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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】中間転写ベルト及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
G03G15/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018238951
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020101640
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】滝下 茂樹
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-109002(JP,A)
【文献】特開2016-139102(JP,A)
【文献】特開平09-160395(JP,A)
【文献】特開2016-102931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が転写され得る表面を有する中間転写ベルトであって、基層と、前記基層より前記表面側に設けられた弾性層と、前記弾性層より前記表面側に設けられた単一又は複数の外層と、を有する中間転写ベルトにおいて、
前記単一の外層、又は前記複数の外層のうち前記中間転写ベルトの幅方向のトナー像が転写され得る画像領域における硬度が最も大きい層である、所定外層の前記画像領域における平均の厚さが2μm以上であり、前記中間転写ベルトの幅方向の最端部における前記所定外層の平均の厚さをA、前記最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に5mmの位置における前記所定外層の平均の厚さをB、前記最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に10mmの位置における前記所定外層の平均の厚さをC、前記画像領域内の任意の位置における前記所定外層の平均の厚さをDとしたとき、下記式(1)~(4)、
A<B<C<D ・・・(1)
B≦D×0.5 ・・・(2)
C≦D×0.75 ・・・(3)
A≧0 ・・・(4)
の関係を満たすことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記中間転写ベルトの幅方向の前記画像領域より外側において、前記画像領域側から前記最端部側に向けて前記所定外層の平均の厚さが徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
トナー像が転写され得る表面を有する中間転写ベルトであって、基層と、前記基層より前記表面側に設けられた弾性層と、前記弾性層より前記表面側に設けられた単一又は複数の外層と、を有する中間転写ベルトにおいて、
前記単一の外層、又は前記複数の外層のうち前記中間転写ベルトの幅方向のトナー像が転写され得る画像領域における硬度が最も大きい層を、所定外層としたとき、前記中間転写ベルトの幅方向の最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に5mmの位置における前記所定外層の硬度は、前記画像領域内の任意の位置における前記所定外層の硬度よりも小さいことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項4】
前記中間転写ベルトの幅方向の前記画像領域より外側において、前記画像領域側から前記最端部側に向けて前記所定外層の硬度が徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項3に記載の中間転写ベルト
【請求項5】
前記中間転写ベルトの前記最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に5mmの位置における前記所定外層の硬度は、0.01GPa以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
前記外層は、前記表面を形成する表面層と、前記弾性層と前記表面層との間に設けられた中間層と、を含み、前記所定外層は前記中間層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
前記外層は、前記表面を形成する表面層を含み、前記所定外層は前記表面層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の中間転写ベルトを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置において用いられる中間転写ベルト、及びその画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置では、感光体などの像担持体に形成したトナー像を無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト上に1次転写した後に紙などの記録材に2次転写する中間転写方式が広く用いられている。
【0003】
このような画像形成装置では、更なる高画質化のために、少なくとも1層の弾性層を有する中間転写ベルト(以下「弾性中間転写ベルト」ともいう。)が用いられることがある(特許文献1)。弾性中間転写ベルトは、樹脂で構成された基層の上にゴムなどの弾性体で構成された弾性層が設けられて形成される。弾性中間転写ベルトは、少なくとも1層の弾性層を有するため、比較的柔らかく、転写部(1次転写部、2次転写部)においてトナーに作用する圧力を低減することができる。そのため、弾性中間転写ベルトは、トナー像の一部が転写されない中抜け現象の抑制などに効果があることが知られている。また、弾性中間転写ベルトは、2次転写部における記録材との密着性がよい。そのため、弾性中間転写ベルトは、一般的な紙に対するトナー像の転写効率の向上のみならず、厚紙に対するトナー像の転写性や、エンボス紙などの凹凸を有する記録材に対するトナー像の転写性の向上にも効果があることが知られている。
【0004】
このような弾性中間転写ベルトでは、弾性層の表面の高いタック性を低減することを目的として、最表面に低タック性の表面層や摩擦摩耗性に優れる表面層が設けられることがある。また、弾性中間転写ベルトでは、弾性層と表面層との密着性を向上するなどのために、弾性層と表面層との間に中間層が設けられる場合がある。
【0005】
上記表面層や中間層を構成する材料としては、弾性層に比べて十分に硬い材料、例えば硬度(後述する測定方法による押し込み硬度)が0.01GPa~0.5GPa程度の材料が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-292851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような表面層や中間層は、加熱硬化時に架橋が比較的強固に行われるため、硬化収縮して体積の減少が起こりやすい。そのため、表面層や中間層の硬度が弾性層の硬度に比べて高いほど、中間転写ベルトの幅方向の端部が中間転写ベルトの外周面側(弾性層側から表面層や中間層側に向かう方向)に反り返る現象(ここでは「端部反り」ともいう。)が起こりやすくなる。
【0008】
このように中間転写ベルトの幅方向の端部が外周面側に反り返った状態で画像形成装置の装置本体に対する中間転写ベルトの着脱を行うと、その端部と装置本体の一部とが干渉して引っかかり、その端部が破損するおそれがある。
【0009】
また、図6に示すように、画像形成装置には、中間転写ベルトの幅方向の端部に対応して、中間転写ベルトの幅方向の搬送位置を検知するための端部位置センサが設けられる場合がある。この場合、中間転写ベルトの幅方向の端部が外周面側に反り返っていると、その端部が端部位置センサに接触したり、摩耗したりして、端部位置センサの誤検知や検知精度の低下を招く可能性がある。また、図6に示すように、画像形成装置には、中間転写ベルトの幅方向の端部に対応する内周面側に、中間転写ベルトの周方向の位置を検知するためのホームポジションセンサが設けられることがある。この場合、中間転写ベルトの幅方向の端部が外周面側に反り返っていると、中間転写ベルトとホームポジションセンサとの間の距離が離れてしまうため、ホームポジションセンサの誤検知や検知精度の低下を招く可能性がある。
【0010】
