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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/055 20060101AFI20221128BHJP
   A63B 23/12 20060101ALI20221128BHJP
   A63B 23/02 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A63B21/055
A63B23/12
A63B23/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019067352
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162935
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3096564(JP,U)
【文献】実開昭53-012052(JP,U)
【文献】米国特許第07628743(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00 - 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸長するのに伴って縮径する形態での弾性変形が可能な長尺弾性体と、
前記長尺弾性体に長さ方向への移動を可能に外嵌され、前記長尺弾性体が弾性変形していない状態では前記長尺弾性体との間の摩擦により移動規制される複数の可動体とを備え、
前記長尺弾性体を上下方向に向けて伸長させていく過程で前記可動体が降下を開始するタイミングは、前記複数の可動体の相互間で相違していることを特徴とするトレーニング器具。
【請求項2】
伸長するのに伴って縮径する形態での弾性変形が可能な長尺弾性体と、
前記長尺弾性体に長さ方向への移動を可能に外嵌され、前記長尺弾性体が弾性変形していない状態では前記長尺弾性体との間の摩擦により移動規制される複数の可動体とを備え、
前記長尺弾性体を上下方向に向けて所定長さまで伸長させたときの前記可動体の降下速度は、前記複数の可動体の相互間で相違していることを特徴とするトレーニング器具。
【請求項3】
前記長尺弾性体の外周には、複数の突部が前記長尺弾性体の長さ方向に並ぶように設けられており、
前記複数の可動体は長さ寸法が互いに異なっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニング器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゴム等の弾性的に伸縮可能な紐状体を三つ編みにした本体に、2つの球状体を移動可能に外嵌したストレッチ器具が開示されている。このストレッチ器具は、紐状の本体を上下に引っ張ると、本体が細くなるので球状体が降下するようになっている。本体を引っ張ったときの向きが鉛直方向に近いほど、球状体の降下速度が速くなる。しかし、引っ張ったときの本体の向きを、水平に近い向きから垂直方向へ向けていくほど、使用者が身体に感じる負荷が大きくなる。この現象を利用し、球状体がなるべく早く落ちるように本体の引張り方を垂直に近づけることで、使用者の姿勢や身体バランスを自然と真っ直ぐに近づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3132216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のストレッチ器具は、本体の伸長量に応じて使用者への負荷を増減させることができるのであるが、本体を所定長さまで伸ばしてしまうと、2つの球状体が同時に同じ速度で降下するという単純な構造である。そのため、使用形態が1つだけであり、使用者の体力やトレーニング目標に応じた複数の使用形態を選択することができない。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、使用者の体力やトレーニング目標に応じた複数の使用形態を選択できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、
伸長するのに伴って縮径する形態での弾性変形が可能な長尺弾性体と、
前記長尺弾性体に長さ方向への移動を可能に外嵌され、前記長尺弾性体が弾性変形していない状態では前記長尺弾性体との間の摩擦により移動規制される複数の可動体とを備え、
