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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】保護シート付き踏板材
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20221128BHJP
   E04F 11/17 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
E04G21/24 A
E04F11/17 100Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019100024
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193498
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501195625
【氏名又は名称】住友林業クレスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】永田 直之
(72)【発明者】
【氏名】井上 伸夫
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-002158(JP,A)
【文献】特開2016-183490(JP,A)
【文献】特開平10-088760(JP,A)
【文献】特開平11-172923(JP,A)
【文献】特開2013-159642(JP,A)
【文献】実開平06-021483(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24
E04F 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の踏板を構成する踏板材と、
少なくとも、前記踏板材の表面に対する第一保護面部と、折線を介して前記第一保護面部に連続された前記踏板材の前端面に対する第二保護面部とを備えた保護シートとを備えてなり、
前記保護シートの前記第一保護面部の裏面には、前記第一保護面部の縁部との間に間隔を開けて防滑面が形成されていると共に、前記間隔に前記防滑面を囲繞するように吸着面を形成させてなる、保護シート付き踏板材。
【請求項2】
前記保護シートが、折線を介して前記第二保護面部に前記第一保護面部との連続側と反対の側において連続された前記踏板材の裏面に対する第三保護面部を備えてなる、請求項1に記載の保護シート付き踏板材。
【請求項3】
前記保護シートが、折線を介して前記第一保護面部に前記第二保護面部との連続側と反対の側において連続された前記踏板材の裏面側に折り込み可能な第四保護面部を備えてなる、請求項2に記載の保護シート付き踏板材。
【請求項4】
前記第四保護面部と前記第一保護面部との間の折線を、前記保護シートの裏面側からのハーフカット又は押し筋によって形成させてなる、請求項3に記載の保護シート付き踏板材。
【請求項5】
前記第二保護面部に付された中間折線を利用して、前記第二保護面部を二つ折りにすると共に、前記第一保護面部に前記第三保護面部を重ね合わせ可能としてなる、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の保護シート付き踏板材。
【請求項6】
前記防滑面を、前記保護シートに防滑紙を貼着させて形成させてなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の保護シート付き踏板材。
【請求項7】
前記吸着面を、前記保護シートに一面を吸着面とした吸着テープの他面を貼着させて形成させてなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の保護シート付き踏板材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現場施工によって階段の踏板(段板)となるプレカットの踏板材に、梱包材としての機能と現場施工時の養生材としての機能とを備えた保護シートを付設させてなる、保護シート付き踏板材に関する。
【背景技術】
【0002】
階段の踏板の梱包材における踏板表面を覆う箇所に表面養生材を貼着すると共に、踏板前面を覆う箇所に前面養生材を貼着しておき、階段の施工終了後、切断した前記梱包材によって、設置された踏板の踏板表面と踏板前面とを前記梱包材における表面養生材の貼着部分と前面養生材の貼着部分とで覆うようにしたものとして、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
