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特許7183015画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 9/07 20060101AFI20221128BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
H04N9/07 A
H04N5/232 290
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018226426
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020092288
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】田島 香
【審査官】西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103797(JP,A)
【文献】特開2013-219616(JP,A)
【文献】国際公開第2011/067850(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/045849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 9/07
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色が所定の規則でモザイク状に配置された撮像素子により撮像されて得られた未現像の入力画像に対し、複数種類のホワイトバランス処理を行う処理手段と、
前記入力画像と前記処理手段によるホワイトバランス処理後の信号とを参照して色の補間処理を行って、前記入力画像と色比が同等となる色信号ごとの画像を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された画像をリサイズするリサイズ手段と、を有し、
前記生成手段は、前記ホワイトバランス処理後の信号を参照して、前記色の補間処理における補間特性を制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記ホワイトバランス処理後の画像を参照して、着目画素に対する近傍の画素との相関に応じた制御信号を生成し、前記制御信号を基に前記補間特性を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記入力画像は、第1の色信号と第2の色信号と第3の色信号との、少なくとも3種類の色信号を含み、
前記処理手段は、
ホワイトバランス処理前の第1の色信号を基準にして、基準以外の色信号のレベルを調整する第1の処理手段と、
ホワイトバランス処理前の第2の色信号を基準にして、基準以外の色信号のレベルを調整する第2の処理手段と、
ホワイトバランス処理前の第3の色信号を基準にして、基準以外の色信号のレベルを調整する第3の処理手段と、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記第1の処理手段による処理後の信号と、前記入力画像の前記第1の色信号とを参照して、第1の色信号からなる画像を生成し、
前記第2の処理手段による処理後の信号と、前記入力画像の前記第2の色信号とを参照して、第2の色信号からなる画像を生成し、
前記第3の処理手段による処理後の信号と、前記入力画像の前記第3の色信号とを参照して、第3の色信号からなる画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の色信号は原色の緑の色信号、前記第2の色信号は原色の赤の色信号、前記第3の色信号は原色の青の色信号であり、
前記生成手段は、
前記入力画像に含まれる前記緑の色信号に対して複数種類のフィルタリング処理を行った後の複数の緑の色信号を、前記第1の処理手段による処理後の信号を基に合成して、緑の色信号からなる画像を生成し、
前記入力画像に含まれる前記赤の色信号に対してフィルタリング処理を行った後の赤の色信号から、前記第2の処理手段による処理後の信号を基に、赤の色信号からなる画像を生成し、
前記入力画像に含まれる前記青の色信号に対してフィルタリング処理を行った後の青の色信号から、前記第3の処理手段による処理後の信号を基に、青の色信号からなる画像を生成することを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記第1の処理手段の処理後の信号における着目画素に対する近傍の画素との相関を基に、前記複数種類のフィルタリング処理を行った後の前記複数の緑の色信号における前記合成を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、
前記赤の色信号の振幅を、前記第2の処理手段による処理後の緑の色信号に基づいて調整し、
前記青の色信号の振幅を、前記第3の処理手段による処理後の緑の色信号に基づいて調整することを特徴とする請求項5または6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、
前記第2の処理手段の処理後の信号における着目画素に対する近傍の画素との相関に応じて、前記赤の色信号に、前記第2の処理手段による処理後の緑の色信号を加算するような前記調整を行い、
