IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図1
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図2
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図3
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図4
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図5
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図6
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図7
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図8
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図9
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図10
  • 特許-車輌用樹脂成形品 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】車輌用樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20221128BHJP
   B29C 45/28 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018246548
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104438
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健太
(72)【発明者】
【氏名】片山 征史
(72)【発明者】
【氏名】池谷 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大井 宏悦
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-096328(JP,A)
【文献】特開2002-018910(JP,A)
【文献】特開2013-006361(JP,A)
【文献】特開2017-030155(JP,A)
【文献】特開平11-077760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用金型のキャビティに充填される溶融樹脂が固化されることにより成形されると共にバルブピンによって形成される凹状のゲート痕が残存する車輌用樹脂成形品であって、
前記溶融樹脂の前記ゲート痕から充填端末までの流動距離をLとし最大の厚みをTとしたときにL/Tが190以上にされ、
前記ゲート痕の外側開口縁が平面状の平坦部として形成され、
前記ゲート痕の直径に対する最大の深さの割合が20%以上にされ
車体に組付けられたときに露出される意匠部と前記意匠部に連続され車体に組付けられたときに露出されない突状部とが設けられ、
前記ゲート痕が前記突状部に形成された
車輌用樹脂成形品。
【請求項2】
前記ゲート痕の表面が曲面状に形成された
請求項1に記載の車輌用樹脂成形品。
【請求項3】
前記ゲート痕の表面が球面状に形成された
請求項2に記載の車輌用樹脂成形品。
【請求項4】
前記ゲート痕の表面が円錐面状に形成された
請求項1に記載の車輌用樹脂成形品。
【請求項5】
前記ゲート痕が残存する部分が充填始端部として設けられ、
前記充填始端部の厚みが4mm以下にされた
請求項1から請求項4の何れかに記載の車輌用樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型のキャビティに充填される溶融樹脂が固化されることにより成形される車輌用樹脂成形品についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
固定型と可動型を有し両者によって形成される空間であるキャビティに溶融樹脂が充填されて成形品を成形する射出成形用金型があり、車輌用灯具の各部品が射出成形用金型によって車輌用樹脂成形品として成形される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような射出成形用金型には、溶融樹脂をヒーターによって加熱しながらキャビティへ向けて流動させるホットランナシステムと称される構造が内部に設けられており、溶融樹脂はホットランナの内部を流動されてホットランナの先端部に形成された吐出孔からゲートを通ってキャビティに充填される。
