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  • 特許-汚泥処理方法および汚泥処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】汚泥処理方法および汚泥処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20221128BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20221128BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20221128BHJP
【FI】
C02F11/00 B
C02F11/10
C02F11/14 ZAB
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019021988
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020127925
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】奥村 諭
(72)【発明者】
【氏名】上原 慧
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】森 淳一
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-323299(JP,A)
【文献】特開2018-199101(JP,A)
【文献】特開2004-155620(JP,A)
【文献】特開2015-128740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52-56、3/00-34、9/00-14、11/00-20
B09B 3/00-80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる、析出工程と、
上記析出工程を経た原汚泥に無機凝集剤およびpH調整剤を添加し、上記不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる混和工程と、
上記混和工程を経た後の汚泥を脱水する、脱水工程と、
を含む、汚泥処理方法。
【請求項2】
上記脱水工程の後に行われる、脱水後の汚泥の燃焼工程をさらに含む汚泥処理方法であって、
上記析出工程において導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、上記燃焼工程において生じた二酸化炭素含有ガスである、請求項1に記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
上記析出工程において導入される二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素の濃度は、上記二酸化炭素含有ガスの全体積を100体積%とすると、10体積%以上である、請求項1または2に記載の汚泥処理方法。
【請求項4】
上記析出工程によって、上記原汚泥はpH7.0~8.0に調節される、請求項1~3のいずれか1項に記載の汚泥処理方法。
【請求項5】
上記析出工程に供される原汚泥は、無機成分を含んでおり、
上記無機成分の少なくとも一部は、その炭酸塩が水に対して不溶性であり、
上記析出工程に供される原汚泥の重量(水分を含む)を100重量%とすると、上記無機成分の含有率は、0.07重量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の汚泥処理方法。
【請求項6】
その炭酸塩が水に対して不溶性である上記無機成分は、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛からなる群より選択される1種類以上である、請求項5に記載の汚泥処理方法。
【請求項7】
導入装置を通じて原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる、析出装置と、
析出装置で処理された原汚泥に無機凝集剤およびpH調整剤を添加し、上記不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる、混和装置と、
上記混和装置によって処理された後の汚泥を脱水する、脱水装置と、
を備え、
上記析出装置と上記混和装置とは異なる装置である、汚泥処理装置。
【請求項8】
上記脱水装置によって脱水された汚泥を燃焼させる、燃焼装置をさらに備えており、
上記導入装置により導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、上記燃焼装置において発生する二酸化炭素含有ガスである、請求項7に記載の汚泥処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理方法および汚泥処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水や廃水を処理する際に固形分として分離される汚泥には、依然として多くの水分が含まれているので、汚泥処理に際しては汚泥の脱水が行われる。しかし、汚泥はその物理的・化学的性質のために、そのまま機械的に脱水しようとしても、通常は上手くいかない。そのため、脱水前の前処理として、種々の薬剤を添加する場合がある。
【0003】
例えば、非特許文献1は、汚泥を脱水するための前処理として、無機凝集剤およびカルシウム剤を添加することを開示している。無機凝集剤としては、一般的には多価金属塩(鉄塩、アルミニウム塩など)が使用される。無機凝集剤には、汚泥に多く含まれている負に帯電したコロイド粒子を、中和して凝集させる効果がある。カルシウム剤としては、主に消石灰(Ca(OH))が使用される。カルシウム剤は、化学的な脱水補助効果と、物理的な脱水補助効果とを有している。前者の例としては、水中でイオン化してコロイド粒子を凝集させる効果がある。後者の例としては、汚泥コロイド粒子の間で支持体となり液体が流通できる間隙を維持する効果や、フロック形成の核となる効果が挙げられる。
