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特許7183010回転検出装置、および、それを用いたレンズ装置並びに撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】回転検出装置、および、それを用いたレンズ装置並びに撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20221128BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20221128BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20221128BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/08 Z
G03B17/14
G01D5/347 110A
G01D5/347 110X
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018221833
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020086197
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】畠山 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】野口 和宏
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533248(JP,A)
【文献】特開2013-231665(JP,A)
【文献】特開2015-169540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0108259(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G01D 5/26-5/38
G03B 17/02-17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環部材と、
可撓性を有し、前記円環部材の内周部に取り付けられるスケール部材と、
前記スケール部材に対向し、前記スケール部材との相対回転を検出する検出手段とを有し、
前記円環部材の前記内周部は、前記スケール部材と接触する複数の接触面と、前記円環部材の回転軸方向において前記接触面と異なる位置に設けられた内周面と、を有し、
前記複数の接触面の内接円の円周長は、前記スケール部材の長手方向の長さよりも短く、
前記内周面の円周長は、前記スケール部材の長さ以上であり、
前記複数の接触面のそれぞれと前記内周面は、前記回転軸方向に滑らかにつながっている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記円環部材は、前記複数の接触面のそれぞれと前記内周面との間に設けられた斜面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記斜面は、平面部および曲面部の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記内周面の前記回転軸方向の幅は、前記スケール部材の前記回転軸方向の幅よりも長い
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記内周面の前記回転軸方向の幅は、前記スケール部材の前記回転軸方向の幅よりも短い
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記検出手段が取り付けられる固定部材を更に有し、
前記円環部材の前記内周面は、前記固定部材と係合する軸受部である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記円環部材の前記内周部は、前記複数の接触の前記内接円よりも前記円環部材の径方向の外側に凹んだ複数の凹部を有し、
前記スケール部材は、リング状に曲げられ、かつ前記複数の凹部の内側に撓んだ状態で前記円環部材の前記内周部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回転検出装置。
【請求項8】
撮像光学系と、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回転検出装置と、を有する
ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置を介して形成される光学像を光電変換する撮像素子と、
前記撮像素子を保持するカメラ本体と、を有する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
前記レンズ装置は、前記カメラ本体に対して着脱可能である
