めボス342は、マルチトレイ4の移動によって相対的に+X方向に移動し、狭小溝部426を押し広げるように通過し、
図12(b)に示すように略丸穴部425に到達する。これによって、位置決めボス342は略丸穴部425と嵌合しマルチトレイ4の給送カセット3に対する移動が規制される。装着状態にセットされた状態では位置決めボス342は、位置決め穴421とX、Y両方に対して、位置決め長穴422とY方向に対して、嵌合状態になっている。このように移動を規制された装着状態にするために、準備位置から装着位置まで移動する所定距離は約10mm前後(略10mm)である。
【0040】
準備位置から装着位置まで移動する間、マルチトレイ4は、給送カセット3と、摺動リブ343によってのみ摺動している。このように、マルチトレイ4は、装着時に摺動リブ343とだけ摺動しており、摺動リブ343と摺動するマルチトレイ4の部分には、印刷部が設けられていない。そのため、マルチトレイ4の印刷部が摺動によって削られることを抑制することができる。また、マルチトレイ4を給送カセット3に装着した際に、マルチトレイ4の印刷面が、給送カセット3の積載面311に面する状態となる。このため、給送カセット3を装置本体に対して着脱することによって、マルチトレイ4の印刷部は、給送カセット3の外側に配置されたユニット群や床面などと接触することがなく、マルチトレイ4の印刷部の汚損や表示の消失を抑えることができる。
【0041】
このように、先ずマルチトレイ4を給送カセット3の準備位置に配置し、給送カセット3の装着位置までスライドすることで、マルチトレイ4を給送カセット3に装着する。これによって、給送カセットのサイズアップを抑制し、トレイの汚損や表示の消失を抑えることが可能な記録装置を実現することができた。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0043】
図15は、本実施形態におけるマルチトレイ4を給送カセット3に装着した状態を示した断面図である。給送カセット3では、例えば厚み方向では記録媒体を載置、収容するスペース、枠体板部の板厚、板部の強度確保のためのリブに加え、マルチトレイ4を収容するスペースが必要となる。本実施形態では、マルチトレイ4を収容するスペースをできるだけ小さくするための構成を説明する。
【0044】
給送カセット3の積載面311の裏側(反対)の面(保持面)319には、エンドガイドレール321及びエンドガイド320の一部が凸状に形成されている。本実施形態では、これらの凸状に形成された(突出部の)エンドガイドレール321及びエンドガイド320の一部が、マルチトレイ4の記録媒体を積載するための受容部として形成された凹部41の中に入り込むように構成されている。マルチトレイ4が、準備位置、装着位置いずれの位置にいる状態でも、エンドガイドレール321及びエンドガイド320の一部は凹部41の中に入り込んでいる。
【0045】
なお、凹部41に入り込むのがエンドガイドレール321、エンドガイド320のいずれかの一部であってもよい。また、左サイドガイド331及び右サイドガイド332が設けられている部分の裏側にマルチトレイ4を装着するよう構成してもよい。この場合、サイドガイドレール335、左サイドガイド331及び右サイドガイド332、ピニオンギア333の一部が凹部41の中に入るように構成する。つまり、積載面311の裏側の面319に配置された少なくとも1つの凸状の部材の一部が凹部41の中に入りむように構成する。これによって、給送カセット3の厚み方向におけるサイズアップを抑制することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0047】
図16は、本実施形態における給送カセット3とマルチトレイ4とを示した斜視図である。本実施形態の給送カセット3は、積載面311に設けられた貫通穴である、表示穴313及び認識コード穴314を備えている。表示穴313は、裏面にマルチトレイ4が装着されている際に、マルチトレイ4に印刷された表示印刷413を表示穴313から確認することができる。また認識コード穴314は、裏面にマルチトレイ4が装着されている際に、マルチトレイ4に印刷された部品認識コード414を認識コード穴314から確認することができる。
【0048】
表示穴313からマルチトレイ4の表示印刷413を確認できることで、ユーザーは装置本体から給送カセット3を引き出した状態で、給送カセット3を裏返すことなくマルチトレイ4の有無を確認可能となっている。また、部品認識コード414は、専用の読み取り装置で読み取り可能なバーコードである。部品認識コード414は、類似するさまざまな種類の記録装置やカセット、マルチトレイなど組み立てる組立ラインなどにおいて、所望のマルチトレイが欠品することなく装着されていることを確認するために用いられる。マルチトレイ4に印刷された部品認識コード414を任意の組立工程において読み取り装置で読み取ることで、マルチトレイ4の存在を確認し、そのデータを記録する。
【0049】
なお、マルチトレイ4上に設けられた表示は、給送カセット3にマルチトレイ4を装着した状態で、給送カセット3に設けられた穴を通して視認することができればよく、表示方法は印刷に限らず、金型による凹凸形状や、抜き穴形状、塗装などであってもよい。
【0050】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0051】
図17(a)は、本実施形態における給送カセット3を示した斜視図であり、
図17(b)は、本実施形態におけるマルチトレイ4を示した斜視図である。本実施形態では、マルチトレイ4を給送カセット3装着する際に、-Y方向にマルチトレイ4を移動することで装着する構成となっている。給送カセット3に設けられた装着フック341は、フック部が図+X方+Y方向に向いており(
図17(a)参照)、マルチトレイ4に設けられた装着穴420も、装着フック341に対応してマルチトレイ4が-Y方向にスライドするように設けられている(
図17(b)参照)。
【0052】
図18(a)、(b)は、本実施形態における給送カセット3とマルチトレイ4とを示した斜視図である。
図18(a)は、マルチトレイ4を準備位置にセットした状態を示している。この状態かマルチトレイ4を矢印435方向(-Y方向)に移動することで、マルチトレイ4が装着位置となり、
図18(b)に示す、給送カセット3に装着された状態となる。なお、装着動作での移動および、装着に関わる穴や爪の形状が+Y/-Y方向が逆転しても同様である。
【0053】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0054】
図19(a)は、本実施形態における給送カセット3を示した斜視図であり、
図19(b)は、本実施形態におけるマルチトレイ4を示した斜視図である。本実施形態における給送カセット3は、記録時にマルチトレイ4を記録装置に挿入する方向と、給送カセット3が記録媒体を給送する方向と、が同じ方向となるようにマルチトレイ4を装着するように構成されている。
【0055】
図19(c)は、本実施形態において、マルチトレイ4が装着された給送カセット3を示した斜視図である。記録時にマルチトレイ4を記録装置に挿入する方向と、給送カセット3が記録媒体を給送する方向とが、いずれも+Y方向となっている。
【0056】
なお、マルチトレイ4を給送カセット3に装着する際の準備位置から装着位置への移動方向は、±X方向であっても±Y方向であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 記録装置
2 記録部
3 給送カセット
4 マルチトレイ
11 記録媒体
41 凹部
311 積載面
339 積載面
341 装着フック
420 装着穴
421 位置決め穴