(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】連続体ロボット制御装置、連続体ロボット制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20221128BHJP
A61B 1/008 20060101ALI20221128BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20221128BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61B1/005 523
A61B1/008 512
B25J18/06
B25J9/10 A
(21)【出願番号】P 2019016022
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2018056793
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 秀和
【審査官】湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008335(JP,A)
【文献】特開2014-004653(JP,A)
【文献】特開2015-023950(JP,A)
【文献】特開2010-220961(JP,A)
【文献】特表2016-539816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
A61B 17/00-17/94
A61B 34/00-34/37
B25J 9/00- 9/22
B25J 13/00-13/08
B25J 18/00-18/06
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤのうちの少なくとも一部のワイヤを駆動することにより湾曲する湾曲可能部を有する連続体ロボットの動作を制御する連続体ロボット制御装置であって、
前記湾曲可能部の湾曲角度の目標値である目標湾曲角度
および前記湾曲可能部の旋回角度の目標値である目標旋回角度に基づいて、前記少なくとも一部のワイヤの駆動量を演算する第1の演算手段と、
前記目標湾曲角度と、
前記目標旋回角度と、前記目標湾曲角度
および前記目標旋回角度における前記複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量とに基づいて、前記駆動量を補償する補償量を演算する第2の演算手段と、
前記第1の演算手段で算出された駆動量と、前記第2の演算手段で算出された補償量とに基づいて、前記少なくとも一部のワイヤを駆動制御する駆動制御量を設定する設定手段と、
を有することを特徴とする連続体ロボット制御装置。
【請求項2】
前記連続体ロボットは、互いに直列に設けられた複数の前記湾曲可能部を有して構成されており、
前記第1の演算手段は、前記複数の湾曲可能部における湾曲可能部ごとに、前記目標湾曲角度に基づいて前記駆動量を演算し、
前記第2の演算手段は、前記複数の湾曲可能部における湾曲可能部ごとに、前記補償量を演算し、
前記設定手段は、前記複数の湾曲可能部における湾曲可能部ごとに、前記第1の演算手段で算出された駆動量と前記第2の演算手段で算出された補償量とに基づいて前記駆動制御量を設定することを特徴とする請求項1に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項3】
前記第2の演算手段は、前記目標湾曲角度の入力に応じて前記複数のワイヤのうちの一のワイヤの伸縮量を算出し、当該算出した伸縮量に基づいて他の一の前記ワイヤの補償量を演算することを特徴とする請求項1
または2に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項4】
前記第2の演算手段は、
前記目標湾曲角度と、一の前記ワイヤの伸縮量における第1の伸縮量候補値との入力に応じて、他の一のワイヤにおける第2の伸縮量候補値に更新する伸縮量更新部と、
前記第2の伸縮量候補値を前記他の一のワイヤの伸縮量として用いて前記他の一のワイヤに対する補償量を算出する補償量算出部と、
前記第2の伸縮量候補値が一定値に収束している場合に当該第2の伸縮量候補値を前記他の一のワイヤの伸縮量として前記補償量算出部に出力し、前記第2の伸縮量候補値が前記一定値に収束していない場合に当該第2の伸縮量候補値を前記第1の伸縮量候補値として前記伸縮量更新部に出力する出力処理部と、
を含み構成されていることを特徴とする請求項
1または
2に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項5】
前記伸縮量更新部は、
前記目標湾曲角度と前記第1の伸縮量候補値との入力に応じて、前記湾曲可能部における前記複数のワイヤごとにワイヤ長を演算するワイヤ長演算部と、
前記目標湾曲角度と前記複数のワイヤにおける前記ワイヤ長との入力に応じて、前記複数のワイヤごとに曲げモーメントを演算するモーメント演算部と、
前記複数のワイヤにおける前記曲げモーメントの入力に応じて、前記複数のワイヤの張力を演算する力演算部と、
前記張力の入力に応じて、前記第2の伸縮量候補値を演算する伸縮量演算部と、
を含み構成されていることを特徴とする請求項
4に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項6】
前記伸縮量更新部は、前記第1の伸縮量候補値として、前記他の一のワイヤを含む前記複数のワイヤの伸縮量における伸縮量候補値を更新するものであり、
前記伸縮量更新部は、
前記目標湾曲角度と前記第1の伸縮量候補値との入力に応じて、前記湾曲可能部における前記複数のワイヤの各々についてワイヤ長を演算するワイヤ長演算部と、
前記目標湾曲角度と前記湾曲可能部の旋回角度の目標値である目標旋回角度と前記複数のワイヤにおける前記ワイヤ長との入力に応じて、前記複数のワイヤの各々について曲げモーメントを演算するモーメント演算部と、
前記複数のワイヤにおける前記曲げモーメントの入力に応じて、前記複数のワイヤの張力を演算する力演算部と、
前記複数のワイヤにおける前記張力の入力に応じて、前記他のワイヤを含む前記複数のワイヤの伸縮量における前記第2の伸縮量候補値を演算する伸縮量演算部と、
を含み構成されていることを特徴とする請求項
4に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項7】
前記連続体ロボットの長手方向の移動量と前記ワイヤの駆動制御量における第1の駆動制御量候補値との入力に応じて、前記湾曲可能部の遠位端の移動量を演算する第3の演算手段と、
前記湾曲可能部の遠位端の移動量の入力に応じて、前記目標湾曲角度を更新する目標角度更新手段と、
を更に有し、
前記設定手段は、前記第1の演算手段が前記目標角度更新手段で更新した前記目標湾曲角度に基づき算出した駆動量と、前記第2の演算手段が前記目標角度更新手段で更新した前記目標湾曲角度に基づき算出した補償量とに基づいて、前記ワイヤの駆動制御量における第2の駆動制御量候補値を演算し、前記第2の駆動制御量候補値が一定値に収束している場合に当該第2の駆動制御量候補値を前記駆動制御量として設定し、前記第2の駆動制御量候補値が前記一定値に収束していない場合には前記第2の駆動制御量候補値を前記第1の駆動制御量候補値として前記第3の演算手段に出力することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項8】
前記ワイヤの長さは、前記湾曲可能部の長さの10倍以上であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の連続体ロボット制御装置。
【請求項9】
複数のワイヤのうちの少なくとも一部のワイヤを駆動することにより湾曲する湾曲可能部を有する連続体ロボットの動作を制御する連続体ロボット制御方法であって、
前記湾曲可能部の湾曲角度の目標値である目標湾曲角度
および前記湾曲可能部の旋回角度の目標値である目標旋回角度に基づいて、前記少なくとも一部のワイヤの駆動量を演算する第1の演算ステップと、
前記目標湾曲角度と、
前記目標旋回角度と、前記目標湾曲角度
および前記目標旋回角度における前記複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量とに基づいて、前記駆動量を補償する補償量を演算する第2の演算ステップと、
前記第1の演算ステップで算出された駆動量と、前記第2の演算ステップで算出された補償量とに基づいて、前記少なくとも一部のワイヤを駆動制御する駆動制御量を設定する設定ステップと、
を有することを特徴とする連続体ロボット制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の連続体ロボット制御装置における各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを駆動することにより湾曲可能な湾曲可能部を有する連続体ロボットの動作を制御する連続体ロボット制御装置及び連続体ロボット制御方法、並びに、当該連続体ロボット制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の負担を低減し治療・検査後のQOLを向上させるための低侵襲医療が注目を集めている。低侵襲医療の代表例として、内視鏡を用いた手術・検査が挙げられる。例えば、腹腔鏡手術は、従来の開腹手術と比べて手術創を小さくすることが可能となるため、術後に必要な入院期間を短縮できるだけでなく、美容上も優れているというメリットがある。
【0003】
また、低侵襲医療に用いられる内視鏡として、軟性内視鏡が知られている。この軟性内視鏡は、挿入部が湾曲可能な部材で構成されているため、例えば、食道や大腸、肺などの湾曲する器官であっても組織を圧迫することなく体内の深部に到達し、患者の負担を低減できるものである。さらに、アクチュエータなどを用いて挿入部を駆動し、体内の経路に沿うようにその姿勢を制御すれば、患者の負担をさらに低減できることが期待される。そのため、軟性内視鏡として利用可能な連続体ロボットの機構とその制御方法の研究開発が盛んに行われている。
【0004】
このような連続体ロボットでは、例えば、ワイヤ等の駆動力伝達機構を用いることでアクチュエータを基台に設置し、湾曲可能部を細径化する方式が用いられることがある。例えば、特許文献1には、駆動力伝達機構としてワイヤを用いる連続体ロボットにおいて、ワイヤの駆動量を制御することで湾曲可能部の姿勢を目標姿勢に一致させる方法が記載されている。この際、特許文献1では、ワイヤが長手方向に剛であると仮定し、運動学を用いてワイヤの駆動量を演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
肺のような体内深部の狭小空間に到達可能な連続体ロボットを実現するためには、駆動伝達機構であるワイヤは、長尺かつ細径であることが望ましい。しかしながら、このようなワイヤは、押し引きの際に生じる張力により大きく変形する。これにより、例えば、特許文献1に記載の技術のように、運動学を用いて演算したワイヤの駆動量を制御入力とすると、湾曲可能部の目標姿勢と実際の姿勢との間に誤差が生じ、体内の腔壁と湾曲可能部との接触リスクが増加するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、腔壁(体内等の経路)と湾曲可能部との接触リスクの低減を実現する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の連続体ロボット制御装置は、複数のワイヤのうちの少なくとも一部のワイヤを駆動することにより湾曲する湾曲可能部を有する連続体ロボットの動作を制御する連続体ロボット制御装置であって、前記湾曲可能部の湾曲角度の目標値である目標湾曲角度および前記湾曲可能部の旋回角度の目標値である目標旋回角度に基づいて、前記少なくとも一部のワイヤの駆動量を演算する第1の演算手段と、前記目標湾曲角度と、前記目標旋回角度と、前記目標湾曲角度および前記目標旋回角度における前記複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量とに基づいて、前記駆動量を補償する補償量を演算する第2の演算手段と、前記第1の演算手段で算出された駆動量と、前記第2の演算手段で算出された補償量とに基づいて、前記少なくとも一部のワイヤを駆動制御する駆動制御量を設定する設定手段と、を有する。
また、本発明は、上述した連続体ロボット制御装置による連続体ロボット制御方法、及び、上述した連続体ロボット制御装置における各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体内等の経路と湾曲可能部との接触リスクの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態で用いる連続体ロボットの外観構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を示し、
図1に示す湾曲可能部の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態を示し、
図2に示す湾曲可能部における運動学モデルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態を示し、目標湾曲角度と角度誤差との関係を示す特性図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態を示し、ワイヤ長と角度誤差との関係を示す特性図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態で用いる連続体ロボットの概略構成の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態を示し、
図7に示す第1の湾曲可能部及び第2の湾曲可能部における運動学モデルの一例を示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態を示し、
図9に示す補償量演算部の機能構成の一例を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態を示し、
図10に示す伸縮量更新部の機能構成の一例を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態を示し、反復計算の試行数である反復数と伸縮量との関係を示す特性図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態を示し、第1の湾曲可能部及び第2の湾曲可能部における目標湾曲角度と角度誤差との関係を示す特性図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態で用いる連続体ロボットの概略構成の一例を示す図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態を示し、