前記長尺弾性体を上下方向に向けて伸長させていく過程で前記可動体が降下を開始するタイミングは、前記複数の可動体の相互間で相違していることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、
伸長するのに伴って縮径する形態での弾性変形が可能な長尺弾性体と、
前記長尺弾性体に長さ方向への移動を可能に外嵌され、前記長尺弾性体が弾性変形していない状態では前記長尺弾性体との間の摩擦により移動規制される複数の可動体とを備え、
前記長尺弾性体を上下方向に向けて所定長さまで伸長させたときの前記可動体の降下速度は、前記複数の可動体の相互間で相違していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明のトレーニング器具は、長尺弾性体を上下方向に向けて両手で伸ばすようにして使用することができる。両腕を上下に大きく開くことにより、肩関節や肘関節の可動域を拡げることができるとともに、普段は自分自身で伸ばすことのできない筋肉群をストレッチすることができる。また、長尺弾性体の伸長量に応じて負荷が増大するので、上半身の筋力強化を図ることができる。このトレーニング器具は、長尺弾性体の伸長量と複数の可動体の並び順によって、複数の可動体の降下形態が変わる。複数の可動体の並び順を選択し、複数の可動体の降下形態を目安にすることにより、使用者の体力やトレーニング目標に応じて好適な負荷をかけることができる。第1の発明のトレーニング器具は、使用者の体力やトレーニング目標に応じた複数の使用形態を選択することが可能である。
【0009】
第2の発明のトレーニング器具は、長尺弾性体を上下方向に向けて両手で伸ばすようにして使用することができる。両腕を上下に大きく開くことにより、肩関節や肘関節の可動域を拡げることができるとともに、普段は自分自身で伸ばすことのできない筋肉群をストレッチすることができる。また、長尺弾性体の伸長量に応じて負荷が増大するので、上半身の筋力強化を図ることができる。このトレーニング器具は、長尺弾性体を所定長さまで伸長させたときの可動体の降下所要時間は、複数の可動体相互間で異なる。長尺弾性体を伸長状態に維持するトレーニングを行う際には、使用者の体力やトレーニング目標に応じて何れかの可動体を選択し、選択した可動体の降下所要時間を、長尺弾性体の伸長維持時間の目安にすることができる。第2の発明のトレーニング器具は、使用者の体力やトレーニング目標に応じた複数の使用形態を選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のトレーニング器具を小さくまとめて置いた状態をあらわす斜視図である。
図2】トレーニング器具の使用例をあらわす斜視図である。
図3】長尺弾性体に第1可動体と第2可動体を外嵌した状態をあらわす部分拡大正断面図である。
図4】長尺弾性体に第1可動体を外嵌した状態をあらわす部分拡大平面図である。
図5】長尺弾性体に第2可動体を外嵌した状態をあらわす部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記長尺弾性体の外周には、複数の突部が前記長尺弾性体の長さ方向に並ぶように設けられており、前記複数の可動体は長さ寸法が互いに異なっていることが好ましい。可動体が降下する過程では、可動体が姿勢を僅かに傾けて突部に引っ掛かった後、姿勢を別の向きへ傾けて突部から外れるという動作を繰り返す。このとき、長さ寸法の大きい可動体の傾き角度は、長さ寸法の小さい可動体に比べて小さいので、長さ寸法の大きい可動体の降下速度は、長さ寸法の小さい可動体よりも速い。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図5を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、図2,3にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0013】
本実施例1のトレーニング器具Aは、図1に示すように、1本の長尺弾性体10と、2つ(複数の)の可動体20,30とを備えて構成されている。図1,3に示すように、長尺弾性体10は、3本のシリコーンゴム製のゴム紐11を三つ編みにしたものである。したがって、長尺弾性体10の外周面には、ゴム紐11のうち三つ編みにするために外向きから内向きへ湾曲させた部位が、複数の突部12として存在している。長尺弾性体10が弾性変形していない自由状態であるときに、複数の突部12は、長尺弾性体10の長さ方向(軸線方向)及び周方向の両方向において、一定のピッチで並ぶように配されている。