【0004】
ホットランナにはバルブピンが溶融樹脂の流動方向に移動可能に支持されている。固定型と可動型が突き合わされてキャビティが形成された状態において、バルブピンがキャビティと反対側へ移動されて吐出孔が開放されると溶融樹脂のホットランナからのキャビティへの充填が開始され、バルブピンがキャビティ側に移動されて吐出孔が閉塞されると溶融樹脂のホットランナからのキャビティへの充填が終了される。
【0005】
バルブピンがキャビティ側に移動されて溶融樹脂のホットランナからのキャビティへの充填が終了されるときには、バルブピンの先端部がキャビティに充填された溶融樹脂に押し当てられる。溶融樹脂が固化されて射出成形用金型から取り出され車輌用樹脂成形品が成形された状態において、車輌用樹脂成形品にはバルブピンの先端部が押し当てられた部分に凹状のゲート痕が形成される。
【0006】
バルブピンの先端面は平面状に形成されており、バルブピンの先端部が僅かに溶融樹脂に押し込まれるため、ゲート痕は浅い凹部として車輌用樹脂成形品に残存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-52105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、射出成形用金型によって成形される車輌用樹脂成形品は各種の形状や大きさ等に形成され、溶融樹脂の温度も車輌用樹脂成形品の形状や大きさ等によって設定される温度が異なることがある。
【0009】
例えば、薄型の車輌用樹脂成形品を形成する場合には溶融樹脂のゲート痕から充填端末までの流動距離が厚みに対して大きくなり易いため、溶融樹脂のキャビティにおける流動性を高めるために溶融樹脂の温度が、例えば、340度程度の高温に設定される。
【0010】
しかしながら、このような高温の溶融樹脂によって車輌用樹脂成形品が成形される場合には、溶融樹脂からの熱の伝達によりバルブピンの先端部も高温になり、車輌用樹脂成形品におけるバルブピンが押し当てられた部分が十分に固化されず、溶融樹脂から離隔したバルブピンの先端部に溶融樹脂の一部が付着したままになるおそれがある。バルブピンの先端部に溶融樹脂の一部が付着していると、バルブピンの先端部に糸状の樹脂が垂れ下がる所謂「糸引き」や成形品の表面に銀色の痕が生成される所謂「シルバーストリーク」が発生し、車輌用樹脂成形品の成形性の低下を来してしまう。
【0011】
そこで、本発明の車輌用樹脂成形品は、成形性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1に、本発明に係る車輌用樹脂成形品は、射出成形用金型のキャビティに充填される溶融樹脂が固化されることにより成形されると共にバルブピンによって形成される凹状のゲート痕が残存する車輌用樹脂成形品であって、前記溶融樹脂の前記ゲート痕から充填端末までの流動距離をLとし最大の厚みをTとしたときにL/Tが190以上にされ、前記ゲート痕の外側開口縁が平面状の平坦部として形成され、前記ゲート痕の直径に対する最大の深さの割合が20%以上にされ、車体に組付けられたときに露出される意匠部と前記意匠部に連続され車体に組付けられたときに露出されない突状部とが設けられ、前記ゲート痕が前記突状部に形成されたものである。




【0013】
これにより、バルブピンがキャビティ側に移動されて溶融樹脂に押し当てられたときに、車輌用樹脂成形品に対する溶融樹脂における先端部の接触面積が大きくなり、バルブピンにおける先端部の温度が低下し易くなる。
【0014】
第2に、上記した本発明に係る車輌用樹脂成形品においては、前記ゲート痕の表面が曲面状に形成されることが望ましい。
【0015】
これにより、ゲート痕が残存する部分が応力集中の生じ難い形状になる。
【0016】
第3に、上記した本発明に係る車輌用樹脂成形品においては、前記ゲート痕の表面が球面状に形成されることが望ましい。
【0017】
これにより、ゲート痕の直径に対する深さを十分に高くすることが可能になるため、バルブピンにおける先端部の溶融樹脂に対する接触面積が十分に大きくなる。
【0018】
第4に、上記した本発明に係る車輌用樹脂成形品においては、前記ゲート痕の表面が円錐面状に形成されることが望ましい。
【0019】
これにより、バルブピンにおける先端部の外面がバルブピンの移動方向に対して一律の角度で傾斜される。
【0020】
第5に、上記した本発明に係る車輌用樹脂成形品においては、前記ゲート痕が残存する部分が充填始端部として設けられ、前記充填始端部の厚みが4mm以下にされることが望ましい。
【0021】