図14に示す湾曲可能部における運動学モデルの一例を示す図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図17】本発明の第3の実施形態を示し、
図16に示す補償量演算部の機能構成の一例を示す図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態を示し、
図17に示す伸縮量更新部の機能構成の一例を示す図である。
【
図19】本発明の第3の実施形態を示し、目標湾曲角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
【
図20】本発明の第3の実施形態を示し、目標旋回角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
【
図21】本発明の第4の実施形態で用いる連続体ロボットの概略構成の一例を示す図である。
【
図22】本発明の第4の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図23】本発明の第5の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの外観構成の一例を示す図である。
【
図24】本発明の第5の実施形態を示し、
図23に示す湾曲可能部における運動学モデルの一例を示す図である。
【
図25】本発明の第5の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図26】本発明の第6の実施形態で用いる連続体ロボットの概略構成の一例を示す図である。
【
図27】本発明の第6の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図28】本発明の第6の実施形態を示し、
図27に示す補償量演算部の機能構成の一例を示す図である。
【
図29】本発明の第6の実施形態を示し、
図28に示す伸縮量更新部の機能構成の一例を示す図である。
【
図30】本発明の第6の実施形態を示し、目標旋回角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
【
図31】本発明の第7の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図32】本発明の第7の実施形態を示し、目標湾曲角度と駆動制御量との関係を示す特性図である。
【
図33】本発明の第7の実施形態を示し、目標湾曲角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。具体的に、以下に説明する本発明の各実施形態では、連続体ロボット(連続体マニピュレータともいう)の制御システムが可撓性内視鏡に適用される例を示す。なお、本発明の各実施形態に係る連続体ロボット制御システムの例として適用する可撓性内視鏡は、医療分野に限定されるものではなく、湾曲可能部を挿入・抜去させる経路の内部を観察するものであれば他の分野(例えば、配管等の内部を観察するための工業用内視鏡)にも適用可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0013】
<1-1.モデリング>
図1は、本発明の第1の実施形態で用いる連続体ロボット110の外観構成の一例を示す図である。この
図1に示す連続体ロボット110は、ワイヤ1a、ワイヤ1b、長尺部111、湾曲可能部112、アクチュエータ113、及び、固定部114を有して構成されている。
【0014】
長尺部111は、外力に対して受動的に湾曲する構成部である。湾曲可能部112は、複数のワイヤ1a及び1bのうちの一部のワイヤ1b(所定ワイヤ)を駆動することにより湾曲可能な構成部である。アクチュエータ113は、ワイヤ1bを駆動する構成部である。固定部114は、ワイヤ1aを固定する構成部である。
【0015】
ここで、以下の説明においては、連続体ロボット110の各構成部において、基台の面(例えば、長尺部111におけるアクチュエータ113及び固定部114側の端部の面)から遠い側の端部を「遠位端」と称し、上述した基台の面から近い側の端部を「近位端」と称する。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態を示し、
図1に示す湾曲可能部112の概略構成の一例を示す図である。ここで、
図2には、湾曲可能部112を挿入・抜去させる経路の一例も図示している。
【0017】
湾曲可能部112は、当該湾曲可能部112の近位端の面を介して延伸する複数のワイヤ1a及び1bと、複数のワイヤ1a及び1bが異なる位置に固定され、複数のワイヤ1a及び1bを案内する第1のワイヤガイド1121と、上述した近位端の面と第1のワイヤガイド1121との間に設けられ、複数のワイヤ1a及び1bを案内する第2のワイヤガイド1122~1125と、を含み形成されている。また、
図2には、湾曲可能部112の遠位端1126と、上述した湾曲可能部112の近位端の面における中心位置1127を図示している。具体的に、ワイヤ1aとワイヤ1bは、各ワイヤガイド1121~1125と長尺部111に設けられた孔に案内され、その一端は第1のワイヤガイド1121に固定されるとともに、ワイヤ1aの他端は固定部114に接続され、ワイヤ1bの他端はアクチュエータ113に接続される。そして、
図1に示すアクチュエータ113を湾曲可能部112の長手方向に駆動するとワイヤ1bが押引きされ、湾曲可能部112が湾曲する。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施形態を示し、
図2に示す湾曲可能部112における運動学モデルの一例を示す図である。
【0019】
図3では、
図2に示す湾曲可能部112の近位端の面における中心位置1127を原点とし、長手方向にZ
1軸をとり、円周方向にX
1軸をとり、紙面の手前から奥に向かってY
1軸をとる。同様に、
図2に示す湾曲可能部112の遠位端1126の面における中心位置を原点とし、長手方向にZ
2軸をとり、円周方向にX
2軸をとり、紙面の手前から奥に向かってY
2軸をとる。また、
図3に示すように、Z
1軸とZ
2軸とのなす角を湾曲角度θ
1とする。
【0020】
また、以降の説明においては、必要に応じて以下に定義する符号を用いた説明を行う。
θ1:湾曲可能部の遠位端の絶対湾曲角度
l1a1,l1b1:湾曲可能部のワイヤ1aの長さ,ワイヤ1bの長さ
lp1b:湾曲可能部のワイヤ1bの駆動制御量
le1b:湾曲可能部のワイヤ1bの補償量
Δl1a,Δl1b:湾曲可能部のワイヤ1aの伸縮量,ワイヤ1bの伸縮量
f1a,f1b:湾曲可能部のワイヤ1aから遠位端に作用する力,ワイヤ1bから遠位端に作用する力
M1a1,M1b1:湾曲可能部のワイヤ1aから遠位端に作用する曲げモーメント,ワイヤ1bから遠位端に作用する曲げモーメント
Rg:湾曲可能部の中心からワイヤ1a,ワイヤ1bまでの距離を半径とする円の直径
L10:湾曲可能部のワイヤ1a,ワイヤ1bの全長
l10:湾曲角度が0(deg)のときの湾曲可能部のワイヤ長
E:ワイヤのヤング率
A:ワイヤの断面積
I:ワイヤの断面2次モーメント
なお、駆動制御量lp1b、伸縮量Δl1a,Δl1b、力f1a,f1bは、遠位端方向を正とし、また、モーメントM1a1,M1b1は、時計方向を正とし、以下の実施形態においても同様である。
【0021】
また、本実施形態では、以下に記載する仮定を前提とした運動学モデルと弾性ワイヤ駆動モデルを考える。
【0022】
[仮定1]:湾曲可能部において、ワイヤは曲率一定に変形する。
[仮定2]:ワイヤのねじり変形を考慮しない。
[仮定3]:ワイヤとワイヤガイドとの間、及び、ワイヤと長尺部の間に生じる摩擦を考慮しない。
[仮定4]:ワイヤガイドとワイヤの間に働く力とモーメントを考慮しない。
[仮定5]:ワイヤと遠位端の間に働く力のうち、ワイヤの長手方向の成分のみを考慮し、半径方向の成分を考慮しない。
[仮定6]:ワイヤの伸縮量は、ワイヤに作用する張力に比例する。
[仮定7]:ワイヤの曲げモーメントは、たわみ角に比例する。
[仮定8]:各ワイヤの引っ張り剛性と曲げ剛性とは等しい。
[仮定9]:各ワイヤのヤング率、断面積、断面2次モーメントは等しい。
【0023】
まず、ワイヤ1a及びワイヤ1bが長手方向に剛であると仮定し、運動学モデルを表現する関係式を導出する。ここで、
図3に示すように、ワイヤ1aとワイヤ1bとの距離をR
gとすると、上述した仮定1及び仮定2から、湾曲角度θ
1は、湾曲可能部112におけるワイヤ1aの長さl
1a1とワイヤ1bの長さl
1b1を用いて、以下の(1)式で表される。
【0024】
【0025】
ここで、(1)式の右辺は、ワイヤ1bの駆動量と等しいため、運動学モデルを用いて演算すると、ワイヤ1bの駆動量lk1bは、以下の(2)式で表される。
【0026】
【0027】
次に、ワイヤの伸縮を考慮して弾性ワイヤ駆動モデルを表現する関係式を導出する。
湾曲角度θ1が0(deg)のときの湾曲可能部112のワイヤ長をl10とし、ワイヤ1aの伸縮量をΔl1a、ワイヤ1bの伸縮量をΔl1bとし、弾性ワイヤ駆動モデルを用いて演算するワイヤ1bの駆動制御量をlp1bとすると、ワイヤ長l1a1及びワイヤ長l1b1は、それぞれ、以下の(3)式及び(4)式で表される。
【0028】
【0029】
そして、(2)式~(4)式を(1)式に代入すると、ワイヤ1bの駆動制御量lp1bは、以下の(5)式で表される。
【0030】
【0031】
即ち、(5)式から、ワイヤ1bの駆動制御量lp1bは、ワイヤ1a及び1bの伸縮量における差分と駆動量lk1bとの和になることがわかる。したがって、補償量le1bを以下の(6)式とすれば、ワイヤの伸縮による駆動量の誤差を補償することができる。
【0032】
【0033】
次に、湾曲可能部112の遠位端1126と各ワイヤに作用する力及びモーメントのつり合いの式から、ワイヤ1aの伸縮量Δl1a及びワイヤ1bの伸縮量Δl1bを導出する。上述した仮定3、仮定4及び仮定5から、湾曲可能部112の遠位端1126には、ワイヤ1a及びワイヤ1bから受ける長手方向の力f1a及びf1bと、Y1軸周りの曲げモーメントM1a1及びM1b1が作用する。したがって、湾曲可能部112の遠位端1126における力とモーメントのつり合いは、それぞれ、以下の(7)式及び(8)式で表される。
【0034】
【0035】
また、上述した仮定6、仮定7及び仮定8から、力f1a,f1b及びモーメントM1a1,M1b1は、伸縮量Δl1a及びΔl1bと湾曲角度θ1を用いて、それぞれ、以下の(9)式及び(10)式で表される。
【0036】
【0037】
この(9)式及び(10)式において、定数keと定数kmは、それぞれ、ワイヤの引っ張り剛性と曲げ剛性を表す。そして、この定数ke及び定数kmは、上述した仮定9から、ワイヤの全長(ワイヤ長)L0、ワイヤの断面積A、断面2次モーメントI、ヤング率Eを用いると、それぞれ、以下の(11)式及び(12)式で表すことができる。
【0038】
【0039】
また、(7)式と(9)式により、本実施形態では、ワイヤ1bの伸縮量Δl1bとワイヤ1aの伸縮量Δl1aとの間に、以下の(13)式の関係が成立する。
【0040】
【0041】
このため、(6)式と(13)式により、ワイヤ1bの補償量le1bは、以下の(14)式で表すことができる。
【0042】
【0043】
そして、(9)式と(10)式を(8)式に代入し、さらに、(3)式、(4)式、(13)式、(14)式を用いてl1a1,l1b1,Δl1b,lp1bを消去すると、以下の(15)式に示すワイヤ1aの伸縮量Δl1aの多項式を得る。
【0044】
【0045】
(15)式において、A3~A0及びB1~B0は、湾曲角度θ1を変数とするワイヤ1aの伸縮量Δl1aの係数であり、それぞれ、以下の(16)式及び(17)式で表される。
【0046】
【0047】
そして、(15)式の分子は、ワイヤ1aの伸縮量Δl1aについて3次の多項式であるため、これを解くと、3つの異なる解を得る。本実施形態では、この3つの解のうち、絶対値が最も小さい解をワイヤ1aの伸縮量Δl1aとする。
【0048】
<1-2.制御系>
図4は、本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム100の機能構成の一例を示す図である。この
図4に示す連続体ロボット制御システム100は、
図1に示す連続体ロボット110、連続体ロボット制御装置120、及び、入力装置130を有して構成されている。
【0049】
連続体ロボット制御装置120は、入力装置130から入力された、湾曲可能部112の湾曲角度の目標値である目標湾曲角度θ1refに基づいて、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1bを設定し、連続体ロボット110(より具体的には、アクチュエータ113)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1bを出力する。
【0050】
この
図4に示す連続体ロボット制御装置120は、運動学演算部121、補償量演算部122、加算部123、及び、位置制御部124を有して構成されている。
【0051】
運動学演算部121は、入力装置130から入力された湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1refと、ワイヤ1b(所定ワイヤ)とワイヤ1a(他のワイヤ)との距離とに基づいて、ワイヤ1bの駆動量lk1bを演算する第1の演算手段である。具体的に、運動学演算部121は、(2)式の湾曲角度θ1に目標湾曲角度θ1refを代入して、ワイヤ1bの駆動量lk1bを算出する。
【0052】
補償量演算部122は、入力装置130から入力された湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1refと、ワイヤ1aの伸縮量Δl1aとに基づいて、ワイヤ1bの補償量le1bを演算する第2の演算手段である。具体的に、補償量演算部122は、(15)式を用いてワイヤ1aの伸縮量Δl1aを算出し、(14)式を用いてワイヤ1aの伸縮量Δl1aからワイヤ1bの補償量le1bを算出する。
【0053】
加算部123は、運動学演算部121で算出された駆動量lk1bと、補償量演算部122で算出された補償量le1bとを加算して、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1bを算出する。即ち、加算部123は、運動学演算部121で算出された駆動量lk1bを補償量演算部122で算出された補償量le1bで補償する処理を行って、ワイヤ1bの駆動制御量lp1bを算出する。また、位置制御部124は、連続体ロボット110(より具体的には、アクチュエータ113)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1bを出力する。ここで、本実施形態においては、加算部123及び位置制御部124は、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1bを設定する設定手段を構成する。
