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特許7182977光遮蔽性粉体を含む水中油型ピッカリングエマルション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】光遮蔽性粉体を含む水中油型ピッカリングエマルション
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20221128BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20221128BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221128BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221128BHJP
   C09K 23/54 20220101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/06
A61K8/25
A61Q17/04
A61Q1/00
C09K23/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018183069
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050627
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中谷 明弘
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129626(JP,A)
【文献】特開2000-095638(JP,A)
【文献】特開2017-081907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K 23/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光遮蔽性粉体を含み、表面が荷電している乳化粉体により安定化されていることを特徴とする、水中油型ピッカリングエマルションであって、
前記乳化粉体が、部分的疎水化シリカであり、
前記乳化粉体の平均一次粒子径が、5~50nmである、
水中油型ピッカリングエマルション。
【請求項2】
前記光遮蔽性粉体として紫外線散乱剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のピッカリングエマルション。
【請求項3】
前記光遮蔽性粉体として顔料を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のピッカリングエマルション。
【請求項4】
前記光遮蔽性粉体として微粒子酸化チタン又は微粒子酸化亜鉛から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項5】
前記光遮蔽性粉体の前記乳化粉体に対する質量比が3~10である、請求項1~4の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項6】
化粧料であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線散乱剤や顔料などの光遮蔽性粉体を含む乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型の乳化化粧料は外相が油剤であるため、耐水性を付与しやすく、近年乳化タイプのファンデーションやサンスクリーン等に多く用いられている剤型である。例えば、特許文献1には、紫外線防御剤を含む日焼け止め用の油中水型乳化化粧料が開示されており、この化粧料が耐水性に優れていることが記載されている。また、特許文献2には、顔料を含む油中水型の乳化型ファンデーションが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-088346号公報
【文献】特開2012-126660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来型の油中水型の乳化化粧料の耐水性効果は、外相を構成する油剤が水と非親和であるという性質に由来する。
しかし、本発明者は、このような油中水型の乳化化粧料が、海水や汗などのようなイオンを含む水溶液に接触すると、外相を構成する油剤の親水基とイオンが反応し親水性の塩となることで、油剤が溶出してしまうという問題があることを発見した。つまり、従来型の油中水型の乳化化粧料は耐水性効果を謳ってはいるものの、耐汗性や耐海水性に劣り、実効力に悖る。
【0005】
また、特許文献1、2に記載されているような、顔料や紫外線散乱剤などの光遮蔽性粉体を含む乳化化粧料については、汗などに触れて油剤が溶出してしまうと、油剤と共にこれら粉体も肌上から落ちてしまい、光遮蔽効果を得ることが難しくなってしまう。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、海水や汗などのようなイオンを含む水溶液に対して抵抗性があり、かつ、該水溶液に接触後であっても光遮蔽機能が維持又は向上する性質を有する、光遮蔽性粉体を含む乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、光遮蔽性粉体を含み、表面が荷電している乳化粉体により安定化されていることを特徴とする、水中油型ピッカリングエマルションである。
水中油型ピッカリングエマルション中において乳化粉体は、その表面の電荷によって互いに反発し合う。この電荷が外来のイオンにより中和されると、乳化粉体の表面は疎水性となり、互いに引き付け合い凝集する。
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、上述した性質を有する乳化粉体を含むことにより、汗や海水のようなイオンを含む水溶液への抵抗性に優れる。すなわち、本発明の水中油型ピッカリングエマルションの塗布膜がイオンを含む水溶液に接触すると、油相と水相の界面に吸着している乳化粉体が疎水化し互いに引き付け合うことで、分散相が凝集する結果、塗布膜自体が凝集・疎水化する。
【0008】
また、本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、上述した性質を有する乳化粉体と光遮蔽粉体を含むことにより、イオンを含む水溶液に接触した後であっても、光遮蔽機能が維持又は向上する性質を有する。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記光遮蔽性粉体として紫外線散乱剤を含む。