これにより、充填始端部の厚みが薄く、その分、充填始端部に充填される溶融樹脂の量が少なくて済む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、バルブピンがキャビティ側に移動されて溶融樹脂に押し当てられたときに、車輌用樹脂成形品に対する溶融樹脂における先端部の接触面積が大きくなり、バルブピンにおける先端部の温度が低下し易くなるため、車輌用樹脂成形品におけるバルブピンが押し当てられた部分が十分に固化され、糸引きやシルバーストリークが発生し難くなり、車輌用樹脂成形品の成形性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図2乃至図11と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、射出成形用金型の断面図である。
図2】バルブピンの一部を示す正面図である。
図3】キャビティに溶融樹脂が充填されている状態を示す断面図である。
図4図3に引き続き、バルブピンによってゲートが閉塞された状態を示す断面図である。
図5図4に引き続き、固定型と可動型が離型された状態を示す断面図である。
図6】車輌用樹脂成形品の正面図である。
図7】車輌用樹脂成形品の充填始端部を示す断面図である。
図8】ゲート痕の寸法を示す断面図である。
図9】突状の充填始端部にゲート痕が形成された例を示す断面図である。
図10】先端部が円錐状に形成されたバルブピンの例を示す正面図である。
図11】先端部が円錐状に形成されたバルブピンによって形成されたゲート痕を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の車輌用樹脂成形品を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
車輌用樹脂成形品は射出成形用金型によって成形されるが、以下の説明においては、射出成形用金型の固定型と可動型が離接される方向を上下方向として上下前後左右の方向を示す。尚、以下に示す上下前後左右の方向は、説明の便宜上示すものであり、本発明はこれらの方向に限定して適用されることはない。
【0026】
先ず、射出成形用金型1の構造について概略を説明する(図1及び図2参照)。
【0027】
射出成形用金型1は上下方向において離接される固定型(コア型)2と可動型(キャビ型)3を有している(図1参照)。
【0028】
固定型2には内部空間が形成され、この内部空間が配置空間4とされている。固定型2には下方に開口された凹部2aが形成されている。固定型2の下端部には上下に貫通されたゲート2bが形成されており、ゲート2bは配置空間4に連通されている。
【0029】
可動型3は固定型2に対して上下方向へ移動されて離接される。可動型3には上方に突出された凸部3aが設けられている。可動型3には図示しないエジェクタピンが上下方向へ移動可能に支持されている。
【0030】
可動型3が上方へ移動されて固定型2と突き合わされたときには、凸部3aが凹部2aと組み合わされて両者の間にキャビティ5が形成される。
【0031】
固定型2の配置空間4にはホットランナ6が配置されている。ホットランナ6には上下に貫通された流路7が形成されている。流路7は下端部が他の部分より径が小さくされた吐出孔7aとして形成されている。ホットランナ6の吐出孔7aは可動型2のゲート2bの真上に位置されている。
【0032】
ホットランナ6にはゲート2bを開閉するバルブピン8が上下方向へ移動可能に支持されている。バルブピン8の径は流路7の径より小さくされており、流路7にはバルブピン8の外周側に溶融樹脂100が流動される空間が形成される。
【0033】
バルブピン8は主軸部9と傾斜部10と先端部11を有している(図2参照)。主軸部9は外径が一定にされている。傾斜部10は主軸部9の下端に連続され主軸部9から離隔するに従って外径が小さくなる円錐台形状に形成されている。先端部11は傾斜部10の下端に連続され傾斜部10から離隔するに従って外径が小さくされ、外面が球面11aとして形成されている。尚、先端部11は外面が球面11aに限らず、下方に凸の曲面状に形成されていればよい。
【0034】
次に、射出成形用金型1において車輌用樹脂成形品20が成形されるときの動作について説明する(図3乃至図5参照)。
【0035】
射出成形用金型1において、固定型2と可動型3が離型されている状態においては、バルブピン8が下方へ移動されてバルブピン8によってホットランナ6の吐出孔7aと固定型2のゲート2bが閉塞されている。
【0036】
可動型3が固定型2に対して上方へ移動されて可動型3が固定型2に突き合わされるとキャビティ5が形成され、バルブピン8が上方へ移動されて吐出孔7aとゲート2bが開放される(図3参照)。バルブピン8が上方へ移動されて吐出孔7aとゲート2bが開放されると、溶融樹脂100が流路7におけるバルブピン8の外周側の空間を流動され、吐出孔7aを介してゲート2bからキャビティ5に充填される。