【0054】
<1-3.シミュレーション>
上記<1-1>で導出した弾性ワイヤ駆動モデルと、上記<1-2>で提示した制御系を用いてシミュレーションを行う。本実施形態では、湾曲可能部112の長さl0を0.01mとする。
【0055】
まず、ワイヤ1a,ワイヤ1bの全長(ワイヤ長)L0を1mとし、本実施形態の制御系を適用することで湾曲可能部112の角度誤差を低減可能であることを以下に説明する。
【0056】
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、目標湾曲角度と角度誤差との関係を示す特性図である。
図5では、横軸に目標湾曲角度(Reference bending angle(deg))をとり、縦軸に角度誤差(Angular displacement(deg))をとった特性図を示している。
【0057】
具体的に、
図5では、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)から90(deg)まで変化させるときの角度誤差を示している。この
図5において、実線は、弾性ワイヤ駆動モデルを用いて演算したワイヤ1bの駆動制御量l
p1bを入力したときの応答の角度誤差を示し、破線は、運動学モデルを用いて演算したワイヤ1bの駆動量l
k1bを入力したときの応答の角度誤差を示している。この
図5に示す特性から、本実施形態に相当する駆動制御量l
p1bを用いる場合には、目標湾曲角度θ
1refが変化しても角度誤差が常に0となることがわかる。一方、比較例に相当する駆動量l
k1bを用いる場合には、目標湾曲角度θ
1refが増減すると角度誤差が増加してしまうことがわかる。このことから、本実施形態に係る
図4に示す制御系を適用することにより、連続体ロボット110の姿勢誤差を低減可能なことがわかる。
【0058】
次に、湾曲可能部112の長さと比べて長尺のワイヤを備える連続体ロボット110の姿勢制御において、本実施形態に係る
図4に示す制御系が特に有効であることを以下に説明する。
【0059】
図6は、本発明の第1の実施形態を示し、ワイヤ長L
0と角度誤差との関係を示す特性図である。
図6では、横軸にワイヤ長(Wire length)L
0をとり、縦軸に角度誤差(Angular displacement(deg))をとった特性図を示している。
【0060】
具体的に、
図6は、湾曲可能部112の長さl
0を0.01mとする本実施形態において、目標湾曲角度θ
1refを90(deg)とし、ワイヤ長L
0を0.01mから1mとする連続体ロボット110に駆動量l
k1bを入力したときの湾曲角度の誤差を示している。この
図6に示す特性から、ワイヤ長L
0を0.1m以上とすると、大きな角度誤差が生じてしまうことがわかる。このことから、本実施形態に係る
図4に示す制御系は、ワイヤ長L
0が、湾曲可能部112の長さl
0の10倍以上となる連続体ロボット110において特に効果を発揮する。
【0061】
第1の実施形態に係る連続体ロボット制御装置120では、補償量演算部122において、入力装置130から入力された湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1refと、ワイヤ1aの伸縮量Δl1aとに基づいて、ワイヤ1bの補償量le1bを演算するようにしている。そして、加算部123及び位置制御部124において、運動学演算部121で算出された駆動量lk1bを補償量演算部122で算出された補償量le1bで補償する処理を行って、ワイヤ1bの駆動制御量lp1bを設定するようにしている。
かかる構成によれば、ワイヤの変形に起因する駆動量lk1bの誤差を補償することができる。これにより、湾曲可能部112の目標姿勢と実際の姿勢との誤差を減少させることができ、その結果、体内等の経路と湾曲可能部との接触リスクの低減を実現することができる。
【0062】
本実施形態の補償量演算部122は、ワイヤ1a(他のワイヤ)の伸縮量Δl1aを用いて補償量le1bを導出するが、ワイヤ1b(所定ワイヤ)の伸縮量Δl1bを用いて補償量le1bを導出してもよい。具体的には、(13)式を用いて(15)式のΔl1aを-Δl1bに置き換えた、以下の(18)式を導出し、(18)式を用いてΔl1bを演算する。そして、(14)式のΔl1aを-Δl1bに置き換えた、以下の(19)式を用いて補償量le1bを演算する。
【0063】
【0064】
なお、以下の実施形態では、他のワイヤの伸縮量から補償量を演算する方法のみを示すが、本実施形態と同様に所定ワイヤの伸縮量を用いて補償量を演算することも可能である。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0066】
第2の実施形態は、経路に対して挿入・抜去させる方向に複数(具体的には、2つ)の湾曲可能部を有する連続体ロボットを適用する形態である。
【0067】
第1の実施形態における(15)式は、ワイヤの伸縮量について3次の多項式となるため、解析解を容易に求めることができる。しかしながら、複数の湾曲可能部を有する連続体ロボットでは、(15)式に対応する多項式における伸縮量の最高次数が5次以上となるため、解析解を求めることは困難である。そこで、第2の実施形態における制御系は、反復計算により伸縮量の数値解を求める。これにより、複数の湾曲可能部を有する連続体ロボットに本発明における制御系を適用することが可能となる。また、反復計算では、弾性ワイヤ駆動モデルより導出する複数の方程式に数値を順に代入し、ワイヤの伸縮量を更新する。これにより、湾曲可能部の数が増加しても、簡単な更新則を組み合わせることで反復計算を行うことが可能となる。
【0068】
以下では、まず、連続体ロボットの運動学モデルと弾性ワイヤ駆動モデルを導出する。続いて、反復計算を用いてワイヤの伸縮量を演算する本実施形態における制御系を提示し、複数の湾曲可能部を有する連続体ロボットにおいても制御性能を向上可能であることを数値例を用いて説明する。
【0069】
<2-1.モデリング>
図7は、本発明の第2の実施形態で用いる連続体ロボット210の概略構成の一例を示す図である。この
図7において、
図1及び
図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、この
図7では、湾曲可能部112及び212を挿入・抜去させる経路の記載は省略している。
【0070】
具体的に、この
図7に示す連続体ロボット210は、
図2に示す湾曲可能部112に相当する第1の湾曲可能部112、及び、第2の湾曲可能部212を有して構成されている。即ち、この
図7に示す連続体ロボット210は、互いに直列に設けられた複数の湾曲可能部112及び212を有して構成されている。
【0071】
第2の湾曲可能部212は、当該第2の湾曲可能部212の近位端の面(第1の湾曲可能部112の遠位端1126の面)を介して延伸する複数のワイヤ2a及び2bと、複数のワイヤ2a及び2bが異なる位置に固定され、複数のワイヤ2a及び2bを案内する第1のワイヤガイド2121と、上述した近位端の面と第1のワイヤガイド2121との間に設けられ、複数のワイヤ2a及び2bを案内する第2のワイヤガイド2122~2125と、を含み形成されている。
【0072】
また、第1の湾曲可能部におけるワイヤガイド1121~1125には、例えば、ワイヤ1aとワイヤ1bの案内孔の外側に、ワイヤ2aとワイヤ2bを案内するための孔が設けられている。そして、第1の実施形態における連続体ロボット110と同様に、各ワイヤは長尺部111に案内され、ワイヤ1a及びワイヤ2aは固定部214に接続され、ワイヤ1b及びワイヤ2bはアクチュエータ213に接続される。なお、
図7に示す例では、アクチュエータ213は、ワイヤ1b及びワイヤ2bをそれぞれ独立して駆動することができる駆動機構であるものとし、また、本実施形態においては、ワイヤ1b及びワイヤ2bに対応した2つのアクチュエータ213を構成する形態であってもよい。
【0073】
このため、本実施形態では、ワイヤ1bを駆動することで第1の湾曲可能部112を駆動させることが可能となり、また、ワイヤ2bを駆動することで第2の湾曲可能部212を駆動させることが可能となる。
【0074】
以下に示す第2の実施形態では、上述した第1の実施形態で示した仮定1~9に、以下の仮定10~12を加えて、上述した第1の実施形態と同様の方法を用いて、第2の実施形態の連続体ロボット210における運動学モデルと弾性ワイヤ駆動モデルを導出する。
【0075】
[仮定10]:ワイヤ1aの案内孔とワイヤ2aの案内孔との距離は短いため、各案内孔と湾曲可能部の中心軸との距離をどちらもRg/2とする。ワイヤ1bの案内孔とワイヤ2bの案内孔との関係についても同様である。
[仮定11]:第1の湾曲可能部112におけるワイヤ2aの長さl2a1とワイヤ1aの長さl1a1は等しい。ワイヤ2bの長さl2b1とワイヤ1bの長さl1b1についても同様である。
[仮定12]:第1の湾曲可能部112の遠位端1126とワイヤ2a及びワイヤ2bとの間にはワイヤの曲げモーメントのみが働き、摩擦力と反力は働かない。
【0076】
図8は、本発明の第2の実施形態を示し、
図7に示す第1の湾曲可能部112及び第2の湾曲可能部212における運動学モデルの一例を示す図である。
【0077】
図8では、
図7に示す第2の湾曲可能部212の遠位端2126の面における中心位置を原点とし、遠位端2126の面の法線方向にZ
3軸をとり、円周方向にX
3軸をとり、紙面手前から奥に向かってY
3軸をとる。また、
図8に示すように、Z
1軸とZ
3軸とのなす角を絶対湾曲角度θ
2とし、Z
2軸とZ
3軸とのなす角を相対湾曲角度~θ
2とする。ここで、湾曲角度~θ
2は、第2の湾曲可能部212の基準面が第2の湾曲可能部212の基準面と異なることから、相対座標系であることを示す符号(~)を付したものである。また、以下に示す数式では、相対座標系であることを示す符号(~)を各要素の上に付しているが、本明細書に記載の文章中では、書式の関係から湾曲角度「~θ
2」等のように横にずらした記載としており、以降の説明では、これらは同じものを示しているものとする。
【0078】
本実施形態では、このとき、相対湾曲角度~θ2は、湾曲角度θ1及びθ2を用いて、以下の(20)式で表される。
【0079】
【0080】
また、第1の実施形態における(1)式と同様に、相対湾曲角度~θ2は、第2の湾曲可能部212におけるワイヤ2aの長さl2a2とワイヤ2bの長さl2b2を用いて、以下の(21)式で表される。
【0081】
【0082】
したがって、ワイヤを長手方向に剛と仮定するときの第2の湾曲可能部212の駆動量lk2bは、以下の(22)式で表される。
【0083】
【0084】
また、本実施形態における連続体ロボット210の第1の湾曲可能部112において(2)式が成立するため、運動学モデルは、(2)式と(22)式を用いて表すことができる。
【0085】
また、ワイヤの伸縮を考慮すると、第1の湾曲可能部112と第2の湾曲可能部212におけるワイヤ2a及びワイヤ2bの長さは、ワイヤ2aの伸縮量Δl2a及びワイヤ2bの伸縮量Δl2bと、ワイヤ2bの駆動制御量lp2bを用いて、それぞれ、以下の(23)式及び(24)式で表される。
【0086】
【0087】
ここで、上述した仮定11から、長さl1a1と長さl2a1、長さl1b1と長さl2b1が等しいため、(3)式を(23)式に代入し、(4)式を(24)式に代入すると、長さl2a2及びl2b2は、それぞれ、以下の(25)式及び(26)式で表される。
【0088】
【0089】
(22)式と(25)式と(26)式を(21)式に代入し、さらに、(5)式を用いて駆動制御量lp1bを消去すると、以下の(27)式を得る。
【0090】
【0091】
したがって、第1の実施形態における(6)式と同様に、第2の湾曲可能部212のワイヤ2bの補償量le2bを以下の(28)式とすれば、第2の湾曲可能部212のワイヤの伸縮による駆動量の誤差を補償することができる。
【0092】
【0093】
なお、上述したように、第2の実施形態における第1の湾曲可能部112の運動学は、上述した第1の実施形態と等しいため、ワイヤ1bの駆動制御量lp1b及び補償量le1bは、上述した第1の実施形態と同様に、それぞれ、(5)式及び(6)式で表される。
【0094】
ワイヤの伸縮量を求めるために、第1の湾曲可能部112の遠位端1126と第2の湾曲可能部212の遠位端2126に作用する力とモーメントのつり合いの式を導出する。第1の実施形態における(8)式と同様に、第2の湾曲可能部212の遠位端2126に作用するY3軸周りのモーメントのつり合いは、以下の(29)式で表される。
【0095】
【0096】
また、Z3軸方向の力のつり合いは、以下の(30)式で表される。
【0097】
【0098】
なお、モーメントM2a2,M2b2及び力f2a,f2bは、それぞれ、(10)式及び(9)式と同様に、以下の(31)式及び(32)式で表すことができる。
【0099】
【0100】
ここで、(30)式と(32)式により、以下の(33)式が成立する。
【0101】
【0102】
よって、(33)式を(28)式に代入すると、以下の(34)式を得る。
【0103】
【0104】
そして、(14)式と(34)式により、ワイヤ1aの伸縮量Δl1aとワイヤ2aの伸縮量Δl2aが求まれば、ワイヤ1aの補償量le1bとワイヤ2aの補償量le2bを演算可能であることがわかる。上述した仮定12から、第1の湾曲可能部112の遠位端1126には、第1の湾曲可能部112におけるワイヤ1a、ワイヤ1b、ワイヤ2a及びワイヤ2bの曲げモーメントに加えて、モーメントM2a2及びM2b2の反モーメントが作用する。したがって、第1の湾曲可能部112の遠位端1126におけるY2軸周りのモーメントのつり合いは、以下の(35)式で表される。
【0105】
【0106】
なお、上述した仮定11から、ワイヤ長l1a1とワイヤ長l2a1とが等しく、また、ワイヤ長l1b1とワイヤ長l2b1とが等しい。このため、モーメントM2a1とモーメントM1a1とは等しく、また、モーメントM2a1とモーメントM 1b1とは等しくなり、以下の(36)式が成り立つ。
【0107】
【0108】
したがって、(35)式は、以下の(37)式に変形することができる。
【0109】
【0110】
また、上述した仮定12から、第1の湾曲可能部112の遠位端1126のZ2軸方向には、ワイヤ1a及びワイヤ1bの張力のみ作用するため、第1の湾曲可能部112の力のつり合いの式は、第1の実施形態と同様に、(7)式で表される。
【0111】
<2-2.制御系>