前記第3の処理手段の処理後の信号における着目画素に対する近傍の画素との相関に応じて、前記青の色信号に、前記第2の処理手段による処理後の緑の色信号を加算するような前記調整を行うことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記リサイズ手段によるリサイズ後の前記第1の色信号からなる画像と、前記リサイズ後の前記第2の色信号からなる画像と、前記リサイズ後の前記第3の色信号からなる画像とを、前記所定の規則の色の配置に応じて配置するように統合する統合手段を有することを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
複数の色が所定の規則でモザイク状に配置された撮像素子により撮像されて得られた未現像の入力画像に対し、複数種類のホワイトバランス処理を行う処理工程と、
前記入力画像と前記処理工程によるホワイトバランス処理後の信号とを参照して色の補間処理を行って、前記入力画像と色比が同等となる色信号ごとの画像を生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された画像をリサイズするリサイズ工程と、を有し、
前記生成工程では、前記ホワイトバランス処理後の信号を参照して、前記色の補間処理における補間特性を制御することを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像を処理する画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、未現像の画像に対して、ユーザが画質パラメータを調整し、その画質パラメータに基づく現像処理結果をリアルタイムで表示する、パーソナルコンピュータ用アプリケーションプログラムやカメラ内再現像機能が知られている。このような現像処理結果をリアルタイム表示する用途では、高速化や消費電力低減のため、可能な限り前段の処理で未現像の画像をリサイズ(具体的には縮小)してから現像処理を適用することが望ましい。一方、一般的なカメラの撮像素子はR(赤),G(緑),B(青)のカラーフィルタがモザイク状に規則的に配置されており、その撮像素子から出力される未現像の画像信号の各画素にはR,G,B信号のいずれかの色信号しか存在しない。したがって、未現像の画像を縮小してから現像する場合、縮小前にRGBの色信号の同時化補間や縮小率に応じた帯域制限を行う必要がある。これらの処理を、例えば単純な線形補間によって行うと、撮像素子での色ごとのサンプリング構造の違いに起因して、解像感の低下や折り返しの発生といった画質低下を招いてしまう。これに対し、特許文献1では、未現像の画像を縮小する際に、縮小率に応じて、着目画素近傍の画素の相関を検出し、その相関に応じた適応的な補間処理を行うことで画質劣化を抑える技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-103797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、各画素に配置されたカラーフィルタ起因の信号レベル差をキャンセルして、着目画素近傍の画素相関を検出するため、入力画像に対して、予めホワイトバランス調整を行う必要がある。そのため、ホワイトバランス調整後の信号値が回路飽和でクリップされてしまうと、後からユーザが画質パラメータを調整する際に、クリップによる画質劣化や調整自由度が低下するという問題が生ずる。
【0005】
そこで、本発明は、撮像時のサンプリングに伴う画質劣化の低減しつつ、縮小等のリサイズ後に画質調整が可能な未現像の画像を生成可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、複数の色が所定の規則でモザイク状に配置された撮像素子により撮像されて得られた未現像の入力画像に対し、複数種類のホワイトバランス処理を行う処理手段と、前記入力画像と前記処理手段によるホワイトバランス処理後の信号とを参照して色の補間処理を行って、前記入力画像と色比が同等となる色信号ごとの画像を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された画像をリサイズするリサイズ手段と、を有し、前記生成手段は、前記ホワイトバランス処理後の信号を参照して、前記色の補間処理における補間特性を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像時のサンプリングに伴う画質劣化の低減しつつ、縮小等のリサイズ後に画質調整が可能な未現像の画像を生成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2】画像リサイズ部の構成例を示すブロック図である。
図3】画像リサイズ部の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】ベイヤー配列の撮像素子の画素配置を示す模式図である。
図5】相関判定処理で参照する着目画素近傍の画素を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る画像処理装置の概略構成例を示すブロック図である。本実施形態では、画像処理装置の適用例として撮像装置(デジタルカメラ)を例に挙げて説明するが、本実施形態に係る画像処理はパーソナルコンピュータ(PC)用アプリケーションプログラム(PCアプリ)により実現されてもよい。
【0010】
