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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】空気加熱器
(51)【国際特許分類】
   F28F 19/00 20060101AFI20221128BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20221128BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20221128BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20221128BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
F28F19/00 511Z
F23L15/00 B
F28D7/16 Z
F28F9/02 E
F28F9/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018245143
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106202
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲也
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0352931(US,A1)
【文献】特開平07-167585(JP,A)
【文献】特開平11-183063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 19/00
F23L 15/00
F28F 9/00-9/26
F28D 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性ガスによって空気を加熱する空気加熱器であって、
腐食性ガスが流れる流路を挟んで互いに対向する上流管板および下流管板と、
前記上流管板と前記下流管板とに跨って延びる複数の伝熱管と、
前記上流管板に面する空間を覆う入口ダクトと、
前記複数の伝熱管の間で前記上流管板に取り付けられた吸熱板と、
を備える、空気加熱器。
【請求項2】
前記入口ダクト内には、当該入口ダクト内に導入された空気を、前記上流管板における前記吸熱板が取り付けられた部分へ吹き付けるノズルを形成するノズル構造体が設けられている、請求項1に記載の空気加熱器。
【請求項3】
前記吸熱板は、前記上流管板に着脱可能に取り付けられている、請求項1または2に記載の空気加熱器。
【請求項4】
前記吸熱板の前記上流管板側の端部には、当該吸熱板の厚さ方向の両側に突出する一対の突起が設けられており、
前記上流管板には、当該上流管板との間に前記一対の突起が挿入される溝を形成する一対の押え部材が設けられている、請求項3に記載の空気加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性ガスによって空気を加熱する空気加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ごみ焼却炉やボイラなどの設備から排出される比較的に高温の排ガスを利用して空気を加熱する空気加熱器が知られている。例えば、特許文献1には、排ガスが流れる流路を挟んで対向する上流管板および下流管板と、それらの上流管板と下流管板とに跨って延びる複数の伝熱管を含む空気加熱器(特許文献1では空気予熱器と称呼)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された空気加熱器では、上流管板に面する空間が入口ダクトで覆われ、下流管板に面する空間が出口ダクトで覆われている。入口ダクト内には空気が導入され、その空気は上述した伝熱管内を通って出口ダクトまで流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-285606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような構造の空気加熱器では、入口ダクト内に導入される空気が比較的に低温であるため、上流管板と下流管板との間の流路を流れる排ガスが腐食性ガスである場合には、上流管板および伝熱管の上流管板側の端部が低温腐食を起こす。
【0006】
