(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20221128BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221128BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20221128BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B01D53/86 222
F01N3/08 B ZAB
F01N3/24 N
F01N3/22 301M
B01D53/86 228
(21)【出願番号】P 2018162889
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】吉村 博之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】矢代 克洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 聡
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏憲
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203032(JP,A)
【文献】特開2017-214884(JP,A)
【文献】特開2016-215139(JP,A)
【文献】特開2005-118622(JP,A)
【文献】特開2002-306939(JP,A)
【文献】特開平10-151324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73,53/86-53/90,53/94,53/96
F01N 3/00,3/02,3/04-3/38,9/00-11/00
B01F 1/00-5/26
B01J 4/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから排出された排ガスが流通するガス流通路に、アンモニアを還元剤として排ガス中の窒素酸化物を還元除去する脱硝触媒を配置し、前記脱硝触媒の上流側の前記ガス流通路を流通する排ガス中へアンモニアを注入する排ガス浄化装置であって、
前記脱硝触媒の下流側に固定的に設けられて、前記ガス流通路を横断するように流路断面内に直線状に延びて並ぶ複数本の撹乱板支持部材と、
上流側に露出する排ガス流対向面を有し、
前記脱硝触媒よりも下流側かつ前記撹乱板支持部材よりも上流側においてアンモニア濃度が他の箇所よりも高い箇所と排ガスの流通方向に重なる位置に配置されるように前記流路断面内での位置を変更可能に前記撹乱板支持部材に固定される撹乱板と、を備えた
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置であって、
前記撹乱板は、前記複数本の撹乱板支持部材のうち隣り合う任意の2本の撹乱板支持部材にそれぞれ解除可能に固定される両側の被支持部と、前記両側の被支持部の間で上流側に露出する前記排ガス流対向面とを有する
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排ガス浄化装置であって、
前記撹乱板の前記排ガス流対向面は、上流側の対向面頂部から下流側へ傾斜する複数の傾斜面を有する
ことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の排ガス処理装置であって、
前記撹乱板の下流側に重なるように配置されて空気を噴出する空気噴出手段を備えた
ことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の排ガス処理装置であって、
前記撹乱板には、未反応のアンモニアを分解処理するアンモニア分解触媒が担持されている