図1に示したデジタルカメラは、光学系101、撮像素子102、撮像制御部103、A/D変換部104、画像リサイズ部105、現像部106、記録部107、表示部108、指示部109、システム制御部110を有して構成されている。光学系101には、フォーカスレンズや絞り、シャッターが含まれる。撮像素子102は、光学系101によって結像された被写体の光量を光電変換により電気信号に変換するCMOSやCCD等の素子である。本実施形態の撮像素子102は、R(赤),G1(緑),G2(緑),B(青)のような複数色のカラーフィルタが所定の規則でモザイク状に配列されたいわゆる原色ベイヤー配列の撮像素子であるとする。なお、撮像素子102は、ベイヤー配列以外のモザイクパターンの単板方式の撮像素子でもよい。撮像制御部103は、光学系101のフォーカスや絞り、シャッター、撮像素子102の撮像動作や撮影感度等の制御を行う。A/D変換部104は、撮像素子102から出力された電気信号をデジタル信号に変換した画像データを生成する。A/D変換部104から出力される画像データは未現像の画像データであり、以下、この未現像の画像データをRAW画像と表記する。
【0011】
画像リサイズ部105は、RAW画像に対して、リサイズ処理及び記録のための画像変換処理を行う。詳細については後述するが、画像リサイズ部105は、RAW画像を縮小するようなリサイズ処理を行って低解像度のRAW画像(以下、縮小RAW画像と表記する)を生成する。
【0012】
現像部106は、画像リサイズ部105から出力された縮小RAW画像に対して階調変換処理、輝度・色差生成処理、シャープネス処理等のいわゆる現像処理を行う。記録部107は、A/D変換部104から出力されたRAW画像と、画像リサイズ部105から出力された縮小RAW画像と、現像部106から出力された現像画像とを記録する。ここで、撮像素子102による撮像で取得されたRAW画像、このRAW画像からリサイズ処理で生成された縮小RAW画像、この縮小RAW画像を現像した現像画像は、同一のファイルに対応付けられて記録部107に記録される。したがって、記録されたファイルに含まれるRAW画像に対し、不図示のPCアプリ等によって後からユーザが任意に画質パラメータを調整して現像する場合、縮小RAW画像に対して高速な現像処理を実施してその結果を即座に確認することが可能になる。
【0013】
表示部108は、例えばカメラ背面に設けられた液晶ディスプレイ等であり、現像部106から出力された画像信号に基づく画像やグラフィックユーザインタフェース画像等を表示する。指示部109は、カメラ本体に設定された操作ダイヤルや、カメラ背面のタッチパネル方式の液晶ディスプレイ等である。ユーザは、指示部109を操作することで、例えばホワイトバランス調整や現像パラメータ調整の設定値などを入力可能となる。システム制御部110は、カメラの全体の動作等を制御する。
【0014】
図2は、画像リサイズ部105の構成例を示したブロック図である。以下、図2を参照して画像リサイズ部105の構成について説明する。
画像リサイズ部105の入力画像200は、A/D変換部104から出力されたRAW画像である。つまり、入力画像200は、ホワイトバランス処理(以下、WB処理と表記する)が未適用のいわゆるベイヤー画像である。この入力画像200は、色分離部201とWB処理部202とにそれぞれ入力する。
【0015】
色分離部201は、ホワイトバランス処理前の入力画像200、すなわちWB処理が未適用のベイヤー画像を、R,G,Bの色ごとに分離する。さらに色分離部201は、それら分離したR,G,Bの色信号(以下、R信号、G信号、B信号と表記する)を、画素位置に対応させて配置した画像(以下、Rプレーン、Gプレーン、Bプレーンと表記する。)を生成する。RプレーンはWB処理が未適用のベイヤー画像のR信号を画素位置に対応させて配置した画像であり、同様に、GプレーンはWB処理未適用のベイヤー画像のG信号を配置した画像、BプレーンはWB処理未適用のベイヤー画像のB信号を配置した画像である。これら色分離後のRプレーン、Gプレーン、Bプレーンについては後述する図4において詳述するが、ベイヤー画像に対し、着目色以外の画素の色信号が0に置き換えられたものとなされる。色分離部後のGプレーンの信号はG用フィルタ部206に送られ、Rプレーンの信号はR用フィルタ部207に送られ、Bプレーンの信号はB用フィルタ部208に送られる。
【0016】
WB処理部202は、入力画像200に対し、後述する第1のWB処理、第2のWB処理、第3のWB処理の3種類のWB処理を行い、それら種類ごとのホワイトバランス処理後の画像の信号203,204,205を生成する。これら第1のWB処理、第2のWB処理、第3のWB処理による処理後の信号203,204,205は、後述するように、G用フィルタ部206、R用フィルタ部207、B用フィルタ部208で行われる処理の際に参照される。WB処理部202による第1のWB処理後の信号203はG用フィルタ部206に送られ、第2のWB処理後の信号204はR用フィルタ部207に、第3のWB処理後の信号205はB用フィルタ部208に送られる。
【0017】
