(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】センサモジュール
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20221128BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B60C23/04 110A
B60C23/04 110E
B60C23/04 120C
B60C19/00 B
(21)【出願番号】P 2019068621
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】林 一夫
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214060(JP,A)
【文献】特開2017-004790(JP,A)
【文献】特開2018-154306(JP,A)
【文献】特開2012-088123(JP,A)
【文献】特開2012-089618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内周面に取り付けられ、タイヤ内の状態を検出するセンサ部と、
外部から供給される電波エネルギーを受電し、当該受電した電波エネルギーに基づいて電力を発生させ、前記センサ部に供給する受電コイルと、
を備えたセンサモジュールであって、
前記受電コイルは、
巻回部を備え、隣り合うコイル線が渦巻状に巻き回されたコイル線の間に弾性体が介在され、
前記巻回部の軸方向の端面である巻回面の一部が弾性体により被覆され、
前記巻回部を形成するコイル線の始端側と終端側とが前記巻回面を被覆する弾性体の表面から露出することを特徴とするセンサモジュール。
【請求項2】
前記受電コイルは、タイヤの内周面との間にゴム層を介してタイヤの内周面に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記ゴム層の厚さは、前記受電コイルの隣り合うコイル線との間に介在する弾性体よりも厚く設定されたことを特徴とする請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記受電コイルは、タイヤの内周面から所定距離離間して配置されたことを特徴とする請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記巻回部は、前記センサ部よりもタイヤの内周面側に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記受電コイルは、巻回面がタイヤの内周面に垂直な軸の周りに向けて取り付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれかに記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュールに関し、特に、タイヤ内に設けられてタイヤの状態を検出するセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの状態を検出するためのセンサー等で構成され、タイヤ内に設けられる装置が知られている。このような装置では、センサー等を駆動させるための電力の供給源として電池がセンサー等とともに内蔵されている。しかし、電池は、タイヤが寿命に達する前に電池切れを起こすという問題を内在している。
そこで、特許文献1では、電池切れの懸念をなくすために、タイヤ内の電池に換えてコイル(二次コイル)、車体には二次コイルに向けて磁束を生じさせるコイル(一次コイル)を車体に設け、タイヤが回転することにより二次コイルが一次コイルによって生じた磁束を貫くように構成し、誘導起電力を電力としてセンサー等に供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1では、2次コイルを形成する銅線同士が接触するように巻き回されているため、路面との接触を繰り返す過酷なタイヤ使用条件では、2次コイルを形成する銅線同士がフレッティングにより断線してしまい装置として機能しなくなる虞がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、受電コイルの耐久性を向上可能なセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのセンサモジュールの構成として、タイヤの内周面に取り付けられ、タイヤ内の状態を検出するセンサ部と、外部から供給される電波エネルギーを受電し、当該受電した電波エネルギーに基づいて電力を発生させ、センサ部に供給する受電コイルとを備えたセンサモジュールであって、受電コイルは、巻回部を備え、隣り合うコイル線が渦巻状に巻き回されたコイル線の間に弾性体が介在された構成とした。
本構成によれば、受電コイルを形成するコイル線同士がフレッティングにより断線することを防ぐことができ、その結果としてタイヤの使用寿命を超える長期にわたり安定してセンサ部に電力を供給することが可能となる。
