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  • 特許-硬化型封止材、硬化物および表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】硬化型封止材、硬化物および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20221128BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221128BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221128BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20221128BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221128BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G09F9/30 309
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/04
H05B33/12 E
G09F9/30 365
C09K3/10 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018163473
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020034867
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高木 正利
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】白石 巧充
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037627(WO,A1)
【文献】特開2008-239592(JP,A)
【文献】特開2004-045887(JP,A)
【文献】国際公開第2010/061634(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/168565(WO,A1)
【文献】特開2015-188075(JP,A)
【文献】特開2016-000793(JP,A)
【文献】特開2016-011329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F,H01L,H05B,C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する化合物(P)を含み、
発光素子用封止材である硬化型封止材。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化型封止材において、
前記化合物(P)が下記一般式(A)で示されるポルフィリン系化合物を含む硬化型封止材。
【化1】

[式中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、エチニル基、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、フェニル基を有するエチニル基、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基を表す。ただし、X~Xのすべてが水素原子であることはない。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、または酸化金属原子を表す。]
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化型封止材において、
当該硬化型封止材を硬化することによって厚さ10μmの硬化物シートを作製したとき、
前記硬化物シートの400nm以上800nm以下の範囲での平均光線透過率が80%以上である硬化型封止材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化型封止材において、
当該硬化型封止材を硬化することによって厚さ10μmの硬化物シートを作製したとき、
450nm以上500nm以下の範囲に存在する吸収極大波長での光線透過率が30%以上である硬化型封止材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化型封止材において、
前記化合物(P)が下記一般式(A-1)または(A-2)で示されるポルフィリン系化合物を含む硬化型封止材。
【化2】

【化3】
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化型封止材において、
熱硬化性樹脂、熱硬化性化合物、光硬化性樹脂および光硬化性化合物からなる群から選択される一種または二種以上の硬化性化合物をさらに含む硬化型封止材。
【請求項7】
請求項に記載の硬化型封止材において、
当該硬化型封止材に含まれる硬化性化合物を100質量部としたとき、前記化合物(P)の含有量が0.0001質量部以上10質量部以下である硬化型封止材。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化型封止材において、
硬化剤をさらに含む硬化型封止材。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬化型封止材を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
発光素子と、前記発光素子を封止するための封止層と、を備え、
前記封止層が請求項に記載の硬化物を含む表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の表示装置において、