【0037】
このとき、溶融樹脂100は、例えば、340度程度の高温に設定されているため、溶融樹脂100からの熱の伝達によりホットランナ6やバルブピン8の先端部11も高温の状態にされている。一方、固定型2及び可動型3はホットランナ6やバルブピン8のような高温の状態にはないため、キャビティ5に充填される溶融樹脂100の熱が固定型2及び可動型3に十分かつ速やかに伝達され、溶融樹脂100が固化し易い状態にされている。
【0038】
キャビティ5に溶融樹脂100が充填されると、バルブピン8が下方へ移動されて吐出孔7aとゲート2bが閉塞される(図4参照)。従って、ホットランナ6からの溶融樹脂100のキャビティ5への吐出が停止される。
【0039】
このときバルブピン8は先端部11がゲート2bから下方に突出されており、先端部11がキャビティ5に位置されて溶融樹脂100に押し当てられる。
【0040】
キャビティ5に充填された溶融樹脂100は熱が固定型2と可動型3に伝達されるため冷却されて固化される。
【0041】
キャビティ5に充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3が下方へ移動されて固定型2から離隔される(図5参照)。可動型3が固定型2から離隔されると、固化された溶融樹脂100がエジェクタピンによって可動型3から突き出され、車輌用樹脂成形品20としてキャビティ5から取り出される。
【0042】
車輌用樹脂成形品20は、例えば、ポリカーボネート等の透明な材料によって形成され、例えば、ランプハウジングに取り付けられるカバー(アウターレンズ)として機能する(図6参照)。
【0043】
尚、車輌用樹脂成形品20はカバー(アウターレンズ)に限られることはなく、例えば、インナーレンズ、エクステンション、リフレクターの他、フロントガーニッシュ等と称される化粧用の部材や飾り用の部材等であってもよく、透明な材料に限られず無色や有色を問わず各種の樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0044】
車輌用樹脂成形品20は車体に組み付けられたときに露出される意匠部21と意匠部21に連続され意匠部21から突出された突状部22と意匠部21の周囲に位置された周状部23とを有している。突状部22は車輌用樹脂成形品20が車体に組み付けられた状態において、バンパー等によって覆われて露出されない部分であり、周状部23はランプハウジングに接着等によって接合される部分である。
【0045】
突状部22には他の部分に対して厚み方向に膨らんだ状態にされた充填始端部24が設けられ、充填始端部24は、例えば、略矩形状に形成されている(図6及び図7参照)。充填始端部24は溶融樹脂100の充填が行われるときの開始部分であり、ゲート2bに対応する部分である。従って、充填始端部24にはバルブピン8の先端部11が押し当てられ、凹状のゲート痕25が残存する。充填始端部24は厚みが、例えば、4mm以下にされている。
【0046】
充填始端部24はゲート痕25の外側開口縁が平面状の平坦部24aとして形成されている。平坦部24aは固定型2におけるゲート2bの周囲の面(下面)2cによって形成される部分である。
【0047】
ゲート痕25は直径Dに対する最大の深さFの割合が20%以上にされている(図8参照)。ゲート痕25は、外面が球面11aとして形成されたバルブピン8の先端部11が押し当てられることにより形成されるため、表面25aが凹状の球状面に形成されている。但し、バルブピン8における先端部11の外面が球面11a以外の曲面状に形成されている場合には、ゲート痕25の表面25aも先端部11の外面に倣って球状面以外の曲面に形成される。
【0048】
尚、一般には、バルブピンにおける先端面は平面状に形成されており、先端面が平面状のバルブピンに押し当てられて形成されるゲート痕は、図8に点線で示す位置に形成される。
【0049】
上記のように形成された車輌用樹脂成形品1は薄型の成形品であり、溶融樹脂100のゲート痕25から充填端末までの流動距離をLとし最大の厚みをTとしたときにL/Tが190以上にされている。充填端末とは、キャビティ5を流動された溶融樹脂100が最後に流動される位置であり、ゲート2bから最も距離が長い位置である。
【0050】
以上に記載した通り、車輌用樹脂成形品1にあっては、溶融樹脂100のゲート痕25から充填端末までの流動距離をLとし最大の厚みをTとしたときにL/Tが190以上にされ、ゲート痕25の外側開口縁が平面状の平坦部24aとして形成され、ゲート痕25の直径Dに対する最大の深さFの割合が20%以上にされている。
【0051】
