(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】可変施肥機
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
A01C15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019130584
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【氏名又は名称】香山 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【氏名又は名称】丸山 温道
(74)【代理人】
【識別番号】100206704
【氏名又は名称】西尾 明洋
(72)【発明者】
【氏名】三谷 英樹
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-144990(JP,A)
【文献】特開2011-254711(JP,A)
【文献】特開2005-033710(JP,A)
【文献】特開2009-159888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 3/00 - 3/08
A01C 15/00 - 23/04
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と内部メモリとを含み、1または複数の施肥マップデータが記憶されている携帯型メモリから、1または複数の施肥マップデータが前記内部メモリに転送される可変施肥機であって、
前記携帯型メモリからある施肥マップデータが前記内部メモリに転送されたときに、当該施肥マップデータが転送済であることを示す転送済情報を、当該施肥マップデータに関連して前記携帯型メモリに記憶するための管理テーブルが設けられており、
前記制御装置は、
前記携帯型メモリが前記可変施肥機に接続された場合において、当該携帯型メモリ内の管理テーブルに基づいて、当該可変施肥機または他の可変施肥機の内部メモリに転送済の施肥マップデータが当該携帯型メモリ内に存在するか否かを判別する判別部と、
転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在していると判別された場合には、転送済の施肥マップデータが当該可変施肥機の内部メモリに転送されるのを抑制する抑制部と、
当該携帯型メモリから当該可変施肥機の内部メモリに、ある施肥マップデータが転送されたときに、当該携帯型メモリ内の管理テーブルに、当該施肥マップデータが転送済であることを示す転送済情報を書き込む書込部とを備えている、可変施肥機。
【請求項2】
前記抑制部は、転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在すると判別された場合には、当該携帯型メモリ内に存在している施肥マップデータのうち、非転送済の施肥マップデータのみをリスト表示し、当該リスト表示に基づいて、当該可変施肥機内の内部メモリに転送すべき施肥マップデータをユーザに選択させるように構成されている、請求項1に記載の可変施肥機。
【請求項3】
前記抑制部は、転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在すると判別され場合には、前記携帯型メモリ内に存在している転送済の施肥マップデータと非転送済の施肥マップデータとを識別可能にリスト表示し、当該リスト表示に基づいて、当該可変施肥機内の内部メモリに転送すべき施肥マップデータをユーザに選択させるように構成されている、請求項1に記載の可変施肥機。
【請求項4】
前記転送済情報は、前記携帯型メモリから前記可変施肥機の内部メモリに施肥マップデータが転送された日時を表す情報または当該可変施肥機の識別情報である、請求項1~3のいずれか一項に記載の可変施肥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可変施肥機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、開発者端末PCと、開発者端末PCに接続されたGISサーバと、GISサーバにインターネットを介して接続された営農家端末PCとを含む、施肥マップ生成システムが開示されている。
