(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ストラットマウント
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20221128BHJP
F16F 9/54 20060101ALI20221128BHJP
B60G 15/06 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
F16F13/10 C
F16F13/10 G
F16F9/54
B60G15/06
(21)【出願番号】P 2019046704
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】服部 優三
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001797(JP,A)
【文献】特開2017-044220(JP,A)
【文献】特開2017-044221(JP,A)
【文献】特開2010-255794(JP,A)
【文献】特開2010-196747(JP,A)
【文献】特開2011-241892(JP,A)
【文献】特開平05-215176(JP,A)
【文献】実開昭59-177844(JP,U)
【文献】特開昭58-72741(JP,A)
【文献】実開昭59-196746(JP,U)
【文献】実開平5-77644(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
F16F 9/54
B60G 15/06-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にショックアブソーバのロッドの上端部が固定される環状の内側部材と、
前記内側部材を、その中心軸回りに沿う周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、
前記内側部材と前記外側部材との間に設けられ、前記内側部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に連結する本体ゴムと、を備え、
前記内側部材と前記外側部材との間に、前記本体ゴムを隔壁の一部に有する主液室が設けられ、
前記主液室は、周方向に仕切られた複数の分割液室により構成され、
前記外側部材を周方向に囲い、前記外側部材との間に副液室を画成する拡縮変形可能なダイヤフラムを備え、
前記外側部材に、複数の前記分割液室と前記副液室とを各別に連通する複数の第1オリフィス通路が形成され、
複数の前記分割液室のうちの少なくとも1つは、共振周波数の異なる複数の前記第1オリフィス通路を通して前記副液室に連通している、ストラットマウント。
【請求項2】
複数の前記分割液室のうちの少なくとも2つは、前記第1オリフィス通路
のいずれより
も共振周波数が高い第2オリフィス通路を通して互いに連通している、請求項1に記載のストラットマウント。
【請求項3】
前記副液室は、全周にわたって連続して延びている、請求項1または2に記載のストラットマウント。
【請求項4】
前記主液室は、上下方向に沿う縦断面視で、上下方向に延びる縦部分、および前記縦部分から上下方向に交差する横方向に延びる横部分を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のストラットマウント。
【請求項5】
前記縦部分は、前記縦断面視で、前記内側部材における前記本体ゴムとの連結部分を径方向の外側から囲い、
前記横部分は、前記縦断面視で、前記連結部分を下側から囲っている、請求項4に記載のストラットマウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内側にショックアブソーバのロッドの上端部が固定される環状の内側部材と、内側部材を、その中心軸回りに沿う周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、内側部材と外側部材との間に設けられ、内側部材および外側部材を相対的に弾性変位可能に連結する本体ゴムと、を備えたストラットマウントが知られている。
この種のストラットマウントとして、例えば下記特許文献1に示されるような、内側部材と外側部材との間に、本体ゴムを隔壁の一部に有するとともに、周方向に仕切られた4つの分割液室が設けられ、これらの分割液室のうち、周方向で隣り合う2つの分割液室同士がオリフィス通路を通して連通された構成が知られている。
そして、ストラットマウントに、上下方向に交差する横方向の振動が入力されると、液体が、オリフィス通路を通して周方向で隣り合う2つの分割液室を流通することで、オリフィス通路内で液柱共振が生じ、オリフィス通路の共振周波数と同等の周波数の振動が吸収、減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のストラットマウントでは、横方向および上下方向の各振動について、幅広い周波数帯域で減衰作用を発揮させることが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、横方向および上下方向の各振動について、幅広い周波数帯域で減衰作用を発揮させることができるストラットマウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