中間転写ベルトの端部反りは、端部位置センサを用いて中間転写ベルトの搬送位置の制御(ステアリング)を行う構成の場合に特に問題となる。しかし、中間転写ベルトの端部の内周面側にリブを設け、このリブを規制部材に突き当てて中間転写ベルトの搬送位置を決める構成の場合も、例えばリブが設けられていない端部側で中間転写ベルトのホームポジション検知をする場合などには問題となり得る。前述の装置本体との干渉については、上記いずれの構成の場合にも問題となる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、弾性層と、弾性層より表面側に設けられた弾性層より硬い層と、を有する構成において、端部反りを抑制することのできる中間転写ベルト、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る中間転写ベルト及び画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像が転写され得る表面を有する中間転写ベルトであって、基層と、前記基層より前記表面側に設けられた弾性層と、前記弾性層より前記表面側に設けられた単一又は複数の外層と、を有する中間転写ベルトにおいて、前記単一の外層、又は前記複数の外層のうち前記中間転写ベルトの幅方向のトナー像が転写され得る画像領域における硬度が最も大きい層である、所定外層の前記画像領域における平均の厚さが2μm以上であり、前記中間転写ベルトの幅方向の最端部における前記所定外層の平均の厚さをA、前記最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に5mmの位置における前記所定外層の平均の厚さをB、前記最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に10mmの位置における前記所定外層の平均の厚さをC、前記画像領域内の任意の位置における前記所定外層の平均の厚さをDとしたとき、下記式(1)~(4)、
A<B<C<D ・・・(1)
B≦D×0.5 ・・・(2)
C≦D×0.75 ・・・(3)
A≧0 ・・・(4)
の関係を満たすことを特徴とする中間転写ベルトである。
【0013】
本発明の他の態様によると、トナー像が転写され得る表面を有する中間転写ベルトであって、基層と、前記基層より前記表面側に設けられた弾性層と、前記弾性層より前記表面側に設けられた単一又は複数の外層と、を有する中間転写ベルトにおいて、前記単一の外層、又は前記複数の外層のうち前記中間転写ベルトの幅方向のトナー像が転写され得る画像領域における硬度が最も大きい層を、所定外層としたとき、前記中間転写ベルトの幅方向の最端部から前記中間転写ベルトの幅方向の内側に5mmの位置における前記所定外層の硬度は、前記画像領域内の任意の位置における前記所定外層の硬度よりも小さいことを特徴とする中間転写ベルトが提供される。
【0014】
本発明の他の態様によると、上記各本発明の中間転写ベルトを有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弾性層と、弾性層より表面側に設けられた弾性層より硬い層と、を有する構成において、端部反りを抑制することのできる中間転写ベルト、及びこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】画像形成装置の一例の概略断面図である。
図2】中間転写ベルトの模式的な断面図である。
図3】中間転写ベルトの中間層、表層の塗布に用いられるスプレー塗布装置の模式図である。
図4】第1の実施形態における中間転写ベルトの端部の層構成を説明するための模式的な断面図である。
図5】端部反りを評価するための装置を説明するための模式図である。
図6】端部反りの課題を説明するための中間転写ベルトの近傍の模式的な断面図である。
図7】中間転写ベルトの中間層、表面層の焼成に用いられる輻射炉の概略部分断面斜視図である。
図8】(a)第2の実施形態の実験例1における端部炉体の温度と焼成時間と反り量との関係を示すグラフ図である。(b)第2の実施形態の実験例1における反り量と端部の中間層の硬度との関係を示すグラフ図である。
図9】(a)第2の実施形態の実験例2における端部炉体の温度と焼成時間と反り量との関係を示すグラフ図である。(b)第2の実施形態の実験例2における反り量と端部の中間層の硬度との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る中間転写ベルト及び画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
1.画像形成装置
まず、本発明に係る中間転写ベルトを用いることが可能な画像形成装置の例について説明する。図1は、本例の画像形成装置100の概略断面図である。本例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のレーザープリンタである。
【0019】
本例の画像形成装置100は、中間転写ベルト1の平坦部分の移動方向に沿って、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する4個の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する。各画像形成部PY、PM、PC、PKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本例では、画像形成部Pは、後述する感光ドラム101、帯電ローラ102、露光装置103、現像装置104、1次転写ローラ105などを有して構成される。
【0020】
像担持体としてのドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム101は、図中矢印で示す反時計回り方向に回転駆動される。感光ドラム101は、アルミニウム製のシリンダで形成された基体の上に、電荷発生層、電荷輸送層及び表面保護層が順に積層されて構成されている。回転する感光ドラム101の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ102によって所定の極性(本例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電工程時に、帯電ローラ102には、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電処理された感光ドラム101の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ)103によって、画像情報に応じて走査露光され、感光ドラム101上に各画像形成部Pに対応する色成分の静電像(静電潜像)が形成される。感光ドラム101上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置104によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム101上にトナー像(現像剤像)が形成される。現像装置104は、トナーを収容する現像容器、現像剤担持体としての現像ローラ、現像ローラ上のトナーの量を規制する現像剤量規制部材としての規制ブレードなどを有する。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の各現像装置104Y、104M、104C、104Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを収容している。現像ローラは、現像部において感光ドラム101に対し軽圧接されており、感光ドラム101と順方向に速度差を持って回転駆動される。現像ローラによって現像部に搬送されたトナーは、現像ローラに所定の現像電圧(現像バイアス)が印加されることで、感光ドラム101上に形成された静電像に付着する。本例では、一様に帯電処理された後に露光されることによって電位の絶対値が低下した感光ドラム101上の露光部に、感光ドラム101の帯電極性と同極性(本例では負極性)に帯電したトナーが付着する。
【0021】
