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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
E04F13/08 E
E04F13/08 Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019064711
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165127
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ニチハ株式会社が平成30年11月9日に開催した自社展示会
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橘 麻子
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059347(JP,A)
【文献】特開2017-137733(JP,A)
【文献】特開2018-172890(JP,A)
【文献】特開2003-184262(JP,A)
【文献】特開2019-044389(JP,A)
【文献】実開平04-002826(JP,U)
【文献】特開2011-080221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる一対の第1縁端と前記第1方向に交差する第2方向に延びる一対の第2縁端とによって外郭形状が規定され且つ意匠面を有する建築板であって、
前記意匠面において、前記第1方向に延びる通し目地である複数の第1目地溝と、第2方向に延びて少なくとも一本の第1目地溝と繋がる複数の第2目地溝と、当該第1および第2目地溝によって外郭形状が規定される複数の意匠凸部とを有し、
前記複数の第1目地溝は、第1浅目地域とこれより深い第2浅目地域とを含む少なくとも一本の浅目地溝、および、当該浅目地溝より深い少なくとも一本の深目地溝を含む、建築板。
【請求項2】
一の第2目地溝を介して隣り合い、且つ、共通に面する第1目地溝のうち少なくとも一方の有する溝底となす境界線が前記第2方向に互いに位置ずれしている、一対の意匠凸部を有する、請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記複数の意匠凸部は、前記第2方向に延びる線状目地を有する意匠凸部を含む、請求項1または2に記載の建築板。
【請求項4】
前記線状目地を有する意匠凸部は、前記線状目地を介して隣り合う二つの部分凸部を有し、当該二つの部分凸部は、共通に面する第1目地溝のうち少なくとも一方の有する溝底となす境界線が前記第2方向において互いに位置ずれしている、請求項3に記載の建築板。
【請求項5】
各第1目地溝は、前記第1方向の一方端と他方端において、前記第2方向の長さが同一の溝底を有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の建築板。
【請求項6】
前記複数の第1目地溝は、第1浅目地域と、これより深い第2浅目地域と、前記第1浅目地域より深く且つ前記第2浅目地域より浅い第3浅目地域と、を含む少なくとも一本の浅目地溝を含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の建築板。
【請求項7】
前記複数の第1目地溝は、第1深目地域とこれより深い第2深目地域とを含む少なくとも一本の深目地溝を含む、請求項1から6のいずれか一つに記載の建築板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装仕上げや内装仕上げに用いることのできる建築用の板材すなわち建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁部や内壁部を構成するための建築用板材として、窯業系サイディングボードや金属系サイディングボードなど、所定の意匠面を有する建築板が用いられることがある。建築板を用いての壁部の施工にあたっては、複数枚の建築板が上下方向や左右方向に継ぎ合わされる。そのような建築板の意匠面には、レンガ調模様の意匠面や、タイル調模様の意匠面、石積み調模様の意匠面などがある。このような建築板に関する技術については、例えば下記の特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-107470号公報