有機EL表示装置または液晶表示装置である表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型封止材、硬化物および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置等の表示装置において、近年カラー化技術が飛躍的な進歩を遂げている。より美しく鮮明な画像を表示するためには、表示装置から発せられる赤、緑および青の色純度をできるだけ高くすることにより、色の再現性を高くすることが必要となる。
例えば、特許文献1には、基材中に、440~510nmに極大吸収波長を有するジピロメテン金属キレート化合物を少なくとも1種含有してなる光学フィルターが開示されている。特許文献1には、上記光学フィルターは、各種ディスプレーにおいて発生する480nm付近にある余分な光を効率よくカットするため、可視光線の緑色部分を正確に再生する優れた性能を有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-57436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の光学フィルターを用いると、表示装置の製造工程や構成が複雑になってしまう。そのため、表示装置の色純度を向上できるとともに、表示装置の構成を簡略化できる技術が求められている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表示装置の色純度を向上できるとともに、表示装置の構成を簡略化できる硬化型封止材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する化合物(P)を含む硬化型封止材を、発光素子を封止するための封止材として用いることによって、表示装置の色純度を向上できるとともに、表示装置の構成を簡略化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す硬化型封止材、硬化物および表示装置が提供される。
【0008】
[1]
450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する化合物(P)を含む硬化型封止材。
[2]
上記[1]に記載の硬化型封止材において、
上記化合物(P)が下記一般式(A)で示されるポルフィリン系化合物を含む硬化型封止材。
【化1】
[式中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、エチニル基、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、フェニル基を有するエチニル基、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基を表す。ただし、X~Xのすべてが水素原子であることはない。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、または酸化金属原子を表す。]
[3]
上記[1]または[2]に記載の硬化型封止材において、
当該硬化型封止材を硬化することによって厚さ10μmの硬化物シートを作製したとき、
上記硬化物シートの400nm以上800nm以下の範囲での平均光線透過率が80%以上である硬化型封止材。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の硬化型封止材において、
当該硬化型封止材を硬化することによって厚さ10μmの硬化物シートを作製したとき、
450nm以上500nm以下の範囲に存在する吸収極大波長での光線透過率が30%以上である硬化型封止材。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の硬化型封止材において、
上記化合物(P)が下記一般式(A-1)または(A-2)で示されるポルフィリン系化合物を含む硬化型封止材。
【化2】
【化3】
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の硬化型封止材において、
発光素子用封止材である硬化型封止材。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の硬化型封止材において、
熱硬化性樹脂、熱硬化性化合物、光硬化性樹脂および光硬化性化合物からなる群から選択される一種または二種以上の硬化性化合物をさらに含む硬化型封止材。
[8]
上記[7]に記載の硬化型封止材において、
当該硬化型封止材に含まれる硬化性化合物を100質量部としたとき、上記化合物(P)の含有量が0.0001質量部10質量部以下である硬化型封止材。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の硬化型封止材において、
硬化剤をさらに含む硬化型封止材。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の硬化型封止材を硬化してなる硬化物。
[11]
発光素子と、上記発光素子を封止するための封止層と、を備え、
上記封止層が上記[10]に記載の硬化物を含む表示装置。
[12]
上記[11]に記載の表示装置において、
有機EL表示装置または液晶表示装置である表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表示装置の色純度を向上できるとともに、表示装置の構成を簡略化できる硬化型封止材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態の表示装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。また、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0012】
<硬化型封止材>
本実施形態に係る硬化型封止材は、450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する化合物(P)を含む。本実施形態に係る硬化型封止材は、熱をかけることによって硬化する熱硬化型、または光を照射することによって硬化する光硬化型である。