【0004】
また、特許文献1は、消化汚泥に二酸化炭素を注入して、消化汚泥のpHを無機凝集剤の使用に好適な範囲となるように調節する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-159216号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】神村正樹(1973)「汚泥の濃縮・脱水における凝集剤の効果」『環境技術』環境技術研究会、第2巻第12号、919~927頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1のような前処理工程は薬剤の投入を必須とするため、そのためのコストが生じる。具体的には、上述した無機凝集剤およびカルシウム剤の購入コストが発生し、これらの存在は無視できない。
【0008】
また、特許文献1に記載の技術では、pH調整剤の購入コストは削減できるかもしれないが、汚泥処理における二酸化炭素ガスの使用方法には、依然として開発の余地が残されていた。
【0009】
本発明の一態様は、薬剤の購入コストが抑制された汚泥の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、汚泥の脱水工程の前処理において、汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入することにより、カルシウム剤の機能を代替させられることに想到し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の一態様に係る汚泥処理方法は、原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる、析出工程と;上記析出工程を経た原汚泥に無機凝集剤およびpH調整剤を添加し、上記不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる混和工程と;上記混和工程を経た後の汚泥を脱水する、脱水工程と;を含む。
【0012】
本発明の一態様に係る汚泥処理装置は、導入装置を通じて原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる、析出装置と;析出装置で処理された原汚泥と、無機凝集剤およびpH調整剤とを混合し、上記不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる、混和装置と;上記混和装置によって処理された後の汚泥を脱水する、脱水装置と;を備え、上記析出装置と上記混和装置とは異なる装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、薬剤の購入コストが抑制された汚泥の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法と、従来の汚泥処理方法とを比較して模式的に示す図である。(a)は従来技術における脱水工程の前処理、(b)は本発明の一実施形態における脱水工程の前処理を表している。
図2】本発明の一実施形態に係る汚泥処理装置を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法の処理の流れを表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。以下の各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0016】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0017】
〔本発明と従来技術との比較〕
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法と、従来の汚泥処理方法とを比較して模式的に示す図である。〔従来技術〕の欄で説明した通り、従来の汚泥処理方法では、(i)混和工程S2において、無機凝集剤、pH調整剤およびカルシウム剤を、混和装置2に投入し、(ii)その後、凝集工程S3において、高分子凝集剤を凝集装置3に投入していた(図1の(a))。ここで、カルシウム剤は、(i)フロック形成の核となる機能、および(ii)汚泥粒子間における支持体となり、水分の流通性を高める機能を果たす。
【0018】
一方、本発明の一態様における汚泥処理方法は、原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入する析出工程S1、その後、析出工程S1を経た原汚泥に、無機凝集剤及びpH調整剤を投入する混和工程S2、および任意構成で、混和工程S2を経た原汚泥に高分子凝集剤を添加する凝集工程S3を含む(図1の(b))。
【0019】
ここで、析出工程S1と混和工程S2とは、同時に実行されることはない。一例において、析出工程S1が行われる析出装置1と、混和工程S2が行われる混和装置2は、異なる装置である。あるいは、析出装置1と混和装置2とが同じ装置である場合でも、析出工程S1と混和工程S2とは同時に行われない(例えば、二酸化炭素含有ガスの導入を停止してから、無機凝集剤およびpH調整剤を投入する)。後述するように、析出工程S1と混和工程S2とでは、好適なpHが異なる。そのため、析出装置1と混和装置2は異なる装置とした方が好ましい。
【0020】
析出装置1には、導入装置1aを通じて、二酸化炭素含有ガスが導入される。すると、二酸化炭素との反応により、汚泥中の無機イオンの少なくとも一部が、不溶性の炭酸塩として析出する(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガンなど)。これらの炭酸塩は、フロック形成の核にもなるし、汚泥粒子間における支持体にもなる。つまり、カルシウム剤を投入した場合と同様の効果が得られる。