G用フィルタ部206、R用フィルタ部207、B用フィルタ部208は、それぞれG用、R用、B用の同時化補間処理、帯域制限を含むフィルタ処理を行うフィルタリング処理部である。G用フィルタ部206~B用フィルタ部208の同時化補間処理では、色分離後のRプレーン、Gプレーン、Bプレーンに対し、入力画像200であるベイヤー画像の各画素位置に対応するようにそれぞれ色信号を補間して配置するような処理が行われる。詳細は後述するが、本実施形態では、色分離後の各プレーンの信号とWB処理後の信号203~205とを参照し、ベイヤー配列のサンプリング構造を考慮した適応的なフィルタリング処理を行うことで入力画像200と色比が同等となる色信号の画像を生成する。つまり、G用フィルタ部206、R用フィルタ部207、B用フィルタ部208では、WB処理未適用の入力画像200のRGBと色比が同等となる補間後のGプレーン、Rプレーン、Bプレーンの画像が生成される。以下の説明では、WB処理未適用の入力画像200のRGBと色比が同等となる補間後のGプレーンを適応Gプレーン、補間後のRプレーンを適応Rプレーン、補間後のBプレーンを適応Bプレーンと表記する。そして、G用フィルタ部206から出力された適応Gプレーンの信号はリサイズ部210へ、R用フィルタ部207からの適応Rプレーンの信号はリサイズ部211へ、B用フィルタ部208からの適応Bプレーンの信号はリサイズ部212へ送られる。
【0018】
リサイズ部210,211,212は、それぞれ入力された適応Gプレーン、適応Rプレーン、適応Bプレーンを、それぞれ所定の比率でリサイズするようなリサイズ処理、つまり本実施形態では所定の縮小率で縮小するような縮小処理を行う。詳細は後述するが、リサイズ部210は、適応Gプレーンに対してリサイズ処理を行って、WB処理未適用のGプレーンのリサイズ画像(以下、縮小Gプレーンと表記する)を生成する。同様にリサイズ部211は、適応Rプレーンに対してリサイズ処理を行ってWB処理未適用のRプレーンのリサイズ画像(以下、縮小Rプレーンと表記する)を生成する。またリサイズ部212は、適応Bプレーンに対してリサイズ処理を行ってWB処理未適用のBプレーンのリサイズ画像(以下、縮小Bプレーンと表記する)を生成する。そして、リサイズ部210,211,212によって生成された縮小Gプレーン、縮小Rプレーン、縮小Bプレーンは、出力部213に送られる。
出力部213は、それら縮小Gプレーン、縮小Rプレーン、縮小Bプレーンを、後述するように統合することによって、縮小RAW画像214を生成して出力する。
【0019】
以下、色分離部201による色分離後のWB処理未適用のR,G,Bプレーンの信号と、WB処理部202によるWB処理後の信号203~205とを基に、WB処理未適用の画像(入力画像200)と色比が同等となるプレーンを生成する処理について説明する。前述したように、G用フィルタ部206~B用フィルタ部208は、WB処理後の信号203~205とWB処理未適用のR,G,Bプレーンの信号とを参照して、ベイヤー配列のサンプリング構造を考慮した適応的なフィルタリング処理を行う。
【0020】
適応的なフィルタ処理とは、着目画素に対し、水平方向の画素相関が高い場合には着目画素の左右方向に隣接する同色画素を参照して補間を行い、垂直方向の画素相関が高い場合には着目画素の上下方向に隣接する同色画素を参照して補間を行う処理である。このような処理により、折り返し歪や補間による解像感低下を抑えた高品位なR,G,Bプレーンを得ることができ、それにより後段のリサイズ処理によるリサイズ後(縮小後)の画像の画質も好適にすることができる。
【0021】
ただし、ベイヤー配列の画像では、R,G,Bの各カラーフィルタの画素がモザイク状に規則的に隣接するため、着目画素近傍の画素相関を判定する場合には、まず着目画素と異なる色信号との差分をとる必要がある。このとき、異なる色信号間で差分をとる前に、ホワイトバランス調整(WB調整)により、カラーフィルタの分光特性に起因した信号レベルの差異を被写体の色信号から分離する必要がある。その一方で、画像リサイズ部105では、ユーザが後に所望の色調整を行うことができるように、WB処理未適用のRGB信号を使って、デモザイク処理(同時化補間処理)および縮小処理を行う必要がある。
【0022】
したがって、本実施形態では、フィルタリング対象の色信号ごとに、WB調整の対象となる色信号を変え、フィルタリング処理の参照信号にはWB処理を適用し、フィルタリング処理結果にはWB処理未適用となる処理を実行するようにしている。すなわち本実施形態では、WB処理後の信号とWB処理未適用のプレーンの信号とを基に、ベイヤー配列のサンプリング構造を考慮した適応的なフィルタリング処理を行うことで、WB処理未適用の画像と色比が同等となるプレーンを生成するようにしている。以下、さらに詳細な説明を行う。
【0023】
WB処理部202で行われるWB処理の詳細から説明する。
先ずWB処理部202は、入力画像200の中から、ホワイトバランスゲイン(以下、WBゲインと表記する)を算出するために参照する白領域を抽出する。さらにWB処理部202は、その白領域に含まれるR,G,Bの各色の画素値をそれぞれ色ごとに積算した値Rw,Gw,Bwを算出する。白領域の抽出処理は、例えば入力画像200の輝度信号を参照し、その輝度信号が所定のレベル以上の画素を選択するような処理とする。そして、WB処理部202は、その白領域の積算値Rw,Gw,Bwに基づき、第1のWB処理、第2のWB処理、第3のWB処理の3種類(3パターン)のWB処理を行う。
【0024】
WB処理部202で行われる第1のWB処理は、入力画像200のG信号を基準とし、その基準以外のR信号とB信号の信号レベルを調整するようなゲイン調整処理である。この第1のWB処理の結果は後段のG用フィルタ部206で利用される。
【0025】