本実施形態に係る硬化型封止材に含まれる化合物(P)は、450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する。そのため、このような化合物(P)を含む本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物を、発光素子を封止するための封止層に用いることによって、表示装置において発光素子から発生する480nm付近にある余分な光を効率よくカットすることができる。その結果、可視光線の緑色部分を正確に再生することができ、表示装置の色純度を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物を、発光素子を封止するための封止層に用いることによって、表示装置から480nm付近にある余分な光をカットするための光学フィルターを除去することができ、その結果、表示装置の構成を簡略化することができる。
以上から、本実施形態に係る硬化型封止材によれば、表示装置の色純度を向上できるとともに、表示装置の構成を簡略化できる硬化型封止材を提供することができる。
また、波長482nmを中心とする光は眼内の光受容体に作用し、瞳孔光反射を促し、瞳孔を収縮させるため、眼に有害とされている。そのため、本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物を封止層に用いることによって、波長482nmを中心とする光をカットすることができるため、表示装置から眼に有害な光を除去することも可能である。さらに、不要な波長をカットすることによって、表示装置の輝度も調整することが可能である。
【0013】
(化合物(P))
本実施形態に係る硬化型封止材に含まれる化合物(P)は、450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する化合物であれば特に限定されないが、471nm~490nmの範囲に吸収極大波長長をもつ有機色素が好ましく、475nm~485nmの範囲に吸収極大波長をもつ有機色素がより好ましい。好ましい有機色素としてポルフィリン系化合物等を挙げることができる。
【0014】
本実施形態に係る化合物(P)は、下記一般式(A)で示されるポルフィリン系化合物が好ましい。
【0015】
【化4】
【0016】
式中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、置換もしくは未置換のエチニル基を表す。ただし、X~Xのすべてが水素原子であることはない。R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子または酸化金属原子を表す。
【0017】
ここで、置換されたエチニル基の置換基としては、それぞれアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基が挙げられる。
一般式(A)においてX~Xは、好ましくはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、または、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基、未置換のフェニル基を有するエチニル基である。ただし、X~Xのすべてが水素原子であることはない。
【0018】
~Rは、好ましくはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。
また、Mは好ましくは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Mn、Mg、Mn(OH)、Mn(OH)、VO、またはTiOである。
【0019】
より好ましくは、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、または、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基である。
また、Mはさらに好ましくは、Cu、Pt、Pd、NiまたはVOであり、より好ましくはNi,Pdである。
~Xの具体例について以下に説明する。
【0020】
~Xが直鎖もしくは分岐のアルキル基である場合、直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基がより好ましい。
【0021】
~Xが置換エチニル基である場合、置換エチニル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等の直鎖もしくは分岐のアルキル基を置換基として有するエチニル基;未置換のフェニル基を置換基として有するエチニル基;2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基、4-n-ヘキシルフェニル基、4-n-オクチルフェニル基、4-n-ノニルフェニル基等の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を置換基として有するエチニル基;等が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の直鎖もしくは分岐のアルキル基を置換基として有するエチニル基;フェニル基を置換基として有するエチニル基;2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基等の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を置換基として有するエチニル基がより好ましい。
【0022】
~Rが直鎖もしくは分岐のアルキル基である場合、直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基がより好ましい。
【0023】
本実施形態に係る化合物(P)としては、下記一般式(A-1)または(A-2)で示されるポルフィリン系化合物がより好ましい。
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