【0021】
このように、本発明の一態様に係る汚泥処理方法によれば、カルシウム剤の投入量を抑制することができる。それゆえ、従来と比較してカルシウム剤の購入コストを抑制することができる。
【0022】
なお、カルシウム剤の投入量が従来技術よりも抑制できているならば、本発明は奏効しているといえる。すなわち、本発明の一実施形態に係る方法においては、カルシウム剤の投入量をゼロにする必要性はない。
【0023】
〔汚泥処理装置〕
図2は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理装置を模式的に示す図である。以下、図2に基づいて、汚泥処理装置100に含まれる各部を説明する。図2に例示されている汚泥処理装置100には、析出装置1、混和装置2および脱水装置4が備えられており、析出装置1には導入装置1aを通じて二酸化炭素含有ガスが導入されるように構成されている。このような構成とすることで、汚泥処理装置100は、上述した本発明の効果(カルシウム剤の投入量の抑制)を奏することができる。
【0024】
また、汚泥処理装置100には、任意構成である凝集装置3、乾燥装置5、熱分解装置6、改質装置7、燃焼装置8、灰分分離装置9も備えられている。このような構成とすることで、汚泥処理装置100は、(i)汚泥処理中に発生する高濃度の二酸化炭素を含有するガスを析出工程S1に供給することができ、さらに、(ii)高濃度の水素を含む燃料気体を取り出すことができる。
【0025】
汚泥処理装置100に供給される汚泥は、特に限定されない。このような汚泥の例としては、下水汚泥に加えて、紙・パルプ産業、化学工業、食料品製造業などの産業に由来する有機汚泥、し尿処理汚泥、畜産業由来の有機汚泥などが挙げられる。以下では、下水汚泥を代表例に挙げて説明する。しかし本発明は、他の種類の汚泥にも応用可能である。
【0026】
下水汚泥の例としては、生汚泥、活性汚泥、消化汚泥を挙げることができる。
【0027】
[析出装置および導入装置、混和装置、凝集装置]
析出装置1では、導入装置1aを通じて原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる。このとき析出した不溶性炭酸塩は、混和工程S2におけるフロック形成の核となったり、脱水工程S4における汚泥粒子間における支持体となったりして、脱水助剤としての機能を果たす。不溶性炭酸塩を析出させた原汚泥は、混和装置2へと送られる。
【0028】
混和装置2では、原汚泥に無機凝集剤およびpH調整剤を添加し、不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる(不溶性炭酸塩を核とした汚泥フロックを形成させる)。
【0029】
混和装置2で処理された後の汚泥は、任意構成で、凝集装置3に送られてもよい。凝集装置3では、汚泥に高分子凝集剤を添加する。例えば、混和装置2で処理された後の汚泥を脱水装置に移送する配管内に、高分子凝集剤を導入するのであれば、凝集装置3を別途設ける必要はない。また、高分子凝集剤の添加自体も任意構成の工程であるので、凝集工程S3を省略してもよい。ただし、脱水効率を向上させる観点からは、凝集工程S3を設けて高分子凝集剤を添加することが好ましい。
【0030】
このように、析出装置1、混和装置2、(および任意で凝集装置3)での処理を経た原汚泥は、凝集されて凝集汚泥となる。得られた凝集汚泥は、脱水装置4に供給される。凝集汚泥を得る段階で分離された水分は、排水処理施設で適切に処理された後、排出路を通じて外部に排出されるか、あるいは再利用水として処理施設内で再利用してもよい。
【0031】
導入装置1aは、析出装置1内の原汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入する。このガスに含まれている二酸化炭素は、不溶性炭酸塩を析出させる機能を有している。その結果汚泥処理装置100は、カルシウム剤の投入量を抑制することができる。
【0032】
図2では、燃焼装置8において発生する二酸化炭素含有ガスを、導入装置1aを通じて析出装置1に導入している。しかし、導入装置1aを通じて析出装置1に導入される二酸化炭素含有ガスの出所は、特に限定されない。ただし、燃焼装置8において発生する二酸化炭素含有ガスを、導入装置1aを通じて析出装置1に導入する態様は、(i)汚泥処理装置100の設計および設置位置の自由度が高い点、ならびに(ii)本来は廃棄される二酸化炭素含有ガスを利用するのでコスト低減効果がさらに高まる点、において好ましい。なお、この効果を得るためには、燃焼装置8において発生する二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部が、析出装置1に導入されれば十分である。つまり、燃焼装置8において発生する二酸化炭素含有ガスの全てを析出装置1に導入する必要はない。
【0033】
また、図2では、灰分分離装置9で灰分を分離した後の酸化カルシウムを、析出装置1へと供給している。これは任意構成であるが、このような構成とすることにより、析出装置1に装置外から投入するカルシウム剤をさらに低減させることができる。
【0034】
導入装置1aを通じて析出装置1に導入される二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素の濃度は、二酸化炭素含有ガスの全体積を100体積%とすると、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。後述するように、汚泥処理装置100は、熱分解装置6、燃焼装置8および改質装置7の間で無機カルシウム化合物を循環させる構造であるため、燃焼装置8において高濃度の二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させることができる。この点において、燃焼装置8において発生する燃焼ガスの少なくとも一部を析出装置1に導入することが好ましい。