4個の感光ドラム101Y、101M、101C、101Kと接触可能なように、中間転写体としての、無端状のベルトで構成された中間転写ベルト(弾性中間転写ベルト)1が配置されている。中間転写ベルト1は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ121、テンションローラ122及び二次転写対向ローラ123に掛け渡されて所定の張力で張架されている。中間転写ベルト1は、駆動ローラ121が回転駆動されることで駆動力が伝達されて、図中矢印で示す時計回り方向に回転(周回移動)する。中間転写ベルト1の内周面側には、各感光ドラム101に対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ105が配置されている。1次転写ローラ105は、中間転写ベルト1を介して感光ドラム101に向けて押圧され、感光ドラム101と中間転写ベルト1とが接触する1次転写部T1を形成する。上述のように感光ドラム101上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ105の作用によって、回転している中間転写ベルト1上に1次転写される。1次転写工程時に、1次転写ローラ105には、トナーの正規の帯電極性(現像時の帯電極性)とは逆極性の直流電圧である所定の1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム101Y、101M、101C、101K上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト1上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。
【0022】
中間転写ベルト1の外周面側において、2次転写対向ローラ123と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ108が配置されている。2次転写ローラ108は、中間転写ベルト1を介して2次転写対向ローラ123に向けて押圧され、中間転写ベルト1と2次転写ローラ108とが接触する2次転写部T2を形成する。上述のように中間転写ベルト1上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ108の作用によって、中間転写ベルト1と2次転写ローラ108とに挟持されて搬送される記録材S上に2次転写される。2次転写工程時に、2次転写ローラ108には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である所定の2次転写電圧(2次転写バイアス)が印加される。通常、十分な2次転写効率を確保するために、数kVの2次転写電圧が印加される。記録材(記録媒体、転写材、シート)Sは、カセット112に収容されており、カセット112からピックアップローラ113によって搬送路に供給される。搬送路に供給された記録材Sは、搬送ローラ対114及びレジストローラ対115によって、中間転写ベルト1上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部T2まで搬送される。記録材Sは、典型的には紙(用紙)であるが、耐水紙などの樹脂を用いて構成された合成紙、OHPシートなどのプラスチックシート、あるいは布などであってもよい。
【0023】
トナー像が転写された記録材Sは、定着手段としての定着装置109へと搬送される。定着装置109は、加熱手段を備えた定着ローラ191と、定着ローラ191に圧接する加圧ローラ192と、を有する。定着装置109は、定着ローラ191と加圧ローラ192とで、未定着のトナー像を担持した記録材Sを加熱及び加圧することによって、トナー像を記録材S上に定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Sは、搬送ローラ対116、排出ローラ対117などによって画像形成装置100の装置本体の外部に排出(出力)される。
【0024】
また、1次転写工程時に中間転写ベルト1に転写されずに感光ドラム101上に残留したトナーは、本例では現像装置104によって感光ドラム101上から除去されて回収される。また、2次転写工程時に記録材Sに転写されずに中間転写ベルト1上に残留したトナー(2次転写残トナー)や紙粉は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置111によって中間転写ベルト1上から除去されて回収される。
【0025】
なお、本実施例の画像形成装置100には、図6を参照して説明した端部位置センサ、ホームポジションセンサが設けられている。そして、本実施例の画像形成装置100は、端部位置センサを用いて中間転写ベルト1の搬送位置の制御(ステアリング)を行う構成とされている。ただし、画像形成装置100は、中間転写ベルト1の端部の内周面側にリブが設けられ、このリブを規制部材に突き当てて中間転写ベルト1の搬送位置を決める構成とされていてもよい。
【0026】
このような画像形成装置100における中間転写ベルト1として、本発明に係る中間転写ベルト1を用いることにより、中間転写ベルト1の端部反りが抑制される。そのため、中間転写ベルト1を含むユニットの画像形成装置100の装置本体に対する着脱時の中間転写ベルト1の幅方向の端部の装置本体との干渉を抑制することができ、中間転写ベルト1の幅方向の端部の破損を抑制することができる。また、図6を参照して説明したような、端部位置センサやホームポジションセンサの誤検知や検知精度の低下を抑制することができる。その結果、高品位な画像を長期にわたり形成することができる。
【0027】
2.中間転写ベルト
次に、本発明に係る中間転写ベルト(弾性中間転写ベルト)の一実施形態について説明する。図2に示すように、本実施形態の中間転写ベルト1は、基層11と、弾性層12と、中間層13と、表面層14と、の4層を有する積層体で構成される。なお、中間転写ベルト1は、基層11と、弾性層12と、弾性層12より中間転写ベルト1の表面側に設けられた、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域(中間転写ベルト1の表面のトナー像が転写され得る領域)における硬度が弾性層12より大きい単一又は複数の外層と、を有していればよく、例えば基層11と、弾性層12と、表面層14と、の3層の積層体で構成されていてもよい。
【0028】
<基層>
基層(基材)11について説明する。基層11は、ロール状又はベルト状のシームレスタイプの円筒型のものである。基層11を構成するのに適する材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂材料が挙げられる。
【0029】
なお、基層11を構成する樹脂には、金属粉末、導電性酸化物粉末、導電性カーボンなどの導電性粉体を添加して導電性を付与しておいてもよい。
【0030】
基層11を構成する樹脂としては、機械強度及び導電性の観点から、カーボンブラックを添加したポリエーテルエーテルケトンやポリイミドが特に好ましい。
【0031】
基層11の厚さ(膜厚)は、10μm以上500μm以下が好ましい。基層11の厚さが10μm未満であると、機械的強度が著しく低下する場合がある。また、基層11の厚さが500μmより大きいと、剛性が強くなりすぎるため中間転写体としての使用が困難になる場合がある。
【0032】
<弾性層>
弾性層12について説明する。弾性層12は、記録材Sの表面形状に追従するために、適度な弾性率(柔軟性)を有していることが必要である。弾性層12を構成する弾性体の材料としては、適度な弾性率を有していれば特に制限はないが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロスルホン化ゴム、アクリレートゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのうち、圧縮永久歪みが小さい点や耐オゾン性に優れる点から、シリコーンゴムが特に好ましい。
【0033】
弾性層12の厚さは、100μm以上1000μm以下が好ましく、150μm以上500μm以下がより好ましく、200μm以上500μm以下が更に好ましい。弾性層12の厚さが薄すぎると十分な柔軟性が得られない場合があり、弾性層12の厚さが厚すぎると中間転写体としての使用が困難になる場合がある。
【0034】
また、画像領域における弾性層12の硬度(後述する測定方法による押し込み硬度)は、0.001GPa以上0.015GPa以下(例えば0.005GPa)程度が好ましい。画像領域における弾性層12の硬度が低すぎるとブリードが発生しやすくなり、高すぎると凹凸を有する記録材Sへのトナーの転写性が低下することがある。
【0035】