しかるに、前記特許文献1のものは、梱包材が設置された踏板の養生材を兼ねるものであるが、設置にあたっては、梱包材の切断を要すると共に、別途用意される接着テープによって踏板側に固定することを要するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-2158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の梱包材及び養生材となる保護シート付き踏板材を、前記保護シートによって適切に保護された状態で階段の踏板として設置可能とすると共に、前記保護シートを建築作業終了後は踏板となった踏板材から容易に取り去り可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、保護シート付き踏板材を、階段の踏板を構成する踏板材と、
少なくとも、前記踏板材の表面に対する第一保護面部と、折線を介して前記第一保護面部に連続された前記踏板材の前端面に対する第二保護面部とを備えた保護シートとを備えてなり、
前記保護シートの前記第一保護面部の裏面には、前記第一保護面部の縁部との間に間隔を開けて防滑面が形成されていると共に、前記間隔に前記防滑面を囲繞するように吸着面を形成させてなる、ものとした。
【0007】
踏板として設置される踏板材の表面は、保護シートの第一保護面部によって覆われ、前端面は第二保護面部によって覆われ、かつ、保護シートは第一保護面部の吸着面によって踏板材の表面に吸着されていることから、かかる保護シートによって建築作業が終了するまでの間、踏板の意匠面を損傷・汚損から安定的に保護することができる。吸着面は、第一保護面部において防滑面を囲繞するように形成されており、吸着面を第一保護面部の全体に形成させた場合に比べ、保護シートを容易に踏板材から取り外すことが可能となる。これにより、階段施工前の検品時の一時的な保護シートの取り外しや、建築作業終了後においての保護シートの除去作業の円滑化が図られる。その一方で、前記防滑面によって、保護シートのズレを抑止することができ、踏板材に対し所期の位置に保護シートを吸着させた養生状態は安定的に確保される。また、吸着面は、防滑面を囲繞するように形成されていることから、建築作業が終了するまでの間、第一保護面部の防滑面と踏板材の表面との間に木くずや塵埃などが入り込んで、踏板材上の作業者の歩行などによって踏板材の表面を損傷させる原因となるような事態は可及的に防止される。
【0008】
前記保護シートが、折線を介して前記第二保護面部に前記第一保護面部との連続側と反対の側において連続された前記踏板材の裏面に対する第三保護面部を備えるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記保護シートが、折線を介して前記第一保護面部に前記第二保護面部との連続側と反対の側において連続された前記踏板材の裏面側に折り込み可能な第四保護面部を備えようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記第四保護面部と前記第一保護面部との間の折線を、前記保護シートの裏面側からのハーフカット又は押し筋によって形成させようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記第二保護面部に付された中間折線を利用して、前記第二保護面部を二つ折りにすると共に、前記第一保護面部に前記第三保護面部を重ね合わせ可能にしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記防滑面を、前記保護シートに防滑紙を貼着させて形成させるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0013】
また、前記吸着面を、前記保護シートに一面を吸着面とした吸着テープの他面を貼着させて形成させるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、保護シート付き踏板材を、前記保護シートによって適切に保護された状態で階段の踏板として設置可能なものとすると共に、前記保護シートを建築作業終了後は踏板となった踏板材から容易に取り去り可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、階段の直段板部分を構成する保護シート付き踏板材(第一例)を構成する保護シートと踏板材を分離して示した斜視構成図である。
図2図2は、前記第一例の保護シートを裏面から見た斜視構成図である。
図3図3は、前記第一例の斜視構成図である。
図4図4は、図3におけるA-A位置での断面図である。