【0014】
ゴム紐11の各ゴム紐11の断面形状は真円形であり、ゴム紐11の外径は全長に亘って一定である。3本のゴム紐11の外径寸法と長さ寸法は、同一である。長尺弾性体10の両端部には、長尺弾性体10をリング状に結ぶことによって一対の掴み部13が形成されている。図2に示すように、トレーニング器具Aの使用者Uは、一対の掴み部13の両手Hを引っかけることにより、長尺弾性体10(ゴム紐11)を弾性的に伸長させることができる。
【0015】
本実施例1において、3本のゴム紐11(長尺弾性体10の突部12)に外接する仮想円の直径寸法を、1本の長尺弾性体10の外径寸法と定義する。長尺弾性体10が弾性的に伸長していない自由状態においては、図1に示すように、3本のゴム紐11同士の間に隙間が空いた状態となっている。即ち、長尺弾性体10を長さ方向と直角に切断した断面において、自由状態の3本のゴム紐11の間には隙間が存在する。自由状態の長尺弾性体10が伸長し始めると、3本のゴム紐11が、互いに径方向及び周方向に接近しながら弾性的に伸長していく。この長尺弾性体10の弾性的な伸長に伴い、長尺弾性体10の外径寸法が小さくなっていく。
【0016】
第1可動体20は、長尺弾性体10(ゴム紐11)と同じくシリコーンゴムからなる。第1可動体20は、全体として軸線を上下方向に向けた上下対称な縦長の筒状をなす。図3,4に示すように、第1可動体20には、上下方向に貫通した形態の第1挿通孔21が形成されている。第1可動体20を水平に切断したときの第1挿通孔21の断面形状は、真円形である。第1挿通孔21の内径寸法は、第1挿通孔21の全長に亘って一定である。第1挿通孔21の内径寸法は、自由状態における長尺弾性体10の外径寸法よりも小さい。第1可動体20(第1挿通孔21)の軸線方向(上下方向)の長さ寸法Laは、上下方向に隣り合う2つの突部12のピッチよりも大きい。
【0017】
第1可動体20の平面視形状及び底面視形状は、第1挿通孔21と同心の正方形である。第1可動体20の上下寸法は、第1可動体20の最大外径寸法(平面視における正方形の対角長さ)よりも大きい。第1可動体20の外周面は、二対の第1平面22と二対の第2平面23と四対の第3平面24とを備えて構成されている。第1平面22は、二等辺三角形からなり、底辺を共通として上下対称に隣接するもの同士が対をなす。二対の第1平面22は第1可動体20の前面と後面を構成する。第2平面23は、等脚台形からなり、下底同士を共通として上下対称に隣接するもの同士が対をなす。
【0018】
二対の第2平面23は第1可動体20の左右両側面を構成する。第3平面24は、不等辺三角形からなり、頂角同士を共通として上下対称に隣接するもの同士が対をなす。四対の第3平面24は、周方向において第1平面22と第2平面23の間に介在するように配されている。平面視及び底面視において、2つの第2平面23の上底と4つの第3平面24の底辺は、第1挿通孔21と同心の正六角形を構成する。
【0019】
第2可動体30は、長尺弾性体10(ゴム紐11)及び第1可動体20と同じくシリコーンゴムからなる。図3,5に示すように、第2可動体30は、全体として軸線を上下方向に向けた筒状をなす。第2可動体30には、上下方向に貫通した形態の第2挿通孔31が形成されている。第2可動体30を水平に切断したときの第2挿通孔31の断面形状は、真円形である。第2挿通孔31の内径寸法は、第2挿通孔31の全長に亘って一定である。第2挿通孔31の内径寸法は、自由状態における長尺弾性体10の外径寸法よりも小さく、第1挿通孔21の内径と同じ寸法である。
【0020】
第2可動体20(第2挿通孔31)の軸線方向(上下方向)の長さ寸法Lbは、上下方向に隣り合う2つの突部12のピッチよりも大きいが、第1挿通孔21の長さ寸法Laより小さい。例えば、第1挿通孔21(第1可動体20)の長さ寸法Laは、第2挿通孔31(第2可動体30)の長さ寸法Lbの約1.7倍である。第1挿通孔21と第2挿通孔31は内径が同じ寸法なので、第1挿通孔21の内周面積は、第2挿通孔31の内周面積より大きい。第1可動体20の重量W(体積)は第2可動体30の重量W(体積)より大きい。例えば、第1可動体20の重量W(体積)は、第2可動体30の重量W(体積)の約1.1倍~1.4倍である。
【0021】