【0035】
(析出工程と混和工程における好適なpHの違い)
ここで、析出工程S1と混和工程S2における、好適なpHの違いについて説明する。析出工程S1において、不溶性炭酸塩を析出させるのに好適なpHは、7.0~8.0である。したがって、析出工程S1では、二酸化炭素含有ガスの導入によって、原汚泥のpHが7.0~8.0に調節されることが好ましい。一方、混和工程S2において、無機凝集剤の効果を得るために好ましいpHは、5.0~7.0(より好ましくは5.0~6.0)である。つまり、析出工程S1を経た原汚泥をそのまま混和工程S2に供することは、必ずしも最適な条件であるとは言えず、混和工程S2ではpH調整剤によって原汚泥のpHを変化させることが好ましい。
【0036】
したがって、本発明の一実施形態においては、析出工程S1と混和工程S2とを同時に実行しない。このような汚泥処理方法の一例としては、析出工程S1が行われる析出装置1と、混和工程S2が行われる混和装置2とを、異なる装置とする方法が挙げられる。他の例としては、析出装置1と混和装置2とは同じ装置であるが、析出工程S1と混和工程S2とは同時に行われない方法(例えば、二酸化炭素含有ガスの導入を停止してから、無機凝集剤およびpH調整剤を投入する方法)が挙げられる。連続的な汚泥処理が可能である(装置内のpHを工程ごとに変化させなくてよい)という観点からは、析出装置1と混和装置2とを別の装置とする態様が好ましい。
【0037】
カルシウム剤の投入量を抑制する効果を得るには、析出装置1に供給される汚泥中に、炭酸塩が水に対して不溶性である無機成分が含まれていることが好ましい。このような炭酸塩が水に対して不溶性である無機成分の含有率は、析出装置1に供される汚泥の重量(水分を含む)を100重量%として、0.07重量%以上が好ましく、0.24重量%以上がより好ましく、0.48重量%以上がさらに好ましい。また、炭酸塩が不溶性である無機成分の例としては、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛が挙げられる。これらの無機成分は、汚泥中にイオン形態にて存在することが一般的であるが、他の形態にて存在していてもよい。なお、汚泥に含まれる無機成分の全てが「炭酸塩が水に対して不溶性である無機成分」である必要はなく、その一部が「炭酸塩が水に対して不溶性である無機成分」であれば十分である。
【0038】
汚泥中にカルシウムが含まれている場合、析出した炭酸カルシウムは、上述したカルシウム剤としての機能に加え、後述する熱分解装置6、燃焼装置8および改質装置7を循環する無機カルシウム化合物としても機能することができる。つまり、汚泥中にカルシウムが含まれているならば、熱分解装置6、改質装置7および燃焼装置8において必要に応じて投入する無機カルシウム化合物の量を削減することができる。それゆえ、コストの観点から汚泥中にはカルシウムが含まれていることが望ましい。カルシウムの含有率は、析出装置1に供される汚泥の重量(水分を含む)を100重量%として、0.07重量%以上が好ましく、0.24重量%以上がより好ましく、0.48重量%以上がさらに好ましい。
【0039】
析出装置1は、原汚泥を凝集させて凝集汚泥を得られる装置であれば、特に限定されない。
【0040】
[脱水装置]
脱水装置4は、混和装置2または凝集装置3から供給される凝集汚泥から、水分を含む分離液を除去して脱水汚泥とする。得られた脱水汚泥は、乾燥装置5に供給される。凝集汚泥から除去された分離液は、排水処理施設で適切に処理された後、排出路を通じて外部に排出されるか、あるいは、再利用水として処理施設内で再利用してもよい。
【0041】
脱水装置4は、凝集汚泥から分離液を除去することができる装置であれば、特に限定されない。脱水装置4の具体例としては、加圧式脱水機(ベルトプレス、フィルタープレス、スクリュープレスなど)または機械的脱水機(遠心脱水機など)が挙げられる。
【0042】
[乾燥装置]
乾燥装置5は、脱水装置4から供給される脱水汚泥に含まれる水分の少なくとも一部を、水蒸気として蒸発させる。乾燥装置5によって生じた水蒸気のうち一部は、乾燥水蒸気として熱分解装置6に供給される。この乾燥水蒸気は、熱分解装置6に供給される乾燥汚泥の熱分解に用いられる。乾燥装置5によって生じた水蒸気の残部は、外部に排出される。
【0043】
さらに、乾燥装置5は、水分を除去した乾燥汚泥を熱分解装置6に供給する。必要に応じて、乾燥装置5は、乾燥汚泥の一部を燃焼装置8に供給してもよい。燃焼装置8に供給された乾燥汚泥は、熱源として燃焼される。
【0044】
乾燥装置5は、脱水汚泥を乾燥させて乾燥汚泥を得られる装置であれば、特に限定されない。また、乾燥装置5は任意で設けられる装置である。すなわち、脱水装置4で得られる脱水汚泥に含まれる水分量が十分に少ない場合には、乾燥装置5を設けない構成としてもよい。この場合、脱水装置4で得られた脱水汚泥は、熱分解装置6に供給される。
【0045】
[熱分解装置]
熱分解装置6は、乾燥装置5から供給される乾燥汚泥(または脱水装置4から供給される脱水汚泥)を、熱分解する。この熱分解は水蒸気の存在下で行われ、加熱温度は400℃~900℃(好ましくは600℃~800℃)であり、滞留時間は0.1時間~2時間(好ましくは0.5時間~1時間)である。必要に応じて、熱分解装置6に新たな無機カルシウム化合物を供給してもよい。
【0046】
熱分解装置6によって得られた熱分解生成物は、燃焼装置8に供給される。一方、熱分解装置6によって得られた熱分解ガスは、改質装置7に供給される。
【0047】
熱分解装置6は、乾燥汚泥(または脱水汚泥)を熱分解することができる装置であれば、特に限定されない。
【0048】
(熱分解ガスの生成)
熱分解装置6中では、下記に示す反応により熱分解が行われ、最終的に熱分解ガスが生成する。