図5図5は、前記第一例にかかる複数の保護シート付き踏板材をまとめて梱包する際に利用される保護カバーと前記複数の保護シート付き踏板材とを分離して表した斜視構成図である。
図6図6は、前記第一例にかかる複数の保護シート付き踏板材をまとめて梱包した状態を示した斜視構成図である。
図7図7は、前記第一例の保護シート付き踏板材を階段施工において設置する際に保護シートを養生材として機能させるための保護シートの開梱操作手順を示した側面構成図である。
図8図8は、前記第一例の保護シート付き踏板材を踏板として施工された階段の要部斜視構成図である。
図9図9は、廻り階段の折り返し部分を構成する保護シート付き踏板材(下段/第二例)を構成する保護シートと踏板材を分離して示した斜視構成図である。
図10図10は、前記第二例の保護シートを裏面から見た斜視構成図である。
図11図11は、前記第二例の斜視構成図である。
図12図12は、図11におけるB-B位置での断面図である。
図13図13は、廻り階段の折り返し部分を構成する保護シート付き踏板材(中段/第三例)の斜視構成図である。
図14図14は、廻り階段の折り返し部分を構成する保護シート付き踏板材(上段/第四例)の斜視構成図である。
図15図15は、前記第二例~第四例にかかる保護シート付き踏板材をまとめて梱包する際に利用される保護カバーと前記前記第二例~第四例の保護シート付き踏板材とを分離して表した斜視構成図である。
図16図16は、前記第二例~第四例にかかる保護シート付き踏板材をまとめて梱包した状態を示した斜視構成図である。
図17図17は、前記第二例の保護シート付き踏板材を階段施工において設置する際に保護シートを養生材として機能させるための保護シートの開梱操作手順を示した側面構成図である。
図18図8は、前記第二例の保護シート付き踏板材を踏板として施工された階段の要部斜視構成図であり、なお、その上段に位置する前記第三例の保護シート付き踏板材の保護シートの記載は省略している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図18に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる保護シート付き踏板材1は、現場施工によって階段Sの踏板Sa(段板)となるプレカットの踏板材2に、梱包材としての機能と現場施工時の養生材としての機能とを備えた保護シート3を付設させたものである。
【0017】
保護シート3は、現場施工までの間の保管・運搬時には梱包材として機能する。踏板材2は、保護シート3によって保護された状態で、階段Sの踏板Saとして設置され、現場施工時は建築作業が終了するまでの間、踏板Saの意匠面を損傷・汚損から保護する。また、保護シート3は、建築作業終了後、踏板Saとなった踏板材2から容易に取り去ることが可能となっている。
【0018】
保護シート3としては、段ボール、板紙などの厚手の紙材や、合成樹脂製のシートを用いることができる。
【0019】
(階段Sの直段板部分を構成する保護シート付き踏板材1)
図1図8は、階段Sの直段板部分を構成する保護シート付き踏板材1を示している。踏板材2は、長方形状の表面2a及び裏面2bと、その厚さ方向の面となる前端面2c、後端面2d、左端面2e及び右端面2fとを備えている。
【0020】
一方、保護シート3は、以下の第一~第四保護面部3a~3dを備えている。以下の第一~第四保護面部3a~3dは、いずれも四角形状を呈している。
(1)前記踏板材2の表面2aに対する第一保護面部3a
(2)折線(以下、第一折線3eと称する。)を介して前記第一保護面部3aに連続された前記踏板材2の前端面2cに対する第二保護面部3b
(3)折線(以下、第二折線3fと称する。)を介して前記第二保護面部3bに対して前記第一保護面部3aとの連続側と反対の側において連続された前記踏板材2の裏面2bに対する第三保護面部3c
(4)折線(以下、第三折線3gと称する。)を介して前記第一保護面部3aに対して前記第二保護面部3bとの連続側と反対の側において連続された前記踏板材2の裏面2b側に折り込み可能な第四保護面部3d
【0021】
図3に示されるように、保護シート3の左右方向xの寸法は、踏板材2の左右方向xの寸法よりも、やや短くなっている。
【0022】
また、図1に示されるように、展開状態(保護シート3を折らずに平面化した状態)にした保護シート3の前後方向yの寸法は、踏板材2の前後方向yの寸法の二倍となる寸法と踏板材2の厚さ方向の寸法の二倍となる寸法の和よりも、やや大きくなっている。
【0023】
具体的には、第一保護面部3aの前後方向yの寸法と第三保護面部3cの前後方向yの寸法は実質的に等しく、かつ、踏板材2の前後方向yの寸法よりもやや小さくなっている。