そこで、本発明は、上流管板および伝熱管の上流管板側の端部が低温腐食を起こすことを抑制することができる空気加熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の空気加熱器は、腐食性ガスによって空気を加熱する空気加熱器であって、腐食性ガスが流れる流路を挟んで互いに対向する上流管板および下流管板と、前記上流管板と前記下流管板とに跨って延びる複数の伝熱管と、前記上流管板に面する空間を覆う入口ダクトと、前記複数の伝熱管の間で前記上流管板に取り付けられた吸熱板と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、伝熱管の間で上流管板に吸熱板が取り付けられているので、腐食性ガスの熱を吸熱板を介して上流管板に伝達することができる。これにより、入口ダクト内に導入された空気を積極的に加熱することができる。従って、上流管板および伝熱管の上流管板側の端部が低温腐食を起こすことを抑制することができる。
【0009】
前記入口ダクト内には、当該入口ダクト内に導入された空気を、前記上流管板における前記吸熱板が取り付けられた部分へ吹き付けるノズルを形成するノズル構造体が設けられていてもよい。この構成によれば、入口ダクト内に導入された空気をより効果的に加熱することができる。
【0010】
前記吸熱板は、前記上流管板に着脱可能に取り付けられていてもよい。この構成によれば、吸熱板が低温腐食を起こしたときには、吸熱板を交換することができる。特に、入口ダクト内に上記のノズル構造体が設けられている場合には、吸熱板の温度が低くなって吸熱板に低温腐食が起きやすい。従って、吸熱板が上流管板に対して着脱可能であることは、入口ダクト内に上記のノズル構造体が設けられている場合に特に有効である。
【0011】
前記吸熱板の前記上流管板側の端部には、当該吸熱板の厚さ方向の両側に突出する一対の突起が設けられており、前記上流管板には、当該上流管板との間に前記一対の突起が挿入される溝を形成する一対の押え部材が設けられていてもよい。この構成によれば、吸熱板の上流管板への取り付けおよび上流管板からの取り外しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上流管板および伝熱管の上流管板側の端部が低温腐食を起こすことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る空気加熱器の横断面図である。
図2図1のII-II線に沿った縦断面図である。
図3】上流管板に対する吸熱板の取り付け部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係る空気加熱器1を示す。この空気加熱器1は、腐食性ガスと空気との間で熱交換を行い、腐食性ガスによって空気を加熱するものである。
【0015】
具体的に、空気加熱器1は、腐食性ガスが流れる流路10を形成する筒状の本体2と、本体2に接続された空気用の入口ダクト4および出口ダクト6を含む。
【0016】
本体2は、流路10を挟んで互いに対向する上流管板21および下流管板22と、上流管板21と下流管板22の端部同士を連結する一対の側板23を含む。本実施形態では、腐食性ガスの流れ方向(すなわち筒状の本体2の軸方向)が鉛直方向である。ただし、腐食性ガスの流れ方向は水平方向や斜め方向であってもよい。
【0017】
以下では、説明の便宜上、上流管板21と下流管板22とが対向する方向を前後方向、側板23同士が対向する方向を左右方向という。
【0018】
本体2は、前後方向に延びる複数の伝熱管3によって貫通されている。つまり、伝熱管3は、上流管板21と下流管板22とに跨って延びていてそれらに溶接されている。伝熱管3の熱伸びに対応するために、各側板23の両端部には段差部が形成されている。
【0019】
本実施形態では、伝熱管3が前後方向から見てマトリクス状に配置されている。図例では、伝熱管3が左右方向に8列、上下方向に8列で配置されているが、伝熱管3の左右方向および上下方向の列数は適宜変更可能である。ただし、伝熱管3は千鳥状に配置されてもよい。
【0020】
上述した入口ダクト4は、上流管板21に面する空間を覆っており、出口ダクト6は、下流管板22に面する空間を覆っている。入口ダクト4内には空気が導入され、その空気は伝熱管3内を通って出口ダクト6まで流れる。
【0021】
本実施形態では、入口ダクト4の流入口および出口ダクト6の流出口が左右方向に沿って開口している。ただし、入口ダクト4の流入口および出口ダクト6の流出口は、前後方向に沿って開口してもよい。
【0022】
本体2内には、複数の吸熱板7が設けられている。本実施形態では、吸熱板7が腐食性ガスの流れ方向(本実施形態では鉛直方向)と平行となるように配置されている。ただし、吸熱板7は、腐食性ガスの流れ方向と直交するように配置されてもよい。そして、吸熱板7は、伝熱管3の間で上流管板21に取り付けられている。
【0023】