特許文献1に記載の施肥マップ生成システムでは、開発者端末PCは、圃場のリモートセンシングデータと、圃場の土壌サンプリングデータに基づいて、熱水抽出性窒素マップを作成する。GISサーバは、営農家端末PCから取得した作物、肥料名、肥料成分等の情報、開発者端末PCから取得した熱水抽出性窒素マップ等に基づいて、圃場内のメッシュ毎の施肥量を演算することにより、施肥マップを作成する。GISサーバによって作成された施肥マップは、営農家端末PCにダウンロードされることによって営農家端末PCに提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、営農者は、営農家端末PCに提供された施肥マップをUSBメモリ(携帯型メモリ)に記録し、可変施肥機に設けられている内部メモリにUSBメモリから施肥マップを転送する。可変施肥機は内部メモリに転送された施肥マップを利用して、可変施肥作業を行う。
圃場を多数所有する大規模営農家は、通常、可変施肥機を複数台所有している。また、大規模営農家では、可変施肥機のオペレータも複数人存在する場合が多い。このような大規模営農家においては、USBメモリに記憶されているある圃場に対する施肥マップがある可変施肥機に転送されて、可変施肥作業が行われた後に、別のオペレータが別の可変施肥機に同じUSBメモリから同一圃場に対する施肥マップを転送するといったことが起こり得る。そうすると、同一圃場に対して、可変施肥作業が重複して行われるおそれがある。
【0005】
この発明の目的は、同一圃場に対して、可変施肥作業が重複して行われるといったことを抑制できる可変施肥機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、制御装置と内部メモリとを含み、1または複数の施肥マップデータが記憶されている携帯型メモリから、1または複数の施肥マップデータが前記内部メモリに転送される可変施肥機であって、前記携帯型メモリからある施肥マップデータが前記内部メモリに転送されたときに、当該施肥マップデータが転送済であることを示す転送済情報を、当該施肥マップデータに関連して前記携帯型メモリに記憶するための管理テーブルが設けられており、前記制御装置は、前記携帯型メモリが前記可変施肥機に接続された場合において、当該携帯型メモリ内の管理テーブルに基づいて、当該可変施肥機または他の可変施肥機の内部メモリに転送済の施肥マップデータが当該携帯型メモリ内に存在するか否かを判別する判別部と、転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在していると判別された場合には、転送済の施肥マップデータが当該可変施肥機の内部メモリに転送されるのを抑制する抑制部と、当該携帯型メモリから当該可変施肥機の内部メモリに、ある施肥マップデータが転送されたときに、当該携帯型メモリ内の管理テーブルに、当該施肥マップデータが転送済であることを示す転送済情報を書き込む書込部とを備えている、可変施肥機を提供する。
【0007】
この構成では、携帯型メモリから可変施肥機の内部メモリに施肥マップデータを転送しようとする場合に、当該可変施肥機または他の可変施肥機に既に転送済の施肥マップデータが、当該可変施肥機の内部メモリに転送されるのを抑制できる。これにより、同一圃場に対して、可変施肥作業が重複して行われるといったことを抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記抑制部は、転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在すると判別された場合には、当該携帯型メモリ内に存在している施肥マップデータのうち、非転送済の施肥マップデータのみをリスト表示し、当該リスト表示に基づいて、当該可変施肥機内の内部メモリに転送すべき施肥マップデータをユーザに選択させるように構成されている。
【0008】
この発明の一実施形態では、前記抑制部は、転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在すると判別された場合には、前記携帯型メモリ内に存在している転送済の施肥マップデータと非転送済の施肥マップデータとを識別可能にリスト表示し、当該リスト表示に基づいて、当該可変施肥機内の内部メモリに転送すべき施肥マップデータをユーザに選択させるように構成されている。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記転送済情報は、前記携帯型メモリから前記可変施肥機の内部メモリに施肥マップデータが転送された日時を表す情報または当該可変施肥機の識別情報である。