第2可動体30の外周面は、上下2つの多面部33によって構成されている。上側の多面部33は、同一寸法の正五角形からなる5つの多角面34を、周方向に隣接させ全周に亘って連ねた形態である。下側の多面部33も、同一寸法の正五角形からなる5つの多角面34を、周方向に隣接させ全周に亘って連ねた形態である。上側の多角面34と下側の多角面34は、周方向に半ピッチずれた位置関係で隣接している。各多角面34のうち第2可動体30の上端縁又は下端縁を構成する辺は、第2可動体30の正面視及び底面視において、第2挿通孔31と同心の正五角形を構成する。
【0022】
長尺弾性体10が弾性的に伸長していない自由状態にあるときは、長尺弾性体10の外径寸法が第1挿通孔21の内径より大きいので、第1挿通孔21内では長尺弾性体10が弾性的に縮径変形させられている。そのため、長尺弾性体10の径方向外向きの弾性復元力により、長尺弾性体10の外周(突部12)と第1挿通孔21の内周面との間には、長尺弾性体10の弾性復元力による摩擦力Fが生じる。このときの摩擦力Fは第1可動体20の重量Wよりも大きいので、長尺弾性体10を自重により上下方向に向けても、第1可動体20は降下しない。同様に、長尺弾性体10が自由状態にあるときには、第2可動体30も降下しない。
【0023】
長尺弾性体10を弾性的に伸長させると、長尺弾性体10の外径寸法が次第に小さくなっていくので、第1挿通孔21に対する長尺弾性体10からの径方向外向きの弾性復元力も小さくなっていく。そのため、長尺弾性体10を所定の長さまで伸長させると、長尺弾性体10と第1挿通孔21(第1可動体20)との間の摩擦力Fが第1可動体20の重量Wよりも小さくなるので、第1可動体20が降下を開始する。第1可動体20と同様に、第2可動体30も、長尺弾性体10が所定長さまで伸長した時点で、降下を開始する。
【0024】
上述のように長尺弾性体10の伸長過程で第1可動体20と第2可動体30が降下を開始するタイミングは、各可動体20,30の重量Wと、各可動体20,30と長尺弾性体10との間に生じる摩擦力Fとの大小関係で決まる。摩擦力Fは、長尺弾性体10と各可動体20,30との間の摩擦係数μと、長尺弾性体10の弾性復元力に起因する径方向外向きの抗力Rとによって決まり、F=μ・Rの式であらわされる。摩擦係数μは、長尺弾性体10の材料と各可動体20,30の材料との関係で決まる。
【0025】
長尺弾性体10の抗力Rは、長尺弾性体10の伸長量(長尺弾性体10の外径寸法)に起因する径方向外向きの圧力Pと、各挿通孔21,31の内周における長尺弾性体10との接触面積S(各挿通孔21,31の長さ寸法La,Lbや内径寸法)に依存する。これらのパラメータの大小関係により、第1可動体20と第2可動体30のうちいずれが先に降下を開始するかが決まる。パラメータの設定によっては、第1可動体20と第2可動体30が同じタイミングで降下を開始する場合もある。
【0026】
本実施例1のトレーニング器具Aの場合、第1挿通孔21と第2挿通孔31の内径は同じ寸法であるが、第1挿通孔21の内周面に弾性接触する突部12の数は、第2挿通孔31の内周面に弾接する突部12の数より多い。したがって、長尺弾性体10が弾性的に伸長したときに、その伸長寸法に拘わらず、第1可動体20に生じる摩擦力Fは第2可動体30における摩擦力Fより大きくなる。摩擦力Fは、各挿通孔21,31の内周面に弾性接触する突部12の数に比例し、各挿通孔21,31の内周面に弾性接触する突部12の数は概ね各挿通孔21,31の長さ寸法La,Lb(内周面積)に比例する。したがって、第1挿通孔21に生じる摩擦力Fは第2挿通孔31に生じる摩擦力Fの約1.7倍である。
【0027】
一方、第1可動体20は第2可動体30よりも重量Wが大きく、第1可動体20の重量Wと第2可動体30の重量Wの比の値は、約1.1~1.4である。この第1可動体20と第2可動体30の重量W比は、第1可動体20に生じる摩擦力Fと第2可動体30に生じる摩擦力Fの比の値(約1.7)よりも小さい。そのため、第2可動体30の方が第1可動体20よりも先に下降を開始するようになっている。
【0028】
本実施例1では、第1可動体20の重量Wと第2可動体30の重量Wが異なっているだけでなく、長尺弾性体10が自由状態のときの第1可動体20に生じる摩擦力Fと第2可動体30に生じる摩擦力Fも異なっている。そして、重量W比と、長尺弾性体10が自由状態のときに生じる摩擦力Fの比は、第1可動体20と第2可動体30との相互間で異なっている。これにより、長尺弾性体10が伸長する過程において、第1可動体20の降下開始と第2可動体30の降下開始のタイミングが異なっている。