ことを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置等の各種装置に用いられる回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラや交換レンズ等の光学装置は、操作リングの回転を検出して該光学装置に各種動作を行わせる機能を有する。このような操作リングには無端回転が可能なものがあり、これに対応する回転検出装置が必要である。
【0003】
従来、操作リングの内周に設けられたスケールと、スケールとの相対回転が可能なフォトセンサとを有し、フォトセンサからスケールに設けられた周期パターンに対応する信号を出力する回転検出装置が知られている。特許文献1には、操作リングの内周面にシートを貼り付けて構成されたスケールを有する光学装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-110070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなシートを操作リングの内周面に浮きなく貼り付けるには、シートに引っ張り力を与えながら貼り付ける必要がある。このとき、引っ張り力のばらつきにより、スケールの周方向長さにばらつきや、シートの両端間の隙間の周方向幅に誤差が生じ、回転検出精度が低下する可能性がある。また、操作リングの内周面に貼り付けたシートを剥がして再度貼り付けることで、スケールの長さや両端間の隙間の幅を調整することは可能であるが、作業に手間がかかる。
【0006】
そこで本発明は、従来よりも円環部材の内周面にスケール部材を高精度かつ容易に取り付けることが可能な回転検出装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての回転検出装置は、円環部材と、可撓性を有し、前記円環部材の内周部に取り付けられるスケール部材と、前記スケール部材に対向し、前記スケール部材との相対回転を検出する検出手段とを有し、前記円環部材の前記内周部は、前記スケール部材と接触する複数の接触面と、前記円環部材の回転軸方向において前記接触面と異なる位置に設けられた内周面とを有し、前記複数の接触面の内接円の円周長は、前記スケール部材の長手方向の長さよりも短く、前記内周面の円周長は前記スケール部材の長さ以上であり、前記複数の接触面のそれぞれと前記内周面は、前記回転軸方向に滑らかにつながっている。
【0008】
本発明の他の側面としてのレンズ装置は、撮像光学系と前記回転検出装置とを有する。
【0009】
本発明の他の側面としての撮像装置は、前記レンズ装置と、前記レンズ装置を介して形成される光学像を光電変換する撮像素子と、前記撮像素子を保持するカメラ本体とを有する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも円環部材の内周面にスケール部材を高精度かつ容易に取り付けることが可能な回転検出装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態における撮像装置の外観斜視図である。
図2】本実施形態における撮像装置のブロック図である。
図3】本実施形態における回転検出装置の分解斜視図である。
図4】本実施形態における回転検出装置の断面図である。
図5】本実施形態における反射スケールの説明図である。
図6】本実施形態における操作リングの説明図である。
図7】本実施形態における操作リングの説明図である。
図8】本実施形態における反射スケールと内接円との関係を示す展開図である。
図9】反射スケールと内接円と内周接続線との関係を示す展開図である。
図10】本実施形態における反射スケールと内接円との温度環境下での関係を示す展開図である。
図11】本実施形態における反射スケール長と内接円の円周長とスケール受け部の合計長との関係を示す展開図である。
図12】本実施形態における反射スケールの撓みを示す図である。
図13】本実施形態における反射スケールを操作リングに取り付ける方法を示す断面図である。
図14】本実施形態における反射スケールを操作リングの回転摺動部に配置した状態を示す斜視図である。
図15】本実施形態における回転検出方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態における撮像装置100について説明する。図1は、撮像装置100の外観斜視図である。図2は、撮像装置100のブロック図である。撮像装置100は、カメラ本体1と、カメラ本体に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)2とを備えて構成される。交換レンズ2の外周には、無端回転可能な操作部材としての操作リング21が設けられている。
【0015】
カメラ本体1は、カメラ制御部11および撮像素子12を有する。カメラ制御部11は、交換レンズ2のレンズ制御部26と通信を行うことが可能である。撮像素子12は、カメラ本体1に保持され、交換レンズ2を介して形成される光学像を光電変換して画像データを出力する。交換レンズ2は、前述の操作リング21、検出部(検出手段)221、フォーカスレンズ241、フォーカス駆動部242、絞りユニット251、絞り駆動部252、および、レンズ制御部26を有する。
