(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】バッテリ監視ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20221128BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20221128BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20221128BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20221128BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20221128BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20221128BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221128BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20221128BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
H01M50/569
H01M50/519
H01M50/284
H01M50/507
H01M50/55 101
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01K1/14 L
G01K1/14 E
(21)【出願番号】P 2018219957
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】金山 知樹
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169870(JP,A)
【文献】特開2001-337118(JP,A)
【文献】特開2016-018634(JP,A)
【文献】実開昭62-009174(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0069684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/50
H01M 10/48
G01K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの状態を監視するバッテリ監視ユニットであって、
バッテリに取り付けられる支持部材と、
前記支持部材における前記バッテリとの取付面に配置され、前記バッテリにおける所定の被接触部と接触する接触部材と、
前記接触部材を支持し、前記支持部材に対して移動可能に前記支持部材に支持された可動部材と、
前記支持部材における前記取付面とは反対側
において、前記支持部材に設けられた開口から露出され
視認できるように突出する露出部を有する露出部材であって、前記接触部材が前記被接触部から力を受けることで前記可動部材が前記支持部材に対して移動すると、前記露出部
における前記開口からの突出量が大きくなるように構成された露出部材と、
を備えることを特徴とするバッテリ監視ユニット。
【請求項2】
バッテリにおける測温部としての前記被接触部の温度を、前記接触部材を介して検知する温度検知素子をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項3】
前記温度検知素子が接続される温度測定用配線を備えるフレキシブルプリント配線板をさらに備え、
前記フレキシブルプリント配線板は、前記支持部材及び前記可動部材に支持され、
前記温度検知素子は、前記フレキシブルプリント配線板における前記可動部材に支持された領域に、実装されることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項4】
前記接触部材は、前記フレキシブルプリント配線板における前記温度検知素子が実装された面とは反対側の面に取り付けられた金属板であることを特徴とする請求項3に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項5】
前記可動部材を前記支持部材に対して前記露出部の前記
突出量が小さくなる方向に移動させるように、前記可動部材を付勢する付勢部材をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項6】
前記付勢部材が前記可動部材を付勢する方向は、前記接触部材を前記被接触部に押し付ける方向であることを特徴とする請求項5に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項7】