本実施形態に係る硬化型封止材に用いられるこのようなポルフィリン系化合物は、450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有するため、このようなポルフィリン系化合物を含む本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物を封止層に用いることによって、表示装置において発光素子から発生する480nm付近にある余分な光を効率よくカットすることができる。その結果、可視光線の緑色部分を正確に再生することができ、表示装置の色純度を向上させることができる。
【0027】
本実施形態に係る硬化型封止材に用いられるポルフィリン系化合物は、それ自体公知の方法を参考にして製造することができる。すなわち、一般式(A)で表される化合物は、例えば、一般式(B-1)~一般式(B-4)で表される化合物と一般式(C-1)~一般式(C-4)で表される化合物とを、酸触媒(例えば、プロピオン酸、ボロントリフルオリド・エチルエーテル錯体、トリフルオロ酢酸)による脱水縮合反応および酸化(例えば、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン)、いわゆるRothermunt反応により合成し、さらに、所望により金属あるいは金属塩(例えば、アセチルアセトン錯体、金属の酢酸塩)を適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0028】
【化7】
【0029】
式中、X~X、及びR~Rは一般式(A)の場合と同じ意味を表す。
なお、本実施形態において、一般式(A)で表されるポルフィリン系化合物は、実際には、一種または二種以上の異性体から成る混合物を表している。このような複数の異性体から成る混合物の構造の記載に際しても、本実施形態においては、便宜上、例えば、一般式(A)で表される一つの構造式を記載しているものである。
【0030】
本実施形態に係る硬化型封止材においては、本実施形態に係るポルフィリン系化合物は、一種または二種以上の異性体から成る混合物を使用することができる。また、所望により、該混合物から各異性体を分離し、異性体の内の一種の化合物を用いることができ、さらには、任意の割合から成る複数の異性体を併用することができる。なお、本実施形態に係るポルフィリン系化合物とは、結晶は勿論であるが、無定型(アモルファス体)をも包含するものである。
【0031】
本実施形態に係る硬化型封止材においては、ポルフィリン系化合物を一種単独で使用してもよく、あるいは二種以上を併用してもよい。
【0032】
(封止材)
本実施形態に係る硬化型封止材は、発光素子を備える表示装置における、発光素子を封止するための封止層を形成するための組成物である。
【0033】
本実施形態に係る硬化型封止材は硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。
上記硬化性化合物としては、硬化型封止材に用いられる公知の樹脂および硬化性化合物を用いることができる。このような硬化性化合物としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱硬化性化合物、光硬化性樹脂および光硬化性化合物等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る硬化型封止材に含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を挙げることができる。
【0035】
硬化性樹脂(熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂)としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂等が挙げられ、好ましくはエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂、フェノール樹脂およびメラミン樹脂であり、より好ましくはエポキシ樹脂である。これらの硬化性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0036】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート型、ヒダントイン型等の含窒素環型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ジシクロ型エポキシ樹脂;エステル型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂(ダイセルのセロキサイド等);脂肪族エポキシ樹脂;これらの変性物または水素添加物等が挙げられる。
オキセタン樹脂としては、例えば東亜合成のアロンオキセタン等が挙げられる。
【0037】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂等が用いられる。
【0038】
上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、及び、反応性の官能基を変性して(メタ)アクリロイル基を分子中に保有するもの等が挙げられる。これらの中でも、紫外線の照射により発生した活性ラジカルで速やかに重合又は架橋が進行する点から(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。なお、本実施形態において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルキルオキシシリル基を有する(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類又はその水素添加物とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂や、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のアルカンジオール類とエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるアルカンジオール系ポリエポキシ樹脂等のポリエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、有機ジイソシアネート化合物に、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート類;アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、アミドジオール、スピログリコール化合物等のアルコール類の水酸基に有機ジイソシアネート化合物を付加して得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基に、分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0039】