第2の実施形態における弾性ワイヤ駆動モデルに対して、第1の実施形態と同様に式変形を行うことで、ワイヤ1aの伸縮量Δl1a及びワイヤ2aの伸縮量Δl2aを変数とする2つの独立な多項式を得ることができる。しかしながら、これらの方程式は、伸縮量Δl1a及びΔl2aについて5次以上の高次の多項式となるため解析解を求めることは困難である。この際、勾配法等の最適化法により数値解を求めることは可能であるが、多数の湾曲可能部を有する連続体ロボット210においてこの高次多項式を導出することは容易ではない。そこで、第2の実施形態では、弾性ワイヤ駆動モデルから導出する簡単な式を組み合わせる反復計算により、ワイヤ1aの伸縮量Δl1a及びワイヤ2aの伸縮量Δl2aの数値解を求める。
【0112】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る連続体ロボット制御システム200の機能構成の一例を示す図である。この
図9に示す連続体ロボット制御システム200は、
図7に示す連続体ロボット210、連続体ロボット制御装置220、及び、入力装置230を有して構成されている。
【0113】
第2の実施形態では、入力装置230から連続体ロボット制御装置220に対して、第1の湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1refに加えて第2の湾曲可能部212の目標湾曲角度(目標相対湾曲角度)~θ2refも入力される。
【0114】
連続体ロボット制御装置220は、入力装置130から入力された、第1の湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1ref及び第2の湾曲可能部212の目標湾曲角度~θ2refに基づいて、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1b及びワイヤ2bを駆動制御する駆動制御量lp2bを設定し、連続体ロボット110(より具体的には、アクチュエータ213)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1b及び駆動制御量lp2bに基づく駆動指令τ2bを出力する。
【0115】
この
図9に示す連続体ロボット制御装置220は、運動学演算部221、補償量演算部222、加算部223、及び、位置制御部224を有して構成されている。
【0116】
運動学演算部221は、入力装置130から入力された第1の湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1refと、ワイヤ1b(所定ワイヤ)とワイヤ1a(他のワイヤ)との距離とに基づいて、ワイヤ1bの駆動量lk1bを演算するとともに、入力装置130から入力された第2の湾曲可能部212の目標湾曲角度~θ2refと、ワイヤ2b(所定ワイヤ)とワイヤ2a(他のワイヤ)との距離とに基づいて、ワイヤ2bの駆動量lk2bを演算する。具体的に、運動学演算部221は、(2)式の湾曲角度θ1に目標湾曲角度θ1refを代入してワイヤ1bの駆動量lk1bを算出するとともに、(22)式の湾曲角度~θ2に目標湾曲角度~θ2refを代入してワイヤ2bの駆動量lk2bを算出する。
【0117】
補償量演算部222は、入力装置130から入力された第1の湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1refと、ワイヤ1aの伸縮量Δl1aとに基づいて、ワイヤ1bの補償量le1bを演算するとともに、入力装置130から入力された第2の湾曲可能部212の目標湾曲角度~θ2refと、ワイヤ2aの伸縮量Δl2aとに基づいて、ワイヤ2bの補償量le2bを演算する第2の演算手段である。具体的に、補償量演算部222は、(15)式を用いてワイヤ1aの伸縮量Δl1aを算出し、(14)式を用いてワイヤ1aの伸縮量Δl1aからワイヤ1bの補償量le1bを算出する。また、補償量演算部222は、同様にしてワイヤ2aの伸縮量Δl2aを算出し、(34)式を用いてワイヤ2aの伸縮量Δl2aからワイヤ2bの補償量le2bを算出する。
【0118】
加算部223は、運動学演算部221で算出された駆動量lk1bと、補償量演算部222で算出された補償量le1bとを加算して、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1bを算出する。また、加算部223は、運動学演算部221で算出された駆動量lk2bと、補償量演算部222で算出された補償量le2bとを加算して、ワイヤ2bを駆動制御する駆動制御量lp2bを算出する。即ち、加算部223は、運動学演算部221で算出された駆動量lk1b及びlk2bのそれぞれを補償量演算部222で算出された補償量le1b及びle2bで補償する処理を行って、ワイヤ1bの駆動制御量lp1b及びワイヤ2bの駆動制御量lp2bを算出する。また、位置制御部224は、連続体ロボット210(より具体的には、アクチュエータ213)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1b及び駆動制御量lp2bに基づく駆動指令τ2bを出力する。ここで、本実施形態においては、加算部223及び位置制御部224は、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1b及びワイヤ2bを駆動制御する駆動制御量lp2bを設定する設定手段を構成する。
【0119】
図10は、本発明の第2の実施形態を示し、
図9に示す補償量演算部222の機能構成の一例を示す図である。補償量演算部222は、
図10に示すように、伸縮量更新部2221、収束判定部2222、出力切換部2223、及び、増幅部2224を含み構成されている。
【0120】
伸縮量更新部2221は、目標湾曲角度θ1ref及び~θ2refと、ワイヤ1a及び2bの伸縮量における第1の伸縮量候補値Δl1a_prev及びΔl2a_prevとの入力に応じて、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextに更新する。この際、伸縮量更新部2221は、上述した弾性ワイヤ駆動モデルを用いて、ワイヤ1a及び2bの伸縮量における第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextの更新を行う。
【0121】
収束判定部2222は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextが一定値に収束しているか否かを判定する。そして、収束判定部2222は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextが一定値に収束していると判定した場合、出力切換部2223に対して、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextをそれぞれ伸縮量Δl1a及び伸縮量Δl2aとして増幅部2224に出力させる。また、収束判定部2222は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextが一定値に収束していないと判定した場合、出力切換部2223に対して、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextをそれぞれ第1の伸縮量候補値Δl1a_prev及びΔl2a_prevとして伸縮量更新部2221に出力させ、反復計算を再度行う。ここで、本実施形態では、収束判定部2222及び出力切換部2223は、本発明における出力処理部に相当する構成である。
【0122】
増幅部2224は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextをそれぞれ伸縮量Δl1a及び伸縮量Δl2aとして用いて、補償量le1b及びle2bを算出する補償量算出部である。本実施形態では、(14)式と(34)式に示すように、それぞれ、補償量le1b及びle2bは、伸縮量Δl1a及びΔl1bの2倍となる。このため、増幅部2224は、第1の湾曲可能部112については伸縮量Δl1aに2を乗じて補償量le1bを算出し、また、第2の湾曲可能部212については伸縮量Δl2aに2を乗じて補償量le2bを算出する。
【0123】
なお、収束判定部2222は、所定の反復回数以内に第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextが一定値に収束しないときには、出力切換部2223に対して、最後に収束した第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextをそれぞれ伸縮量Δl1a及び伸縮量Δl2aとして増幅部2224に出力させる形態をとり得る。これにより、増幅部2224で算出される補償量が不連続に変化してしまうことを防止することができる。なお、本実施形態では、反復計算における第1の伸縮量候補値Δl1a_prev及びΔl2a_prevの初期値を0とするが、最後に収束した伸縮量を初期値として用いてもよい。
【0124】
図11は、本発明の第2の実施形態を示し、
図10に示す伸縮量更新部2221の機能構成の一例を示す図である。伸縮量更新部2221は、
図11に示すように、ワイヤ長演算部22211、モーメント演算部22212、力演算部22213、及び、伸縮量演算部22214を含み構成されている。
【0125】
ワイヤ長演算部22211は、目標湾曲角度θ1ref及び~θ2refと第1の伸縮量候補値Δl1a_prev及びΔl2a_prevとの入力に応じて、第1の湾曲可能部112及び第2の湾曲可能部212における複数のワイヤ1a,1b及びワイヤ2a,2bごとに、ワイヤ長l1a1,l1b1,l2a2,l2b2を演算する。具体的に、ワイヤ長演算部22211は、(1)式~(5)式と(21)式~(27)式を変形する、以下の(38)式~(41)式を用いて、ワイヤ長l1a1,l1b1,l2a2,l2b2を演算する。
【0126】
【0127】
モーメント演算部22212は、目標湾曲角度θ1ref及び~θ2refとワイヤ長l1a1,l1b1,l2a2,l2b2との入力に応じて、複数のワイヤ1a,1b及びワイヤ2a,2bごとに、曲げモーメントM1a1,M1b1,M2a2,M2b2を演算する。具体的に、モーメント演算部22212は、(10)式及び(36)式を用いて、曲げモーメントM1a1,M1b1,M2a2,M2b2を演算する。
【0128】
力演算部22213は、複数のワイヤ1a,1b及びワイヤ2a,2bにおける曲げモーメントM1a1,M1b1,M2a2,M2b2の入力に応じて、ワイヤ1a及び2a(他のワイヤ)の張力を示す力f1a及びf2aを演算する。具体的に、力演算部22213は、(29)式及び(37)式を用いて、力f1a及びf2aを演算する。
【0129】
伸縮量演算部22214は、力f1a及びf2aの入力に応じて、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextを演算して、伸縮量候補値の更新を行う。具体的に、伸縮量演算部22214は、(9)式及び(32)式を用いて、第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextを演算して、伸縮量候補値の更新を行う。したがって、本実施形態における更新後の第2の伸縮量候補値Δl1a_next及びΔl2a_nextは、それぞれ、以下の(42)式及び(43)式で表される。
【0130】
【0131】
ただし、(42)式と(43)式は、更新則を説明するために示しており、上述したように、伸縮量更新部2221は、弾性ワイヤ駆動モデルより導出する複数の方程式に数値を順に代入し伸縮量を更新する。なお、本実施形態における
図9~
図11に示す制御系は、伸縮量を用いて反復計算の収束判定を行うが、ワイヤ長や力、曲げモーメントも反復計算の度に更新されるため、これらのうちの1つを収束判定に用いてもよい。
【0132】
また、本実施形態においては、第2の湾曲可能部212の目標湾曲角度として相対湾曲角度~θ2refを用いるが、(20)式に示すように絶対角度と相対角度とは相互に変換可能であるため、絶対湾曲角度を目標湾曲角度として用いてもよい。
【0133】
<2-3.シミュレーション>
2つの湾曲可能部112及び212を有する連続体ロボット210に対して、
図9~
図11に示す第2の実施形態における制御系を適用する。なお、第1の湾曲可能部112と第2の湾曲可能部212の長さを0.01mとし、長尺部111の長さを1mとする。
【0134】
図12は、本発明の第2の実施形態を示し、反復計算の試行数である反復数と伸縮量との関係を示す特性図である。
図12では、横軸に反復数(Iteration number)をとり、縦軸に各試行における伸縮量(Displacement)をとった特性図を示している。
【0135】
具体的に、
図12では、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)とするとともに、目標湾曲角度~θ
2refを90(deg)とし、伸縮量Δl
1a及びΔl
2aの初期値を0とした際に、補償量演算部222における伸縮量Δl
1a及びΔl
2aの応答を示している。また、
図12において、実線は伸縮量Δl
1aを示し、破線は伸縮量Δl
2aを示している。この
図12に示すように、伸縮量Δl
1a及びΔl
2aは、どちらも4回目の試行後に一定となることから、反復計算により収束していることがわかる。
【0136】
図13は、本発明の第2の実施形態を示し、第1の湾曲可能部112及び第2の湾曲可能部212における目標湾曲角度と角度誤差との関係を示す特性図である。
【0137】
具体的に、
図13(a)は、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)とし、目標湾曲角度~θ
2refを-90(deg)から90(deg)まで変化させた場合に、第1の湾曲可能部112の角度誤差を表している。また、
図13(b)は、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)とし、目標湾曲角度~θ
2refを-90(deg)から90(deg)まで変化させた場合に、第2の湾曲可能部212の角度誤差を表している。この
図13(a)及び
図13(b)では、横軸に目標湾曲角度(Reference angle)~θ
2refをとり、縦軸に
図13(a)では角度誤差(Angle error)θ
1を、
図13(b)では角度誤差(Angle error)~θ
2をとった特性図を示している。
【0138】
図13(a)及び
図13(b)において、点線は、それぞれ、運動学演算部221で演算する駆動量l
k1b及びl
k2bを入力とする応答を示している。また、
図13(a)及び
図13(b)において、実線は、第2の実施形態における弾性ワイヤ駆動モデルから演算する駆動制御量l
p1b及びl
p2bを入力とする応答を示している。
【0139】
この
図13(a)及び
図13(b)に示すように、比較例に相当する駆動量l
k1b及びl
k2bを用いる場合には、目標湾曲角度~θ