また、センサモジュールの他の構成として、受前記受電コイルは、タイヤの内周面との間にゴム層を介してタイヤの内周面に取り付けたり、ゴム層の厚さを、受電コイルの隣り合うコイル線との間に介在する弾性体よりも厚く設定しても良い。また、受電コイルを、タイヤの内周面から所定距離離間して配置したり、巻回部を、センサ部よりもタイヤの内周面側に設けても良い。また、受電コイルを、巻回部の軸方向の端面である巻回面の少なくとも一部が弾性体により被覆し、巻回部を形成するコイル線の始端側と終端側とが巻回面を被覆する弾性体の表面から露出させたり、巻回面をタイヤの内周面の垂直な軸の周りに向けて取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】センサモジュールの取付状態を示す図である。
【
図2】センサモジュールの平面図及び断面図である。
【
図4】センサモジュールの使用形態を示す図である。
【
図7】受電コイルの配置の他の形態を示す図である。
【
図8】受電コイルの配置の他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0008】
図1は、センサモジュールの取付状態を示す図である。
図1に示すように、センサモジュール1は、センサユニット2と、取付台座3とを備える。センサユニット2は、タイヤ幅方向の中央部CLに取付台座3を介してタイヤ10の内周面10sを形成するインナーライナーに取り付けられる。例えば、センサモジュール1は、リムホイール15に組み付けられたタイヤ10の気室内の温度や圧力、振動等を検出するための複数のセンサーや、各センサーにより検出された検出値を送信する送信器及び各センサーや送信器を動作させるための電力を供給する電力供給部等の機能部品を備える。
【0009】
図2は、センサモジュールの平面図及び断面図である。
図3は、センサユニット及び取付台座の断面図である。以下、
図2,
図3を用いてセンサモジュール1を構成するセンサユニット2及び取付台座3について説明する。
【0010】
センサユニット2は、上述のように、タイヤ10の状態を検出するための複数のセンサ32(温度・圧力センサ);36(加速度センサ)、送信装置38、制御装置40、電力供給装置70等の電子部品をケース20に収容して構成され、センサ部として機能する。
【0011】
図3(a)に示すように、ケース20は、例えば、機能部品を収容するための主空間を形成する収容ケース20Aと、収容ケース20Aに対する蓋体として機能するキャップ20Bとを組み合わせることで構成される。ケース20の素材としては、例えば、センサユニット2の軽量化及び強度の観点から合成樹脂等が用いられる。収容ケース20A及びキャップ20Bは、平面視における形状が同一形状に形成され、収容ケース20Aとキャップ20Bとを組み合わせて一体化した場合であってもその形状が維持される。即ち、センサユニット2の外形形状は、ケース20の外形形状に一致する。
【0012】
収容ケース20Aには、機能部品を収容するための収容空間Sが設けられる。収容空間Sは、例えば、円筒状に形成される。収容空間Sは、収容ケース20Aの外周と同心円の円筒空間として形成される。この収容空間Sには、温度・圧力センサ32や加速度センサ36、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36により検出された温度、圧力、加速度等の検出値を送信するための送信装置38、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36の動作及び送信装置38の動作等を制御する制御装置40、及びそれらに電力を供給する電力供給装置70を構成する電子部品が収容される。
【0013】
温度・圧力センサ32や加速度センサ36、送信装置38、制御装置40及び電力供給装置70は、例えば、回路基板30上に実装される。なお、回路基板30の構成については、これに限定しない。
【0014】
回路基板30の一側面側には、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36が配置され、他面側には、送信器として機能する送信装置38、制御装置40及び電力供給装置70の一部とが配置される。また、回路基板30の一側面側には、後述の電力供給装置70を構成する受電コイル76から延長するコイル線の端部が接続される接続端子49が実装される。接続端子49は、回路基板30をケース20内の所定の位置に収容したときに、キャップ20Bに設けられた貫通孔22に挿入される。これにより、接続端子49は、キャップ20Bを閉めた状態で露出することになり、キャップ20Bを閉めた状態でコイル線の端部を接続することができる。
【0015】
温度・圧力センサ32は、タイヤ内の空気の温度及び圧力を検出する検出部にタイヤ内の空気を導入する導入筒32Aを備える。導入筒32Aは、回路基板30に対して垂直方向に延長し、回路基板30をケース20内の所定の位置に収容したときに、キャップ20Bに設けられた貫通孔24に挿入される。これにより、回路基板30をケース20内に収容した状態であっても、タイヤ内の空気に対して検出部が露出することになり、タイヤ気室内の状態を計測することができる。
【0016】