前記露出部材は、前記可動部材の前記支持部材に対する移動に合せて前記支持部材に対して移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項8】
前記露出部材は、前記可動部材と一体の部材であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のバッテリ監視ユニット。
【請求項9】
バッテリの状態を監視するバッテリ監視ユニットであって、
バッテリに取り付けられる支持部材と、
前記支持部材における前記バッテリとの取付面に配置され、前記バッテリにおける所定の被接触部と接触する接触部材と、
前記接触部材を支持し、前記支持部材に対して移動可能に前記支持部材に支持された可動部材と、
を備え、
前記接触部材が前記被接触部から力を受けることで前記可動部材が前記支持部材に対して移動すると、前記可動部材の移動に連動して突起部が前記支持部材の表面に沿った方向に移動する駆動機構によって、前記支持部材の表面に設けられた窓から見える前記突起部の長さが変化することを特徴とするバッテリ監視ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ監視ユニットの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などに搭載されるバッテリには、バッテリの電圧などを監視するためのバッテリ監視ユニットが取り付けられる(特許文献1、2)。バッテリ監視ユニットは、バッテリの各電極に接触させる接点部や、バッテリの測温部に接触させる温度検知部などの各種接触部を備えている。これら接触部がバッテリにおけるそれぞれの所望部位に確実に接触するように、バッテリ監視ユニットをバッテリに取り付ける必要がある。ここで、ユニットの構成によっては、バッテリに取り付けられた状態において各種接触部がユニットの裏に隠れて外から見えないため、目視での接触状態の確認が困難になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-97894号公報
【文献】特開2016-4611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バッテリに対する取付状態を容易に確認することができるバッテリ監視ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明におけるバッテリ監視ユニットは、
バッテリの状態を監視するバッテリ監視ユニットであって、
バッテリに取り付けられる支持部材と、
前記支持部材における前記バッテリとの取付面に配置され、前記バッテリにおける所定の被接触部と接触する接触部材と、
前記接触部材を支持し、前記支持部材に対して移動可能に前記支持部材に支持された可動部材と、
前記支持部材における前記取付面とは反対側において、前記支持部材に設けられた開口から露出され視認できるように突出する露出部を有する露出部材であって、前記接触部材が前記被接触部から力を受けることで前記可動部材が前記支持部材に対して移動すると、前記露出部における前記開口からの突出量が大きくなるように構成された露出部材と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、バッテリに対するバッテリ監視ユニットの取付状態を容易に確認することができる。すなわち、バッテリ監視ユニットがバッテリに適正に取り付けられた場合
には、接触部材が被接触部と接触し、被接触部から力を受けることになる。したがって、接触部材が被接触部から受ける力によって可動部材が支持部材に対して移動することになり、露出部材の露出部の突出量が大きくなる。これにより、支持部材におけるバッテリとの取付面に配置された接触部材の被接触部に対する接触状態を、該取付面とは反対側の面における露出部材の露出部の突出量によって把握することが可能となる。すなわち、バッテリ監視ユニットがバッテリに適正に取り付けられたか否かを、取付面における接触部材の被接触部に対する接触状態を直接確認することなく、確認することができる。また、露出部材の露出部が、上記反対側の面から突出する構成とし、かつその突出量が可動部材の支持部材に対する移動によって変化する構成とすることで、露出部材の突出状態を取付面とは反対側における種々の方向から視認し易くなる。
【0007】
バッテリにおける測温部としての前記被接触部の温度を、前記接触部材を介して検知する温度検知素子をさらに備えてよい。
【0008】
バッテリの温度を正確に検知するためには、バッテリの測温部に対する接触部材の接触状態が適正であることが必須となる温度検知素子を備えた構成において、本発明のバッテリ監視ユニットの構成は非常に好適である。