2refの増減に伴って第1の湾曲可能部112及び第2の湾曲可能部212の角度誤差がどちらも増加してしまうことがわかる。一方、本実施形態に相当する駆動制御量l
p1b及びl
p2bを用いる場合には、目標湾曲角度~θ
2refが変化しても、第1の湾曲可能部112及び第2の湾曲可能部212の角度誤差が常に0となることがわかる。このことから、本実施形態に係る
図9~
図11に示す制御系を適用することにより、複数の湾曲可能部を有する連続体ロボット210の姿勢誤差を低減できることがわかる。
【0140】
第2の実施形態に係る連続体ロボット制御装置220では、補償量演算部222において、複数の湾曲可能部112及び212における湾曲可能部ごとに、入力装置230から入力された湾曲可能部112の目標湾曲角度θ1ref及び~θ2refと、ワイヤ1a及び2aの伸縮量Δl1a及びΔl2aとに基づいて、それぞれ、ワイヤ1b及び2bの補償量le1b及びle2bを演算するようにしている。そして、加算部223及び位置制御部224において、運動学演算部221で算出された駆動量lk1b及びlk2bのそれぞれを補償量演算部222で算出された補償量le1b及びle2bで補償する処理を行って、ワイヤ1b及び2bの駆動制御量lp1b及びlp2bを設定するようにしている。
かかる構成によれば、複数の湾曲可能部を有する連続体ロボット210においても、ワイヤの変形に起因する駆動量lk1b及びlk2bの誤差を補償することができる。これにより、複数の湾曲可能部の目標姿勢と実際の姿勢との誤差を減少させることができ、その結果、体内等の経路と湾曲可能部との接触リスクの低減を実現することができる。
【0141】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、同じ湾曲可能部に係る複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量に基づいて算出した補償量を用いて、各ワイヤの駆動量を補償することができる。
【0142】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0143】
第3の実施形態は、立体的に湾曲可能な湾曲可能部を有する連続体ロボットを適用する形態である。具体的に、第3の実施形態における連続体ロボットは2つのワイヤを駆動制御して1つの湾曲可能部を湾曲させ、制御系は当該2つのワイヤの伸縮量をそれぞれ考慮する補償量を第2の実施形態と同様の反復計算により演算する。これにより、立体的に湾曲可能な湾曲可能部を有する連続体ロボットの制御性能を向上させることが可能となる。
【0144】
<3-1.モデリング>
図14は、本発明の第3の実施形態で用いる連続体ロボット310の概略構成の一例を示す図である。この
図14において、
図1及び
図2や
図7に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、この
図14では、湾曲可能部312を挿入・抜去させる経路の一例も図示している。
【0145】
湾曲可能部312は、当該湾曲可能部312の近位端の面(中心位置が位置3127の面)を介して延伸する複数のワイヤ1a,1b及び1cと、複数のワイヤ1a,1b及び1cが異なる位置に固定され、複数のワイヤ1a,1b及び1cを案内する第1のワイヤガイド3121と、上述した近位端の面と第1のワイヤガイド3121との間に設けられ、複数のワイヤ1a,1b及び1cを案内する第2のワイヤガイド3122~3125と、を含み形成されている。
【0146】
そして、第1の実施形態における連続体ロボット110と同様に、各ワイヤは長尺部111に案内され、ワイヤ1aは固定部311aに接続され、ワイヤ1bはアクチュエータ311bに接続され、ワイヤ1cはアクチュエータ311cに接続される。また、本実施形態では、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cは、それぞれ、湾曲可能部312の中心軸を重心とする正三角形の頂点に配置される。このとき、ワイヤ1b及びワイヤ1cの駆動制御量を設定することにより、任意の平面内で湾曲可能部312を湾曲させることが可能となる。例えば、ワイヤ1bとワイヤ1cを同じ方向に同じ距離だけ駆動する場合、湾曲可能部312は、
図14のXZ平面内で湾曲する。また、ワイヤ1bとワイヤ1cを逆方向に同じ距離だけ駆動する場合、湾曲可能部312は、YZ平面内で湾曲する。本実施形態においても、連続体ロボット310の運動学モデルと弾性ワイヤ駆動モデルを導出する。
【0147】
図15は、本発明の第3の実施形態を示し、
図14に示す湾曲可能部312における運動学モデルの一例を示す図である。
【0148】
図15では、
図14に示す湾曲可能部112の近位端の面における中心位置3127を原点O
1とし、ワイヤ1aの方向にX
1軸をとり、湾曲可能部312の長手方向にZ
1軸をとり、X
1軸とZ
1軸とに直交する方向にY
1軸をとる。また、X
1Y
1平面内で原点O
1から湾曲可能部312の遠位端3126の面の中心点O
2に向かう方向にW
1軸をとり、X
1軸とW
1軸とのなす角度を旋回角度ζ
1とする。さらに、遠位端3126の中心軸を原点とし、法線方向にZ
2軸をとり、Z
2軸に垂直で且つW
1Z
1平面上にX
2軸をとり、X
2軸とZ
2軸に垂直な方向にY
2軸をとる。
【0149】
湾曲角度がθ1、旋回角度がζ1のとき、ワイヤ1aとワイヤ1bをW1Z1平面に投影すると、W1Z1平面におけるワイヤ1aとワイヤ1bとの距離Rbaは、以下の(44)式で表される。
【0150】
【0151】
したがって、第1の実施形態における(1)式と同様に、湾曲角度θ1と長さl1a1及びl1b1との間には、以下の(45)式が成立する。
【0152】
【0153】
同様に、W1Z1平面におけるワイヤ1aとワイヤ1cとの距離Rcaは、以下の(46)式で表される。
【0154】
【0155】
このため、湾曲角度θ1と長さl1a1及びl1c1との間に、以下の(47)式が成立する。
【0156】
【0157】
そして、(45)式と(47)式から、ワイヤを剛と仮定するときのワイヤ1bの駆動量lk1bとワイヤ1cの駆動量lk1cは、それぞれ、以下の(48)式及び(49)式で表される。
【0158】
【0159】
次に、ワイヤの伸縮を考慮して弾性ワイヤ駆動モデルを導出する。
本実施形態における連続体ロボット310では、ワイヤ長l1a1及びl1b1、並びに、ワイヤ1bの駆動制御量lp1bは、第1の実施形態と同様に、(3)式、(4)式、(5)式で表される。また、ワイヤ長l1c1は、ワイヤ長l1b1と同様に、ワイヤ1cの駆動制御量lp1cを用いて、以下の(50)式で表される。
【0160】
【0161】
このため、ワイヤ1cの駆動制御量lp1cは、以下の(51)式で表される。
【0162】
【0163】
この(51)式から、本実施形態における連続体ロボット310において、運動学モデルから導出する駆動量とワイヤの伸縮量の差分を加算することで、ワイヤの伸縮を考慮する駆動量を演算可能なことがわかる。したがって、ワイヤ1cの補償量le1cは、以下の(52)式で表される。
【0164】
【0165】
ここで、ワイヤの伸縮量を求めるために、湾曲可能部312の遠位端3126に作用する力とモーメントのつり合いの式を導出する。湾曲可能部312の遠位端3126は、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cからZ2軸方向の力を受けているため、力のつり合いは、力f1a,f1b及びf1cを用いて、以下の(53)式で表される。
【0166】
【0167】
また、湾曲可能部312の遠位端3126には、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cからY2軸まわりの曲げモーメントM1a1,M1b1及びM1c1が作用し、曲げモーメントとワイヤから受ける力f1a,f1b及びf1cによって生じるモーメントがつり合っている。したがって、Y2軸まわりのモーメントのつり合いは、以下の(54)式で表される。
【0168】
【0169】
また、X2軸まわりには、力f1a,f1b及びf1cによるモーメントが生じるため、つり合いの式は、以下の(55)式で表される。
【0170】
【0171】
なお、ワイヤ1cの力とモーメントは、ワイヤ1a及びワイヤ1bと同様に、それぞれ、以下の(56)式及び(57)式で表される。
【0172】
【0173】
<3-2.制御系>
第3の実施形態では、上述した第2の実施形態と同様に、反復計算を用いて各ワイヤの伸縮量Δl1a,Δl1b及びΔl1cの数値解を求める。
【0174】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る連続体ロボット制御システム300の機能構成の一例を示す図である。この
図16に示す連続体ロボット制御システム300は、
図14に示す連続体ロボット310、連続体ロボット制御装置320、入力装置330、及び、入力装置340を有して構成されている。
【0175】
連続体ロボット制御装置320は、入力装置330から入力された湾曲可能部312の目標湾曲角度θ1ref、及び、入力装置340から入力された湾曲可能部312の目標旋回角度ζ1refに基づいて、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1b及びワイヤ1cを駆動制御する駆動制御量lp1cを設定し、連続体ロボット110(より具体的には、アクチュエータ311b及び311c)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1b及び駆動制御量lp1cに基づく駆動指令τ1cを出力する。即ち、第3の実施形態では、入力装置330からの目標湾曲角度θ1refの入力に加えて、入力装置340からの目標旋回角度ζ1refの入力が行われる点で、上述した第1の実施形態と異なる。
【0176】
この
図16に示す連続体ロボット制御装置320は、運動学演算部321、補償量演算部322、加算部323、及び、位置制御部324を有して構成されている。
【0177】
運動学演算部321は、入力装置330から入力された湾曲可能部312の目標湾曲角度θ1refと、入力装置340から入力された湾曲可能部312の目標旋回角度ζ1refと、ワイヤ1b及び1c(所定ワイヤ)とワイヤ1a(他のワイヤ)との距離とに基づいて、ワイヤ1b及び1cごとに駆動量lk1b及びlk1cを演算する。具体的に、運動学演算部321は、(48)式及び(49)式を用いて、運動学モデルに基づく駆動量lk1b及びlk1cを算出する。
【0178】
補償量演算部322は、入力装置330から入力された湾曲可能部312の目標湾曲角度θ1refと、入力装置340から入力された湾曲可能部312の目標旋回角度ζ1refと、各ワイヤの伸縮量Δl1a,Δl1b及びΔl1cとに基づいて、ワイヤ1b及び1cごとに補償量le1b及びle1cを演算する。具体的に、補償量演算部322は、まず反復計算により各ワイヤの伸縮量Δl1a,Δl1b及びΔl1cを求めて、次に、当該伸縮量の差分である補償量le1b及びle1cを算出する。
【0179】
加算部323は、ワイヤ1b及び1cごとに、運動学演算部321で算出された駆動量lk1b及びlk1cと補償量演算部322で算出された補償量le1b及びle1cとをそれぞれ加算して、駆動制御量lp1b及びlp1cを演算する。即ち、加算部323は、運動学演算部321で算出された駆動量lk1b及びlk1cのそれぞれを補償量演算部322で算出された補償量le1b及びle1cで補償する処理を行って、ワイヤ1bの駆動制御量lp1b及びワイヤ1cの駆動制御量lp1cを算出する。また、位置制御部324は、連続体ロボット310(より具体的には、アクチュエータ311b及び311c)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1b及び駆動制御量lp1cに基づく駆動指令τ1cを出力する。ここで、本実施形態においては、加算部323及び位置制御部324は、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1b及びワイヤ1cを駆動制御する駆動制御量lp1cを設定する設定手段を構成する。
【0180】
図17は、本発明の第3の実施形態を示し、
図16に示す補償量演算部322の機能構成の一例を示す図である。補償量演算部322は、
図17に示すように、伸縮量更新部3221、収束判定部3222、出力切換部3223、及び、減算部3224を含み構成されている。
【0181】
伸縮量更新部3221は、目標湾曲角度θ1ref及び目標旋回角度ζ1refと、各ワイヤ1a,1b及び1cの伸縮量における第1の伸縮量候補値Δl1a_prev,Δl1b_prev及びΔl1c_prevとの入力に応じて、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextに更新する。この際、伸縮量更新部3221は、上述した弾性ワイヤ駆動モデルを用いて、各ワイヤ1a,1b及び1cの伸縮量における第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextの更新を行う。
【0182】
収束判定部3222は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextが一定値に収束しているか否かを判定する。そして、収束判定部3222は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextが一定値に収束していると判定した場合、出力切換部3223に対して、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextをそれぞれ伸縮量Δl1a,Δl1b及びΔl1cとして減算部3224に出力させる。また、収束判定部3222は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextが一定値に収束していないと判定した場合、出力切換部3223に対して、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextをそれぞれ第1の伸縮量候補値Δl1a_prev,Δl1b_prev及びΔl1c_prevとして伸縮量更新部3221に出力させ、反復計算を再度行う。ここで、本実施形態では、収束判定部3222及び出力切換部3223は、本発明における出力処理部に相当する構成である。
【0183】
減算部3224は、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextをそれぞれ伸縮量Δl1a,Δl1b及びΔl1cとして用いて、(52)式等から、補償量le1b及びle1cを算出する補償量算出部である。
【0184】