加速度センサ36は、例えば、タイヤ幅方向、半径方向及び周方向(回転接線方向)の3軸方向の加速度を測定可能とするセンサであって、回路基板30に設けられた位置決め部を基準にして所定の向きに取り付けられる。加速度センサ36の測定方向は、回路基板30をケース20に収容したときに、キャップ20Bに設けられた取付方向Mに対応するように設定される。具体的には、回路基板30をケース20内に収容し、センサユニット2としてタイヤ10に装着したときに、加速度センサ36の測定軸が、タイヤ幅方向、タイヤ前後方向、タイヤ半径方向に一致するように回路基板30に配設される。
【0017】
送信装置38は、送信回路として回路基板30に実装され、図外のアンテナを備える。送信装置38は、例えば、加速度センサ36がタイヤ10の回転(遠心力)を検出したことに基づいて所定のプログラムを実行し、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36によって検出されたタイヤ10内の温度、圧力、加速度を無線通信によりタイヤ外に送信する。送信装置38から無線により送信された温度、圧力及び加速度等の信号は、図外の車両に設けられた本体ユニットの無線回路により受信され、例えば、車内に設けられた表示器にタイヤの状態(温度、圧力、又は、異常の有り・無し)に関する情報を表示可能に構成される。
【0018】
電力供給装置70は、例えば、整流部72と、蓄電部74と、発電部としての受電コイル76とを備える。整流部72は、整流回路として回路基板30に実装される。蓄電部74は、例えば、コンデンサーや、ボタン型の充放電可能な2次電池を使用することができる。なお、蓄電部74の形態は、特に限定されない。
【0019】
受電コイル76は、取付台座3に設けられ、外部から供給される電波エネルギーを受電することにより、発電可能なコイルからなる。電力供給装置70は、受電コイル76が外部から供給される電波エネルギーを受電することにより、電力となる電流を生じさせ、生じた電流を整流部72により所定の規格の電流及び電圧に変換し、蓄電部74に蓄電するように構成される。なお、受電コイル76の構成については、後述する。
【0020】
電子部品が実装された回路基板30は、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36を収容ケース20Aの開口部側に向けて収容され、ケース20に対して回路基板30が所定の位置を向き、位置決めされるように収容空間Sに収容される。回路基板30をケース20に対する位置を設定する方法としては、例えば、収容空間Sを形成する内壁に突起を設け、回路基板30に突起に対応する切欠きを設けておくことで、回路基板30がケース20に対して位置決めされる。
【0021】
ケース20の内部には、上記回路基板30を収容した状態でポッティング材48が充填される。これにより、温度・圧力センサ32の検出部を除く回路基板30の全体がポッティング材48により覆われた状態にある。ポッティング材48の素材としては、ウレタン系樹脂、或いは、エポキシ系樹脂が好ましい。タイヤ10の回転時、特に高速回転したときであっても、タイヤ10が路面と衝突するときの衝撃をポッティング材48が回路基板30から受ける力を吸収し、十分な耐性を得ることができる。
【0022】
図2(a),(b)に示すように、センサユニット2の外形形状は、例えば、外径が一定の円盤型に形成され、例えば、底面2aをタイヤ10の内周面10sに向けた状態で取付台座3に収容される。
【0023】
図3(b)に特に示すように、取付台座3は、タイヤ10の内周面10sに対して貼付される取付面51aを有する貼付部51と、当該貼付部51から上方に向けて立ち上がり、センサユニット2を収容可能な収容空間としての略円筒状の収容部52を形成する収容壁部50と、電力供給装置70を構成する受電コイル76と、を有する。
【0024】
取付台座3は、タイヤ10の変形に追従するように、天然ゴムや合成ゴム等の弾性素材(エラストマー)により一体的に構成される。
図2(a)に示すように、貼付部51は、平面視において外形形状が円形の板状に形成される。貼付部51は、下面がタイヤ10の内周面10sと接して貼付される取付面51aとして形成される。取付面51aは、例えば、タイヤ10の内周面10sへの貼付前において平坦な面として形成される。
【0025】
貼付部51の上面(取付面51aと逆側の面)には、上方に向けて円筒状に突出する収容壁部50が設けられる。収容壁部50は、円形状の貼付部51の中心軸Oを中心とする同心円上に設けられ、その内周面54によってセンサユニット2の外形形状に対応する収容部52が形成される。収容壁部50は、収容部52内に収容されたセンサユニット2の外周面と接する周面保持部50aと、当該周面保持部50aの先端から半径方向内側に突出し、センサユニット2の上面2cの周縁部を押し下げるように保持する天面保持部50bとを有する。天面保持部50bの内径部は、センサユニット2の収容部52への収容を可能とする開口部56として形成され、センサユニット2は、当該開口部56を押し広げることにより収容される。
【0026】
収容壁部50の内周面54の直径は、センサユニット2の外周面2bの直径よりも小径に形成されており、センサユニット2を収容部52に収容した状態において、内周面54がセンサユニット2の外周面2bに沿って密着して拘束力を発揮する。
【0027】
