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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】光電変換装置および機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20221128BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20221128BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N5/369
H01L27/146 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018170835
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020043265
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳栄
(72)【発明者】
【氏名】廣田 克範
(72)【発明者】
【氏名】大貫 裕介
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勉
(72)【発明者】
【氏名】荻野 拓海
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0047363(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170216(US,A1)
【文献】特開2017-212351(JP,A)
【文献】特開2013-175494(JP,A)
【文献】特開2006-120953(JP,A)
【文献】特開2016-139988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換部を有する半導体層を備え、前記半導体層が前記複数の光電変換部の各々の受光面を成す主面を有する光電変換装置であって、
前記複数の光電変換部に含まれる、第1光電変換部、第2光電変換部、第3光電変換部および第4光電変換部が、前記第1光電変換部と前記第4光電変換部との間に前記第2光電変換部と前記第3光電変換部とが位置するように並んでおり、
前記半導体層は、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との間に位置する第1溝と、前記第2光電変換部と前記第3光電変換部との間に位置する第2溝と、前記第3光電変換部と前記第4光電変換部との間に位置する第3溝と、を有し、前記第1溝、前記第2溝、前記第3溝の各々は、前記主面に連続しており、
前記主面の上には、シリコン酸化物膜、シリコン窒化物膜およびシリコン炭化物膜のいずれかであるシリコン化合物膜と、前記シリコン化合物膜と前記半導体層との間に位置する金属化合物膜と、が設けられており、
前記第1溝および前記第3溝の中には、前記シリコン化合物膜と前記金属化合物膜とが延在しており、
前記第2溝の中には、前記金属化合物膜が延在しており、
前記第2溝の底から前記シリコン化合物膜までの距離をHb、前記主面から前記シリコン化合物膜までの距離をHd、前記第1溝の幅をWa、前記第2溝の幅をWbとして、Hd<HbおよびWa-2×Hd>Wbを満たすことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1溝の深さをDa、前記第2溝の深さをDbとして、Da>WaおよびDb>Wbを満たす、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
Da-Db>Hdを満たす、請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
Db<Hbを満たす、請求項2または3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第1溝と前記第2溝との間の距離をPa、前記第2溝と前記第3溝との間の距離をPbとして、Db<Pa+Pbを満たす、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
Db<Daを満たす、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
Da/Wa<Db/Wbを満たす、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
Wa>2×Wbを満たす、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記主面の上における前記金属化合物膜の厚さをTm、前記主面の上における前記シリコン化合物膜の厚さをTsとして、Tm<WaおよびTs<Waを満たす、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
Tm<Tsを満たす、請求項9に記載の光電変換装置。
【請求項11】
Wb≦2×Tm<Waを満たす、請求項9または10に記載の光電変換装置。
【請求項12】
2×Tm<Wa-Wbを満たす、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
2×Tm+2×Ts<Waを満たす、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記シリコン化合物膜はシリコン酸化物膜であり、
前記金属化合物膜は、第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層と前記半導体層との間に位置する第2金属酸化物層との複層膜である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記第1金属酸化物層は酸化タンタル層、酸化チタン層または酸化ジルコニウム層である、請求項14に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記第2金属酸化物層は酸化アルミニウム層または酸化ハフニウム層である、請求項14または15に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記第2金属酸化物層の厚さは前記第1金属酸化物層の厚さよりも小さい、請求項14乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記主面の上には複数のレンズを含むレンズアレイが設けられており、前記複数のレンズのうちの1つのレンズが、前記第2光電変換部と前記第3光電変換部との上に配されている、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項19】
