(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 57/00 20060101AFI20221128BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A01D57/00 G
A01D67/00 D
(21)【出願番号】P 2019119007
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上田 秀哉
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-236335(JP,A)
【文献】実開昭59-021842(JP,U)
【文献】特開2001-346430(JP,A)
【文献】特開2000-270660(JP,A)
【文献】特開2014-097036(JP,A)
【文献】実開昭52-042829(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0175356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00
A01D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立穀稈を刈り取って後方の脱穀装置に向けて搬送する刈取部を備え、
前記刈取部は、刈取穀稈を前記脱穀装置に向けて搬送する第1搬送装置と、その搬送方向が前記第1搬送装置と交差する状態で配置され前記第1搬送装置から刈取穀稈を受け取って前記脱穀装置に向けて搬送する第2搬送装置と、を備え、
前記第1搬送装置は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する第1株元側搬送部と、刈取穀稈において前記第1株元側搬送部が搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する第1穂先側搬送部と、を備え、
前記第2搬送装置は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する第2株元側搬送部と、刈取穀稈において前記第2株元側搬送部が搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する第2穂先側搬送部と、を備え、
前記第1株元側搬送部は、刈取穀稈を搬送する第1株元側チェーンと、前記第1株元側チェーンの搬送方向に沿って配置され前記第1株元側チェーンに搬送される刈取穀稈を案内する第1株元側案内部材と、を備え、
前記第2株元側搬送部は、刈取穀稈を搬送する第2株元側チェーンと、前記第2株元側チェーンの搬送方向に沿って配置され前記第2株元側チェーンに搬送される刈取穀稈を案内する第2株元側案内部材と、を備え、
前記第1搬送装置から前記第2搬送装置への刈取穀稈の受け渡し部における前記第1穂先側搬送部及び前記第2穂先側搬送部よりも下側に、刈取穀稈の株元側に作用して刈取穀稈の倒れを抑制する倒れ抑制部材を備え
、
前記倒れ抑制部材が前記第1株元側搬送部に対して接近離間する方向に弾性変形可能であり、
前記第1搬送装置に直交する方向から視て、前記倒れ抑制部材の基端部が前記第1株元側案内部材に対して前記第1株元側チェーンと反対側に位置すると共に、前記倒れ抑制部材が前記第1株元側案内部材と交差して前記第1株元側案内部材に対して前記第1株元側チェーンと同じ側まで延びているコンバイン。
【請求項2】
前記倒れ抑制部材が、前記第1株元側搬送部及び前記第2株元側搬送部のうち上側にあるものよりも下側に位置する請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記倒れ抑制部材が前記第1株元側搬送部及び前記第2株元側搬送部のうち下側にあるものよりも下側から後ろ上がりに延びており、前記倒れ抑制部材の後端部が前記第1株元側搬送部と前記第2株元側搬送部との間に位置する、請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記倒れ抑制部材が、前記第2株元側搬送部の搬送方向において前記第2株元側搬送部よりも上流側に位置する請求項1から3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記倒れ抑制部材が、前記第1株元側搬送部に対して前記第2株元側搬送部の搬送方向上流側に離れた位置にある請求項4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記倒れ抑制部材における前記第1株元側搬送部の搬送方向下流側の端部が前記第1株元側搬送部よりも下側に位置する請求項1から5のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコンバインの刈取部(B)は、刈取装置(7)からの刈取穀稈を脱穀フィードチェーン(FC)に供給する供給搬送装置(23)を備えている。