ことを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラからの排ガスを浄化するための排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラで燃料を燃焼して発電を行う火力発電所では、ボイラからの排ガスを排煙処理系統で浄化した後に大気中に排出している。排煙処理系統には、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元除去する脱硝装置や、排ガスとの熱交換によって燃焼用空気を加熱する空気予熱器や、排ガス中の煤塵(燃焼灰)を捕集除去する電気集塵機などが設けられる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、アンモニアを還元剤とする脱硝触媒の下流側にアンモニアの濃度を計測するアンモニア濃度計測装置を設け、脱硝触媒の下流側のアンモニアの濃度に応じて脱硝触媒の上流側へのアンモニアの注入を制御する脱硝装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献3及び特許文献4には、アンモニアを還元剤とする脱硝触媒の下流側にアンモニア分解触媒を設け、脱硝触媒とアンモニア分解触媒との間に、酸化剤注入管から酸化剤を注入する脱硝装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-176733号公報
【文献】特開2017-113697号公報
【文献】特開平11-128686号公報
【文献】特開平9-150039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンモニアを還元剤とする脱硝触媒を用いた脱硝装置の場合、脱硝触媒から流出するリークアンモニアの濃度が高いと、酸性硫安(硫酸水素アンモニウム:NH4HSO4)が生成されて脱硝装置の下流側の機器(例えば、空気予熱器)に付着堆積し、当該機器の劣化や機能不全(例えば、空気予熱器の閉塞)を招くおそれがある。リークアンモニアの濃度は流路断面内において一様ではないため、流路断面内の平均濃度が低い場合であっても、高濃度の部分が存在すると、下流側の機器への酸性硫安の付着堆積が発生し得る。
【0007】
このようなリークアンモニアに起因した酸性硫安の下流側の機器への付着堆積は、特許文献1や特許文献2のように、脱硝触媒の下流側のアンモニアの濃度に応じて脱硝触媒の上流側へのアンモニアの注入を制御することや、特許文献3や特許文献4のように、脱硝触媒の下流側にアンモニア分解触媒を設けることによって抑制することが可能である。
【0008】
しかし、特許文献1及び特許文献2では、脱硝触媒の下流側にアンモニア濃度計測装置を設け、脱硝触媒の下流側のアンモニアの濃度に応じて脱硝触媒の上流側へのアンモニアの注入を制御するので、脱硝装置の複雑化や制御の煩雑化を招く。また、特許文献3及び特許文献4では、脱硝触媒の下流側にアンモニア分解触媒を設け、脱硝触媒とアンモニア分解触媒との間に、酸化剤注入管から酸化剤を注入するので、脱硝装置の複雑化を招く。さらに、脱硝触媒に加えてアンモニア分解触媒を設けるので、脱硝触媒のみを設ける場合に比べて圧損が増大し、排ガスを流通させるファンの負荷が増大する。
【0009】
そこで本発明は、装置の複雑化や制御の煩雑化やファンの負荷増大を抑えつつ、下流側の機器への酸性硫安の付着堆積を抑制することが可能な排ガス浄化装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様は、ボイラから排出された排ガスが流通するガス流通路に、アンモニアを還元剤として排ガス中の窒素酸化物を還元除去する脱硝触媒を配置し、脱硝触媒の上流側のガス流通路を流通する排ガス中へアンモニアを注入する排ガス浄化装置であって、複数本の撹乱板支持部材と、撹乱板とを備える。
【0011】
複数本の撹乱板支持部材は、脱硝触媒の下流側に固定的に設けられ、ガス流通路を横断するように流路断面内に直線状に延びて並ぶ。撹乱板は、上流側に露出する排ガス流対向面を有し、脱硝触媒よりも下流側かつ撹乱板支持部材よりも上流側においてアンモニア濃度が他の箇所よりも高い箇所と排ガスの流通方向に重なる位置に配置されるように流路断面内での位置を変更可能に撹乱板支持部材に固定される。
【0012】