この発明の一実施形態は、可変施肥機が所定の機能を有している場合に適用され、自己が保有している1または複数の施肥マップデータを携帯型メモリに転送するための施肥マップデータ転送装置であって、前記所定の機能は、1または複数の施肥マップデータが記憶されている前記携帯型メモリが前記可変施肥機に接続された場合に、当該携帯型メモリ内の管理テーブル内の管理情報に基づいて、当該可変施肥機または他の可変施肥機の内部メモリに転送済の施肥マップデータが当該携帯型メモリ内に存在するか否かを判別し、転送済の施肥マップデータが前記携帯型メモリ内に存在していると判別された場合には、転送済の施肥マップデータが当該可変施肥機の内部メモリに転送されるのを抑制し、当該携帯型メモリから当該可変施肥機の内部メモリに、ある施肥マップデータが転送されたときに、当該携帯型メモリ内の管理テーブルに、当該施肥マップデータが転送済であることを示す転送済情報を管理情報の一つとして書き込む機能であり、前記施肥マップデータ転送装置は、施肥マップデータを前記携帯型メモリに転送する際に、当該携帯型メモリに転送される施肥マップデータ毎に、管理情報を記録するための管理テーブルを当該携帯型メモリ内に作成するように構成されている、施肥マップデータ転送装置を提供する。
【0010】
この構成では、携帯型メモリから可変施肥機の内部メモリに施肥マップデータを転送しようとする場合に、当該可変施肥機または他の可変施肥機に既に転送済の施肥マップデータが、当該可変施肥機の内部メモリに転送されるのを抑制できる。これにより、同一圃場に対して、可変施肥作業が重複して行われるといったことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る可変施肥機が適用された可変施肥システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、サーバからダウンロードされた施肥マップデータのフォーマットを示す模式図である。
【
図3】
図3は、営農家端末によってUSBメモリに作成される管理テーブルの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、営農家端末および可変施肥機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、営農家端末の転送制御部によって実行される第1転送制御処理の手順を示している。
【
図6】
図6は、施肥機制御装置によって実行される第2転送制御処理の手順を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る可変施肥機が適用された可変施肥システムの構成を示す模式図である。
可変施肥システム1は、サーバ2と、営農家端末3と、可変施肥機4と、USBメモリ5を含む。営農家端末3は、この発明の「施肥マップデータ転送装置」の一例である。USBメモリ5は、本発明の「携帯型メモリ」の一例である。営農家端末3は、通信網6を介してサーバ2と通信可能である。
【0013】
サーバ2は、営農家が所有する圃場に対する施肥マップデータを作成する。施肥マップデータは、圃場内のメッシュ毎に施肥量が設定されたマップデータである。メッシュとは、圃場を複数の矩形状(この実施形態では正方形状)の小領域に分割した場合の個々の小領域を意味する。より具体的には、施肥マップデータは、圃場内の各メッシュの位置を特定するための位置情報と、各メッシュに対する施肥量データとを含んでいる。メッシュの位置を特定するための位置情報は、例えば、当該メッシュの4頂点の位置情報または4頂点のうちの一組の対頂点の位置情報からなる。メッシュの位置を特定するための位置情報は、当該メッシュの中心の位置情報を含んでいてもよい。
【0014】
営農家端末3は、営農家が使用する端末装置である。
可変施肥機4は、施肥マップデータを利用して可変施肥作業を行う移動体である。可変施肥機4は、可変施肥作業を行う作業車両、可変施肥作業を行う作業用飛行体等を含む。作業車両は、走行機と走行機に牽引される施肥作業機とからなる作業車両や、走行機と施肥作業機が一体となっている作業車両を含む。作業用飛行体は、施肥作業機が搭載されたヘリコプター、マルチコプター、ドローン等の飛行体を含む。