供給搬送装置(23)の外合流搬送装置(27)は、走行機体左端側の2つの掻送回転体(25)からの刈取穀稈を、無端回動チェーン(27a)による株元側の挟持搬送と、無端回動チェーン(27b)による穂先側の係止搬送とによって主搬送装置(23A)の搬送経路の途中に搬送し、主搬送装置(23A)によって搬送される刈取穀稈に合流させる。
【0003】
合流の際に、刈取穀稈の株元側部分は、無端回動チェーン(27a)から株元挟持搬送装置(29)へ受け渡される。刈取穀稈の穂先側部分は、無端回動チェーン(27b)から穂先側係止搬送装置(30)へ受け渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上流側の無端回動チェーンから下流側無端回動チェーンへ刈取穀稈の株元側部分が受け渡されるとき、これらの無端回動チェーンの搬送方向が交差している場合には、刈取穀稈の株元側部分が下流側の無端回動チェーンに直ぐに挟持されず、少しの間受け渡し部に留まることがある。ここで、刈取穀稈の穂先側部分が下流側の搬送装置へ直ぐに受け渡されると、株元側部分が受け渡し部に留まったまま穂先側部分が下流側へ搬送されることになる。そうすると、刈取穀稈の穂先側部分が下流側へ進むにつれて刈取穀稈の傾きが大きくなり、刈取穀稈が倒れた姿勢となってゆく。この刈取穀稈の倒れが過度に大きくなると、刈取穀稈が刈取部から脱落したり、刈取穀稈が脱穀装置に供給される際の姿勢が悪くなる等の問題が生じる恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、刈取部における刈取穀稈の倒れの発生を抑制する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンバインは、植立穀稈を刈り取って後方の脱穀装置に向けて搬送する刈取部を備え、前記刈取部は、刈取穀稈を前記脱穀装置に向けて搬送する第1搬送装置と、その搬送方向が前記第1搬送装置と交差する状態で配置され前記第1搬送装置から刈取穀稈を受け取って前記脱穀装置に向けて搬送する第2搬送装置と、を備え、前記第1搬送装置は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する第1株元側搬送部と、刈取穀稈において前記第1株元側搬送部が搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する第1穂先側搬送部と、を備え、前記第2搬送装置は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する第2株元側搬送部と、刈取穀稈において前記第2株元側搬送部が搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する第2穂先側搬送部と、を備え、前記第1株元側搬送部は、刈取穀稈を搬送する第1株元側チェーンと、前記第1株元側チェーンの搬送方向に沿って配置され前記第1株元側チェーンに搬送される刈取穀稈を案内する第1株元側案内部材と、を備え、前記第2株元側搬送部は、刈取穀稈を搬送する第2株元側チェーンと、前記第2株元側チェーンの搬送方向に沿って配置され前記第2株元側チェーンに搬送される刈取穀稈を案内する第2株元側案内部材と、を備え、前記第1搬送装置から前記第2搬送装置への刈取穀稈の受け渡し部における前記第1穂先側搬送部及び前記第2穂先側搬送部よりも下側に、刈取穀稈の株元側に作用して刈取穀稈の倒れを抑制する倒れ抑制部材を備え、前記倒れ抑制部材が前記第1株元側搬送部に対して接近離間する方向に弾性変形可能であり、前記第1搬送装置に直交する方向から視て、前記倒れ抑制部材の基端部が前記第1株元側案内部材に対して前記第1株元側チェーンと反対側に位置すると共に、前記倒れ抑制部材が前記第1株元側案内部材と交差して前記第1株元側案内部材に対して前記第1株元側チェーンと同じ側まで延びていることを特徴とする。