【0009】
前記温度検知素子が接続される温度測定用配線を備えるフレキシブルプリント配線板をさらに備え、
前記フレキシブルプリント配線板は、前記支持部材及び前記可動部材に支持され、
前記温度検知素子は、前記フレキシブルプリント配線板における前記可動部材に支持された領域に、実装されるとよい。
【0010】
フレキシブルプリント配線板を備えたバッテリ監視ユニットの構成では、支持部材におけるバッテリとの取付面が、平板帯状のフレキシブルプリント配線板の裏に隠れてしまい、支持部材がバッテリに取り付けられた状態において、その反対側からは見え難くなる。そのような構成に対して、取付面における接触部材の被接触部との接触状態を直接確認することなく、バッテリ監視ユニットがバッテリに適正に取り付けられたか否かを確認することが可能な本発明の構成は、非常に好適である。
【0011】
前記接触部材は、前記フレキシブルプリント配線板における前記温度検知素子が実装された面とは反対側の面に取り付けられた金属板であるとよい。
【0012】
接触部材の具体的な構成は特段限定されるものではないが、バッテリ監視ユニットにおけるバッテリの温度検知部に本発明の構成を適用する場合には、接触部材として、熱伝導性の良好な金属板が好適である。
【0013】
前記可動部材を前記支持部材に対して前記露出部の前記突出量が小さくなる方向に移動させるように、前記可動部材を付勢する付勢部材をさらに備えるとよい。また、前記付勢部材が前記可動部材を付勢する方向は、前記接触部材を前記被接触部に押し付ける方向であるとよい。
【0014】
かかる付勢部材を備えることで、接触部材が被接触部と接触していない状態においては、露出部材の露出部の突出量が小さくなる。したがって、支持部材がバッテリから取り外された後も、露出部材の露出部の突出量が大きくなった状態のままになってしまうことがない。仮に、支持部材がバッテリから取り外された後も露出部材の露出部の突出量が大きくなった状態のままで維持されてしまう場合、その後の支持部材のバッテリへの取り付けにおいて、支持部材がバッテリに適正に取り付けられたのか否かの判断ができなくなってしまうことが懸念される。本発明によれば、そのような事態を回避することができる。また、付勢部材の付勢力が作用する方向が、接触部材を被接触部に押し付ける方向となることで、両者の接触状態を安定させることができる。
【0017】
前記露出部材は、前記可動部材の前記支持部材に対する移動に合せて前記支持部材に対して移動可能に設けられてもよいし、あるいは、前記可動部材と一体の部材であってもよい。
【0018】
すなわち、露出部材は、可動部材とは別体としてもよいし、可動部材と一体としてもよい。別体の場合には、露出部材の設置位置と可動部材の設置位置とを任意に設定することが可能となり、装置構成の設計の自由度を高めることができる。また、一体の場合には、装置構成としてシンプルな構成とすることができ、小型化、軽量化において好適である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明により、バッテリに対する取付状態を容易に確認することができるバッテリ監視ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例におけるバッテリの平面図、及び本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットの背面図
【
図3】本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットにおけるサーミスタ支持機構の模式的断面図
【
図4】本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットにおけるサーミスタ支持機構の模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(実施例)
図1(A)~
図4(C)を参照して、本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットについて説明する。
図1(A)は、本発明の実施例におけるバッテリの概略構成を示す平面図(上方から見た図)である。
図1(B)は、本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットの概略構成を示す背面図(バッテリ監視ユニットにおけるバッテリとの取付面側を示す図)である。
図2(A)及び
図2(B)はそれぞれ、本発明の実施例におけるバッテリの概略構成を示す側面図であり、
図2(A)は、本実施例に係るバッテリ監視ユニットが取り外された状態、
図2(B)は、本実施例に係るバッテリ監視ユニットが取り付けられた状態、をそれぞれ示している。