【文献】特開2015-140607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁部構成用の上述のような建築板には、複数枚が継ぎ合わされた施工状態において継合せ箇所やそのズレが目立たないことが、求められる。
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、その目的は、複数枚が継ぎ合わされた施工状態において継合せ箇所やそのズレが目立つことを抑制するのに適した建築板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供される建築板は、第1方向に延びる一対の第1縁端と第1方向に交差する第2方向に延びる一対の第2縁端とによって外郭形状が規定され、且つ意匠面を有する。第1および第2方向は好ましくは直交する。
【0007】
本建築板は、その意匠面に、複数の第1目地溝と、複数の第2目地溝と、これら目地溝によって外郭形状が規定される意匠凸部とを有する。第1目地溝および第2目地溝は、本建築板の意匠面に形成された擬似的な目地溝である。
【0008】
各第1目地溝は、第1方向に延びる通し目地であり、本建築板の複数枚がそれらの第2縁端を介して一続きに継ぎ合わされた状態で当該複数の建築板にわたって延びる一本の通し目地の一部をなすように、配されている。複数の第1目地溝は、第1浅目地域とこれより深い第2浅目地域とを含む少なくとも一本の浅目地溝、および、当該浅目地溝より深い少なくとも一本の深目地溝を含む。
【0009】
各第2目地溝は、第2方向に延び、少なくとも一本の第1目地溝と繋がる。意匠面における複数の第2目地溝には、一の第1目地溝から他の第1目地溝に至るように第2方向に延びる第2目地溝が含まれてもよい。また、複数の第2目地溝には、一の第1目地溝から他の第1目地溝までの間で少なくとも一本の第1目地溝と交差する第2目地溝が含まれてもよい。
【0010】
以上のような構成の本建築板を用いての壁部の施工にあたっては、複数枚の本建築板が上下方向(縦方向)や左右方向(横方向)に継ぎ合わされる。
【0011】
上記のように、本建築板の意匠面には、複数の第1目地溝が通し目地として形成され、且つ、複数の第1目地溝には、溝深さが異なる浅目地溝と深目地溝が含まれる(複数の第1目地溝は、すべてに共通する溝深さを有しているのではない)。本建築板の二枚がそれらの第1縁端を介して例えば上下方向に継ぎ合わされた状態において、その継合せ箇所(第1継合せ箇所)に、第1方向に延びる通し目地として目地溝が形成される場合、その目地溝は、本建築板の意匠面における各第1目地溝(通し目地)に似ている。
【0012】
第1継合せ箇所における通し目地としての目地溝、および、意匠面における通し目地としての複数の第1目地溝は、第2方向に相互に離隔して並列し、且つ、溝深さが共通していない。そのため、第1継合せ箇所に通し目地として目地溝が形成される場合の当該目地溝は、目立つことが抑制される。すなわち、本建築板の意匠面における複数の第1目地溝は、第1継合せ箇所に目地溝が形成される場合に、当該目地溝が目立つことを抑制し、ひいては、第1継合せ箇所そのものが目立つことを抑制する。
【0013】
また、本建築板の二枚がそれらの第2縁端を介して例えば左右方向に継ぎ合わされた状態において、その継合せ箇所(第2継合せ箇所)に、第2方向に延びる目地溝が形成される場合、その目地溝は、意匠面において同じく第2方向に延びる各第2目地溝に似ている。そのため、本建築板の意匠面における複数の第2目地溝は、第2継合せ箇所に目地溝が形成される場合に、当該目地溝が目立つことを抑制し、ひいては、第2継合せ箇所そのものが目立つことを抑制する。
【0014】
加えて、本建築板の第1目地溝には、上記のように、深さ変化が付けられている浅目地溝が含まれる。浅目地溝における深さ変化ないし段差は、上述の第2継合せ箇所において隣接した建築板間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差に似ている。しかも、複数の第1目地溝において深目地溝より浅い浅目地溝における深さ変化ないし段差は、目立ちやすい。このような浅目地溝における深さ変化は、第2継合せ箇所で隣接した建築板間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差が目立つことを抑制する。