【0008】
上記の特徴構成によれば、受け渡し部における第1穂先側搬送部及び第2穂先側搬送部よりも下側に、刈取穀稈の株元側に作用して刈取穀稈の倒れを抑制する倒れ抑制部材が備えられているので、受け渡し部における刈取穀稈の倒れの発生を効果的に抑制することができる。
また上記の特徴構成によれば、第1株元側搬送部による刈取穀稈の搬送が邪魔されにくく、第1株元側搬送部による刈取穀稈の搬送をスムースに行うことができる。
【0009】
本発明において、前記倒れ抑制部材が、前記第1株元側搬送部及び前記第2株元側搬送部のうち上側にあるものよりも下側に位置すると好適である。
【0010】
上記の特徴構成によれば、倒れ抑制部材が第1株元側搬送部及び第2株元側搬送部のうち上側にあるものよりも下側に位置するので、倒れ抑制部材が刈取穀稈に効果的に作用することができ、受け渡し部における刈取穀稈の倒れの発生を更に効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記倒れ抑制部材が前記第1株元側搬送部及び前記第2株元側搬送部のうち下側にあるものよりも下側から後ろ上がりに延びており、前記倒れ抑制部材の後端部が前記第1株元側搬送部と前記第2株元側搬送部との間に位置する、と好適である。
【0012】
上記の特徴構成によれば、倒れ抑制部材の支持が容易になると共に、受け渡し部における刈取穀稈の倒れの発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記倒れ抑制部材が、前記第2株元側搬送部の搬送方向において前記第2株元側搬送部よりも上流側に位置すると好適である。
【0014】
上記の特徴構成によれば、刈取穀稈の倒れが抑制されると共に、倒れ抑制部材の作用により第2株元側搬送部への刈取穀稈の受け渡しが効果的に補助されるので、脱穀装置への刈取穀稈の搬送を効率的に行うことができる。
【0015】
本発明において、前記倒れ抑制部材が、前記第1株元側搬送部に対して前記第2株元側搬送部の搬送方向上流側に離れた位置にあると好適である。
【0016】
上記の特徴構成によれば、通常の姿勢で搬送される刈取穀稈の倒れ抑制部材への接触が抑制されるので、刈取穀稈の搬送をスムースに行うことができる。
【0017】
本発明において、前記倒れ抑制部材における前記第1株元側搬送部の搬送方向下流側の端部が前記第1株元側搬送部よりも下側に位置すると好適である。
【0018】
上記の特徴構成によれば、第1株元側搬送部に搬送されているときの刈取穀稈の倒れを効果的に抑制することができる。
【0019】
【0020】
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】刈取部における刈取穀稈の受け渡し部を左搬送装置に直交する方向から視た図である。
【
図5】倒れ抑制部材を備えない場合の刈取部を示す概略左側面図である。
【
図6】倒れ抑制部材を備える場合の刈取部を示す概略左側面図である。
【
図7】左搬送装置の株元側搬送部の搬送方向に交差する平面による刈取部の断面図である。
【
図8】他の実施形態に係る掻込輪体を示す図である。
【
図9】他の実施形態に係る右搬送装置における株元側搬送部のレールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のコンバインの実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、コンバインの機体1に関し、
図1に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、紙面表側の方向を「機体左方」紙面裏側の方向を「機体右方」とする。
【0023】
〔コンバインの全体の構成〕
コンバインは、
図1に示されるように、バー形のフレーム材などを組み合わせて構成された機体1、及び、機体1の両横側部に装備されたクローラ式の走行装置2を備えている。機体1の前部の横一端側部分に運転部3が形成されている。運転部3に操縦空間を覆うキャビン4が備えられている。運転部3の下方に、エンジン5を有する原動部が形成されている。機体1の前部に刈取部6が設けられている。刈取部6は、機体1の前部における運転部側と反対側の横側部分に下降作業状態と上昇非作業状態とに亘って揺動昇降操作できるように支持されている。機体1の後部に脱穀装置7と穀粒タンク8とが横並び状態で設けられている。穀粒タンク8の後端部に穀粒排出装置9が接続されている。