また、上記硬化性樹脂に熱硬化剤、熱ラジカル開始剤、光重合開始剤等の硬化剤を配合することができる。
このような熱硬化剤、熱ラジカル開始剤、光重合開始剤としては特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、紫外線等の光が照射されることでラジカル又はイオンを生成する重合開始剤(UVラジカル開始剤、UVカチオン開始剤)が挙げられる。
【0040】
これらの樹脂は、それぞれ1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
これらの熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂についての定義、製法については、周知であり、たとえば「実用プラスチック事典」(実用プラスチック事典 編集委員会編、株式会社産業調査会発行)等の刊行物に記載されている。なおここでいう「樹脂」とは軟質、硬質いずれであってもよく、特に制限はない。
【0041】
本実施形態に係る硬化型封止材に含まれる硬化性化合物(熱硬化性化合物および/または光硬化性化合物)としては、ポリイソ(チオ)シアネート化合物、二官能以上の活性水素化合物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。
【0042】
ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、イソシアナート基またはイソチオシアナート基を合わせて2個以上有する化合物であり、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(イソシアンアトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ジチオランジイソシアネート、イソホロンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、ビス(イソチオシアナトシクロヘキシル)メタン、トリス(イソシアナトペンチル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトヘキシル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0043】
二官能以上の活性水素化合物としては、例えば、ヒドロキシ基、メルカプト基、およびアミノ基から選択される官能基を2以上を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、チオグリセリン等のヒドロキシ基を有する二官能以上の活性水素化合物;トリチオグリセリン、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパン(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-3,6-ジチアオクタン-1,8-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチル)-2-チアプロパン、1,4-ジチアン-2,5-ジチオール、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、キシリレンジチオール等のメルカプト基を有する二官能以上の活性水素化合物;キシリレンジアミン、α、α、α'、α'-テトラメチル-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、ジアミノポリプロピレン、ジアミノポリエチレン、イソホロンジアミン、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等のアミノ基を有する二官能以上の活性水素化合物等が挙げられる。
【0044】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ジプロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、トリプロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ポリプロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の脂肪族型ジ(メタ)アクリレート;2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシプロピルオキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシジプロピルオキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシポリプロピルオキシフェニル]プロパン、2、2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシ(2’-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン等の芳香族含有型ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)クリレート、等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基が4個以上置換された多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る硬化型封止材中の化合物(P)の含有量は、該硬化型封止材に含まれる硬化性化合物を100質量部としたとき、表示装置において発生する480nm付近にある余分な光をより一層効率よくカットする観点から、0.0001質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上がさらに好ましく、0.01質量部以上が特に好ましい。