上記構成では、脱硝触媒の下流側で且つ撹乱板支持部材によって撹乱板が支持される位置よりも上流側(例えば脱硝触媒からの出口付近)でのリークアンモニア(未反応のアンモニア)の濃度を、ボイラの運転中(試験運転中であってもよい)に流路断面内の複数個所で測定し、運転停止中に、運転中の測定によりアンモニア濃度が高いと判定された箇所と排ガスの流通方向に重なるように撹乱板を配置して撹乱板支持部材に固定する。係る状態でボイラを運転すると、アンモニア濃度が高い箇所の排ガスが撹乱板の排ガス流対向面に当たり撹乱されて周囲の排ガスと混ざり合う(撹拌される)ため、流路断面内でのアンモニア濃度の偏差(平均濃度との差)が小さくなる。このため、酸性硫安が生成され難くなり、下流側の機器(例えば、空気予熱器)への酸性硫安の付着堆積を抑制することができる。
【0013】
長期間の使用等により流路断面内でのリークアンモニアの濃度分布が変動し、運転中の測定によってアンモニア濃度が高い箇所が変位したと判定された場合には、撹乱板の固定を解除し、アンモニア濃度が高いと判定された箇所と排ガスの流通方向に重なるように撹乱板を移動して撹乱板支持部材に再度固定する。これにより、流路断面内でのリークアンモニアの濃度分布が変動した場合であっても、下流側の機器への酸性硫安の付着堆積を抑制することができる。
【0014】
撹乱板を流路断面の全域ではなく部分的に配置するので、流路断面の全域にアンモニア分解触媒を設ける場合に比べて圧損が増大し難く、排ガスを流通させるファンの負荷の増大を抑制することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様の排ガス浄化装置であって、撹乱板は、複数本の撹乱板支持部材のうち隣り合う任意の2本の撹乱板支持部材にそれぞれ解除可能に固定される両側の被支持部と、両側の被支持部の間で上流側に露出する上記排ガス流対向面とを有する。
【0016】
上記構成では、排ガスが当たる排ガス流対向面の両側の被支持部をそれぞれ撹乱板支持部材に固定するので、撹乱板支持部材による撹乱板の支持状態が安定する。
【0017】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の排ガス浄化装置であって、撹乱板の排ガス流対向面は、上流側の対向面頂部から下流側へ傾斜する複数の傾斜面を有する。
【0018】
上記構成では、排ガス流対向面が上流側の対向面頂部から下流側へ傾斜する複数の傾斜面を有し、排ガス流対向面に当たった排ガスが各傾斜面に沿って下流側へ流れるので、排ガスの撹拌を円滑且つ確実に行うことができる。
【0019】
本発明の第4の態様は、第1~第3の態様の排ガス浄化装置であって、撹乱板の下流側に重なるように配置されて空気を噴出する空気噴出手段を備える。
【0020】
上記構成では、撹乱板による撹拌に加えて空気噴出手段から噴出される空気によっても排ガスが撹拌されるので、排ガスの撹拌能力を高めることができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、第1~第4の態様の排ガス浄化装置であって、撹乱板には、未反応のアンモニアを分解処理するアンモニア分解触媒が担持されている。
【0022】
上記構成では、撹乱板に担持されたアンモニア分解触媒によってリークアンモニアが分解処理されるので、アンモニア濃度が高い箇所においてリークアンモニアの濃度を低下させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、装置の複雑化や制御の煩雑化やファンの負荷増大を抑えつつ、下流側の機器への酸性硫安の付着堆積を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態の排ガス浄化装置を含む排煙処理系統の模式図である。
【
図2】
図1の排ガス浄化装置の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図2の排ガス撹乱機構を上流側から視た斜視図である。
【
図4】排ガス撹乱機構を上流側から視た正面図であり、(a)はスライド領域が横3列に並ぶ
図3の例の正面図、(b)はスライド領域が横4列に並ぶ変形例の正面図、(c)はスライド領域が横5列に並ぶ他の変形例の正面図である。
【
図5】撹乱板支持部材と撹乱板との固定部分を示す断面図である。
【
図6】撹乱板支持部材と撹乱板とを示す斜視図である。
【
図7】撹乱板支持部材に対する撹乱板の着脱を説明するための断面図であり、(a)はスライド溝が閉じられた状態を、(b)はスライド溝が開放された状態をそれぞれ示す。