【0024】
このコンバインでは、刈取部6を下降作業状態に下降させ、この状態で機体1を走行させることにより、圃場の作物としての稲、麦、大豆などの収穫作業が行われる。すなわち、刈取部6において、機体1の前方に位置する植立茎稈がバリカン型の刈取装置10によって刈り取られ、刈取穀稈が合流後搬送装置11(第2搬送装置の一例)によって脱穀装置7の前部へ搬送される。脱穀装置7において、合流後搬送装置11からの刈取穀稈の株元側が脱穀フィードチェーン12によって挟持されて脱穀装置7の後方に向けて搬送され、刈取穀稈の穂先側が扱室(図示せず)に挿入されて回転する扱胴13によって脱穀処理され、脱穀処理後の穀粒が塵埃と選別される。選別後の穀粒が揚穀装置(図示せず)によって穀粒タンク8に搬送されて貯留される。穀粒タンク8に貯留された穀粒が穀粒排出装置9によって排出される。
【0025】
〔刈取部〕
刈取部6は、
図1,2に示されるように、機体1の前部から前方に前下がり姿勢で且つ上下揺動可能に延出された刈取部フレーム14、及び刈取部フレーム14の先端部から前向きに延出された7本の分草杆15を備えている。7本の分草杆15は、機体1の横幅方向に間隔を空けて並んでいる。隣り合う分草杆15の間に、一つの植付条の植立茎稈を引起装置16及び刈取装置10に導入する導入路Rが形成されている。全体として、六つの導入路Rが形成されている。
【0026】
各分草杆15の先端部に、デバイダ18が支持されている。左端のデバイダ18と右端のデバイダ18との間隔が、刈幅Wとなる。デバイダ18の後側に、機体1の横幅方向に並ぶ六つの引起装置16が設けられている。六つの引起装置16は、一つの導入路Rに一つの引起装置16が対応する状態で、機体1の横幅方向に並んでいる。引起装置16の下部の後方に、バリカン型の刈取装置10が設けられている。刈取装置10は、両横端の分草杆15に亘る状態で設けられ、六つの導入路Rに導入された植立茎稈に作用可能である。6つの引起装置16の各々の後方に、掻込ベルト21が設けられている。
【0027】
刈取装置10の上方と脱穀装置7の前側箇所とに亘り、三つの搬送装置19(右搬送装置19R、中搬送装置19C、左搬送装置19L(第1搬送装置の一例)及び一つの合流後搬送装置11(第2搬送装置の一例)が設けられている。三つの搬送装置19は、刈幅方向に並んでいる。三つの搬送装置19それぞれの搬送始端部19aは、刈取装置10の上方で刈幅方向に並んでいる。中搬送装置19C及び左搬送装置19Lは、その搬送方向が合流後搬送装置11と交差する状態で配置されている。合流後搬送装置11は、三つの搬送装置19の後方に位置する受け渡し部20と、脱穀装置7の前側箇所とに亘って設けられている。
【0028】
以下の説明では、6つの導入路Rについて、右端から順に第1導入路R1、第2導入路R2、第3導入路R3、第4導入路R4、第5導入路R5、第6導入路R6と称する。
【0029】
6条刈りの刈取形態で刈取りが行われる場合、刈取部6において植立穀稈は次のように処理される。デバイダ18により、六つの植付条のうちの右端から1番目の植付条の植立茎稈が第1導入路R1に案内され、2番目の植付条の植立穀稈が第2導入路R2に案内される。案内された植立穀稈は引起装置16によって引き起こし処理されつつ、掻込ベルト21によって刈取装置10に掻き込まれて、刈取装置10によって刈取処理される。第1導入路R1に導入されて刈り取られた刈取穀稈、及び第2導入路R2に導入されて刈り取られた刈取穀稈が、右搬送装置19Rによって後方の受け渡し部20へ搬送される。
【0030】
デバイダ18により、六つの植付条のうちの右端から3番目の植付条の植立茎稈が第3導入路R3に案内され、4番目の植付条の植立穀稈が第4導入路R4に案内される。案内された植立穀稈は引起装置16によって引き起こし処理されつつ、掻込ベルト21によって刈取装置10に掻き込まれて、刈取装置10によって刈取処理される。第3導入路R3に導入されて刈り取られた刈取穀稈、及び第4導入路R4に導入されて刈り取られた刈取穀稈が、中搬送装置19Cによって後方の受け渡し部20へ搬送される。
【0031】