第一保護面部3aは、第二保護面部3bとの間の第一折線3eを踏板材2の表面2aと前端面2cとの間の上側角2gに沿わせた状態で踏板材2の表面2aに後述の吸着面5をもって貼り付けられる。
第一保護面部3aと第四保護面部3dとの間の第三折線3gは踏板材2の表面2aと後端面2dとの間の上側角2hよりもやや前方に位置される(図4参照)。
第二保護面部3bの前後方向yの寸法は踏板材2の厚さ寸法と実質的に等しくなっている。
第二保護面部3bの前後方向y中程の位置には、この第二保護面部3bを上下に二分する中間折線3hが付されている。
第四保護面部3dには、第三折線3gと第四保護面部3dの端末との間に第四折線3iと第五折線3jが付されている。この第四折線3iと第五折線3jとの間の前後方向yの寸法は踏板材2の厚さ方向の寸法と実質的に等しくなっている。
【0024】
前記第一~第五折線3e~3jは、いずれも保護シート3の左右方向xに亘って保護シート3に形成されている。また、前記第一~第五折線3e~3jは、保護シート3に、ハーフカット、押し筋(罫線)、ミシン目など、その箇所で保護シート3を折り曲げやすくする各種の線状の加工を保護シート3に施すことで形成される。
【0025】
また、前記保護シート3の裏面3’の一部となる前記第一保護面部3aの裏面には、前記第一保護面部3aの縁部との間に間隔6を開けて防滑面4が形成されていると共に、前記間隔6に前記防滑面4を囲繞するように吸着面5を形成されている。
【0026】
図示の例では、防滑面4は、第一保護面部3aよりも小さい四角形の輪郭を備えたものとなっている(図2参照)。防滑面4の各辺と、第一保護面部3aの縁部との間には、間隔6が形成されている。すなわち、第一保護面部3aの第一折線3e側の辺となる縁部、第一保護面部3aの第三折線3g側の辺となる縁部、第一保護面部3aの左側の辺となる縁部、および、第一保護面部3aの右側の辺となる縁部と、防滑面4との間には、この防滑面4を巡るいずれの箇所においても間隔6が形成されている。これにより、第一保護面部3aの裏面には四角形の防滑面4と、これを巡る方形枠状の間隔6が形成されている。
【0027】
この実施の形態にあっては、前記防滑面4を、前記保護シート3に防滑紙4aを貼着させて形成させている。防滑紙4aは、紙にコーティングをするなどして紙の表面の摩擦係数を高めこの紙上での滑りを生じ難くしたものである。この実施の形態にあっては、第一保護面部3aより小さい四角形の輪郭を備えるように形成した防滑紙4aの一面を第一保護面部3aの裏面に前記のような間隔6が形成されるように接着することで、前記防滑面4を形成させている。
【0028】
一方、図示の例では、吸着面5は、帯状をなし、前記方形枠状の間隔6に形成されれている。吸着面5は、防滑面4を囲繞するように形成されており、吸着面5も全体として方形枠状を呈している。吸着面5は、微細な吸盤として機能する凹部を備え、踏板材2の表面2aに押しつけられたとき、この表面2aに吸着するようになっている。
【0029】
この実施の形態にあっては、前記吸着面5を、前記保護シート3に一面を吸着面5とした吸着テープ5aの他面を接着により貼着させて形成させている。
【0030】
踏板材2に対し、保護シート3を以下のように組み合わせることで、保護シート3による踏板材2の梱包がなされる。
(1)第一保護面部3aを、第一折線3eを踏板材2の表面2aと前端面2cとの間の上側角2gに沿わせた状態で踏板材2の表面2aに吸着面5をもって貼り付ける。
(2)保護シート3を第一折線3eにおいて折り曲げ、第二保護面部3bが踏板材2の前端面2cを覆うようにする。
(3)保護シート3を第二折線3fにおいて折り曲げ、第三保護面部3cが踏板材2の裏面2bを覆うようにする。
(4)保護シート3を第四折線3iにおいて折り曲げ、さらに、第五折線3jで折り曲げ、第四保護面部3dが踏板材2の後端面2dを覆うようにすると共に、第四保護面部3dにおける第五折線3jより先となる部分が踏板材2の裏面2b側に入り込むようにする。
【0031】
前記のように展開状態にした保護シート3の前後方向yの寸法は、踏板材2の前後方向yの寸法の二倍となる寸法と踏板材2の厚さ方向の寸法の二倍となる寸法の和よりも、やや大きくなっていることから、踏板材2の裏面2bにおいて第三保護面部3cに第四保護面部3dが重なり合うようになっている(図4参照)。
【0032】
また、前記のように、保護シート3の左右方向xの寸法は、踏板材2の左右方向xの寸法よりも、やや短くなっていることから、図示の例では、保護シート3によって、踏板材2はその左右両端部以外の箇所を梱包されるようになっている。
【0033】
