IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コーセーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】粒状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221128BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20221128BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/55
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/02
A61Q19/00
A61Q1/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018236280
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097540
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 志緒
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168583(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146948(WO,A1)
【文献】特開2014-181224(JP,A)
【文献】特表2003-503533(JP,A)
【文献】特開2003-104842(JP,A)
【文献】特開2008-115170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(e);
(a)ゼリー強度が20~2000g/cm である寒天 0.8~2質量%
(b)リン脂質 2~8質量%
(c)ジェランガム 0.01~0.1質量%
(d)数平均分子量が10000以下であるポリエチレングリコール 1~15質量%
(e)水
を含有する粒状組成物。
【請求項2】
溶媒中に浸漬されていないことを特徴とする請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項3】
平均粒径が1~20mmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項4】
球状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項5】
前記成分(a)と前記成分(d)の含有質量割合(a)/(d)が0.05~2であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項6】
前記成分(b)と前記成分(d)の含有質量割合(b)/(d)が0.1~3であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項7】
化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料又は皮膚外用剤として、様々な美容成分等を含有するゲル粒子等の粒状組成物に関する技術が開示されている。
例えば、特許文献1では、アルギン酸のアルカリ金属塩の水溶液を、無機酸または有機酸のカルシウム塩の水溶液と混合すると生成する含水アルギン酸カルシウムからなる小球状物質を配合してなる皮膚化粧料に関する技術が開示されている。
例えば、特許文献2では、次の(A)成分~(E)成分:(A)ゾル-ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるゲル化剤、(B)架橋型ポリアクリレート、(C)固体粒子、(D)ゲル状成分、及び(E)水、を含む、ハイドロゲル粒子に関する技術が開示されている。
例えば、特許文献3では、寒天及びゼラチンから選ばれる水溶性ポリマー、油性コンディショニング成分、及び乳化剤又は分散剤を含有するO/W型分散液を滴下法により気相又は液相中で冷却固化してなる平均粒径が0.1~5mmの粒子が、水溶性増粘剤を水に均一に溶解させてなり、25℃における粘度が300~5000mPa ・s であって、比重が0.7~2.0である透明ないし半透明水性基剤中に、分散浮遊してなる皮膚化粧料に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-139108号公報
【文献】特開2010-131479号公報