デバイダ18により、六つの植付条のうちの右端から5番目の植付条の植立茎稈が第5導入路R5に案内され、6番目の植付条の植立穀稈が第6導入路R6に案内される。案内された植立穀稈は引起装置16によって引き起こし処理されつつ、掻込ベルト21によって刈取装置10に掻き込まれて、刈取装置10によって刈取処理される。第5導入路R5に導入されて刈り取られた刈取穀稈、及び第6導入路R6に導入されて刈り取られた刈取穀稈が、左搬送装置19Lによって後方の受け渡し部20へ搬送される。
【0032】
右搬送装置19R、中搬送装置19C、及び左搬送装置19Lによって受け渡し部20に搬送された刈取穀稈が、合流後搬送装置11によって更に後方に搬送されて、脱穀フィードチェーン12の搬送始端部に供給される。換言すれば、搬送装置19は、刈取穀稈を脱穀装置7に向けて搬送する。合流後搬送装置11は、搬送装置19から刈取穀稈を受け取って脱穀装置7に向けて搬送する。
【0033】
右搬送装置19Rは、具体的には、
図2に示されるように、刈取装置10の上方に設けられた左右一対の掻込輪体22、及び、掻込輪体22の上方と受け渡し部20とに亘って設けられた右後搬送部23を備えている。左右の掻込輪体22は、外周部に周設された掻込爪部を備え、左右の掻込輪体22の掻込爪部が咬み合った状態で回転する。右搬送装置19Rの搬送始端部19aは、左右の掻込輪体22によって形成されている。右後搬送部23は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する株元側搬送部23aと、刈取穀稈において株元側搬送部23aが搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する穂先側搬送部23bと、を備えている。株元側搬送部23aは、刈取穀稈を搬送する突起付きの無端回動チェーン23cと、無端回動チェーン23cの搬送方向に沿って配置され無端回動チェーン23cに搬送される刈取穀稈を案内するレール23dと、を備えている。穂先側搬送部23bは、刈取茎稈の穂先側を係止搬送アームが備えられた無端回動チェーンによって係止搬送する。
【0034】
右搬送装置19Rにおいては、第1導入路R1に導入されて刈り取られた刈取穀稈と、第2導入路R2に導入されて刈り取られた刈取穀稈との2条分の刈取穀稈が、左右の掻込輪体22によって後方に掻き込まれて右後搬送部23(株元側搬送部23a及び穂先側搬送部23b)の搬送始端部に供給され、右後搬送部23(株元側搬送部23a及び穂先側搬送部23b)によって受け渡し部20へ搬送される。
【0035】
中搬送装置19Cは、具体的には、
図2に示されるように、刈取装置10の上方に設けられた左右一対の掻込輪体24、及び、掻込輪体24の上方と受け渡し部20とに亘って設けられた中後搬送部25を備えている。左右の掻込輪体24は、外周部に周設された掻込爪部を備え、左右の掻込輪体24の掻込爪部が咬み合った状態で回転する。中搬送装置19Cの搬送始端部19aは、左右の掻込輪体24によって形成されている。中後搬送部25は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する株元側搬送部25aと、刈取穀稈において株元側搬送部25aが搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する穂先側搬送部25bと、右搬送装置19Rにおける右後搬送部23のうちの途中箇所から受け渡し部20に至る部分と、により構成されている。株元側搬送部25aは、刈取穀稈を搬送する突起付きの無端回動チェーン25cと、無端回動チェーン25cの搬送方向に沿って配置され無端回動チェーン25cに搬送される刈取穀稈を案内するレール25dと、を備えている。穂先側搬送部25bは、刈取茎稈の穂先側を係止搬送アームが備えられた無端回動チェーンによって係止搬送する。
【0036】
中搬送装置19Cにおいては、第3導入路R3に導入されて刈り取られた刈取穀稈と、第4導入路R4に導入されて刈り取られた刈取穀稈との2条分の刈取穀稈が、左右の掻込輪体24によって後方に掻き込まれて中後搬送部25(株元側搬送部25a及び穂先側搬送部25b)の搬送始端部に供給され、中後搬送部25(株元側搬送部25a及び穂先側搬送部25b)と右搬送装置19Rとによって受け渡し部20へ搬送される。つまり、右搬送装置19Rにおける右後搬送部23の途中部分は、第1導入路R1及び第2導入路R2の刈取穀稈の搬送と、第3導入路R3及び第4導入路R4の刈取穀稈の搬送とに共用される。