前記レンズアレイと前記半導体層との間には、複数のレンズを含む別のレンズアレイが設けられている、請求項18に記載の光電変換装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える機器であって、
前記光電変換装置に対応付けられた光学系、
前記光電変換装置を制御する制御装置、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記光電変換装置で得られた情報を表示する表示装置、
前記光電変換装置で得られた情報を記憶する記憶装置、および、
前記光電変換装置で得られた情報に基づいて前記光電変換装置を移動させる機械装置、
の少なくともいずれかを更に備えることを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換部の間の分離部に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センシング領域の中央付近に設けたトレンチ(140、1140)の中に、固定電荷膜(160、1160)と反射防止膜(170、1170)とを配置したイメージセンサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0219040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、光がトレンチ(140、1140)によって損失し、十分な感度が得られないという課題がある。本発明は、感度を向上した光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段のひとつの観点は、複数の光電変換部を有する半導体層を備え、前記半導体層が前記複数の光電変換部の各々の受光面を成す主面を有する光電変換装置であって、前記複数の光電変換部に含まれる、第1光電変換部、第2光電変換部、第3光電変換部および第4光電変換部が、前記第1光電変換部と前記第4光電変換部との間に前記第2光電変換部と前記第3光電変換部とが位置するように並んでおり、前記半導体層は、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との間に位置する第1溝と、前記第2光電変換部と前記第3光電変換部との間に位置する第2溝と、前記第3光電変換部と前記第4光電変換部との間に位置する第3溝と、を有し、前記第1溝、前記第2溝、前記第3溝の各々は、前記主面に連続しており、前記主面の上には、シリコン酸化物膜、シリコン窒化物膜およびシリコン炭化物膜のいずれかであるシリコン化合物膜と、前記シリコン化合物膜と前記半導体層との間に位置する金属化合物膜と、が設けられており、前記第1溝および前記第3溝の中には、前記シリコン化合物膜と前記金属化合物膜とが延在しており、前記第2溝の中には、前記金属化合物膜が延在しており、前記第2溝の底から前記シリコン化合物膜までの距離をHb、前記主面から前記シリコン化合物膜までの距離をHd、前記第1溝の幅をWa、前記第2溝の幅をWbとして、Hd<HbおよびWa-2×Hd>Wbを満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光電変換装置の感度を向上するうえで有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】光電変換装置を説明するための断面模式図。
図2】光電変換装置を説明するための断面模式図。
図3】光電変換装置を説明するための断面模式図。
図4】光電変換装置の製造方法を説明するための断面模式図。
図5】光電変換装置の製造方法を説明するための断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。なお、同様の名称で異なる符号を付した構成については、適宜、第1構成、第2構成、第3構成などと、「第○」をつけて区別してよい。
【0009】
図1は光電変換装置930の光電変換エリア(撮像エリア)の断面図である。光電変換装置930は、複数の光電変換部101、102、103、104、105、106を有する半導体層100を備える。半導体層100は、例えば1~10μm、好ましくは2~5μmの厚さを有する単結晶シリコン層である。半導体層100が複数の光電変換部101、102、103、104、105、106の各々の受光面を成す裏面1001を有する。複数の光電変換部101、102、103、104、105、106の各々はフォトダイオードでありうる。裏面1001は半導体層100の2つの主面の一方であり、半導体層100は、半導体層100の2つの主面の他方である表面1002を有する。表面1002にはゲート電極400を含むトランジスタが設けられており、表面1002の上には複数の配線層410、420と層間絶縁膜430とで構成された配線構造440が設けられている。ゲート電極400を含むトランジスタには、転送トランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタなどが含まれ、これらのトランジスタによって画素回路が構成される。
【0010】
複数の光電変換部に含まれる、光電変換部101、光電変換部102、光電変換部103および光電変換部104は、光電変換部101と光電変換部104との間に光電変換部102と光電変換部103とが位置するように並んでいる。
【0011】
光電変換装置930は、分離部110と、分離部120と、分離部130と、分離部140と、分離部150と、分離部160と、分離部170と、を有する。
【0012】
分離部110は光電変換部101と光電変換部102との間に位置し、分離部120は光電変換部102と光電変換部103との間に位置する。分離部130は光電変換部103と光電変換部104との間に位置し、分離部140は光電変換部104と光電変換部105との間に位置する。分離部150は光電変換部101と光電変換部106との間に位置する。分離部160は光電変換部106と周辺領域との間に位置し、分離部170は光電変換部105と周辺領域との間に位置する。
【0013】
図2図1で示した光電変換装置930のうち、分離部110、分離部120および分離部130を含む部分の拡大図である。以下、図1図2を相互に参照して説明する。なお、分離部140、150の構成は分離部120と同じであってよく、分離部160、170の構成は分離部110、130の構成と同じであってよいので、これらの説明を省略する。
【0014】