図3は、本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットにおけるサーミスタ支持機構の構成を示す模式的断面図であり、
図1のA矢視断面に対応する図である。
図4(A)~
図4(C)はそれぞれ、本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットにおけるサーミスタ支持機構の構成を示す模式的断面図であり、
図3のB矢視断面に対応する図である。
図4(A)は、接触部材がセルに接触する前の状態を示し、
図4(B)は、接触部材がバッテリの被接触部に接触したがバッテリ監視ユニットがバッテリに完全に装着されていない状態を示し、
図4(C)は、バッテリ監視ユニットがバッテリに完全に装着された状態を示している。
【0023】
<バッテリ監視ユニット>
図1(A)~
図2(B)を主に参照して、本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニットの概略構成について説明する。
【0024】
本発明の実施例に係るバッテリ監視ユニット1(以下、ユニット1)は、バッテリ2の電圧や温度などの各種状態を監視すべく、バッテリ2に取り付けられるユニットである。バッテリ2は、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)などの車両における動力源として用いられるものであり、複数のセル20により構成される。これら複数のセルは、正極21と陰極22とが隣り合うように配列されている。また、これら複数のセル20は、隣り合う正極21と陰極22がバスバ12を介して電気的に接続されることで直列に接続される。ユニット1が取得したバッテリ2の電圧や温度などの情報は、電圧や温度を監視する監視部30などを備える制御部3へ送られる。これらユニット1と制御部3により、上述した車両におけるバッテリ監視装置が構成される。
【0025】
ユニット1は、フレキシブルプリント配線板(以下、FPC)10と、複数のバスバ11、12と、複数のサーミスタ13と、それらを支持する支持部材14と、FPC10の端部に取り付けられたコネクタ15と、を備える。バスバ11は、直列接続されるセル20における両端となる正極21と負極22にそれぞれ接続される。また、バスバ12は、隣り合う正極21と負極22を電気的に接続するために用いられる。
【0026】
支持部材14は、キャリアとも称され、セル20の配列方向に延びる長尺の樹脂成形部材であり、ユニット1の枠体としてユニット1の各種構成を支持し、各セル20の電極21、22を覆うようにバッテリ2に取り付けられる。バッテリ2と支持部材14には、不図示の係止部や嵌合部が設けられており、それらを互いに係合させ、ボルト等で締結することで、バッテリ2とユニット1が一体化される。支持部材14は、バッテリ2への取り付け時の取り回し性を高める観点等から、長手方向に複数のユニットに分割して全体的に撓ませることが可能に構成される場合がある。
【0027】
支持部材14は、長手方向と直交する方向における両側に、長手方向に沿ってバスバ11、12がセル20の配列間隔に合せて所定間隔を空けて配置され、それらの間に平板帯状のFPC10が略長手方向に延びた構成となっている。そのため、支持部材14は、一つのセル20における正極21と陰極22の間隔よりも広い幅を有し、セル20の配列方向に沿って延びる、長尺の略板状の外形に構成される。したがって、支持部材14におけるバッテリ2との取付面(
図1(B))は、支持部材14がバッテリ2に取り付けられた状態において、外側からは見えない構成となる。また、セル20の配列数が増えるほど支持部材14はセル20の配列方向にさらに長尺の構成となる。
【0028】
FPC10は、銅箔などにより構成される複数本の配線が、接着剤層を介して、柔軟性を有するベースフィルムとカバーフィルムとで挟まれた構成を有しており、電圧監視用配線(不図示)と温度監視用配線103と、を備えている。電圧監視用配線は、一端がバスバ11、12に接続され、他端がコネクタ15に接続されている。温度監視用配線103は、一端がサーミスタ13に接続され、他端がコネクタ15に接続されている。コネクタ15は、制御部3の監視部30に電気的に接続されている。
【0029】
温度検知素子としてのサーミスタ13は、セル20の配列方向に長尺のバッテリ2の温度を長手方向の複数箇所で検知すべく、長手方向に間隔を空けて複数設けられている。具体的には、本実施例では、3つのサーミスタ13a、13b、13cがそれぞれ長手方向の両端と中央の3箇所に配置され、各所でバッテリ2の温度を測定するように構成されている。
【0030】
サーミスタ13aは、バッテリ2の長手方向(セル20の配列方向)一方側の一番端に配置されたセル20aの側面(上面)20s(
図3、