るストラットマウントは、内側にショックアブソーバのロッドの上端部が固定される環状の内側部材と、前記内側部材を、その中心軸回りに沿う周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、前記内側部材と前記外側部材との間に設けられ、前記内側部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に連結する本体ゴムと、を備え、前記内側部材と前記外側部材との間に、前記本体ゴムを隔壁の一部に有する主液室が設けられ、前記主液室は、周方向に仕切られた複数の分割液室により構成され、前記外側部材を周方向に囲い、前記外側部材との間に副液室を画成する拡縮変形可能なダイヤフラムを備え、前記外側部材に、複数の前記分割液室と前記副液室とを各別に連通する複数の第1オリフィス通路が形成され、複数の前記分割液室のうちの少なくとも1つは、共振周波数の異なる複数の前記第1オリフィス通路を通して前記副液室に連通している。
【0007】
この発明では、主液室が、振動が入力されるロッドの上端部が固定される内側部材と、車体側に取付けられる外側部材と、の間に設けられ、かつ内側部材と外側部材とを連結する本体ゴムを隔壁の一部に有し、副液室が、外側部材と、外側部材を周方向に囲うダイヤフラムと、の間に画成されている。したがって、このストラットマウントに、ロッドを介して横方向、または上下方向の振動が入力され、内側部材および外側部材が相対変位すると、本体ゴムが弾性変形し、主液室の内圧が変動することで、液体が、第1オリフィス通路を通して主液室および副液室を流通する。
この際、複数の分割液室のうちの少なくとも1つが、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路を通して副液室に連通しているので、これらの共振周波数に近い周波数の振動が入力されたときに、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路で各別に液柱共振が生ずることとなる。これにより、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路内の液柱共振に基づく減衰特性の各ピーク間を平準化することで減衰特性のブロード化を図ることが可能になり、横方向および上下方向の各振動について、幅広い周波数帯域で減衰作用を発揮させることができる。
【0008】
ここで、複数の前記分割液室のうちの少なくとも2つは、前記第1オリフィス通路より共振周波数が高い第2オリフィス通路を通して互いに連通してもよい。
【0009】
この場合、複数の分割液室のうちの少なくとも2つが、第1オリフィス通路より共振周波数が高い第2オリフィス通路を通して互いに連通しているので、横方向の振動入力時に、液体が、第2オリフィス通路を通して2つの分割液室を流通することとなり、周波数が比較的高い横方向の振動入力時のばねを低く抑えることができる。
【0010】
また、前記副液室は、全周にわたって連続して延びてもよい。
【0011】
この場合、副液室が、全周にわたって連続して延びているので、構造の複雑化を抑えることが可能になるとともに、横方向および上下方向のかさ張りを抑えることができる。
【0012】
また、前記主液室は、上下方向に沿う縦断面視で、上下方向に延びる縦部分、および前記縦部分から上下方向に交差する横方向に延びる横部分を備えてもよい。
【0013】
この場合、主液室が、上下方向に沿う縦断面視で、上下方向に延びる縦部分、および縦部分から横方向に延びる横部分を備えるので、横方向および上下方向の各振動の入力時に、主液室の内容積を効果的に変動させることができる。
【0014】
また、前記縦部分は、前記縦断面視で、前記内側部材における前記本体ゴムとの連結部分を径方向の外側から囲い、前記横部分は、前記縦断面視で、前記連結部分を下側から囲ってもよい。
【0015】
この場合、縦部分が、前記縦断面視で、内側部材における本体ゴムとの連結部分を径方向の外側から囲っているので、横方向の振動入力時に、縦部分が径方向に拡縮変形しやすくなり、主液室の内容積を効果的に変動させることができる。
横部分が、前記縦断面視で、前記連結部分を下側から囲っているので、上下方向の振動入力時に、横部分が上下方向に拡縮変形しやすくなり、主液室の内容積を効果的に変動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、横方向および上下方向の各振動について、幅広い周波数帯域で減衰作用を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るストラットマウントの上下方向に沿う縦断面図である。
【
図2】
図1に示すストラットマウントの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るストラットマウント1の一実施形態を、
図1および
図2を参照しながら説明する。
ストラットマウント1は、内側部材11、外側部材12、本体ゴム13、およびダイヤフラム14を備えている。
【0019】
内側部材11に、ショックアブソーバのロッドRの上端部が固定されている。
ここで、ロッドRの中心軸Oは、ほぼ上下方向に延びている。以下、上下方向から見て、中心軸Oに交差する方向を径方向といい、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