弾性層12は、導電剤として電子導電剤やイオン導電剤を含んでいてもよい。電子導電剤としては、アセチレンブラックやケッチェンブラックのような導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどを例示できる。また、電子導電剤としては、銀、銅、ニッケルなどの金属粉、導電性亜鉛華、導電性炭酸カルシウム、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛、導電性酸化アンチモン、導電性マイカなど、又はそれらの複合体を例示できる。これらのうち、電気抵抗の制御のしやすさの観点から、導電性カーボンブラックが好ましい。イオン導電剤としては、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の他、ピリジン系、脂環族アミン系、及び脂肪族アミン系のイオン液体などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や耐久による分極を抑制する観点から、イオン液体が好ましい。特に、電気抵抗安定性の観点から、カリウム塩やアンモニウム塩が好ましい。弾性層12に対する配合処方は、機械強度の観点から、シリコーンゴム100質量部に対して35質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。これにより中間転写体に適した安定した導電性が弾性層12に付与される。
【0036】
また、弾性層12は、充填剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、軟化剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、防錆剤などの添加剤を含んでいてもよい。特に、充填剤としては、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、湿式シリカ、ヒュームド酸化チタン、セルロースナノファイバーなどの補強性充填剤が挙げられる。補強性充填剤は、シリコーンゴム中に分散されやすいなどの観点から、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジオルガノシロキサンオリゴマー、環状オルガノシロキサンなどの有機ケイ素化合物により表面改質されていてもよい。
【0037】
<中間層>
中間層13について説明する。中間層13は、表面層14の弾性率より大きな弾性率を有しており、弾性層12が変形した際に、中間層13が変形することで表面層14にクラックが発生することを抑制する。中間層13を構成する材料としては、表面層14の弾性率より大きな弾性率を有していれば特に制限はないが、フッ素樹脂、含フッ素ウレタン樹脂、フッ素ゴム、シロキサン変性ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などが挙げられ、その混合物も使用可能である。これらのうち、弾性層12の弾性機能を損なわない観点や、弾性層12に含有される低分子量の成分の表面層14の表面へのブリードを抑制するバリア性の観点から、ウレタン樹脂や変性ポリアミド樹脂などが好ましい。なお、弾性層12と表面層14と間に中間層13を設けなくても上記クラックやブリードの観点から問題ない場合は、中間層13は特に必要はない。
【0038】
中間層13の厚さは、1μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましい。中間層13の厚さが1μm未満であると、バリア性が弱くなり弾性層12の添加剤などによるブリードが発生する場合がある。この観点からは、中間層13の厚さは、2μmより大きいこと、典型的には3μm以上であることが更に好ましい。また、中間層13の厚さが20μmより大きいと、弾性層12の弾性機能を阻害してしまう場合がある。
【0039】
また、画像領域における中間層13の硬度(後述する測定方法による押し込み硬度)は、一般に、0.01GPa以上0.5GPa以下(例えば0.1GPa)程度である。
【0040】
中間層13は、必要に応じ、硬化剤、可塑剤、導電剤などの添加剤を含んでいてもよい。例えば、中間層13が導電剤を含んでいる場合、導電剤の量としては、付着性や機械強度の観点から中間層13の主成分(上記ウレタン樹脂や変性ポリアミド樹脂など)100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
【0041】
なお、必要に応じて、弾性層12上に中間層13を積層する前に、弾性層12の表面のUVやプラズマによる活性化処理(親水化処理)を行ってもよい。
【0042】
また、弾性層12と中間層13との間に、必要に応じてプライマー層(図示せず)を設けてもよい。プライマー層の厚さは、弾性層12の弾性機能を阻害しない観点から、0.1μm以上2μm以下が好ましい。
【0043】
<表面層>
表面層14について説明する。表面層14は、中間転写ベルト1の表面(トナー像を担持する面)を構成する。表面層14は、記録材Sに対するトナーの転写性の向上、中間転写ベルト1からのトナーの離型性の向上のために設けられる層であり、低付着性を有していることが必要である。表面層14を構成する材料としては、低付着性を有している材料であれば特に制限はなく用いることができる。このような材料としては、フッ素樹脂、含フッ素ウレタン樹脂、フッ素ゴム、シロキサン変性ポリイミドなどが挙げられる。これらのうち、弾性層12の弾性機能を損なわない観点から、含フッ素ウレタン樹脂が好ましい。また、これらの樹脂にPTFE粒子、PFPE粒子、PFA粒子、Si粒子、疎水化SiO粒子などの疎水性フィラーを添加しても構わない。
【0044】
また、近年では環境負荷への考慮などから、従来用いられていた有機溶剤を主な溶媒とした溶剤系塗料に代わり、水を主な溶媒とした水系塗料が用いられる場合が増えている。水系塗料とは、溶媒における水の重量割合が0.5以上である塗料を指す。水系塗料は、溶媒の主成分が水であるために環境負荷が小さい一方、塗料の表面張力が高いために溶剤系塗料と比較してレベリング性が低く、塗料を乾燥させた後の膜の表面が比較的粗くなり易い。
【0045】
表面層14の厚さは、1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上4μm以下がより好ましい。表面層14の厚さが1μm未満であると、摩耗により消失しやすくなる。また、表面層14の厚さが10μmより大きいと、弾性層12の弾性機能を阻害してしまう場合がある。
【0046】
また、画像領域における表面層14の硬度(後述する測定方法による押し込み硬度)は、一般に、0.01GPa以上1.0GPa以下(例えば0.2GPa)程度である。
【0047】
表面層14は、必要に応じ、上述と同様の導電剤を含んでいてもよい。導電剤の量としては、付着性や機械強度の観点から、表面層14の主成分(含フッ素ウレタン樹脂など)100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
【0048】
なお、中間層13が設けられない場合、弾性層12と表面層14との間に、必要に応じてプライマー層(図示せず)を設けてもよい。プライマー層の厚さは、弾性層12の弾性機能を阻害しない観点から、0.1μm以上2μm以下が好ましい。
【0049】
<中間転写ベルトの電気抵抗>
中間転写ベルト1の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上、1.0×1014Ω・cm以下であることが好ましく、1.0×10Ω・cm以上、1.0×1013Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0050】
また、表面層14側から測定した中間転写ベルト1の表面抵抗率は、1.0×10Ω/□以上、1.0×1014Ω/□以下であることが好ましく、1.0×10Ω/□以上、1.0×1013Ω/□以下であることがより好ましい。
【0051】
中間転写ベルト1の電気抵抗を上記のような半導電領域の範囲内に設定することによって、感光ドラム101からのトナー像の1次転写、及び中間転写ベルト1から記録材Sへのトナー像の2次転写を安定して行うことができる。
【0052】
なお、中間転写ベルト1の表面抵抗率の測定は、円形電極(商品名:ハイレスタUP、三菱化学アナリテック社製)を用いて行った。測定対象物である中間転写ベルト1を絶縁体からなる板の上に置き、1000Vの電圧を印加し、印加後10秒後の値を読み取る。単一のベルト面内で任意の18箇所を測定し、その平均値を測定対象の中間転写ベルト1の表面抵抗率とする。体積抵抗率の測定方法は、測定対象物を金属からなる板の上に置いて円筒電極との間に流れる電流を測定することを除いて上記表面抵抗率の測定方法と実質的に同一である。
【0053】
<中間転写ベルトの幅>