また、本実施形態に係る硬化型封止材中の化合物(P)の含有量は、該硬化型封止材に含まれる硬化性化合物を100質量部としたとき、得られる封止層の透明性をより良好にし、表示装置の発光性をより一層良好にする観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0046】
本実施形態に係る硬化型封止材中の上記硬化性化合物および化合物(P)の合計含有量は、硬化型封止材全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0047】
本実施形態に係る硬化型封止材には、所望により各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、有機充填材、無機充填剤、触媒、紫外線重合開始剤、熱重合開始剤、内部離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、フォトクロミック剤、サーモクロミック剤、色素、染料、顔料、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、硬化促進剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0048】
本実施形態に係る硬化型封止材は、得られる封止層の透明性をより良好にし、表示装置の発光性や輝度をより一層良好にする観点から、当該硬化型封止材を硬化することによって得られる厚さ10μmの硬化物シートの400nm以上800nm以下の範囲での平均光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、当該硬化型封止材を硬化することによって得られる硬化物シートは、例えば、本実施形態に係る硬化型封止材を加熱すること、あるいは紫外線等の光を照射することによって得ることができる。硬化型封止材を硬化するための加熱条件や光照射条件は、硬化型封止材を構成する硬化性化合物の種類によって適宜選択されるため、特に限定されず、公知の情報から適宜選択できる。また、本実施形態において、硬化型封止材を完全硬化させる必要はなく、例えば、後述の実施例に記載した反応率が80%以上となる状態を硬化物と定義することができる。
【0049】
本実施形態に係る硬化型封止材は、得られる封止層の透明性をより良好にし、表示装置の発光性をより一層良好にする観点から、当該硬化型封止材を硬化することによって得られる厚さ10μmの硬化物シートの、450nm以上500nm以下の範囲に存在する吸収極大波長での光線透過率が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。
ここで、当該硬化型封止材を硬化することによって得られる硬化物シートは、例えば、本実施形態に係る硬化型封止材を加熱すること、あるいは紫外線等の光を照射することによって得ることができる。硬化型封止材を硬化するための加熱条件や光照射条件は、硬化型封止材を構成する硬化性化合物の種類によって適宜選択されるため、特に限定されず、公知の情報から適宜選択できる。また、本実施形態において、硬化型封止材を完全硬化させる必要はなく、例えば、後述の実施例に記載した反応率が80%以上となる状態を硬化物と定義することができる。
【0050】
本実施形態に係る硬化型封止材の形態は特に限定されないが、取扱い性や加工性に優れる点から、液状またはシート状が好ましい。
【0051】
<表示装置>
本実施形態に係る表示装置は、発光素子と、発光素子を封止するための封止層と、を備え、上記封止層が本実施形態に係る硬化型封止材を硬化してなる硬化物(Q)を含む。
【0052】
本発明者らは色純度を向上できるとともに、構成が簡略された表示装置を提供するために鋭意検討した結果、450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有する化合物(P)を含む硬化型封止材を、発光素子を封止するための封止材として用いることによって、表示装置の色純度を向上できるとともに、表示装置の構成を簡略化できることを見出した。
化合物(P)は450nm以上500nm以下の範囲に吸収極大波長を有するため、このような化合物(P)を含む本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物(Q)からなる封止層は、表示装置において発光素子から発生する480nm付近にある余分な光を効率よくカットすることができる。そのため、本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物(Q)からなる封止層を備えることによって、発光素子からの光が封止層を透過した際に、化合物(P)を含む封止層によって波長480nm付近にある余分な光を効果的にカットすることができ、可視光線の緑色部分を正確に再生することができ、表示装置の色純度を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係る硬化型封止材の硬化物(Q)からなる封止層を備えることによって、表示装置から、480nm付近にある余分な光をカットするための光学フィルターを除去することができ、その結果、表示装置の構成を簡略化することができる。
【0053】
本実施形態に係る表示装置は特に限定されないが、例えば、有機EL表示装置や液晶表示装置等が挙げられる。
また、本実施形態に係る硬化型封止材は硬化型のため、発光素子と封止層との接着性に優れている。そのため、本実施形態に係る硬化型封止材は、繰り返し曲げが可能なベンダブルディスプレイや、巻き取ることが可能なローラブルディスプレイ等の装置に大きな応力が掛かる表示装置にも好適に用いることができる。