【文献】特許第3756043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における小球状物質、特許文献2におけるハイドロゲル粒子、特許文献3における粒子のいずれの技術も、それら粒状組成物を溶媒に浸かっている条件において形状等の安定性を保っており、溶媒に浸かっていない状態にしようとすると、運搬時の振動程度における、振動そのものに対して粒状組成物が形状を保てずに崩壊したり、粒状組成物同士の衝突等により、形状を保つことが出来ないというような、耐振動性に劣る場合があった。すなわち、耐振動性に優れる粒状組成物が、従来、知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以上のような従来技術における課題等を勘案して、耐振動性に優れる粒状組成物の開発を試みたところ、含有する高分子の種類によっては、粒状組成物の耐振動性には優れるものの、粒状組成物を皮膚等に適用する際に、適用時の崩壊強度が好ましくなく、粒状組成物が砕かれずに、適用できない場合や、粒状組成物が砕けたとしても、肌馴染みに劣る場合があるという課題が依然として存在した。
そこで、本発明者は、さらに鋭意検討した結果、寒天、リン脂質、ジェランガム、数平均分子量が10000以下であるポリエチレングリコール、水を含有する粒状組成物が、顕著に耐振動性に優れ、かつ、適用時の崩壊強度に優れ、肌馴染みが良好であることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
次の成分(a)~(e);
(a)寒天
(b)リン脂質
(c)ジェランガム
(d)数平均分子量が10000以下であるポリエチレングリコール
(e)水
を含有する粒状組成物を提供するものである。
【0007】
本発明は、溶媒中に浸漬されていないことを特徴とする前記粒状組成物を提供するものである。
【0008】
本発明は、平均粒径が1~20mmであることを特徴とする前記粒状組成物を提供するものである。
【0009】
本発明は、球状であることを特徴とする前記粒状組成物を提供するものである。
【0010】
本発明は、前記成分(a)と前記成分(d)の含有質量割合(a)/(d)が0.05~2であることを特徴とする前記粒状組成物を提供するものである。
【0011】
本発明は、前記成分(b)と前記成分(d)の含有質量割合(b)/(d)が0.1~3であることを特徴とする前記粒状組成物を提供するものである。
【0012】
本発明は、化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする前記粒状組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐振動性に優れ、適用時の崩壊強度に優れ、肌馴染みに優れる粒状組成物の提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0015】
成分(a):寒天
本発明に用いられる成分(a)は寒天であり、その産地、起源等は問わず何れのものも使用可能である。また、この寒天は、ゼリー強度を調整するために、酸処理して分子を切断させた、いわゆる低強度寒天(例えば、特開平5-317008号公報に開示)を用いても良い。また、この寒天のゼリー強度は特に限定されないが、20~2000g/cmが好ましく、さらに30~1000g/cmが好ましい。ここでゼリー強度とは1.5質量%(以下、「質量%」を単に「%」と記す。)となるように寒天を水に加熱溶解し、20℃で15時間放置、凝固せしめたゲルについて、その表面を1cm当たり20秒間耐え得る最大質量のことを言う。この範囲のゼリー強度の寒天を用いると、硬い固形状になり難いので、化粧膜の均一性が特に良好な化粧料を得ることができる。このような寒天は、市販品としてAX-100、UP-37(以上、伊那食品工業社製)等を用いることができる。
【0016】
また、成分(a)の含有量は、特に限定されないが、適用時の崩壊強度、肌馴染みが良好である点から、0.8~2%が好ましく、1~1.5%がより好ましい。
【0017】
成分(b):リン脂質
本発明に用いられる成分(b)はリン脂質であり、通常化粧料や皮膚外用剤で使用されるリン脂質であれば特に限定されない。なお、以下の例示物を1種又は2種以上用いることが可能である。
【0018】
成分(b)は、動植物から抽出・精製した天然物であってもよいし、化学合成したものであってもよく、水素添加、水酸化処理、酵素処理等の加工処理を行なっても良い。
天然物としては、例えば、大豆由来リン脂質及び卵黄由来リン脂質等が挙げられ、加工処理したものとして、例えば、水素添加リン脂質、リゾリン脂質等が挙げられる。より具体的には、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質等が挙げられる。