図示の例では、以上のように保護シート3によって梱包された踏板材2を、同じ向きで複数重ね合わせた状態で、具体的には、各踏板材2の長さ側の辺及び幅側の辺がそれぞれ仮想の一つの鉛直面上に位置するようにし、かつ、上下に隣り合う踏板材2における下側の踏板材2の表面2a側が上側の踏板材2の裏面2b側に向き合うように重ね合わせた状態で、このように重ね合わせた踏板材2の左右両端部にそれぞれ保護カバー7を取り付け、この保護カバー7と前記保護シート3とによって前記のように重ね合わせた踏板材2の全体を覆うようにしている(図5及び図6参照)。図6中、符号8で示すのは、結束バンドである。
【0034】
施工現場においては、前記のように梱包された複数の踏板材2の結束バンド8による結束を解き、保護カバー7を外して、踏板材2を用いた階段Sの施工が行われる。
【0035】
階段施工にあたっては、第三折線3gに折れを生じさせながら、この第三折線3gをヒンジとするようにして第四保護面部3dを踏板材2の表面2a側に立ち上げる(図7(a)から(b))。次いで、中間折線3hに折れを生じさせながら第二保護面部3bを二つ折りにし(図7(b)から(c))、かつ、第三保護面部3cを第一保護面部3a上に重ね合わせる(図7(d))。この状態で、踏板材2を設置する。かかる設置により、踏板材2は階段Sを構成する踏板Saとなる。
【0036】
このように設置される踏板材2の表面2aは、保護シート3の第一保護面部3aによって覆われ、前端面2cは第二保護面部3bによって覆われ、かつ、保護シート3は第一保護面部3aの吸着面5によって踏板材2の表面2aに吸着されていることから、かかる保護シート3によって建築作業が終了するまでの間、踏板Saの意匠面を損傷・汚損から安定的に保護することができる。
【0037】
吸着面5は、第一保護面部3aにおいて防滑面4を囲繞するように形成されており、吸着面5を第一保護面部3aの全体に形成させた場合に比べ、保護シート3を容易に踏板材2から取り外すことが可能となる。これにより、階段施工前の検品時の一時的な保護シート3の取り外しや、建築作業終了後においての保護シート3の除去作業の円滑化が図られる。その一方で、前記防滑面4によって、保護シート3のズレを抑止することができ、踏板材2に対し所期の位置に保護シート3を吸着させた養生状態は安定的に確保される。また、吸着面5は、防滑面4を囲繞するように形成されていることから、建築作業が終了するまでの間、第一保護面部3aの防滑面4と踏板材2の表面2aとの間に木くずや塵埃などが入り込んで、踏板材2上の作業者の歩行などによって踏板材2の表面2aを損傷させる原因となるような事態は可及的に防止される。また、前記のように立ち上げられる第四保護面部3dによって階段Sを構成する蹴込み板Sbを養生することが可能となる(図8参照)。
【0038】
前記第二保護面部3bに付された中間折線3hを利用して、前記第二保護面部3bを二つ折りにすると共に、前記第一保護面部3aに前記第三保護面部3cを重ね合わせ可能としていることから、建築作業が終了するまでの間、踏板材2の表面2a及び前端面2cの上側は、二層重ねの保護シート3により強固に保護される(図8参照)。
【0039】
図示の例では、第三保護面部3cにおける自由端側に、第一保護面部3aへの重ね合わせ状態において第一保護面部3aの表面2aに粘着される粘着テープ9が備えられており、この重ね合わせ状態を安定的に維持できるようになっている。図1中、符号9aで示すのは、かかる粘着テープ9の使用前までその粘着面を覆う剥離シートである。
【0040】
また、この実施の形態にあっては、前記第四保護面部3dと前記第一保護面部3aとの間の第三折線3gを、前記保護シート3の裏面2b側からのハーフカット又は押し筋によって形成させている。これにより、前記のように第三折線3gをヒンジとするようにして踏板材2の表面2a側に立ち上げられた第四保護面部3dを前記立ち上げ方向と逆向きに倒れさせる癖を第三折線3gに付与することができる。この結果、第四保護面部3dを蹴込み板Sbに図8中符号10で示す養生テープなどで固定しなくても、第四保護面部3dが蹴込み板Sbに常時接してこれを養生する状態を作り出すことができるようになっている。
【0041】
(廻り階段Sの折り返し部分を構成する保護シート付き踏板材1)
図9図18は、廻り階段Sの折り返し部分を構成する保護シート付き踏板材1を示している。図示の例では、廻り階段Sにおける折り返し部分を三段としたときの踏板材2を示している。図18中、符号Scは廻り階段Sの折り返し部の内周側であり、符号Sdは外周側である。下段の踏板材20(図9)及び上段の踏板材21(図14)は実質的に平面視台形状であり、中段の踏板材22(図13)は実質的に平面視五角形状である。
【0042】