【0037】
左搬送装置19Lは、具体的には、
図2に示されるように、刈取装置10の上方に設けられた左右一対の掻込輪体26、及び、掻込輪体26の上方と受け渡し部20とに亘って設けられた左後搬送部27を備えている。左右の掻込輪体26は、外周部に周設された掻込爪部を備え、左右の掻込輪体26の掻込爪部が咬み合った状態で回転する。左搬送装置19Lの搬送始端部19aは、左右の掻込輪体26によって形成されている。左後搬送部27は、刈取穀稈の株元側部分を搬送する株元側搬送部27a(第1株元側搬送部の一例)と、刈取穀稈において株元側搬送部27aが搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する穂先側搬送部27b(第1穂先側搬送部の一例)と、を備えている。
株元側搬送部27aは、刈取穀稈を搬送する突起付きの無端回動チェーン27c(第1株元側チェーンの一例)と、無端回動チェーン27cの搬送方向に沿って配置され無端回動チェーン27cに搬送される刈取穀稈を案内するレール27d(第1株元側案内部材の一例)と、を備えている。穂先側搬送部27bは、刈取茎稈の穂先側を係止搬送アームが備えられた無端回動チェーンによって係止搬送する。
【0038】
左搬送装置19Lにおいては、第5導入路R5に導入されて刈り取られた刈取穀稈と、第6導入路R6に導入されて刈り取られた刈取穀稈との2条分の刈取穀稈が、左右の掻込輪体26によって後方に掻き込まれて左後搬送部27(株元側搬送部27a及び穂先側搬送部27b)の搬送始端部に供給され、左後搬送部27(株元側搬送部27a及び穂先側搬送部27b)によって受け渡し部20へ搬送される。
【0039】
合流後搬送装置11は、
図2に示されるように、株元側搬送部11a(第2株元側搬送部の一例)、株元側搬送部11b、及び穂先側搬送部11c(第2穂先側搬送部の一例)を備えている。株元側搬送部11a及び株元側搬送部11bは、刈取穀稈の株元側部分を搬送する。穂先側搬送部11cは、刈取穀稈において株元側搬送部11a、11bが搬送する部分よりも穂先側の部分である穂先側部分を搬送する。
【0040】
株元側搬送部11aは、刈取穀稈を搬送する突起付きの無端回動チェーン11d(第2株元側チェーンの一例)と、無端回動チェーン11dの搬送方向に沿って配置され無端回動チェーン11dに搬送される刈取穀稈を案内するレール11e(第2株元側案内部材の一例)と、を備えている。株元側搬送部11aは、受け渡し部20に搬送された刈取穀稈を後方に搬送して、株元側搬送部11bの搬送始端部に供給する。
【0041】
株元側搬送部11bは、刈取穀稈を搬送する突起付きの無端回動チェーン11fと、無端回動チェーン11fの搬送方向に沿って配置され無端回動チェーン11fに搬送される刈取穀稈を案内するレール11gと、を備えている。株元側搬送部11bは、搬送始端部に搬送された刈取穀稈を後方に搬送して、脱穀フィードチェーン12の搬送始端部に供給する。
【0042】
穂先側搬送部11cは、受け渡し部20に搬送された刈取穀稈の穂先側を係止搬送アームが備えられた無端回動チェーンによって後方に係止搬送し、脱穀装置7の前側近くで係止搬送を解除して脱穀フィードチェーン12による刈取穀稈の受け継ぎを可能にする。右搬送装置19Rの右後搬送部23における穂先側搬送部23bに、受け渡し部20から脱穀装置7の前側近くに延びる延長穂先側搬送部が備えられ、延長穂先側搬送部によって合流後搬送装置11の穂先側搬送部11cが構成されている。
【0043】
11aは、上下姿勢変更が可能な状態で支持されている。その姿勢変更に伴って、搬送終端部が株元側搬送部11bに対して刈取穀稈の稈長方向に位置変更する。株元側搬送部11aの姿勢変更により、脱穀装置7に対する刈取穀稈の扱深さを変更可能である。すなわち、株元側搬送部11bにより脱穀装置7に対する刈取穀稈の扱深さを調節可能な調節機構が構成されている。
【0044】
〔倒れ抑制部材〕
本実施形態では、
図3-5に示されるように、左搬送装置19Lから合流後搬送装置11への刈取穀稈の受け渡し部20における穂先側搬送部27b及び穂先側搬送部11cよりも下側に、刈取穀稈の株元側に作用して刈取穀稈の倒れを抑制する倒れ抑制部材40が備えられている。倒れ抑制部材40は、弾性変形可能な細い棒状の部材であって、例えばピアノ線を曲げて形成されている。倒れ抑制部材40の基端部は、レール27dを支持する支持部27eに支持されている。