【0029】
また、第1可動体20と第2可動体30が降下を開始した後の、各可動体20,30の降下速度は、互いに相違している。各可動体20,30が降下する際には、可動体20,30が長尺弾性体10の軸線に対して僅かに姿勢を傾けて、可動体20,30の挿通孔21,31の下側の開口縁部が、一旦、突部12に引っ掛かる。その直後、可動体20,30の姿勢が別の方向へ傾くことによって突部12を通過し、別の突部12に引っ掛かる、という動作を繰り返していく。
【0030】
このとき、挿通孔21,31の長さ寸法La,Lbが大きいほど、可動体20,30の傾き角度が小さくなるので、突部12に対する各可動体20,30の引っ掛かり代が小さくなる。突部12との引っ掛かり代が小さいほど、各可動体20,30が姿勢を変えて突部12を通過するのに要する時間が短くなる。したがって、本実施例1のトレーニング器具Aは、上下寸法の大きい第1可動体20の方が、第2可動体30よりも降下速度が速い。
【0031】
次に、本実施例1のトレーニング器具Aを用いて行うトレーニングの方法について説明する。長尺弾性体10の両端部の掴み部13を両手Hで掴み、トレーニング器具Aが使用者Uの側方に位置するように(図2を参照)又は使用者Uの前方に位置するように両腕Aを伸ばす。この状態で、両腕Aを上下方向へ拡げることにより、長尺弾性体10を上下方向に伸長させるように弾性変形させる。両腕Aを伸ばして上下方向に大きく開く動作は、日常生活では殆ど行われないので、肩関節や肘関節の可動域を拡げることができる。関節を大きく動かすと、関節に繋がっている筋肉が大きく伸び縮みするので、凝り固まってしまった筋肉群を伸ばしたり緩めたりするストレッチ効果を得ることができる。また、長尺弾性体10が弾性的に伸長するのに伴い、長尺弾性体10に蓄勢される弾性復元力が増大するので、使用者Uに作用する負荷が強くなる。これにより、上半身(腕A、肩、胸部、背中、腹部等)の筋力強化を図ることができる。
【0032】
このとき、使用者Uの体力やトレーニング目標等に応じて、適切な負荷がかかるようにすることが望ましい。そこで、使用者Uは、第1可動体20と第2可動体30のうちいずれかの可動体20,30を選択する。例えば、負荷を小さくしたい場合は、降下開始タイミングの早い第2可動体30が第1可動体20よりも下側に位置する向きにして、長尺弾性体10を伸長させる。すると、長尺弾性体10の伸長量が比較的少ない段階、即ち負荷が小さい段階で、第2可動体30が降下を開始する。したがって、第2可動体30が降下を開始するタイミングを目安にすることで、比較的小さい負荷で腕Aを鍛えることができる。
【0033】
また、負荷を大きくしたい場合は、降下開始タイミングの遅い第1可動体20が第2可動体30よりも下側に位置する向きにして、長尺弾性体10を伸長させる。すると、長尺弾性体10の伸長量が比較的多くなるまで、即ち負荷がある程度大きくなるまでは、第1可動体20の降下が開始されない。したがって、第1可動体20が降下を開始するタイミングを目安にすることで、比較的大きい負荷で腕Aを鍛えることができる。このように、本実施例1のトレーニング器具Aを用いれば、使用者Uの体力やトレーニング目標に応じて負荷の大きさを変えるトレーニングを行うことができる。
【0034】
また、本実施例1のトレーニング器具Aを用いた別のトレーニングの方法としては、長尺弾性体10を伸長させた状態に維持することで、持久力を高めることができる。降下速度の速い第1可動体20は、降下を開始してから降下を終了するまでに要する降下所要時間が、比較的短い。したがって、第1可動体20の降下所要時間を、長尺弾性体10の伸長状態を維持する時間の目安にすれば、比較的軽めの負荷で腕Aの持久力アップを図ることができる。
【0035】
また、降下速度の遅い第2可動体30は、降下を開始してから降下を終了するまでに要する降下所要時間が、比較的長い。したがって、第2可動体30の降下所要時間を、長尺弾性体10の伸長状態を維持する時間の目安にすれば、比較的強めの負荷で腕Aの持久力アップを図ることができる。このように、本実施例1のトレーニング器具Aを用いれば、使用者Uの体力やトレーニング目標に応じて持久力アップを図るトレーニングを行うことができる。
【0036】