【
図8】撹乱板の周囲の排ガスの流れを模式的に示す図である。
【
図9】第2実施形態の撹乱板の斜視図であり、(a)はL状に曲折された撹乱板を、(b)は角錘状に形成された撹乱板をそれぞれ示す。
【
図10】第3実施形態の排ガスの流れを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置について、図面を参照して説明する。なお、図中の矢印Dfは排ガスの流通方向を、Daは燃焼用空気の流通方向を示す。
【0026】
図1に示すように、ボイラ(石炭炊きボイラ)1からの排ガスを浄化して大気中に排出する排煙処理系統には、脱硝装置2、空気予熱器(AH:エアヒータ)3、電気集塵機4及び誘引通風機5が設けられる。なお、ボイラ1は、石炭炊き以外のボイラであってもよい。
【0027】
脱硝装置2は、ボイラ1の下流に配置され、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元除去する。空気予熱器3は、脱硝装置2の下流に配置され、排ガスとの熱交換によって燃焼用空気を加熱する。電気集塵機4は、空気予熱器3の下流に配置され、排ガス中の煤塵(燃焼灰)を捕集除去する。誘引通風機5は、電気集塵機4の下流に配置され、排ガスを誘引して煙突6へ導く。
【0028】
ボイラ1と脱硝装置2との間、及び脱硝装置2と空気予熱器3との間は、それぞれ排ガスダクト8、9を介して連通し、ボイラ1内から空気予熱器3へ至るガス流通路の流路断面(排ガスの流通方向Dfと略直交する断面)は、概ね矩形状に形成されている。
【0029】
燃焼用空気は、押込通風機7によって空気予熱器3へ導入され、排ガスの熱によって予熱され、空気ダクト10を流通してボイラ1へ供給される。
【0030】
図2に示すように、脱硝装置2は、脱硝反応器11、触媒層12、及び複数の還元剤注入ノズル(還元剤注入手段)13を備える。脱硝反応器11の内部には、流路断面が矩形状のガス流通路14が区画される。触媒層12、及び還元剤注入ノズル13は、ガス流通路14に配置され、脱硝反応器11に対して固定される。
【0031】
触媒層12は、アンモニアを還元剤として排ガス中の窒素酸化物を還元除去する脱硝触媒(アンモニア脱硝触媒)と、脱硝触媒を担持する担体とから構成される。触媒層12は、1層(1段)であってもよく、複数層(複数段)であってもよい。
【0032】
還元剤注入ノズル13は、触媒層12の上流側のガス流通路14に配置され、ガス流通路14を流通する排ガス中へアンモニアを注入する。なお、ボイラ1と脱硝装置2とを接続する排ガスダクト8(
図1参照)内のガス流通路に還元剤注入ノズル13を配置してもよい。
【0033】
脱硝装置2と空気予熱器3とを連通する排ガスダクト9は、脱硝反応器11に接続されて略水平に延びる水平ダクト15を有し、水平ダクト15の内部には、流路断面が矩形状のガス流通路16が区画される。
【0034】
図2及び
図3に示すように、水平ダクト15の所定位置には、流路断面に沿って等間隔に並ぶ複数の測定用孔(テスト座)17が設けられ、測定用孔17は、蓋体18によって閉止状態に保持される。リークアンモニア(未反応のアンモニア)の濃度を測定する場合には、蓋体18が外されて、測定用孔17からガス流通路16へ濃度センサ(図示省略)が挿入される。
【0035】
測定用孔17の下流側のガス流通路16には、排ガス撹乱機構20が設けられている。排ガス撹乱機構20は、
図3及び
図4に示すように、複数の撹乱板支持部材21と、上固定部材22と、下固定部材23と、1又は複数(
図3及び
図4(a)の例では2枚)の撹乱板24とを備える。撹乱板支持部材21は、両端の撹乱板支持部材21Aと、複数(
図3及び
図4(a)の例では2本)の中間の撹乱板支持部材21Bとから構成される。
【0036】