図3に示すように、収容部52を形成する底面60、換言すれば、貼付部51の取付面51aと反対側の上面は、例えば、半径方向外側よりも中央側が高い凸状底面として形成される。より詳細には、底面60は、収容壁部50の下端部から中央側に向けて緩やかに上傾斜する傾斜面部62と、中央側において取付面51aと平行な平坦な面として形成された平坦面部64とを有する。
【0028】
従って、
図3に示すように、センサユニット2を上記底面60を有する収容部52内に圧入するように収容した場合、センサユニット2の底面2aによって平坦面部64がタイヤ10の内周面10s側に押圧され、取付面51a側がタイヤ10の内周面10sの湾曲形状に沿って弓なりに変形し、タイヤ10の内周面10sの曲率に沿って密に接することとなる。換言すれば、収容部52を形成する底面60が、センサユニット2の底面2aによって圧接された状態となる。またこの時、センサユニット2は、収容部52内において内周面54、天面保持部50b及び底面60に取り囲まれて密着状態が維持され、タイヤ10の転動時においても強固に拘束される。
【0029】
貼付部51には、電力供給装置70を構成する受電コイル76が設けられる。
図2(a),(b)に示すように、本実施形態に係る受電コイル76は、貼付部51に埋設して設けられる。受電コイル76は、例えば、円板状に形成された貼付部51の中心を中心とし、半径方向外側に向けて漸次拡径する渦巻状にコイル線77を巻き回して形成される。なお、本実施形態では、コイル線77は、貼付部51の取付面51aに平行な一つの平面内に巻き回されたものとして説明する。
【0030】
コイル線77の巻き回しにおける始端側の内側の端部76A側は、収容壁部50の内部を、収容壁部50に沿って延長し、例えば、周面保持部50aと天面保持部50bとの境界部分から露出する。また、コイル線77の巻き回しにおける、例えば、終端側の外側の端部76B側は、貼付部51に埋設された状態で、渦巻状に形成された巻回部76Cの上方を横切るように収容壁部50まで延長した後に、収容壁部50の内部を、収容壁部50の立ち上り方向に沿って延長することで被覆された状態で、例えば、周面保持部50aと天面保持部50bとの境界部分から露出する。受電コイル76の内側の端部76A及び外側の端部76Bは、独立した状態を維持したままコネクタ78により一体化される。
【0031】
図2(c)に示すように、受電コイル76は、貼付部51に埋設された状態において、巻回部76Cを形成するコイル線77の最下部から取付面51aまでの距離(厚み)a2のゴム層Fが設けられる。
が、少なくとも0.5mm、好ましくは0.5mm以上の厚みを有するゴム層Fが設定される。
【0032】
さらに、受電コイル76は、巻回部76Cが、貼付部51に埋設された状態において、隣り合うコイル線77とコイル線77との間に少なくとも0.5mm、好ましくは0.5mm以上の隙間a1を有するように渦巻状に巻き回され、その隙間a1には貼付部51を形成するゴムが充填される。また、受電コイル76の外側の端部76B側が、巻回部76Cの上方を横切るコイル線77と巻回部76Cを構成するコイル線77との間に、少なくとも0.5mm、好ましくは0.5mm以上の隙間a3を有するように延長し、その隙間a3に貼付部51を形成するゴムが充填される。
【0033】
また、厚みa2は、例えば、巻回部76Cを形成するコイル線77;77同士の隙間a1の寸法よりも厚く設定すると良い。
【0034】
このように、隣接するコイル線77や互いに交差するコイル線77同士の間に、ゴム部材を充填することにより、タイヤ10の変形伴ない、追従して取付台座3が変形しても、受電コイル76を形成するコイル線77同士の接触による断線(フレッティング)を防ぐことができるので、タイヤ10が使用限界に至る以上の寿命で安定して電力を供給することができる。
【0035】
取付台座3は、受電コイル76の巻回部76Cが、タイヤ表面に垂直な軸周りに巻回されるように貼付される。受電コイル76において巻回部76Cは、誘導起電力を生じさせる実質的な発電部として機能する。
【0036】
図4は、本実施形態に係るセンサモジュールの使用形態を示す図である。
本実施形態に係るセンサモジュール1は、車体90に設けられる電波エネルギー発生手段100とともに、例えば、タイヤモニタリングシステムとして構成することができる。
電波エネルギー発生手段100は、車体90においてタイヤ10のトレッド面11の外側を覆いトレッド面11と対向する位置に設けることが好ましい。より好ましくは、電波エネルギー発生手段100に対して、操舵操作によるタイヤ10の移動が少ない位置に設けると良い。電波エネルギー発生手段100は、磁力線を生じさせるコイル102とインバータ104とを備える。コイル102は、コイル線が巻き付けられた巻回軸をタイヤ10の半径方向に向けて配置される。インバータ104は、
図4に示すように、車体90に設けられたバッテリー92を電源としてコイル102を励磁する。
【0037】
上記構成からなる本実施形態の動作を説明する。本実施形態のタイヤ10は、自動車の車軸にリムホイール15をナット締めして取り付けられる。自動車を駆動させるとインバータ104が起動し、コイル102が励磁されることにより、タイヤ10の半径方向に延長する磁束Gが発生する。