【0045】
図3に示されるように、倒れ抑制部材40は、機体左右方向に交差する方向、詳しくは機体左右方向にほぼ直交する方向に基端部から延びている。
図4に示されるように、倒れ抑制部材40は、基端部から機体後方へ延び、次いで後ろ斜め上方向へ延びている。
【0046】
本実施形態では、
図4に示されるように、受け渡し部20の近傍において、左搬送装置19Lの株元側搬送部27aは合流後搬送装置11の株元側搬送部11aよりも上側にある。そして倒れ抑制部材40は、左搬送装置19Lの株元側搬送部27aよりも下側に位置する。詳しくは、倒れ抑制部材40は、合流後搬送装置11の株元側搬送部11aよりも下側から後ろ上がりに延びている。倒れ抑制部材40の後端部が、左搬送装置19Lの株元側搬送部27aと、合流後搬送装置11の株元側搬送部11aと、の間に位置する。
【0047】
図3、
図4に示されるように、左搬送装置19Lの株元側搬送部27aの搬送方向K1は、右斜め後ろ且つ斜め上方向である。合流後搬送装置11の株元側搬送部11aの搬送方向K2は、左斜め後ろ且つ斜め上方向である。倒れ抑制部材40は、株元側搬送部11aの搬送方向K2において株元側搬送部11aよりも上流側に位置する。また、倒れ抑制部材40は、株元側搬送部27aに対して株元側搬送部11aの搬送方向K2の上流側に離れた位置にある。そして、倒れ抑制部材40における株元側搬送部27aの搬送方向K1の下流側の端部が、株元側搬送部27aよりも下側に位置する。
【0048】
〔倒れ抑制部材による刈取穀稈の倒れの抑制〕
図5に、倒れ抑制部材40が設けられていない刈取部6における刈取穀稈の搬送の様子が示されている。圃場の作物(作物P51)が、刈取装置10によって刈り取られて、左搬送装置19Lの株元側搬送部27a及び穂先側搬送部27bにより後ろ斜め上方向へ搬送される(刈取穀稈P52)。受け渡し部20に到達した刈取穀稈は、本来であれば、その株元側部分が合流後搬送装置11の11aに受け渡され、穂先側部分が合流後搬送装置11の穂先側搬送部11cに受け渡される。
【0049】
ここで、係止搬送アームが備えられた無端回動チェーンである穂先側搬送部11cに比べ、無端回動チェーン11dとレール11eとで株元側部分を搬送する株元側搬送部11aには、刈取穀稈が受け渡されにくい。換言すれば、無端回動チェーン11dとレール11eとの間に刈取穀稈が入り込みにくい。株元側部分が株元側搬送部11aに搬送されず受け渡し部20に留まり、且つ、穂先側部分が穂先側搬送部11cに搬送されて移動すると、刈取穀稈は上下方向に延びる姿勢(刈取穀稈P52)から斜めに倒れる姿勢(刈取穀稈P53)になる。刈取穀稈の倒れが過度に大きくなると、刈取穀稈の穂先側部分が穂先側搬送部11cから脱落(刈取穀稈P54)し、刈取穀稈全体が圃場に落下する場合がある。また、刈取穀稈が倒れた姿勢で合流後搬送装置11に搬送されると、刈取穀稈が脱穀装置7に供給される際の姿勢が悪くなる場合がある。このような、刈取穀稈の受け渡し部20への滞留に起因する刈取穀稈の倒れは、刈取装置10で刈り取られて搬送装置19で受け渡し部20へ搬送される刈取穀稈の量が少ない場合に発生する可能性が高くなる。ここで、一部の条についてのみ刈取りが行われる場合、例えば6条刈りのコンバインにおいて左端の1つの条についてのみ刈取りが行われる場合、搬送装置19で受け渡し部20へ搬送される刈取穀稈の量が少なくなる。搬送装置19で受け渡し部20へ搬送される刈取穀稈の量が十分に多い場合には、受け渡し部20に到達した刈取穀稈は、後続の刈取穀稈にどんどん押されるため、直ぐに株元側搬送部11aにより搬送され、株元側部分の受け渡し部20への滞留が発生し難い。
【0050】
図6に、倒れ抑制部材40が設けられた刈取部6における刈取穀稈の搬送の様子が示されている。圃場の作物(作物P61)が、刈取装置10によって刈り取られて、左搬送装置19Lの株元側搬送部27a及び穂先側搬送部27bにより後ろ斜め上方向へ搬送される(刈取穀稈P62)。受け渡し部20に到達した刈取穀稈は(刈取穀稈P63)、その株元側部分が合流後搬送装置11の11aに受け渡され、穂先側部分が合流後搬送装置11の穂先側搬送部11cに受け渡される。このとき、株元側部分が株元側搬送部11aに搬送されず受け渡し部20に留まり、且つ、穂先側部分が穂先側搬送部11cに搬送されて移動したとする。刈取穀稈は上下方向に延びる姿勢(刈取穀稈P63)から、