なお、収束判定部3222は、所定の反復回数以内に第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextが一定値に収束しないときには、出力切換部3223に対して、最後に収束した第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextをそれぞれ伸縮量Δl1a,Δl1b及びΔl1cとして減算部3224に出力させる形態をとり得る。これにより、減算部3224で算出される補償量が不連続に変化してしまうことを防止することができる。なお、本実施形態でも、反復計算における第1の伸縮量候補値Δl1a_prev,Δl1b_prev及びΔl1c_prevの初期値を0とするが、最後に収束した伸縮量を初期値として用いてもよい。
【0185】
図18は、本発明の第3の実施形態を示し、
図17に示す伸縮量更新部3221の機能構成の一例を示す図である。伸縮量更新部3221は、
図18に示すように、ワイヤ長演算部32211、モーメント演算部32212、力演算部32213、及び、伸縮量演算部32214を含み構成されている。
【0186】
ワイヤ長演算部32211は、目標湾曲角度θ1refと第1の伸縮量候補値Δl1a_prev,Δl1b_prev及びΔl1c_prevとの入力に応じて、湾曲可能部312における複数のワイヤ1a,1b及び1cごとに、ワイヤ長l1a1,l1b1及びl1c1を演算する。具体的に、ワイヤ長演算部32211は、(3)式、(5)式、(48)式~(51)式を変形する、以下の(58)式~(60)式を用いて、ワイヤ長l1a1,l1b1及びl1c1を演算する。
【0187】
【0188】
モーメント演算部32212は、目標湾曲角度θ1refと目標旋回角度ζ1refと各ワイヤのワイヤ長l1a1,l1b1及びl1c1との入力に応じて、複数のワイヤ1a,1b及び1cごとに、曲げモーメントM1a1,M1b1及びM1c1を演算する。具体的に、モーメント演算部32212は、(10)式と(57)式を用いて、曲げモーメントM1a1,M1b1及びM1c1を演算する。
【0189】
力演算部32213は、複数のワイヤ1a,1b及び1cにおける曲げモーメントM1a1,M1b1及びM1c1の入力に応じて、ワイヤ1a,1b及び1cのそれぞれの張力を示す力f1a,f1b及びf1cを演算する。具体的に、力演算部32213は、(53)式、(54)式、(55)式を用いて、力f1a,f1b及びf1cを演算する。
【0190】
伸縮量演算部32214は、複数のワイヤ1a,1b及び1cにおける力f1a,f1b及びf1cの入力に応じて、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextを演算して、伸縮量候補値の更新を行う。具体的に、伸縮量演算部32214は、(9)式と(56)式を用いて、第2の伸縮量候補値Δl1a_next,Δl1b_next及びΔl1c_nextを演算して、伸縮量候補値の更新を行う。
【0191】
<3-3.シミュレーション>
立体的に湾曲可能な湾曲可能部312を有する連続体ロボット310に対して、
図16~
図18に示す第3の実施形態における制御系を適用する。なお、湾曲可能部312の長さを0.01mとし、長尺部111の長さを1mとする。
【0192】
図19は、本発明の第3の実施形態を示し、目標湾曲角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
図19では、横軸に目標湾曲角度(Reference bending angle)θ
1refをとり、縦軸に湾曲角度の誤差(Bending angle error)をとった特性図を示している。
【0193】
具体的に、
図19は、目標旋回角度ζ
1refを0(deg)とし、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)から90(deg)まで変化させた場合に、湾曲可能部312の湾曲角度の誤差を表している。
図19において、破線は、運動学モデルを用いて演算した駆動量l
k1b及びl
k1cを制御入力として用いた場合の比較例を示しており、この場合は、目標湾曲角度θ
1refの増減に伴って湾曲可能部312の角度誤差が増加してしまうことがわかる。一方、実線は、ワイヤの伸縮を考慮した駆動制御量l
p1b及びl
p1cを制御入力として用いた場合の本実施形態を示しており、この場合は、目標湾曲角度θ
1refが変化しても、湾曲可能部312の角度誤差が0となることがわかる。
【0194】
図20は、本発明の第3の実施形態を示し、目標旋回角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
図20では、横軸に目標旋回角度(Reference rotation angle)ζ
1refをとり、縦軸に湾曲角度の誤差(Bending angle error)をとった特性図を示している。
【0195】
具体的に、
図20は、目標湾曲角度θ
1refを90(deg)とし、目標旋回角度ζ
1refを-180(deg)から180(deg)まで変化させた場合に、湾曲可能部312の湾曲角度の誤差を表している。
図20において、破線は、運動学モデルを用いて演算した駆動量l
k1b及びl
k1cを制御入力として用いた場合の比較例を示しており、この場合は、目標旋回角度ζ
1refに依存して湾曲可能部312の角度誤差が生じてしまうことがわかる。一方、実線は、ワイヤの伸縮を考慮した駆動制御量l
p1b及びl
p1cを制御入力として用いた場合の本実施形態を示しており、この場合は、目標旋回角度ζ
1refによらずに湾曲可能部312の角度誤差が常に0となることがわかる。以上のことから、本実施形態に係る
図16~
図18に示す制御系を適用することにより、立体的に湾曲可能な湾曲可能部312を有する連続体ロボット310の姿勢誤差を低減できることがわかる。
【0196】
第3の実施形態に係る連続体ロボット制御装置320では、補償量演算部322において、湾曲可能部312におけるワイヤ1b及び1c(所定ワイヤ)ごとに、入力装置330から入力された湾曲可能部312の目標湾曲角度θ1refと、入力装置340から入力された湾曲可能部312の目標旋回角度ζ1refとに基づいて、それぞれ、ワイヤ1b及び1cの補償量le1b及びle1cを演算するようにしている。そして、加算部323及び位置制御部324において、運動学演算部321で算出された駆動量lk1b及びlk1cのそれぞれを補償量演算部322で算出された補償量le1b及びle1cで補償する処理を行って、ワイヤ1b及び1cの駆動制御量lp1b及びlp1cを設定するようにしている。
かかる構成によれば、立体的に湾曲可能な湾曲可能部312を有する連続体ロボット310においても、ワイヤの変形に起因する駆動量lk1b及びlk1cの誤差を補償することができる。これにより、湾曲可能部312の目標姿勢と実際の姿勢との誤差を減少させることができ、その結果、体内等の経路と湾曲可能部との接触リスクの低減を実現することができる。
【0197】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、同じ湾曲可能部に係る複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量に基づいて算出した補償量を用いて、各ワイヤの駆動量を補償することができる。
【0198】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0199】
第4の実施形態は、第2の実施形態における制御系と第3の実施形態における制御系とを組み合わせることにより、立体的に湾曲可能な複数の湾曲可能部を有する連続体ロボットを適用する形態である。具体的に、第4の実施形態における制御系では、反復計算を用いて各湾曲可能部を駆動するワイヤの伸縮量を演算する。その際、反復計算では、第2の実施形態と同様に湾曲可能部間に働く力とモーメントの連成を考慮する弾性ワイヤ駆動モデルを用いる。さらに、第4の実施形態における制御系では、第3の実施形態と同様に、目標湾曲角度と目標旋回角度から駆動量を求める。
【0200】
<4-1.モデリング>
図21は、本発明の第4の実施形態で用いる連続体ロボット410の概略構成の一例を示す図である。この
図21において、
図1及び
図2や
図7、
図14に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、この
図21では、湾曲可能部412を挿入・抜去させる経路の一例も図示している。
【0201】
湾曲可能部412は、
図14に示す湾曲可能部312を、経路に対して挿入・抜去させる方向に複数(具体的には、N個)備えて構成されている。即ち、この
図21に示す連続体ロボット410は、互いに直列に設けられた複数の湾曲可能部312-1~312-Nを有して構成されている。湾曲可能部412における第nの湾曲可能部(n=1,2,…,N)の遠位端3126-nには、ワイヤna、ワイヤnb及びワイヤncの一端が接続されている。各ワイヤna,nb及びncは、第n-1の湾曲可能部312-(n-1)から第1の湾曲可能部312-1のワイヤガイドと長尺部111に案内される。また、ワイヤnaは、固定部411aに接続され、ワイヤnbはアクチュエータ411bに接続され、ワイヤncはアクチュエータ411cに接続される。なお、
図21に示す例では、アクチュエータ411bは、ワイヤ1b~ワイヤNbをそれぞれ独立して駆動することができる駆動機構であるものとし、また、本実施形態においては、ワイヤ1b~ワイヤNbに対応したN個のアクチュエータ411bを構成する形態であってもよい。同様に、アクチュエータ411cは、ワイヤ1c~ワイヤNcをそれぞれ独立して駆動することができる駆動機構であるものとし、また、本実施形態においては、ワイヤ1c~ワイヤNcに対応したN個のアクチュエータ411cを構成する形態であってもよい。そして、本実施形態では、アクチュエータ411b及び411cを駆動制御することにより、第nの湾曲可能部312-nにおける湾曲角度θ
nと旋回角度ζ
nを制御する。
【0202】
<4-2.制御系>
図22は、本発明の第4の実施形態に係る連続体ロボット制御システム400の機能構成の一例を示す図である。この
図22に示す連続体ロボット制御システム400は、
図21に示す連続体ロボット410、連続体ロボット制御装置420、入力装置430、及び、入力装置440を有して構成されている。
【0203】
運動学演算部421は、入力装置430及び入力装置440のそれぞれから、第1の湾曲可能部312-1から第Nの湾曲可能部312-Nまでの目標湾曲角度θnref及び目標旋回角度ζnref(n=1,2,…,N)の入力を受け付けて、第3の実施形態と同様に運動学モデルを用いて、各湾曲可能部の駆動量lknb及びlkncを演算する。
【0204】
補償量演算部422は、入力装置430及び入力装置440のそれぞれから、第1の湾曲可能部312-1から第Nの湾曲可能部312-Nまでの目標湾曲角度θnref及び目標旋回角度ζnrefの入力を受け付けて、各湾曲可能部の補償量lenb及びlencを演算する。この際、補償量演算部422は、第2の実施形態と同様に湾曲可能部間の力とモーメントの連成を考慮した弾性ワイヤ駆動モデルと反復計算を用いて伸縮量Δlna,Δlnb及びΔlncを算出し、当該伸縮量から補償量lenb及びlencを演算する。
【0205】
加算部423は、運動学演算部421で算出された駆動量lknb及びlkncと補償量演算部422で算出された補償量lenb及びlencとをそれぞれ加算して、駆動制御量lpnb及びlpncを演算する。即ち、加算部423は、運動学演算部421で算出された駆動量lknb及びlkncのそれぞれを補償量演算部422で算出された補償量lenb及びlencで補償する処理を行って、ワイヤnbの駆動制御量lpnb及びワイヤncの駆動制御量lpncを算出する。また、位置制御部424は、連続体ロボット410(より具体的には、アクチュエータ411b及び411c)に対して駆動制御量lpnbに基づく駆動指令τnb及び駆動制御量lpncに基づく駆動指令τncを出力する。ここで、本実施形態においては、加算部423及び位置制御部424は、ワイヤnbを駆動制御する駆動制御量lpnb及びワイヤncを駆動制御する駆動制御量lpncを設定する設定手段を構成する。
【0206】
第4の実施形態によれば、立体的に湾曲可能な複数の湾曲可能部412を有する連続体ロボット410においても、ワイヤの変形に起因する駆動量lknb及びlkncの誤差を補償することができる。これにより、湾曲可能部412の目標姿勢と実際の姿勢との誤差を減少させることができ、その結果、体内等の経路と湾曲可能部との接触リスクの低減を実現することができる。
【0207】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、同じ湾曲可能部に係る複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量に基づいて算出した補償量を用いて、各ワイヤの駆動量を補償することができる。
【0208】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0209】
上述した第1~第4の実施形態では、一定の目標角度が与えられるときにワイヤの伸縮を考慮する駆動制御量を求める制御系を提示するものであった。第5の実施形態は、湾曲可能部の遠位端の長手方向の移動量に依存して目標角度(例えば、目標湾曲角度)が変化する目標軌道が与えられるとき、軌道に沿うように湾曲可能部の姿勢を自動的に制御する形態である。
【0210】
また、上述した第1~第4の実施形態における連続体ロボットでは、湾曲可能部の遠位端の位置はワイヤ駆動量に依存するため、目標軌道に追従するときの目標角度は、ワイヤ駆動量に依存することになる。このとき、上述した第1~第4の実施形態における制御系を用いてワイヤ駆動量を直接求めることはできない。なぜならば、上述した第1~第4の実施形態における制御系は、駆動量を求めるために目標角度を定める必要があるからである。そこで、第5の実施形態における制御系では、目標角度とワイヤ駆動量とが一定値に収束するまで更新を繰り返す反復計算により駆動制御量を求める。具体的に、第5の実施形態では、まず、目標角度の候補値を入力し、第1の実施形態における制御系を用いてワイヤ駆動量の候補値を演算する。次に、駆動量の候補値に対応する遠位端位置を演算し、遠位端位置と目標軌道から目標角度の候補値を更新する。そして、駆動量の候補値が収束するまでこの演算を反復する。
【0211】
<5-1.モデリング>
図23は、本発明の第5の実施形態に係る連続体ロボット制御システム500の外観構成の一例を示す図である。この
図23に示す連続体ロボット制御システム500は、
図1に示す長尺部111及び湾曲可能部112、基台部511、リニアガイド512、及び、位置検出器513を有して構成されている。
【0212】
第5の実施形態における連続体ロボットは、第1の実施形態と同様に、1つの湾曲可能部112を有して構成されている、