半導体層100は裏面1001に連続する溝を有し、分離部110、120、130、140、150、160、170の各々はこの溝の中に設けられている。分離部110、120、130、140、150、160、170の各々が設けられた溝の側面と裏面1001が連続する。
【0015】
図2に示すように、分離部110は溝111の中に設けられており、分離部120は溝121の中に設けられており、分離部130は溝131の中に設けられている。溝111、121、131はそれぞれ、裏面1001から表面1002に向かって延びる。表面1002の上には、トランジスタのゲート絶縁膜や、層間絶縁膜430などである絶縁膜450が設けられている。
【0016】
光電変換部101と光電変換部102との間に位置する分離部110を構成する溝111は、光電変換部101と光電変換部102との間に位置する。
【0017】
光電変換部102と光電変換部103との間に位置する分離部120を構成する溝121は、光電変換部102と光電変換部103との間に位置との間に位置する。
【0018】
光電変換部103と光電変換部104との間に位置する分離部130を構成する溝121は光電変換部103と光電変換部104との間に位置する。
【0019】
光電変換部101、102、103、104、105、106の受光面の上には、シリコン酸化物膜、シリコン窒化物膜およびシリコン炭化物膜のいずれかであるシリコン化合物膜300が設けられている。シリコン化合物膜300の組成はSiOxNyCzと表現できる。ここで、x、y、zのうちのいずれかは0よりも大きく、x、y、zのうちの0よりも大きくないもの以外は0でもよいし、0でなくてもよい。シリコン化合物膜はSi(珪素)、O(酸素)、N(窒素)、C(炭素)の他に、H(水素)、B(硼素)、F(弗素)、P(リン)、Cl(塩素)、Ar(アルゴン)などを含むことができる。x>0かつx≧y≧0かつx≧z≧0の場合にシリコン化合物膜300はシリコン酸化物膜である。y>0かつy≧x≧0かつy≧z≧0の場合にシリコン化合物膜300はシリコン窒化物膜である。z>0かつz≧x≧0かつz≧y≧0の場合にシリコン化合物膜300はシリコン炭化物膜である。例えば、SiON膜はOとNの多寡に応じてシリコン酸化物膜またはシリコン窒化物膜に分類できる。
【0020】
さらに、光電変換部101、102、103、104、105、106の受光面の上には、シリコン化合物膜300と半導体層100との間に位置する金属化合物膜200が設けられている。
【0021】
図1に示すように、分離部110、120、130、140、150、160、170は、金属化合物膜200およびシリコン化合物膜300の少なくとも一方で構成されている。図2に示すように、溝111の中には、シリコン化合物膜300と金属化合物膜200とが延在して、シリコン化合物膜300と金属化合物膜200とが分離部120を構成している。溝121の中には、金属化合物膜200が延在して、金属化合物膜200が分離部120を構成している。溝131の中には、シリコン化合物膜300と金属化合物膜200とが延在して、シリコン化合物膜300と金属化合物膜200とが分離部130を構成している。図1において、分離部160、170をシリコン化合物膜300および金属化合物膜200の両方で構成することができるし、分離部140、150を金属化合物膜200のみで構成することもできる。あるいは、分離部160、170と分離部140、150の一方を金属化合物膜200のみ、あるいは、シリコン化合物膜300のみで構成することもできる。
【0022】
裏面1001の上には複数のマイクロレンズ871、872、873を含むマイクロレンズアレイが設けられている。複数のマイクロレンズ871、872、873のうちの1つのマイクロレンズ871が、光電変換部101と光電変換部106との上に配されている。複数のマイクロレンズ871、872、873のうちの1つのマイクロレンズ872が、光電変換部102と光電変換部103との上に配されている。複数のマイクロレンズ871、872、873のうちの1つのマイクロレンズ873が、光電変換部104と光電変換部105との上に配されている。複数のマイクロレンズ871、872、873の各々は、例えば樹脂からなる。
【0023】
複数のマイクロレンズ871、872、873を含むマイクロレンズアレイと半導体層100との間には、複数の層内レンズ831、832、833を含む別の層内レンズアレイが設けられている。複数の層内レンズ831、832、833の各々は、例えば、窒化シリコン膜などの誘電体膜820に設けられる。本例の層内レンズ831、832、833は上凸レンズであるが、下凸レンズでも両凸レンズでもよい。
【0024】
層内レンズ831、832、833とシリコン化合物膜300との間には酸化シリコン膜などの絶縁体膜810が設けられる。層内レンズ831、832、833とマイクロレンズ871、872、873との間には酸化シリコン膜などの絶縁体膜840が設けられる。絶縁体膜840と窒化シリコンからなる層内レンズ831、832、833との屈折率差によって、層内レンズ831、832、833による集光が行われる。層内レンズ831、832、833とマイクロレンズ871、872、873との間には、カラーフィルタ861、862、863を含むカラーフィルタアレイが設けられている。例えば、カラーフィルタ861は赤色フィルタ、カラーフィルタ861は緑色フィルタ、カラーフィルタ863は青色フィルタである。カラーフィルタ861、862、863と層内レンズ831、832、833との間、および/または、カラーフィルタ861、862、863とマイクロレンズ871、872、873との間には、平坦化膜850が設けられる。平坦化膜850は、例えば樹脂からなる。
【0025】
酸化シリコン膜などの絶縁体膜810とシリコン化合物膜300との間には遮光部材710が設けられている。遮光部材710は分離部110、130、160、170に重なるように配置されうる。遮光部材710は分離部120、140、150に重ならないように配置されうる。遮光部材710の上には遮光壁720が設けられている。遮光壁720は絶縁体膜810、誘電体膜820および絶縁体膜840の少なくとも1つを貫通するように設けられうる。遮光壁720は層内レンズ831、832、833を囲むように配置されうる。
【0026】
一つの画素の光学的な構造は、主に、マイクロレンズ872とカラーフィルタ862と層内レンズ832と光電変換部102と光電変換部103によって定義される。ただし、マイクロレンズ872とカラーフィルタ862と層内レンズ832のうちのいくつかは省略可能である。このように、1つの画素に複数の光電変換部102、103を設けた画素構造により焦点検出(オートフォーカス)や測距、ダイナミックレンジの拡大、画素信号の符号化などが可能となる。分離部120は画素内の分離を、分離部110と分離部130は画素間の分離を行う。ここでいう分離は光学的な分離と電気的な分離の少なくとも一方である。画素内に位置する分離部120には、必要十分な分離性能の提供と、分離部120の存在による光の損失などに起因する問題の低減と、の両立が求められる。