【0015】
この実施形態においては、可変施肥機4が、走行機と施肥作業機が一体となっている作業車両である場合を主として説明する。つまり、可変施肥機4は、可変施肥機4を走行させるための走行部と、施肥を行うための施肥部とを備えている。施肥部は、例えば、肥料貯留タンク、肥料貯留タンクの底部に設けられた電子シャッタ、電子シャッタを駆動するための施肥量制御用アクチュエータ等を含む。
【0016】
営農家は、営農家端末3を利用して、自己が所有している圃場であって、近日中に施肥作業を行う予定の圃場に対する施肥マップデータをサーバ2からダウンロードする。この実施形態では、複数の圃場に対する施肥マップデータが営農家端末3にダウンロードされたものとする。営農家端末3にダウンロードされた複数の施肥マップは、営農家端末3のハードディスク36(
図4参照)に記憶される。
【0017】
この後、営農家は、営農家端末3のハードディスク36に記憶された複数の施肥マップデータをUSBメモリ5に転送する。この実施形態では、この際に、営農家端末3によって、USBメモリ5内に、後述する管理テーブル51が作成される。
そして、可変施肥機4のオペレータは、USBメモリ5に記憶された複数の施肥マップのうち、所定の施肥マップデータを可変施肥機4内のメモリ40A(
図4参照)に転送する。可変施肥機4は、メモリ40Aに記憶された施肥マップデータを利用して、当該施肥マップデータに対応する圃場に対して可変施肥作業を行う。
【0018】
図2は、サーバ2からダウンロードされた施肥マップデータのフォーマットを示す模式図である。
施肥マップデータは、ヘッダ部11とデータ部12とからなる。ヘッダ部11には、「ファイル名」、「作成日」、「圃場番号」、「作業識別情報」、「作業名」、「有効期限」等の属性データが含まれる。データ部12には、メッシュ位置情報毎の施肥量データが含まれる。
【0019】
「ファイル名」は、施肥マップデータのファイル名である。「作成日」は、施肥マップデータ(施肥マップ)がサーバ2によって作成された日時である。「圃場番号」は、施肥マップデータが適用される圃場の番号である。
「作業識別情報」は、施肥作業の種類を表す識別情報であり、「作業名」は、施肥作業の種類を表す名称である。施肥作業には、基肥散布作業、側条施肥作業、追肥作業等がある。「有効期限」は、施肥マップデータが使用可能な期間の最終日である。
【0020】
図3は、営農家端末3によってUSBメモリ5に作成される管理テーブルの一例を示す模式図である。
この実施形態では、管理テーブル51に記憶される管理情報には、「ファイル名」、「有効期限」、「書込日時」、「施肥機転送日時」および「施肥機ID」が含まれる。
この実施形態では、施肥マップデータが営農家端末3からUSBメモリ5に転送される場合にUSBメモリ5内に管理テーブル51が作成され、当該施肥マップデータのファイル名、有効期限および書込日時が管理テーブル51に記憶される。ファイル名および有効期限は、当該施肥マップデータのヘッダ部11に記憶されているファイル名および有効期限である。書込日時は、当該施肥マップデータがUSBメモリ5に転送された日時である。
【0021】
施肥マップデータが営農家端末3からUSBメモリ5に転送された時点では、当該施肥マップデータの施肥機転送日時および施肥機IDは書き込まれない。
USBメモリ5に記憶されている施肥マップデータが、可変施肥機4のメモリ40A(
図3参照)に転送されたときに、管理テーブル51内の当該施肥マップデータのファイル名に対応する欄に、可変施肥機4によって施肥機転送日時および施肥機IDが書き込まれる。施肥機転送日時は、当該施肥マップデータが、可変施肥機4のメモリ40Aに転送された日時である。施肥機IDは、可変施肥機4を識別するための識別情報である。この実施形態では、可変施肥機4の型式および機番が、施肥機IDとして用いられる。施肥機転送日時または施肥機IDは、本発明の「転送済情報」の一例である。
【0022】
図4は、営農家端末3および可変施肥機4の電気的構成を示すブロック図である。