このうち、水素添加リン脂質が好ましく、さら大豆由来水素添加リン脂質が好ましい。水素添加リン脂質(好適には大豆由来)が、後述する成分(a)及び成分(c)と組み合わせたときに、適用時の崩壊強度、肌馴染みが良好である点で、好ましい。
【0019】
成分(b)の市販品としては、レシノール S―PIE、ニッコール レシノール S-10、ニッコール レシノール S-10E(以上、日光ケミカルズ社製)、ベイシス LS-60HR(日清オイリオグループ社製)、HSL-70(ワイエムシィ社製)、レシチンCLO(J-オイルミルズ社製)、卵黄レシチンPL-100P(キューピー社製)等が挙げられる。
【0020】
また、成分(b)の含有量は、特に限定されないが、耐振動性に優れ、かつ適用時の崩壊強度、肌馴染みに優れる点から、2~8%が好ましく、4~7%がより好ましい。
【0021】
成分(c):ジェランガム
本発明に用いられる成分(c)は、ジェランガムである。ジェランガムは、Sphingomonas elodeaという微生物が菌体外に産生する多糖類としても知られる高分子である。特に、水で膨潤させることで弾力のあるゲルを形成する水性ゲル化剤であることが好ましい。
【0022】
成分(c)には、ネイティブ型及び、1-3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基を除去した脱アシル型が知られているが、いずれをも用いることができる。成分(c)は、カルシウムイオンやナトリウムイオン等の金属カチオンの添加でさらに増粘する性質を持ち、高い耐塩性を有し、高濃度の電解質の存在下でも粘度を維持することができる点で好ましい。市販品としては、KELCOGEL CC(三晶社製)、ゲルコゲル(大日本住友製薬社製)、ケルコゲルF(大日本住友製薬社製)、ケルコゲルHM(大日本住友製薬社製)、ケルコゲルHT(大日本住友製薬社製)、ケルコゲルLT100(大日本住友製薬社製)等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
また、成分(c)の含有量は、特に限定されないが、適用時の崩壊強度に優れる点から、0.01~0.1%が好ましく、0.03~0.08%がより好ましい。
【0024】
成分(d):数平均分子量が10000以下であるポリエチレングリコール
本発明に用いられる成分(d)は、数平均分子量が10000以下であるポリエチレングリコールである。数平均分子量は、ポリスチレンを標準としたGPC法で測定することが可能である。成分(d)の数平均分子量は、耐振動性に優れる観点から、300~10000が好ましく、300~5000がより好ましい。さらに、耐振動性に優れる点で、数平均分子量300と数平均分子量1540のポリエチレングリコールを合わせて含有することが特に好ましい。
【0025】
また、成分(d)の含有量は、特に限定されないが、適用時の崩壊強度、肌馴染みに優れる点から、1~15%が好ましく、3~10%がより好ましく、4~6%がさらにより好ましい。
【0026】
成分(e):水
本発明に用いられる成分(e)は水である。成分(e)として、通常、化粧料や皮膚外用剤に用いるものを使用することができ、特に限定されない。成分(e)水として、水道水を用いても良く、蒸留等で精製した精製水、温泉水、深層水等を用いても良い。また、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ水等の植物抽出液を用いても良い。
【0027】
本発明における粒状組成物は、成分(a)~(e)を組合せとして含有することにより、耐振動性、適用時の崩壊強度、肌馴染みが良好となる。成分(a)と成分(c)によって、粒状を形成するに必要な強度を保てたとしても、成分(b)、成分(d)を含有しないと、耐振動性、適用時の崩壊強度、肌馴染みに劣る場合がある。成分(a)~(e)を組合せとして含有した際に、耐振動性、適用時の崩壊強度、肌馴染みが良好となるメカニズムは明らかではない部分はあるが、成分(a)と成分(c)が、組成物の系中に存在しつつ、それら高分子に対して、成分(b)がつなぎとして働きながら、成分(d)も合わせて組成物の系中に存在することで、耐振動性が良好でありながら、適用時の崩壊強度にも優れると考えられる。さらに、成分(b)が肌等の適用部位との親和性が良好となり得て、成分(a)~(e)を含有する粒状組成物が、肌馴染みに優れたと考えられる。
【0028】
本発明における成分(a)と成分(d)の含有質量割合(a)/(d)は、特に限定されないが、適用時の崩壊強度に優れる点で、0.05~2が好ましく、0.1~0.4がより好ましく、0.2~0.3がさらにより好ましい。