中間転写ベルト1の幅方向の画像領域(中間転写ベルト1の表面のトナー像が転写され得る領域)の幅は、一般に、オフィス機では320mm、プロダクション機では少なくともA3伸び相当の330mm程度が必要である。なお、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域は、中間転写ベルト1上の2次転写部において記録材Pと接触し得る領域(通紙領域)に対応する。本実施形態では、中間転写ベルト1の幅は、その他の部材との関係から360mmとした。また、本実施形態では、中間転写ベルト1の幅方向における画像領域の幅は330mmである。この画像領域は、中間転写ベルト1の幅方向の中心を基準として中間転写ベルト1の幅方向の中央に配置される。
【0054】
<中間転写ベルトの端部における外層の厚さ>
本実施形態では、中間転写ベルト1は、基層11と、弾性層12と、弾性層12より中間転写ベルト1の表面側に設けられた、画像領域における硬度が弾性層12より大きい単一又は複数の外層と、を有する。特に、本実施形態では、外層は、中間転写ベルト1の表面を形成する表面層14と、弾性層12と表面層14との間に設けられた中間層12と、を含む。ここで、複数の外層のうち画像領域における硬度が最も大きい層を所定外層とする。本実施形態では、この所定外層は中間層13である。なお、中間転写ベルト1が単一の外層として、中間転写ベルト1の表面を形成する表面層14のみを含む場合、上記所定外層はその表面層14である。
【0055】
そして、本実施形態では、上記所定外層としての中間層13は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域における平均の厚さよりも、中間転写ベルト1の幅方向の端部における平均の厚さの方が小さくなるように形成される。より具体的には、中間層13は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域における平均の厚さよりも中間転写ベルト1の幅方向の最端部(端縁)における平均の厚さの方が小さくなるように形成されるか、最端部には設けないように形成される。これにより、中間転写ベルト1の幅方向の端部において、中間層13が架橋時に硬化収縮することで生じる応力を緩和して、中間転写ベルト1の端部反りを抑制することができる。
【0056】
3.具体例
次に、下記の具体例1~9を用いて本発明の効果について更に説明する。
【0057】
3-1.測定方法及び評価方法
測定方法及び評価方法について説明する。この測定方法及び評価方法は、後述する第2の実施形態においても同様である。
【0058】
<各層の厚さの測定方法>
中間転写ベルト1の各層の厚さの測定方法について説明する。中間転写ベルト1の各層(基層11、弾性層12、中間層13、表面層14)の厚さは、クロスセクションポリッシャーを使用して中間転写ベルト1の表面から垂直な断面を作製し、その後作製した断面を走査型電子顕微鏡にて観察することで求めた。
【0059】
具体的には、クロスセクションポリッシャー(商品名:SM-09010、日本電子社製)を用いて、各試料の断面出しの加工を行った。その後、この断面を走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、任意の10箇所において各層の厚さを計測して、その平均値を各層の厚さ(平均厚さ、平均膜厚)とした。
【0060】
なお、弾性層12の厚さは、基層11の平面に略直交する方向の厚さである。また、中間層13の厚さは、弾性層12の平面に略直交する方向の厚さである。また、表面層14の厚さは、中間層13の平面に略直交する方向の厚さである。
【0061】
<各層の硬度の測定方法>
次に、中間転写ベルト1の基層11上に積層された各層の硬度(膜硬度)の測定方法について説明する。中間転写ベルト1の各層(弾性層12、中間層13、表面層14)の硬度は、ガラス基板上に、中間転写ベルト1から剥離した各層の試験片をセットし、ナノインデンター、(FISCHER社製PICODENTOR HM500)で押し込み硬度(押し込み硬さ)を測定した。そして、測定対象の層の厚さの10%から20%まで押し込んだ時の応力を測定した値の平均を硬度として使用した。
【0062】
なお、本実施形態では、試験片は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域の範囲内から得る。具体的には、試験片は、各評価対象の中間転写ベルト1の幅方向の中央位置を含むように得る。また、各評価対象の中間転写ベルト1に関する各層の硬度の測定値は、複数回(例えばベルトの周方向の5箇所)測定を行って得た測定値の平均値で代表することができる。
【0063】
<中間転写ベルトの端部反りの評価>
次に、中間転写ベルト1の端部反りの評価方法について説明する。中間転写ベルト1の端部反りは、図5に示す反り量測定装置50を使用して評価した。評価対象の中間転写ベルト1を外径が30mmの2本のローラ51、52に吊架し、片方のローラ52に5kgfの荷重をかける。そして、この時の2本のローラ51、52の中間位置において、中間転写ベルト1の幅方向における、画像領域の中央位置と、端部と、での変位量の差分を、レーザー変位計53で測定して、反り量とした。なお、中間転写ベルト1の幅方向の端部の変位量は、中間転写ベルト1の幅方向の最端部から内側に5mmの位置の変位量を測定した。
【0064】
本発明者の検討によれば、反り量は、1.5mm以下であれば、前述した装置本体との干渉、端部位置センサやホームポジションセンサの誤検知や検知精度の低下の問題を抑制するのに十分であると言える。端部反りの評価は、反り量が1.5mm以下の場合を良好(〇)、反り量が1.5mmを超える場合を不良(×)とした。
【0065】
3-2.具体例1
各具体例において、混合分散液の材料としては、溶剤により希釈・分散されているものがあるが、各材料の使用量(質量部)は、特に示さない限り不揮発分に関する量であって、溶剤(揮発分)が除かれた量を意味する。これは、後述する第2の実施形態においても同様である。
【0066】
<基層の調製>
下記の材料を、2軸混練機(商品名:PCM30、池貝社製)を用いて混練し、ペレット体を得た。
・ポリエーテルエーテルケトン(商品名:VICTREX PEEK450G、ビクトレックス社製)
・アセチレンブラック(商品名:デンカブラック粒状品、デンカ社製)
【0067】
ポリエーテルエーテルケトンが80質量%、アセチレンブラックが20質量%となるよう、上記の材料を各々重量フィーダを用いて2軸混練機に投入した。2軸混練機のシリンダ設定温度は、材料投入部を320℃とし、シリンダ下流及びダイは360℃とした。2軸混練機のスクリュ回転数は300rpmとし、材料供給量は8kg/hとした。
【0068】
次に、得られたペレットを用い、円筒押出成形することでベルトを得た。円筒押出成形は、単軸押出機(商品名:GT40、プラスチック工学研究所社製)、及び直径300mm、隙間1mmの円形開口部を有する円筒ダイを用いて行った。重量フィーダを用い、ペレットを4kg/hの供給量で単軸押出機に供給した。単軸押出機のシリンダ設定温度は、材料投入部を320℃とし、シリンダ下流及び円筒ダイは380℃とした。単軸押出機から吐出された熔融樹脂は、ギアポンプを経て、円筒ダイから押し出され、円筒引取機により、厚さ85μmとなる速度にて引き取られた。熔融樹脂は、引き取られる過程において、円筒ダイと円筒引取機との間に設けられた冷却マンドレルと接触することで冷却・固化された。固化した樹脂が、円筒引取機の下部に設置された円筒切断機にて、幅410mmとなるよう切断され、結晶性熱可塑性樹脂ベルトが得られた。
【0069】
<弾性層の調製>
導電剤として、トリ-n-ブチルメチルアンモニウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(商品名:FC4400、3M社製)を用いた。付加硬化型液状シリコーンゴム(商品名:TSE3450 A/B、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)100質量部に対し、上記導電剤液を0.2質量部の割合で添加し、遊星撹拌脱泡装置(商品名:HM-500、キーエンス社製)で撹拌・脱泡して混合液を得た。
【0070】
次に、基層11となる上記結晶性熱可塑性樹脂ベルトを円筒形の中子に取り付け、更に中子と同軸上にゴム吐出用のリングノズルを取り付けた。送液ポンプを用いて上記液状シリコーンゴム混合液をリングノズルに供給し、スリットから吐出することで、上記基層11上に混合液を塗布した。この際、硬化後のシリコーンゴム層の厚さが260μmになるように、リングノズルの相対移動速度及び送液ポンプ吐出量を調整した。ベルトの幅方向における弾性層12の塗布幅は390mmとして、ベルトの幅方向の最端部から内側15mmの範囲を厚み調整領域とし切り捨てた。上記混合液が塗布されたベルトを中子に取り付けた状態で加熱炉に投入した。加熱炉による架橋(加硫)工程は、一次焼成は130℃で10分、更に二次焼成は180℃で60分加熱し、ゴム架橋を行った。冷却後、ベルトを中子から取外し、弾性層12が積層されたベルトを得た。