営農家端末3は、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、端末制御装置(PC本体)31と、ディスプレイ32と、マウス、キーボード等の操作機器33とを含む。端末制御装置31は、CPU34、メモリ35、ハードディスク36等を含む。ハードディスクには、OS(オペレーションシステム)の他、ウェブページを閲覧するためのブラウザ(browser)、施肥マップデータをハードディスク36からUSBメモリ5に転送するための第1マップ転送プログラム等のプログラム、その他必要なデータが格納されている。端末制御装置31には、USBメモリ5をCPU34に電気的に接続するためのUSBコネクタ37が接続されている。
【0023】
CPU34は、機能処理部として、転送制御部34Aを含む。転送制御部24Aは、第1マップ転送プログラムに基づいて、ハードディスク36に記憶されている施肥マップデータをUSBメモリ5に転送するための第1転送制御処理を行う。転送制御部34Aは、管理テーブル51を作成する機能も備えている。
可変施肥機4は、施肥機制御装置40を含む。施肥機制御装置40は、本発明の「制御装置」の一例である。施肥機制御装置40は、CPUおよびメモリ(揮発性メモリ、不揮発性メモリ等)40Aを備えたマイクロコンピュータを含む。メモリ40Aには、施肥マップデータをUSBメモリ5からメモリ40Aに転送するための第2マップ転送プログラムが記憶されている。メモリ40Aには、当該可変施肥機4の型式および機番が記憶されている。
【0024】
メモリ40Aは、本発明の「内部メモリ」の一例である。この実施形態では、施肥機制御装置40に設けられているメモリ40Aが本発明の「内部メモリ」として用いられている。しかし、施肥機制御装置40に記憶装置を接続し、当該記憶装置を、本発明の「内部メモリ」として用いてもよい。
施肥機制御装置40は、走行部の走行動作(前進、後進、停止、旋回等の動作)を制御する。また、施肥機制御装置40は、第2マップ転送プログラムに基づいて、USBメモリ5に記憶されている施肥マップデータをメモリ40Aに転送するための第2転送制御処理を行う。
【0025】
施肥機制御装置40には、走行部の各部を制御するための複数の走行用コントロ-ラ41や、施肥部を制御するための施肥用コントローラ42が電気的に接続されている。
複数の走行用コントローラ41は、エンジンの回転数等を制御するエンジンコントローラ、車速を制御する車速コントローラ、前輪の転舵角を制御する操向コントローラ等を含む。施肥用コントローラ42は、例えば、施肥量制御用アクチュエータを制御する。より具体的は、施肥用コントローラ42は、施肥マップデータと、後述する測位情報と基づいて、施肥量制御用アクチュエータを制御する。
【0026】
施肥機制御部40には、さらに、位置情報算出部43、通信部44、USBコネクタ45、表示部46、操作部47等が接続されている。
位置情報算出部43には、衛星信号受信用アンテナ48が電気的に接続されている。衛星信号受信用アンテナ48は、衛星測位システムを構成する測位衛星7(
図1参照)からの信号を受信するものである。衛星測位システムは、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)である。位置情報算出部43は、衛星信号受信用アンテナ48で受信された測位信号に基づいて、可変施肥機4(厳密には、衛星信号受信用アンテナ48)の位置を算出する。具体的には、位置情報算出部43は、時刻情報と位置情報とを含む測位情報を生成する。位置情報は、例えば、緯度情報と経度情報とからなる。
【0027】
通信部44は、施肥機制御装置40が通信網6を介してサーバ2と通信するための通信インタフェースである。USBコネクタ45は、USBメモリ5を施肥機制御装置40に電気的に接続するためのコネクタである。表示部46は、例えば液晶表示機からなる。操作部47には、複数のスイッチ等が設けられている。
施肥機制御装置40は、第2転送制御処理を行うための機能処理部として、判別部40Bと、抑制部40Cと、書込部40Dとを含む。
【0028】
判別部40Bは、USBメモリ5が可変施肥機4のUSBコネクタ45に接続された場合において、USBメモリ5内の管理テーブルに基づいて、当該可変施肥機4または他の可変施肥機4のメモリ40Aに転送済の施肥マップデータがUSBメモリ5に記憶されているか否かを判別する。
抑制部40Cは、転送済の施肥マップデータが記憶されていると判別された場合には、転送済の施肥マップデータが可変施肥機4のメモリ40Aに転送されるのを抑制する。
【0029】