【0049】
まず、乾燥汚泥(または脱水汚泥)は、下記式(1)に示す反応によって水蒸気の存在下で熱分解され、熱分解ガスおよび固体残渣に転換される:
乾燥汚泥(C,H,O,N,S) + HO → 熱分解ガス(H,CO,CO,C,HS,NH) + C(charcoal) + 灰分 …(1)。
【0050】
式(1)の反応によって生じる熱分解ガスには、水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、アンモニア(NH)、メタン(CH)、炭化水素系ガス(C;タール成分を含有する)、が主成分として含まれている。固体残渣には、炭(charcoal)および灰分が含まれている。この灰分とは、P,Si,Al,Fe,Mg,Ca,NaおよびKなどを含有する、化合物である。
【0051】
さらに下記式(2)に示すように、炭(charcoal)の一部は、水蒸気と反応して二酸化炭素および水素に転換される:
C(charcoal) + 2HO → CO + 2H …(2)。
【0052】
さらに下記式(3)に示すように、熱分解ガスに含まれる一酸化炭素は、水蒸気と反応して二酸化炭素に転換される:
CO + HO → CO+ H …(3)。
【0053】
(水素の濃縮)
熱分解ガスに含まれる硫化水素の大部分は、凝集工程において汚泥中に析出した無機カルシウム化合物(大部分は、加熱によって酸化カルシウムとなっている)と反応し、硫化カルシウムとして固定化される(下記式(4)を参照):
CaO + HS → CaS + HO …(4)。
【0054】
また、上記式(1)~(3)に示す反応によって発生した二酸化炭素は、酸化カルシウムと反応し、炭酸カルシウム(CaCO)として固定化される(下記式(5)を参照):
CaO + CO→ CaCO …(5)。
【0055】
式(4)に示すように、熱分解ガスに含まれる硫化水素の大部分は、硫化カルシウムとなって固定化されるので、結果的に熱分解ガス中の水素濃度が高まる。また、式(5)に示すように、熱分解ガス中の二酸化炭素のみが酸化カルシウムに吸収されるため、式(1)~(3)に示す反応において右向きの平衡移動が起こり、結果的に熱分解ガス中の水素濃度が高まる。
【0056】
(熱分解生成物)
熱分解装置6において生じる熱分解生成物には、式(1)の反応で生じた固体残渣である炭(charcoal)および灰分に加えて、無機カルシウム化合物(炭酸カルシウム、酸化カルシウムなど)が含まれている。熱分解生成物は、燃焼装置8に送られる。
【0057】
なお、汚泥処理装置100においては、(i)燃焼装置8から改質装置7へと酸化カルシウムが供給され、さらに、(ii)改質装置7から熱分解装置6へと酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムが供給される。このように、汚泥処理装置100は、熱分解装置6、燃焼装置8および改質装置7の間で、無機カルシウム化合物(酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム)を循環させる構造となっている。
【0058】
[改質装置]
改質装置7は、熱分解装置6から供給された熱分解ガスを水蒸気改質して、熱分解ガス中の水素濃度をさらに高める。こうして水素濃度がさらに高められた熱分解ガスは、冷却後、高濃度の水素を含むガスとして回収される。必要に応じて、改質装置7に新たな無機カルシウム化合物を供給してもよい。
【0059】
改質装置7は、熱分解ガスを水蒸気改質することができる装置であれば、特に限定されない。
【0060】
改質装置7においては、以下のように熱分解ガスの水蒸気改質が行わる。上述したように、熱分解ガスには、水素、一酸化炭素、メタン、炭化水素系ガス(タール成分を含有する)が含まれている。式(3)および式(6)に示すように、熱分解ガスに含まれる一酸化炭素および炭化水素系ガスは、酸化カルシウムを触媒として、水素および二酸化炭素に改質される:
CO + HO → CO+ H …(3)
+ HO → H+ CO …(6)。
【0061】
このとき生成した二酸化炭素は、式(5)に示すように、酸化カルシウムに吸収される。このようにして、熱分解ガス中の水素濃度がさらに高められる:
CaO + CO→ CaCO …(5)。
【0062】
[燃焼装置]
燃焼装置8は、熱分解装置6から供給された熱分解生成物を燃焼して、燃焼生成物および燃焼ガスとする。燃焼生成物のうち、酸化カルシウムは、分離されて改質装置7へと循環する。燃焼装置8には、空気または酸素含有ガスと、熱源となる燃焼用ガスとが、外部から供給される。必要に応じて、燃焼装置8に新たな無機カルシウム化合物を供給してもよい。
【0063】
燃焼装置8には、乾燥装置5から乾燥汚泥を供給してもよい。このとき供給される乾燥汚泥は、燃焼用ガスに加えた追加の熱源として燃焼される。乾燥汚泥を燃焼させることにより、外部から供給する燃焼用ガスの量を削減することができるので、エネルギーの使用量を削減することができる。
【0064】
燃焼装置8は、熱分解生成物を燃焼させることができる装置であれば、特に限定されない。
【0065】
(二酸化炭素の濃縮)
燃焼装置8中では、下記の反応により燃焼生成物および燃焼ガスが生成する。まず、空気または酸素含有ガスと、熱分解生成物に含まれる炭(charcoal)とが燃焼して、二酸化炭素が生じる(下記式(7)を参照)。また、熱分解生成物に含まれる炭酸カルシウムからは、酸化カルシウムおよび二酸化炭素が生じる(下記式(8)を参照)。さらに、空気または酸素含有ガスと、熱分解生成物に含まれる硫化カルシウムとが反応して、石膏(硫酸カルシウム;CaSO)が生じる(下記式(9)を参照)。
【0066】
C(charcoal) + O → CO …(7)
CaCO → CaO + CO …(8)
CaS + 2O→ CaSO …(9)。
【0067】