【0016】
検出部221は、後述する反射スケールからの反射光を受光するフォトリフレクタにより構成され、操作リング21の回転に応じた検出信号を出力する。レンズ制御部26は、検出部221からの検出信号を用いて操作リング21の回転方向、回転量および回転速度を検出することができる。フォーカスレンズ241は、交換レンズ2内に収容された不図示の撮像光学系内に設けられ、撮像光学系の焦点位置を調整するレンズである。フォーカス駆動部242は、フォーカスレンズ241を撮像光学系の光軸方向に移動させるためのアクチュエータである。絞りユニット251は、複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、絞り開口の大きさを変化させて絞り開口を通過する光量を調節する。絞り駆動部252は、絞りユニット251の絞り羽根を駆動するアクチュエータである。レンズ制御部26は、検出部221からの操作信号を取得し、カメラ本体1に設けられたカメラ制御部11との通信を行い、または、フォーカス駆動部242および絞り駆動部252を制御するマイクロコンピュータである。
【0017】
操作リング21には、その操作に応じてフォーカスレンズ241を駆動して焦点位置を調整する機能または絞りユニット251を駆動して光量を調整する機能のいずれかがカメラ本体1におけるユーザ設定によって割り当てられている。レンズ制御部26は、検出部221からの検出信号から操作リング21の回転方向および回転量等を検出し、その検出結果を用いて、操作リング21に割り当てられている機能に応じてフォーカス駆動部242または絞り駆動部252を制御するよう動作する。また、レンズ制御部26は、カメラ本体1(カメラ制御部11)からAFのためのフォーカス駆動命令やAEのための絞り駆動命令を受信して、フォーカス駆動部242や絞り駆動部252を制御する。
【0018】
次に、図3乃至図5を参照して、操作リング21の回転を検出する検出部221を含む回転検出装置200について説明する。図3は、回転検出装置200の分解斜視図である。図4は、回転検出装置200の断面図である。図5は、回転検出装置200における反射スケール(スケール部材)27の説明図である。以下の説明において、光軸方向における被写体側を前側といい、像側を後側という。また、光軸回り方向を周方向といい、光軸に直交する方向を径方向という。
【0019】
回転検出装置200は、固定筒(固定部材)23、操作リング21、スケール部材としての反射スケール27および検出部221により構成される。固定筒23は交換レンズ2のベース部材であり、固定筒23には操作リング21の回転をガイドする回転受け部232と検出部221を固定する(取り付ける)ためのセンサ固定部231とが設けられている。操作リング21は、前述したように操作部材であるとともに、その内周部に反射スケール27が取り付けられる円環部材である。なお、本実施例では、操作リング21が操作部材かつ円環部材であるが、操作部材と円環部材が別部材であってもよい。
【0020】
回転検出装置は、固定筒23、操作リング21、反射スケール(スケール部材)27、および、検出部221を備えて構成されている。固定筒23は、交換レンズ2のベース部材であり、固定筒23には操作リング21の回転をガイドする回転受け部232と検出部221を固定するためのセンサ固定部231とが設けられている。操作リング21は、前述したように操作部材であるとともに、その内周部に反射スケール27が取り付けられる円環部材である。なお、本実施形態では、操作リング21が操作部材かつ円環部材であるが、操作部材と円環部材が別部材であってもよい。
【0021】
検出部221は、センサ(フォトリフレクタ)221aと、センサ221aが実装されたセンサFPC221bとを備えて構成され、固定筒23のセンサ固定部231に固定されている。
【0022】
操作リング21の内周部は、スケール受け部211、および、スケール受け部211の前側および後側にそれぞれ設けられた回転摺動部212A、212Bを有する。スケール受け部211は、反射スケール27が取り付けられて接触する接触面である。図4に示されるように、回転摺動部212Aは固定筒23の回転受け部232と回転可能に係合し、回転摺動部212Bは固定筒23に連結された前筒28の回転受け部282と回転可能に係合する。これにより、固定筒23および前筒28に対する操作リング21の回転軸(回転中心軸)が決まる。このように回転摺動部212A、212Bは、回転受け部232、282と係合して操作リング21の回転軸を決める軸受部である。後述のように、回転摺動部212Aは、軸受部としての機能に加えて、操作リング21に反射スケール27を組み込む際にも利用される。
【0023】