図1に示す連続体ロボット110である。基台部511は、リニアガイド512に固定されており、基台部511を前後に押し引きすることによって、第5の実施形態における連続体ロボット110がリニアガイド512に沿って前後進するようになっている。リニアガイド512には、リニアガイド512の移動量z
bを計測する位置検出器513が取り付けられている。このリニアガイド512の移動量z
bは、位置検出器513から、後述する
図25の連続体ロボット制御装置520に入力される。また、リニアガイド512の駆動前に、上位装置(不図示)から後述する
図25の連続体ロボット制御装置520に対して、目標湾曲角度軌道Θ(z
t)が入力される。本実施形態において、目標軌道Θ(z
t)は、湾曲可能部112の遠位端1126の移動量z
tの関数とする。
【0213】
<5-2.制御系>
第5の実施形態における制御系は、遠位端1226の湾曲角度θ1を目標軌道Θ(zt)に一致させる駆動制御量lp1bを求める。このとき、駆動制御量lp1bは、目標軌道Θ(zt)の関数となるため、第1の実施形態に示すように、目標湾曲角度θ1refを定数として駆動制御量lp1bを求めることはできない。そこで、第5の実施形態では、反復計算により駆動制御量lp1bを求める。まず、湾曲可能部112の遠位端1126の移動量ztを演算する方法を示す。
【0214】
図24は、本発明の第5の実施形態を示し、
図23に示す湾曲可能部112における運動学モデルの一例を示す図である。この
図24に示すように、湾曲可能部112の遠位端1126と各ワイヤガイドの中心を結ぶ軸の長さをl
1dとすると、このl
1dは、駆動制御量l
p1bを用いて、以下の(61)式で表される。
【0215】
【0216】
したがって、湾曲可能部112の遠位端1126の移動量ztは、リニアガイド512の移動量zbを用いて、以下の(62)式で表される。
【0217】
【0218】
次に、第5の実施形態に係る連続体ロボット制御システム500の機能構成について説明を行う。
図25は、本発明の第5の実施形態に係る連続体ロボット制御システム500の機能構成の一例を示す図である。この
図25に示す連続体ロボット制御システム500は、
図1に示す連続体ロボット110、連続体ロボット制御装置520、及び、位置検出器513を有して構成されている。
【0219】
連続体ロボット制御装置520は、遠位端位置演算部521、目標角度更新部522、運動学演算部523、補償量演算部524、加算部525、収束判定部526、出力切換部527、及び、位置制御部528を有して構成されている。
【0220】
遠位端位置演算部521は、リニアガイド512の移動量(連続体ロボット110の長手方向の移動量)zbとワイヤ1b(所定ワイヤ)の駆動制御量における第1の駆動制御量候補値lp1b_prevとの入力に応じて、湾曲可能部112の遠位端1126の移動量ztを演算する第3の演算手段である。具体的に、遠位端位置演算部521は、(62)式を用いて湾曲可能部112の遠位端1126の移動量ztを算出する。
【0221】
目標角度更新部522は、遠位端位置演算部521からの遠位端1126の移動量ztと上述した上位装置(不図示)からの目標湾曲角度軌道Θ(zt)との入力に応じて、移動量ztに対応する目標湾曲角度θ1refを更新する。
【0222】
運動学演算部523は、第1の実施形態と同様に、目標角度更新部522からの目標湾曲角度θ1refの入力に応じて、ワイヤ1bの駆動量lk1bを演算する。また、補償量演算部524は、第1の実施形態と同様に、目標角度更新部522からの目標湾曲角度θ1refの入力に応じて、ワイヤ1bの補償量le1bを演算する。
【0223】
加算部525は、運動学演算部523で算出された駆動量lk1bと、補償量演算部524で算出された補償量le1bとを加算して、ワイヤ1bの駆動制御量における第2の駆動制御量候補値lp1b_nextを算出する。収束判定部526は、第2の駆動制御量候補値lp1b_nextが一定値に収束しているか否かを判定する。そして、収束判定部526は、第2の駆動制御量候補値lp1b_nextが一定値に収束していると判定した場合、出力切換部527に対して、第2の駆動制御量候補値lp1b_nextを駆動制御量lp1bとして位置制御部528に出力させる。また、収束判定部526は、第2の駆動制御量候補値lp1b_nextが一定値に収束していないと判定した場合、出力切換部527に対して、第2の駆動制御量候補値lp1b_nextを第1の駆動制御量候補値lp1b_prevとして遠位端位置演算部521に出力させ、反復計算を再度行う。また、位置制御部528は、第1の実施形態と同様に、連続体ロボット110(より具体的には、アクチュエータ113)に対して駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1bを出力する。ここで、本実施形態においては、加算部525、収束判定部526、出力切換部527及び位置制御部528は、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1bを設定する設定手段を構成する。
【0224】
なお、本実施形態では、1つの湾曲可能部112を有する連続体ロボット110に対して制御を行う制御系を示したが、例えば立体的に湾曲可能な複数の湾曲可能部412を有する連続体ロボット410に対しても同様に適用可能である。
【0225】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第6の実施形態の説明において、上述した第1~第5の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1~第5の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0226】
第6の実施形態は、外皮構造や術具の挿通により、湾曲可能部の剛性が変化する連続体ロボットを適用する形態である。具体的に、第6の実施形態における連続体ロボットは、背景技術の欄で説明した軟性内視鏡として用いることが好適である。このような連続体ロボットでは、例えば当該連続体ロボットが体内の組織と接触しても組織を傷つけないように、連続体ロボットの表面を滑らかな外皮で覆うことが望ましい。このとき、湾曲可能部とともに外皮も湾曲駆動させる必要があるため、外皮を持たない連続体ロボットと比べて大きな張力でワイヤを駆動する必要がある。また、軟性内視鏡の中には、病変の組織を採取する際に用いる鉗子などの術具を挿通するための中空構造を備えるものがある。そして、術具を挿通した状態で連続体ロボットの湾曲可能部を駆動するためには、術具も湾曲させる必要があるため、術具を挿通していないときと比べて大きなワイヤ張力が要求される。このように、外皮や術具の有無により、湾曲可能部の剛性は変化する。この点、上述した第1~第5の実施形態の制御系では、ワイヤの伸縮量を求める際にワイヤの剛性のみを考慮するため、外皮や術具の有無により湾曲可能部の剛性が変化してしまうと角度誤差を精度良く補償できない。そこで、第6の実施形態では、湾曲可能部の剛性を変数として指定可能な制御系の実施形態を示す。
【0227】
<6-1.モデリング>
図26は、本発明の第6の実施形態で用いる連続体ロボット610の概略構成の一例を示す図である。具体的に、
図26は、第6の実施形態で用いる連続体ロボット610を、湾曲可能部612の長手方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。なお、本実施形態の連続体ロボット610は、
図14に示す第3の実施形態の連続体ロボット310と同様に、立体的に湾曲可能である。なお、
図26に示す連続体ロボット610は、
図14に示す第3の実施形態の連続体ロボット310と同様に、複数のワイヤ1a,1b及び1cを有しているとともに、
図26では不図示であるが、
図14に示すワイヤ1aと接続する固定部311a、ワイヤ1bと接続するアクチュエータ311b、及び、ワイヤ1cと接続するアクチュエータ311cを有して構成されている。
【0228】
図26(a)に示すように、本実施形態の連続体ロボット610は、長尺部611及び湾曲可能部612を含み構成されている。また、湾曲可能部612には、複数のワイヤガイド613が設けられている。さらに、長尺部611及び湾曲可能部612は、円筒状の中空部614を備えており、長尺部611の近位端から湾曲可能部612の遠位端まで、術具616を挿通することが可能となっている。また、本実施形態の連続体ロボット610は、湾曲可能部612の側面と先端及び中空部614を覆う外皮615を備えている。
【0229】
外皮615の近位端は、長尺部611の遠位端に固定されているため、
図26(b)に示すように、湾曲可能部612が湾曲駆動されると、外皮615の外側面は伸長し、外皮615の内側面は圧縮される。また、術具616は、湾曲可能部612に沿って湾曲される。そのため、上述した第1~第5の実施形態の連続体ロボットと比べて、湾曲可能部612の曲げ剛性が増加する。
【0230】
本実施形態では、以下に示す仮定13及び仮定14を前提とし、外皮615と術具616の曲げ剛性を考慮する弾性ワイヤ駆動モデルを導出する。
[仮定13]:外皮615と術具616の曲げモーメントの大きさは、湾曲可能部612の湾曲角度に比例する。
[仮定14]:外皮615と術具616の曲げモーメントの回転軸は、Y2軸と平行である。
【0231】
仮定13から、外皮615の曲げ剛性をkmc、術具616の曲げ剛性をkmtとすると、湾曲可能部612の遠位端のY2軸まわりのモーメントのつり合いは、外皮615と術具616の曲げモーメントを表す項を(54)式に追加した、以下の(63)式で表される。
【0232】
【0233】
また、仮定14から、X2軸まわりのモーメントのつり合いは、外皮615と術具616の剛性の影響を受けないため、(55)式は、本実施形態の連続体ロボット610においても妥当である。なお、外皮615の曲げ剛性kmcと術具616の曲げ剛性kmtは、実験により同定してもよく、また、解析的に導出してもよい。
【0234】
<6-2.制御系>
第6の実施形態では、(63)式を用いて、第3の実施形態と同様の反復計算を行うことで、外皮615と術具616の剛性を考慮した各ワイヤの伸縮量を導出する。
【0235】
図27は、本発明の第6の実施形態に係る連続体ロボット制御システム600の機能構成の一例を示す図である。この
図27において、
図16に示す第3の実施形態の構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。この
図27に示す連続体ロボット制御システム600は、
図26に示す連続体ロボット610、連続体ロボット制御装置620、入力装置630、入力装置640、及び、入力装置650を有して構成されている。
【0236】
連続体ロボット制御装置620は、運動学演算部321、補償量演算部622、加算部323、及び、位置制御部324を有して構成されている。
【0237】
補償量演算部622は、入力装置630から入力された湾曲可能部612の目標湾曲角度θ
1refと、入力装置640から入力された湾曲可能部612の目標旋回角度ζ
1refと、入力装置630から入力された外皮615の曲げ剛性k
mc及び術具616の曲げ剛性k
mtとに基づいて、ワイヤ1b及び1cごとに補償量l
e1b及びl
e1cを演算する。なお、本実施形態では、外皮615の曲げ剛性k
mcと術具616の曲げ剛性k
mtが一定であると仮定するが、剛性が湾曲角度や旋回角度に依存する非線形を有するときには、様々な湾曲角度と旋回角度に対応する剛性を施術の前に予め記憶装置に記憶しておき、術中は目標湾曲角度と目標旋回角度に応じて対応する剛性を読み出して用いてもよい。また、外皮615の曲げ剛性k
mcと術具616の曲げ剛性k
mtを術者が直接入力してもよい。なお、運動学演算部321、加算部323及び位置制御部324は、
図16に示す第3の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0238】
図28は、本発明の第6の実施形態を示し、
図27に示す補償量演算部622の機能構成の一例を示す図である。この
図28において、
図27に示す構成及び
図17に示す第3の実施形態の構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。この
図28に示す補償量演算部622は、伸縮量更新部6221、収束判定部3222、出力切換部3223、及び、減算部3224を含み構成されている。
【0239】
伸縮量更新部6221は、目標湾曲角度θ
1ref及び目標旋回角度ζ
1refと、外皮615の曲げ剛性k
mc及び術具616の曲げ剛性k
mtと、各ワイヤ1a,1b及び1cの伸縮量における第1の伸縮量候補値Δl
1a_prev,Δl
1b_prev及びΔl
1c_prevとの入力に応じて、第2の伸縮量候補値Δl
1a_next,Δl
1b_next及びΔl
1c_nextに更新する。なお、収束判定部3222、出力切換部3223及び減算部3224は、
図17に示す第3の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0240】
図29は、本発明の第6の実施形態を示し、
図28に示す伸縮量更新部6221の機能構成の一例を示す図である。この
図29において、
図28に示す構成及び
図18に示す第3の実施形態の構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。この
図29に示す伸縮量更新部6221は、ワイヤ長演算部32211、モーメント演算部32212、力演算部62213、及び、伸縮量演算部32214を含み構成されている。
【0241】
力演算部62213は、複数のワイヤ1a,1b及び1cにおける曲げモーメントM
1a1,M
1b1及びM
1c1の入力に加えて、外皮615の曲げ剛性k
mc及び術具616の曲げ剛性k
mtの入力に応じて、力のつり合いの(53)式と、モーメントのつり合いの(55)式、(63)式を用いて、ワイヤ1a,1b及び1cのそれぞれの張力を示す力f
1a,f
1b及びf
1cを演算する。なお、ワイヤ長演算部32211、モーメント演算部32212及び伸縮量演算部32214は、
図18に示す第3の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0242】
また、本実施形態では、(63)式に示すように、外皮615の曲げ剛性kmcと術具616の曲げ剛性kmtを含むモデルを導出したが、(10)式と(57)式のワイヤの曲げ剛性kmを、外皮615や術具616の剛性まで考慮した剛性kmeで置き換えた近似式を用いて伸縮量を演算してもよい。このとき、剛性kmeは、実験により同定してもよいし、或いは、以下の(64)式に示すように、外皮615の曲げ剛性kmcや術具616の曲げ剛性kmtをワイヤの本数nで除した値をワイヤの曲げ剛性kmに加算してもよい。
【0243】
【0244】