このようにして、燃焼装置8からは、高濃度の二酸化炭素を含む燃焼ガスが得られる。すなわち、炭の燃焼による二酸化炭素に加え、熱分解装置6および改質装置7において炭酸カルシウムとして吸収された二酸化炭素も放出されるため、燃焼ガス中の二酸化炭素濃度が高まる。高濃度の二酸化炭素を含む燃焼ガスの少なくとも一部は、導入装置1aを通じて、析出装置1内に導入される。ここで、燃焼ガスの全部が凝集装置に1内に導入される必要はない。
【0068】
なお、式(8)は酸化カルシウムの再生反応と解釈することもできる。この酸化カルシウムは、酸化カルシウム分離装置(サイクロンなど。不図示)によって分離され、改質装置7へと供給される。さらに、再生された酸化カルシウムの一部を、析出装置1に供給してもよい。析出装置1に供給された酸化カルシウムは、カルシウム剤としての機能を果たす。すなわち、析出工程S1において、二酸化炭素含有ガスの導入により析出した不溶性炭酸塩の量が不充分である場合にも、再生された酸化カルシウムが供給されるので、外部から追加するカルシウム剤を低減させることができる。
【0069】
灰分は灰分分離装置9(サイクロンなど)によって分離され、外部へ排出される。
【0070】
〔汚泥処理装置の変形例1〕
図2では、熱分解装置6、燃焼装置8および改質装置7の間で、無機カルシウム化合物を循環させる設計を採用したが、これらの装置は単に燃焼装置のみとしてもよい。すなわち、乾燥汚泥(または脱水汚泥)を、直接燃焼装置に供給し、燃焼させる設計としてもよい。
【0071】
〔汚泥処理装置の変形例2〕
上記の説明は主に、析出装置1および混和装置2が異なる装置である場合について説明した。しかし、析出装置1および混和装置2(ならびに任意で凝集装置3)は、同じ装置としてもよい。
【0072】
〔汚泥処理方法〕
図3は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法の処理の流れを表すフロー図である。図3に例示されている汚泥処理方法には、析出工程S1、混和工程S2および脱水工程S4が含まれる。このような構成とすることで、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法は、上述した本発明の効果(カルシウム剤の投入量の抑制)を奏することができる。
【0073】
また、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法には、任意構成として、凝集工程S3、乾燥工程S5、熱分解工程S6、改質工程S7、燃焼工程S8も含まれている。このような構成とすることで、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法は、(i)汚泥を処理する過程で発生した高濃度の二酸化炭素を含有するガスを析出工程S1に供給することができ、さらに、(ii)高濃度の水素を含む燃料気体を取り出すことができる。
【0074】
なお、上記の各工程の間に、搬送工程を設けてもよい。搬送工程を設けることによって、汚泥を連続的に処理することができる。
【0075】
以下、本発明の一実施の形態における汚泥処理方法を構成する各工程に関して説明する。ただし、〔汚泥処理装置〕の項目において説明した内容と重複する内容に関しては、その説明を簡略化または省略することとする。
【0076】
[析出工程、混和工程および凝集工程]
析出工程S1、混和工程S2および任意構成の凝集工程S3では、原汚泥を凝集させて、凝集汚泥を得る。このうち、析出工程S1では、原汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入する。混和工程S2では、原汚泥中に無機凝集剤およびpH調整剤を添加する。凝集工程では、原汚泥中に高分子凝集剤を添加する。このようにして得られた凝集汚泥は、脱水工程S4に供される。凝集汚泥を得る段階で分離された水分は、排水処理施設で適切に処理された後、排出路を通じて外部に排出されるか、あるいは再利用水として処理施設内で再利用してもよい。
【0077】
析出工程S1において導入される二酸化炭素は、不溶性炭酸塩を析出させる機能を有している。そのため、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法は、カルシウム剤の投入量を抑制することができる。
【0078】
析出工程S1において導入される二酸化炭素含有ガスの出所は、特に限定されない。一実施形態において、析出工程S1において導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、後述の燃焼工程S8において発生する二酸化炭素含有ガスである。
【0079】
また、析出工程S1においては、燃焼工程S8の後に残留した固形分から分離された酸化カルシウムを、原汚泥中に投入してもよい。
【0080】
その他、析出工程S1において導入される二酸化炭素含有ガス、および析出工程S1~凝集工程S3に供される原汚泥に関する好適な条件は、[析出装置および導入装置、混和装置、凝集装置]の項目にて説明した通りである。
【0081】
[脱水工程]
脱水工程S4では、混和工程S2(または凝集工程S3)において得られた凝集汚泥を脱水して、脱水汚泥を得る。すなわち、脱水工程S4では、凝集汚泥から水分を含む分離液を除去する。凝集汚泥を脱水する具体的な方法は、特に限定されない。得られた脱水汚泥は、乾燥工程S5に供される。
【0082】
[乾燥工程]
乾燥工程S5では、脱水工程S4において得られた脱水汚泥に含まれる水分の少なくとも一部を水蒸気として蒸発させ、乾燥汚泥を得る。乾燥工程S5によって生じた水蒸気のうち一部は、乾燥水蒸気として、熱分解工程S6における乾燥汚泥の熱分解に利用される。乾燥工程S5によって生じた水蒸気の残部は、外部に排出される。また、乾燥汚泥の一部を、燃焼工程S8における熱源として利用してもよい。得られた乾燥汚泥は、熱分解工程S6に供される。
【0083】