本実施形態では、隣り合う伝熱管3の間に1つおきに吸熱板7が存在するように、合計4つの吸熱板7が設けられている。ただし、吸熱板7の数は適宜変更可能である。例えば、左右方向における伝熱管3のピッチの3倍のピッチで吸熱板7が設けられてもよい。あるいは、吸熱板7の数は1つであってもよい。
【0024】
前後方向における吸熱板7の長さは適宜決定可能であるが、例えば、上流管板21と下流管板22との間の距離の半分程度であってもよい。また、上下方向における吸熱板7の長さも適宜決定可能であるが、例えば、全ての伝熱管3の配置範囲よりも長く設定されてもよい。
【0025】
本実施形態では、各吸熱板7が、上流管板21に着脱可能に取り付けられる。ただし、各吸熱板7は、必ずしも上流管板21に対して着脱可能である必要はなく、上流管板21に溶接で固定されてもよい。
【0026】
具体的には、図3に示すように、各吸熱板7の上流管板21側の端部には、当該吸熱板7の厚さ方向の両側に突出する一対の突起71が設けられている。一方、上流管板21には、各吸熱板7に対して、当該上流管板21との間に突起71が挿入される溝を形成する一対の押え部材8が設けられている。
【0027】
このような構成であれば、各吸熱板7を上流管板21へ取り付ける際および上流管板21から取り外す際には、吸熱板7を上方向または下方向へスライドさせるだけでよい。従って、各吸熱板7の上流管板21への取り付けおよび上流管板21からの取り外しを容易に行うことができる。
【0028】
なお、各吸熱板7から上流管板21へ熱を良好に伝達するという観点からは、突起71は上流管板21に押し付けられることが望ましい。例えば、押え部材8の先端と上流管板21との間の距離を突起71の厚さよりも少しだけ小さく設定し、押え部材8の弾性変形によって突起71を上流管板21に押し付けてもよい。あるいは、押え部材8に、突起71を押圧する切り起こし片を形成してもよい。
【0029】
図1および図2に戻って、入口ダクト4内にはノズル構造体5が設けられている。ノズル構造体5は、入口ダクト4内に導入された空気を、上流管板21における吸熱板7が取り付けられた部分へ吹き付ける複数のノズル50を形成する。換言すれば、各ノズル50の中心線の延長線上に吸熱板7が存在する。
【0030】
本実施形態では、ノズル50の数が吸熱板7の数と同数であり、左右方向に並んでいる。各ノズル50は、前後方向から見たときに上下方向に長い長方形状の開口である。ただし、ノズル50は、吸熱板7と同一のピッチで左右方向に並ぶ複数の線上に配置された複数の穴であってもよい。
【0031】
より詳しくは、ノズル構造体5は、各ノズル50を挟んで離間する第1ガイド51および第2ガイド52を含む。本実施形態では、上述したように入口ダクト4の流入口が左右方向に沿って開口しているために、第1ガイド51と第2ガイド52のうちの流入口と反対側に位置する第2ガイド52は、対応するノズル50に空気を誘い込む役割を果たす。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の空気加熱器1では、伝熱管3の間で上流管板21に吸熱板7が取り付けられているので、腐食性ガスの熱を吸熱板7を介して上流管板21に伝達することができる。これにより、入口ダクト4内に導入された空気を積極的に加熱することができる。従って、上流管板21および伝熱管3の上流管板21側の端部が低温腐食を起こすことを抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、各吸熱板7が上流管板21に対して着脱可能であるので、
吸熱板7が低温腐食を起こしたときには、吸熱板7を交換することができる。特に、本実施形態のように入口ダクト4内にノズル構造体5が設けられている場合には、各ノズル50から上流管板21へ吹き付けられる空気によって対応する吸熱板7が上流管板21を介して冷却されるため、各吸熱板7の温度が低くなって吸熱板7に低温腐食が起きやすい。従って、各吸熱板7が上流管板21に対して着脱可能であることは、入口ダクト4内にノズル構造体5が設けられている場合に特に有効である。
【0034】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0035】
例えば、入口ダクト4内にはノズル構造体5が設けられなくてもよい。ただし、前記実施形態のようにノズル構造体5が設けられていれば、入口ダクト4内に導入された空気が上流管板21における吸熱板7が取り付けられた部分に衝突した後に伝熱管3内に流入する。従って、ノズル構造体5が設けられない場合に比べて、入口ダクト4内に導入された空気をより効果的に加熱することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 空気加熱器
10 流路
21 上流管板
22 下流管板
3 伝熱管
4 入口ダクト
5 ノズル構造体
7 吸熱板
71 突起
8 押え部材
図1
図2
図3