本実施例1のトレーニング器具Aは、伸長するのに伴って縮径する形態での弾性変形が可能な長尺弾性体10と、長尺弾性体10に長さ方向への移動を可能に外嵌された第1可動体20及び第2可動体30を有する。長尺弾性体10が弾性変形していない自由状態では、第1可動体20と第2可動体30は長尺弾性体10との間の摩擦により移動規制される。本実施例1のトレーニング器具Aは、使用者Uの体力やトレーニング目標に応じた複数の使用形態を選択することが可能である。
【0037】
即ち、長尺弾性体10を上下方向に向けて伸長させていく過程で第1可動体20と第2可動体30が降下を開始するタイミングは、第1可動体20及び第2可動体30の相互間で相違している。長尺弾性体10を上下方向に向けて両手Hで伸ばしたときの第1可動体20と第2可動体30の上下の並び順と、長尺弾性体10の伸長量とに応じて、第1可動体20と第2可動体30の降下形態が変わる。したがって、両可動体20,30の並び順を選択し、両可動体20,30の降下形態を目安にすることにより、使用者Uの体力やトレーニング目標に応じて好適な負荷をかけることができる。
【0038】
また、長尺弾性体10を上下方向に向けて所定長さまで伸長させたときの第1可動体20と第2可動体30の降下速度は、第1可動体20及び第2可動体30の相互間で相違している。これにより、長尺弾性体10を所定長さまで伸長させたとき、第1可動体20の降下所要時間と第2可動体30の降下所要時間は互いに異なる。長尺弾性体10を伸長状態に維持するトレーニングを行う際には、使用者Uの体力やトレーニング目標に応じて何れかの可動体20,30を選択し、選択した可動体20,30の降下所要時間を、長尺弾性体10の伸長維持時間の目安にすることができる。
【0039】
第1可動体20と第2可動体30の降下速度を異ならせる構成は、次の通りである。長尺弾性体10の外周には、複数の突部12が長尺弾性体10の長さ方向に並ぶように設けられている。第1可動体20と第2可動体30は、長尺弾性体10の軸線方向における長さ寸法La,Lbが互いに異なっている。可動体20,30が降下する過程では、可動体20,30が姿勢を僅かに傾けて突部12に引っ掛かった後、姿勢を異なる向きへ傾けて突部12から外れるという動作を繰り返す。このとき、長さ寸法Laの大きい第1可動体20の傾き角度は、長さ寸法Lbの小さい第2可動体30に比べて小さいので、長さ寸法Laの大きい第1可動体20の降下速度は、長さ寸法Lbの小さい第2可動体30よりも速い。
【0040】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施例では、第1挿通孔と第2挿通孔の内径寸法が同じであるが、双方の挿通孔の内径寸法は異なっていてもよい。この場合も、第1可動体と第2可動体の重量(体積)、材料、挿通孔の長さ寸法、挿通孔の表面粗さ等を異なるものとすることにより、降下開始のタイミングと降下速度を両可動体間で相違させることができる。
上記実施例では、第1挿通孔と第2挿通孔の長さ寸法が異なっているが、双方の挿通孔の長さ寸法は同じ寸法であってもよい。この場合、第1可動体と第2可動体の重量(体積)、材料、挿通孔の内径寸法、挿通孔の表面粗さ等を異なるものとすることにより、降下開始のタイミングと降下速度を両可動体間で相違させることができる。
上記実施例では、第1可動体と第2可動体は重量(体積)が異なっているが、第1可動体と第2可動体の重量(体積)は同じであってもよい。この場合、第1可動体と第2可動体の材料、挿通孔の内径寸法、挿通孔の長さ寸法、挿通孔の表面粗さ等を異なるものとすることにより、降下開始のタイミングと降下速度を両可動体間で相違させることができる。
上記実施例では、第1可動体と第2可動体は同じ材料からなるが、第1可動体の材料と第2可動体の材料は異なっていてもよい。この場合、第1可動体と第2可動体の重量(体積)、第1挿通孔と第2挿通孔の内径寸法、第1挿通孔と第2挿通孔の長さ寸法、第1挿通孔と第2挿通孔の表面粗さ等を異なるものとすることにより、降下開始のタイミングと降下速度を両可動体間で相違させることができる。
上記実施例では、第1挿通孔と第2挿通孔の断面形状を真円形としたが、第1挿通孔と第2挿通孔の断面形状は、長円形、楕円形、多角形等、真円以外の形状であってもよい。
上記実施例では、第1挿通孔と第2挿通孔の内周面が滑らかな曲面で構成されているが、第1挿通孔と第2挿通孔の内周面は、長さ方向に沿ったリブを形成した形態や、複数の突起を長さ方向や周方向に並べた形態等であってもよい。
上記実施例では、第1挿通孔の内径寸法が第1挿通孔の全長に亘って一定であるが、第1挿通孔の内径寸法は、長さ方向において部分的に異なっていてもよく、長さ方向に沿って次第に変化していってもよい。