なお、脱水汚泥を乾燥させる具体的な方法は、特に限定されない。また、脱水工程S4で得られる脱水汚泥に含まれる水分量が少ない場合には、乾燥工程S5を設けない構成としてもよい。この場合、脱水工程S4で得られた脱水汚泥は、熱分解工程S6に供給される。
【0084】
[熱分解工程]
熱分解工程S6では、乾燥工程S5において得られた乾燥汚泥(または脱水工程S4において得られた脱水汚泥)を熱分解して、熱分解生成物および熱分解ガスを得る。この熱分解は水蒸気の存在下で行われ、加熱温度は400℃~900℃(好ましくは600℃~800℃)であり、滞留時間は0.1時間~2時間(好ましくは0.5時間~1時間)である。必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物を外部から供給してもよい。
【0085】
熱分解工程S6においては、[熱分解装置]の項目で説明した反応により、熱分解が行われる。この熱分解によって生じた熱分解ガスは、改質工程S7に供される。一方、熱分解によって生じた熱分解生成物は、燃焼工程S8に供される。
【0086】
また、熱分解工程S6、燃焼工程S8および改質工程S7の間では、無機カルシウム化合物が循環している。この点は、(熱分解生成物)の項目で説明した通りである。
【0087】
なお、乾燥汚泥(脱水汚泥)を熱分解させる具体的な方法は、特に限定されない。
【0088】
[改質工程]
改質工程S7では、熱分解工程S6において得られた熱分解ガスを水蒸気改質して、熱分解ガス中の水素濃度をさらに高める。こうして水素濃度がさらに高められた熱分解ガスは、冷却後、高濃度の水素を含むガスとして回収される。必要に応じて、新たな無機カルシウム化合物を外部から供給してもよい。
【0089】
なお、熱分解ガスを水蒸気改質する具体的な方法は、特に限定されない。
【0090】
[燃焼工程]
燃焼工程S8は、熱分解工程S6において得られた熱分解生成物を燃焼して、燃焼生成物および燃焼ガスとする。燃焼生成物のうち、酸化カルシウムは、分離されて改質工程S7へと循環される。燃焼工程S8においては、空気または酸素含有ガスと、熱源となる燃焼用ガスとが、外部から供給される。燃焼工程S8において新たな無機カルシウム化合物を外部から供給してもよい。
【0091】
燃焼工程S8には、乾燥工程S5から乾燥汚泥を供給してもよい。このとき供給される乾燥汚泥は、燃焼用ガスに加えた追加の熱源として燃焼される。乾燥汚泥を燃焼させることにより、外部から供給する燃焼用ガスの量を削減することができるので、エネルギーの使用量を削減することができる。
【0092】
燃焼工程S8において得られる燃焼ガスには、高濃度の二酸化炭素が含まれている。そのため、この燃焼ガスの少なくとも一部を析出工程S1で導入することが好ましい。
【0093】
なお、熱分解生成物を燃焼させる具体的な方法は、特に限定されない。
【0094】
〔まとめ〕
本発明には、以下の構成が包含されている。
<1>
原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる、析出工程S1と、
上記析出工程S1を経た原汚泥に無機凝集剤およびpH調整剤を添加し、上記不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる混和工程S2と、
上記混和工程S2を経た後の汚泥を脱水する、脱水工程S4と、
を含む、汚泥処理方法。
<2>
上記脱水工程S4の後に行われる、脱水後の汚泥の燃焼工程S8をさらに含む汚泥処理方法であって、
上記析出工程S1において導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、上記燃焼工程S8において生じた二酸化炭素含有ガスである、<1>に記載の汚泥処理方法。
<3>
上記析出工程S1において導入される二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素の濃度は、上記二酸化炭素含有ガスの全体積を100体積%とすると、10体積%以上である、<1>または<2>に記載の汚泥処理方法。
<4>
上記析出工程S1によって、上記原汚泥はpH7.0~8.0に調節される、<1>~<3>のいずれか1つに記載の汚泥処理方法。
<5>
上記析出工程S1に供される原汚泥は、無機成分を含んでおり、
上記無機成分の少なくとも一部は、その炭酸塩が水に対して不溶性であり、
上記析出工程S1に供される原汚泥の重量(水分を含む)を100重量%とすると、上記無機成分の含有率は、0.07重量%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の汚泥処理方法。
<6>
その炭酸塩が水に対して不溶性である上記無機成分は、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛からなる群より選択される1種類以上である、<5>に記載の汚泥処理方法。
<7>
導入装置1aを通じて原汚泥に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる、析出装置1と、
析出装置1で処理された原汚泥と、無機凝集剤およびpH調整剤とを混合し、上記不溶性炭酸塩を汚泥フロックに取り込ませる、混和装置2と、
上記混和装置2によって処理された後の汚泥を脱水する、脱水装置4と、
を備え、
上記析出装置1と上記混和装置2とは異なる装置である、汚泥処理装置100。
<8>
上記脱水装置4によって脱水された汚泥を燃焼させる、燃焼装置8をさらに備えており、
上記導入装置1aにより導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、上記燃焼装置8において発生する二酸化炭素含有ガスである、<7>に記載の汚泥処理装置100。
【0095】
〔本発明の他の態様〕
本発明はまた、以下の構成をも包含している。
【0096】
[1]
原汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる導入工程と、