ここでWB処理部202への入力画像200のR,G,B信号を信号Rin,Gin,Bin、第1のWB処理で用いられるR,G,B用のWBゲインをゲインWGr1,WGg1,WGb1、第1のWB処理後のR,G,B信号を信号R1,G1,B1とする。本実施形態の場合、第1のWB処理後の信号R1,G1,B1は、式(1)により表される。なお式(1)中のWGr1とWGb1は、白領域におけるR,G,Bの積算値Rw,Gw,Bwを用いて式(2)で算出されるWBゲインである。第1のWB処理の場合、G信号については基準の色信号であるため、WBゲインは掛けられず、入力されたG信号がそのまま信号Ginとして出力される。つまり第1のWB処理の場合のWBゲインは、式(2)で算出されるR用のWBゲインWGr1とB用のWBゲインWGb1のみが用いられる。そのため、第1のWB処理の前後でG信号の信号レベルが変化しないため、第1のWB処理によってG信号がクリップしてしまうことはない。
【0026】
R1=Rin*WGr1
G1=Gin
B1=Bin*WGb1 式(1)
【0027】
WGr1=Gw/Rw
WGb1=Gw/Bw 式(2)
【0028】
WB処理部202で行われる第2のWB処理は、入力画像200のR信号を基準とし、その基準以外のG信号とB信号の信号レベルを調整するようなゲイン調整処理である。この第1のWB処理の結果は後段のR用フィルタ部207で利用される。
【0029】
ここで前述同様に、入力画像200のR,G,B信号をそれぞれ信号Rin,Gin,Binとし、第2のWB処理におけるWBゲインをゲインWGr2,WGg2,WGb2とし、第2のWB処理後のR,G,B信号を信号R2,G2,B2とする。本実施形態の場合、第2のWB処理後の信号R2,G2,B2は式(3)により表され、また式(3)中のWGg2とWGb2は白領域におけるR,G,Bの積算値Rw,Gw,Bwを用いて式(4)で算出されるWBゲインである。第2のWB処理の場合、R信号については基準の色信号であるため、WBゲインは掛けられず、入力されたR信号がそのまま信号Rinとして出力される。つまり第2のWB処理の場合のWBゲインは、式(4)で算出されるG用のWBゲインWGg2とB用のWBゲインWGb2のみが用いられる。そのため、第2のWB処理の前後でR信号の信号レベルが変化しないため、第2のWB処理によってR信号がクリップしてしまうことはない。
【0030】
R2=Rin
G2=Gin*WGg2
B2=Bin*WGb2 式(3)
【0031】
WGg2=Rw/Gw
WGb2=Rw/Bw 式(4)
【0032】
WB処理部202で行われる第3のWB処理は、入力画像200のB信号を基準とし、その基準以外のR信号とG信号の信号レベルを調整するようなゲイン調整処理である。この第3のWB処理の結果は後段のB用フィルタ部208で利用される。
【0033】
前述同様に、入力画像200のR,G,B信号をそれぞれ信号Rin,Gin,Binとし、第3のWB処理におけるWBゲインをゲインWGr3,WGg3,WGb3とし、第3のWB処理後のR,G,B信号を信号R3,G3,B3とする。本実施形態の場合、第3のWB処理後の信号R3,G3,B3は式(5)により表され、また式(5)中のWGr3とWGg3は白領域におけるR,G,Bの積算値Rw,Gw,Bwを用いて式(6)で算出されるWBゲインである。第3のWB処理の場合、B信号については基準の色信号であるため、WBゲインは掛けられず、入力されたB信号がそのまま信号Binとして出力される。つまり第3のWB処理の場合のWBゲインは、式(6)で算出されるR用のWBゲインWGr3とG用のWBゲインWGg3のみが用いられる。そのため、第3のWB処理の前後でB信号の信号レベルが変化しないため、第3のWB処理によってB信号がクリップしてしまうことはない。
【0034】
R3=Rin*WGr3
G3=Gin*WGg3 式(5)
B3=Bin
【0035】
WGr3=Bw/Rw
WGg3=Bw/Gw 式(6)
【0036】
図3は、画像リサイズ部105で行われる処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3のフローチャートを参照しながら説明する。なおこのフローチャートの処理は、不揮発性メモリ等に記憶されたプログラムをCPU等が実行することで実現されてもよいし、ハードウェア構成のみ、あるいは一部の処理がハードウェア構成により行われ残りの処理がソフトウェア構成により実行されてもよい。以下の説明では、図3のフローチャートのステップS301~ステップS327を、それぞれS301~S327と略記する。
【0037】
先ずS301において、色分離部201は、入力画像200であるべイヤー画像をR,G,B各色のプレーンに分離する。ここで、図4(a)は、撮像素子102のカラーフィルタに対応してR,G,Bの画素が規則的に配されたベイヤー配列例を示した図である。図4(b)は色分離部201による色分離後のGプレーン、同様に図4(c)は色分離後のRプレーン、図4(d)は色分離後のBプレーンにおけるそれぞれの画素の配列を示した図である。これらRプレーン、Gプレーン、Bプレーンは、図4(a)に示したベイヤー画像に対して、着目色以外の画素の色信号が0に置き換えられたものとなされている。以下の説明では、色分離後のRプレーン,Gプレーン,Bプレーンの信号を、それぞれR0信号,G0信号,B0信号と表記する。
【0038】
S301の後、画像リサイズ部105の処理は、S302からS306までの処理と、S312からS316までの処理と、S322からS326までの処理とに分岐する。
先ず、S302からS306までの処理から説明する。S302からS306までは、WB処理未適用の縮小Gプレーンを生成する処理である。
【0039】
S302に進むと、WB処理部202は、前述したように入力画像200に対して第1のWB処理を適用し、その第1のWB処理の結果(第1のWB処理後の信号R1,G1,B1)をG用フィルタ部206に送る。S302の後、画像リサイズ部105の処理はS303に進む。