【0027】
半導体層100には半導体基板600が積層されている。半導体基板600の表面にはゲート電極500を含むトランジスタが設けられている。半導体基板600の表面の上(半導体基板600と配線構造440との間)には、配線構造540が設けられている。配線構造540は複数の配線層510、520と層間絶縁膜530とで構成されている。ゲート電極500を含むトランジスタは、光電変換部を含む画素回路を駆動するための駆動回路や、光電変換装置930の制御を行う制御回路を構成する。また、ゲート電極500を含むトランジスタは、画素回路から得られたアナログ信号をアナログデジタル(AD)変換するAD変換回路を構成する。また、ゲート電極500を含むトランジスタは、AD変換によって得られたデジタル信号を処理するデジタル信号処理回路を構成する。配線構造440と配線構造540との電気的な接続は、配線層の直接接合による配線や、半導体層100を貫通する貫通ビアによってなされる。配線構造440と配線構造540との電気的な接続は、配線構造440と配線構造540との間のバンプによってなされてもよいし、ワイヤボンディングによってなされてもよい。半導体基板600を単なる支持基板として用いる場合には、ゲート電極500を含むトランジスタや配線構造540を省略することができる。
【0028】
以下、分離部110、120、130の構成を、図2を用いて詳細に説明する。図2には溝111、131の底の位置を位置Ba、Bcで示し、溝121の底の位置を位置Bdで示している。裏面1001から位置Baまでの距離が溝111の深さDaであり、裏面1001から位置Bbまでの距離が溝121の深さDbであり、裏面1001から位置Bcまでの距離が溝131の深さDcである。本例では溝121は溝111、131よりも浅く、Db<Da、Db<Dcを満たしており、これが形態に好適であるが、Da≦Db、Da≦Dbでも構わない。深さDa、Dcは、例えば、1~5μmである。深さDbは、例えば、1~3μmである。なお、溝111、121、131のいずれかは半導体層100を貫通してもよい。その場合には、半導体層100を貫通する溝111、121、131の深さDa、Db,Dcは半導体層100の厚さに一致する。また、溝111、121、131の底の位置Ba、Bb、Bcは表面1002の位置に一致する。
【0029】
図2には、溝121の底(位置Bb)からシリコン化合物膜300までの距離Hb、裏面1001からシリコン化合物膜300までの距離Hdを示している。また、図2には、溝111の底(位置Ba)からシリコン化合物膜300までの距離Ha、溝131の底(位置Bc)からシリコン化合物膜300までの距離Hcを示している。
【0030】
本発明者の検討によると、分離部120の中の平均屈折率を極力高くすることで、光電変換部102、103の感度が向上することが分かっている。特に主面である裏面1001に対して垂直に近い角度で入射する光に対する感度の向上が顕著である。分離部110、130と分離部120との比較において、溝111、121、131の中の金属化合物膜200の体積に対するシリコン化合物膜300の体積の割合は、分離部110、130が分離部120よりも大きくなる。本例では、溝121の中にシリコン化合物膜300が位置しないので、この割合は分離部120ではゼロになりうる。
【0031】
シリコン化合物膜300の屈折率は半導体層100(シリコン層)の屈折率よりも低いので、距離Hbを大きくするほど、分離部120に占めるシリコン化合物膜300の割合を低くでき、分離部120の中の平均屈折率を高くできる。金属化合物膜200の屈折率よりもシリコン化合物膜300の屈折率が低い場合に、より好適である。
【0032】
距離Hbを大きくするほど、光電変換部102、103の感度が向上しうる。距離Hbは距離Hdよりも大きいこと(Hd<Hb)が特徴的である。本例では、距離Ha、Hcが距離Hdと等しい(Ha=Hd、Hc=Hd)が、距離Ha、Hcが距離Hdよりも大きくてもよい(Hd<Ha、Hd<Hc)。さらに、距離Hbが距離Ha、Hcがよりも大きいこと(Ha<Hb,Hc<Hb)も好ましい。
【0033】
距離Hbを距離Ha,Hbを異ならせたり、分離部120の平均屈折率を分離部110、130の平均屈折率と異ならせたりするために、分離部120を構成する層の数は、分離部110、130を構成する層の数と異なっていることが好ましい。分離部120を構成する層の数が、分離部110、130を構成する層の数よりも小さいことが好ましい。例えば上述のように、溝111、131の中に配置されたシリコン化合物膜300が溝121の中に配置されない。こうすることで、シリコン化合物膜300の分だけ、分離部120を構成する層の数だけ、分離部110、130を構成する層の数が小さくなり得る。
【0034】
溝111、131の中に、シリコン酸化物膜、シリコン窒化物膜およびシリコン炭化物膜のいずれか1つのみが配される場合には、その1つを上述した距離Hbを特定するためのシリコン化合物膜300と考えればよい。溝111、131の中に、シリコン酸化物膜、シリコン窒化物膜およびシリコン炭化物膜のうちの2つ以上が配される場合には、そのうちのいずれか1つを上述した距離Hbを特定するためのシリコン化合物膜300と考えればよい。つまり、溝111、131の中に配されたシリコン酸化物膜およびシリコン窒化物膜のうちで、例えば、シリコン酸化物膜をシリコン化合物膜300に当てはめて、上述した距離Hbを特定すればよい。あるいは、溝111、131の中に配されたシリコン酸化物膜およびシリコン窒化物膜のうちで、例えば、シリコン窒化物膜をシリコン化合物膜300に当てはめて、上述した距離Hbを特定すればよい。溝111、131の中に、シリコン酸化物膜およびシリコン窒化物膜の一方が配置され、さらに、当該一方と金属化合物膜200との間にシリコン酸化物膜およびシリコン窒化物膜の他方が配置されてもよい。この場合、シリコン酸化物膜およびシリコン窒化物膜の一方をシリコン化合物膜300に当てはめると、シリコン化合物膜300と金属化合物膜200との間にシリコン酸化物膜およびシリコン窒化物膜の他方が位置することになる。
【0035】