従って、ゲート痕25の直径Dに対する最大の深さFの割合が大きく、バルブピン8がキャビティ5側に移動されて溶融樹脂100に押し当てられたときに、溶融樹脂100に対するバルブピン8における先端部11の接触面積が大きくなり、先端部11からの熱の溶融樹脂100への伝達量が大きくされている。特に、キャビティ5に充填される溶融樹脂100の熱が、ホットランナ6やバルブピン8のような高温の状態にはない固定型2及び可動型3に十分かつ速やかに伝達されるため、キャビティ5に充填された溶融樹脂100の温度がバルブピン8における先端部11の温度より低く、キャビティ5に充填される溶融樹脂100に先端部11から熱が伝達され易い状態にされている。
【0052】
これにより、バルブピン8における先端部11の温度が低下し易くなり、車輌用樹脂成形品1における先端部11が押し当てられた部分が十分に固化される。従って、固定型2と可動型3が離型されバルブピン8が溶融樹脂100から離隔された状態において先端部11に溶融樹脂100が付着し難く、糸引きやシルバーストリークが発生し難くなり、車輌用樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0053】
また、ゲート痕25の表面25aが曲面状に形成されることにより、見栄えの向上を図ることができると共にゲート痕25が残存する部分が応力集中の生じ難い形状になり車輌用樹脂成形品1の高い強度を確保することができる。
【0054】
さらに、ゲート痕25の表面25aが曲面状に形成されることにより、バルブピン8における先端部11の外面がバルブピン8の移動方向に対して傾斜されるため、固定型2と可動型3の離型時に先端部11が溶融樹脂100から円滑に離隔され、溶融樹脂100を先端部11に一層付着し難くすることができる。
【0055】
特に、ゲート痕25の表面25aが球面状に形成されることにより、ゲート痕25の直径Dに対する深さFを十分に高くすることが可能になるため、先端部11の溶融樹脂100に対する接触面積が十分に大きくなり、先端部11の温度が一層低下し易く、車輌用樹脂成形品1の一層の成形性の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、車輌用樹脂成形品1におけるゲート痕25が残存する部分である充填始端部24の厚みが4mm以下にされているため、充填始端部24の厚みが薄く、その分、充填始端部24に充填される溶融樹脂100の量が少なくて済む。従って、充填始端部24から充填端末までの溶融樹脂100の流動時間が短縮化され、溶融樹脂100が流動中に固化され難くなり、溶融樹脂100の良好な流動性による車輌用樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0057】
尚、上記のように、バンパー等によって覆われる部分である突状部22に充填始端部24が設けられることにより、車輌用樹脂成形品20が車体に組み付けられた状態においてゲート痕25がバンパー等によって覆われ露出されない。従って、見栄えを考慮することなく充填始端部24を自由な形状及び大きさに形成することが可能になり、車輌用樹脂成形品20の設計の自由度の向上を図ることができる。また、ゲート痕25の深さを深くすることも可能になり、先端部11の溶融樹脂100に対する接触面積を大きくして車輌用樹脂成形品20の成形性の一層の向上を図ることができる。
【0058】
上記には、略平板状の充填始端部24にバルブピン8が押し当てられてゲート痕25が形成される例を示したが、例えば、突状(スプルー状)の充填始端部24Aにバルブピン8が押し当てられてゲート痕25が形成されてもよい(図9参照)。
【0059】
また、上記には、バルブピン8における先端部11の外面が球面11aとして形成された例を示したが、例えば、バルブピン8には下方に凸の円錐状の先端部11Aが設けられてもよい(図10参照)。この場合には、ゲート痕25の表面25aも先端部11Aの外面に倣って円錐面状に形成され、ゲート痕25は直径Dに対する最大の深さFの割合が20%以上にされる(図11参照)。
【0060】
円錐状の先端部11Aを有するバルブピン8が用いられた場合には、先端部11Aの外面がバルブピン8の移動方向に対して一律の角度で傾斜されるため、固定型2と可動型3の離型時に先端部11Aが溶融樹脂100から円滑に離隔され、溶融樹脂100を先端部11Aにより一層付着し難くすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…射出成形用金型、5…キャビティ、8…バルブピン、20…車輌用樹脂成形品、24…充填始端部、24a…平坦部、25…ゲート痕、25a…外面、100…溶融樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11