内側部材11は、環状に形成され、中心軸Oと同軸に配置されている。内側部材11の内側にロッドRの上端部が挿入されている。ロッドRの上端部のうち、内側部材11から上方に突出した部分にナットNが螺着されることにより、ロッドRの上端部が内側部材11に固定されている。
【0020】
外側部材12は、車体側に取付けられる。外側部材12は、内側部材11を径方向の外側から囲う内筒部23と、内側に内筒部23が嵌合された外筒部24と、外筒部24に外嵌された筒状のオリフィス部材25と、を備えている。
なお、外側部材12は、例えば全体を一体に形成するなど適宜変更してもよい。
【0021】
内筒部23は、中心軸Oと同軸に配置され、上下方向に真直ぐ延びている。内筒部23の内周面は、内側部材11の外周縁部11aの外周面より径方向の外側に位置している。内筒部23の内周面は、内側部材11の外周縁部11aの外周面に本体ゴム13を介して径方向で対向している。
外筒部24は、上下方向に延びる第1直筒部24aと、第1直筒部24aの下端部から径方向の内側に向けて突出した環状の第1底壁部24bと、第1直筒部24aの上端部から径方向の外側に向けて突出した第1フランジ部24cと、を備え、中心軸Oと同軸に配置されている。
【0022】
第1直筒部24aの上端部は、内側部材11の外周縁部11aの上面より上方に位置している。第1直筒部24aの下端部は、内側部材11の外周縁部11aの下面より下方に位置している。第1直筒部24a内に、内筒部23が嵌合されている。内筒部23は、第1底壁部24bより上方に位置している。第1直筒部24aの内周面と、内筒部23の外周面と、の間に、全周にわたって連続して延びるシール材が設けられている。第1直筒部24aに、オリフィス部材25が外嵌されている。
第1底壁部24bの上面の内周部分は、内側部材11の外周縁部11aの下面に本体ゴム13を介して上下方向で対向している。
【0023】
ここで、ストラットマウント1は、オリフィス部材25を径方向の外側から囲う囲繞筒部26と、本体ゴム13を上方から覆う支持部27と、を備えている。
【0024】
支持部27は、環状に形成され、中心軸Oと同軸に配置されている。支持部27の外周部分は、第1フランジ部24cの上面に配置され、支持部27の内周部分は、第1フランジ部24cより径方向の内側に張り出し、本体ゴム13を上方から覆っている。
囲繞筒部26は、上下方向に延びる第2直筒部26aと、第2直筒部26aの下端部から径方向の内側に向けて突出した環状の第2底壁部26bと、第2直筒部26aの上端部から径方向の外側に向けて突出した第2フランジ部26cと、を備え、中心軸Oと同軸に配置されている。
【0025】
第2直筒部26aの内周面と、オリフィス部材25の外周面と、の間に径方向の隙間が設けられている。第2底壁部26bの上面の内周部分は、第1底壁部24bの下面に当接している。第2底壁部26b、および第1底壁部24bそれぞれの内周面の径方向の位置は、互いに同等になっている。第2フランジ部26cの上面は、第1フランジ部24cの下面の外周部分に当接している。
【0026】
第1底壁部24b、および第2底壁部26bの各内周縁部に、第1底壁部24bの下面と第2底壁部26bの上面とを密接させる固定部材19が取り付けられている。固定部材19は、第1底壁部24bの上面に密接した上壁と、第2底壁部26bの下面に密接した下壁と、上壁および下壁を連結し、第1底壁部24bおよび第2底壁部26bの各内周面を径方向の内側から覆う縦壁と、を備えている。上壁と、第1底壁部24bの上面と、の間に、全周にわたって連続して延びるシール材が設けられている。
【0027】
本体ゴム13は、内側部材11と外側部材12との間に設けられ、内側部材11および外側部材12を相対的に弾性変位可能に連結している。本体ゴム13は、内側部材11の外周縁部11aにおける上面、下面、および外周面と、内筒部23の内周面と、に加硫接着されている。内側部材11の外周縁部11aが、内側部材11における本体ゴム13との連結部分となっている。本体ゴム13は、固定部材19の上壁と、第1底壁部24bの上面と、の接続部分に密接している。
【0028】
内側部材11と外側部材12との間に、本体ゴム13を隔壁の一部に有する主液室15が設けられている。主液室15は、第1直筒部24aの内周面、第1底壁部24bの上面、および本体ゴム13により囲まれた空間となっている。
主液室15は、上下方向に沿う縦断面視で、上下方向に延びる縦部分21、および縦部分21から上下方向に交差する横方向に延びる横部分22を備える。縦部分21は、前記縦断面視で、内側部材11の外周縁部11aを、本体ゴム13を介して径方向の外側から囲っている。縦部分21の上端部は、内筒部23の下端部より上方に位置している。横部分22は、前記縦断面視で、内側部材11の外周縁部11aを、本体ゴム13を介して下側から囲っている。横部分22は、縦部分21の下端部から径方向の内側に向けて延びており、主液室15は、前記縦断面視でL字状を呈している。
【0029】