書込部40Dは、USBメモリ5から可変施肥機4のメモリ40Aに、ある施肥マップデータが転送されたときに、USBメモリ5内の管理テーブル51に、当該施肥マップデータが転送済であることを示す転送済情報を含む管理データを書き込む。この実施形態では、転送済情報は、施肥機転送日時および施肥機IDのうちのいずれか一方または両方である。
【0030】
図5は、営農家端末3の転送制御部34Aによって実行される第1転送制御処理の手順を示している。
営農家端末3のUSBコネクタ37にUSBメモリ5が接続された状態で、営農家によって第1マップ転送プログラムを起動するための操作(第1起動操作)が行われると(ステップS1:YES)、転送制御部34Aは、施肥マップ選択画面をディスプレイ32に表示する(ステップS2)。
【0031】
具体的には、施肥マップ選択画面には、ハードディスク36に記憶されている施肥マップデータのリストと、リスト毎に設けられたチェックボックスと、選択完了ボタン等が表示される。
施肥マップデータのリストは、ハードディスク36に記憶されている施肥マップデータ毎に、その属性データの一部または全部が表示されたリストであってもよい。例えば、施肥マップデータのリストは、ハードディスク36に記憶されている施肥マップデータ毎に、ファイル名、作成日、圃場番号、作業名および有効期限が表示されたリストであってもよい。
【0032】
営農家は、施肥マップ選択画面に基づいて、USBメモリ5に転送すべき1または複数の施肥マップデータを選択した後、選択完了ボタンを操作する。
選択完了ボタンが操作されると(ステップS3:YES)、転送制御部34Aは、営農家によって選択された施肥マップデータの属性データに基づいてUSBメモリ5に管理テーブル51を作成する(ステップS4)。
【0033】
この実施形態では、転送制御部34Aは、
図3を用いて説明したような管理テーブル51をUSBメモリ5に作成する。したがって、転送制御部34Aは、管理テーブル51に、USBメモリ5に転送すべき施肥マップデータ毎にファイル名、有効期限および書込日時が記憶された管理テーブルを、USBメモリ5内に作成する。なお、この時点では、管理テーブル51内に、施肥機転送日時および施肥機IDは記憶されない。
【0034】
次に、転送制御部34Aは、営農家によって選択された施肥マップデータをUSBメモリ5に転送する(ステップS5)。そして、転送制御部34Aは、今回の転送制御処理を終了する。
図6は、施肥機制御装置40によって実行される第2転送制御処理の手順を示している。
【0035】
可変施肥機4のUSBコネクタ45にUSBメモリ5が接続された状態で、可変施肥機4のオペレータによって第2マップ転送プログラムを起動するための操作(第2起動操作)が行われると(ステップS11:YES)、判別部40Bは、ステップS12に進む。
ステップS12では、判別部40Bは、USBメモリ5内の管理テーブル51に基づいて、有効期限が切れていない施肥マップデータがUSBメモリ5内に存在しているか否かを判別する。
【0036】
有効期限が切れていない施肥マップデータがUSBメモリ5内に存在している場合には(ステップS12:YES)、判別部40Bは、USBメモリ5内の管理テーブル51に基づいて、USBメモリ5内に当該可変施肥機または他の可変施肥機に転送済の施肥マップデータが存在しているか否かを判別する(ステップS13)。
具体的には、判別部40Bは、施肥マップデータ毎に、施肥機転送日時または施肥機IDが既に書き込まれているか否かを判別する。そして、施肥機転送日時または施肥機IDが既に書き込まれている施肥マップデータがあれば、判別部40Bは、当該施肥マップデータを転送済の施肥マップデータとして特定する。このようにして、判別部40Bは、USBメモリ5内に転送済の施肥マップデータが存在しているか否かを判別する。
【0037】
転送済の施肥マップデータが存在していると判別された場合には(ステップS13:YES)、判別部40Bは、有効期限が切れておらずかつ転送済ではない施肥マップデータ(非転送済の施肥マップデータ)がUSBメモリ5内に存在するか否かを判別する(ステップS14)。
有効期限が切れておらずかつ非転送済の施肥マップデータがUSBメモリ5内に存在する場合には(ステップS14:YES)、抑制部40Cは、第1施肥マップ選択画面を表示部46に表示する(ステップS15)。第1施肥マップ選択画面には、USBメモリ5に記憶されている施肥マップデータのうち、有効期限が切れておらずかつ転送済ではない施肥マップデータのリストと、リスト毎に設けられたチェックボックスと、選択完了ボタン等が表示される。