紫外線散乱剤を含む形態とすることにより、イオンを含む水溶液に接触した後に、紫外線防御能力が維持又は向上する性質を有する水中油型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記光遮蔽性粉体として顔料を含む。
顔料を含む形態とすることにより、イオンを含む水溶液に接触した後に、可視光反射性やカバー力などの効果が維持又は向上する性質を有する水中油型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記光遮蔽粉体として微粒子酸化チタン又は微粒子酸化亜鉛から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする。
微粒子酸化チタン及び/又は微粒子酸化亜鉛を含む形態とすることにより、イオンを含む水溶液に接触した後に、光遮蔽機能が維持又は向上する性質を有する水中油型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記光遮蔽粉体の前記乳化粉体に対する質量比が3~10である。
光遮蔽粉体と乳化粉体の質量比を上記に設定することにより、イオンを含む水溶液に接触した後における、水中油型ピッカリングエマルションの光遮蔽性の維持作用又は向上作用を強くすることができる。
【0013】
本発明のピッカリングエマルションは化粧料の形態とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、イオンを含む水溶液に対する抵抗性に優れる。また、本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、該水溶液に接触後に、光遮蔽効果が維持又は向上する性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】純水と海水に分散したときの部分的疎水化シリカのゼータ電位を表す棒グラフである。
図2】比較例1及び参考例1のエマルションの塗布膜から海水へ溶出したエチルヘキシルメトキシシンナメートの量を表す棒グラフである。
図3】海水への浸漬の前後における比較例1及び参考例1のエマルションの塗布膜の断面を表す電子顕微鏡写真。
図4】参考例3のピッカリングエマルションの電子顕微鏡写真である。
図5】海水への浸漬の後の参考例1と比較例3のエマルションの塗布膜の断面を表す電子顕微鏡写真。
図6】参考例1のピッカリングエマルションの塗布膜の純水又は海水への浸漬の前後における断面を表す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、光遮蔽性粉体を含む。光遮蔽性粉体とは、光を透過しない性質を有する粉体のことをいい、光を反射及び/又は吸収する粉体のことをいう。
【0017】
光遮蔽性粉体として、具体的には、微粒子酸化チタン、微粒子鉄含有酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム及びそれらの複合体等の紫外線散乱剤や、ベンガラ、黄色酸鉄、黒色酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の有色無機顔料、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機白色顔料、硫酸バリウム、タルク、セリサイト、カオリン、マイカ等の体質顔料、チタンマイカ等の光輝性顔料等の顔料が例示できる。その中でも、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を使用することが特に好ましい。
【0018】
光遮蔽性粉体の平均一次粒子径は特に限定されない。紫外線散乱剤の平均一次粒子径は300nm以下を目安とすることができる。また、顔料の平均一次粒子径は、500nm以上とすることができる。
【0019】
ピッカリングエマルションにおける光遮蔽性粉体の含有量は、特に制限されず、使用感の観点から、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%を目安とすることができる。
【0020】
また、光遮蔽性の観点からは、光遮蔽性粉体の含有量の上限値は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは15質量%以下を目安とすることができる。
光遮蔽粉体の含有量の下限値は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上を目安とすることができる。
【0021】
乳化粉体としては、表面が荷電しており、かつ、油相と水相の界面に吸着し、乳化系を安定化できるものであれば特に限定されない。乳化粉体の表面の電荷は正電荷であっても負電荷であってもよいが、好ましくは負電荷である。
なお、乳化粉体は少なくとも乳化状態、つまり水に接触している状態において荷電していればよく、エマルションの調整前において電荷を有している必要はない。
【0022】
表面が荷電している乳化粉体としては、シリカ、並びに、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化鉄などの金属酸化物が好ましく例示できる。シリカ粉体は水中で負に荷電し、金属酸化物は水中で正及び負に荷電する。
【0023】
シリカ粉体としては油相と水相の界面に吸着してピッカリングエマルションを形成することができるものであるのならば特に限定されない。例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成される、いわゆる乾式シリカ粉末、及び水ガラス等から製造される、いわゆる湿式シリカ粉末の何れを用いてもよい。
【0024】
乾式シリカ粉末としては、例えばAerosilシリーズ(日本アエロジル株式会社)、CAB-O-SILシリーズ(キャボットコーポレーション)、HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン株式会社)、湿式シリカ粉末としては、例えばNipsilシリーズ(東ソー・シリカ株式会社)、HI-SILシリーズ(PPG)等の市販品を用いることができる。
【0025】
乳化粉体は疎水化されていてもよく、乳化粉体の表面が全部被覆されているもの及び部分的に被覆されているものの何れを用いてもよい。本発明において「乳化粉体の表面が全部又は部分的に被覆されている」とは、乳化粉体の表面に疎水化処理剤が物理的に付着することにより被覆している状態だけではなく、乳化粉体表面に露出している官能基に疎水化処理剤に由来する疎水基が共有結合している状態のこともいう。