図5は、反射スケール27の説明図であり、反射スケール27のパターン面と側面を平面状に展開して示している。反射スケール27は、そのパターン面上に複数の反射部27aと複数の非反射部27bとが交互に配置された可撓性を有するシート部材であり、操作リング21のスケール受け部211に図3に示されるようにリング状に曲げられて取り付けられる。反射部27aと非反射部27bは、互いに反射率が異なる(反射部27aの反射率が非反射部27bのそれよりも高い)。すなわち、パターン面上には、周期的に反射率が変更するパターンが形成されている。
【0024】
図5において、反射スケール27の長手方向(周方向)における反射部27aの幅をRaとし、非反射部27bの幅をRbとする。また、1つの反射部27aから次の反射部27aまでの長さ(所定ピッチ:以下、パターンピッチという)をRpとする。本実施例では、反射スケール27の長手方向の長さL1を、パターンピッチRpの整数倍(×n)に設定している。反射スケール27の長手方向の両端部のうち一方にはパターンの一部分としての反射部27aが設けられ、他方にはパターンの他の一部分としての非反射部27bが設けられている。
【0025】
また、図5に示されるように、側面から見たときの反射スケール27の厚みをtとする。厚みt内には、母材部とパターン形成部の厚みが含まれている。母材部は、SUS等の金属材料やPET等の樹脂材料であって可撓性を有する板材により構成される。パターン形成部には、反射材に非反射面を印刷することで上述したパターンが形成されている。パターン形成部の表面(図5における下面)が上述したパターン面である。
【0026】
次に、図6および図7を参照して、操作リング21のスケール受け部211について説明する。図6および図7は、操作リング21のスケール受け部211の説明図(断面図)である。図6に示されるように、スケール受け部211は、複数の接触部(接触面)211aと複数の凹部(非接触部)211bとが周方向に交互に配置されて構成されている。図7に示されるように、複数の接触部211aに内接する円を内接円Aとする。凹部211bは、内接円Aよりも径方向外側に凹んだ部分である。また、内接円Aの中心Oから接触部211aまでの最短距離をRとし、内接円Aの円周長をL2とする。
【0027】
図8は、反射スケール27と内接円Aとの関係を示す展開図である。反射スケール27の長さL1は、内接円Aの円周長L2よりも所定値L3だけ長く設定される。逆に言えば、内接円Aの円周長L2は、反射スケール27の長さL1よりも所定値L3だけ短く設定される。すなわち、接触部211aを決める最短距離Rは、反射スケール27の長さL1と所定値L3とにより設定される。非接触部211bは、内接円Aよりも外側に位置するように設けられる。
【0028】
所定値L3は、反射スケール27と操作リング21の部品公差内での寸法ばらつきと、反射スケール27と操作リング21の線膨張係数の違いによる変形量の差があっても、以下の2つの条件を満たすように設定される。図9(A)、(B)は、これらの条件を満たさない場合の例を示す。言い換えれば、図9(A)、(B)に示されるような関係では、以下の条件1および条件2を満たしていないことになる。
【0029】
条件1:内接円Aの円周長L2が、反射スケール27の長さL1より短いこと。
【0030】
条件2:スケール受け部211上の全ての接触部211aとこれらのそれぞれの両側の2つの凹部211bとをつなぐ2面(斜面)の面に沿った長さの合計長L4が、反射スケール27の長さL1よりも長いこと。
【0031】
図10を参照して、反射スケール27をリング状に曲げたときの反射スケール27の両端部間の間隔の条件1を満たすための最大値L3′(A)について説明する。図10は、反射スケール27と内接円Aとの温度環境下での関係を示す展開図である。
【0032】
まず、操作リング21の材料(樹脂)の線膨張係数が反射スケール27の母材部の材料の線膨張係数より大きい場合について説明する。反射スケール27の長さL1の公差を±αとする。内接円Aの中心から接触部211aまでの最短距離Rの公差を±βとするとき、内接円Aの円周長が最大になるときの設計値からの増加量Cは、以下の式(1)で表される。
【0033】
C=2・β・π … (1)
交換レンズ2の使用温度範囲における最高温度での線膨張係数による変化量を考慮した反射スケール27の長さをL1′、内接円Aの円周長をL2′とする。これらの値から反射スケール27の両端部間の間隔が大きくなる方向の値を足すと、最大値L3′(A)は以下の式(2)のように表される。
【0034】
L3′(A)=α+2・β・π+(L2′-L1′) … (2)
操作リング21の材料の線膨張係数が反射スケール27の母材部の材料の線膨張係数よりも小さい場合には、低温時に反射スケール27の両端部間の間隔が最も大きくなる。このため、使用温度範囲における最低温度での反射スケール27の長さをL1″、内接円Aの円周長をL2″とすると、最大値L3′(B)は以下の式(3)のように表される。
【0035】
L3′(B)=α+2・β・π+(L1″-L2″) … (3)
条件2について、反射スケール27の両端部間の干渉量(以下、両端干渉量という)を用いて説明する。操作リング21の材料の線膨張係数が反射スケール27の母材部の材料の線膨張係数より大きい場合の反射スケール27の両端干渉量の最大値がL3′(B)、前者の方が小さい場合の両端干渉量の最大値がL3′(A)となる。