上記導入工程によって生じた凝集汚泥を脱水する脱水工程S4と、
上記脱水工程S4を経た後の汚泥を水蒸気または過熱蒸気の存在下にて熱分解して、熱分解生成物および可燃性ガスを得る熱分解工程S6と、
上記熱分解生成物を燃焼させて燃焼生成物を得る燃焼工程S8と、
酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、上記可燃性ガスから、当該可燃性ガスよりも水素濃度を高めた燃料ガスを製造する改質工程S7と、
を含む汚泥処理方法であって、
上記熱分解工程S6、上記燃焼工程S8および上記改質工程S7の間においては、無機カルシウム化合物が循環しており、
上記導入工程において導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、上記燃焼工程S8において発生した二酸化炭素含有ガスである、汚泥処理方法。
【0097】
上記の構成によれば、熱分解工程S6、上記燃焼工程S8および上記改質工程S7の間において、無機カルシウム化合物(酸化カルシウム、炭酸カルシウムなど)が循環している。そのため、熱分解工程S6および改質工程S7において発生した二酸化炭素は、炭酸カルシウムとして吸着され、燃焼工程S8において再び二酸化炭素として放出される。その結果、二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素含有ガスが得られる。この高濃度二酸化炭素を含むガスを導入工程で導入することになるので、原汚泥を凝集させるためのカルシウム剤の投入量を削減することができる。
【0098】
[2]
原汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入し、炭酸カルシウムを析出させる導入工程と、
上記導入工程によって生じた凝集汚泥を脱水する脱水工程S4と、
上記脱水工程S4を経た後の汚泥を水蒸気または過熱蒸気の存在下にて熱分解して、熱分解生成物および可燃性ガスを得る熱分解工程S6と、
上記熱分解生成物を燃焼させて燃焼生成物を得る燃焼工程S8と、
酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、上記可燃性ガスから、当該可燃性ガスよりも水素濃度を高めた燃料ガスを製造する改質工程S7と、
を含む汚泥処理方法であって、
上記熱分解工程S6、上記燃焼工程S8および上記改質工程S7の間においては、無機カルシウム化合物が循環しており、当該無機カルシウムの少なくとも一部は、上記導入工程において析出させた炭酸カルシウムに由来している、汚泥処理方法。
【0099】
上記の構成によれば、熱分解工程S6、上記燃焼工程S8および上記改質工程S7の間において循環している無機カルシウム化合物(酸化カルシウム、炭酸カルシウムなど)の少なくとも一部を、原汚泥から析出させた炭酸カルシウムで代用することができる。それゆえ、これらの工程において、外部から無機カルシウム化合物を追加する量を低減させることができる。
【0100】
なお、[1]および[2]における「導入工程」とは、析出工程S1および混和工程S2(および任意で凝集工程S3)を併せた工程である。このとき、析出工程S1と混和工程S2は、同時に実行してもよいし、順番に実行してもよい。
【0101】
[3]
導入装置1aを通じて原汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入し、不溶性炭酸塩を析出させる塩析出装置と、
上記塩析出装置による処理を経た後の汚泥を脱水する脱水装置4と、
上記脱水装置4による処理を経た後の汚泥を水蒸気または過熱蒸気の存在下にて熱分解して、熱分解生成物および可燃性ガスを得る熱分解装置6と、
上記熱分解生成物を燃焼させて燃焼生成物を得る燃焼装置8と、
酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、上記可燃性ガスから、当該可燃性ガスよりも水素濃度を高めた燃料ガスを製造する改質装置7と、
を備えている汚泥処理装置100であって、
上記熱分解装置6、上記燃焼装置8および上記改質装置7の間においては、無機カルシウム化合物が循環可能に構成されており、
上記塩析出装置において導入される二酸化炭素含有ガスの少なくとも一部は、上記燃焼装置8において発生した二酸化炭素含有ガスである、汚泥処理装置100。
【0102】
[4]
導入装置1aを通じて原汚泥中に二酸化炭素含有ガスを導入し、炭酸カルシウムを析出させる塩析出装置と、
上記塩析出装置による処理を経た後の汚泥を脱水する脱水装置4と、
上記脱水装置4による処理を経た後の汚泥を水蒸気または過熱蒸気の存在下にて熱分解して、熱分解生成物および可燃性ガスを得る熱分解装置6と、
上記熱分解生成物を燃焼させて燃焼生成物を得る燃焼装置8と、
酸化カルシウムを用いた水蒸気改質によって、上記可燃性ガスから、当該可燃性ガスよりも水素濃度を高めた燃料ガスを製造する改質装置7と、
を備えている汚泥処理装置100であって、
上記熱分解装置6、上記燃焼装置8および上記改質装置7の間においては、無機カルシウム化合物が循環可能に構成されており、当該無機カルシウムの少なくとも一部は、上記塩析出装置において析出させた炭酸カルシウムに由来している、汚泥処理装置100。
【0103】
構成[3]によれば構成[1]と同様の、構成[4]によれば構成[2]と同様の効果が得られる。
【0104】
なお、[3]および[4]における「塩析出装置」とは、析出装置1および混和装置2(および任意で凝集装置3)を併せた装置である。このとき、析出装置1と混和装置2は、同じ装置であってもよいし、異なる装置であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 :析出装置
1a:導入装置
2 :混和装置
4 :脱水装置
8 :燃焼装置
100 :汚泥処理装置
S1 :析出工程
S2 :混和工程
S4 :脱水工程
S8 :燃焼工程
図1
図2
図3