【0026】
乳化粉体と疎水化処理剤を反応させ、該粉体の表面に存在する水酸基に疎水基を共有結合によって付加したり、また、乳化粉体の表面に疎水化処理剤を物理的に付着させることで被覆したりすることによって、疎水化された乳化粉体を調製することができる。
【0027】
疎水化処理としては、有機ケイ素化合物、シリコーン、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオキシアルキレン化合物等の疎水化処理剤で乳化粉体を処理する方法が挙げられる。
特に好ましくは、有機ケイ素化合物又はシリコーンを疎水化処理剤として乳化粉体を処理する。
【0028】
有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、パルミチルシラン等が挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いられる。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態では、表面にモノメチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、オクチルシリル基などのアルキルシリル基、ジメチルシロキサン基などのアルキルシロキサン基、ジメチルポリシロキサン基などのアルキルポリシロキサン基、アミノアルキルシリル基、及びメタクリルシリル基などの疎水基が付加された疎水化シリカ粉体を用いる。特にアルキルシリル基が付加された疎水化シリカ粉体を用いることが好ましく、中でもトリメチルシリル基が付加された疎水化シリカ粉体を用いることが好ましい。
【0030】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、α-メチルスチレン変性シリコーン、クロルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0031】
乳化粉体の平均一次粒子径は、1~1000nmを目安とすることができる。好ましくは100nm以下、より好ましくは3~100nm、さらに好ましくは5~50nmである。
【0032】
また、乳化粉体の平均二次粒子径は、好ましくは1μm以下を目安とすることができ、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
平均二次粒子径を前記範囲とすれば、乳化粉体の二次粒子の表面積を十分に確保することができ、イオンを含む水溶液への接触後における光遮蔽性の維持又は向上作用を大きくすることができる。
【0033】
また、平均二次粒子径を前記範囲とすれば、乳化粒子径をより小さくすることができ、イオンを含む水溶液への接触後における塗布膜の凝集の程度を向上させることができ、より該水溶液に対する抵抗性を高めることができる。
【0034】
また、平均二次粒子径を前記範囲とすることにより、乳化粒子径をより小さくすることができ、乳化安定性を向上させることができる。
【0035】
ここで、平均一次粒子径及び平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡像上で2500個以上の粒子の最大径を測定し、その個数平均を算出することにより求めることができる。
なお、平均二次粒子径は乳化を行う際に組成物に加える応力によって調整することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態では、乳化粉体の含有量は、エマルション全体に対し、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.4~4質量%、さらに好ましくは0.5~3質量%、特に好ましくは1~2質量%である。
乳化粉体の含有量を上記範囲とすることにより、イオンを含む水溶液に対するピッカリングエマルションの抵抗性を向上させることができる。
【0037】
ピッカリングエマルションにおける乳化粉体と光遮蔽性粉体の含有質量比は、特に限定されないが、好ましくは1:50~1:1、より好ましくは1:20~1:1、さらに好ましくは1:10~1:3である。
【0038】
水相と油相の質量比は、好ましくは9:1~4:6、より好ましくは8:2~5:5、さらに好ましくは7:3~6:4である。
【0039】
本発明のピッカリングエマルションにおける油相は、特に限定されず、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等を含有することができる。
【0040】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0041】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0042】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0043】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0044】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
【0045】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0046】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0047】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状ポリシロキサンや、ペンタシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0048】
中でも、シリコーン油、エステル油、液体油脂、固体油脂及びロウ類が好ましく用いられる。油剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