そして、車両の走行に伴ないタイヤ10が回転することにより、タイヤ10とともに回転する受電コイル76がタイヤ円周方向に沿って移動する。この移動により受電コイル76の巻回部76Cには、磁束Gが量を変化させながら貫通し、巻回部76Cに誘導起電力を生じさせる。巻回部76Cに生じた誘導起電力は、整流部72により整流された後に蓄電部74に蓄電される。蓄電部74に蓄電された電力は、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36、送信装置38及び制御装置40の駆動源として供給される。
そして、温度・圧力センサ32及び加速度センサ36により検出された検出値が、送信装置38を介して無線信号として放出され、図外の車体に設けられた表示装置に表示されたり、表示装置とともに設けられた記憶装置に記憶される。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態のセンサモジュール1への給電構造によれば、従来のように電池切れの心配もなく、タイヤ10内に設けられた電子部品に安定して電力を供給することができるとともに、タイヤ10の寿命を超えて利用することができる。
【0039】
図5は、受電コイルの他の形態を示す図である。
上記実施形態では、取付台座3において受電コイル76の巻回部76Cを収容壁部50の立上り部から外周に向けて巻き回すものとして説明したが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、取付台座3の貼付部51において、当該貼付部51の中心軸Oの近傍から巻き回しても良い。この場合、内側の端部76A側は、巻回部76Cの上方を横切るように収容壁部50まで延長させ、外側の端部76B側と同様に、収容壁部50の立上り方向に沿って延長させれば良い。
【0040】
図6は、受電コイルの他の形態を示す図である。また、上記実施形態では、受電コイル76の巻回部76Cを取付台座3の貼付部51に埋設するものとして説明したが、これに限定されない。
例えば、
図2(c)に示すように受電コイル76を設けた場合を用いて説明すれば、
図6(a)に示すように、巻回部76Cの上側のゴム部材を省略しても良い。また、タイヤ10の内周面10sを形成するインナーライナーが、ゴム部材であることを考慮すれば、
図6(b)に示すように、取付部30の取付面51aから巻回部76Cを形成するコイル線77の一部が露出していても良い。
即ち、受電コイル76を形成するコイル線77同士が互いに接触が回避されるのであれば、受電コイル76の一部が取付台座3から露出していても良い。
【0041】
図7は、受電コイル76の他の配置の形態を示す図である。上記実施形態では、取付台座3に受電コイル76を設けるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、取付台座3から受電コイル76の機能を分離し、受電コイル76を受電コイル体76’として取付台座3とは別部品として構成しても良い。
この場合、受電コイル体76’は、例えば、断面視において
図7(b)に示すように構成することができる。なお、この場合であっても渦巻状に形成された巻回部76C、及びセンサユニット2に延長する各端部76A;76Bのコイル線77同士が接触しないように、例えば、取付台座3の形成に用いられたゴムを素材として、コイル線77;77間に所定の間隔が維持されるように介在させれば良い。
【0042】
図8は、受電コイルの他の配置の形態を示す図である。上記実施形態では、受電コイル76をタイヤ10の内周面10sに直接接着するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、
図8に示すように受電コイル76を構成しても良い。
図8に示す受電コイル76は、取付台座3に設けられた収容壁部50の上方に設けられている。受電コイル76は、上述の各形態と同様に、取付台座3の取付面51aをタイヤ10の内周面10sに接着し、固定したときに、巻回面がタイヤ10の半径方向を向くように取付台座3に設けられる。
このように、受電コイル76をタイヤ10の内周面10sから所定距離離れるように設けることにより、トレッド面11が路面に踏み込まれてから、路面から蹴り出しに伴なう繰り返しの変形の力を受けずに済むため、受電コイル76の耐久性をより、向上させることができる。
【0043】
なお、取付台座3の収容壁部50の上部は、センサユニット2を収容部52に収容する際の開口部であるため、センサユニット2の収容時に受電コイル76に無理な力がかからないように、受電コイル76の巻回部76Cの内周側の直径D2を、収容壁部50の内周面54の直径D1よりも大きく設定すると良い。
【0044】
なお、上記実施形態では、電波エネルギー発生手段100が磁束を放出するものとして説明したが、これに限定されず電波であっても良い。
【0045】
また、受電コイル76の巻回部76C等においてコイル線77同士の間にゴム部材を設けるものとして説明したが、コイル線77に密着可能な弾性体(素材)であれば良い。
【符号の説明】
【0046】
1 センサモジュール、2 センサユニット、3 取付台座、
10 タイヤ、10s 内周面、30 取付部、30a 貼付面
76 受電コイル、76C 巻回部、77 コイル線、
100 電波エネルギー発生手段。