【0038】
施肥マップデータのリストは、リスト対象の施肥マップデータ毎に、その属性データの一部または全部が表示されたリストであってもよい。例えば、施肥マップデータのリストは、リスト対象の施肥マップデータ毎に、ファイル名、作成日、圃場番号、作業名および有効期限が表示されたリストであってもよい。
一方、転送済の施肥マップデータが存在しないと判別された場合には(ステップS13:NO)、抑制部40Cは、第2施肥マップ選択画面を表示部46に表示する(ステップS16)。第2施肥マップ選択画面には、USBメモリ5に記憶されている施肥マップデータのうち、有効期限が切れていない施肥マップデータのリストと、リスト毎に設けられたチェックボックスと、選択完了ボタン等が表示される。
【0039】
施肥マップデータのリストは、リスト対象の施肥マップデータ毎に、その属性データの一部または全部が表示されたリストであってもよい。例えば、施肥マップデータのリストは、リスト対象の施肥マップデータ毎に、ファイル名、作成日、圃場番号、作業名および有効期限が表示されたリストであってもよい。以下、第1施肥マップ選択画面および第2施肥マップ選択画面を総称する場合は、施肥マップ選択画面という。
【0040】
ステップS15またはステップS16によって施肥マップ選択画面が表示されると、オペレータは、施肥マップ選択画面に基づいて、可変施肥機4内のメモリ40Aに転送すべき1または複数の施肥マップデータを選択した後、選択完了ボタンを操作する。
選択完了ボタンが操作されると(ステップS17:YES)、抑制部40Cは、オペレータによって選択された施肥マップデータを、可変施肥機4内のメモリ40Aに転送する(ステップS18)。
【0041】
次に、書込部40Dは、USBメモリ5に管理テーブルの各欄のうち、メモリ40Aに転送された施肥マップデータに対応する欄に、機械転送日時と施肥機IDを書き込む(ステップS19)。施肥機IDは、当該可変施肥機の型式および機番からなる。そして、今回の転送制御処理を終了する。
前記ステップS12でUSBメモリ5に有効期限が切れていない施肥マップデータが記憶されていないと判別された場合(ステップS12:NO)または前記ステップS14で有効期限が切れておらずかつ転送済ではない施肥マップデータがUSBメモリ5内に存在しないと判別された場合(ステップS14:NO)には、判別部40Bは、ステップS20に移行する。
【0042】
ステップS20では、判別部40Bは、転送可能な施肥マップデータがUSBメモリ5内に存在しない旨を表示部46に表示する。そして、判別部40Bは、今回の処理を終了する。
前述の実施形態では、USBメモリ5から可変施肥機4に施肥マップデータを転送しようとする場合に、当該可変施肥機4または他の可変施肥機4に既に転送済の施肥マップデータが、当該可変施肥機4に転送されるのを防止できる。これにより、同一圃場に対して、可変施肥作業が重複して行われるといったことを抑制できる。
【0043】
さらに、前述の実施形態では、USBメモリ5から可変施肥機4に施肥マップデータを転送しようとする場合に、有効期限が切れた施肥マップデータが、当該可変施肥機4に転送されるのを防止できる。これにより、有効期限が切れた施肥マップデータに基づいて、可変施肥作業が行われるのを防止できる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。例えば前述の実施形態では、施肥機制御装置40内の抑制部40Cは、施肥マップ選択画面に、非転送済の施肥マップデータのみがリスト表示された施肥マップ選択画面を表示部44に表示するようにしている。言い換えれば、抑制部40Cは、既に転送済の施肥マップデータが施肥マップ選択画面にリスト表示されないようにしている。
【0044】
しかし、抑制部40Cは、施肥マップ選択画面に、転送済の施肥マップデータと非転送済の施肥マップデータとを識別可能にリスト表示するようにしてもよい。例えば、抑制部40Cは、転送済の施肥マップデータ転送済の施肥マップデータと非転送済の施肥マップデータとを色分けしてリスト表示してもよい。
また、営農家端末3の転送制御部34Aは、USBメモリ5に施肥マップデータを転送する際に、当該施肥マップデータの「作業識別情報」を管理情報の一つとして管理テーブル5Aに書き込むようにしてもよい。この場合において、USBメモリ5から可変施肥機4に施肥マップデータを転送する際、可変施肥機4の施肥機制御装置40は、次のような処理を行ってもよい。