【0029】
本発明における成分(b)と成分(d)の含有質量割合(b)/(d)は、特に限定されないが、耐振動性に優れる点で、0.1~3が好ましく、0.5~1がより好ましい。
【0030】
本発明の粒状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記成分の他に、通常化粧料や皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、成分(a)~(e)以外の、界面活性剤、低級アルコール、油剤、保湿剤、増粘剤、金属封鎖剤、清涼剤、酸化防止剤、防腐・殺菌剤、pH調整剤、着色剤、各種香料などを目的に応じて適宜含有することができる。
【0031】
本発明の粒状組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、水と寒天、ジェランガムを約90℃に加熱溶解し、約70℃でリン脂質を添加し、冷却固化、脱泡することにより本発明の粒状組成物の元となる寒天ゲルを製造することが好ましい。その寒天ゲルを再度約70℃に加熱し、約25℃のシリコーン油や炭化水素油等の油性成分中に滴下することで、粒状組成物を得ると、球状に近づき外観形状が美しくなるため好ましい。得られた粒状組成物は、精製水で洗浄し、表面の油分を取り除いて使用することができる。
【0032】
本発明の粒状組成物の形状は、特に限定されないが、球状であることが好ましい。本発明において、球状とは、真球、略球状、回転楕円体を含み、表面に凹凸がある球状粉体等であっても良い。球状粉体の短径/長径の比、すなわち楕円率は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、1.1以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の粒状組成物の平均粒径は、特に限定されないが、適用時の崩壊強度、耐振動性の点で、1~20mmが好ましく、5~20mmがより好ましく、8~20mmがさらにより好ましく、8~13mmがさらに特に好ましい。また、本発明の粒状組成物の平均粒径は、粒状組成物を100粒調製した後で、任意の20粒を選択し、それらの粒径を、ノギス等を用いて測定し、平均値を算出することで、求めることが可能である。また、粒状組成物の短径と長径に差がある場合は、短径と長径の平均値を、粒状組成物の粒径とする。
【0034】
本発明の粒状組成物は、溶媒中に浸漬されていても、溶媒中に浸漬されていなくても、特に限定されないが、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みの点で、溶媒中に浸漬されていないことが好ましい。ここで、本発明における、溶媒とは、化粧料や皮膚外用剤等において使用されるものであれば、特に限定されないが、液状組成物等が挙げられる。さらに、液状組成物の具体例としては、水、エタノール、液状油剤、乳化組成物等が挙げられる。また、本発明における液状とは、常温(25℃)常圧下で流動性を有するものとする。
粒状組成物が、溶媒中に浸漬されていない状態としては、特に限定されないが、本発明の粒状組成物を気密容器、密閉容器、密封容器等に、溶媒を特に入れずに充填することができる。また、容器内に充填される気体として、特に限定されないが、空気、窒素、二酸化炭素等を用いることができる。
【0035】
本発明の粒状組成物は、特に限定されずに、容器に充填することができる。その際の、充填状態としては、特に限定されず、容器内に粒状組成物が、最密充填状態であろうとも、余剰の空間が多く、粒状組成物同士が接触していない状態であろうとも良い。耐振動性の点で、充填密度は、0.5~0.8が好ましく、0.55~0.75がより好ましい。
【0036】
また、特に、適用時の崩壊強度や耐振動性といった課題は、溶媒中に浸漬されていない粒状組成物において、問題となり得る。すなわち、溶媒中に浸漬された状態と、溶媒中に浸漬されていない状態は、科学的、技術的に異なる状況といえる。よって、溶媒中に浸漬された粒状組成物において、適用時の崩壊強度や耐振動性が、例え優れていたとしても、溶媒中に浸漬されていない状態の粒状組成物において、適用時の崩壊強度や耐振動性が優れるかどうかを想像することは困難であると考えられる。
【0037】