ダイヤフラム14は、拡縮変形可能に形成され、外側部材12を周方向に囲い、外側部材12との間に副液室16を画成している。ダイヤフラム14は、オリフィス部材25を径方向の外側から囲っている。副液室16、および主液室15は、径方向に並べられて配置されている。副液室16は、全周にわたって連続して延びている。ダイヤフラム14の上端部は、第1フランジ部24cの下面と、第2フランジ部26cの上面と、により上下方向に密に挟まれている。ダイヤフラム14の下端部は、第1底壁部24bの下面と、第2底壁部26bの上面と、により上下方向に密に挟まれている。副液室16は、ダイヤフラム14の内面と、第1フランジ部24cの下面の内周部分と、オリフィス部材25の外周面と、オリフィス部材25の下端開口縁と、により画成されている。ダイヤフラム14の外面と、第2直筒部26aの内周面と、の間に径方向の隙間が設けられている。
【0030】
主液室15は、周方向に仕切られた第1分割液室15a、および第2分割液室15bにより構成されている。第1分割液室15a、および第2分割液室15bは、互いに同じ形状で、かつ同じ大きさに形成されている。第1分割液室15a、および第2分割液室15bは、中心軸Oを径方向に挟んで互いに対向している。
【0031】
外側部材12に、第1分割液室15a、および第2分割液室15bと、副液室16と、を各別に連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bが形成されている。第1オリフィス通路28a、28bは、第1直筒部24a、およびオリフィス部材25に形成されている。第1オリフィス通路28a、28bは、第1直筒部24a、およびオリフィス部材25の各下端部に形成されている。第1オリフィス通路28a、28bは、主液室15の下部に開口している。第1オリフィス通路28a、28bは、周方向に延びている。
【0032】
第1分割液室15a、および第2分割液室15bはそれぞれ、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路28a、28bを通して副液室16に連通している。図示の例では、第1分割液室15a、および第2分割液室15bはそれぞれ、共振周波数の高い第1オリフィス通路28a、および共振周波数の低い第1オリフィス通路28bを通して副液室16に連通している。共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの流路断面積は、共振周波数の低い第1オリフィス通路28bの流路断面積より大きくなっている。共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの流路長は、共振周波数の低い第1オリフィス通路28bの流路長と同じになっている。
【0033】
なお、共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの流路断面積を、共振周波数の低い第1オリフィス通路28bの流路断面積以下とし、共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの流路長を、共振周波数の低い第1オリフィス通路28bの流路長より短くしてもよい。
【0034】
図2に示されるように、第1分割液室15aと、副液室16と、を連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bは、互いに独立して並列に設けられ、第2分割液室15bと、副液室16と、を連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bも、互いに独立して並列に設けられている。これにより、第1分割液室15a、および第2分割液室15bそれぞれにおける第1オリフィス通路28a、28bの開口部は2つずつで、副液室16における第1オリフィス通路28a、28bの開口部は4つになっている。
【0035】
第1分割液室15aと副液室16とを連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bのうち、共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの共振周波数は、第2分割液室15bと副液室16とを連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bのうち、共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの共振周波数と同じになっている。なお、これらの共振周波数を互いに異ならせてもよい。
【0036】
第1分割液室15aと副液室16とを連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bのうち、共振周波数の低い第1オリフィス通路28bの共振周波数は、第2分割液室15bと副液室16とを連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bのうち、共振周波数の低い第1オリフィス通路28bの共振周波数と同じになっている。なお、これらの共振周波数を互いに異ならせてもよい。
【0037】
第1分割液室15a、および第2分割液室15bは、第1オリフィス通路28a、28bより共振周波数が高い第2オリフィス通路29を通して互いに連通している。第2オリフィス通路29は、本体ゴム13に形成され、周方向に延びている。
第2オリフィス通路29の流路長は、第1オリフィス通路28a、28bの流路長より短くなっている。第2オリフィス通路29の流路断面積は、複数の第1オリフィス通路28a、28bのうち、共振周波数の高い第1オリフィス通路28aの流路断面積と同等になっている。