【0015】
更に、上述の第2継合せ箇所において隣接した建築板間に第2方向のズレが生じた結果、隣接した建築板の意匠面間に第2方向の段差又は位置ずれが生じた場合に、浅目地溝における深さ変化ないし段差は、その段差又は位置ずれが目立つことを抑制する。また隣接した建築板間に第2方向D2のズレが生じていない場合でも、浅目地溝における深さ変化ないし段差は第2継合せ箇所に集まるべき注目を分散させ、第2継合せ箇所の目立ちを抑制する。
【0016】
以上のように、本発明の建築板は、複数枚が継ぎ合わされた施工状態において継合せ箇所やそのズレが目立つことを抑制する効果を有する。
【0017】
好ましくは、本建築板は、一の第2目地溝を介して隣り合い、且つ、共通に面する第1目地溝のうち少なくとも一方の有する溝底となす境界線が第2方向に互いに位置ずれしている、一対の意匠凸部を有する。第2目地溝を介して隣り合う意匠凸部間におけるこのような位置ずれ形状は、上述の第2継合せ箇所で隣接した建築板間に第2方向のズレが生じた場合の、当該継合せ箇所で第2方向に延びる目地溝を介して隣り合う二つの意匠凸部間の位置ずれ形状に似ており、それが目立つのを抑制する。
【0018】
好ましくは、複数の意匠凸部は、第2方向に延びる線状目地を有する意匠凸部を含む。本発明において、線状目地とは、意匠凸部の外観につき第1方向における非連続性を生じさせる線状の区切りであり、例えば、意匠凸部において線状目地を介して隣り合う部分間に建築板厚さ方向の段差を生じさせる区切りである。このような区切りとしての線状目地は、上述の第2継合せ箇所において隣接した建築板間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差など第1方向における非連続的形状に似ており、従って、それが目立つことを抑制する。
【0019】
好ましくは、線状目地を有する意匠凸部は、線状目地を介して隣り合う二つの部分凸部を有し、当該二つの部分凸部は、共通に面する第1目地溝のうち少なくとも一方の有する溝底となす境界線が第2方向において互いに位置ずれしている。線状目地を介して隣り合う部分凸部間のこのような位置ずれ形状は、上述の第2継合せ箇所で隣接した建築板間に第2方向のズレが生じた場合の、当該箇所の継ぎ目(第2方向に延びる)を介して隣り合う二つの意匠凸部間の位置ずれ形状に似ており、それが目立つのを抑制する。
【0020】
好ましくは、各第1目地溝は、第1方向の一方端と他方端において、第2方向の長さが同一の溝底を有する。このような構成は、上述の第2継合せ箇所において、一方の建築板の各第1目地溝と他方の建築板の各第1目地溝とが合わさって連続する通し目地をなすようにするのに適し、従って、第2継合せ箇所が目立つことを抑制する。
【0021】
好ましくは、複数の第1目地溝は、第1浅目地域と、これより深い第2浅目地域と、第1浅目地域より深く且つ第2浅目地域より浅い第3浅目地域と、を含む少なくとも一本の浅目地溝を含む。このような構成は、上述の第2継合せ箇所で隣接した建築板間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差が目立つことを抑制する。
【0022】
好ましくは、複数の第1目地溝は、第1深目地域とこれより深い第2深目地域とを含む少なくとも一本の深目地溝を含む。このような構成は、上述の第2継合せ箇所で隣接した建築板間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差が目立つことを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一の実施形態に係る建築板の平面図である。
図2図1に示す建築板の第2方向に延びる一縁端を表す側面図(一部省略側面図)である。
図3図1に示す建築板の第1方向に延びる一縁端を表す側面図(一部省略側面図)である。
図4】第1目地溝における各所の断面図である。(a)は浅目地溝の第1浅目地域の断面を表し、(b)は浅目地溝の第2浅目地域の断面を表し、(c)は浅目地溝の第3浅目地域の断面を表し、(d)は深目地溝の断面を表す。
図5】浅目地溝の深さ変化の一例を表す断面図である。