【0040】
S303に進むと、G用フィルタ部206は、図4(b)に示したような色分離後のGプレーンのG0信号について、着目画素ごとに、複数種類のフィルタリング処理を行う。具体的には、G用フィルタ部206は、着目画素を含むn×n画素(nは1以上の自然数)の領域のG0信号に対して、水平方向および垂直方向のエッジ成分を平滑化する2次元LPF(ローパスフィルタ)を適用して信号G0spfを生成する。また同時に、G用フィルタ部206は、着目画素を含む1×n画素の領域のG0信号に対して水平エッジ成分を平滑化する1次元LPFを適用して信号G0vlpfを生成する。また同時に、G用フィルタ部206は、着目画素を含むn×1画素の領域のG0信号に対して垂直方向のエッジ成分を平滑化する1次元LPFを適用して信号G0hlpfを生成する。S303の後、画像リサイズ部105の処理はS304に進む。
【0041】
S304に進むと、G用フィルタ部206は、前述した第1のWB処理後の信号R1,G1,B1を参照し、G補間用の制御信号としての相関判定信号Tgを生成する。例えば図5に示すように、P2の画素を着目画素とし、その着目画素P2に対して垂直方向に隣接配列する画素をP5,P6,P7,P8とし、水平方向に隣接配列する画素をP0,P1,P3,P4としたとする。この場合、G用フィルタ部206は、着目画素P2に対して、垂直方向に隣接配列する画素P5,P6,P7,P8と、水平方向に隣接配列する画素P0,P1,P3,P4と、を参照して、式(7)の演算により相関判定信号Tgを生成する。なお図5の例の場合、着目画素P2の色信号がR,G,Bのいずれかによって、画素P0,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8の画素位置は、それぞれ信号R1,G1,B1のいずれかの色信号となる。
【0042】
HVdiff=(|2*P2-P0-P4|+|P1-P3|-|2*P2-P5-P8|-|P6-P7|)*k
HVdiff>TH1のとき
Tg=1
HVdiff<TH2のとき
Tg=-1
TH1≧HVdiff≧TH2のとき
Tg=HVdiff 式(7)
【0043】
なお式(7)において、TH1,TH2は予め決められた閾値である。また、kは、着目画素近傍の輝度振幅に応じて決定される任意の調整係数であり、Tgが-1~1までの値をとるように設定される。この式(7)によれば、Tg=-1のときに水平方向の相関が最も高く、Tg=1のときに垂直方向の相関が最も高く、Tg=0のときは水平方向と垂直方向のいずれの相関も低いことを示す。S304の後、画像リサイズ部105の処理はS305に進む。
【0044】
S305に進むと、G用フィルタ部206は、式(8)の演算により、S304で生成した相関判定信号Tgを参照し、S303で生成したG0信号に対する複数種類のフィルタリング処理の結果を合成して、同時化補間後の適応GプレーンGplnを生成する。
【0045】
Tg≧0のとき
Gpln=G0spf*(1-Tg)+G0hlpf*Tg
Tg<0のとき
Gpln=G0spf*(1-|Tg|)+G0vlpf*|Tg| 式(8)
【0046】
式(8)では、相関判定信号Tgが0に近づくほど、2次元LPFの出力信号G0spfの適用量が大きくなる。また、相関判定信号Tgが-1に近づくほど、1次元LPFの出力信号G0hlpfの適用量が大きくなる。また、相関判定信号Tgが-1に近づくほど、1次元LPFの出力信号G0vlpfの適用量が大きくなる。
【0047】
ここで、第1のWB処理の場合、相関判定信号Tgを生成するために参照するR,G,B信号には、G信号を基準としてR信号とB信号の信号レベルを調整するようなWBゲインが掛けられている。したがって、カラーフィルタの分光感度の差をキャンセルし、適切に、隣接する色信号間の大小関係を比較して、着目画素近傍の相関を検出することができる。また、画素間の相関判定信号を使って、同時化補間における補間特性を適切に制御しながら、WBゲインが掛けられていないG信号のフィルタリング結果としての適応GプレーンGplnを生成することができる。S305の後、画像リサイズ部105の処理はS306に進む。
【0048】
S306に進むと、リサイズ部210は、前述のように作成された同時化補間後の適応GプレーンGplnを参照して、バイリニア補間などを行い、リサイズ処理を行う。以上により、WB処理未適用で、且つ適切にフィルタリングが行われた縮小Gプレーンが生成されることになる。
【0049】
次に、S312からS316までの処理について説明する。S312からS316までは、WB処理未適用の縮小Rプレーンを生成する処理である。
S312に進むと、WB処理部202は、入力画像200に対して第2のWB処理を適用し、その第2のWB処理の結果(第2のWB処理後の信号R2,G2,B2)をR用フィルタ部207に送る。S312の後、画像リサイズ部105の処理はS313に進む。
【0050】
S313に進むと、R用フィルタ部207は、図4(c)に示したような色分離後のRプレーンのR0信号について、着目画素ごとにフィルタリング処理を行う。具体的には、R用フィルタ部207は、着目画素を含むn×n画素の領域のR0信号に対して2次元LPFを適用することで信号R0spfを生成する。S313の後、画像リサイズ部105の処理はS314に進む。
【0051】