【0038】
なお、第2オリフィス通路29の流路長を、第1オリフィス通路28a、28bの流路長以上とし、第2オリフィス通路29の流路断面積を、第1オリフィス通路28a、28bの流路断面積より大きくしてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によるストラットマウント1によれば、主液室15が、振動が入力されるロッドRの上端部が固定される内側部材11と、車体側に取付けられる外側部材12と、の間に設けられ、かつ内側部材11と外側部材12とを連結する本体ゴム13を隔壁の一部に有し、副液室16が、外側部材12と、外側部材12を周方向に囲うダイヤフラム14と、の間に画成されている。
したがって、このストラットマウント1に、ロッドRを介して横方向、または上下方向の振動が入力され、内側部材11および外側部材12が相対変位すると、本体ゴム13が弾性変形し、主液室15の内圧が変動することで、液体が、第1オリフィス通路28a、28bを通して主液室15および副液室16を流通する。
【0040】
この際、第1分割液室15a、および第2分割液室15bがそれぞれ、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路28a、28bを通して副液室16に連通しているので、これらの共振周波数に近い周波数の振動が入力されたときに、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路28a、28bで各別に液柱共振が生ずることとなる。これにより、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路28a、28b内の液柱共振に基づく減衰特性の各ピーク間を平準化することで減衰特性のブロード化を図ることが可能になり、横方向および上下方向の各振動について、幅広い周波数帯域で減衰作用を発揮させることができる。
【0041】
第1分割液室15a、および第2分割液室15bが、第1オリフィス通路28a、28bより共振周波数が高い第2オリフィス通路29を通して互いに連通しているので、横方向の振動入力時に、液体が、第2オリフィス通路29を通して第1分割液室15a、および第2分割液室15bを流通することとなり、周波数が比較的高い横方向の振動入力時のばねを低く抑えることができる。
【0042】
副液室16が、全周にわたって連続して延びているので、構造の複雑化を抑えることが可能になるとともに、横方向および上下方向のかさ張りを抑えることができる。
主液室15が、上下方向に沿う縦断面視で、上下方向に延びる縦部分21、および縦部分21から横方向に延びる横部分22を備えるので、横方向および上下方向の各振動の入力時に、主液室15の内容積を効果的に変動させることができる。
【0043】
縦部分21が、前記縦断面視で、内側部材11における本体ゴム13との連結部分である外周縁部11aを径方向の外側から囲っているので、横方向の振動入力時に、縦部分21が径方向に拡縮変形しやすくなり、主液室15の内容積を効果的に変動させることができる。
横部分22が、前記縦断面視で、内側部材11の外周縁部11aを下側から囲っているので、上下方向の振動入力時に、横部分が上下方向に拡縮変形しやすくなり、主液室15の内容積を効果的に変動させることができる。
【0044】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
前記実施形態では、第1分割液室15a、および第2分割液室15bがそれぞれ、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路28a、28bを通して副液室16に連通した構成を示したが、これに限らず例えば、第1分割液室15a、および第2分割液室15bのうちのいずれか一方が、共振周波数の異なる複数の第1オリフィス通路28a、28bを通して副液室16に連通し、他方が、1つの第1オリフィス通路28a、28bを通して副液室16に連通した構成を採用してもよい。
【0046】
第1分割液室15aと、副液室16と、を連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bとして、互いが直列に接続され、第1分割液室15aにおける開口部が1つで、副液室16における開口部が複数とされた構成を採用してもよい。
同様に、第2分割液室15bと、副液室16と、を連通する複数の第1オリフィス通路28a、28bとして、互いが直列に接続され、第2分割液室15bにおける開口部が1つで、副液室16における開口部が複数とされた構成を採用してもよい。
【0047】
主液室15が、周方向に3つ以上に仕切られた構成を採用してもよい。
主液室15は、前記縦断面視でT字状を呈してもよい。
第2オリフィス通路29を設けなくてもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ストラットマウント
11 内側部材
11a 外周縁部(連結部分)
12 外側部材
13 本体ゴム
14 ダイヤフラム
15 主液室
15a 第1分割液室(分割液室)
15b 第2分割液室(分割液室)
16 副液室
21 縦部分
22 横部分
28a、28b 第1オリフィス通路
29 第2オリフィス通路
O 中心軸
R ロッド