すなわち、本実施形態に係る表示装置としては、繰り返し曲げが可能なベンダブルディスプレイや、巻き取ることが可能なローラブルディスプレイ等の装置も挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る表示装置の構成は、発光素子が硬化物(Q)を含む封止層により封止されていれば特に限定されず、公知の構成を採用することができる。以下、有機EL表示装置を一例として説明する。
【0055】
図1は本発明に係る実施形態の表示装置100の一例を示す断面図である。
図1に示す表示装置100は、有機EL表示装置であり、例えば、バリア性層21(タッチパネル層21または表面保護層21であってもよい)、オーバーコート層22(封止層22またはバリア性層22であってもよい)、封止層23、バリア性層24等を有している。
図1に示す表示装置100は、例えば、基材層50上に設けられた発光素子10と、発光素子10を覆うように基材層50上に設けられた封止層23と、封止層23の表面に設けられたバリア性層24と、封止層23およびバリア性層24を覆うように基材層50上に設けられたオーバーコート層22と、オーバーコート層22上に設けられたバリア性層21と、を備えている。
各層の具体的な構成は特に限定されず、一般的に公知の情報に基づいて、適切な構成をそれぞれ採用することができる。また、このような表示装置100は、一般的に公知の情報に基づいて、製造することが可能である。
【0056】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例
【0057】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において用いた材料・評価方法は以下の通りである。
【0058】
[実施例1]
フラスコに、150質量部のYX8000(三菱ケミカル社製;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)と、200質量部のjER1004(三菱ケミカル社製;ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂)と、150質量部のjER1256(三菱ケミカル社製;フェノキシ樹脂)とを投入し、これに500質量部のメチルエチルケトンを加え、室温で攪拌溶解し、樹脂溶解液とした。
この樹脂溶解液100質量部を別に用意したフラスコに取り分け、0.025質量部の上記一般式(A-1)で示されるポルフィリン系化合物(A-1)と、1質量部のCXC-1612(楠本化成社製;熱カチオン重合開始剤)と、0.5質量部のKBM-403(信越化学工業社製;シランカップリング剤)と、を上記フラスコに添加して室温で攪拌し、ワニスを調製した。
ここで、上記一般式(A-1)で示されるポルフィリン系化合物(A-1)は、国際公開第2015/037627の段落0111~0115に記載の合成例1に従って合成した。
【0059】
調製したワニスを、塗工機を用いて、基材フィルム(離型処理PETフィルム、A53、帝人フィルムソリューション社製、厚み50μm)に、乾燥後厚みが約20μmとなるようにアプリケーターで塗工した。このフィルムを90℃イナートオーブン中で、3分間乾燥させて、ワニス塗工膜中のメチルエチルケトンを乾燥除去して、基材フィルム上にシート状エポキシ樹脂組成物からなる層を形成した。さらに、シート状エポキシ樹脂組成物からなる層上に、保護フィルム(離型処理PETフィルム、A31、帝人フィルムソリューション社製、厚み38μm)を70℃で熱圧着し、封止用シートを得た。なお、保護フィルムは適宜剥がし、シート状エポキシ樹脂組成物からなる層の表面を露出させて使用した。
【0060】
[実施例2]
フラスコに、150質量部のYL983U(三菱化ケミカル社製;ビスフェノールF型エポキシ樹脂)と、200質量部のjER1004と、150質量部のjER1256とを投入し、これに500質量部のメチルエチルケトンを加え、室温で攪拌溶解し、樹脂溶解液とした。
この樹脂溶解液100質量部を別に用意したフラスコに取り分け、0.025質量部のポルフィリン系化合物(A-1)と、0.5質量部の2E4MZ(四国化成工業社製;エポキシ樹脂硬化剤)と、0.5質量部のKBM-403と、を上記フラスコに添加して室温で攪拌し、ワニスを調製した。このワニスを用いた以外は実施例1と同様にして、シート状エポキシ樹脂組成物からなる層を有する封止用シートを得た。
【0061】
[実施例3]
フラスコに、100質量部のCEL2021P(ダイセル社製;脂環式エポキシ樹脂)と、125質量部のエポライト40E(共栄社化学社製;直鎖脂肪族エポキシ樹脂)と、275質量部のOXT221(東亜合成社製;オキセタン樹脂)とを投入し、室温で混合攪拌し、樹脂液とした。
この樹脂液100質量部を別に用意したフラスコに取り分け、0.05質量部のポルフィリン系化合物(A-1)と、1質量部のCPI210S(サンアプロ社製;光カチオン重合開始剤)と、0.5質量部のUVS-1331(川崎化成工業社製:光カチオン増感剤)と1質量部のKBM-403と、を上記フラスコに添加して室温で攪拌し、封止材組成物を調製した。
【0062】
[実施例4]
フラスコに、50質量部のライトアクリレートPO-A(共栄社化学社製;フェノキシエチルアクリレート)と、450質量部のライトアクリレート3EG-A(共栄社化学社製;脂肪族アクリレート)と、0.5質量部のMEHQ(重合禁止剤)と、を投入し、室温で混合攪拌し、樹脂液とした。
この樹脂液100質量部を別に用意をしたフラスコに取り分け、0.05質量部のポルフィリン系化合物(A-1)と、5質量部のラジカル重合開始剤IRGACURE_TPO(BASFジャパン社製;UVラジカル開始剤)と、1質量部のKBM-5103(信越化学工業社製;シランカップリング剤)と、を上記フラスコに添加して室温で攪拌し、封止材組成物を調製した。
【0063】
[比較例1]
実施例1で調製した樹脂溶解液100質量部を別に用意したフラスコに取り分けて、表1に示す組成比率(質量比)に変更した以外は実施例1と同様にしてワニスを調製した。このワニスを用いた以外は実施例1と同様にして、シート状エポキシ樹脂組成物からなる層を有する封止用シートを得た。
【0064】
[比較例2]