図4参照)をバッテリ2の端部測温部として配置される。サーミスタ13bは、バッテリ2の長手方向他方側の一番端に配置されたセル20bの側面20sをバッテリ2の端部測温部として配置される。サーミスタ13cは、バッテリ2の長手方向中央部に配置されたセル20cの側面20sをバッテリ2の中央測温部として配置される。
【0031】
支持部材14のバッテリ2との取付面には、接触部材40a、40b、40cが露出して設けられている。接触部材40a、40b、40cはそれぞれ、支持部材14がバッテリ2に取り付けられた状態において、セル20a、20b、20cの側面20sに接触するように構成されている。サーミスタ13a、13b、13cはそれぞれ、接触部材40a、40b、40cを介して、セル20a、20b、20cの温度を検知するように構成されている。すなわち、サーミスタ13a、13b、13cは、接触部材40a、40b、40cとともにユニット1における温度検知部を構成している。
【0032】
<本実施例の特徴的構成>
本実施例に係るユニット1は、配線にFPC10を用いており、上述したように、ユニット1においてバッテリ2と接触させなければならない各種接触部が、平板帯状のFPC10の裏に隠れてしまう。そのため、かかる接触部がバッテリ2における所望の被接触部と確実に接触しているか否か、目視で確認することが難しい。特に、セル20の配列方向に長尺に構成され、かつ樹脂等の可撓性を有する材料で構成された支持部材14は、バッテリ2に対して部分的に浮いた状態で取り付けられてしまう場合があり、長手長さが長くなるほど顕著となる。そのような取付状態が形成されると、接触部の接触状態が不十分となってしまう可能性がある。そこで、本実施例に係るユニット1は、支持部材14においてバッテリ2の被接触部に接触させる接触部を支持する構成として、次のような温度検知部の支持機構を備えている。
【0033】
図3~
図4(C)を主に参照して、本実施例に係るユニット1における温度検知部の支持機構について説明する。
本実施例に係るユニット1の支持部材14は、温度検知素子としてのサーミスタ13を含む温度検知部を支持する機構として、支持部材14(本体)に対して移動可能な可動部材としての可動支持部140が設けられている。支持部材14において、3つのサーミスタ13a、13b、13cが配置されている3箇所は、それぞれ同じ支持機構で構成されている。
【0034】
可動支持部140は、支持部材14に設けられたガイド部14g1、14g2、14g3にガイドされる被ガイド部141a、141b、141cを有している。可動支持部140は、接触部材40がセル20から力を受けると、被ガイド部141a、141b、141cがガイド部14g1、14g2、14g3にガイドされることで、支持部材14に対してセル20の測温部(被接触部)としての側面(上面)20sに垂直な方向に移動する。
【0035】
被ガイド部141a、141b、141cは、それぞれ可動支持部140においてセル20の側面20sに垂直な方向に延びた部位である。被ガイド部141a、141b、141cのそれぞれの外面がガイド部14g1、14g2、14g3に対してセル20の側面20sと平行な方向に当接することで、同方向における支持部材14に対する可動支持部140の移動が規制される。また、被ガイド部141a、141b、141cの外面がガイド部14g1、14g2、14g3に対してセル20の側面20sに垂直な方向に摺動することで、同方向における支持部材14に対する可動支持部140の移動がガイドされる。
【0036】
被ガイド部141a、141bの先端には、それぞれ外向きに折り返されたような形状の係止部141s1、141s2が設けられており、ガイド部14g1、14g2に設けられたスリット14s1、14s2に係合している。スリット14s1、14s2は、セル20の側面20sに垂直な方向に延びており、その下端縁に係止部141s1、141s2が係合したときの支持部材14に対する可動支持部140の相対位置が、可動支持部140の支持部材14に対する離間方向における可動限界位置となる。
【0037】
また、スリット141s1、14s2の側面は、係止部141s1、141s2をセル20の側面20sに垂直な方向にガイドするとともに、同方向と直交する方向における係止部141s1、141s2の移動を規制する。スリット141s1、14s2の側面が係止部141s1、141s2の移動を規制する方向は、ガイド部14g1、14g2が被ガイド部141a、141bの移動を規制する方向と直交する方向となっている。また、ガイド部14g3は、セル20の側面20sに垂直な方向に延びる溝形状を有しており、溝の底面及び溝の側面で被ガイド部141cの上記方向と直交する方向の移動を規制している。これら規制構成により、可動支持部140は、支持部材14に対して、セル20の側面20sに垂直な方向にのみ移動可能に構成されている。