図6】深目地溝に深さ変化が付けられている場合の一例を表す断面図である。
図7図1に示す建築板の部分拡大平面図である。
図8図1に示す建築板の他の部分拡大平面図である。
図9】二枚の建築板がそれらの第1縁端を介して継ぎ合わされた状態における当該第1縁端およびその近傍の断面図である。
図10】二枚の建築板がそれらの第1縁端を介して継ぎ合わされた状態における当該第1縁端およびその近傍の平面図である。
図11】二枚の建築板がそれらの第2縁端を介して継ぎ合わされた状態における当該第2縁端およびその近傍の断面図である。
図12】二枚の建築板がそれらの第2縁端を介して継ぎ合わされた状態における当該第2縁端およびその近傍の平面図である。
図13】本実施形態の複数の建築板による壁部の施工構造を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から図3は、本発明の一の実施形態に係る建築板Xを表す。図1は、建築板Xの平面図である。図2は、建築板Xの一の側面図(一部省略側面図)である。図3は、建築板Xの他の側面図(一部省略側面図)である。
【0025】
建築板Xは、建築物の外壁部や内壁部を構成するための建築用板材であり、図1に表れているように、第1方向D1に延びる一対の第1縁端である縁端E1,E2と、第1方向に交差する第2方向D2に延びる一対の第2縁端である縁端E3,E4とによって外郭形状が規定され、且つ意匠面Sを有する。第1方向D1および第2方向D2は、本実施形態では直交する。建築板Xを用いての壁部の施工にあたっては、複数枚の建築板Xが上下方向(縦方向)や左右方向(横方向)に継ぎ合わされる。
【0026】
建築板Xの第1方向D1の寸法は、例えば約1820~約3030mmである。建築板Xの第1方向D2の寸法は、例えば約455~約910mmである。建築板Xの厚さは、例えば約14~約26mmである。また、建築板Xは、例えばセメント板、コンクリート板、または木質板である。
【0027】
建築板Xは、その意匠面Sに、複数の目地溝10(第1目地溝)と、複数の目地溝20(第2目地溝)と、これら目地溝10,20によって外郭形状が規定される複数の意匠凸部30とを有する。目地溝10,20は、建築板Xの意匠面Sにおいて擬似的な目地溝をなすように形成された溝である。
【0028】
各目地溝10は、第1方向D1に延びる通し目地である。各目地溝10は、例えば二枚の建築板Xが一方の建築板Xの第2縁端E3と他方の建築板Xの第2縁端E4とを介して一続きに継ぎ合わされた状態で、当該二枚の建築板Xにわたって延びる一本の通し目地の一部をなすように配されている。複数の当該目地溝10は、本実施形態では、複数の浅目地溝11および複数の深目地溝12を含む。
【0029】
複数の浅目地溝11は、本実施形態では、浅目地域11a(第1浅目地域)とこれより深い浅目地域11b(第2浅目地域)とを有するもの(第1タイプの浅目地溝)と、これらに加えて浅目地域11c(第3浅目地域)を有するもの(第2タイプの浅目地溝)とを含む。浅目地域11cは、浅目地域11aより深く且つ浅目地域11bより浅い。図1では、浅目地域11aを黒ベタで表し、浅目地域11bを斜線ハッチングで表す。
【0030】
このような浅目地溝11の有する溝底Gbの幅w1(図4内に示す)すなわち第2方向D2における長さは、例えば1.0~7.0mmである。浅目地域11aの深さd1(図4(a)に示す)は例えば1.0~5.0mmである。浅目地域11bの深さd2(図4(b)に示す)は、深さd1より大きい限りにおいて、例えば3.0~7.0mmである。浅目地域11cの深さd3(図4(c)に示す)は、深さd1より大きく且つ深さd2より小さい限りにおいて、例えば2.0~6.0mmである。
【0031】
浅目地溝11において、その側壁Gs(図4内に示す)が溝底Gbとなす傾斜角度(第1傾斜角度)は、本実施形態では90°以下であり、例えば60°である。浅目地溝11において、浅目地域11a,11b間の境界をなす斜面Gd(図5に示す)が溝底Gbとなす傾斜角度(第2傾斜角度)は、本実施形態では90°以下であり、例えば60°である。
【0032】
深目地溝12は、本実施形態では浅目地溝11より深い(浅目地域11a,11b,11cより深い)。図1では、深目地溝12を縦ハッチングで表す。深目地溝12の有する溝底Gbの幅w2(図4(d)に示す)すなわち第2方向D2における長さは、例えば1.0~6.0mmである。深目地溝12の深さd4(図4(d)に示す)は、上記の深さd1~d3より大きく設定されており、例えば7.0~11.0mmである。