S314に進むと、R用フィルタ部207は、第2のWB処理後の信号R2,G2,B2を参照し、S313で生成したRプレーンの信号R0spfにおける折り返しを制御するための制御信号を生成する。制御信号には、着目画素近傍の画素相関を示す参照信号Trと、着目画素におけるR信号の振幅を調整するためのG信号が含まれる。
【0052】
ここで、R用フィルタ部207は、図5に示したように、着目画素P2に対し、垂直方向に隣接配列する画素P5,P6,P7,P8と、水平方向に隣接配列する画素P0,P1,P3,P4と、を参照し、式(9)の演算により参照信号Trを生成する。この場合も着目画素P2の色信号がR,G,Bのいずれかによって、画素P0~P8の各画素位置は、それぞれ信号R2,G2,B2のいずれかの色信号となる。また式(9)によれば、Tr=0のときに垂直方向の相関が高く、Tr=1のときに水平方向の相関が最も高いことを示す。
【0053】
Hdiff=|2*P2-P0-P4|+|P1-P3|
Vdiff=|2*P2-P5-P8|-|P6-P7|
Hdiff>Vdiffのとき
Tr=0
Hdiff≦Vdiffのとき
Tr=1 式(9)
【0054】
また、R用フィルタ部207は、R信号の振幅調整のためのG信号を、第2のWB処理後の信号G2から生成する。具体的には、R用フィルタ部207は、着目画素を含むn×n領域の信号G2に対して、垂直方向および水平方向のエッジ成分を平滑化する2次元LPFを適用して信号G2spfを生成する。また同時に、R用フィルタ部207は、着目画素を含む1×n領域の信号G2に対して水平エッジ成分を平滑化する1次元LPFを適用した結果の信号G2vlpfを生成する。またR用フィルタ部207は、着目画素を含むn×1領域の信号に対して垂直エッジ成分を平滑化する1次元LPFを適用した結果の信号G2hlpfを生成する。S314の後、画像リサイズ部105の処理はS315に進む。
【0055】
S315に進むと、R用フィルタ部207は、S313で生成したR信号のフィルタリング結果に対して、S314で生成した参照信号Trと振幅調整のためのG信号とを用いて、式(10)の演算を行い同時化補間後の適応RプレーンRplnを生成する。
【0056】
Tr=0のとき
Rpln=R0spf+G2spf-G2vlpf
Tr=1のとき
Rpln=R0spf+G2spf-G2hlpf 式(10)
【0057】
式(10)では、WBゲインが掛けられていないR信号の補間結果に対して、着目画素近傍の画素相関に応じて、振幅を調整するため、G信号が加算される。例えば参照信号Tr=0のときに加算される信号G2spfと信号G2vlpfとの差分信号は、G信号の水平エッジ成分から生成される高周波成分である。また参照信号Tr=1のときに加算される信号G2spfと信号G2hlpfとの差分信号は、G信号の垂直エッジ成分から生成される高周波成分である。これらの信号G2spf,G2vlpf,G2hlpfには、予め第2のWB処理が適用されているため、R信号にそのまま加算することが可能である。したがって、参照信号Trの値に応じて、隣接するG信号から生成された高周波成分を加算することで、補間による解像感の低下、折り返しを低減することが可能になる。S315の後、画像リサイズ部105の処理はS316に進む。
【0058】
S316に進むと、リサイズ部211は、前述のように作成された同時化補間後の適応RプレーンRplnを参照して、バイリニア補間などを行い、リサイズ処理を行う。以上により、WB処理未適用で、且つ適切にフィルタリングが行われた縮小Rプレーンが生成されることになる。
【0059】
次に、S322からS326までの処理について説明する。S322からS326までは、WB処理未適用の縮小Bプレーンを生成する処理である。
S322に進むと、WB処理部202は、入力画像200に対して第3のWB処理を適用し、その第3のWB処理の結果(第2のWB処理後の信号R3,G3,B3)をB用フィルタ部208に送る。S332の後、画像リサイズ部105の処理はS333に進む。
【0060】
S323に進むと、B用フィルタ部208は、図4(d)に示したような色分離後のBプレーンのB0信号について、着目画素ごとにフィルタリング処理を行う。具体的には、B用フィルタ部208は、着目画素を含むn×n画素の領域のB0信号に対して2次元LPFを適用することで信号B0spfを生成する。S323の後、画像リサイズ部105の処理はS324に進む。
【0061】
S324に進むと、B用フィルタ部208は、第3のWB処理後の信号R3,G3,B3を参照し、S323で生成したBプレーンの信号B0spfにおける折り返しを制御するための制御信号を生成する。制御信号には、着目画素近傍の画素相関を示す参照信号Tbと、着目画素におけるR信号の振幅を調整するためのG信号が含まれる。
【0062】
ここで、B用フィルタ部208は、図5に示したように、着目画素P2に対し、垂直方向に隣接配列する画素P5,P6,P7,P8と、水平方向に隣接配列する画素P0,P1,P3,P4と、を参照し、式(11)の演算により参照信号Tbを生成する。この場合も着目画素P2の色信号がR,G,Bのいずれかによって、画素P0~P8の各画素位置は、それぞれ信号R3,G3,B3のいずれかの色信号となる。また式(11)によれば、Tb=0のときに垂直方向の相関が高く、Tb=1のときに水平方向の相関が最も高いことを示す。
【0063】
Hdiff=|2*P2-P0-P4|+|P1-P3|
Vdiff=|2*P2-P5-P8|-|P6-P7|
Hdiff>Vdiffのとき
Tb=0
Hdiff≦Vdiffのとき
Tb=1 式(11)
【0064】