シリコン化合物膜300の屈折率が低いほど、距離Hbの変化と感度の変化の相関関係は大きい。より正確には、半導体層100の屈折率とシリコン化合物膜300の屈折率との差が大きいほど、距離Hbの変化と感度の変化の相関関係は大きい。シリコン酸化物膜の屈折率は1.4~1.6程度、シリコン窒化物膜の屈折率は1.8~2.2程度、シリコン炭化物膜の屈折率は2.2~2.8程度、シリコンの屈折率は3~7程度である。従って、溝111、131の中にシリコン酸化物膜を配置して、このシリコン酸化物膜をシリコン化合物膜300として、距離Hbを大きくすることが、感度を向上するうえでとりわけ有効である。
【0036】
本例では、シリコン化合物膜300が溝121の中に位置しない。つまり、距離Hbが溝121の深さDbより大きい(Db<Hb)。このように、Db<Hbを満たすことが好ましい。これは、シリコン化合物膜300の下地となる膜(下地膜)が溝121を埋め尽くすように下地膜を形成することで可能である。シリコン化合物膜300が溝121の中に位置する場合であっても、シリコン化合物膜300は溝121の下半分には位置しないことが好ましく、Db/2<Hbを満たすことが好ましい。
【0037】
分離部110、130の分離性能を高める観点では、距離Haや距離Hcは大きくし過ぎないことが好ましい。Ha<Hb,Hc<Hbを満たしうることは上述した通りである。本例ではDb<Da、Db<Dcを満たしており、溝111、131の中では、溝121の底の位置Bbよりも深い位置まで、シリコン化合物膜300が延在していることが好ましい。Ha=Hd、Hc=Hdで近似すると、溝111、131の中でのシリコン化合物膜300の先端の深さはDa-Hd、Dc-Hdであり、これよりも溝121の深さDbが小さいこと(Db<Da-Hd、Db<Dc-Hd)が好ましい。この関係から、Da-Db>Hd、Da-Db>Hdを満たすことが好ましいことが分かる。
【0038】
また、図2には、溝111と溝121との間の距離Pa、溝121と溝131との間の距離Pbを示している。また、図2には、溝111の幅Wa、溝121の幅Wb、溝131の幅Wcを示す。幅Wa、Wcは、例えば、200~800nmである。幅Wbは、例えば、50~200nmである。
【0039】
なお、ここでは溝111、121、131の幅Wa、Wb、Wcは溝111、121、131の深さ方向において一定である例を示している。しかし、幅Wa、Wb、Wcは溝111、121、131の深さ方向において一定でなく、例えば底に向かって徐々に幅Wa、Wb、Wcが小さくなるにしてもよい。あるいは、幅Wa、Wb、Wcは、溝111、121、131の入り口にあたる裏面1001内において、他の部分における幅よりも小さくてもよい。溝の幅が深さ方向で一定でない場合、幅Wa、Wb、Wcを定義するための深さ方向における位置(基準位置)は、幅Wa、Wb、Wcで共通であることが好ましい。基準位置の裏面1001からの距離をDsとする。例えば、基準位置を裏面1001と一致するように定めること(Ds=0)ができる。あるいは、基準位置は、例えば、幅Wa、Wb、Wcは、裏面1001からの深さがDb/2となる位置(Ds=Db/2)において定義されることが好ましい。つまり、例えば深さDbが2μmであれば、裏面1001からの深さが1μm(Ds=Db/2=1μm)に相当する基準位置において、溝111、121、131の幅Wa、Wb、Wcが定義することができる。基準位置において、溝111、131の中には111、131の両側面上に金属化合物膜200が存在し、両側面上の金属化合物膜200に挟まれるように、シリコン化合物膜300が存在することが望ましい。換言すれば、このように、溝111、131の中に金属化合物膜200とシリコン化合物膜300が共存するような位置を基準位置に設定することが好ましい。このような金属化合物膜200とシリコン化合物膜300が共存するような位置としての基準位置の裏面1001からの距離Dsは、典型的には0≦Ds≦Db/2の範囲の中で設定することができる。また、溝の幅が深さ方向で一定でない場合の、幅Wa、Wb、Wcの定義の他の例としては、溝111、121、131の深さ方向における幅の最大幅を、幅Wa、Wb、Wcとすることができる。基準位置および最大幅以外の定義による幅Wa、Wb、Wcの定義は不適切である。例えば、溝111、131の最大幅を幅Wa、Wcに設定し、溝121の最小幅を幅Wbに設定することは、幅Wa、Wb、Wcの適切な関係を損なってしまう可能性がある。
【0040】
分離部110、130の分離特性を十分に高めるためには、シリコン化合物膜300は、溝111、131の深さDa、Dcの半分(Da/2、Dc/2)よりも深い位置まで延在していることが望ましい。これを実現するうえでは次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、溝111、131の中で、シリコン化合物膜300と半導体層100との間の中間膜(例えば金属化合物膜200)が占める幅は、距離Hdと等しいとみなした厚さの中間膜が、溝111、131の両側面に形成されるとすると、2×Hdである。よって、溝111、131のうちの中間膜以外の部分の幅はWa-2×Hd、Wc-2×Hdである。2×Hd<Waとすることができるが、Waと2×Hdとの差がわずかである場合は、シリコン化合物膜300が適切に溝111、131の中に配置されず、分離部110、130の分離特性が十分でなくなる。そこで、このような溝111、131のうちの中間膜以外の部分の幅が、溝121の幅Wcよりも大きければ、分離部120にシリコン化合物膜300を適切に配置できる。つまり、Wa-2×Hd>Wb、Wc-2×Hd>Wbを満たせばよい。これを変形すると、Wa-Wb>2×Hd、Wc-Wb>2×Hdとなる。つまり、溝111、131と溝121との差は距離Hdの2倍よりも大きいことになる。中間膜が溝121を埋め尽くすことが好ましく、そのためには、Wb≦2×Hdを満たすことが好ましい。
【0041】
距離Hbを小さくすることは、感度向上の観点において好ましく、距離Hbを小さくするために、溝121の深さDbを小さくすることが有効である。溝121の深さDbは、Pa+Pbで規定される画素サイズに比べて小さいこと(Db<Pa+Pb)が好ましい。
【0042】
溝111、121、131が浅いと、光電変換部101、102、103に対する分離性能が低下し、溝111、121、131の幅が大きいと、光電変換部101、102、103の感度が低下する。そのため、Da>WaおよびDb>Wbの少なくとも一方、好ましくは両方を満たすことが好ましい。
【0043】