【0036】
以上のことから、所定値L3は、以下の式(4)または(5)に示す範囲で設定される。すなわち、操作リング21の材料の線膨張係数が反射スケール27の母材部の材料の線膨張係数より大きい場合、図11に示すように、所定値L3は式(4)の範囲で設定される。図11は、反射スケール長と内接円の円周長とスケール受け部の合計長との関係を示す展開図である。
【0037】
L3′(A)<L3<L4-L1-L3′(B) … (4)
一方、操作リング21の材料の線膨張係数が反射スケール27の母材部の材料の線膨張係数より小さい場合、所定値L3は式(5)の範囲で設定される。
【0038】
L3′(B)<L3<L4-L1-L3′(A) … (5)
以上の結果から、条件1と条件2を満たす所定値L3を導き出すことができ、反射スケール27の長さL1から所定値L3を差し引いた値L2が内接円Aの円周長となるように最短距離Rを決定する。
【0039】
前述のようにスケール受け部211を構成することで、部品精度のばらつきや温度変化にかかわらず、反射スケール27は、接触部211aに対して押圧され、かつ両端部同士が当接することでスケール受け部211に保持される。接触部211aに対する押圧力は、弾性を有する反射スケール27のリング状の曲げにより発生した付勢力により与えられる。また、両端部同士の当接力は、反射スケール27の複数の凹部211bの内側への撓みにより発生した付勢力により与えられる。
【0040】
図12は、反射スケール27の撓みを示す図である。実際の反射スケール27の長さL1と内接円Aの円周長L2との差は、図12に示されるように凹部211b内への反射スケール27の撓み量を変えることで吸収される。これにより、反射スケール27の変形方向が径方向の内方とならないように制御することができる。
【0041】
所定値L3を前記条件内で大きい値に設定すると、凹部211b内への反射スケール27の撓み量は大きくな、前述の両端部同士の当接力と接触部211aに対する付勢力が大きくなる。一方、所定値L3を前記条件内で小さい値に設定すると、凹部211b内への反射スケール27の撓み量は小さくな、前述の両端部同士の当接力と接触部211aに対する付勢力は小さくなる。両端部同士の当接力が小さくなることで、反射スケール27の塑性変形を抑えることができる。
【0042】
本実施例のように反射スケール27の両端部同士を当接させることにより、両端部同士のつなぎ目での反射や非反射部27bのピッチばらつきは回転検出装置の組立て誤差の影響を受けず、反射スケール27の部品公差内でのばらつきに収まる。反射スケール27の一方の端部に非反射部27bを設けているため、つなぎ目にて生じる微小な非反射領域もこれに隣接する非反射部27bと同じものとして検出される。
【0043】
本実施例のように反射スケール27の両端部同士を当接させる構成を採用することで、スケールピッチRpを小さくすることができる。これにより、本実施例の回転検出装置は、操作リング21の回転検出を高分解能で行うことができ、フォーカスレンズ241のような高精細な位置制御を行う場合にも使用することができる。
【0044】
次に、図13および図14を参照して、本実施形態の反射スケール27を操作リング21に取り付ける方法(組む込む方法)について説明する。図13は、反射スケール27を操作リング21に取り付ける方法を示す断面図である。図14は、反射スケール27を取付準備径に配置した状態を示す斜視図である。
【0045】
図13に示されるように、操作リング21は、内接円Aを形成する接触部(接触面)211aに加えて、所定の径(取付準備径)を有する回転摺動部(内周面)212A、斜面235、および、スケール突き当て部214を有する。回転摺動部212Aの円周長は、反射スケール27の長さL1以上であるように設定される。すなわち回転摺動部212Aの取付準備径は、内接円Aの径よりも大きい。斜面235は、接触部211aと回転摺動部212Aとを滑らかに連続的につなぐ面である。なお斜面235は、接触部211aと回転摺動部212Aとを滑らかに連続的につなぐ面であれば、平面に限定されるものではなく、曲面であってもよい。すなわち斜面235は、平面部および曲面部の少なくとも一方を含む。スケール突き当て部214は、反射スケール27の回転軸方向の位置を決定するためのストッパー部である。
【0046】
図14に示されるように、取付準備径を有する回転摺動部212Aの円周長は反射スケールの長さL1よりも長いため、回転摺動部212Aは反射スケール27の突っ張り力を受けず、操作リング21の回転摺動部212Aに容易に組み込むことができる。図13中の位置(A)は、回転摺動部212Aに反射スケール27を配置した状態を示す。この状態から、反射スケール27の側面を図13中の矢印Fの方向に(接触部211aへ向けた方向に)反射スケール27がスケール突き当て部214に当たるまで押し込む。その際、回転摺動部212Aと接触部211aとが斜面235でつながっているため、反射スケール27は、滑らかに接触部211aと係合する位置(B)に押し込まれ、操作リング21に取り付けられる。以上の方法により、反射スケール27は、被検出位置である接触部211aの内周側に、径方向および周方向のそれぞれにおける突っ張り力を与えながら取り付けられる。