この例では、各踏板材2に対する保護シート3は、第一保護面部3aと、第一折線3eを介して第一保護面部3aに連続された第二保護面部3bと、第三折線3gを介して第二保護面部3bに対して第一保護面部3aとの連続側と反対の側において連続された第三保護面部3cとを備えた構成となっている。
【0043】
第一保護面部3a及び第三保護面部3cは、踏板材2の平面形状に実質的に倣った形状となっている。前記下段及び上段の踏板材20、21に対する保護シート3では第一保護面部3a及び第三保護面部3cは実質的に平面視直角三角形状であり、前記中段の踏板材22に対する保護シート3では第一保護面部3a及び第三保護面部3cは実質的に平面視菱形状である。
【0044】
各踏板材2に対する前記保護シート3の前記第一保護面部3aの裏面には、前記第一保護面部3aの縁部との間に間隔6を開けて防滑面4が形成されていると共に、前記間隔6に前記防滑面4を囲繞するように吸着面5が形成されている。
【0045】
この例では、踏板材2に対し、保護シート3を以下のように組み合わせることで、保護シート3による踏板材2の梱包がなされる。
(1)第一保護面部3aを、第一折線3eを踏板材2の表面2aと前端面2cとの間の上側角2gに沿わせた状態で踏板材2の表面2aに吸着面5をもって貼り付ける。
(2)保護シート3を第一折線3eにおいて折り曲げ、第二保護面部3bが踏板材2の前端面2cを覆うようにする。
(3)保護シート3を第二折線3fにおいて折り曲げ、第三保護面部3cが踏板材2の裏面2bを覆うようにする。
【0046】
図示の例では、以上のように保護シート3によって梱包された踏板材2を、中段の踏板材22を中央にして、この中段の踏板材22を前記内周側Scとなる側から見た状態において、右側に下段の踏板材20を位置させ、かつ、左側に上段の踏板材21を位置させるようにすると共に、下段の踏板材20の後端面2dと中段の踏板材22の前端面2cとを突き合わせるようにし、かつ、中段の踏板材22の後端面2dと上段の踏板材21の前端面2cとを突き合わせるようにして、三枚の踏板材2によって平面視略正方形状の輪郭の盤状体11を構成させて、三枚の踏板Sa体を一組として運搬できるようにしている(図15及び図16参照)。図中、符号12で示すのは、各踏板材2の後端面2dに対する幅方向断面断面略コ字状をなす長尺の保護カバーであり、図16中、符号8で示すのは、結束バンドである。
【0047】
図示の例では、さらに、前記盤状体11の各辺はそれぞれ、幅方向断面略断面コ字状をなす長尺の保護カバー13で覆われて、三枚の踏板材2の梱包がなされるようになっている。図示の例では、この保護カバー13の屈曲内側を前方に向けるようにして、この保護カバー13の下部を保護シート3の第一保護面部3aの上に重ねられた第二保護面部3bに接しさせた状態でこの保護カバー13の上部を養生テープ10により蹴込み板Sbに止着することで、この保護カバーによって階段Sを構成する蹴込み板sbを養生できるようにしている。
【0048】
なお、この例では、保護シート3における廻り階段Sの折り返し部分の内周側Scに位置される箇所には、図中、符号14で示すミシン目が施されて、このミシン目14を利用して保護シート3における前記内周側Scに位置される箇所の一部を分離して、踏板材2の前記内周側となる側の端部を保護シート3から露出させた状態で踏板材2の設置がなされるようになっている。
【0049】
以上に説明した廻り階段Sの折り返し部分を構成する保護シート付き踏板材1のその余の構成は、階段Sの直段板部分を構成する保護シート付き踏板材1の構成と同一又は実質的に同一であるので、この同一又は実質的に同一の構成部分については、共通の符号を付してその説明は省略する。
【0050】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施形態を含むものである。
【符号の説明】
【0051】
S 階段
S’ 廻り階段
Sa 踏板
Sb 蹴込み板
Sc 内周側
Sd 外周側
1 保護シート付き踏板材
2 踏板材
2a 表面
2b 裏面
2c 前端面
2d 後端面
2e 左端面
2f 右端面
2g 上側角
2h 上側角
3 保護シート
3’ 裏面
3a 第一保護面部
3b 第二保護面部
3c 第三保護面部
3d 第四保護面部
3e 第一折線
3f 第二折線
3g 第三折線
3h 中間折線
3i 第四折線
3j 第五折線
4 防滑面
4a 防滑紙
5 吸着面
5a 吸着テープ
6 間隔
7 保護カバー
8 結束バンド
9 粘着テープ
9a 剥離シート
10 養生テープ

図1
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図3
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