本発明においては油相成分として紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、化粧料などの皮膚外用剤の分野で使用されているものであれば特段の限定なく用いることができ、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸ブチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸誘導体;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸誘導体;サリチル酸及びそのナトリウム塩、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸誘導体;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート(シノキサート)、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート(オクトクリレン)、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、フェルラ酸及びその誘導体等のケイ皮酸誘導体;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン-3)、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン;4-t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン誘導体;オクチルトリアゾン;ウロカニン酸及びウロカニン酸エチル等のウロカニン酸誘導体;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等のヒダントイン誘導体;フェニルベンズイミダソゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサン、アントラニル酸メチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ルチン及びその誘導体、オリザノール及びその誘導体が好ましいものとして挙げられる。
【0050】
本発明のピッカリングエマルションにおける水相は、通常化粧料に用いられる成分を特に制限なく含むことができるが、例えば、以下の成分を含有することが好ましい。
ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられ、中でも、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールが好ましく挙げられる。これらの含有量は、ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは3~10質量%である。また、これらの含有量は、水相の好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは5~10質量%である。
また、増粘剤を含有することも好ましい。増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム,サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト等が挙げられ、よりこのましくはキサンタンガム、グアガム等の水溶性多糖類、寒天、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース。さらに好ましくは、キサンタンガム、グアガム等の水溶性多糖類、寒天が好ましく挙げられる。これらの含有量は、ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~1質量%である。また、これらの含有量は、水相の好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.3~1質量%である。
【0051】
また、本発明のピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB塩酸塩,ビタミンBトリパルミテート,ビタミンBジオクタノエート,ビタミンB又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。
【0052】
本発明のピッカリングエマルションは界面活性剤を用いてもよいが、その含有量は極力少なくすることが好ましい。界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0053】
本発明のピッカリングエマルションは、室温下、水相に乳化粉体を分散し、そこへ油相を投入し乳化することにより製造することができる。
【0054】
本発明のピッカリングエマルションは、皮膚外用剤に好適である。中でも、化粧料に用いることが好ましく、化粧下地、ファンデーション、サンスクリーン化粧料等とすることが好ましい。
【実施例
【0055】
<試験例1>部分的疎水化シリカの表面電位
シリカ微粒子(AEROSIL社製、平均一次粒子径12nm(測定方法は前述のとおり)、以下、未処理シリカともいう)と、該シリカ微粒子とトリメチルシリル疎水化処理剤を混合することにより得られた部分的疎水化シリカを用意した。
【0056】
この部分的疎水化シリカを純水又は海水(人工海水、GEX社)に、0.001g/mLの濃度で分散し、ゼータ電位解析装置(ELS-Z、大塚電子社)にてそのゼータ電位を測定した。
その結果、純水と海水に分散したときの部分的疎水化シリカのゼータ電位は、それぞれ16.84±2.18mV、4.16±1.26mVであった(図1)。
【0057】
この結果は、部分的疎水化シリカは、イオンの存在しない環境下では、表面電荷を有しているが、イオンの存在下においては、その表面電荷が中和されることにより、疎水性となることを示している。
【0058】
<試験例2>耐海水性試験
試験例1で用いた部分的疎水化シリカを用いて、表1に示す処方にて、比較例1と参考例1のエマルションを調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
比較例1及び参考例1のエマルションを2.0mg/cmの割合でPMMAプレート上に塗布し、該プレートを150mLの海水に浸漬した状態で、スターラーを用いて150rpm、25℃の条件下で、2時間攪拌を行った。その後、HPLCを用いて、海水に溶出したエチルヘキシルメトキシシンナメートの量を測定した。
【0061】
その結果、比較例1のエマルションを塗布したプレートから海水に溶け出したエチルヘキシルメトキシシンナメートの量は1327μgであった。一方、参考例1のエマルションを塗布したプレートから海水に溶け出したエチルヘキシルメトキシシンナメートの量は113.9μgであり、比較例1のエマルションにおける溶出量の1/11であった(図2)。
【0062】
この結果は、純水中で表面電荷を有する部分的疎水化シリカにより乳化されたピッカリングエマルションは、イオンを含む水溶液への抵抗性に優れていることを示している。
【0063】