両端の撹乱板支持部材21Aは、一側にスライド溝26を有するU状断面の長尺材であり、流路断面の左右両側の側縁に沿って略鉛直方向に直線状に延びる。中間の撹乱板支持部材21Bは、両側にスライド溝26を有するH状断面の長尺材であり、両端の撹乱板支持部材21Aの間に等間隔に配置され、略鉛直方向に直線状に延びる。上固定部材22は、流路断面の上縁に沿って略水平に延びる長尺材であり、下固定部材23は、流路断面の下縁に沿って略水平に延びる長尺材である。上固定部材22は、水平ダクト15の上壁(天井)の内面(下面)に固定され、下固定部材23は、水平ダクト15の下壁(底壁)の内面(上面)に固定される。撹乱板支持部材21の上端及び下端は、隣接する2本の撹乱板支持部材21のスライド溝26が互いに対向する状態で、上固定部材22及び下固定部材23にそれぞれ固定され、両端の撹乱板支持部材21Aは、水平ダクト15の側壁の内面に固定される。すなわち、両端の撹乱板支持部材21Aと上固定部材22と下固定部材23とによって流路断面の外縁に沿った矩形枠が構成され、複数の撹乱板支持部材21が等間隔で略平行に格子状に並ぶ。隣接する2本の撹乱板支持部材21は、撹乱板24が鉛直方向に沿ってスライド自在に支持される矩形状のスライド領域25を区画する。
【0037】
本実施形態では、
図3及び
図4(a)に示すように、中間の撹乱板支持部材21Bを2本設置している。両端の撹乱板支持部材21A及び中間の2本の撹乱板支持部材21B(計4本の撹乱板支持部材21)によって、水平方向に並ぶ横3列(左、中央、右)のスライド領域25が区画され、中央を除く左右のスライド領域25にそれぞれ1枚ずつ撹乱板24が配置されている。
【0038】
中間の攪乱板支持部材21Bは、ガス流通路16の大きさ等に併せて任意の本数を設置することができる。
図4(a)では中間に2本の撹乱板支持部材21Bを設置した例を示しているが、
図4(b)や
図4(c)に示すように、中間に3本以上の撹乱板支持部材21Bを設置することができる。
図4(b)は、中間に3本の撹乱板支持部材21Bを設置して横4列のスライド領域25を設けた例であり、
図4(c)は、中間に4本の撹乱板支持部材21Bを設置して横5列のスライド領域25を設けた例である。また、
図4(b)や
図4(c)に示すように、攪乱板24は、ガス流通路16のリークアンモニア分布状状況に応じ、攪乱板支持部材21により区分けされた同一区画(1つのスライド領域25)に複数設置することができる。
図4(b)は、左から2列目のスライド領域25に2枚の撹乱板24を設置した例であり、
図4(c)は、左から2列目のスライド領域25に3枚の撹乱板24を、右端のスライド領域25に2枚の撹乱板24をそれぞれ設置した例である。また、攪乱板24を設置しない区画(スライド領域25)があってもよい。
図4(a)及び
図4(c)は、中央のスライド領域25に撹乱板24を設置していない例である。
【0039】
図5及び
図6に示すように、撹乱板24は、排ガス流対向面27の両側に被支持部28を一体的に有する矩形平板状であり、両側の被支持部28は、隣接する2本の撹乱板支持部材21のスライド溝26にそれぞれ挿入されて係合する。両側の被支持部28がスライド溝26にそれぞれ係合することにより、撹乱板24は、排ガス流対向面27が上流側に露出した状態で、スライド領域25内を撹乱板支持部材21に沿ってスライド移動可能となる。
【0040】
撹乱板支持部材21には、スライド溝26を横断して貫通する複数のボルト挿通孔29が形成されている。複数のボルト挿通孔29は、撹乱板支持部材21の延設方向(本実施形態では略鉛直方向)に沿って所定ピッチP(例えば300mm)で、撹乱板支持部材21の略全長に亘って直線状に並ぶ。撹乱板24の被支持部28には、上記所定ピッチPの整数倍の距離だけ離間する複数(例えば上下2箇所)のボルト挿通孔30が形成されている。被支持部28のボルト挿通孔30を撹乱板支持部材21の任意のボルト挿通孔29に重ね、ボルト挿通孔29,30にボルト31を挿通し、ナット32を螺合して締付けることにより、撹乱板24が撹乱板支持部材21に固定される。ボルト31による締結を解除してボルト31をボルト挿通孔29,30から抜き、ボルト31を挿通するボルト挿通孔29を変えることにより、撹乱板24の固定位置(本実施形態では上下位置)を所定ピッチPで変更することができる。このように、撹乱板24の両側の被支持部28は、複数本の撹乱板支持部材21のうち隣り合う任意の2本の撹乱板支持部材21にそれぞれ解除可能に固定される。
【0041】
撹乱板支持部材21とナット32との間には、スペーサ33を介在させている。スペーサ33を介在させることにより、撹乱板支持部材21及び撹乱板24がボルト31のネジ部と重ならない(雄ネジが形成されていない太径の非ネジ部のみと重なる)ように締結することができ、撹乱板24を強固に固定することができる。