【0038】
可動支持部140におけるセル20の側面20sとの対向面142には、発泡材料からなるフォームテープ42を介して、FPC10におけるサーミスタ13の実装部が取り付けられている。FPC10のサーミスタ13の実装面とは反対側の面には、アルミニウム等の伝熱性の良好な金属板40が貼り付けられている。この金属板40を、接触部材として、セル20の測温部としての側面20sに接触させることで、サーミスタ13は、金属板40を介してセル20の温度を検知する。可動支持部140の対向面142は、金属板40をセル20の側面20sに押し付ける押圧面として機能する。フォームテープ42は、セル20の側面20sに対する可動支持部140の追従性が高められるような厚みで設けられている。また、フォームテープ42の表面には、サーミスタ13を保護すべくコンフォーマルコーティングが施されている。
【0039】
また、可動支持部140における対向面142とは反対側には、対向面142がセル20の側面20sと対向する方向とは逆方向(側面20sに垂直な方向)に延びる突起部(突出部)143が設けられている。突起部143は、先端側が支持部材14に設けられた開口14hに挿通されており、可動支持部140の支持部材14に対する移動によって、開口14hからの突出量が変化するように構成されている。なお、突起部143も、挿通される開口14hとの係合により、支持部材14に対する可動部材140の移動をガイドする機能を有している。
【0040】
また、可動支持部140と支持部材14との間には、突起部143を囲むようにコイルバネ41が取り付けられており、支持部材14と可動支持部140との間に、両者を離間させる方向に作用するバネ力(付勢力)が付与される。可動支持部140と支持部材14との間に、コイルバネ41のバネ力以外の外力が何ら加わっていない状態では、可動支持部140は、コイルバネ41のバネ力あるいは自重によって、支持部材14に対して係止部141s1、141s2がスリット14s1、14s2の下端縁に係止する位置で維持される(
図4(A))。この相対位置において、突起部143の開口14hからの突出量は最も小さくなる。
【0041】
支持部材14がバッテリ2に取り付けられる際に、接触部材40がセル20の側面20sに接触し、側面20sに対して押し付けられると、側面20sからの反力が、コイルバネ41のバネ力に抗する方向に作用する。さらに接触部材40がセル20の側面20sに押し付けられると、すなわち、コイルバネ41のバネ力よりも大きな力がさらに加えられ
ると、コイルバネ41を圧縮させるように可動支持部140が支持部材14に対して移動する(
図4(B))。この移動により、突起部143の開口14hからの突出量は大きくなる。
【0042】
支持部材14がバッテリ2に対して適正に取り付けられると(取り付けが完了すると)、可動支持部140と支持部材14との間の相対移動もなくなり、このとき、突起部143の開口14hからの突出量は最大となる(
図4(C))。
【0043】
<本実施例の優れた点>
本実施例によれば、突起部143の開口14hからの突出量(露出量)を確認することで、接触部材40とセル20との接触状態、すなわち、支持部材14がバッテリ2に対して適正に装着されているのか否かを知ることができる。
【0044】
支持部材14がバッテリ2に対して適正に装着されている状態とは、接触部材40とセル20とが適正に接触していること、すなわち、サーミスタ13による温度検知を正確に行えるように接触部材40とセル20とが接触している状態である。例えば、接触部材40とセル20の側面20sとが、正確な温度検知のために必要な所定の接触圧で互いに接触しているか否かで判断することができる。このような適正な接触状態が形成されると、支持部材14のバッテリ2への装着完了後の突起部143の開口14hからの突出量は、装着前の突出量から大きく増大することになる。
【0045】
一方、接触部材40とセル20とが適正に接触していない場合には、接触部材40に対して作用するセル20からの反力が不十分となるため、可動支持部140の支持部材14に対する相対移動のストロークが、適正な接触時よりも小さくなる。その結果、支持部材14のバッテリ2への装着完了後の突起部143の開口14hからの突出量は、装着完了前の突出量からあまり変化しない、あるいは変化がない状態となる。
【0046】
したがって、支持部材14のバッテリ2への装着の前後における突起部143の開口14hからの突出量の変化を見ることで、接触部材40とセル20との接触状態が適正であるのか否かを知ることができる。本実施例によれば、接触部材40とセル20との接触状態を、直接目視で確認することをせずに、把握することができるので、バッテリ監視装置の組立工程のサイクルタイムの短縮を図ることが可能となる。