また、B用フィルタ部208は、B信号の振幅調整のためのG信号を、第3のWB処理後の信号G3から生成する。具体的には、B用フィルタ部208は、着目画素を含むn×n領域の信号G3に対して、垂直方向および水平方向のエッジ成分を平滑化する2次元LPFを適用して信号G3spfを生成する。また同時に、B用フィルタ部208は、着目画素を含む1×n領域の信号G3に対して水平エッジ成分を平滑化する1次元LPFを適用した結果の信号G3vlpfを生成する。またB用フィルタ部208は、着目画素を含むn×1領域の信号に対して垂直エッジ成分を平滑化する1次元LPFを適用した結果の信号G3hlpfを生成する。S324の後、画像リサイズ部105の処理はS325に進む。
【0065】
S325に進むと、B用フィルタ部208は、S323で生成したB信号のフィルタリング結果に対して、S324で生成した参照信号Tbと振幅調整のためのG信号とを用いて、式(12)の演算を行い同時化補間後の適応BプレーンBplnを生成する。
【0066】
Tb=0のとき
Bpln=B0spf+G3spf-G3vlpf
Tb=1のとき
Bpln=B0spf+G3spf-G3hlpf 式(12)
【0067】
式(12)では、WBゲインが掛けられていないB信号の補間結果に対して、着目画素近傍の画素相関に応じて、振幅を調整するため、G信号が加算される。例えば参照信号Tb=0のときに加算される信号G3spfと信号G3vlpfとの差分信号は、G信号の水平エッジ成分から生成される高周波成分である。また参照信号Tb=1のときに加算される信号G3spfと信号G3hlpfとの差分信号は、G信号の垂直エッジ成分から生成される高周波成分である。これらの信号G3spf,G3vlpf,G3hlpfには、予め第3のWB処理が適用されているため、B信号にそのまま加算することが可能である。したがって、参照信号Tbの値に応じて、隣接するG信号から生成された高周波成分を加算することで、補間による解像感の低下、折り返しを低減することが可能になる。S325の後、画像リサイズ部105の処理はS326に進む。
【0068】
S326に進むと、リサイズ部212は、前述のように作成された同時化補間後の適応BプレーンBplnを参照して、バイリニア補間などを行い、リサイズ処理を行う。以上により、WB処理未適用で、且つ適切にフィルタリングが行われた縮小Bプレーンが生成されることになる。
【0069】
前述したS303、S316、S326の後、画像リサイズ部105の処理はS327に進む。
S327に進むと、出力部213は、S306、S317、S347でそれぞれ生成された縮小Gプレーン、縮小Rプレーン、縮小Bプレーンについて、図4(a)のべイヤー配列となるように画素データの間引き処理を行う。そして、出力部213は、間引き処理後の縮小Gプレーン、縮小Rプレーン、縮小Bプレーンを統合して、縮小RAW画像214を生成して出力する。
すなわち、画像リサイズ部105は、この統合処理後の画像を、WB処理未適用の縮小RAW画像214として後段の構成へ出力する。
【0070】
以上説明した一連の処理により、本実施形態の画像処理装置では、A/D変換後のWB処理未適用の画像から、WB処理未適用の縮小RAW画像を生成することができる。つまり撮像素子のサンプリング構造を考慮した適応的なフィルタリング処理の制御のためには、WB処理適用後のRGB信号が参照され、最終的に、画素値として出力される信号に対しては、WB処理未適用のRGB信号が参照される。したがって、縮小に伴う補間処理での画質劣化を適応的なフィルタリング処理で抑えつつ、後にユーザが任意のWB調整を行うことのできる、WB処理未適用の縮小RAW画像を生成することができる。さらに、RGB信号のそれぞれに対して、それぞれの色信号を基準としたWB処理を適用し、処理対象の色信号がWB処理を適用することで信号値がクリップされてしまうことを防ぐことで、適用的なフィルタリング処理の精度を向上させることができる。すなわち本実施形態によれば、ベイヤー配列の未現像画像を参照してリサイズすることで、撮像時のサンプリング起因の解像感の低下や折り返しの発生を低減しつつ、リサイズ後(縮小後)にWB等の画質調整が可能な、未現像の縮小画像を生成することができる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本実施形態の画像処理装置の適用例であるデジタルカメラは、デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ、コンパクトデジタルカメラなどのいずれであってもよい。また本実施形態の画像処理装置は、デジタルカメラだけでなく、車載カメラ、監視カメラ、医療用カメラ、工業用カメラ、カメラ機能を備えたパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、携帯ゲーム機などにも適用可能である。
【0072】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける一つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
上述の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
102:撮像素子、103:撮像制御部、104:A/D変換部、105:画像リサイズ部、106:現像部、110:システム制御部、201:色分離部、202:WB処理部、206:G用フィルタ部、207:R用フィルタ部、208:B用フィルタ部、210,211,212:リサイズ部、213:出力部
図1
図2
図3
図4
図5