上述の距離Hbを大きくするためには、Da>Db、Dc>Dbを満たすことが好ましい。また、Wa>Wb、Wc>Wbを満たすことも好ましい。溝121の幅を小さくすることで、溝121の中に配置されるシリコン化合物膜300を少なくする(あるいは、無くする)ことができる。溝121の幅Wbが、溝111、131の幅Wa、Wcの半分未満であること(Wa/2>Wb、Wc/2>Wb)ことが好ましい。言い換えれば、溝111、131の幅Wa、Wcが溝121の幅Wbの2倍より大きいこと(Wa>2×Wb、Wc>2×Wb)が好ましい。溝111、131の幅Wa、Wcが溝121の幅Wbの3倍より大きいこと(Wa>3×Wb、Wc>3×Wb)も好ましい。これほどまでに溝121の幅Wbと、溝111、131の幅Wa、Wcに差をつけることで、距離Hbを大きくすることによる感度向上の効果がより顕著になる。
【0044】
分離部110、130と分離部120のそれぞれの特性を考慮すると、溝121と溝111、131のアルスペクト比が異なることが好ましい。溝121の幅に対する深さのアスペクト比(Db/Wb)は、溝111、131の幅に対する深さのアスペクト比(Da/Wa、Dc/Wc)よりも大きいこと(Da/Wa<Db/Wb、Dc/Wc<Db/Wb)が好ましい。溝121のアスペクト比Db/Wbは10以上であってもよい。
【0045】
また、図2には、裏面1001上における金属化合物膜200の厚さTm、裏面1001上におけるシリコン化合物膜の厚さTsを示している。厚さTmは、例えば、5~150nmである。厚さTsは、例えば、50~200nmである。本例では、シリコン化合物膜300と半導体層100との間には金属化合物膜200のみが位置するため、距離Hdは厚さTmに一致する。しかし、シリコン化合物膜300と金属化合物膜200との間や、金属化合物膜200と半導体層100との間に別の層が存在する場合には、距離Hdは厚さTmと異なる。
【0046】
溝111、131の中に金属化合物膜200を適切に配置するために、金属化合物膜200の厚さTmは、溝111、131の幅Wa,Wcよりも小さいこと(Tm<Wa、Tm<Wc)が好ましい。溝111、131の中にシリコン化合物膜300を適切に配置するために、シリコン化合物膜300の厚さTsは、溝111、131の幅Wa,Wcよりも小さいこと(Ts<Wa、Ts<Wc)が好ましい。さらに、溝111、131の中にシリコン化合物膜300を適切に配置するために、金属化合物膜200の厚さTmは、シリコン化合物膜300の厚さTsよりも小さいこと(Tm<Ts)が好ましい。金属化合物膜200は溝111、131の両側面上に設けられ、側面上における金属化合物膜200を厚さTmで近似できる。そうすると、幅Wa、Wcの溝111、131の中に金属化合物膜200とシリコン化合物膜300が適切に配置されうる条件は、2×Tm<Waである。一方、幅Wbの溝121の中に金属化合物膜200が配置され、シリコン化合物膜300が適切に配置されうる条件は、Wb≦2×Tmである。このように、Wb≦2×Tm<Waを満たすことが好ましい。また、2×Tm<Wa-Wbを満たすことも好ましい。これは、上述した2×Hd<Wa-Wbにおいて、Tm=Hdとすることで導き出された式である。なお、溝111、131の幅Wa、Wcは、溝111、131の両側面に、厚さTmの金属化合物膜200と、厚さTsのシリコン化合物膜300とが形成された場合に必要な溝の幅よりも、大きくてもよい。つまり、2×Tm+2×Ts<Wa、2×Tm+2×Ts<Wcを満たしてもよい。このように、幅Wa、Wcの幅を十分大きくすることで、溝111、131に空隙が生じることを抑制できる。
【0047】
典型的な関係を示すと、Tm=Hd<Ts<Wb<Wa=Wc<<P1=P2<Db<Hd<Da=Dcとなる。
【0048】
金属化合物膜200は、金属化合物層の単層膜あるいは複層膜である。金属化合物膜200を構成する金属化合物層は、金属酸化物層、金属窒化物層および金属炭化物層のいずれかである。金属化合物層は、同一の金属に関して金属窒化物層および金属炭化物層に比べて光透過率が高い点から金属酸化物層であることが好ましい。本例の金属化合物膜200は、金属化合物層220と、金属化合物層220と半導体層100との間に位置する金属化合物層210との複層膜である。金属化合物膜200の厚さTmは、金属化合物層220の厚さと金属化合物層210の厚さとの和である。金属化合物層220は、例えば、酸化タンタル層、酸化チタン層または酸化ジルコニウム層、酸化ニオブ層、酸化バナジウム層である。金属化合物層210は、例えば、酸化アルミニウム層または酸化ハフニウム層である。金属化合物層210の厚さは金属化合物層220の厚さよりも小さいことが好ましい。金属化合物層210は半導体層100の非信号電荷を固定するための電荷固定層として機能しうる。金属化合物層220は半導体層100へ入射する光の反射防止層として機能しうる。
【0049】
酸化アルミニウム(Al)の屈折率は1.7~1.9、典型的には1.77であり、酸化ハフニウム(Hf0)の屈折率は1.8~2.0、典型的には1.91である。酸化タンタル(Ta)の屈折率は2.0~2.2、典型的には2.14であり、酸化ジルコニウム(Zr0)の屈折率は2.1~2.3、典型的には2.21である。酸化バナジウム(V)の屈折率は2.2~2.4、典型的には2.30である。酸化ニオブ(Nb)の屈折率は2.2~2.4、典型的には2.33であり、酸化チタン(TiO)の屈折率は2.3~2.5、典型的には2.39である。
【0050】
半導体層100がシリコン層であり可視光を光電変換する場合に、金属化合物膜200は次のような構成が好適である。すなわち、金属化合物層210は、例えば、厚さ5~20nmの酸化アルミニウム(Al)であり、金属化合物層220は、例えば、厚さ25~100nmの酸化タンタル(Ta)である。
【0051】
溝121の入り口において溝121の中心(両側面の中間)に位置する層の屈折率を極力高くすることでも、光電変換部102、103の感度が向上しうる。溝121の入り口は主面である裏面1001を含む平面で規定される。裏面1001を含む平面において溝121の中心(両側面の中間)に位置する層の屈折率は1.41よりも高いことが好ましく、1.6以上であることが好ましい。さらに、裏面1001を含む平面において溝121の中心(両側面の中間)に位置する層の屈折率は1.91よりも高いことが好ましく、2.0以上であることが好ましい。裏面1001を含む平面において溝121の中心(両側面の中間)に位置する層をこの条件を満たすようにすればよい。溝121の中心に位置する層の屈折率が1.6以上となるのは、溝121の中心に位置する層が、シリコン窒化物膜、あるいは、シリコン炭化物膜の場合である。また、溝121の中心に位置する層の屈折率が1.6以上となるのは、溝121の中心に位置する層が、シリコン窒化物膜、あるいは、シリコン炭化物膜の場合である。あるいは、溝121の中心に位置する層が、酸化タンタル層、酸化ジルコニウム層、酸化バナジウム層、酸化ニオブ層、酸化チタン層である。