ただし、深目地溝12は本実施形態の様に浅目地域11a,11b,11cの全てより深い必要はなく、最も浅い浅目地域11aの深さd1よりも深く設定されても良い。
【0033】
複数の深目地溝12は、図6に示すような深目地溝12Aを含んでもよい。深目地溝12Aは、深目地域12a(第1深目地域)とこれより深い深目地域12b(第2深目地域)とを含む。深目地溝12aの深さd4'は例えば7.0~9.0mmであり、深目地溝12bの深さd4”は、深さd4'より大きい限りにおいて、例えば9.0~11.0mmである。
【0034】
深目地溝12において、その側壁Gs(図4(d)に示す)が溝底Gbとなす傾斜角度(第3傾斜角度)は、本実施形態では90°以下であり、例えば60°である。深目地溝12Aにおいて、深目地域12a,12b間の境界をなす斜面Gd(図6に示す)が溝底Gbとなす傾斜角度(第4傾斜角度)は、本実施形態では90°以下であり、例えば60°である。
【0035】
本実施形態では、各目地溝10は、第1方向D1の一方端と他方端(即ち縁端E1と縁端E2)において、第2方向D2の長さが同一の溝底Gbを有する。具体的には、各浅目地溝11の溝底Gbの幅w1は、当該浅目地溝11の第1方向D1の一方端と他方端において同一であり、各深目地溝12の溝底Gbの幅w2は、当該深目地溝12の第1方向D1の一方端と他方端において同一である。
【0036】
このような構成は、同一形状の複数枚の建築板Xがそれらの第2縁端を介して継ぎ合わされた状態において、一方の建築板Xの各目地溝10と他方の建築板Xの各目地溝Xとが合わさって連続する通し目地をなすようにするのに適し、従って、その継合せ箇所が目立つことを抑制するのに適する。
【0037】
本実施形態では、目地溝10における第1方向D1の一方端での溝底Gbの幅(第2方向D2の長さ)は、複数の目地溝10の間で同一とはされていない。このような構成に代えて、目地溝10における第1方向D1の当該一方端での溝底Gbの幅は、複数の目地溝10の間で同一とされてもよい。また、本実施形態では、目地溝10における第1方向D1の他方端での溝底Gbの幅(第2方向D2の長さ)は、複数の目地溝10の間で同一とはされていない。このような構成に代えて、目地溝10における第1方向D1の当該他方端での溝底Gbの幅は、複数の目地溝10の間で同一とされてもよい。
【0038】
意匠面Sにおいて、各目地溝20は、第2方向D2に延び、少なくとも一本の目地溝10と繋がり、複数の目地溝20には、一の目地溝10から他の目地溝10に至るように第2方向D2に延びる目地溝20が含まれる。複数の目地溝20には、本実施形態では、一の目地溝10から他の目地溝10までの間で少なくとも一本の目地溝10と交差する目地溝20が含まれる。また、複数の目地溝20には、目地溝10に対して直交せずに傾斜している目地溝20が含まれてもよい。以上のような目地溝20には、例えば、浅目地溝11と同様に、溝の深さに変化が付けられていてもよい。
【0039】
複数の意匠凸部30には、線状目地31を有する意匠凸部30Bが複数含まれる。線状目地31とは、意匠凸部30の外観につき第1方向D1における非連続性を生じさせる線状の区切りであり、例えば、意匠凸部30において線状目地31を介して隣り合う部分30b(部分凸部)間に建築板厚さ方向の段差を生じさせる区切りである。線状目地31は、例えば第2方向D2に延びる。
【0040】
線状目地31を介して隣り合う二つの部分30bは、例えば図8に示すように、共通に面する目地溝10のうち少なくとも一方の有する溝底Gbとなす境界線L2,L2が第2方向D2において互いに位置ずれしていてもよい。
【0041】
図2に示すように、建築板Xは、縁端E1とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための上実構造部41を有し、且つ、縁端E2とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための下実構造部42を有する。これら上実構造部41および下実構造部42には、相決り継ぎ合わせにおける部材間の隙間を埋めるためのシーリング部43が設けられてもよい。本実施形態では、シーリング部43は、下実構造部42上に線状に設けられている。シーリング部43は、例えばホットメルト等の接着剤である。