<試験例3>塗布膜の断面の観察(1)
試験例2の方法によって海水に浸漬する前後のPMMAプレート上に形成された比較例1及び参考例1のエマルションの塗布膜の断面の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した(図3)。
【0064】
図3に示すように、比較例1のエマルションの塗布膜は、海水への浸漬によって殆どが剥離していた。一方、参考例1のエマルションの塗布膜は、海水への浸漬後であってもプレート上に維持されていた。
【0065】
試験例1~3の結果は、参考例1のエマルションは、イオンを含む水溶液に触れることによって、表面電荷が失われ疎水性となった部分的疎水化シリカが凝集することで、エマルションの塗布膜自体が凝集し、物理的な強度が向上することを示している。
【0066】
<試験例4>SPFの測定
表2に示す処方にて、実施例1~7、比較例2及び参考例2のエマルションを調製した。
試験例2と同様の方法により海水に浸漬する前後において、PMMAプレート上に塗布された各エマルションの塗布膜のSPF値をSPFアナライザーにて測定した。
【0067】
【表2】
【0068】
その結果、実施例1~7のエマルションの塗布膜は、海水への浸漬の後、驚くべきことにいずれもSPF値が上昇した。一方、比較例2のエマルションの塗布膜は、海水への浸漬の後、SPF値が低下した(表2)。
【0069】
<試験例5>散乱率の測定
実施例1~7、比較例2及び参考例2のエマルションを石英プレートに一定の厚みとなるように塗布し、海水への接触の前後における紫外領域の光の散乱率を、分光光度計(V-600、JASCO社)により測定した。
その結果、実施例1~7のエマルションの塗布膜は、驚くべきことに、海水への接触後において紫外領域の光の散乱率が上昇した。一方、比較例2のエマルションの塗布膜は、海水への接触後において散乱率が低下した(表2)。
【0070】
試験例1~5の結果は、本発明のピッカリングエマルションが、イオンを含む水溶液への抵抗性に優れていること、並びに、イオンを含む水溶液への接触後における光遮蔽性の維持作用又は向上作用を有していることを示している。
【0071】
<試験例6>二次粒子径の観察
実施例1~7と同様にトリメチルシリル疎水化処理剤により処理された部分的疎水化シリカを用いて、表3に示す処方で調製した参考例3のピッカリングエマルションを走査型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡像を図4に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
参考例3のピッカリングエマルションにおける部分的疎水化シリカの二次粒子径を図4に基づき算出した。その結果、シリカの平均二次粒子径は50nm以下であった。
実施例1~7と参考例3のピッカリングエマルションは、共通する部分的疎水化シリカを用いて同一の方法で製造したものである。したがって、参考例3のピッカリングエマルションの走査型電子顕微鏡による観察結果より、実施例1~7のピッカリングエマルションにおけるシリカの平均二次粒子径も50nm以下であることが推認できる。
【0074】
<試験例7>塗布膜の断面の観察(2)
実施例1~7と同様にトリメチルシリル疎水化処理剤により処理された部分的疎水化シリカを用いて、表4に示す処方の比較例3のエマルションを調製した。比較例3と、上で調製した参考例1のエマルションを試験例2と同様の方法で海水に浸漬した。その後、試験例3と同様に浸漬後のエマルションの塗布膜の断面図を走査型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡像を図5に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
表4に示すように、比較例3のエマルションは乳化系の維持に十分な量の界面活性剤(PEG-25ステアリン酸エステル)を含んでいる。そのため、比較例3のエマルションにおいては、部分的疎水化シリカは水相と油相の界面に吸着しておらず、界面活性剤の作用により水相に分散している。つまり、比較例3のエマルションはピッカリングエマルションではない。
そのため、比較例3のエマルションの塗布膜を海水に接触させると、水相に分散した部分的疎水化シリカが凝集体(図5中、点線で囲まれた箇所)を形成するものの、塗布膜全体の凝集化及び疎水化が起こらなかった(図5)。
【0077】
この結果は、表面が荷電している乳化粉体を単に分散しただけのエマルションでは、本発明の効果が得られないことを示している。
【0078】
一方、参考例1は部分的疎水化シリカが水相と油相の界面に吸着することで乳化状態が安定化されたピッカリングエマルションである。
そして、参考例1のピッカリングエマルションの塗布膜は、海水への接触後、部分的疎水化シリカが界面に吸着した乳化滴が凝集することで、塗布膜自体が凝縮し疎水化している(図5)。
【0079】
以上の結果は、イオンを含む水溶液に対する抵抗性という本発明の効果は、表面が荷電している乳化粉体により安定化されたピッカリングエマルションという形態によりもたらされていることを示している。
【0080】
<試験例8>塗布膜の断面の観察(3)
参考例1のピッカリングエマルションの塗布膜を試験例2と同様の方法により、純水と海水に浸漬した。純水又は海水に浸漬する前後における塗布膜の断面の電子顕微鏡画像を図6に示す。
【0081】
図6に示すように、参考例1のピッカリングエマルションの塗布膜は、海水のみならず純水への浸漬後においても剥離せず、かつ、多孔構造が維持されたままであった。
この結果は、本発明のピッカリングエマルションが、耐水性にも優れていることを示している。
【0082】
また、参考例1のピッカリングエマルションの塗布膜は、海水への浸漬により断面に表れる多孔構造における孔間を仕切る膜の厚みが約3倍となっている。
この結果は、本発明のピッカリングエマルションの塗布膜が、イオンを含む水溶液に接触することで高度に凝集することにより、膜全体の疎水性が高まっていることを示している。
【0083】
<処方例1>
以下の表5に記載の処方に従い、日焼け止め、ファンデーション及び固形乳化ファンデーション(固形乳化F)を製造した。
【0084】
【表5】
【0085】
<処方例2>
以下の表6に記載の処方に従って、マスカラを製造した。
【0086】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のエマルションは化粧料に応用することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6