本発明の粒状組成物は、特に限定されないが、溶媒中に浸漬された状態で、化粧料や、皮膚外用剤等として使用することができ、溶媒中に浸漬されていない状態で、化粧料や、皮膚外用剤等として使用することもできる。化粧料としては、例えば、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等や、乳液、化粧水、パック化粧料、洗顔料、マッサージ用化粧料、ヘア用化粧料、日焼け止め料、ボディクリーム等のボディ用化粧料、アイクリーム等の目周り用化粧料、リップエッセンス、リップクリーム等の口唇ケア用化粧料、ファンデーション、下地、コンシーラー、白粉、アイシャドウ、頬紅、口紅、マスカラ、アイブロウ等のメーキャップ製剤等が挙げられる。皮膚外用剤としては、例えば、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤等を挙げることができる。この中でも、本発明の粒状組成物は、適用時の崩壊強度の点から、溶媒中に浸漬されていない状態で、マッサージ用化粧料として使用することが好ましい。
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0039】
実施例1~10、及び、比較例1~6:粒状組成物(球状マッサージ用化粧料)
実施例1~10、及び、比較例1~6に示す処方の粒状組成物(球状マッサージ用化粧料)を調製し、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みについて下記の評価方法により評価した。その結果も併せて表1~3に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
(製造方法)
表1~3に示す各処方により、成分1、3~7を約90℃に加熱溶解し、約70℃で成分2、8~15を添加し、冷却固化することにより、一旦ゲルを製造した。そのゲルを再度約70℃に加熱し、約25℃のシリコーン油(100cs)中にテルモシリンジ ss-50ESz(テルモ社製)を用いて滴下し、固化させた後、精製水で洗浄することで、粒状組成物(球状マッサージ用化粧料)を得た。また、実施例1~10、及び、比較例1~6は、いずれも、球状であり、平均粒径は10mmであった。
【0044】
(評価項目1:適用時の崩壊強度)
実施例1~10、及び、比較例1~6の各試料を製造後、室温で2時間保存した後、各試料100粒のうち、無作為に10粒を取り出し、試料1粒に対して、室温(25℃)にて、テクスチャーアナライザーTA.XTplus(StableMicroSystems社製)を用いて、以下の条件(プローブ:直径10mm円柱状のポリアセタール樹脂(Delrin(登録商標)デュポン社製)、速度:0.1mm/秒、圧縮:3mm時)における最大荷重値(g)を測定した。その後、10粒の平均値を求め、下記判定基準1にて判定した。
【0045】
<判定基準1>
(最大荷重値の平均値):(判定)
30gを超える:×(硬過ぎて使用性が悪い)
20gを超え、30g以下:〇(少し硬いが、使用性に問題はなし)
10gを超え、20g以下:◎(好適な硬さであり、使用性に問題は無く、崩れ感が良好と感じる)
10g以下:×(柔らか過ぎて使用性が悪い)
【0046】
(評価方法2:耐振動性)
実施例1~10、及び、比較例1~6の各試料を製造後、室温で2時間保存した後、室温(25℃)にて、各試料約20 粒(初期質量:10g程度)をガラス瓶(3号規格瓶(川口薬品化学社製))に入れ、それをマルチミキサーMIX-101(サイニクス社製)上にセットし、5時間、旋回つまみの目盛が上を向いた状態の振動条件において、振動させた。その後、振動により崩壊した試料を除き、精製水で洗浄した後、残存質量を測定し、初期質量で除し、100倍した値を耐振動性とし、下記判定基準2にて判定した。
【0047】
<判定基準2>
(耐振動性):(判定)
60%以下:×(不良)
60%を超え、80%以下:〇(良好)
80%を超える:◎(非常に良好)
【0048】
(評価方法3:肌馴染み)
実施例1~10、及び、比較例1~6の各試料を製造後、室温で2時間保存した後、化粧料評価専門パネル20名が各試料1粒を、人差し指と中指によって、頬上で転がすように、30秒間適用した後に感じた肌馴染みを下記5段階絶対評価により評価し、評点を付与した。その後、評点の平均値を算出し、下記判定基準3にて判定した。
【0049】
<5段階絶対評価>
(評点):(評価)
5点:粒状組成物の残片が存在せず、肌のふっくら感を強く感じる
4点:粒状組成物の残片が存在せず、肌のふっくら感をやや感じる
3点:粒状組成物の残片は存在しないが、肌のふっくら感は感じない
2点:直径1mm未満の粒状組成物の残片が存在し、肌馴染みは不良
1点:直径1mm以上の粒状組成物の残片存在し、肌馴染みは非常に不良
【0050】
<判定基準3>
(判定):(評点の平均点)
◎:4点を超える(非常に良好)
〇:3点を超え4点以下(良好)
△:2点を超え3点以下(やや不良)
×:2点以下(不良)
【0051】