上記実施例では、第2挿通孔の内径寸法が第2挿通孔の全長に亘って一定であるが、第2挿通孔の内径寸法は、長さ方向において部分的に異なっていてもよく、長さ方向に沿って次第に変化していってもよい。
【0041】
上記実施例では、1本の長尺弾性体に2つの可動体を外嵌したが、1本の長尺弾性体に外嵌する可動体の数は3つ以上でもよい。この場合、降下開始のタイミングは、全ての可動体の相互間で異なっていてもよく、一部の可動体同士で同じであってもよい。また、長尺弾性体が所定長さに伸長したときの降下速度は、全ての可動体の相互間で異なっていてもよく、一部の可動体同士で同じであってもよい。
上記実施例では、長尺弾性体が、同一形状及び同一寸法の3本のゴム紐を三つ編みにしたものであるが、長尺弾性体は、1本のゴム紐であってもよく、複数本のゴム紐を三つ編みにせずに束ねただけのものでもよく、ゴムや合成樹脂や金属等の弾性線材をコイル状にしたもの(コイルバネ)でもよく、複数の輪ゴムを連結したもの等でもよい。
上記実施例では、長尺弾性体の材料がシリコーンゴムであるが、長尺弾性体の材料はシリコーンゴム以外のものであってもよい。
上記実施例では、第1可動体の材料がシリコーンゴムであるが、第1可動体の材料はシリコーンゴム以外のものであってもよい。
上記実施例では、第2可動体の材料がシリコーンゴムであるが、第2可動体の材料はシリコーンゴム以外のものであってもよい。
上記実施例では、長尺弾性体の材料が第1可動体及び第2可動体と同じ材料であるが、長尺弾性体の材料は、第1可動体及び第2可動体とは異なる材料であってもよい。
【0042】
上記実施例のトレーニング器具において、第1可動体と第2可動体のうち少なくとも一方に、可動体の動きを検知するモーションセンサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)とマイコンを内蔵し、モーションセンサからの検知信号に基づいてトレーニング器具の使用状況を分析、記録するようにしてもよい。
上記実施例のトレーニング器具において、長尺弾性体(両端の掴み部等)に、長尺弾性体の伸長状態や動き等を検知するモーションセンサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)を取り付け、モーションセンサからの検知信号に基づいてトレーニング器具の使用状況を分析、記録するようにしてもよい。
上記実施例のトレーニング器具において、第1可動体と第2可動体のうち少なくとも一方に、鈴のように振動や衝撃によって機械的に音を発する器具を内蔵したり、スイッチ操作により音や音楽を電気的に鳴らす音源やスピーカーを内蔵したり、可動体の動きをセンサで検知して音や音楽を出力する電子機器を内蔵してもよい。このようにすると、音や音楽を耳で楽しみながらトレーニングを行うことができる。また、トレーニング器具を背中側に回して使用する場合には、可動体の動きを音によって認識することができる。
上記実施例のトレーニング器具において、長尺弾性体(両端の掴み部等)に、鈴のように振動や衝撃によって機械的に音を発する器具を内蔵したり、スイッチ操作により音や音楽を電気的に鳴らす音源やスピーカーを内蔵したり、長尺弾性体の伸長状態や動き等を検知して音や音楽を出力する電子機器を内蔵してもよい。このようにすると、音や音楽を耳で楽しみながらトレーニングを行うことができる。
上記実施例のトレーニング器具において、第1可動体と第2可動体の少なくとも一方に、スイッチ操作によりLED等を発光する光源を設けたり、可動体の動きをセンサで検知して発光する電子機器を内蔵してもよい。この場合、色が変化したり、点滅の形態が変化したりするようにしてもよい。このようにすると、光を目で楽しみながらトレーニングを行うことができる。
上記実施例のトレーニング器具において、長尺弾性体に、スイッチ操作によりLED等を発光する光源を設けたり、長尺弾性体の伸長状態や動きをセンサで検知して発光する電子機器を内蔵してもよい。この場合、色が変化したり、点滅の形態が変化したりするようにしてもよい。このようにすると、光を目で楽しみながらトレーニングを行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
A…トレーニング器具
La…第1可動体の長さ寸法
Lb…第2可動体の長さ寸法
10…長尺弾性体
12…突部
20…第1可動体(可動体)
30…第2可動体(可動体)
図1
図2
図3
図4
図5