【0047】
本実施形態において、回転摺動部212Aの回転軸方向の幅W1は、反射スケール27の回転軸方向の幅W2と異なるように設定されていることが好ましい。幅W1が幅W2よりも長い場合(W1>W2)、反射スケール27を位置(A)から位置(B)へ押し込む際に、矢印Fで示される力を加えやすくなる。一方、幅W1が幅W2よりも短い場合(W1<W2)、反射スケール27を位置(A)から位置(B)へ向けて平行に押し込むことができる。いずれの場合でも、反射スケール27を押し込むことが容易になる。
【0048】
次に、図4および図15を参照して、回転検出装置200による回転検出方法について説明する。図15は、回転検出方法の説明図である。センサ221aは、操作リング21のスケール受け部211に取り付けられた反射スケール27のパターン面に対向するように固定筒23のセンサ固定部231に固定される。センサ221aは、反射スケール27のパターンに向けて光を発する発光部と、パターンの反射部27aで反射された光を受光する2つの受光部A,Bとを有する。受光部Aと受光部Bの中心間隔は、反射スケール27における隣り合う反射部27aと非反射部27bの周方向での中心間隔と一致している。
【0049】
操作リング21が固定筒23に対して回転すると、反射スケール27がセンサ221aに対して移動(回転)し、センサ221aの発光部からの光が反射スケール27の反射部27aと非反射部27bに交互に照射される。操作リング21が一方向に回転する間は、ある反射部27aに光が照射されるとその反射部27aで反射した光が受光部A、Bのうち一方により受光される。その後、次の反射部27aに光が照射されるとその反射部27aで反射した光が受光部A、Bのうち他方により受光される。
【0050】
図15に示されるように、受光部A、Bからの出力は、受光した反射光の光量が一定の閾値を超えている場合はHighに、閾値を下回る場合はLowになる。このため、操作リング21が一方向に回転すると、受光部A、Bから互いに90°位相がずれてHighとLowが出力される。図15では、例えば受光部Aからの出力がHighで受光部Bからの出力がLowであることを“H/L”と示している。
【0051】
レンズ制御部26は、受光部A、Bの出力の組み合わせから、操作リング21の回転方向、回転量、および、回転速度を検出する。具体的には、例えば、受光部A、Bの出力が“H/L”から“L/L”に変化することで1パルス分の回転量を検出する。また、一定時間内に検出したパルス数により回転速度を検出する。さらに、受光部A,Bの出力が“H/L”→“H/H”→“L/H”→“L/L”→“H/L”のうちいずれかの切り替わりを検出することで、操作リング21の回転方向が図中に丸囲み1で示す方向であることを検出する。また、受光部A,Bの出力が“H/L”→“L/L”→“L/H”→“H/H”→“H/L”のうちいずれかの切り替わりを検出することで、操作リング21の回転方向が図中に丸囲み2で示す方向であることを検出する。このように本実施形態では、センサ221aと反射スケール27とを対向して配置し、センサ221aと反射スケール27とを相対的に移動させることにより、操作リング21の操作量、操作速度、および、操作方向を検出することができる。
【0052】
本実施形態において、複数の接触部211aの内接円Aの円周長L2は反射スケール27の長さL1よりも短く、回転摺動部212Aの円周長は、反射スケール27の長さL1以上である。また、複数の接触部211aのそれぞれと回転摺動部212Aは、斜面235を介して、回転軸方向に滑らかにつながっている。このような構成により、粘着剤を用いることなく反射スケール27を操作リング21に取り付けることができる。このため本実施形態によれば、円環部材(操作リング21)の内周面にスケール部材を高精度かつ容易に取り付けることが可能な回転検出装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0054】
例えば、本実施形態では、カメラ(撮像装置)用のレンズ装置に設けられた操作リングに搭載する回転検出装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の回転検出装置は、例えば、オーディオ機器の音量調整ノブや、直動ステージの調節ノブ等にも適用可能である。また回転検出装置は、操作検出手段としてだけでなく、例えばモータの回転検出に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
21 操作リング(円環部材)
27 反射スケール(スケール部材)
211a 接触部(接触面)
212A 回転摺動部(内周面)
221 検出部(検出手段)
図1
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図15