<結果>
表1~3から明らかなように、実施例1~10の粒状組成物(球状マッサージ用化粧料)は、比較例1~6に比べ、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みに優れた。
一方、成分(a)を含有しない比較例1は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みに劣っていた。
成分(b)を含有しない比較例2は、適用時の崩壊強度、肌馴染みに劣っていた。
成分(c)を含有しない比較例3は、耐振動性、肌馴染みに劣っていた。
成分(d)を含有しない比較例4は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みに劣っていた。
成分(d)を含有せず、PEG-400を含有した比較例5は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みに劣っていた。
成分(d)を含有せず、ポリビニルアルコールを含有した比較例6は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みに劣っていた。
【0052】
実施例11:球状ハンドケア用化粧料
(成分) (%)
1.寒天 *10 2.0
2.リン脂質 *11 3.0
3.ジェランガム *3 0.05
4.カルボマー 0.06
5.ワセリン 5
6.グリセリン 10
7.BG 10
8.精製水 残量
9.フェノキシエタノール 0.05
10.PEG-150 8
11.PEG-60水添ヒマシ油 0.5
12.水酸化Na 0.018
*10:伊那寒天 UP-37CS(伊那食品工業社製)
*11:COMPOSITE-PC(日本精化社製)
【0053】
(製造方法)
成分1、3、4、6~9、12を約90℃に加熱溶解し、約70℃で成分2、5、10、11添加し、冷却固化、脱泡することにより、一旦ゲルを製造した。そのゲルを再度約65℃に加熱し、約25℃のシリコーン油(6cs)中にテルモシリンジ ss-50ESz(テルモ社製)を用いて滴下し、固化させた後、精製水で洗浄することで、粒状組成物(球状ハンドケア用化粧料)を得た。なお、得られた粒状組成物は、球状であり、平均粒径は15mmであった。
【0054】
実施例11:球状ハンドケア用化粧料は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みが良好であった。
【0055】
実施例12:球状美白用化粧料
(成分) (%)
1.寒天 *1 1.0
2.リン脂質 *2 2.0
3.ジェランガム *3 0.04
4.ヒアルロン酸ナトリウム 0.001
5.グリセリン 8
6.BG 5
7.精製水 残量
8.フェノキシエタノール 0.3
9.PEG-8 5
10.アスコルビルグルコシド 2
【0056】
(製造方法)
成分1、3、5~8を約90℃に加熱溶解し、約70℃で成分2、4、9、10を添加し、冷却固化、脱泡することにより、一旦ゲルを製造した。そのゲルを再度約70℃に加熱し、約25℃のシリコーン油(100cs)中にテルモシリンジ ss-50ESz(テルモ社製)を用いて滴下し、固化させた後、精製水で洗浄することで、粒状組成物(球状美白用化粧料)を得た。なお、得られた粒状組成物は、球状であり、平均粒径は8mmであった。
【0057】
実施例12:球状美白用化粧料は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みが良好であった。
【0058】
実施例13:球状おしろい化粧料
(成分) (%)
1.寒天 1.2
2.リン脂質 5
3.ジェランガム 0.05
4.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30)クロスポリマー)0.04
5.DPG 12
6.精製水 残量
7.酸化チタン 0.2
8.トリセテアレス-4-リン酸 0.01
9.フェノキシエタノール 0.2
10.PEG-8 6
11.水酸化Na 0.012
【0059】
(製造方法)
成分1、3~6、9を約90℃に加熱溶解し、約70℃で成分2、7、8、10、11を添加し、冷却固化、脱泡することにより、一旦ゲルを製造した。そのゲルを再度約70℃に加熱し、約25℃のシリコーン油(6cs)中にテルモシリンジ ss-50ESz(テルモ社製)を用いて滴下し、固化させた後、精製水で洗浄することで、粒状組成物(球状おしろい化粧料)を得た。なお、得られた粒状組成物は、球状であり、平均粒径は13mmであった。
【0060】
実施例13:球状おしろい化粧料は、適用時の崩壊強度、耐振動性、肌馴染みが良好であった。