【0052】
本実施形態では、裏面1001が受光面を成す、裏面照射型の光電変換装置を説明したが、本発明は表面1002が受光面を成す、表面照射型の光電変換装置にも適用可能である。その場合には、トランジスタが形成された表面1002から溝を形成し、表面1002側の溝の中に金属化合物膜および/またはシリコン化合物膜を配置すればよい。
【0053】
図3は、光電変換装置930を備える機器9191の模式図である。機器9191は、光電変換装置930に加えて、光学系940、制御装置950、処理装置960、記憶装置970、表示装置980、および、機械装置990の少なくともいずれかを更に備える。光学系940は光電変換装置930に対応付けられて、光電変換装置に結像する。制御装置950は光電変換装置930を制御する。処理装置960は光電変換装置930から出力された信号を処理する。記憶装置970は光電変換装置930で得られた情報を記憶する。表示装置980は光電変換装置930で得られた情報を表示する。機械装置990は光電変換装置930で得られた情報に基づいて動作する。機械装置990は光電変換装置930を機器9191の中で、あるいは機器9191ごと移動させる移動装置であってもよい。機器9191の中で光電変換装置930を移動させることで防振(イメージスタビライザー)機能を実現できる。
【0054】
光電変換装置930は、電子デバイス910と実装部材920とを含みうるが、実装部材920は無くてもよい。電子デバイス910は半導体層を有する半導体デバイスである。電子デバイス910は、光電変換部が配列された光電変換エリア901と、周辺回路(不図示)が配列された周辺回路エリア902を含む。機器9191における光電変換エリア901に、本実施形態における分離部110、120、130の構成を適用することができる。周辺回路には、上述の駆動回路やAD変換回路、デジタル信号処理回路や制御回路などが含まれる。光電変換エリア901と周辺回路エリア902は、同一の半導体層に配されてもよいが、本例では、互いに積層された別々の半導体層(半導体基板)に配されてもよい。
【0055】
実装部材920は、セラミックパッケージやプラスチックパッケージ、プリント配線板、フレキシブルケーブル、半田、ワイヤボンディングなどを含む。光学系940は、例えばレンズやシャッター、フィルター、ミラーである。制御装置950、例えばASICなどの半導体デバイスである。処理装置960は、例えばAFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成する、例えばCPU(中央処理装置)やASIC(特定用途向け集積回路)などの半導体デバイスである。表示装置980は、例えばEL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置970は、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリであり、例えば磁気デバイスや半導体デバイスである。機械装置MCHNはモーターやエンジン等の可動部あるいは推進部を有する。
【0056】
図3に示した機器9191は、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器でありうる。カメラにおける機械装置990はズーミングや合焦、シャッター動作のために光学系940の部品を駆動することができる。また、機器9191は、車両や船舶、飛行体、人工衛星などの輸送機器(移動体)でありうる。輸送機器における機械装置990は移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器9191は、光電変換装置930を輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置960は、光電変換装置930で得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置990を操作するための処理を行うことができる。また、機器9191は、分析機器や、医療機器でありうる。
【0057】
本実施形態による光電変換装置930は、その設計者、製造者、販売者、購入者および/または使用者に、高い価値を提供することができる。そのため、光電変換装置930を機器9191に搭載すれば、機器9191のも高めることができる。よって、機器9191の製造、販売を行う上で、本実施形態の光電変換装置930の機器9191への搭載を決定することは、光電変換装置930の価値を高める上で有利である。
【0058】
図4、5を用いて光電変換装置の製造方法を説明する。
【0059】
図4(a)に示すとおり、光電変換部やゲート電極400を含むトランジスタ、配線構造(不図示)が形成された半導体基板1000を反転させて、半導体基板1000を支持基板(不図示)に接合する。支持基板は半導体基板600であってよい。半導体基板1000には表面1002側にSTI構造を有する素子分離部201が設けられている。また、半導体基板1000には表面1002側に、素子分離部201よりも深い溝に絶縁体が埋められた絶縁領域216が設けられている。
【0060】
次に図4(b)に示すとおり、半導体基板1000を絶縁領域216が貫通する数十~数μm程度の厚さになるまで表面1002とは反対側から薄化して、表面1002と裏面1001を有する半導体層100を形成する。薄化の方法としては、バックグラインド、化学機械研磨、エッチング等がある。
【0061】
次に図4(c)に示すとおり、半導体層100に画素間を分離するための溝111、131と、画素内を分離するための溝121と、をエッチングにより裏面1001側から形成する。溝111、121、131をドライエッチングで形成する場合、マイクロローティング効果が得られるエッチング条件を採用することで、細くて浅い溝121と、太くて深い溝111、131とを同時に形成することができる。図4(c)では、溝111、131が素子分離部201に重なるように、溝111、131を形成している。溝111、131が素子分離部201に達するように溝111、131を形成してもよい。
【0062】
次に図4(d)に示すとおり、金属化合物層210、金属化合物層220、シリコン化合物膜300を形成する。金属化合物層210の成膜方法は、例えばALD(Atmic Layer Deposition)法等を用いる。ALD法を用いると、アスペクト比が大きい溝に均一な厚さの金属化合物層210が形成可能である。金属化合物層210は、例えば、酸化ハフニウム層、酸化アルミニウム層、酸化ジルコニウム層、酸化ニオブ層、酸化チタニウム層、酸化バナジウム層等である。
【0063】