【0071】
<中間層の調製>
中間層13の材料として、ポリアミド、フェノール樹脂混合液(商品名:マクシーブ、三菱ガス化学社製、M-100、C-93比、1.2:10)を用いた。図3は、本具体例(本実施形態の他の具体例、後述する第2の実施形態の具体例も同様。)において中間転写ベルト1の中間層13、表層14の塗布に使用したスプレー塗布装置40の模式図である。弾性層12の表面にエキシマUVを照射して表面を親水化処理し、図3に示すように、弾性層12が積層されたベルト44を中子41に嵌め合わせ、200rpmで回転させながら、スプレーガン42(商品名:W-101、アネスト岩田社製)を用いて上記樹脂混合液を塗布した。塗布時の塗料の吐出量は、中間層13の乾燥後の厚さが中間転写ベルト1の幅方向の画像領域において8μmとなるように設定した。
【0072】
図4は、ベルトの幅方向の端部の各層の位置関係を示す模式的な断面図である。中間層13の塗料の塗布時には、図4に示すように、画像領域より外側において、ベルトの幅方向の一方の最端部側の塗工開始位置から画像領域に向けて徐々に吐出量を多くした。その後、ベルトの幅方向の反対側の端部では、画像領域を過ぎると、塗工終了まで吐出量を少なくした。このようにして、中間転写ベルト1の幅方向の端部における中間層13の厚さを薄くした。この際、掴み代を作るため、ベルトの幅方向の両端部において、最端部から内側10mmの範囲には中間層13が塗布されないように、遮蔽板43をスプレーガン42と中子41との間に配置した。
【0073】
中間層13の厚さの分布は、次のように設定した。なお、各厚さ(μm)は、ベルトの周方向の任意の10点の平均値である。中間転写ベルト1の幅方向の端部の切断位置(最端部)aにおける中間層13の平均の厚さをA(μm)とする。切断位置(最端部)aから中間転写ベルト1の幅方向の内側に5mmの位置bにおける中間層13の平均の厚さをB(μm)とする。切断位置(最端部)aから中間転写ベルト1の幅方向の内側に10mmの位置cにおける中間層13の平均の厚さをC(μm)とする。画像領域内の任意の位置d(典型的には中間転写ベルト1の幅方向の中央位置)における中間層13の平均の厚さをD(μm)とする。このとき、下記式(1)~(4)の関係を満たすように設定した。
A<B<C<D ・・・(1)
B≦D×0.5 ・・・(2)
C≦D×0.75 ・・・(3)
A≧0 ・・・(4)
【0074】
なお、本実施形態では、A>0であるが、A=0であってもよい。
【0075】
上記樹脂混合液の塗布後、上記ベルトを中子に嵌め合せた状態で、200rpmで回転させながら15分間自然乾燥を行った。自然乾燥後、中間層13が積層されたベルトを得た。
【0076】
<表面層の調製>
表面層14の材料として、ポリウレタンディスパージョンにポリテトラフルオロエチレンが分散された含フッ素ポリウレタン樹脂液(商品名:Emralon T-861、ヘンケルジャパン社製)を用いた。上記中間層13が積層されたベルトを中子に嵌め合わせ、200rpmで回転させながら、スプレーガン(商品名:W-101、アネスト岩田社製)を用いて上記ウレタン樹脂液を塗布した。この際、掴み代を作るため、ベルトの幅方向の両端部において、最端部から内側10mmの範囲には表面層14が塗布されないように、遮蔽板をスプレーガンと中子との間に配置した。塗布時の塗料の吐出量は、表面層14の乾燥後の厚さが3μmとなるように設定した。
【0077】
上記樹脂液の塗布後、130℃の加熱炉に入れ、30分間放置した。加熱炉から取出し、冷却後、表面層14が積層されたベルトを得た。
【0078】
<中間転写ベルトの端部切断>
上記基層11、弾性層12、中間層13、表面層14が積層されたベルトを中子に嵌め合わせ、中子を2rpmで回転させながら、刃厚0.3mmのタングステン鋼円形刃を侵入させることによって、ベルトの両端部を切断し、中間転写ベルト1を得た。図4に示すように、ベルトの切断位置aは、ベルトの最端部から内側に25mmの位置とした。
【0079】
具体例1における中間層13の厚さは、A=2μm、B=4μm、C=6μm、D=8μmであった。具体例1における中間層13の各位置における厚さの関係は、前述の式(1)~(4)を満たしている。
【0080】
また、具体例1では、画像領域(具体的には、中間転写ベルト1の幅方向の中央位置)において、弾性層12の硬度は0.002GPa、中間層13の硬度は0.193GPa、表面層14の硬度は0.0058GPaであった。
【0081】
具体例1では、端部反りはほとんど発生しなかった。
【0082】
3-3.具体例2
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例2の中間転写ベルト1を得た。
【0083】
具体例2における中間層13の厚さは、A=2μm、B=2μm、C=2μm、D=2μmであった。具体例2における中間層13の各位置における厚さの関係は、A=B=C=D、A>0となっている。
【0084】
具体例2のように、中間層13の幅方向の全領域で厚さが2μmの場合は、端部反りはほとんど発生しなかった。
【0085】
3-4.具体例3
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例3の中間転写ベルト1を得た。
【0086】
具体例3における中間層13の厚さは、A=1μm、B=1.4μm、C=2μm、D=3μmであった。具体例3における中間層13の各位置における厚さの関係は、前述の式(1)~(4)を満たしている。
【0087】
具体例3では、端部反りはほとんど発生しなかった。
【0088】
3-5.具体例4
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例4の中間転写ベルト1を得た。
【0089】
具体例4における中間層13の厚さは、A=1μm、B=1.4μm、C=2.5μm、D=3μmであった。具体例4における中間層13の各位置における厚さの関係は、
A<B<C<D
B≦D×0.5
C>D×0.75
A>0
となっている。
【0090】
具体例4では、端部反りが1.5mmを超えて発生した。
【0091】
3-6.具体例5
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例5の中間転写ベルト1を得た。
【0092】
具体例5における中間層13の厚さは、A=1μm、B=1.6μm、C=2μm、D=3μmであった。具体例5における中間層13の各位置における厚さの関係は、
A<B<C<D
B>D×0.5
C≦D×0.75
A>0
となっている。
【0093】
具体例5では、端部反りが1.5mmを超えて発生した。
【0094】
3-7.具体例6
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例6の中間転写ベルト1を得た。
【0095】
具体例6における中間層13の厚さは、A=6μm、B=7μm、C=11μm、D=15μmであった。具体例6における中間層13の各位置における厚さの関係は、前述の式(1)~(4)を満たしている。
【0096】
具体例6では、端部反りは1.5mm以下であった。
【0097】
3-8.具体例7
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例7の中間転写ベルト1を得た。
【0098】
具体例7における中間層13の厚さは、A=6μm、B=7μm、C=12μm、D=15μmであった。具体例7における中間層13の各位置における厚さの関係は、
A<B<C<D
B≦D×0.5
C>D×0.75
A>0
となっている。
【0099】
具体例7では、端部反りが1.5mmを超えて発生した。
【0100】
3-9.具体例8
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例8の中間転写ベルト1を得た。
【0101】
具体例8における中間層13の厚さは、A=7μm、B=8μm、C=11μm、D=15μmであった。具体例8における中間層13の各位置における厚さの関係は、
A<B<C<D
B>D×0.5
C≦D×0.75
A>0
となっている。
【0102】
具体例8では、端部反りが1.5mmを超えて発生した。
【0103】
3-10.具体例9