【0042】
図7に示すように、中間の撹乱板支持部材21Bは、水平ダクト15に固定された状態のまま撹乱板24の取付け及び取外しを可能とするため、スライド溝26の一部又は全域が上流側又は下流側へ開放可能に構成されている。本実施形態では、撹乱板支持部材21Bの下部が、下固定部材23に固定される下流側の固定側部材34と、固定側部材34から離脱可能な上流側の可動側部材35とに分割構成されている。可動側部材35の上端は、ヒンジ36を介してその上方の撹乱板支持部材21に回転自在に連結され、可動側部材35の下端は、ボルト37によって下固定部材23に締結固定される(
図7(a)参照)。撹乱板24の追加及び削減(増減)や異なるスライド領域25への水平方向の移動(固定する撹乱板支持部材21の変更)等を行う場合、ボルト37の締結を解除し、ヒンジ36を中心として可動側部材35を上流側へ開移動する(
図7(b)参照)。これにより、スライド溝26の上流側が開放され、撹乱板24の取付け及び取外し(スライド領域25に対する撹乱板24の着脱)が可能となる。なお、
図4(b)及び
図4(c)では、可動側部材35及びヒンジ36の図示を省略している。
【0043】
このように、複数本の撹乱板支持部材21は、脱硝触媒(触媒層12)の下流側に固定的に設けられ、ガス流通路16を横断するように流路断面内に直線状に延びて並ぶ。撹乱板24は、上流側に露出する排ガス流対向面27を有し、流路断面内での位置を変更可能に撹乱板支持部材21に固定される。
【0044】
排ガス撹乱機構20に設置する撹乱板24の数と固定位置とは、流路断面においてアンモニア濃度が高いと判定された箇所と排ガスの流通方向Dfに重なるように設定される。
【0045】
具体的には、ボイラ1の運転中(又は試験運転中)に、脱硝触媒(触媒層12)の下流側で且つ排ガス撹乱機構20よりも上流側のリークアンモニア(未反応のアンモニア)の濃度を、測定用孔17から挿入した濃度センサによって流路断面内の複数個所で測定する。そして、ボイラ1の運転停止中に、運転中の測定によりアンモニア濃度が高い(他の測定箇所よりも高い)と判定された箇所(1又は複数個所)と排ガスの流通方向Dfに重なるように撹乱板24を配置して撹乱板支持部材21に固定する。
【0046】
係る状態でボイラ1を運転すると、
図8に示すように、アンモニア濃度が高い箇所の排ガスが撹乱板24の排ガス流対向面27に当たり撹乱されて周囲の排ガスと混ざり合う(撹拌される)ため、流路断面内でのアンモニア濃度の偏差(平均濃度との差(濃度のバラツキ))が小さくなる。このため、酸性硫安が生成され難くなり、下流側の機器(例えば、空気予熱器3)への酸性硫安の付着堆積を抑制することができる。
【0047】
また、長期間の使用等により流路断面内でのリークアンモニアの濃度分布が変動し、運転中の測定によってアンモニア濃度が高い箇所が変位したと判定された場合には、撹乱板24の固定を解除し、アンモニア濃度が高いと判定された箇所と流通方向Dfに重なるように撹乱板24を移動して撹乱板支持部材21に再度固定する。これにより、流路断面内でのリークアンモニアの濃度分布が変動した場合であっても、下流側の機器への酸性硫安の付着堆積を抑制することができる。なお、この場合、撹乱板24の設置数の増減や異なるスライド領域25への水平方向の移動を行ってもよい。
【0048】
また、撹乱板24を流路断面の全域ではなく部分的に配置するので、流路断面の全域にアンモニア分解触媒を設ける場合に比べて圧損が増大し難く、排ガスを流通させるファンの負荷の増大を抑制することができる。
【0049】
さらに、排ガスが当たる排ガス流対向面27の両側の被支持部28をそれぞれ撹乱板支持部材21に固定するので、撹乱板支持部材21による撹乱板24の支持状態が安定する。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態について、
図9を参照して説明する。本実施形態は、撹乱板の形状が第1実施形態と相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同様であるため、他の構成についての説明は省略する。
【0051】