【0042】
二枚の建築板Xはそれらの第1縁端(縁端E1,E2)を介して継ぎ合わせることができる。具体的には、一方の建築板Xの縁端E1側と他方の建築板Xの縁端E2側とを、図9に示すように相決りによって継ぎ合わせることができる。建築板Xの二枚がそれらの第1縁端(縁端E1,E2)を介して継ぎ合わされた状態においては、図10に示すように、その継合せ箇所C1(図10では破線で表す)に、第1方向D1に延びる通し目地として目地溝10Mが形成される。このような目地溝10Mが形成される寸法および形状で、上述の上実構造部41および下実構造部42は設計されている。
【0043】
図3に示すように、建築板Xは、縁端E3とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための上実構造部44を有し、且つ、縁端E4とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための下実構造部45を有する。これら上実構造部44および下実構造部45には、相決り継ぎ合わせにおける部材間の隙間を埋めるためのシーリング部46が設けられてもよい。本実施形態では、シーリング部46は、下実構造部45上に線状に設けられている。シーリング部46は、例えばホットメルト等の接着剤である。
【0044】
二枚の建築板Xはそれらの第2縁端(縁端E3,E4)を介して継ぎ合わせることができる。具体的には、一方の建築板Xの縁端E3側と他方の建築板Xの縁端E4側とを、図11に示すように相決りによって継ぎ合わせることができる。建築板Xの二枚がそれらの第2縁端(縁端E3,E4)を介して継ぎ合わされた状態においては、図12に示すように、その継合せ箇所C2(図12では破線で表す)に、第2方向D2に延びる目地溝20Mが形成される箇所がある。このような目地溝20Mが形成される寸法および形状で、上述の上実構造部44および下実構造部46は設計されている。
【0045】
以上のような構成を備える建築板Xを用いての壁部の施工にあたっては、複数枚の建築板Xが上下方向(縦方向)や左右方向(横方向)に継ぎ合わされる。具体的には、複数の建築板Xをそれらの第1縁端(縁端E1,E2)どうしを例えば上下方向に継ぎ合わせて連ね、且つ、複数の建築板Xをそれらの第2縁端(縁端E3,E4)どうしを例えば左右方向に継ぎ合わせて連ねる。
なお、複数の建築板Xを上下方向や左右方向に継ぎ合わせたときに、不陸等の影響で複数の建築板X間に隙間ができる場合は、例えば、シーリングで隙間を埋めても良い。
【0046】
図13は、複数の建築板Xによる壁部施工構造の一例を表す。図13に示す壁部施工構造例では、各列二枚の建築板Xがそれらの第1縁端(縁端E1,E2)を介して上下方向(第2方向D2)に継ぎ合わされて連ねられ、且つ、各行二枚の建築板Xがそれらの第2縁端(縁端E3,E4)を介して左右方向(第1方向D1)に継ぎ合わされて連ねられている。
【0047】
上述の構成を備える建築板Xは、複数枚が継ぎ合わされたこのような施工状態において(即ち、建築板Xによる壁部施工構造において)、継合せ箇所やそのズレが目立つことを抑制するのに適する。具体的には、次のとおりである。
【0048】
建築板Xの意匠面Sには、上述のように、複数の目地溝10が通し目地として形成され、且つ、複数の目地溝10には、溝深さが異なる浅目地溝11と深目地溝12が含まれる(複数の目地溝10は、すべてに共通する溝深さを有しているのではない)。図10を参照しつつ上述したように、上下方向に隣接した建築板Xの間の継合せ箇所C1には、第1方向D1に延びる通し目地として目地溝10Mが形成される。その目地溝10Mは、意匠面Sにおける通し目地である各目地溝10(浅目地溝11,深目地溝12)に似ている。
【0049】
継合せ箇所C1における通し目地としての目地溝10M、および、意匠面Sにおける通し目地としての複数の目地溝10は、第2方向D2に相互に離隔して並列し、且つ、溝深さが共通していない。そのため、継合せ箇所C1における通し目地である目地溝10Mは、目立つことが抑制される。すなわち、建築板Xの意匠面Sにおける複数の目地溝10(浅目地溝11,深目地溝12)は、目地溝10Mが目立つことを抑制し、ひいては、継合せ箇所C1そのものが目立つことを抑制する。