【0045】
すなわち、判別部40Bは、USBメモリ5内の管理テーブル5Aの「作業識別情報」に基づいて、当該可変施肥機4が実行できない作業に対応する施肥マップデータ(以下「作業不可の施肥マップデータ」という。)がUSBメモリ5内に存在しているか否かをも判別する。作業不可の施肥マップデータがUSBメモリ5内に存在している場合には、判別部40Bは、当該作業不可の施肥マップデータを施肥マップ選択画面にリスト表示しないようにする。
【0046】
可変施肥機4の施肥機制御装置40は、USBメモリ5からメモリ40Aに施肥マップデータを転送した場合には、メモリ40Aに転送された施肥マップデータのファイル名を、施肥機IDとともに、サーバ2に送信するようにしてもよい。このようにすると、サーバ2は、施肥マップデータが、いつどの可変施肥機4に転送されたかを管理することが可能となる。
【0047】
前述の実施形態では、営農家端末3のハードディスク36に記憶された複数の施肥マップデータをUSBメモリ5に転送する際に、営農家端末3の転送制御部34Aによって、USBメモリ5内に管理テーブル51が作成されている。しかし、管理テーブル51は、施肥機制御装置40によって作成されるようにしてもよい。この場合には、転送制御部34Aは、USBメモリ5内に管理テーブル51を作成しない。
【0048】
具体的には、可変施肥機4のUSBコネクタ45にUSBメモリ5が接続された状態で、可変施肥機4のオペレータによって第2起動操作が行われると(
図6のステップS11参照)、施肥機制御装置40は、USBメモリ5内に管理テーブル51が作成されているか否かを判別する。
そして、USBメモリ5内に管理テーブル51が作成されていない場合には、施肥機制御装置40は、USBメモリ5に記憶されている施肥マップデータの属性データに基づいてUSBメモリ5に管理テーブル51を作成する。具体的には、USBメモリ5に記憶されている施肥マップデータ毎に、ファイル名および有効期限が記憶された管理テーブルを、USBメモリ5内に作成する。この管理テーブル51には、「書込日時」を記憶する領域は存在しないが、「施肥機転送日時」および「施肥機ID」を記憶する領域は存在する。ただし、施肥機制御装置40によって管理テーブル51が作成された時点では、管理テーブル51内に、施肥機転送日時および施肥機IDは記憶されない。この後、施肥機制御装置40は、
図6のステップS12に移行すればよい。
【0049】
一方、管理テーブル51が作成されていると判別された場合には、施肥機制御装置40は、USBメモリ5に管理テーブル51を作成することなく、
図6のステップS12に移行する。
前述の実施形態では、携帯型メモリがUSBメモリである場合を例にとって説明したが、携帯型メモリは、持ち運べる記憶装置であれば、USBメモリ以外の記憶装置であってもよい。
【0050】
前述の実施形態では、営農家端末3がサーバ2から施肥マップデータをダウンロードし、営農家端末3がUSBメモリ5に施肥マップデータを転送している。しかし、サーバ2が、USBメモリ5に施肥マップデータを転送し、当該USBメモリ5を営農家端末3に提供するようにしてもよい。この場合には、サーバ2側に前述の第1マップ転送プログラムを格納しておき、サーバ2からUSBメモリ5に施肥マップデータを転送する際に、サーバ2が、前述の第1転送制御処理を行うようすればよい。この場合には、サーバ2が本発明の「施肥マップデータ転送装置」に相当する。
【0051】
なお、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 可変施肥システム
2 サーバ
3 営農家端末
4 可変施肥機
5 USBメモリ
6 通信網
7 測位衛星
11 ヘッダ部
12 データ部
31 端末制御装置(PC本体)
32 ディスプレイ
33 操作機器
34 CPU
34A 転送制御部
35 メモリ
36 ハードディスク
37 USBコネクタ
40 施肥機制御装置
40A メモリ
40B 判別部
40C 抑制部
40D 書込部
41 走行用コントローラ
42 施肥用コントローラ
43 位置情報算出部
44 通信部
45 USBコネクタ
46 表示部
47 操作部
48 衛星信号受信用アンテナ