【0047】
また、コイルバネ41が、可動支持部140を、突起部143の開口14hからの突出量が小さくなる方向に、支持部材14に対して移動させるように付勢する。これにより、接触部材40がセル20と接触していない状態においては、突起部143の開口14hからの突出量が小さくなる。したがって、支持部材14がバッテリ2から取り外された後も、突起部143の開口14hからの突出量が大きくなった状態のままになってしまうことがない。仮に、支持部材14がバッテリ2から取り外された後も突起部143の開口14hからの突出量が大きくなった状態が維持されてしまうような場合、その後の支持部材14のバッテリ2への取り付けにおいて、支持部材14がバッテリ2に適正に取り付けられたのか否かの判断ができなくなってしまう懸念があるが、本実施例によれば、そのような事態を回避することができる。また、コイルバネ41の付勢力が作用する方向が、接触部材40をセル20に押し付ける方向となることで、両者の接触状態を安定させることができる。
【0048】
なお、例えば、可動支持部140の支持部材14に対するストロークをそれらの自重によって制御できるような場合には、コイルバネ41は必ずしも必要な構成ではなく、これを省いた構成としてもよい。
【0049】
<その他>
本実施例で示したバッテリ監視ユニットにおける温度検知部の支持機構の具体的な構成は、あくまで一例である。本実施例と少なくとも同様の効果を得られるものであれば、他の種々の構成を適宜することができる。
【0050】
例えば、温度検知部を設ける箇所や数は、例えば、ユニット1の長手長さ(セル20の配置数)に応じて、温度を検知すべき個所は種々考えられることから、装置構成に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
また、本実施例で示した可動支持部140の支持部材14に対するガイド機構の構成は、あくまで一例であり、従来既知の種々のガイド構成を適宜採用してよい。
【0052】
また、本実施例では、可動支持部140の突起部143を円柱状の構成としたが、かかる構成に限定されるものではなく、角柱や他の種々の形状を適宜採用することができる。
また、突起部143にマーキングや色分けを施して、突出量(露出量)の変化を視認し易くしてもよい。
【0053】
また、本実施例では、突起部143を、可動支持部140の一部として構成したが、押圧面142や被ガイド部141からなる可動部材とは別体の露出部材(突出部材)として構成してもよい。押圧面142や被ガイド部141からなる可動部材の移動に連動して露出部材も移動するような駆動リンク機構を設けて、露出部材の配置を任意に設定できるように構成すれば、設計の自由度を高めることが可能である。突起部143を可動支持部140の一部として構成する場合には、装置構成としてシンプルな構成とすることができ、小型化、軽量化に有利である。
【0054】
また、本実施例では、付勢部材としてコイルバネ41を用いたが、例えば、トーションバネ等の他の付勢部材を用いてもよい。支持部材14と可動支持部140との間における付勢部材の取り付け構成も、付勢部材の構成に応じて適宜変更してよい。
【0055】
また、本実施例では、突起部143の支持部材14表面からの突出量で、支持部材14のバッテリ2に対する取付状態を視認可能に構成したが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、可動支持部140の移動に連動して突起部143が支持部材14の表面に沿った方向に移動するような駆動機構を設け、突起部143が、支持部材14の表面に設けた窓から見える長さを露出量として変化させるように構成してもよい。すなわち、突起部143が支持部材14表面の窓から見せる露出長さを変化させることで、突起部143を支持部材14の表面から突出させない形で、支持部材14の装着状態の目視確認を可能にすることができる。
【0056】
また、本実施例では、バッテリ監視ユニットにおいて、バッテリに接触配置する必要がある構成として、温度検知部を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、温度センサ以外の種々のセンサや、電気的な接点を取る必要がある部位において、本実施例と同様の可動支持構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…バッテリ監視ユニット
10…FPC
13…サーミスタ(温度検知素子)
14…支持部材
140…可動支持部(可動部材)
141…被ガイド部
142…押圧面
143…突起部(露出部材、露出部、突出部)
2…バッテリ
20…セル
20s…セル側面(被接触部、測温部)
40…金属板(接触部)
41…コイルバネ(付勢部材)
42…フォームテープ