図9に示すように、本実施形態の撹乱板40,41の排ガス流対向面42,43には、上流側の対向面頂部44,45から下流側へ傾斜する複数の傾斜面46,47が設けられている。
図9(a)は、L状に曲折した撹乱板40の例であり、排ガス流対向面42には、対向面頂部(稜線部)44から傾斜する2箇所の傾斜面46が設けられている。
図9(b)は、角錘状に形成した撹乱板41の例であり、排ガス流対向面43には、対向面頂部45から傾斜する4箇所の傾斜面47が設けられている。
【0052】
このように、排ガス流対向面42,43が上流側の対向面頂部44,45から下流側へ傾斜する複数の傾斜面46,47を有しているので、排ガス流対向面42,43に当たった排ガスが各傾斜面46,47に沿って下流側へ流れる。従って、排ガスの撹拌を円滑且つ確実に行うことができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態について、
図10を参照して説明する。本実施形態は、空気噴出ノズル(空気噴出手段)50を設けたものであり、他の構成は第1実施形態と同様であるため、他の構成ついての説明は省略する。
【0054】
空気噴出ノズル50は、撹乱板24の下流側に重なるように配置されて下流側へ向けて空気を噴出する。撹乱板24による撹拌に加えて空気噴出ノズル50から噴出される空気によっても排ガスが撹拌されるので、排ガスの撹拌能力を高めることができる。
【0055】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第3の実施形態の撹乱板24,40,41に、未反応のアンモニアを分解処理するアンモニア分解触媒を担持させたものであり、他の構成は第1~第3の実施形態と同様であるため、他の構成についての説明は省略する。
【0056】
アンモニア分解触媒は、例えば排ガス流対向面27,42,43の表面に薄膜状に固着することにより撹乱板24,40,41に担持され、アンモニア分解触媒によって排ガス中のリークアンモニアが分解処理される。従って、アンモニア濃度が高い箇所においてリークアンモニアの濃度を低下させることができる。
【0057】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態及び変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、脱硝装置2と空気予熱器3とを連通する排ガスダクト9の水平ダクト15内のガス流通路16に排ガス撹乱機構20(撹乱板24,40,41)を設けたが、これに代えて、
図11に示すように、排ガスダクト9の垂直ダクト51内のガス流通路(排ガスの流通方向Dfが鉛直下方となる流通路)52に排ガス撹乱機構20を設けてもよい。この場合、複数の撹乱板支持部材は、略水平方向に直線状に延び、撹乱板は鉛直方向と略直交する。
【0059】
また、本実施形態では、撹乱板24が上下方向(鉛直方向)に移動するように撹乱板支持部材21を配置したが、撹乱板24が他の方向(例えば水平方向など)に移動するように撹乱板支持部材21を配置してもよい。
【0060】
また、ボルト31による締結以外の方法(例えば溶接など)によって撹乱板24を撹乱板支持部材21に固定してもよい。
【0061】
また、撹乱板支持部材21の形状はU状断面やH状断面に限定されず、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1:ボイラ
2:脱硝装置
3:空気予熱器
4:電気集塵機
5:誘引通風機
6:煙突
7:押込通風機
8,9:排ガスダクト
10:空気ダクト
11:脱硝反応器
12:触媒層
13:還元剤注入ノズル(還元剤注入手段)
14,16,52:ガス流通路
15:水平ダクト
17:測定用孔
18:蓋体
20:排ガス撹乱機構
21,21A,21B:撹乱板支持部材
22:上固定部材
23:下固定部材
24,40,41:撹乱板
25:スライド領域
26:スライド溝
27,42,43:排ガス流対向面
28:被支持部
29,30:ボルト挿通孔
31,37:ボルト
32:ナット
33:スペーサ
34:固定側部材
35:可動側部材
36:ヒンジ
44,45:対向面頂部
46,47:傾斜面
50:空気噴出ノズル(空気噴出手段)
51:垂直ダクト