【0050】
また、左右方向に隣接した建築板Xの間の継合せ箇所C2(図12に示す)に形成される、第2方向D2に延びる上述の目地溝20Mは、意匠面Sにおいて同じく第2方向D2に延びる各目地溝20に似ている。そのため、建築板Xの意匠面Sにおける複数の目地溝20は、継合せ箇所C2に形成される目地溝20Mが目立つことを抑制し、ひいては、継合せ箇所C2そのものが目立つことを抑制する。
【0051】
加えて、建築板Xの目地溝10には、上述のように、深さ変化が付けられている浅目地溝11が含まれる。浅目地溝11における深さ変化ないし段差は、上述の継合せ箇所C2において隣接した建築板X間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差に似ている。しかも、複数の目地溝10において深目地溝12より浅い浅目地溝11における深さ変化ないし段差は、目立ちやすい。このような浅目地溝11における深さ変化は、継合せ箇所C2で隣接した建築板X間に厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差が目立つことを抑制する。
【0052】
更に、上述の継合せ箇所C2において隣接した建築板X間に第2方向D2のズレが生じた結果、隣接した建築板Xの意匠面S間に第2方向D2の段差又は位置ずれが生じた場合に、浅目地溝11における深さ変化ないし段差は、その段差又は位置ずれが目立つことを抑制する。また隣接した建築板X間に第2方向D2のズレが生じていない場合でも、浅目地溝11における深さ変化ないし段差は継合せ箇所C2に集まるべき注目を分散させ、継合せ箇所C2の目立ちを抑制する。
【0053】
図7を参照しつつ上述したように、建築板Xにおける複数の意匠凸部30には、一の目地溝20を介して隣り合い、且つ、共通に面する目地溝10のうち少なくとも一方の有する溝底Gbとなす境界線L1,L1が第2方向D2に互いに位置ずれしている、一対の意匠凸部30Aが含まれる。目地溝20を介して隣り合う意匠凸部30A間におけるこのような位置ずれ形状は、上述の継合せ箇所C2にて隣り合う建築板Xに第2方向D2のズレが生じた場合の、当該箇所で第2方向D2に延びる目地溝20Mを介して隣り合う意匠凸部30間の位置ずれ形状に似ており、それが目立つのを抑制する。
【0054】
また、建築板Xにおける複数の意匠凸部30には、上述したように、線状目地31(意匠凸部30の外観につき第1方向D1における非連続性を生じさせる線状の区切り)を有する意匠凸部30Bが複数含まれる。区切りとしての線状目地30は、上述の継合せ箇所C2において隣り合う建築板Xに厚さ方向のズレが生じた場合に形成される段差など第1方向D1における非連続的形状に似ており、従って、それが目立つことを抑制する。
【0055】
図8を参照しつつ上述したように、線状目地31を介して隣り合う二つの部分30bは、共通に面する目地溝10のうち少なくとも一方の有する溝底Gbとなす境界線L2,L2が第2方向D2において互いに位置ずれしていてもよい。線状目地30を介して隣り合う部分30b(部分凸部)間のこのような位置ずれ形状は、上述の継合せ箇所C2で第2方向D2のズレが生じた場合の、当該箇所の継ぎ目(第2方向D2に延びる)を介して隣り合う意匠凸部30(隣接した建築板Xの意匠凸部30)間の位置ずれ形状に似ており、それが目立つのを抑制する。
【0056】
以上のように、建築板Xは、複数枚が継ぎ合わされた施工状態において(即ち、建築板Xによる壁部施工構造において)、継合せ箇所やそのズレが目立つことを抑制できる。
【符号の説明】
【0057】
X 建築板
E1~E4 縁端
S 意匠面
D1 第1方向
D2 第2方向
10 目地溝(第1目地溝)
11 浅目地溝
11a 浅目地域(第1浅目地域)
11b 浅目地域(第2浅目地域)
11c 浅目地域(第3浅目地域)
12 深目地溝
12a 深目地域(第1深目地域)
12b 深目地域(第2深目地域)
Gb 溝底
20 目地溝(第2目地溝)
30,30A,30B 意匠凸部
30b 部分(部分凸部)
31 線状目地
41,44 上実構造部
42,45 下実構造部
43,46 シーリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13