金属化合物層220の成膜方法は、例えば、ALD法、PVD法、CVD法を用いる。金属化合物層220は、例えば、酸化タンタル層、酸化チタニウム層等である。
【0064】
シリコン化合物膜300は、半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。またシリコン化合物膜300の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0065】
溝111、131および溝121に埋め込まれる膜は、溝111、131および溝121の幅と、金属化合物膜200(金属化合物層210、金属化合物層220)、シリコン化合物膜300の膜厚によって決まる。
【0066】
例えば、溝121の幅を溝111、131の幅よりも小さくし、金属化合物層210と、金属化合物層220と、シリコン化合物膜300を形成する。そうすると、溝121には、金属化合物層210および金属化合物層220のみ埋め込まれ、溝111、131には、金属化合物層210と、金属化合物層220と、シリコン化合物膜300が埋め込まれる。あるいは、溝121には、金属化合物層210のみ埋め込まれ、溝111、131には、金属化合物層210と金属化合物層220とシリコン化合物膜300が埋め込まれる。そうすると、金属化合物層210および金属化合物層220のみ、あるいは、金属化合物層210のみが埋め込まれた溝121にはシリコン化合物膜300が埋め込まれないので、分離部120による光の損失を低減できる。本実施例において、溝121に最後に埋め込まれる膜の屈折率が1.91より大きいことが好ましい。溝111、121、131に形成される膜厚を調整することで、埋め込まれる膜数を変化させることも可能であり、幅及び膜厚と層数の組み合わせは任意に選択しうる。溝121の入り口において溝121の中心(両側面の中間)に位置する層が、溝121に最後に埋め込まれる層でありうる。
【0067】
本実施例において、溝121に埋め込まれる層の屈折率が1.41より大きいことが好ましい。さらに、溝121に最後に埋め込まれる層の屈折率が1.91より大きい膜であるとより好ましい。屈折率が1.91より大きい層としては、例えば、酸化ジルコニウム層、酸化ニオブ層、酸化チタニウム層、酸化タンタル層である。
【0068】
次に、金属構造体を埋め込むための溝をシリコン化合物膜300に形成する。次に図4(e)に示すとおり、導電体膜700をシリコン化合物膜300の上の全面にわたって形成する。その際、シリコン化合物膜300の溝は導電体膜700で埋め込まれる。導電体膜700は、例えばタングステン膜やアルミニウム膜、銅膜である。
【0069】
次に図4(f)に示すとおり、導電体膜700をパターニングする。パターニングはフォトリソグラフィとエッチングによりおこなう。パターニングによって、導電体膜700の一部は遮光部材710、711となり、また一部はガードリング714となる。遮光部材711はオプティカルブラック画素や周辺回路に対する遮光体となる。なお、遮光部材710とガードリング714の形成と同時に遮光部材710およびガードリング714を半導体層100と接続するビア713およびガードリング712をシリコン化合物膜300の溝の中に形成する。ガードリング712、714は、裏面1001に対する平面視において絶縁領域216の外側を取り囲むように配置する。
【0070】
次に図4(f)に示すとおり、絶縁体膜810を形成する。絶縁体膜810は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0071】
次に絶縁体膜810の表面からエッチングにより溝を形成して、次にPVD法やCVD法により導電体を形成して溝を導電体で埋め込み、化学機械研磨やエッチバック等により基板表面の導電体を除去する。これにより、図4(g)に示すとおり、絶縁体膜810に遮光壁721を形成する。また金属膜の層数は任意に選択可能である。
【0072】
次に絶縁体膜810上に誘電体膜820を形成し、例えばフォトリソグラフィとエッチングにより誘電体膜820を加工して、図5(h)に示すとおり、誘電体膜820に層内レンズ832を形成する。誘電体膜820は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0073】
次に絶縁体膜840を形成し、絶縁体膜840の表面からエッチングにより溝を形成して、次にPVD法やCVD法により基板表面の前面にわたり溝を導電体で埋め込む。化学機械研磨やエッチバック等により基板表面の導電体を除去することで、図5(i)に示す通り、絶縁体膜840の中に遮光壁722を形成する。遮光壁721と遮光壁722とは互いに接触しており、遮光壁721と遮光壁722が図1に示した遮光壁720として機能する。絶縁体膜840は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜等である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。また、遮光壁722の材質としては、タングステンなどがあり得る。
【0074】
次に図5(j)に示すとおり、平坦化膜850、カラーフィルタ862、863、マイクロレンズ872を形成する。青色のカラーフィルタ863は遮光部材711を覆う。平坦化膜850は半導体装置において一般的に使用されている材質の中から任意に選択しうる。例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、炭素含有シリコン酸化膜、フッ素含有シリコン酸化膜、あるいは樹脂膜である。また膜の層構成としては、1種類の材質からなる単層構成であってもよいし、複数の材質からなる積層構成であってもよい。
【0075】
次に図5(k)に示すとおり、半導体層100に開口888をドライエッチングで形成する。開口888の底には図1に示した配線構造440あるいは配線構造540に予め設けられたアルミニウムからなる不図示のパッドが露出する。その後、半導体層100を含むウエハをダイシングしてチップ化し、開口888を介したパッドにワイヤボンディングチップを接続するようにパッケージングして光電変換装置が得られる。
【0076】
本開示に含まれる実施形態には、文章として記載したことだけでなく、文章から読み取れるすべての事項および添付した図面から読み取れるすべての事項を含む。本実施形態は、発明の思想を逸脱しない範囲で構成要素の追加、削除あるいは置換が可能である。
【符号の説明】
【0077】
100 半導体層
1001 裏面
101、102、103、104 光電変換部
111、121、131 溝
200 シリコン化合物膜
300 金属化合物膜
図1
図2
図3
図4
図5