実施例2で調製した樹脂溶解液100質量部を別に用意したフラスコに取り分けて、表1に示す組成比率(質量比)に変更した以外は実施例2と同様にしてワニスを調製した。このワニスを用いた以外は実施例2と同様にして、シート状エポキシ樹脂組成物からなる層を有する封止用シートを得た。
【0065】
[比較例3]
実施例3で調製した樹脂液100質量部を別に用意したフラスコに取り分けて、表1に示す組成比率(質量比)に変更した以外は実施例3と同様にして封止材組成物を調製した。
【0066】
[比較例4]
実施例4で調製した樹脂液100質量部を別に用意したフラスコに取り分けて、表1に示す組成比率(質量比)に変更した以外は実施例4と同様にして封止材組成物を調製した。
【0067】
<評価方法>
実施例1~4および比較例1~4でおこなった評価は以下のとおりである。得られた結果を表2に示す。
【0068】
[平均透過率]
1)実施例1~2および比較例1~2で得られた封止用シートを、長さ約60mm、幅約40mmに切り出して試験片をそれぞれ得た。得られた試験片のシート状エポキシ樹脂組成物からなる層を、70℃に加熱したホットプレート上で加熱したガラス板(松浪硝子製No.3、厚さ0.3mm、70mm×50mm)に気泡の入らぬようにロールにて転写して貼り合わせた。当該試験片をホットプレート上から外し、3分間放冷した。その後、基材フィルムを剥離して、ガラス板上のシート状エポキシ樹脂組成物をオーブンにて100℃で120分間加熱して、硬化物とした。シート状エポキシ樹脂組成物の硬化物が形成されたガラス板の、波長400nm~800nmにおける光線透過率を、紫外可視光分光光度計(島津製作所、UV-2550)を用いて測定し、400nm~800nmでの平均透過率(1nm刻み)を算出した。測定では、ガラス板単独の光線透過率をベースラインとした。
【0069】
2)実施例3~4および比較例3~4で得られた封止材組成物を、ガラス板(松浪硝子製No.3、厚さ0.3mm、70mm×50mm)に厚み10μmになるようにインクジェット装置にて塗布して試験片をそれぞれ得た。次いで、得られた試験片に対して、窒素雰囲気下で波長395nmの紫外線を照射強度1000mW/cmで1.5秒間照射することにより、当該試験片をUV硬化させて、硬化物をそれぞれ得た。エポキシ樹脂組成物の硬化物が形成されたガラス板の、波長400~800nmにおける光線透過率を、紫外可視光分光光度計(島津製作所、UV-2550)を用いて測定した。測定では、ガラス板単独の光線透過率をベースラインとした。
【0070】
[硬化性]
1)エポキシ反応率(DSC法)
実施例1~2および比較例1~2で得られた封止用シートから10mgのサンプルを採取し、DSC測定用アルミセルに詰め、測定試験サンプルを準備した。そして、昇温速度5℃/分、測定温度範囲:20℃~300℃にてDSCで未硬化品の発熱量を測定した。
未硬化品と同様にして測定サンプルを準備した。硬化はあらかじめ100℃に設定したオーブン中で行い、サンプル投入から120分後に測定サンプルを取り出した。そして、昇温速度5℃/分、測定温度範囲:20℃~300℃にてDSCで硬化品の発熱量を測定した。そして、測定された発熱量から、下記に示す式より、硬化温度100℃におけるエポキシ反応率(%)を求めた。
反応率(%)=(未硬化品の発熱量-硬化品の発熱量)/未硬化品の発熱量×100
【0071】
2)エポキ反応率(FT-IR法)
実施例3および比較例3で得られた封止材組成物を、ガラス板(松浪硝子製No.3、厚さ0.3mm、70mm×50mm)に厚み10μmになるようにインクジェット装置にて塗布して試験片をそれぞれ得た。次いで、得られた試験片に対して、窒素雰囲気下で波長395nmの紫外線を照射強度1000mW/cmで1.5秒間照射することにより、当該試験片をUV硬化させて、硬化物をそれぞれ得た。硬化物と未硬化物のIRスペクトルをATR(FT/IR-6600、日本分光製)でそれぞれ測定した。
標準ピークを1732cm-1とし、反応ピークを980cm-1、910cm-1および830cm-1とし、下記に示す式より、UV硬化でのエポキシ反応率(%)を求めた。
反応率(%)=[1-(UV硬化後の反応ピーク強度/UV硬化後の標準ピーク強度)/(UV硬化前の反応ピーク強度/UV硬化前の標準ピーク強度)]×100
【0072】
3)アクリル反応率(FT―IR法)
実施例4および比較例4で得られた封止材組成物を、ガラス板(松浪硝子製No.3、厚さ0.3mm、70mm×50mm)に厚み10μmになるようにインクジェット装置にて塗布して試験片をそれぞれ得た。次いで、得られた試験片に対して、窒素雰囲気下で波長395nmの紫外線を照射強度1000mW/cmで1.5秒間照射することにより、当該試験片をUV硬化させて、硬化物をそれぞれ得た。硬化物と未硬化物のIRスペクトルをATR(FT/IR-6600、日本分光製)でそれぞれ測定した。
標準ピークを1725cm-1とし、反応ピークを1637cm-1とし、下記に示す式より、UV硬化でのアクリル反応率(%)を求めた。
反応率(%)=[1-(UV硬化後の反応ピーク強度/UV硬化後の標準ピーク強度)/(UV硬化前の反応ピーク強度/UV硬化前の標準ピーク強度)]×100
【0073】
[密着性]
1)密着性評価A;アルミ-PET複合フィルム(アルミ面)/樹脂/アルカリガラス
ばね式天秤(1kg秤量用)にてアルミ面と封止シート組成物の硬化物との90度剥離強度を測定した。実施例1、2および比較例1、2では、この90度剥離強度を接着強度とした。
【0074】
2)密着性評価B:ニチバンテープ(CT-24)/樹脂/SiNx蒸着基板
剥離試験機(装置名:STOROGRAPH?E-S、剥離速度300mm/min)にて、SiNx蒸着基板と封止材組成物の硬化物との180度剥離強度を測定した。実施例3、4および比較例3、4では、この180度剥離強度を接着強度とした。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【符号の説明】
【0077】
10 発光素子
21 バリア性層、タッチパネル層または表面保護層
22 オーバーコート層、封止層またはバリア性層
23 封止層
24 バリア性層
50 基材層
100 表示装置
図1