画像領域より外側における中間層13の塗工時の吐出条件を変えたこと以外は、具体例1と同様にして具体例9の中間転写ベルト1を得た。
【0104】
具体例9における中間層13の厚さは、A=6μm、B=8μm、C=12μm、D=15μmであった。具体例9における中間層13の各位置における厚さの関係は、
A<B<C<D
B>D×0.5
C>D×0.75
A>0
となっている。
【0105】
具体例9では、端部反りが1.5mmを超えて発生した。
【0106】
各具体例の中間転写ベルト1の中間層13の各位置の厚さ、画像領域と端部との間の厚さの関係、及び端部反りの評価を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1の結果からわかるように、弾性層12より中間転写ベルト1の表面側に設けられた中間層13及び表面層14のうち画像領域における硬度が最も大きい中間層13の、画像領域における厚さが2μm以上の場合、中間転写ベルト1の幅方向の位置a、b、c、dにおける平均の厚さA(μm)、B(μm)、C(μm)、D(μm)が下記式(1)~(4)を満たすことで、端部反りを抑制することができる。
A<B<C<D ・・・(1)
B≦D×0.5 ・・・(2)
C≦D×0.75 ・・・(3)
A≧0 ・・・(4)
【0109】
このとき、作製の容易さなどの観点から、典型的には、本実施形態のように、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域より外側において、画像領域側から最端部側に向けて中間層13の平均の厚さが徐々に小さくされる。
【0110】
以上、本実施形態によれば、弾性層12と、弾性層12より表面側に設けられた弾性層12より硬い層13と、を有する中間転写ベルト1の端部反りを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、中間転写ベルト1の幅方向の端部と装置本体との干渉による中間転写ベルト1の幅方向の端部の破損、端部位置センサやホームポジションセンサの誤検知や検知精度の低下などを抑制することができる。
【0111】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の画像形成装置の基本的な構成及び動作は第1の実施形態のものと同じである。したがって、本実施形態の画像形成装置において、第1の実施形態の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、第1の実施形態と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0112】
1.本実施形態の概要
第1の実施形態では、所定外層としての中間層13は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域における平均の厚さよりも、中間転写ベルト1の幅方向の端部における平均の厚さが小さくなるように形成された。これに対し、本実施形態では、所定外層としての中間層13は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域における硬度よりも、中間転写ベルト1の幅方向の端部における硬度の方が小さくなるように形成される。より具体的には、中間層13は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域における硬度よりも、中間転写ベルト1の幅方向の最端部から内側に5mmの位置における硬度の方が小さくなるように形成される。このような硬度の設定は、典型的には、中間層13の焼成時の加熱温度を、画像領域よりも端部において低くなるように設定することで達成される。これにより、中間転写ベルト1の幅方向の端部において、中間層13が架橋時に硬化収縮することで生じる応力を緩和して、中間転写ベルト1の端部反りを抑制することができる。
【0113】
2.実験例1
中間転写ベルト1の幅方向の端部における中間層13の硬度の影響について調べるために、下記の実験例1(具体例21~27:便宜上、実験例1の各具体例には20番台の番号を付す。)の評価を行った。
【0114】
2-1.具体例21
<基層の調製>
下記の材料を、2軸混練機(商品名:PCM30、池貝社製)を用いて混練し、ペレット体を得た。
・ポリエーテルエーテルケトン(商品名:VICTREX PEEK450G、ビクトレックス社製)
・アセチレンブラック(商品名:デンカブラック粒状品、デンカ社製)
【0115】
ポリエーテルエーテルケトンが80質量%、アセチレンブラックが20質量%となるよう、上記の材料各々を重量フィーダを用いて2軸混練機に投入した。2軸混練機のシリンダ設定温度は、材料投入部を320℃とし、シリンダ下流及びダイは360℃とした。2軸混練機のスクリュ回転数は300rpmとし、材料供給量は8kg/hとした。
【0116】
次に、得られたペレットを用い、円筒押出成形することでベルトを得た。円筒押出成形は、単軸押出機(商品名:GT40、プラスチック工学研究所社製)、及び直径300mm、隙間1mmの円形開口部を有する円筒ダイを用いて行った。重量フィーダを用い、ペレットを4kg/hの供給量で単軸押出機に供給した。単軸押出機のシリンダ設定温度は、材料投入部を320℃とし、シリンダ下流及び円筒ダイは380℃とした。単軸押出機から吐出された熔融樹脂は、ギアポンプを経て、円筒ダイから押し出され、円筒引取機により、厚さ85μmとなる速度にて引き取られた。熔融樹脂は、引き取られる過程において、円筒ダイと円筒引取機との間に設けられた冷却マンドレルと接触することで冷却・固化された。固化した樹脂が、円筒引取機の下部に設置された円筒切断機にて、幅460mmとなるよう切断され、結晶性熱可塑性樹脂ベルトが得られた。
【0117】
<弾性層の調製>
導電剤として、トリ-n-ブチルメチルアンモニウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(商品名:FC4400、3M社製)を用いた。付加硬化型液状シリコーンゴム(商品名:TSE3450 A/B、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)100質量部に対し、上記導電剤液を0.2質量部の割合で添加し、遊星撹拌脱泡装置(商品名:HM-500、キーエンス社製)で撹拌・脱泡して混合液を得た。
【0118】
次に、基層11となる上記結晶性熱可塑性樹脂ベルトを円筒形の中子に取り付け、更に中子と同軸上にゴム吐出用のリングノズルを取り付けた。送液ポンプを用いて上記液状シリコーンゴム混合液をリングノズルに供給し、スリットから吐出することで、上記基層11上に混合液を塗布した。この際、硬化後のシリコーンゴム層の厚さが260μmになるように、リングノズルの相対移動速度及び送液ポンプ吐出量を調整した。
【0119】
上記混合液が塗布されたベルトを中子に取り付けた状態で加熱炉に投入した。加熱炉による架橋(加硫)工程は、一次焼成は130℃で10分、更に二次焼成は180℃で60分加熱し、ゴム架橋を行った。冷却後、ベルトを中子から取外し、弾性層12が積層されたベルトを得た。
【0120】
<中間層の調製>
中間層13の材料として、ポリウレタン樹脂液(商品名:ハイドラン 201、DIC社製に硬化剤Bonderite WH-2 20重量部を加えた塗料)を用いた。弾性層12の表面にエキシマUVを照射して表面を親水化処理し、図3に示すように、弾性層12が積層されたベルト44を中子41に嵌め合わせ、200rpmで回転させながら、スプレーガン42(商品名:W-101、アネスト岩田社製)を用いて上記ポリウレタン樹脂液を塗布した。塗布時の塗料の吐出量は、中間層13の乾燥後の厚さが中間転写ベルト1の幅方向の中心位置において8μmとなるように設定した。この際、掴み代を作るため、ベルトの幅方向の両端部において、最端部から内側10mmの範囲には中間層13が塗布されないように、遮蔽板43をスプレーガン42と中子41との間に配置した。なお、本実施形態では、中間層13の厚さは、中間転写ベルト1の幅方向の全域で略同一である。
【0121】
上記樹脂混合液の塗布後、上記ベルトを中子に嵌め合せた状態で、200rpmで回転させながら15分間自然乾燥を行った。自然乾燥後、中間層13が積層されたベルトを得た。
【0122】
<表面層の調製>