図5の刈取穀稈P54のように斜めに倒れようとする。すると、刈取穀稈P63の株元側部分が抑制部材40と接触して、刈取穀稈の過度の倒れが抑制される。そして、刈取穀稈P63の株元側部分が無端回動チェーン11dの突起に引っ掛けられて、株元側搬送部11aにより搬送され始める。このようにして、上下方向に延びる姿勢にて株元側搬送部11a及び穂先側搬送部11cにより刈取穀稈が搬送される(刈取穀稈P64)。
【0051】
図7は、株元側搬送部27aの搬送方向K1に沿って受け渡し部20を視る断面図である。刈取穀稈P71は、レール27dに沿って株元側搬送部27aに搬送されて受け渡し部20に向けて紙面奥方向に進む。受け渡し部20に到達した刈取穀稈P72は、レール27dから離間する。刈取穀稈P72が斜めに倒れようとすると、刈取穀稈P72の株元側部分が抑制部材40と接触して、過度の倒れが抑制される。そして、刈取穀稈P72の株元側部分が無端回動チェーン11dとレール11eとの間に進み、無端回動チェーン11dの突起に引っ掛けられて、レール11eに沿って株元側搬送部11aにより搬送され始める(刈取穀稈P73)。このようにして、上下方向に延びる姿勢にて株元側搬送部11a及び穂先側搬送部11cにより刈取穀稈が搬送される。
【0052】
〔他の実施形態〕
〔1〕倒れ抑制部材40等の形状及び配置については、上記実施形態に示された例に限られない。例えば、倒れ抑制部材40が左搬送装置19Lの株元側搬送部27a及び合流後搬送装置11の株元側搬送部11aよりも上側に位置してもよい。受け渡し部20の近傍において合流後搬送装置11の株元側搬送部11aが左搬送装置19Lの株元側搬送部27aよりも上側にあってもよく、この場合に倒れ抑制部材40が合流後搬送装置11の株元側搬送部11aよりも下側に位置してもよい。
【0053】
〔2〕倒れ抑制部材40は、複数設けられてもよい。複数の倒れ抑制部材40が、複数の搬送装置19の各々に対応して設けられてもよい。一つの搬送装置19と合流後搬送装置11との受け渡し部に対応して、複数の倒れ抑制部材40が設けられてもよい。
【0054】
〔3〕
図8に示されるように、掻込輪体22の掻込爪部22aに凹部22bが設けられてもよい。この凹部22bに刈取穀稈P81が引っかかるので、掻込輪体22による刈取穀稈の後方への掻き込み及び右後搬送部23への供給を確実に行うことができる。凹部22bに代えて、又は加えて、掻込爪部22aに凸部が設けられてもよいし、掻込爪部22aの表面に摩擦力を増加させる表面加工が施されてもよい。凸部や表面加工によっても同様に、掻込輪体22による刈取穀稈の掻き込み及び右後搬送部23への供給の確実性を高めることができる。なお、掻込輪体24及び掻込輪体26についても、凹部、凸部や表面加工を設けることにより同様の効果が得られる。
【0055】
〔4〕右搬送装置19Rにおける株元側搬送部23aのレール23dの別形態が、
図9に示されている。この別形態では、レール23dの曲率半径が上記実施形態でのレール23dの曲率半径(
図2参照)よりも大きい。これにより、刈取装置10により刈り取られて掻込輪体22により後方に送られた刈取穀稈が、無端回動チェーン23cとレール23dとの間へ、より滑らかに運ばれることになる。そうすると、刈取穀稈が大きく傾いた状態で株元側搬送部23a及び穂先側搬送部23bに搬送される事態を抑制することができる。なお、中搬送装置19Cにおけるレール25d及び左搬送装置19Lにおけるレール27dについても、曲率半径を大きくすることにより同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、コンバイン(例えば、自脱型コンバイン)に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
6 :刈取部
7 :脱穀装置
11 :合流後搬送装置(第2搬送装置)
11a :株元側搬送部(第2株元側搬送部)
11c :穂先側搬送部(第2穂先側搬送部)
11d :無端回動チェーン(第2株元側チェーン)
11e :レール(第2株元側案内部材)
19L :左搬送装置(第1搬送装置)
20 :受け渡し部
27a :株元側搬送部(第1株元側搬送部)
27b :穂先側搬送部(第1穂先側搬送部)
27c :無端回動チェーン(第1株元側チェーン)
27d :レール(第1株元側案内部材)
40 :倒れ抑制部材
K1 :搬送方向
K2 :搬送方向