また、本実施形態では、連続体ロボット制御装置620を、立体的に湾曲可能な湾曲可能部612を1つ備える連続体ロボット610に対して適用したが、第1の実施形態のように平面上を湾曲する連続体ロボット110や、第4の実施形態のように複数の湾曲可能部312を備える連続体ロボット410に対しても、適用可能である。
【0245】
<6-3.シミュレーション>
外皮615を備え、かつ術具616が挿通された連続体ロボット610に対して、
図27~
図29に示す第6の実施形態における制御系を適用する。なお、外皮615の曲げ剛性k
mcと術具616の曲げ剛性k
mtは、どちらも0.33 Nm/radとする。
【0246】
図30は、本発明の第6の実施形態を示し、目標旋回角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
図30では、
図20と同様に、横軸に目標旋回角度(Reference rotation angle)ζ
1refをとり、縦軸に湾曲角度の誤差(Bending angle error)をとった特性図を示している。
【0247】
具体的に、
図30において、一番上に示された破線は、運動学モデルを用いて演算した駆動量l
k1b及びl
k1cを制御入力として用いた場合の比較例を示しており、この場合は、目標旋回角度ζ
1refに依存して湾曲可能部612の大きな角度誤差が生じてしまうことがわかる。また、中央に示された点線は、第3の実施形態に係る連続体ロボット制御装置320を用いて演算した駆動制御量l
p1b_wo及びl
p1c_woを制御入力として用いた場合の比較例を示している。第3の実施形態に係る連続体ロボット制御装置320は、外皮615と術具616に起因する湾曲可能部612の剛性の増加を考慮していないため、角度誤差を完全に補償することができないことがわかる。一方、一番下に示された実線は、本実施形態に係る連続体ロボット制御装置620を用いて演算した駆動制御量l
p1b_w及びl
p1_wcを制御入力として用いるときの応答を表しており、目標旋回角度ζ
1refによらずに湾曲可能部612の角度誤差が常に0となることがわかる。以上のことから、外皮615を備え、かつ術具616が挿通された連続体ロボット610に対して、
図27~
図29に示す第6の実施形態における制御系を適用することにより、連続体ロボット610の姿勢誤差を低減できることがわかる。
【0248】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第7の実施形態の説明において、上述した第1~第6の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1~第6の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0249】
図14に示す第3の実施形態の連続体ロボット310は、3本のワイヤ1a,1b及び1cのうちの2つのワイヤ1b及び1cにそれぞれアクチュエータ311b及び311cを接続し、湾曲可能部312を立体的に湾曲させている。そのため、2つのアクチュエータ311b及び311cのうちの一方が故障により動作しなくなると、湾曲可能部312は平面上を湾曲することしかできなくなってしまい、組織と連続体ロボット310が接触するリスクが増加する。これに対して、全てのワイヤ1a,1b及び1cにアクチュエータを接続すれば、例え1つのアクチュエータが故障しても第3の実施形態と同様の制御系により、立体的な湾曲動作が可能となるため、連続体ロボット制御システムに冗長性を持たせることができる。そこで、第7の実施形態では、3本の全てのワイヤ1a,1b及び1cを駆動可能な連続体ロボットに適用可能な制御系の実施形態を示す。
【0250】
<7-1.モデリング>
本実施形態で用いる連続体ロボットは、
図14に示すワイヤ1aが固定部311aではなく、アクチュエータ311a' に接続される点が第3の実施形態に係る連続体ロボット310と異なる。そして、
図14に示すワイヤ1aが固定部311aではなく、アクチュエータ311a' に接続される連続体ロボットを、第7の実施形態で用いる「連続体ロボット710」として記載する。
【0251】
この連続体ロボット710において、アクチュエータ311a' 、311b及び311cを用いて、それぞれ、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cを同じ方向に同じ距離だけ駆動すると、湾曲可能部312に相当する湾曲可能部の湾曲角度と旋回角度とが一定のまま中心軸の長さが増減する。したがって、本実施形態の連続体ロボット710は、湾曲角度θ1と旋回角度ζ1に加えて湾曲可能部の中心軸の長さl1dcの長さを制御することができる。
【0252】
本実施形態で用いる連続体ロボット710の湾曲可能部の構成は、第3の実施形態で用いる湾曲可能部312と同一の構成であるため、
図15を用いて連続体ロボット710の運動学モデルと弾性ワイヤモデルを導出する。連続体ロボット710の湾曲可能部の湾曲角度がθ
1、旋回角度がζ
1のとき、W
1Z
1平面における原点O
1とワイヤ1bとの距離R
oaは、以下の(65)式で表される。
【0253】
【0254】
したがって、中心軸の長さl1dcと、長さl1a1との間には、以下の(66)式が成立する。
【0255】
【0256】
また、(45)式と(46)式より、長さl1b1と長さl1c1は、長さl1dcを用いて、それぞれ、(67)式と(68)式で表される。
【0257】
【0258】
また、ワイヤ1a、1b及び1cが長手方向に剛であると仮定すると、それぞれのワイヤ長さl1a1、l1b1及びl1c1は、運動学モデルから導出する駆動量lk1a、lk1b及びlk1cと長さl10との和で表されるため、駆動量lk1a、lk1b及びlk1cは、それぞれ、以下の(69)式、(70)式及び(71)式で表される。
【0259】
【0260】
次に、ワイヤ1a、1b及び1cが長手方向に伸縮すると仮定して、それぞれの伸縮量Δl1a、Δl1b及びΔl1cを求める。(9)式と(56)式より、行列Ke及びベクトルf,Δl1をそれぞれ以下の(72)式及び(73)式と定義すると、Δl1は、以下の(74)式で表される。
【0261】
【0262】
また、(10)式、(53)式~(55)式、(57)式より、行列A及びベクトルm1をそれぞれ以下の(75)式及び(76)式と定義すると、以下の(77)式が成り立つ。
【0263】
【0264】
したがって、(74)式と(77)式より、ワイヤ伸縮量Δl1は、以下の(78)式で表される。
【0265】
【0266】
<7-2.制御系>
第7の実施形態では、各アクチュエータ311a' 、311b及び311cが自身に接続されたそれぞれのワイヤ1a、1b及び1cの伸縮を補償するように、各ワイヤ1a、1b及び1cの駆動制御量lp1a、lp1b及びlp1cを演算する。このとき、各ワイヤ1a、1b及び1cの駆動制御量lp1a、lp1b及びlp1cは、それぞれ、以下の(79)式~(81)式で与えられる。
【0267】
【0268】
したがって、各ワイヤ1a、1b及び1cの補償量le1a、le1b及びle1cは、それぞれ、以下の(82)式~(84)式で表される。
【0269】
【0270】
図31は、本発明の第7の実施形態に係る連続体ロボット制御システム700の機能構成の一例を示す図である。この
図31に示す連続体ロボット制御システム700は、連続体ロボット710、連続体ロボット制御装置720、入力装置730、入力装置740、及び、入力装置750を有して構成されている。
【0271】
連続体ロボット制御装置720は、入力装置730から入力された連続体ロボット710の湾曲可能部の目標湾曲角度θ1ref、入力装置740から入力された連続体ロボット710の湾曲可能部の目標旋回角度ζ1ref、及び、入力装置750から入力された中心軸の長さl1dcに基づいて、ワイヤ1aを駆動制御する駆動制御量lp1a、ワイヤ1bを駆動制御する駆動制御量lp1b及びワイヤ1cを駆動制御する駆動制御量lp1cを設定し、連続体ロボット710(より具体的には、アクチュエータ311a' 、311b及び311c)に対して、駆動制御量lp1aに基づく駆動指令τ1a、駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1b及び駆動制御量lp1cに基づく駆動指令τ1cを出力する。
【0272】
この
図31に示す連続体ロボット制御装置720は、運動学演算部721、補償量演算部722、加算部723、及び、位置制御部724を有して構成されている。
【0273】
運動学演算部721は、入力装置730から入力された連続体ロボット710の湾曲可能部の目標湾曲角度θ1ref、入力装置740から入力された連続体ロボット710の湾曲可能部の目標旋回角度ζ1ref、及び、入力装置750から入力された中心軸の長さl1dcに基づいて、(69)式~(71)式を用いて、運動学モデルに基づく駆動量lk1a、lk1b及びlk1cを演算する。
【0274】
補償量演算部722は、各ワイヤ1a、1b及び1cごとに、(78)式を用いて伸縮量Δl1a、Δl1b及びΔl1cを演算し、さらに、(82)式~(84)式を用いて補償量le1a、le1b及びle1cを演算する。なお、(78)式の右辺から明らかなように、ワイヤ伸縮量Δl1は、湾曲角度θ1、旋回角度ζ1、中心軸長さl1dcから一意に決まる。そのため、本実施形態の補償量演算部722は、第1の実施形態と同様に反復計算を用いることなく伸縮量Δl1a、Δl1b及びΔl1cを演算することができる。
【0275】
加算部723は、各ワイヤ1a、1b及び1cごとに、運動学演算部721で算出された駆動量lk1a、lk1b及びlk1cと補償量演算部722で算出された補償量le1a、le1b及びle1cとをそれぞれ加算して、駆動制御量lp1a、lp1b、lp1cを演算する。
【0276】
位置制御部724は、連続体ロボット710(より具体的には、アクチュエータ311a' 、311b及び311c)に対して、駆動制御量lp1aに基づく駆動指令τ1a、駆動制御量lp1bに基づく駆動指令τ1b及び駆動制御量lp1cに基づく駆動指令τ1cを出力する。
【0277】
なお、本実施形態では、運動学演算部721と補償量演算部722に対して入力装置750から入力する湾曲可能部の長さとして中心軸の長さl1dcを用いるが、例えば、ワイヤ長l1a1、l1b1及びl1c1のいずれかを入力してもよい。また、本実施形態では、連続体ロボット制御装置720を、立体的に湾曲可能な湾曲可能部を1つ備える連続体ロボット710に対して適用したが、第1の実施形態のように平面上を湾曲する連続体ロボット110や、第4の実施形態のように複数の湾曲可能部312を備える連続体ロボット410に対しても、適用可能である。
【0278】
<7-3.シミュレーション>
3本の全てのワイヤ1a、1b及び1cを駆動可能な連続体ロボット710に対して、第7の実施形態における制御系を適用する。なお、本実施形態では、長さl1dcと長さl10をどちらも10mmとする。
【0279】
図32は、本発明の第7の実施形態を示し、目標湾曲角度と駆動制御量l
p1a、l
p1b及びl
p1cとの関係を示す特性図である。
図32では、横軸に目標湾曲角度(Reference bending angle)θ
1refをとり、縦軸に駆動制御量(Wire driving distance)をとった特性図を示している。
【0280】
具体的に、
図32では、目標旋回角度ζ
1refを0(deg)とし、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)から90(deg)まで変化させた場合の駆動制御量l
p1a、l
p1b及びl
p1cを、それぞれ実線、点線及び破線を用いて表している。第7の実施形態に係る連続体ロボット制御装置720は、3本のワイヤ1a、1b及び1cを駆動するため、
図32に示すように、目標湾曲角度が変化するとワイヤ1aを含む全てのワイヤ1a、1b及び1cの駆動制御量が増減する。また、本実施形態に係る連続体ロボット制御装置720は、中心軸の長さが常にl
1dcとなるように、駆動制御量l
p1a、l
p1b及びl
p1cを演算するため、目標湾曲角度θ
1refが正の場合には、中心軸に対して内側に位置するワイヤ1aの駆動方向はワイヤを引く方向(負の方向)となり、また、中心軸に対して外側に位置するワイヤ1b及び1cの駆動方向はワイヤを押す方向(正の方向)となることがわかる。
【0281】
図33は、本発明の第7の実施形態を示し、目標湾曲角度と湾曲角度の誤差との関係を示す特性図である。
図33では、横軸に目標湾曲角度(Reference bending angle)θ
1refをとり、縦軸に湾曲角度の誤差をとった特性図を示している。
【0282】
具体的に、
図33では、目標旋回角度ζ
1refを0(deg)とし、目標湾曲角度θ
1refを-90(deg)から90(deg)まで変化させた場合の湾曲角度の誤差を表している。
図33において、破線は、運動学モデルを用いて演算した駆動量l
k1a、l
k1b及びl
k1cを制御入力として用いた場合の比較例を示しており、この場合は大きな角度誤差が生じてしまうことがわかる。また、実線は、第7の実施形態の連続体ロボット制御装置720を用いて演算した駆動制御量l
p1a、l
p1b及びl
p1cを制御入力として用いた場合の角度誤差を表しており、連続体ロボット710の湾曲可能部の角度誤差が常に0となることがわかる。以上のことから、3本の全てのワイヤ1a、1b及び1cを駆動可能な連続体ロボット710に対して、
図31に示す第7の実施形態における制御系を適用することにより、連続体ロボット710の姿勢誤差を低減できることがわかる。
【0283】
(その他の実施形態)
上述した第1~第7の実施形態では、ワイヤとワイヤガイド、及びワイヤと長尺部の摩擦を考慮していないが、摩擦力が既知のときにはこれを考慮して伸縮量を演算してもよい。具体的には、(9)式の左辺に摩擦力fr1a及びfr1bを加えた、以下の(85)式を、(9)式の代わりに用いて、伸縮量を演算する形態をとり得る。
【0284】
【0285】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、同じ湾曲可能部に係る複数のワイヤのうちのいずれかのワイヤの伸縮量に基づいて算出した補償量を用いて、各ワイヤの駆動量を補償することができる。
【0286】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明に含まれる。
【0287】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0288】
100:連続体ロボット制御システム、110:連続体ロボット、120:連続体ロボット制御装置、121:運動学演算部、122:補償量演算部、123:加算部、124:位置制御部、130:入力装置、θ1ref:湾曲可能部の目標湾曲角度、lk1b:ワイヤ1bの駆動量、le1b:ワイヤ1bの補償量、lp1b:ワイヤ1bの駆動制御量、τ1b:駆動制御量lp1bに基づく駆動指令