表面層14の材料として、ポリウレタンディスパージョンにポリテトラフルオロエチレンが分散された含フッ素ポリウレタン樹脂液(商品名:Emralon T-861、ヘンケルジャパン社製)を用いた。上記中間層13が積層されたベルトを中子に嵌め合わせ、200rpmで回転させながら、スプレーガン(商品名:W-101、アネスト岩田社製)を用いて上記ウレタン樹脂液を塗布した。この際、掴み代を作るため、ベルトの幅方向の両端部において、最端部から内側10mmの範囲には表面層14が塗布されないように、遮蔽板をスプレーガンと中子との間に配置した。塗布時の塗料の吐出量は、表面層14の乾燥後の厚さが3μmとなるように設定した。
【0123】
<中間層、表面層の焼成>
中間層13、表面層14の焼成には、輻射炉を使用した。図7は、本実験例で使用した輻射炉60の概略部分断面斜視図である。この輻射炉60は、加熱された炉体61の表面から発せられる遠赤外線にて対象物を直接加熱する方式のものである。この輻射炉60は、厚み10mmの環状の炉体61をマントルヒーターで加熱することにより、面内を均一に加熱することができる。遠赤外線を均一に効率良く放射するために、炉体61の内面は耐熱黒色塗料(オキツモ社製)が塗布されている。そして、この輻射炉60は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域に対応するベルトの中央領域と、中間転写ベルト1の幅方向の両端部に対応するベルトの両端領域とでの輻射熱を変えるために、次のような構成とされている。つまり、炉体61が、幅が画像領域の両端よりそれぞれ10mm大きく設定された上記中央領域を加熱する中央炉体61aと、中央炉体61aの幅方向の両端に隣接して配置され上記両端領域を加熱する端部炉体61bと、に分けられている。輻射熱は正対する面以外にも斜めに放射されるため、2つの異なる炉体61a、61bの温度の切替え部は2つの異なる炉体61a、61bから放射される放射熱の積分値になり、炉体61の幅方向の端部に向かって徐々に温度が下がる。
【0124】
未硬化の中間層13に表面層14を塗布したベルトを輻射炉60にセットし、所定の時間放置し、中間層13、表面層14を焼成したベルトを得た。この際、ベルトの上記中央領域を加熱する中央炉体61aの温度は130℃、ベルトの上記両端領域を加熱する端部炉体61bの温度は70℃、焼成時間を20分として焼成を行った。
【0125】
<中間転写ベルトの端部切断>
上記基層11、弾性層12、中間層13、表面層14が積層されたベルトを中子に嵌め合わせ、中子を2rpmで回転させながら、刃厚0.3mmのタングステン鋼円形刃を侵入させることによって、ベルトの両端部を切断し、中間転写ベルト1を得た。
【0126】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様、端部切断後の中間転写ベルト1の幅は360mmである。また、本実施形態では、第1の実施形態と同様、中間転写ベルト1の幅方向における画像領域の幅は330mmである。この画像領域は、中間転写ベルト1の幅方向の中心を基準として中間転写ベルト1の幅方向の中央に配置される。
【0127】
2-2.具体例22~27
中間層13、表面層14の焼成における輻射炉60の炉体61の温度を変えたこと以外は、具体例21と同様にして具体例22~27の中間転写ベルト1を得た。具体例22~27では、ベルトの上記中央領域を加熱する中央炉体61aの温度は130℃に固定し、ベルトの上記両端領域を加熱する端部炉体61bの温度、焼成時間を表2に示すように振って焼成を行った。
【0128】
実験例1の各具体例に関する、中間転写ベルト1の中央位置・端部位置における中間層13の硬度、中間層13・表面層14の焼成における端部炉体61bの温度と焼成時間、及び端部反りの評価を、表2に示す。また、図8(a)に、実験例1の各具体例に関する、中間層13・表面層14の焼成における端部炉体61の温度と、焼成時間と、反り量と、の関係を示す。また、図8(b)に、実験例1の各具体例に関する、反り量と、中間転写ベルト1の端部位置における中間層13の硬度と、の関係を示す。
【0129】
なお、本実施形態では、硬度測定の試験片は、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域内(具体的には幅方向の中央位置を含む範囲内)、及び中間転写ベルト1の幅方向の最端部から内側に5mmの位置(端部位置)を含む範囲内からそれぞれ得る。また、各評価対象の中間転写ベルト1に関する各層の硬度の測定値は、上記中央位置、端部位置のそれぞれについて、複数回(例えばベルトの周方向の5箇所)ずつ測定を行って得た測定値の平均値で代表することができる。具体例21~27のいずれにおいても、画像領域における弾性層12の硬度は0.002GPa、画像領域における表面層14の硬度は0.0015GPaであった。
【0130】
【表2】
【0131】
3.実験例2
中間転写ベルト1の幅方向の端部における中間層13の硬度の影響について調べるために、下記の実験例2(具体例31~38::便宜上、実験例2の各具体例には30番台の番号を付す。)の評価を行った。
【0132】
中間層13の材料としてポリアミド、フェノール樹脂混合液(商品名:マクシーブ、三菱ガス化学社製、M-100、C-93比、1.2:10)を用いたこと以外は、実験例1の中間転写ベルト1と同様にして実験例2の各具体例の中間転写ベルト1を得た。
【0133】
具体例31~38では、中間層13、表面層14の焼成において、ベルトの上記中央領域を加熱する中央炉体61aの温度は130℃に固定し、ベルトの上記両端領域を加熱する端部炉体61bの温度、焼成時間を表3に示すように振って焼成を行った。
【0134】
実験例2の各具体例に関する、中間転写ベルト1の中央位置・端部位置における中間層13の硬度、中間層13・表面層14の焼成における端部炉体61bの温度と焼成時間、及び端部反りの評価を、表3に示す。また、図9(a)に、実験例2の各具体例に関する、中間層13・表面層14の焼成における端部炉体61の温度と、焼成時間と、反り量と、の関係を示す。また、図9(b)に、実験例2の各具体例に関する、反り量と、中間転写ベルト1の端部位置における中間層13の硬度と、の関係を示す。
【0135】
なお、具体例31~38のいずれにおいても、画像領域における弾性層12の硬度は0.002GPa、画像領域における表面層14の硬度は0.0015GPaであった。
【0136】
【表3】
【0137】
4.効果
表2、表3に示す実験例1及び実験例2の各具体例の結果から、弾性層12より中間転写ベルト1の表面側に設けられた中間層13及び表面層14のうち画像領域における硬度が最も大きい中間層13の、中間転写ベルト1の幅方向の最端部から中間転写ベルト1の幅方向の内側に5mmの位置における硬度が、画像領域内の任意の位置における硬度よりも小さいことにより、端部反りを抑制することができる。
【0138】
また、図8(a)、図9(a)からわかるように、中間層13の焼成時のベルトの端部の加熱温度と焼成時間とを調整することによって、ベルトの端部における中間層13の硬度を調整して、反り量を所定値(ここでは1.5mm)以下に抑えることができる。このとき、作製の容易さなどの観点から、典型的には、本実施形態のように、中間転写ベルト1の幅方向の画像領域より外側において、画像領域側から最端部側に向けて中間層13の硬度が徐々に小さくされる。本実施形態では、焼成に用いる輻射炉60の炉体61を中央炉体61aと端部炉体61bとに分けて、中央位置から端部位置に向けて温度勾配(徐々に温度が低下する)を設けることでこのような硬度の分布が達成される。
【0139】
また、表2、表3、図8(b)、図9(b)からわかるように、反り量を所定値(ここでは1.5mm)以下に抑えるためには、中間転写ベルト1の最端部から中間転写ベルト1の幅方向の内側に5mmの位置における中間層13の硬度は、0.01GPa以下であることが好ましい。ただし、この中間転写ベルト1の最端部から中間転写ベルト1の幅方向の内側に5mmの位置における中間層13の硬度は、画像領域における弾性層12の硬度よりも大きい。
【0140】
以上、本実施形態によれば、弾性層12と、弾性層12より表面側に設けられた弾性層12より硬い層13と、を有する中間転写ベルト1の端部反りを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、中間転写ベルト1の端部と装置本体との干渉による中間転写ベルト1の幅方向の端部の破損、端部位置センサやホームポジションセンサの誤検知や検知精度の低下などを抑制することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 中間転写ベルト
11 基層
12 弾性層
13 中間層
14 表面層
40 スプレー塗布装置
60 輻射炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9